リースバックで家賃補助は使える?よくある受給要件について

リースバックとは、自宅を売却した上で賃貸借契約を結び、そのまま住み続けられるというサービスです。資金調達や住宅ローン問題の解決方法として近年利用者が増えています。
リースバック後は賃貸物件として住むことになるため、勤務先や自治体の家賃補助を使うことは可能です。
ただし、各企業・自治体によって家賃補助のルールは異なるため、それぞれの要件を満たしている必要があります。この記事では、改めてリースバックの制度と家賃補助についての関係性について解説していきます。
なお、家賃を始め買取価格やその他の付帯サービスなど、リースバックの条件は業者によって異なります。
納得のいくリースバックを行うためには、一括査定を使って複数のリースバック業者を比較し、自分の事情や希望に適した業者を選ぶようにしましょう。
この記事のポイント
- リースバックで支払う家賃は家賃補助の対象になる。
- リースバックの家賃は「買取額」と「期待利回り」で決まる。
- 後悔のないリースバックをするには、複数業者の比較が大切。
目次
リースバックで支払う家賃は家賃補助の対象となる
リースバック契約で支払う家賃は、一般的に家賃補助の対象となります。リースバック契約後に支払う家賃は高い傾向があるため、家賃補助があることで出費を抑えられることが大きなメリットです。
家賃補助とは、毎月の家賃の一部を補助する制度
家賃補助とは、毎月の家賃の一部を勤務している会社や自治体から補助してもらえる制度です。家賃補助の金額や支給基準は、会社や自治体毎に異なります。
会社から支給される家賃補助
会社から支給される家賃補助は、社員の福利厚生として行われ、補助される支給額は会社毎の支給基準により異なります。
自治体からの家賃補助
自治体からの家賃補助は、自治体毎に補助の金額や目的が異なりますが、多くは若年世帯や子育て世帯への補助が多くなっています。
すべての自治体で家賃補助を行っているとは限らないため、詳細は各自治体の役所やホームページで確認しましょう。
【参考】家賃補助を行っている主な自治体(静岡県静岡市、千葉県佐倉市、石川県七尾市)
家賃補助をもらう条件の例
家賃補助をもらう条件の例を、会社の場合と自治体の場合に分けてご紹介します。
会社の場合
会社の家賃補助は、一般的に以下のような基準が設けられています。
- 会社から家までの距離
- 世帯主であること
- 勤続年数
- 役職
他にも、支給額の上限や家賃補助を受けられる年齢が決まっているケースもあります。
自治体の場合
自治体の場合には、以下のような居住者向けに家賃補助を行っているケースがあります。
- 移住者であること
- 学生であること
- 高齢者世帯であること
- 子育て世帯であること
自治体の家賃補助の目的は、移住者の確保、若年世代や子育て世帯の経済的支援、空き家の活用などです。そのため、基本的に地域の活性化につながる条件が定められています。
リースバックの仕組みと家賃の決まり方
リースバックに家賃補助を使えることは解説しましたが、そもそもリースバックとはどのようなサービスなのでしょうか?
家を売りながら引っ越しが不要というメリットがある一方、買取価格や家賃の面ではデメリットもあります。リースバックの仕組みや家賃の決まり方を把握し、自分にとって必要なサービスであるか慎重に判断しましょう。
リースバックは「売買契約」と「賃貸借契約」を同時に結ぶ
リースバックは、自宅を売却し新たな家主と賃貸借契約を結ぶことで、そのまま自宅に住み続けます。つまり、「売買契約」と「賃貸借契約」を同時に結ぶということです。
買取価格が高いほど家賃設定も高くなるのが一般的ですが、業者によって細かい基準は異なります。リースバックを行う業者は数多くあるため、複数社に査定を出し、希望に近い業者をピックアップしましょう。
リースバックのメリット
リースバックの主なメリットは、次の3つが挙げられます。
- 売却後も住み続けられる
- まとまった資金が手に入る
- 買い戻すことも可能
リースバック最大のメリットは、売却したにも関わらず住み続けられることです。所有権自体は手放しますが、引っ越しにかかるコストがなく、生活環境を維持できます。
また、自宅の売却でまとまった資金が手に入ります。取得した資金に用途の制限はなく、老人資金や住宅ローンの返済、子どもの学費や新居の購入など何にでも使えます。
さらに、契約内容次第では売却した自宅を買い戻すことも可能です。そのため、ただ家を売るのではなく、一時的な資金調達をしたいときにおすすめできるサービスです。
リースバックのデメリット
一方、リースバックには以下のようなデメリットが挙げられます。
- 買取額が安い
- 契約によっては期間に制限がある
- 家賃の支払いがある
リースバックのデメリットは、買取金額が相場より安価になることです。買取金額は相場比70%~90%となるので、なるべく高く売りたいのであれば通常売却のほうがおすすめです。
また、契約内容によっては概ね2~3年で退去が必要になる場合があります。「定期借家契約」と呼ばれるもので、期間満了後の再契約は基本的にできません。
さらに、住み続ける限り家賃の支払いが発生します。リースバックの家賃は周辺相場より高い傾向があるため、家賃を支払うための資金力も必要です。

リースバックの家賃は「買取額」と「期待利回り」で決まる
リースバックの家賃は、「買取額」と「期待利回り」で決まります。周辺相場ではなく利回り重視で決めているので、家賃が高くなる傾向があります。
具体的には、以下の計算式にて算出される数字を参考に決められます。
例えば、買取価格が3,000万円で、期待利回りが8%の場合、家賃は「3,000万円×8%÷12ヶ月=20万円」となります。
期待利回りは物件の立地や状態、そして業者の経営方針で変わるため、まずは査定で複数業者を比較することが大切です。
家賃が高くなりやすいリースバックで家賃補助は重要な制度
家賃が高くなりやすいリースバックでは、家賃補助は積極的に使うことが大切です。
家賃補助を使うことで出費を抑えることができ、家賃滞納が起きるリスクを低減できます。経済的な憂いなく、安心して日常生活を送れるでしょう。
リースバックの流れ
実際にリースバックを利用するときには、以下ような流れがあります。
- ①リースバックを扱う不動産会社の査定を受ける
- ②売却額に納得した不動産会社と売買契約を結ぶ
- ③売却した業者と賃貸借契約を結ぶ
- ④家賃を毎月支払い、継続して居住する
- ⑤居住の継続・退去・買い戻し/li>
ここでは、リースバックを扱う不動産会社の選定から査定、売買契約、賃貸借契約などに至るまでの流れについてご紹介します。
①リースバックを扱う不動産会社の査定を受ける
はじめに、リースバックを扱う不動産会社の査定を受けます。
業者によって、売却金額と家賃設定は変わります。先述の通り、リースバック契約を締結する前には、複数社の査定を比較検討することが大切です。
また、リースバック業者のなかには買取価格や家賃の交渉ができる場合もあります。希望のリースバック条件が提示されない場合、業者に相談してみましょう。
②売却額に納得した不動産会社と売買契約を結ぶ
売却金額と家賃設定に納得したら、リースバック業者と売買契約を結びます。
リースバックの買取価格が低くなりがちなのは先述の通りですが、業者が直接買い取るのが一般的なので、スピーディーに現金化できます。早ければ1週間程度で手続きが終わるので、「売れないかも」と不安に思うこともありません。
条件に納得すれば、売買契約書を交わし、所有権移転登記によって名義の変更を行います。
③売却した業者と賃貸借契約を結ぶ
売買契約と同時に、業者と賃貸借契約を結びます。
賃貸借契約では、家賃の金額や引き落とし日、居住に関するルールなどを確認し、賃貸開始後に新たな家主とトラブルにならないようにします。
契約形態は「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類
賃貸借契約には、契約期間を更新できることが前提の「普通借家契約」と、契約を更新せず退去する「定期借家契約」があります。
普通借家契約は、賃借人が退去の意思を示さない限り契約期間の更新できる形態です。老朽化による建て替えなど例外を除き、借主はいつまでも住み続けられます。
一方、定期借家契約は期間が満了しても更新しないのが原則です。一応、貸主が承諾すれば再契約もできますが、基本的には退去しなければいけません。
ただし、家賃設定は定期借家契約のほうが安くなるのが一般的なので、「いつまで住み続けるのか」「無理なく支払える家賃はいくらか」を考慮して選ぶと良いでしょう。
④賃貸物件として、家賃を支払い居住する
賃貸借契約を結んだら、その日以降は家賃を毎月支払います。
家賃を滞納すると、普通の賃貸物件と同じく立ち退きを請求される恐れがあります。中長期的な資金計画を立てて、無理のないプランで契約することが大切です。
⑤居住の継続・退去・買い戻し
先に解説した通り、普通借家契約なら継続して居住できますし、定期借家契約なら期間満了で退去します。また、契約期間中、自主的に退去することも可能です。
さらに、契約時に「買い戻し特約」を設定していれば、将来的に買い戻すこともできます。
買い戻し条件は業者によって異なりますが、買取時の金額から1.1~1.3倍される(つまり、一般的な市場相場になる)ことが一般的です。ただし、買取価格から据え置きであったり、長く住むほど安く買い戻せたりする業者もあります。
家賃の滞納など、賃貸借期間中に契約違反があったときには、買い戻し特約が無効となる可能性があるので注意しましょう。
【注意】家賃保証会社と契約する場合は審査がある
リースバック契約を締結するときには、注意すべき点があります。それは、賃貸借契約を締結するには、家賃保証会社の入居審査があることです。
万が一保証会社の審査に落ちてしまうと、リースバック自体が不成立となってしまいます。
保証会社は3種類に分類でき、それぞれ審査の厳しかが異なります。
家賃保証会社の種類 | 審査の傾向 |
---|---|
信販系(信販会社系列) | 個人信用情報の閲覧など、ローン審査同様の審査が行われるため、最も審査が厳しい。ローンやクレジットカードの滞納履歴などがあると5~7年は審査に通らない。 |
LICC系(一般社団法人全国賃貸保証会社に所属する会社) | 個人信用情報の審査はないものの、協会内で情報の共有を行っているため、他社での滞納履歴があると不利になる。 |
独立系 | 他の保証会社との情報共有や個人信用情報の閲覧を行っていないため、他と比べて審査に通りやすい。 |
リースバック業者によって提携している保証会社は異なるため、不安な場合は査定時に確認してみましょう。
家賃保証会社の審査で重視されるポイント
家賃保証会社の審査で重視されるポイントは、以下の通りです。
- ①家賃の支払い能力に問題はないか
- ②過去にローンの滞納や自己破産など信用情報にキズがないか
- ③素行は問題ないか
- ④新たな家主が掲げる居住のルールを順守できるか
①家賃の支払い能力に問題はないか
保証会社の審査で最重要視されるのが、家賃の支払い能力です。
一般的には、月収の1/3以下が適正家賃の目安となります。月収30万円の人なら、家賃10万円以下の物件までは十分支払い能力があるということです。
なお、無職などで収入がない場合には、貯蓄があるかなどで支払い能力を審査します。
②過去にローンの滞納や自己破産など信用情報にキズがないか
信販系の保証会社では、個人信用情報にキズがないかを見られます。
個人信用情報とは、金融機関や貸金業者の利用履歴をまとめた情報のことです。滞納や自己破産などの履歴は「事故情報」として一定期間登録され、審査に落ちる要因となります。
いつまで情報が残るかはその内容によりますが、とくに長い自己破産の場合、5~7年程度(古い取引だと10年間)は事故情報が残ります。
③素行は問題ないか
続いて、賃借人の素行に問題ないかです。
保証会社としては、もしも借人が家賃滞納などを起こしても、スムーズに手続きを進めたいと考えます。よって、口調が悪い人や態度が悪い人は審査段階で敬遠されるケースがあります。
④新たな家主が掲げる居住のルールを順守できるか
最後は、新たな家主が掲げる居住のルールを順守できるかです。
リースバック契約後は、所有権を手放しているため、建物などは自らの物ではないと理解する必要があります。例えば、増改築や室内DIYなどは、家主の許可がなければできません。
リースバックをしたら自分はあくまで「賃借人」なので、ルールには素直に従うようにしましょう。
審査に落ちてしまった場合の対処法
では仮に、保証会社の審査に落ちてしまった場合、どのような対処法があるのでしょうか?以下に、3つの対処法をご紹介します。
- ①審査に落ちた原因を調査する
- ②別の保証会社での審査を業者に交渉する
- ③リバースモーゲージや売却、買取など別の方法を検討する
①審査に落ちた原因を調査する
はじめに、審査に落ちた原因を調査します。
個人信用情報にキズ、過去の家賃滞納など審査に落ちた原因は必ずあります。直接的な原因を保証会社に尋ねることはできないので、心当たりがありそうなことを一つずつ思い返してみましょう。
②別の保証会社での審査を業者に交渉する
審査に落ちた原因を調査できたら、別の保証会社での入居審査を業者に交渉します。業者との交渉が成立し、保証会社の審査に通ればリースバック契約は問題ありません。
③リバースモーゲージや売却、買取など別の方法を検討する
家主との交渉が決裂すれば、別のリースバック業者を探すか他の売却方法などを検討するしかありません。
住みながら資金を調達する方法としては、自宅を担保に資金の借り入れをするリバースモーゲージがあります。また、自宅を手放す事にはなりますが、仲介での売却や買取などの売却方法を検討してもよいでしょう。
まとめ
リースバックは自宅の売却後に住み続けられる便利な制度である反面、家賃の支払い続けることや定期借家契約であればいずれ退去となる可能性があります。また、リースバックの利用には年齢制限はありませんが、概ね年配層が利用するケースが多くなります。
リースバック後の家賃は居住する限り継続的に支払うことが必要であるため、今の経済力だけではなく高齢となり収入が減ったときでも支払い可能な家賃設定にしておくことが理想です。
家賃補助を使える状況であれば積極的に活用し、経済的な負担を抑えておきましょう。
「リースバック 家賃補助」に関してよくある質問
-
リースバックで家賃補助を使うことは可能か?
リースバックで家賃補助を使うことは可能です。
リースバックは、売買契約と同時に賃貸借契約を締結します。リースバック業者に所有権移転後は、家賃が発生するため一般的に家賃補助の対象となります。 -
家賃補助をもらう条件とは何か?
家賃補助をもらう条件を会社と自治体に分けて紹介します。まずは会社です。会社から家賃補助を受けるには、主に以下に挙げる基準をもとに支給額が決められます。
・会社から家までの距離
・世帯主であること
・勤続年数
・役職
続いて自治体の場合には、そもそも家賃補助を行う自治体が限られていることや支給対象者が自治体毎に異なります。
詳細については、現在居住する自治体の公式ホームページを確認しましょう。なお、支給対象者は主に以下に挙げる人が多くなります。
・移住者であること
・学生であること
・高齢者世帯であること
・子育て世帯であること -
リースバック利用のメリットとデメリットは何か?
はじめに、リースバックのメリットは以下に挙げるとおりです。
・売却後も住み続けられる
・まとまった資金が手に入る
・買い戻すことも可能
続いて、デメリットです。
・買取額が安い
・契約によっては期間に制限がある
・家賃の支払いがある
詳細は、本編にてご確認ください。 -
実際にリースバックを利用するには、どのような手順を踏めば良いのか?
リースバックの流れは、以下に示すとおりです。
①リースバックを扱う不動産会社などの査定を受ける
②売却額に納得した不動産会社と売買契約を結ぶ
③売却した業者と賃貸借契約を結ぶ
④賃貸物件として、家賃を支払い居住する
⑤居住の継続・退去・買い戻し -
リースバックを利用するときに注意すべきことは何か?
リースバック利用時に注意すべきことは、賃貸借契約時に保証会社の審査があることです。保証会社によっては過去に住宅ローンの滞納があると、審査に通過しない可能性があります。そもそも保証会社の審査に通過しなければリースバックは成立しません。なお、保証会社の審査で重視されるのは、以下に挙げたとおりです。
・家賃の支払い能力に問題はないか
・過去にローンの滞納や自己破産など信用情報にキズがないか
・素行は問題ないか
・新たな家主が掲げる居住のルールを順守できるか