田舎の実家を処分する方法とは?相続放棄する場合の注意点も解説

「親が亡くなり、相続が発生した」ことを理由に、田舎の実家に誰も住まなくなることがあるでしょう。
もしも、田舎の実家に居住する予定がない場合は、できるだけ早く手放すべきかもしれません。
なぜなら、田舎の実家を放置すると「固定資産税や維持費がかかり続ける」「老朽化が進み倒壊の恐れがある」といったリスクがあるからです。
田舎の実家を処分するには、売却か相続放棄のどちらかになります。ただし、相続放棄には「相続発生から3ヵ月以内」の期限があるため注意しましょう。
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この記事のポイント
- 田舎の実家を処分する方法は売却か相続放棄の2つ。
- 田舎の実家が売れないときはリフォームや解体で売れやすくなる場合もある。
- 相続放棄は他の相続財産も放棄する必要がある。
田舎の家を処分する5種類の方法
現時点で利用していなければ、田舎の家は早急に処分した方がよいでしょう。
具体的には、次の5つの方法で田舎の家を処分できます。
- 「相続放棄」して家を引き継がずに手放す
- 「寄付」することで家を自治体などに譲り渡す
- 「空き家バンク」に登録して引き取ってもらう
- 「仲介業者」へ依頼して家を売却する
- 「買取業者」に家を直接買取してもらう
5種類の処分方法を順番に解説していきます。
1.「相続放棄」して家を引き継がずに手放す
1つ目は「相続放棄」して、田舎の家を引き継がずに手放す方法です。
まだ相続を終えていない場合「相続放棄」を用いれば、田舎の家を相続せずに済みます。
ただし、相続放棄にもデメリットが2つあるため、注意が必要です。
- 他の遺産も一切相続できない
- 相続放棄しても管理責任は免れない
つまり、相続放棄することが必ずしもベストな処分方法とはいえません。
それぞれのデメリットを順番に見ていきましょう。
他の遺産も一切相続できない
相続放棄する場合、すべての遺産の相続権を手放さなければなりません。
つまり「田舎の家は手放すが、他の財産は引き継ぐ」といった相続はできません。
「遺産をすべて相続するか」「遺産をすべて手放すか」の2択しか選べないのです。
そのため、他の相続財産も確認して「相続放棄するべきか?」を慎重に検討しましょう。
選択肢 | 向いているケース |
---|---|
相続する | プラスの遺産がマイナスの負債を上回る |
相続放棄する | マイナスの負債がプラスの遺産を上回る |
被相続人に借金がある場合でも、田舎の家を売れば借金返済に充てられるので、基本的には相続放棄せず、相続後に田舎の家だけを売却すればよいでしょう。
相続放棄しても管理責任は免れない
相続放棄しても、田舎の家に関する管理責任を回避できるとは限りません。
これについては民法でも、以下のように定められています。
民法940条
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
引用:e-Govポータル「民法940条」
つまり、他の相続人が田舎の家を相続しない限り、相続放棄しても管理責任はあなたの元に残ってしまうのです。
そのため、あなたが相続放棄しても他の相続人が遺産相続しなければ、田舎の家が「特定空き家」に指定されて、罰金や解体費用を請求されてしまう恐れがあります。
他人へ所有権を移せば、管理責任も同時に移転するので、相続放棄よりも田舎の家を相続してから売却する方が安全でしょう。
特定空き家の認定基準やリスクを知りたい人は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

2.「寄付」することで家を自治体などに譲り渡す
2つ目は「寄付」することで、田舎の家を自治体などに譲り渡す方法です。
田舎の家を寄付する場合、次のような相手へ譲ることができます。
- 自治体へ寄付する
- 個人へ寄付する
- 法人へ寄付する
田舎の家とはいえ、無償で寄付する場合は引き取ってくれる相手も多いでしょう。
ただし、寄付する場合も手続きに税金がかかるため、費用を一切負担せずに田舎の家を引き渡せるわけではありません。
各種手続きの税金を負担しなければならない
田舎の家を寄付する場合、さまざまな税金を負担しなければなりません。
まず、田舎の家を寄付する際の所有権移転登記には「登録免許税」がかかります。
「登録免許税」の税額は、田舎の家に関する課税標準額に比例します。
家の課税標準額は固定資産税評価額と同額なので、毎年届く「納税通知書」などで確認できます。
不動産売却では「登録免許税」を買主が負担することが多いですが、寄付の場合は「誰が登録免許税を負担するのか?」を寄付する相手と相談して決めましょう。
寄付する相手が法人の場合も「譲渡所得税」が課税される可能性があります。
家を寄付しても利益を得ていないのに、なぜ譲渡所得税が課税されるのかというと、税務署から「みなし譲渡所得」と扱われるからです。
例えば、200万円で取得した家が時価1,000万円になっていたとします。
この家をAさんが法人へ寄付する場合、税務署は以下のように扱います。
1. Aさんは、法人以外の第三者に土地を売り1,000万円を手にした。
2. Aさんは、その1,000万円を法人に寄付した。
3. 法人はその1,000万円で第三者から土地を買い戻した。
つまり、200万円で取得した土地を1,000万円で売却したと見なされるのです。
そのため、800万円の所得に対する譲渡所得税が課税されてしまいます。
譲渡所得税の税率は、田舎の家を所有していた期間によって変わります。
種類 | 所有期間 | 税率 |
---|---|---|
短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63%(所得税30.63%+住民税9%) |
長期譲渡所得 | 5年超 | 20.315%(所得税15.315% + 住民税5%) |
また、寄付する側の負担ではありませんが、個人へ寄付する場合は相手に「贈与税」がかかるため注意しましょう。
3.「空き家バンク」に登録して引き取ってもらう
3つ目は「空き家バンク」に登録して、田舎の家を引き取ってもらう方法です。
田舎の家を空き家バンクに登録して、その物件情報を見た買主から「住みたい」と申込があれば、売買契約を結んで、家を譲り渡すことができます。
不動産仲介業者で売却する場合、仲介手数料を支払う必要がありますが、空き家バンクの場合は無料で利用できる上、建物の修繕費用などを補助してもらえるケースもあります。
ただし、田舎の家を空き家バンクに登録するには、自治体による審査を通過する必要があり、審査結果によっては利用できないケースもあるため注意しましょう。
個人間取引になるためトラブルが起きやすい
基本的に空き家バンクでは、運営している自治体は売買契約に関与しません。
そのため、自分で買主と直接交渉する必要があり、不動産知識の少ない素人同士の取引となるので、トラブルに発展してしまうケースも少なくありません。
トラブル防止のため、地域の不動産業者に仲介を依頼している自治体もありますが、すべての自治体がこうした対策を施しているわけではないので注意しましょう。
4.「仲介業者」へ依頼して家を売却する
4つ目は「仲介業者」へ依頼して、田舎の家を売却してしまう方法です。
仲介業者へ依頼すれば、不動産業者のネットワークや広告を利用して、田舎の家を購入したい買主を探した後、スムーズに売買契約が進むようにサポートしてくれます。
近年では、古民家などの需要も高いため、田舎の家でも購入してもらえる可能性は十分にあります。
ただし、仲介業者への仲介手数料がかかる上、買主が見つからないと売却できないため注意しましょう。
田舎の家は需要が少ないため売れにくい
仲介業者で田舎の家を売却する場合、購入してくれる買主を探さなければなりません。
都心などの需要の高い物件に比べて、生活に不便なこともあり、田舎の物件は需要が少なく、なかなか買主が見つかりにくい傾向にあります。
買主が見つかるまで数ヶ月〜数年かかるケースもあるため、早く処分したい場合は「仲介業者」ではなく「買取業者」へ売却しましょう。
5.「買取業者」に家を直接買取してもらう
5つ目は「買取業者」に依頼して、田舎の家を直接買取してもらう方法です。
わざわざ仲介業者のように買主を探す必要がないので、査定で提示された買取価格や条件に納得した時点で、すぐに田舎の家を買取してもらえます。
買取した家は買取業者がリフォームなどを施した後、投資家などへ再販売されます。
いますぐに家を処分したい人や、解体費用を払いたくない人におすすめの方法です。
老朽化が激しい家でも買取業者ならスムーズな売却が可能
築年数が古く、老朽化が激しい家の場合、需要が下がって売れにくくなるのが一般的です。
しかし、買取業者は老朽化の激しい家でも、積極的に買い取ってもらえる可能性があります。
買取業者は自社で物件を買い取った後、リフォームなど施して高値で転売することで利益をあげます。
そのため、仲介業者では売れないような物件でも、買取業者なら売却できるというケースがあるのです。
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田舎の実家を相続放棄する際の注意点
田舎の実家に居住する予定がなければ、相続放棄を検討するかもしれません。
しかし、実家を相続放棄する際は以下のことに注意する必要があります。
- 相続放棄すると他の財産もすべて相続できない
- 相続放棄には「相続発生から3ヵ月以内」の期限がある
- 相続放棄しても家の管理責任からは逃れられない
次の項目から、上記3つの注意点を順番に見ていきましょう。
相続放棄すると他の財産もすべて相続できない
さきほども説明した通り、相続放棄はすべての財産・負債の相続権を放棄する手続きです。
つまり、田舎の家を相続放棄するには、他の財産もすべて相続放棄しなくてはなりません。
ですので、実際に相続放棄を検討する際は、家以外の財産がどの程度遺されているかを確認すべきです。相続できる財産が「田舎の家のみ」や「田舎の家とわずかな預貯金」などの場合は、相続放棄を検討してもよいです。
一方、田舎の家だけでなく、数千万円の預貯金が遺されている場合は、相続放棄しないほうが結果的に得できるでしょう。
相続放棄には「相続発生から3ヵ月以内」の期限がある
相続放棄することで財産とまとめて、田舎の家を手放せます。
ただし、相続放棄をおこなうには「被相続人が亡くなった事実を知ってから3ヵ月以内」に手続きをしなければなりません。
この期限内に手続きしない場合、相続放棄が認められにくくなるため注意が必要です。
民法915条
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
引用:e-Govポータル「民法915条」
ただし、以下のようなケースであれば、期限を過ぎていても相続放棄できる可能性があります。
- 3ヵ月調査しても相続財産の確定ができなかった
- 負債がないと被相続人に聞かされていた
- 被相続人と疎遠になっており、財産や負債の状態を知らなかった
相続放棄における延長の手続きには法知識が必要です。
相続放棄を検討しているなら、まずは弁護士や司法書士などの専門家に相談してみましょう。あなたの状況にあわせて、相続放棄すべきかアドバイスをもらえます。
相続放棄しても家の管理責任からは逃れられない
相続放棄をすることで、家の相続権は手放せますが「管理責任」が残ることに注意しましょう。
誰も住まない空き家を放置してしまうと、倒壊の危険性があったり、不法侵入者に滞在される恐れがあるなど、周囲に悪影響を及ぼしてしまいます。
上記のような悪影響を防ぐため「相続放棄しても、相続人に財産の管理責任が残る」と法律で定められています。
民法940条
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
引用:e-Govポータル「民法940条」
つまり、田舎の家を相続放棄したとしても、次の相続人が管理するまで、自ら管理しなくてはなりません。
実家の管理責任から逃れるために相続放棄する場合は「相続財産管理人」を選任する必要があります。
詳しくは、以下の記事を参考にしてみてください。

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田舎の家を放置することで起こりうるリスク
「相続したけど、居住する予定がないからとりあえず放置しておこう・・・」と考える人も多いかもしれません。
しかし、利用予定のない田舎の家を放置すると、以下のようなリスクが発生します。
- 固定資産税や維持費がかかり続ける
- 老朽化が進み倒壊の恐れがある
次の項目から、それぞれのリスクを詳しく解説します。
固定資産税や維持費がかかり続ける
たとえ居住していなくても、物件の所有者には毎年、固定資産税が課せられます。
他にも、物件の劣化を防ぐためのメンテナンスや清掃費用も必要になるでしょう。
人が住んでいない物件は、劣化が激しいため想定よりも多くの維持費が必要になるかもしれません。
特定空き家に指定されると税率がおよそ6倍になる
住宅用地には「固定資産税の軽減制度」があるため、居住用の建物がある土地の固定資産税は1/6程度になっています。
ただし、特定空き家に指定されると軽減制度の対象外になるため、固定資産税が高くなる恐れがあります。
倒壊の恐れがある物件や、景観を損なっている物件は、特定空き家とみなされやすいです。
特定空き家に指定されることで、これまでの固定資産税と比べて「およそ6倍」の支払いが求められる恐れがあります。
安全面だけでなく税率の面からも、空き家を放置することは危険だといえます。
特定空き家の認定基準やリスクを知りたい人は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

参照:国土交通省ホームページ「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」
老朽化が進み倒壊の恐れがある
家を放置することで、老朽化が進み倒壊の恐れがあることに注意が必要です。
とくに、人が居住していない空き家は、老朽化が早まるといわれています。
住宅には耐用年数があり、時間が経つことで強度が下がっていきます。なかでも、木造住宅は老朽化が早く、倒壊の危険性が高いです。
老朽化した物件が倒壊すると、近隣住宅に二次被害を与える恐れもあります。そうなると、近隣住民から損害賠償請求を受けてしまうため、早急に手放した方がよいでしょう。
まとめ
田舎の実家を処分するには「相続放棄する」か「売却する」必要があります。
相続放棄をおこなうには、家以外の財産も放棄する必要があります。家以外の財産が少なければ、相続放棄を検討してもよいでしょう。
また、田舎の実家を売却する際はリノベーションしたり、家を解体して更地にしておけば、売れにくい田舎の家でも売却できます。
なお、手間なくスムーズに実家を手放したい場合は、不動産の買取業者に直接売却することがおすすめです。
売却が困難な田舎の土地でも、買取業者ならスムーズに買取してもらえるので、一度無料査定で相談してみるとよいでしょう。
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田舎の実家を処分する際によくある質問
-
田舎の実家を処分するには、どんな方法があるの?
田舎の実家を処分するには「相続放棄する」か「売却する」検討をしましょう。ただし、相続放棄には「相続発生から3ヵ月以内」の期限があるため、期限を過ぎている場合は、田舎の実家を売却することをおすすめします。
-
田舎の実家を手間なく処分したい・・・
不動産の買取業者に依頼することで、手間なくスムーズに田舎の実家を処分できます。仲介業者では買主が見つけられない家でも、買取業者ならそのまま買い取ってくれます。
-
相続放棄すると実家を処分できる?
相続放棄しても「管理責任」が残るため、実家を処分できない恐れがあります。管理責任とは、地域の防犯や安全を損なわせないため、持ち主が家を適切に管理しなければならない責任のことです。相続放棄することで実家を処分したい場合は、弁護士に相談するとよいです。
-
田舎の実家が売れないときはどうすればいい?
田舎の実家がなかなか売れないときは「リフォーム・リノベーションしてから売却する」「解体して更地にしてから売却する」ことも検討しましょう。売却前に一手間加えることで、買主がつきやすくなります。
-
処分の手続きが面倒なので、田舎の実家を放置してもいい?
田舎の実家を放置すると「固定資産税や維持費がかかり続ける」「老朽化が進み倒壊の恐れがある」というリスクがあります。とくに、実家が特定空き家に指定されると、税率がおよそ6倍になるため注意が必要です。