相続などで売れない土地・いらない土地を取得し、処分に困っている人は大勢います。
売れない理由も、田舎の土地や山林・農地、法的な問題を抱えた土地など、多種多様なものがあります。土地を放置していると税金などのデメリットがあるので、速やかな処分が理想です。
売れない土地・いらない土地を処分するためには、土地の特徴や状況に応じた方法を検討することが大切です。売却だけでなく、寄付や放棄、国への返還など、幅広く検討してみましょう。
しかしながら、土地を処分するにあたっては、やはり売却で利益を得られるのが一番です。そのため、まずは複数の不動産会社で査定を受けて、価値がつかないか調べることをおすすめします。
査定基準は不動産業者によって異なるので、1社では売れなかった土地も、別の業者なら高く売れるかもしれません。一括査定ならまとめて複数社に依頼できるので、ぜひ活用してみましょう。

- 売れない土地を処分するときは、まず一括査定で売却可能な不動産会社が本当にいないかチェック。
- 売却ができない場合、寄付や相続放棄、国への返還など、土地の状況に合った方法を検討。
- 売れない土地の特徴を把握し、その対策を適切におこなえば、売れるようになる可能性もある。
- どうしても処分できない場合でも、放置せず有効活用できないか検討することが大切。
目次
売れない土地の処分方法6選
売れない土地を処分する方法には、次の6つがあげられます。
- 一括査定で複数の不動産業者に相談する
- 自治体や法人に寄付する
- 個人に贈与する
- 相続放棄をする【相続時のみ】
- 土地の引取サービスを利用する
- 国に引き取ってもらう
基本は複数の不動産業者に相談し、売却できるところを探すのがおすすめです。不動産業者はそれぞれ売買ノウハウが異なるため、1社で売れなかった土地も、他の業者なら売れることがあります。
売却できる不動産業者がどうしても見つからなかったときに、寄付や放棄といった別の方法を検討しましょう。それぞれに条件があるので、状況に合わせた方法を選ぶことが大切です。
各方法を詳しく解説していきます。
1.一括査定で複数の不動産業者に相談する
一括査定を使うことで、土地を売れる不動産業者と出会える可能性があります。
一括査定とは、複数の不動産業者にまとめて査定を依頼できるサービスです。大手の一括査定サービスなら、有名企業から地域密着型の業者まで、全国の不動産業者を比較できます。
不動産業者はそれぞれ培った知識や経験、顧客ルートや経営方針に違いがあるため、得意な物件も変わります。売れないと思っていた土地でも、一括査定なら売却可能な業者を見つけられるかもしれないのです。
例えば、下記のリンクから利用できる「イエウール」では、全国2,000社以上の企業と提携しており、全国各地の土地に対応しています。
不動産業者の選択肢が幅広く、手放したい土地と相性の良い不動産業者を見つけやすいので、ぜひ一度利用してみましょう。
とにかく短期間で売るなら「買取業者」に相談がおすすめ
なかなか売れない土地を手放したい場合、不動産業者は「仲介業者」ではなく「買取業者」を選ぶのがおすすめです。
仲介業者と買取業者には、以下のような違いがあります。
不動産業者の種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
仲介業者 | ・市場の相場価格で売れるので、買取業者より高額売却ができる | ・買主を募集する必要があるので、売却まで時間がかかる ・売却がむずかしい物件は取り扱ってもらえない可能性が高い |
買取業者 | ・自社で直接買い取るので、短期間での現金化が可能 ・一般には売れにくい物件でも積極的に取り扱ってもらえる |
・物件を再販するためのコストなどが差し引かれるため、市場の相場価格より2~5割ほど安くなる |
仲介業者のほうが高く売れますが、売りにくい物件だと売却まで1年以上かかったり、そもそも取り扱いを断られたりするケースがあります。
一方、買取業者は価格こそ安くなりますが、自社で再生・活用してから再販するため、問題のある土地でも対応してもらいやすくなります。早ければ数日程度で現金化できるのも大きなメリットです。
スピーディーな処分を重視する場合は、ぜひ買取業者に相談してみましょう。
2.自治体や法人に寄付する
自治体や法人に寄付することで、土地を手放す方法もあります。
自治体に寄付する場合、まずは役所の相談窓口に問い合わせることが必要です。自治体によって手続きの流れは異なりますが、地域のために活用できる土地であれば寄付を受け入れてもらえます。
法人の場合、寄付募集を公表している法人がいくつかあります。代表的な法人例は次の通りです。
上記以外にも、例えば隣接する工場であったり、寺・神社などの宗教法人に寄付するといったケースがあります。
ただし、自治体・法人どちらにしても、無条件で寄付できるわけではなく、相手側の了承を得ることが必要です。寄付される側にメリットがないと、受け付けてはもらえません。
確実な処分方法とはいえませんが、選択肢の1つとして検討してみましょう。
「譲渡所得税」が発生するケースに注意
寄付するときの注意点は、譲渡所得税が課税されるかもしれないことです。
具体的には、寄付したときの土地の時価が、取得したときの時価より値上がりしていると課税されます。
「寄付するのに税金?」と疑問に思えるかもしれませんが、法律には以下の条文があります。
次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。
一 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)
要するに、法人に土地を寄付した場合、その土地は「一度売却して現金にしてから寄付した」とみなされるということです。
わかりやすく例えると、次のようになります。
- 時価1,000万円のときに取得した土地を、時価1,500万円まで値上がりしたときに寄付した
- 税法上は「土地を1,500万円で売却し、その売り上げ代金を寄付した」とみなされる
- 取得時と寄付時の差額500万円が利益とみなされ、その部分に譲渡所得税が課税される
自分の手元に現金は入っていないのに、高額な税金を課せられる恐れがあるので注意が必要です。
ただし、寄付する相手が「公益を目的とする法人」であれば、上記の税金は非課税となります。
非課税となる寄付先にはいくつかの条件があるので、詳しくは寄付先の法人や、税理士などに確認しておきましょう。
参照:国税庁「公益法人等に財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税の特例のあらまし」
3.個人に贈与する
有料では売れない土地も、無料なら欲しいという人がいるかもしれません。そういう人に贈与することで、不要な土地を処分できる可能性があります。
贈与相手として狙い目なのは、隣地の所有者です。2つの土地を合わせて面積が広くなれば資産価値も高くなるので、交渉の余地があります。
ただし、寄付の場合と同じく、相手側の了承がなければ贈与できません。強引に土地を押し付けることはできないので注意しましょう。
贈与した相手に「贈与税」が発生する点に注意
贈与の場合、贈与した相手(受贈者)に贈与税が課せられます。贈与税は、1年間に受けた贈与額から基礎控除額の110万円を差し引いた額にかかります。
つまり、贈与した土地の時価が110万円を超えているか、受贈者が年間に受けた贈与が合計110万円超になれば、贈与税の対象です。
※上記は暦年贈与の場合。親子間などで贈与する場合、相続時精算課税という別の課税方法も選択できる。
相手側に贈与税が発生する可能性をしっかり理解してもらわないと、後々トラブルになるかもしれないので注意しましょう。
4.相続放棄をする【相続時のみ】
土地を相続するときは、相続放棄をすることで処分が可能です。相続放棄をすれば「最初から相続人ではなかった」とみなされるため、相続に関する面倒ごとを回避できます。
ただし、相続放棄はあくまで相続権の放棄なので、基本的に特定の財産のみ放棄することはできません。土地を相続放棄するのであれば、他の財産もすべて放棄することになります。
また、自分以外に相続権を持つ人がいない場合、相続財産管理人を選任しなくてはいけません。選任には費用が発生するうえ、手続きが完了するまでは土地の管理責任を負う必要があります。
詳しくは下記の記事で解説しているので、こちらを参考にしてください。

なお、相続放棄には期限があり、相続開始を知ってから3ヶ月以内に手続きをする必要があります。相続開始後は速やかに土地が売却できるかを調べ、相続放棄をするかどうか決めましょう。
5.土地の引取サービスを利用する
近年、いらない土地を有償で引き取る業者が増えています。売却とは逆に、所有者が引取料を支払うことになりますが、売れない土地の処分方法として検討する価値はあるでしょう。
引取サービスのメリットは、売却・活用が困難な土地であっても、処分できる可能性があることです。例えば、次のような土地でも引き取ってもらえます。
- 別荘地
- 山林
- 原野
- 崖地や湿地
引取料の目安はおおむね40万円~100万円程度ですが、物件の特徴によって大きく変わるので、まずは見積もりを依頼してみましょう。
6.国に引き取ってもらう
放置された土地への対策として、「相続土地国庫帰属制度」が2023年4月27日よりスタートします。相続で得た土地について、国が土地を引き取るという制度です。
制度施行前に得た土地も対象となるので、相続したものの管理や活用ができない土地を処分する方法として注目を集めています。土地が所在する地域の法務局が申請先となる予定です。
ただし、複数の条件をクリアする必要があったり、負担金として10年分の土地管理費相当額を支払う必要があるなど、デメリットもあります。
先述した引取サービスとも比較しながら、制度の使いやすさなどを見て利用を検討してみましょう。
売れない土地・いらない土地の特徴と手放すための対策
ここまで、売れない土地の基本的な処分方法を解説しましたが、ひとくちに「売れない土地・いらない土地」といっても、その特徴はさまざまです。
特徴に合わせて適切な対応を取ることで、処分が可能になることもあります。
ここからは、以下にあげる「いらない土地・売れない土地」の代表例について、その特徴や効果的な処分対策を見ていきましょう。
- 田舎にある土地
- 遠方にある土地
- 面積が広大な土地
- 狭小地・変形地
- 農地や山林
- 共有名義の土地
- 「事故物件」「地中埋設物」など瑕疵のある土地
田舎にある土地
田舎にある土地は、その地域に住む人が少なく、単純に需要が低くなります。
売却だけでなく、貸地や事業用地として収益化するのも困難な場合があるため、持て余している人も多いでしょう。
人口減少は日本全体の社会問題であり、田舎の過疎化は今後も進行していくため、早めに処分することが大切です。
対策1.地元の不動産業者に相談する
田舎の土地については、全国規模の大手企業より、地元に密着した不動産業者のほうが取り扱いに慣れています。
不動産業者の数自体が少なければ、その限られた業者に地域の不動産情報も集まるため、思わぬ好条件で買い手が見つかるかもしれません。
企業としての知名度に惑わされず、物件と相性の良い不動産業者を見つけることが大切です。
対策2.空き家バンクを利用する
空き家バンクとは、自治体や企業が中心となり、空き家の活用を推進する制度です。
主に、空き家情報を公開して所有者と買い手・借り手をつなげたり、移住に伴う費用の補助などをおこないます。
空き家バンクは地方への移住を希望する人が多く、空き家付きの土地であれば、不動産業者を使うより売却・賃貸がしやすくなるでしょう。
具体的な制度の内容や、そもそも空き家バンクを導入しているかどうかは、自治体によって異なります。下記のウェブページを参照にしつつ、役所に問い合わせてみましょう。
遠方にある土地
相続などで、自分の住んでいる場所から離れた地域にある土地を取得するケースは少なくありません。
遠方なために活用はおろか管理もできない土地は、持っていても負担になるだけです。それだけでなく、管理が行き届かないことで、不法投棄や放火など犯罪の温床になるケースもあります。
将来的にその土地を利用する予定がなければ、なるべく早く処分したほうがよいでしょう。
対策1.不動産業者に持ち回り契約を依頼する
遠方の土地を売るにあたって問題となるのが、現地へ行くのがむずかしいことです。土地の現状を確認したり、売買契約を結ぶときの立ち会いがむずかしいことなどから、売却を諦める人もいます。
しかし、不動産業者に「持ち回り契約」を依頼すれば、売主が現地に行かなくても土地を売ることができます。
持ち回り契約を依頼すれば、現地へ一度も行く必要がなく、買主と直接会う必要もありません。
ただし、買主側が持ち回り契約に不安を抱いたり、時間をかけている間に心変わりしてキャンセルになったりすることもあるので、本当に必要なときのみ利用するようにしましょう。
対策2.家族や法律家を代理人にする
売買契約の締結は原則として所有者本人にしかできませんが、委任契約を結んで代理人を選ぶことで、他の人に任せることができます。
代理人に資格は不要ですが、信頼できる家族・親戚や、法律の専門家である弁護士や司法書士にお願いするとよいでしょう。
代理人を立てるには委任状の作成が必要であり、主に下記の項目を記載します。
- 土地の所在や地番、地目、地積など
- 委任の範囲(代理人の権限)
- 代理人の住所・氏名
- 委任者(所有者本人)の住所・氏名
- 委任者の署名・捺印(実印)
- 書面日付
とくに重要なのは委任の範囲で、代理人にどこまで権限を持たせるかを明確にすることが大切です。
価格交渉まで任せるのか、それとも売買契約の締結に伴う立会のみ任せるのか、解釈の違いが起こらないようきっちりと記載する必要があります。
面積が広大な土地
土地の面積が広大だと、かえって使い勝手が悪くなり、売却がむずかしくなります。
一般的な不動産売買では、買主のほとんどが宅地を目的としているので、広大すぎる土地は需要が下がってしまうのです。
面積の広さから、需要に反して評価額が高くなってしまうのも、より売却をむずかしくしている要因です。
固定資産税や管理費用も膨大になるため、早急に対策して負担を軽減しましょう。
対策1.分筆して売り出す
そのままでは広すぎる土地も、分筆して小分けにすることで売却しやすくなります。
宅地として平均的な30~40坪程度に分筆すれば、一般的な不動産売買でも需要が見込めます。
分筆の方法や売却時の注意点については、下記の関連記事を参考にしてください。

対策2.開発事業者とつながりのある不動産業者を選ぶ
広大な土地をそのまま売りたい場合、開発事業者とつながりのある不動産業者に相談することで、売却できる可能性があります。
開発事業者がつくるニュータウンや大型商業施設には広い土地が必要なので、広大な土地を高値で買ってもらえる傾向があります。
しかし、開発事業者とつながりを持つには、不動産業者にもある程度の企業規模が必要です。そのため、まずは大手の不動産業者に相談するのがおすすめとなります。
「三井」「三菱」「住友」など巨大企業のグループ会社や、テレビCMでよく見るような有名不動産業者なら、広大な土地でも売却できる可能性があるでしょう。
「入札制」で売却するのがおすすめ
広大な土地を売るにあたっては、一般的な仲介ではなく、「入札制」で買主を決めるのがおすすめです。
土地が広大で、なおかつ土壌も優良であれば、開発事業者にとってはぜひとも手に入れたい物件です。仲介で一対一の交渉をするより、多くの開発事業者に競争をさせる入札制ほうが、高く売れる可能性があります。
そのため、不動産業者には「入札形式での売却」を相談し、その取りまとめをお願いするとよいでしょう。
個人で入札形式を取るケースはあまり多くありませんが、大地主の意向となれば、不動産業者も協力してくれます。広大な土地の取引に慣れている業者であれば、適切なサポートをしてくれるでしょう。
狭小地・変形地
広大な土地とは逆に、極端に面積の狭い「狭小地」や、形が歪な「変形地」も、売れない土地の代表です。
- 狭小地:一般的に15~20坪以下の土地のこと
- 変形地:三角地や台形地、旗竿地などのこと
狭小地や変形地は建物を建てにくく、用途も狭まるため、需要が少なくなってしまいます。残しておいても活用がむずかしいため、なるべく早く処分するのが望ましいでしょう。
対策1.隣地の所有者に売却を提案する
狭小地や変形地の場合、隣地も同じような土地であるケースが多くなります。
隣地の所有者としては、狭さや形の歪さを解消できれば土地の資産価値を上げられるため、売却の提案に応じてくれるかもしれません。
「駐車場や庭として欲しいと思っていた」というケースは少なくないので、声をかけてみるとトントン拍子に話が進む場合もあります。
対策2.買取業者に依頼する
仲介業者ではなく買取業者に相談することで、狭小地や変形地の売却がスムーズに進むこともあります。買取業者は自社で土地を買い取ったあと、隣地の土地所有者に再び売却するか、隣地に周辺の土地を買い取ることで利益を得ます。
そもそも、買取業者は買い取った物件の再生・活用を前提に物件を買い取るので、隣地との交渉も通常業務の範囲となります。
対策1.だと隣地所有者との交渉が終わるまで売れませんが、その交渉を買取業者に負担させられる(すぐに現金化できる)ので、買主は負担なく売却が可能です。。
農地や山林
農地や山林は、そのまま使いたいという人が少ないため、売却がしにくくなります。
とくに、農地の売買は農業委員会に申請する必要があり、「3条許可」や「5条許可」といった農地法の許可がいります。
山林に上記のような規制は原則ありませんが、竹林の育成地や林業種苗地、果樹園や休耕地にあてはまる場合、農地法の対象となるので注意が必要です。
対策1.農業委員会や森林組合に相談する
農地なら農業委員会、山林なら森林組合に相談することで、売買を斡旋してもらえる可能性があります。
農業委員会も森林組合も、最大の目的は十分な農地・山林の保存なので、そのままの状態で活用してくれる買い手が見つかるかもしれません。
農業委員会は市区町村ごとに設置され、おおむね役所に事務局があります。まずは役所に問い合わせてみましょう。
森林組合は地域ごとに設置され、都道府県単位で連合を組むのが一般的です。Webで「(都道府県名) 森林組合」と検索すれば、公式ホームページが見つかるでしょう。
対策2.農地・山林の専門買取業者に相談する
一般的な不動産業者だと農地・山林を取り扱わないケースが多い一方、それらの土地を専門に買い取る業者もいます。
農地や山林は、土地売買のなかでもとくに専門的な知識が必要であり、なによりも実績が重要です。
専門買取業者なら農地・山林に特有の問題もスムーズに解消できるので、速やかに売却できる可能性があります。
下記にいくつかの業者を紹介しますが、これ以外にもさまざまな業者があるので、何社か比較・検討してみましょう。
買取業者名 | 農地 | 山林 |
---|---|---|
農地買い取り本間くん(エコリードイノベーション) | ○ | ○ |
タクト・エム株式会社 | ○ | ○ |
とくとくファーム(株式会社和上ホールディングス) | ○ | ○ |
太陽光設置お任せ隊(株式会社ハウスプロデュース) | ○ | ×(原野、雑種地はOK) |
株式会社山いちば | × | ○ |
共有名義の土地
共有名義とは、1つの不動産を複数人で一緒に所有している状態のことです。土地を共同購入したときや、分筆せずに複数人が相続したときに共有名義となります。
共有名義で問題となるのが、処分する際に共有者全員の同意が必要な点です。共有者のなかに1人でも反対する人がいれば、処分ができません。
また、相続を何度も繰り返した結果、共有者がだれかわからなくなり、話し合い自体ができないというケースもあります。
貸し出したり、建物を建てたりするときも共有者との協議が必要なので、共有名義は処分・活用どちらもむずかしい物件です。
対策1.共有物分割請求をおこなう
共有名義の問題をなくす方法として、「共有物分割請求」があります。文字通り、共有財産を分割して共有名義を解消する方法です。
具体的な分割方法は次の3種類があり、共有者全員と話し合ってどの方法を選ぶか決定します。
- 現物分割:土地を分筆し、切り分けた土地をそれぞれの単独名義にする
- 代償分割:共有者間で金銭による精算をおこない、代表者1名の単独名義にする
- 換価分割:共有名義のまま土地を売却し、その代金を分割する
話し合いで分け方が決まらない場合、調停や訴訟で決定することも可能です。
詳しくは下記の関連記事でも解説しているので、よろしければ参考にしてください。

対策2.共有持分だけ売却する
共有名義の場合、共有者一人ひとりに「共有持分」があります。共有持分とは自分がもつ「所有権の割合」のことで、自分の共有持分であれば自由に売ることが可能です。
共有物全体を売るときと違い、他の共有者に同意を得る必要がないので、スムーズかつ確実に売却できます。
専門の買取業者もおり、早ければ数日程度での現金化も可能です。詳しくは関連記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてください。

「事故物件」「地中埋設物」など瑕疵のある土地
土地が売れない要因として、下記のようになんらかの瑕疵(欠点や欠陥)を抱えているケースが少なくありません。
- 自死や火災などがあった事故物件
- 工場・ガソリンスタンド跡地などで土壌が汚染されている
- 浄化槽や瓦礫など地中埋設物がある
- 近隣に嫌悪施設(火葬場やゴミ処理場など)がある
- 隣地との境界があいまいになっている
- 崖地や浸水区域など災害リスクが高い
- 地盤沈下や液状化が起こっている
こうした「瑕疵のある土地」は需要が著しく減ってしまうため、売却がむずかしくなってしまいます。
対策1.瑕疵を解消してから売り出す
瑕疵の根本的な原因を解消すれば、普通の土地と同じように売れる可能性があります。
例えば、土壌汚染や地中埋設物ならそれらを除去する業者がいますし、隣地との境界があいまいな場合は「境界確定測量」で解決可能です。
ただし、瑕疵を解消するための費用が高いと、売却しても赤字になってしまうというデメリットがあります。
また、事故物件のように心理的な瑕疵や、崖地・浸水区域など根本的な解決ができない瑕疵もあります。
瑕疵の解消が現実的ではない場合、次に紹介する「訳あり物件専門の買取業者」を検討してみましょう。
対策2.訳あり物件専門の買取業者に相談する
訳あり物件専門の買取業者は、瑕疵物件に絞って買取をおこなう業者です。買い取った物件は自社で改善・再生してから収益化したり、再び販売したりします。
物件再生にかかるコストの分だけ買取価格は安くなりますが、一般では売却できないような土地でも買い取ってもらえるのがメリットです。
基本的に現金一括決済なので、契約が成立すればすぐに現金化できます。何年も放置していた瑕疵物件が、数日で売却できたというケースもあります。
下記の記事で訳あり物件専門の買取業者について解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

土地の処分に必要な書類
土地を処分するにあたって、自分で用意する必要のある書類がいくつかあります。
不動産業者に依頼する前に用意しておけば、スムーズに売却を進められるので、可能な範囲で早めに用意しておきましょう。
主な必要書類は以下の通りです。
- 本人確認書類
- 実印・印鑑証明書
- 登記済証・登記識別情報
- 全部事項証明書
- 確定測量図
- 固定資産税納税通知書・固定資産評価証明書
それぞれの書類がどのようなものかや、取得するために必要なことについて、詳しく見ていきましょう。
本人確認書類
売主が土地の名義人本人であることを確認する書類です。運転免許証やマイナンバーカード、パスポート、健康保険証などが該当します。
契約時に不動産業者へ提示し、売主本人であることを証明します。共有名義の土地を売る場合は、共有者全員分の書類が必要です。
不動産業者は犯罪による収益移転を防止するため、本人確認が義務付けられています。本人確認書類なしで仲介契約や売買契約は結べないので注意しましょう。
実印・印鑑証明書
実印とは、居住する市区町村に登録をした印鑑のことです。実印であることを証明する書類が印鑑証明書となります。
土地の売買では、契約の信頼性を高めるために実印を使うのが一般的です。法的には認印も使えますが、慣習として実印が使われます。
印鑑の登録や印鑑証明書の発行は、役所で手続きをおこないます。引っ越した場合、前の印鑑登録は自動的に消去されるため、新しい居住地で再度手続きが必要です。
登記済証・登記識別情報
登記済証および登記識別情報とは、「登記した人が名義人であること」を証明するもので、土地の購入や相続などで登記をおこなったときに交付されます。
2005年頃までは「登記済証」という書面での交付でしたが、法改正により英数字の組み合わせである「登記識別情報」に変わりました。
登記済証や登記識別情報がないと、法務局で名義変更するときや、抵当権を設定するときなどに受け付けてもらえません。
紛失してしまった場合、法務局による「事前通知」や、司法書士などによる「本人確認」が必要となります。これらの代替手段は手続きが面倒なので、登記済証・登記識別情報の紛失には注意しましょう。
全部事項証明書
全部事項証明書(登記事項証明書)とは、登記簿に記載された内容がすべて記された書面です。「登記簿謄本」と呼ぶ場合もありますが、これは登記簿が電子化される前の呼び方で、内容はどちらも同じです。
名義や所在地、面積や権利関係など、土地に関するあらゆる情報が載っており、売買時には必須となります。
取得申請は法務局でおこない、窓口・郵送・オンラインと3つの方法で請求できます。詳しくは土地所在地を管轄する法務局や、法務局公式ホームページで確認しましょう。
確定測量図
確定測量図とは、土地の境界を確定する「確定測量」で作成される書類です。隣地や隣接道路、道路の反対側にある土地まで記載し、土地の境界を明確にします。
確定測量図と合わせて、隣地所有者と境界について合意したことを記した「筆界確認書」や、越境物が合ったときに作成される「越境の覚書」があれば、それらも買主に引き渡します。
確定測量図が手元にない場合、過去に確定測量を依頼した土地家屋調査士に相談し、控えがないか聞いてみましょう。
控えがない場合や、そもそも確定測量をしたことがない場合は、改めて確定測量をおこないます。費用はおおむね50万~100万円程度、期間は1ヶ月半~半年程度が目安です。
ただし、つい最近分譲されて境界が明確な場合や、土地が広くて測量費用が土地の価格より高くなってしまう場合など、例外的に確定測量図が不要なケースもあります。
固定資産税納税通知書・固定資産評価証明書
固定資産税納税通知書および固定資産評価証明書は、どちらも土地の評価額を証明するのに必要な書類です。土地評価額をもとに、登記費用の計算や、売買した年にかかる固定資産税の精算をおこないます。
固定資産税納税通知書は、毎年6月頃に市町村から送られてきます。送付先は「その年の1月1日時点の名義人」なので、年明け~初夏に売却しても、受け取るのは売主です。
年明けに売買するなどで固定資産税納税通知書が手元にない場合、固定資産税評価証明書を用意します。こちらは役所の窓口(東京23区は都税事務所)で発行してもらえます。
いらない土地を処分せず放置するデメリット
売れないからといって、いらない土地を放置し続けると、次のようなデメリットがあります。
- 固定資産税がかかる
- 近隣に被害を与える可能性がある
- 犯罪に利用される恐れがある
- 相続で家族に負担がかかる
金銭的なコストだけでなく、訴訟問題に発展する可能性もあります。これらのデメリットを避けるためにも、不要な土地はなるべく早く処分すべきです。
それぞれ詳しく解説していきます。
固定資産税がかかる
土地は所有しているだけで、毎年固定資産税がかかります。「大した金額じゃないから大丈夫」と考える人もいますが、5年、10年と積み重ねれば大きな負担です。
固定資産税は、次のように計算します。
課税標準額は、基本的に固定資産税評価額と同じですが、特例適用で低くなる場合もあります。3年ごとに見直し(評価替え)がおこなわれ、最新のものは納税通知書や役所の窓口で確認可能です。
税率は基本的に1.4%ですが、これはあくまで目安であり、自治体によって多少変動します。
なお、都市計画法における市街化区域内にある土地は、「都市計画税」も一緒に課税・徴収されます。計算方法は「土地の課税標準額×税率(最大0.3%)」です。
近隣に被害を与える可能性がある
どれだけ遠方に住んでいても、土地の管理責任は所有者にあります。土地でなんらかの問題が発生し、近隣に被害を与えた場合、損害賠償を請求されるかもしれません。
土地が近隣に与える被害例としては、次のようなものが考えられます。
- 草木が越境している
- 害虫・害獣が発生する
- 土地上の建物が倒壊して被害を与える
- 土砂崩れが起きて被害を与える
上記のような被害を防ぐためには、定期的な手入れや適切な防止対策が必要です。こうした管理の時間的・金銭的コストも、大きな負担となってしまいます。
犯罪に利用される恐れがある
土地が放置されていると、犯罪に巻き込まれる場合もあります。
代表的な事例は、以下の通りです。
- 家電や車、産業廃棄物などを不法投棄される
- 不正大麻やケシなど違法植物の栽培に使われる
- 土地上の建物や可燃物に放火される
犯罪行為が原因で近隣にも被害が起きた場合、土地所有者の管理責任が問われることもあります。
例えば、可燃物がある土地を、簡単に侵入できる状態で放置していたとします。この土地で放火があった場合、所有者が必要な管理をしていなかったとみなされ、近隣の延焼に対して賠償責任が発生するかもしれません。
相続で家族に負担がかかる
土地を残しておくことで、ここまで紹介したデメリットや処分の負担を、家族に押し付けることになるかもしれません。
先述した共有名義になってしまったり、遠方に生活拠点ができたことで定期的な管理にも苦労してしまうなど、相続人である家族に迷惑をかけてしまう恐れがあります。
「子どもたちがいつか使うかも」「何か役に立つかも」と考えがちですが、家族の意思も聞いたうえで、土地の処分についてしっかり道筋をつけておくことが大切です。
処分以外で土地を有効活用する方法
土地の処分ができない場合、発想を変えて有効活用できないか考えてみましょう。
具体的な活用方法としては、次の例があげられます。
- 駐車場にする
- 市民農園を経営する
- 太陽光発電を設置する
- 高齢者住宅を作る
- 土地信託を利用する
もっとも避けるべきなのは、なにもせずに土地を放置し、むだに維持費がでていくことです。土地の特徴に応じた活用方法で、利益を得られないか検討してみましょう。
1.駐車場にする
駐車場は、狭小地や変形地のように使いにくい土地でも、車の出入りと駐車ができるスペースさえあれば始められます。設備の少ない青空駐車場であれば、初期投資を抑えられるのも利点です。
停められる台数が少なければ自主管理できますし、規模が大きければ委託することもできます。駐車場運営業者の一括借り上げ方式を使えば、稼働状況に関わらず毎月一定額もらうことも可能です。
都会はもちろん、田舎でも地域によっては建設業・配送業のトラックといった車の駐車ニーズがあり、高い収益性が期待できます。
2.市民農園を経営する
農地であれば、市民農園として一般に開放する方法があります。都会の人や高齢者の趣味、子どもの体験学習といったニーズが期待でき、売却がむずかしい農地を有効活用できます。
なお、開設にあたっては法律の規制があり、以下の条件をクリアしたうえで農業委員会の承認を受けなければいけません。
- 貸付部分が1,000㎡(10アール)であること
- 複数の利用者へ貸し付けること
- 貸付期間が5年を超えないこと
- 利用者による農作物の栽培が営利目的ではないこと
ただし、自身が農業をおこない、園主として利用者に指導をおこなう体験型農園の場合、承認は不要です。
また、生産緑地内の農地であれば、市民農園を経営したい団体(NPO法人など)に貸し出すという方法もあります。
3.太陽光発電を設置する
太陽光発電は、田舎で人が少ない地域でも土地を活用できる方法です。ある程度の広さがあり、日当たりがよい土地であれば検討の価値があります。
経済産業省のFIT制度やFIP制度を使うことで、安定した収益を得ることが可能です。
ただし、太陽光パネルの設置や発電システムの導入にあたって費用がかかり、規模が大きいと500万~1,000万円以上かかる場合もあります。
その他に修繕費などのランニングコストもかかるので、導入にあたっては長期的な収支をシミュレーションすることが大切です。
参照:経済産業省資源エネルギー庁「再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート」
4.高齢者住宅を作る
老人ホームやサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)向けの土地として、田舎の土地を利用する方法もあります。
高齢者住宅は通常の住宅より利便性が重視されず、田舎でも一定の需要を見込めます。空き家がある土地なら、改装して住宅型老人ホームにすることも可能です。
土地活用としておこなう場合、介護事業者へ土地や建物を貸し出すというスタイルが一般的です。建物を建てるときは、バリアフリー構造などの要件をクリアする必要があります。
5.土地信託を利用する
自分で土地を活用するのがむずかしい場合、土地信託を利用する方法もあります。土地信託とは、運用の専門家に土地の収益化をしてもらう契約です。
信託契約を結ぶと、土地の所有権は信託業者に移りますが、その運用で発生した収益を配当金として受け取ります。
賃貸型と処分型の2つがあり、それぞれ契約修了後の土地の扱いに違いがあります。
- 賃貸型:契約期間の終了後、土地の所有権が戻ってくる
- 処分型:最終的に土地を売ること前提で契約する
賃貸型の場合、アパートやマンションを建てて運用されることが多く、その収入が配当金になります。
処分型は、土地の造成や分譲開発をおこなうことで付加価値をつけて、通常より高値で売却するという方式です。
いずれの方法も、建設・開発に必要な費用は信託業者が負担するため、自己資金がなくても収益を得ることが可能です。
まとめ
売れない土地・いらない土地の処分は、多くの人が頭を悩ませる問題です。
しかし、少し視野を広げ、さまざまな方法を検討することで、意外とスムーズに処分できる可能性があります。
大切なのは、問題から目を背けず、適切な対策を取ることです。処分にしろ活用にしろ、土地の特徴に合わせた方法は必ずあります。
買取業者の利用や寄付・放棄など、この記事で紹介した方法を参考に、不要な土地の問題を解消しましょう。
土地の処分についてよくある質問
いいえ、不可能とは限りません。不動産業者によって査定の基準が異なるため、業者を変えることで売却できる可能性があります。
なるべく多くの不動産業者に査定を依頼し、売却できるところを探しましょう。一括査定を使えば、複数の業者にまとめて査定を申し込めるのでおすすめです。→【全国2,000社以上と提携!】イエウールの一括査定はこちら
はい、可能です。農地や山林などを専門にする買取業者もいるので、まずは相談してみましょう。
必ず受け付けてもらえるとは限りません。寄付を受ける自治体や法人にとってメリットがなければ、断れることもあります。
相続で取得した土地を国に引き渡す「相続土地国庫帰属制度」が2023年4月27日よりスタートします。複数の条件をクリアしたうえで、負担金として10年分の土地管理費相当額を支払うことで、国に不要な土地を引き取ってもらえるという制度です。
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