ハウスリースバックには闇がある?仕組みや安全な利用方法について

ハウスリースバックとは、持ち家を売却しながらも賃貸として住み続けることができるサービスです。
老後の資金調達や住宅ローンの返済に困っている人にとっては魅力的な選択肢と言えますが、一方で「闇がある」「詐欺まがい」という噂も耳にします。
たしかにデメリットやトラブル事例はありますが、ハウスリースバック自体は、決して違法なものでも、損するだけものでもありません。仕組みを正しく理解して利用すれば、多くのメリットがあります。
ハウスリースバックを安全に利用するためにも、どのような理由で「闇がある」と言われるのか、この記事で把握しましょう。
なお、自分にあったハウスリースバックをするためには、市場相場の把握や、リースバック業者の比較が大切です。一括査定を使い、複数の業者から査定してもらいましょう。
この記事のポイント
- ハウスリースバックに「闇がある」と言われるのは、仕組みを知らずに契約してしまうケースや、約束を守らない悪徳業者が原因。
- ハウスリースバック自体は違法ではなく、適切に利用すれば資金調達の方法として便利なサービス。
- 買取相場の把握や契約内容の確認をしっかり行えば、安全にハウスリースバックをすることが可能。
目次
「ハウスリースバックには闇がある」と言われる理由10個
ハウスリースバックとは、家を売った後、その家を借りて住み続けるという仕組みのサービスです。家を売った後も引っ越しが不要な点がメリットですが、通常の不動産売却とは異なる点が多くあります。
そのため、利用者や業者の間でトラブルが発生することが多く、そこから「闇がある」と言われているのが実情です。
また、ハウスリースバック業者に限らず、不動産業界には違法やグレーゾーンな悪徳業者が少なくありません。大切なのは、業者の言うことを鵜呑みにせず、自分に必要なサービスを見極めることです。
ここでは、「ハウスリースバックには闇がある」と言われる理由としてよく挙げられる10個のポイントを紹介します。不動産取引をするときの注意点として、ぜひ参考にしてください。
仕組みがあまり知られていない
家を売りながら住み続けられるハウスリースバックは、現役世代からシニア世代まで近年普及が進んでいるサービスです。
しかし、まだまだ一般的と言えるほどの知名度はなく、多くの人にとっては馴染みがありません。ハウスリースバックという概念自体を知らない人も大勢います。
そのため、利用者も内容や条件を十分に理解しないまま契約してしまう場合が多く、後から思わぬトラブルに巻き込まれるケースがあります。
説明が不十分な業者がいる
ハウスリースバックを提供する業者は多数存在しますが、その中には説明が不十分な業者もいます。
例えば、メリットばかり強調してデメリットや注意点を伏せる業者や、利用者の状況やニーズに合わせた提案をしない業者が、トラブルを起こしています。
業者側もビジネスなので、自社のサービスを良く見せようとするのは、ある程度仕方がないことです。しかし、知識のない利用者を騙したり誤魔化したりするような場合は、明確に悪徳業者と言えます。
リースバック業者の中に悪徳業者がいることは否定できませんが、一方で利用者の利益を考え、デメリットをしっかりと説明する優良業者も存在します。悪徳業者に引っかからないためには、複数の業者を比較することが大切です。
約束を守らない業者がいる
悪徳業者の中には、都合の良い条件を言うものの、実際の契約では守らない業者もいます。
口約束で魅力的な条件を言っていたとしても、契約書に反映されていなければ証明は困難です。証拠がないのをいいことに、約束を反故にされる恐れがあります。
そのため、ハウスリースバックを契約するときは、しっかりと契約書を読み込み、提示された条件が盛り込まれているか確認することが重要です。
買取価格が安い
ハウスリースバックでは、不動産を売却する際に通常の売却よりも安く買い取られる傾向があります。物件にもよりますが、リースバックの買取価格は市場相場の6~9割ほどになるのが一般的です。
理由としては、賃貸物件として評価されるため、居住用物件より低く見積もられることが挙げられます。
ただし、一等地にあるなど、高利回りが期待できる場合は高く売れる場合もあります。
また、リースバックは、業者に直接買い取られる形式が多いのも理由の1つです。買取形式は価格から業者の利益やコストが差し引かれるため、仲介で個人相手に売るより安くなります。
売却価格を何よりも優先する場合、ハウスリースバックではなく、通常の方法で売却したほうが良いでしょう。
賃料が相場より割高
ハウスリースバックは、売却後も住み続けられる代わりに賃料が発生します。この賃料は、相場より割高に設定されるケースがあるため注意が必要です。
賃料が高くなる理由は、基準が近隣の賃料相場ではなく、買取価格によって決まるためです。買取価格が高くなるほど、賃料も高く設定されます。
計算式としては、「買取価格×期待利回り(6%~13%)÷12ヶ月」で決まるのが一般的です。期待利回りは、業者の経営方針や、物件の種類などによって異なります。
ただし、あくまで賃料の基準が通常と異なるだけであり、必ずしも割高になるとは限りません。買取価格や期待利回りによっては、近隣相場とそれほど変わらない場合もあるでしょう。
2~3年で退去させられる場合がある
賃貸借契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があり、ハウスリースバックでは定期借家契約が主流です。定期借家契約の場合、契約期間が2~3年になるのが一般的です。
期間満了後も住み続けたい場合、再契約をする必要がありますが、貸主側の同意が必要となります。実際に同意を得るのは難しく、基本的には期間満了と同時に退去しなければいけません。
ただし、リースバック業者によっては、借主が希望する限り契約を更新できる普通借家契約も提供しています。長く住み続けたい場合は、普通借家契約を結べる業者を選べば解決可能です。
また、定期借家契約のほうが家賃は安くなるのが一般的なので、将来的に引っ越しを考えている場合は、定期借家契約のほうが良い場合もあります。
賃貸借条件を変更を迫られる恐れがある
契約時に納得のいく条件であっても、賃貸借契約の期間中や更新時に、条件の変更を迫られる場合もあります。
賃料の引き上げや修繕費の負担、ペット飼育や駐車場利用の制限など、生活に大きく影響するような変更を迫られるかもしれません。
ただし、賃貸借条件の変更は貸主側が一方的に決められるものではなく、原則として借主側との合意が必要です。条件の変更を迫られても、合意できる内容になるまで交渉し、必要であれば弁護士などに相談することが大切です。
オーナーチェンジになる可能性がある
物件を買い取ったリースバック業者が倒産したり、他の投資家に転売したりなどして、オーナーチェンジになる場合があります。
オーナーチェンジがあっても、賃貸借契約は基本的に引き継がれますが、賃貸借条件の変更を迫られるかもしれません。また、老朽化による建て替えなどを理由に、立ち退きを請求されるケースもあります。
オーナーチェンジによるトラブルを防ぐためには、契約のときに「オーナーチェンジがあったら賃貸借契約はどうなるか」を確認しておくことが重要です。
実際に条件変更や立ち退きを請求された場合は、先述のように貸主側と交渉し、必要に応じて弁護士などへ相談するようにしましょう。
買い戻し条件が厳しい場合がある
ハウスリースバックの特徴として、買い戻しができるというメリットがあります。契約時点で特約を設けておけば、将来的に買い戻すことが可能です。
しかし、利用者の中には、条件が厳しく設定されていることで「実際には買い戻せなかった」という人もいます。買い戻し価格が時価のため値上がりしていたり、買い戻し期間が限定されていたりというケースがあります。
買い戻しで後悔しないためには、契約する際に買い戻し条件を確認し、無理のない計画を立てることが重要です。
クーリングオフを適用できない
クーリングオフとは、消費者が契約の申し込みや締結をしても、一定期間なら無条件で撤回できる制度です。不動産の場合、物件を購入しても通常8日間以内であれば契約解除が可能です。
しかし、ハウスリースバックは利用者が売主になるので、クーリングオフを適用できません。つまり、後から契約を解除したいと思っても、原則として解約できないのです。
リースバック業者に相談しても、解約を断られたり、高額な解約料を請求されたりします。そのため、契約時は内容や条件を十分に理解し、慎重に判断することが大切です。
ハウスリースバックの仕組みとは?
ハウスリースバックでのトラブルを避けるためには、そもそもどのような仕組みなのか、サービスの内容をしっかり理解することが大切です。
ここからは、ハウスリースバックの基本的な仕組みやメリットについて、詳しく解説していきます。
ハウスリースバックとは売却した家に賃貸物件として住み続けるサービスのこと
先にも解説しましたが、ハウスリースバックとは、売却した家に賃貸物件として住み続けるサービスです。「売買契約と賃貸借契約を同時に結ぶ」と考えればわかりやすいでしょう。
家を売った後も住み続けられることで、以下のようなニーズに応えられます。
- 家を離れたくないものの、まとまった老後資金が必要な高齢者
- 自分が生きているうちは住み続けたいものの、相続で家族に迷惑をかけたくない人
- 家を新築するにあたって、頭金と仮住まいの両方を確保したい人
- 家を売ったことを知られたくない人
- 事務所を移転する余裕はないが、事業資金を必要としている事業者
また、ひとくちにハウスリースバックといっても契約内容はさまざまで、買取価格や賃料、その他の付帯サービスなどは業者によって異なります。そのため、複数の業者を比較し、自分に合ったプランを見つけることが大切です。
ハウスリースバック自体は違法ではない
ハウスリースバックのトラブル事例を持ち出して「メリットがない」「危険な取引」と紹介しているメディアもありますが、決してデメリットばかりではありません。
ハウスリースバックは不動産売買契約と賃貸借契約の組み合わせであり、特定商取引法や不動産仲介業法などにも抵触しません。つまり、ハウスリースバック自体は違法ではないということです。
実際のトラブルも、ハウスリースバックそのものではなく、悪徳業者による違法な勧誘や、利用者自身の知識不足が原因です。
状況によって向き不向きはありますが、仕組みを理解したうえで優良業者と契約すれば、ハウスリースバックは有益な資金調達方法となります。
ハウスリースバックをする人の特徴
メリット・デメリットの両方があるハウスリースバックですが、実際の利用者はどのような人が多いのでしょうか?
国土交通省が発表した資料では、アンケートで「実際に利用している」と回答した人の理由は、次の5つがとなっています。
- リバースモーゲージ※も考えたが、借入をすることに抵抗があったから・・・40.7%
- 借家として今の家に住み続けながら、資金を得られるから・・・27.6%
- 今の家を売却して住み替えたいが、資金を得たうえでしばらくは借家として保留したいから・・・15.2%
- 年を取るなどして、自宅の管理ができなくなったので、事業者に管理してもらいたかったから・・・14.5%
- 借家として今の家に住み続けられるのであれば、相続などに備えて売れるときに売ってしまいたいから・・・13.1%
参照:国土交通省「リースバックの現状について リースバックに興味がある理由(複数回答) ②」
資金調達だけでなく、住み替えや家の管理、相続の備えを目的にしている人が多いようです。同様の悩みを持っている人にとっては、有効な解決策になるでしょう。
ハウスリースバックを安全に利用する方法
ハウスリースバックを安全に利用するためには、次のような方法を使いましょう。
- 買取相場を把握する
- 契約内容をしっかり確認する
- 家族などに相談してから契約する
- 信頼できる業者を選ぶ
いずれも難しいものではなく、ほんの少しの工夫や注意で、ハウスリースバックのトラブルは防げます。
それぞれの方法を詳しく解説していきます。
買取相場を把握する
ハウスリースバックでは、不当に安く買い叩かれないために、自宅の買取相場を把握することが重要です。
買取相場を知ることで、妥当な売却価格を判断できるようになり、他社との比較検討や値上げ交渉が可能になります。
買取相場を知る方法としては、周辺で売り出し中の不動産情報を調べたり、国土交通省の「不動産取引価格情報検索」やレインズの「REINS Market Information」で過去の取引情報を調べたりする方法が有効です。
また、不動産一括査定を使い、不動産会社の査定額を比べるのもおすすめです。各社で判断基準が異なるので、それぞれの査定額を平均化すれば、価格相場の中央値を判断できます。
契約内容をしっかり確認する
ハウスリースバックでは、不動産売買契約と賃貸借契約の2つの契約を結びます。同時に2つの契約を結ぶので混乱しがちですが、条件をしっかり確認することがトラブル回避には大切です。
特に重要なポイントとして、以下の3つに注意しましょう。
- 賃貸借契約の種類と期間
- 賃料やその他の費用負担
- 買い戻しの条件
それぞれ詳しく解説します。
ポイント1.賃貸借契約の種類と期間
賃貸借契約の種類と期間によって住み続けられる期間などが変わるため、普通借家契約と定期借家契約のどちらになるかは必ず確認しましょう。
また、契約期間がどのくらいなのかも重要です。定期借家契約はもちろんのこと、普通借家契約も更新時期に更新料などが発生するかもしれません。
ポイント2.賃料やその他の費用負担
賃料やその他の費用負担についても、しっかりチェックするようにしましょう。
賃料は「買取価格×期待利回り(6%~13%)÷12ヶ月」が相場なので、これより高額になる場合、ハウスリースバックとしても不当に高い賃料設定になっているかもしれません。
また、次のような費用についても、どのような取り決めになっているか確認しましょう。
- 敷金・礼金・保証金
- 管理費・共益費
- 修繕積立金
- 水道光熱費
- 保険料
- 更新料・更新手数料
これらの費用負担は、契約内容によって有無や金額が変わります。支払い不能に陥らないためにも、細かくチェックして資金契約を立てておきましょう。
ポイント3.買い戻しの条件
ハウスリースバックでは、将来的に売却した物件を再購入することも可能です。しかし、再購入するためには、リースバック契約時に買戻特約をつける必要があります。
特約がないと買い戻すのはほぼ不可能になるので、必ずリースバック契約前に確認することが大切です。
買い戻し価格や期間、手数料、税金などの条件は特約内容次第なので、無理のない条件になっているかしっかりと確認しておきましょう。
家族などに相談してから契約する
ハウスリースバックは自宅を売却する大きな決断です。そのため、家族や親族など身近な人に相談してから契約することをおすすめします。
特に高齢者のトラブル事例が多く、仕組みを理解しないまま契約したケースや、悪徳業者の強引な勧誘で契約してしまったケースが少なくありません。
高齢者は判断力が低下している場合もあるため、自分1人で判断せず、信頼できる人に相談することが大切です。高齢者の周囲にいる人たちも、本人が知らない内に不利な契約を結んでいないか、日頃から注意を払いましょう。
また、家を売却するということは、自分が死んだ後の相続にも関わります。家族間で揉めないためにも、独断での契約は避けたほうが良いでしょう。
信頼できる業者を選ぶ
ハウスリースバックでトラブルを起こしているのは悪徳業者が大半なので、いかに信頼できる業者を選ぶかも重要です。
信頼できる業者を選ぶ方法としては、次のような方法が挙げられます。
- 宅建業免許を持っているか確認する
- ホームページや口コミなどで評判や実績を調べる
- 複数の業者から査定や見積もりを取って比較する
宅建業免許については、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で検索することもできます。
また、実際に担当者と会ったときの雰囲気や、連絡の早さ・的確さも、優良業者を見極める判断材料となります。個々の相性もあるため、自分自身が「信頼できる」と思った業者と契約しましょう。
悪徳リースバック業者のトラブル事例と対策
ここまで解説した通り、ハウスリースバックの利用にはいくつかの注意点があります。特に、悪質な業者に騙されたり、不利な契約を強要されたりするトラブルには気を付けなければなりません。
ここからは、国民生活センターが相談を受けた「悪徳リースバック業者のトラブル事例」をもとに、問題点や対策を紹介していきます。
1.長期間の勧誘で強引に契約をさせられた
悪徳業者は、相手の都合を考えず長時間の勧誘活動を行ってきます。国民生活センターの事例では、以下のようなトラブルが発生しています。
【事例1】長時間の勧誘を受け、説明もなく書面も渡されないまま強引に売却契約をさせられた
一人暮らしの自宅に突然、不動産業者が2人で訪ねて来た。(中略)とにかく売れ売れと勧められ、朝10時から夜9時半まで居座られた。翌日も2人で訪ねてきて朝10時から夜7時頃まで居座られた。「マンションを売ったら入所できる施設は探してあげる」と言われ、自分も高齢だし、新型コロナウイルスの感染状況等で気が弱くなっていたところもあって、「売値を2~300万円上乗せしてくれるなら」と答えたところ、2300万円で売ることになってしまった。何か書面に署名押印したが、何の書類か覚えていない。「ちょっといやだ。待って」と言ったが取り合ってもらえなかった。業者から書面等を一切受け取っておらず、もらったのは会社案内のパンフレットのみだ。マンションの買い手が待っていると言われているが、契約をなかったことにしてほしい。(2021年1月受付 80歳代 女性)引用:国土交通省「高齢者の自宅の売却トラブルに注意-自宅の売却契約はクーリング・オフできません!内容をよくわからないまま、安易に契約しないでください-」
この事例では、2日間連続で朝から夜まで居座り、高齢者に売却を迫っています。また、契約を結んだ後も説明書類などは渡しておらず、誠実な対応とは言えません。
勧誘で自宅に居座られてしまう場合、まずはきっぱりと断り、退去を促しましょう。そして、「帰ってください」と伝えても一向に帰らない場合は、直ちに警察に連絡するのが最善の方法です。
家主が退去を求めているのにも拘わらず退去しない場合、刑法第130条の「不退去罪」が適用される可能性があります。
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
相手の目的や、住居へ入るにあたって家主の許可を得たかどうかは関係なく、「帰ってください」と言っても帰らない場合に不退去罪が適用されます。
不動産取引自体は民事問題になるため、警察は介入できません。しかし、刑法である不退去罪に該当すれば、警察も対応してくれます。
悪徳業者側も警察沙汰はなるべく避けたいので、110番に電話する素振りを見せるだけでも効果が期待できます。
2.高額な解約料を請求された
強引な勧誘で安価に売却してしまい、解約しようと思ったら高額な解約料を請求されたケースがあります。
【事例3】強引に安価な売却契約をさせられ、解約には高額な解約料がかかると言われた
不動産業者から築40年のマンションを2500万円で売ってほしいとの電話があり、3000万円以下では売らないと伝えた。3日後にまた突然電話があり「2400万円で購入したいという人を連れて来た。今マンションの下にいる」と言われた。その金額では売らないと伝えると「この金額が相場だ。悪くない金額だ」と言うので、病院の予約があると断ると「夕方にまた来る」と言われた。病院から戻ると、営業員と経理担当者と名乗る人がエントランスで待っていた。疲れていたが、悪いと思って自宅に上げた。営業員は「住み替えの物件を紹介するから心配はいらない」などと言って勝手に話を進め、書面に署名押印するように言われて内容を理解できないまま応じた。その場で手付金約450万円を渡され、2400万円で契約することになってしまった。(中略)翌日、営業員に契約をキャンセルすると電話したところ、「キャンセルするなら約900万円を支払ってほしい」と言われた。そのような説明は一切聞いていない。書類に署名押印はしたが、クーリング・オフできると思っていた。自宅を売却して引っ越すなど考えられない。契約をやめたい。(2020年9月受付 80歳代 女性)引用:国土交通省「高齢者の自宅の売却トラブルに注意-自宅の売却契約はクーリング・オフできません!内容をよくわからないまま、安易に契約しないでください-」
先述の通り、リースバックでクーリングオフは適用できず、解約するには解約料が発生します。この事例の場合、売買契約時に手付金が支払われているのがポイントです。
手付金が支払われている場合、買主はその手付金を放棄、売主は手付金を倍額にして買主へ返還することで解約できるという法律があります。
買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
手付金450万円に対し、900万円の解約料を請求しているため、残念ながら請求額については合法である可能性が高いでしょう。なお、手付金がない場合、契約で定められた金額か、実際の損害額と同額の違約金を支払うことになります。
この事例の対策としては、内容を理解しないまま書類に署名・捺印しないことや、他社の査定と比較してから判断することが挙げられます。
また、業者に対して「待たせて悪い」と思い、家に上げてしまったことも、失敗の原因と言えるでしょう。不要な勧誘に対しては、徹底して「売らないので来ないでください」と伝えることが大切です。
3.嘘の説明で契約をしてしまった
悪徳業者は、平気で嘘をつくこともあるため注意が必要です。以下の事例では、マンションが取り壊されるという嘘の説明で、売買契約を結んでしまっています。
【事例4】嘘の説明を信じて、自宅の売却と賃貸借の契約をしてしまった
3週間前、知人宅に電話があった後で不動産業者が来訪し、その日のうちに知人が自宅マンションを約2000万円で売却し、家賃18万円でそのまま住む契約をしたという。築30年以上ではあるが、このマンションの相場はもっと高額なはずだ。知人は、このマンションが10年後には取り壊されるという虚偽の説明を信じて契約したようだ。仮に10年住んだとすると家賃が売却代金を上回ってしまう。知人はやはりキャンセルしたいと考え、1週間後に喫茶店で業者の担当者と会い、キャンセルしたいと伝えたが、できないと説得され納得し、既に手付金を受け取ってしまっている。知人は判断力が低下しているように思われる。解約できないか。(2020年6月受付 70歳代 女性)引用:国土交通省「高齢者の自宅の売却トラブルに注意-自宅の売却契約はクーリング・オフできません!内容をよくわからないまま、安易に契約しないでください-」
虚偽の説明で契約を結んだ場合、錯誤※や詐欺による契約取り消しを請求できる可能性があります。
上記の事例の場合、売主が「10年後に取り壊されるなら売ります」という意思表示をしていれば、錯誤による契約取り消しができる可能性がある。
ただし、錯誤や詐欺による契約取り消しを訴えても、悪徳業者が認めるとは限りません。細かい事情で判断も変わるので、まずは弁護士へ相談するようにしましょう。
まとめ
「ハウスリースバックには闇がある」と言われるのにはさまざまな理由があります。実際にトラブルも発生しているため、契約するときは慎重に検討しなければいけません。
しかし、売却後も住み続けられ、契約によっては買い戻せるというのは、通常の売却にはない大きなメリットです。大切なのは仕組みを理解し、自分に必要なサービスなのか見極めることです。
もしも悪徳業者に騙されて不本意な契約をしてしまった場合は、弁護士へ相談するようにしましょう。経緯によっては、解約できる可能性があります。
そして、後悔なくハウスリースバックを行うためには、複数の業者を比べるのが一番大切です。一括査定などを使い、自分のライフプランに合ったリースバック業者を見つけましょう。
ハウスリースバックの闇についてよくある質問
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ハウスリースバックとはどういうサービスですか?
ハウスリースバックは「セールアンドリースバック」のことで、不動産を売却して後、その不動産を借りて住み続ける手法のことです。ハウスリースバックをすれば、家の売却でまとまった資金を調達しつつ、現在の生活環境を維持することができます。
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「ハウスリースバックには闇がある」と聞きますが本当ですか?
確かに、いくつものトラブル事例が発生しています。ただし、それらのトラブルは、利用者が仕組みを理解しないまま契約してしまったことや、悪徳業者に騙されたことが原因です。ハウスリースバック自体に違法性はなく、適切に利用すれば便利なサービスです。
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リースバックにはどのようなデメリットがありますか?
売却価格が相場よりも安くなりやすいことや、契約内容によっては賃貸借契約に期限があること、家賃が相場よりも高い場合があることなどが挙げられます。
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リースバックにはどのようなメリットがありますか?
売却後も自宅に住み続けられることや、不動産会社が物件を買い取るため短期間で現金化できること、固定資産税の支払いがなくなることなどが挙げられます。
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リースバックで失敗しないためには、何をすればよいですか?
売買契約と賃貸借契約を同時に結ぶことになるので、それぞれの契約内容をしっかり確認しましょう。また、不動産会社によってサービス内容が異なるので、複数の会社を比較することが大切です。>>【簡単60秒!】リースバックのオンライン一括査定はこちら