不動産の売却で消費税はかかる?消費税がかかるケース・かからないケースを挙げて解説

不動産の売却を考える際、「不動産に消費税はかかるのか?」という点について疑問を持つ方も多いでしょう。
現在日本の消費税は10%であり、消費税がかかるかどうかによって、得られる売却金額が大きく異なります。
結論を言えば、個人が居住用の不動産を売却するケースにおいては、消費税はかかりません。
逆に、不動産を売却する売主が法人の場合は、消費税がかかります。
また、売主が個人の場合についても、売主が課税事業主である場合や、事業として不動産を売却する場合などは消費税がかかります。
消費税がかかるケース・かからないケースについて詳しくは本文中で解説します。
納付する消費税の計算方法や、申告・納付方法についても解説しているので、不動産売却を考えている方はぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
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この記事のポイント
- 個人の居住用物件の売却では消費税がかからない
- 不動産売却を行うのが法人や課税事業者の場合は消費税がかかる
- 不動産会社の仲介手数料や司法書士への報酬にも消費税がかかる
目次
売却した不動産に消費税がかからないケース
不動産売却で消費税がかからないのは、以下のようにまとめられます。
- 個人の居住用物件の売却
- 土地の売却は個人でも法人でも消費税が課税されない
- 免税事業者が不動産を売却する場合
先に言えば、個人の居住用物件の売却には消費税がかからないという点が非常に重要です。
ただし、不動産売却でかかる税金は消費税だけではないため、注意しましょう。
以下の記事では、不動産売却益に対してかかる税金について広く解説しているので、あわせてチェックしてみてください。

個人が所有する居住用物件の売却
まず、事業者ではない個人が居住用の不動産物件を売却する場合においては、消費税がかかりません。
消費税が課税される取引について、国税庁では以下のように定義されています。
(消費税は)-国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供に課税されます
引用:国税庁「消費税の仕組み」
事業者ではない個人が居住用の不動産物件を売却する場合は「事業として対価を得て行う資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供」に当てはまらないため、消費税がかからないということです。
事業者ではない個人とは、会社員のように給与所得を得て生計を立てている人を指します。
会社員の方が住んでいた家を売却する際に、10%もの消費税を徴収されることはないため、考慮に入れる必要はありません。
ただし後の項目で解説しますが、不動産の売上が1,000万円を超えた場合、2年後に課税事業者となり、不動産売却に消費税がかかります。
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建物を伴わない「土地」のみの売却
消費税がかかる不動産は「建物」にかかるものであり「土地」にはかかりません。
土地の売却と消費税に関する規定は、以下のように明言されています。
土地の譲渡や貸付けは、消費税の課税の対象とならないこととされています(非課税取引)
売却の対象が建物を含まず、土地のみである場合は、売主が個人・法人に関わらず消費税がかかりません。
ただし、売却される土地が駐車場などの施設の利用に伴って土地が使用される場合は消費税がかかるため、注意しましょう。
土地の定着物にも消費税はかからない
売却される土地の定着物についても、消費税はかかりません。
定着物とは具体的に、樹木、未分離の果実、移動困難な庭石などを含みます。
上記のような定着物に経済的価値がある場合も、非課税で取引できるため、覚えておきましょう。
免税事業者が不動産を売却する場合
不動産の売主が事業者であっても、免税事業者であった場合は、消費税がかかりません。
免税事業者とは、以下のの条件に当てはまる事業者のことです。
免税事業者には、主に個人事業主や小規模事業者、副業サラリーマンなどが該当するでしょう。
本業が会社員であり、副業をおこなっている場合、副業のみの課税売上が1,000万円を超えない限り、免税事業者として扱われます。
逆に、副業としておこなう事業の課税売上が1,000万円を超える場合は課税事業者となり、不動産売却で消費税の納税義務があるため、注意しましょう。
売却した不動産に消費税がかかるケース
不動産売却で消費税がかかるのは、以下のようにまとめられます。
- 法人が不動産売却をおこなう場合
- 課税事業者が不動産売却をおこなう場合
それぞれについて詳しく解説していきます。
法人が不動産売却をおこなう場合
不動産売却をおこなう売主が法人の場合には、消費税がかかります。
先ほど、消費税は「事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡」に対して発生すると述べましたが、法人が不動産売却する場合は、その取引自体に事業の目的がなくても消費税がかかります。
例えば、法人が保有していた社員寮や会社の駐車場などを、維持費削減のために売却する場合にも、消費税はかかるのです。
結論から言うとそれが収益目的に購入されたものでも、社員のために購入されたものでも、売主が法人であれば消費税はかかります。
課税事業者が不動産売却をおこなう場合
不動産の売主が課税事業者であった場合は、法人と同じく、消費税がかかります。
課税所得者とは、以下のいずれかの条件に当てはまる事業者のことです。
- 事業の前々年の課税売り上げが1,000万円を超えていた場合
- 前年の1~6月の間の課税売り上げが1,000万円を超え、かつ給料支払額の合計が1,000万円を超えた場合。
会社員が事業用の賃貸物件(テナントや駐車場など)や副業としておこなっている事業でも、課税売上が1,000万円を超える場合は課税事業者になります。
そのため、不動産売却の売上が1,000万円を超えそうな場合は、1,000万円を超えないように調整をおこなうことで節税できる場合があります。
例えば、1000万円の売上で100万円(消費税の計算方法は後の項目で解説)の消費税がかかるよりは、950万円の売上で消費税がかからない方がお得に不動産売却ができます。
駐車場などに利用されている土地の売却
先ほど、土地の売却には消費税が掛からないと述べましたが、事業用に活用されている土地の売却には消費税がかかります。
土地が事業用に活用される例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 駐車場として利用されている
- 太陽光発電に利用されている
- 貸しトランクルーム・倉庫として利用されている
駐車場として活用されている場合、青空駐車場のように駐車区画がはっきりとしていない場合には消費税がかからない場合もあります。
一方、設備が整えられている駐車場や立体駐車場などについては建物と同様の扱いとなり、消費税がかかります。
投資用物件を売却する場合
不動産の売主が課税事業者であった場合は、投資用物件の売却で消費税がかかります。
投資目的で所有しているマンションは、事業として「入居者から家賃を得る対価として役務の提供をしている」と判断されるため、消費税の課税要件を満たすことになります。
個人が投資用マンションを売却する場合も、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡に該当する為、建物に消費税が課税されます。
投資用マンションの売上のうち、建物価格が1,000万円を超える場合、2年後に課税事業者と認定されるため、消費税の確定申告を行う必要が出てきます。
不動産売却時に消費税が発生する取引はどんなものがある?
売却する不動産自体に消費税がかかるかどうかは、先の項目で解説してきました。
しかし、売却する不動産自体に消費税が掛からなくても、消費税がかかる取引は存在します。
この項目では、不動産売却において消費税がかかる取引を紹介していきます。
不動産会社に支払う仲介手数料
不動産の売却を仲介した不動産会社に払う仲介手数料には、消費税がかかります。
不動産の売却には、不動産会社の仲介を伴うのが一般的です。
不動産会社に支払う仲介手数料は、消費税の課税対象となる要件「事業者が対価を得て行う役務の提供」に該当するので消費税がかかります。
また、不動産会社が受け取ることのできる仲介手数料は、上限額が宅地建物取引業法で決められています。つまり、以下の表で示すとおり不動産の取引額ごとに3つに区分され、区分ごとに計算した合計が上限額となります。
不動産の売却価格 | 仲介手数料の上限額 |
---|---|
200万円以下 | 売却価格の5%+消費税 |
20万円超〜400万円 | 売却価格の4%+消費税 |
400万円超 | 売却価格の3%+消費税 |
仲介手数料の上限額を決定する「不動産の売却価格」には、土地価格も含みます。
例えば、500万円の不動産が土地代300万円と建物代200万円に分けられる場合、土地の取引そのものには消費税はかかりませんが、仲介手数料は売却価格500万円に対して発生するということです。
ただし、仲介手数料は消費税を含まれた金額が不動産会社から提示されるため、自分で計算する必要はありません。
司法書士への報酬
司法書士に依頼する業務への報酬にも、消費税がかかります。
不動産売却の場面において、司法書士には、以下のような作業を依頼することが多いでしょう。
- 住所の変更登記
- 担保の抹消登記
司法書士への依頼料は1万5000円前後が相場であり、消費税を含めた報酬が請求されます。
司法書士への報酬にかかる消費税についても、自分で計算する必要はありません。
不動産売却における消費税額の計算方法
ここまで消費税がかかるケース・かからないケースについて解説してきましたが、実際に支払うことになる消費税額はどのように計算されるか気になる方もいるでしょう。
ここからは、消費税額の計算方法について解説していきます。
消費税は2023年現在、10%であり、もちろん不動産売却の場面においてもこの10%という税率が適用されます。
①売上価格に対する消費税額を求める
まずは、不動産を売却した際の売上価格に対する消費税が額を求めます。
消費税は土地にはかからず、建物に対してかかるため、建物価格を求める必要があります。
例えば、売却価格5,000万円の物件が、土地代3,000万円、建物代2,000万円にそれぞれ内訳される場合、消費税は建物代2,000万円に対して10%の税率でかかるため、200万円となります。
区分 | 土地代 | 建物代 | 売上総額 |
---|---|---|---|
価格 | 3,000万円 | 2,000万円 | 5,000万円 |
かかる消費税 | 0円(0%) | 200万円(10%) | 200万円(建物代に対して10%) |
ちなみに、売却価格が税込表示されている場合は、税抜き価格から上記の計算を行う必要があるため「対象不動産の売買価格÷1.1×0.1」で計算します。
土地代と建物代の内訳が明確でない場合は?
分譲マンションや建売住宅、中古住宅は土地と建物が一体として売買されるので、その総額のみ表示されている場合には、土地価格と建物価格の内訳が明確にわからないケースも多いです。
上記のようなケースにおいては、固定資産税評価額や相続税評価額などの情報をもとに、土地価格と建物価格を割り振って計算をおこないます。
国税庁でも、以下のような方法で土地価格と建物価格を割り振る(按分する)と明言しています。
- 譲渡時における土地及び建物のそれぞれの時価の比率による按分
- 相続税評価額や固定資産税評価額を基にした按分
- 土地、建物の原価(取得費や造成費、一般管理費・販売費などを含む)を基にした按分
ただし、固定資産税評価額や相続税評価額などをもとにした按分を全て自分でおこなわなければいけないわけではなく、税理士のサポートも得ながら計算していくことが多いです。
参照:国税庁「課税標準」
②預かり消費税から支払い消費税を引く
不動産の売却にかかる消費税を計算できたとしても、その消費税をそのまま納付するわけではありません。
実際に納付する消費税は、以下のような計算式で求めます。
商品が売れた際に消費者から預かった消費税から、商品の仕入れにかかった消費税を引いた金額が、収めるべき消費税です。
先に例示した売却価格5,000万円の物件に対して200万円の消費税がかかったケースについて考えてみましょう。
先に求めたのは不動産が売れた時の消費税なので、売主が買主(消費者)から一時的に預かっている「預かり消費税」です。
この不動産を仕入れた時(購入した時)に支払っていた消費税が100万円の場合、納付すべき消費税は100万円ということになります。
支払い消費税をきちんと計算して預かり消費税から差し引かなければ、納付する消費税額が必要以上に大きくなってしまうため、支払い消費税の計算は非常に大切です。
簡易課税を適用して消費税額を計算する場合
納付すべき消費税額を求めるには「支払い消費税」を求める必要があります。
しかし、不動産を仕入れた際の消費税は、なかなか求めるのが難しいです。
そこで、簡易課税という制度を利用すると便利です。
簡易課税事業者の消費税の納税額の計算方法は以下の通りです。
課税期間の課税売上が5,000万円以下の事業者は、事前に簡易課税制度を適用する旨の届出書を提出することにより、簡易課税事業者になることができます。
簡易課税事業者は、支払消費税の実額を計算する必要がなく、課税売上とみなし仕入れ率だけで簡単に納税額が計算できる点がメリットです。
簡易課税事業者としての条件を満たしている方は、迷わず届出を出しておくといいでしょう。
不動産売却で発生した消費税の申告・納付方法
消費税の申告・納付は、確定申告をもっておこないます。
個人事業主は不動産を売却した翌年の3月末日までに、法人は課税期間の末日の翌日から2ヶ月以内に税務署へ申告をおこないます。
また、課税事業者として税金を納付するかどうかは前々年の課税売上によって決まるため、課税売上高が勘定されるのは2年後であるという点に注意が必要です。
期間が空くことによって消費税の納付を忘れてしまうというケースも度々みられますが、納付期限を過ぎてしまうと滞納扱いになり、追税のペナルティーを受けてしまうため、忘れないようにしましょう。
確定申告後、実際に消費税を納付する方法は以下のように、多くあります。
- 窓口での現金支払い
- 口座引き落とし
- インターネットバンキングによる納付
- クレジットカード決済
- コンビニでの納付…etc
自分にとって都合のいい方法で納付しましょう。
前年の消費税が48万円を超えると中間申告・中間納付が必要
直前の課税期間の消費税の額が48万円超の場合、「中間申告」と「中間納付」が義務付けられています。
直前の課税期間の消費税額 | 中間申告の回数 | 納付金額 |
---|---|---|
48万円超〜400万円 | 年1回 | 直前の課税期間の消費税額の1/2 |
400万円超〜4,800万円 | 年4回 | 直前の課税期間の消費税額の1/4ずつ |
4,800万円超 | 年11回 | 直前の課税期間の消費税額の1/12ずつ |
直前の課税期間に48万円を超える消費税を納付している場合は、「中間申告」と「中間納付」を意識しておきましょう。
建物価格だけで480万円超の不動産を売却した場合は48万円を超える消費税を納付している可能性があるため、よく覚えていない場合は確認が必要です。
中間申告・中間納付が必要な場合は税務署から中間納付額が記載された納付書が送られてくるので、案内に従って対応しましょう。
まとめ
個人が居住用の不動産を売却する場合においては、消費税はかかりません。
もともと住んでいた家を売りたい・相続された親の家を売りたいという場合には、消費税はかからないものとして計画を立てていいでしょう。
ただし、事業として取引される不動産(投資用マンションや駐車場など)を売却する場合は売主が個人であっても消費税がかかる場合があるため、注意しましょう。
「自分の売却したい物件は消費税がかかるのか?」「うちの物件は土地代と建物代の割合がどれくらいで、消費税はどれくらいかかるの?」など、みなさん自身のケースについての疑問は、不動産会社に質問したり、相談したりするといいでしょう。
不動産を売却する場合は、まず初めに複数の不動産会社に一括で査定を依頼するのがおすすめです。
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不動産売却と消費税に関するよくある質問
-
個人が居住用物件を売却する際、消費税はかかりますか?
課税事業者ではない個人が居住用の不動産を売却する場合は、消費税がかかりません。
-
個人が不動産を売却する場合でも、消費税がかかるケースがありますか?
以下のようなケースでは、個人が不動産を売却する場合でも消費税がかかる場合があります。
・課税事業者である場合
・事業性のある物件を売却する場合(投資用マンション・駐車場など) -
消費税額はどのように計算されますか?
不動産売却で発生する消費税額を求めるには、以下の手順で計算をおこないます。
① 不動産価格を土地代と建物代に分け、消費税がかかる金額(建物代)を求める
② ①で求めた預かり消費税から、支払い消費税を引いて、納付すべき消費税額を求める消費税額の計算については、こちらの項目で詳しく解説しています。
-
不動産売却の際にかかる消費税を節税する方法はありますか?
不動産売却の際にかかる消費税は、適用される控除制度などもなく、節税する方法はありません。
-
不動産売却の際にかかる消費税率はケースによって異なりますか?
消費税率は一律で10%であり、ケースによって変動することはありません。
ただし、消費税がいくらの不動産価格に対してかかるのかは、売却物件の「土地代」と「建物代」の割合によって異なります。
例えば、不動産価格が同じ5,000万円の場合でも、以下のように建物代の割合が違えば、消費税額は異なります。
・建物代が2,000万円の場合…2000万円の10%で200万円の消費税がかかる
・建物代が3,000万円の場合…3000万円の10%で300万円の消費税がかかる