共有持分売却の必要書類一覧|委任状の書き方もひな型付きで解説

共有持分を売却するときは、いくつかの書類を用意しなければいけません。書類によっては、取得に時間がかかる場合もあります。
この記事を参考に、どのような書類が必要で、どこで取得するか把握しておきましょう。
また、書類の準備や作成には、法律的な専門知識が必要なものもあります。
自分で準備するのが不安であれば、弁護士などに相談するのもよいでしょう。
弁護士と連携している共有持分専門の買取業者なら、持分売却に必要な準備もスムーズに進められます。無料査定を利用して、売却のアドバイスを聞いてみましょう。
この記事のポイント
- 共有持分の売却には、不動産の権利証や身分証明書、住民票などが必要。
- 土地の境界があいまいなら境界確定測量をおこなう。
- 売買契約の締結や物件引き渡しに立ち会えない場合は、委任状を作成して代理人を立てる。
共有持分の売却に必要な書類
共有持分の売却には以下の4つが必要になります。
- 不動産の権利証
- 土地測量図及び境界確認書(土地の場合)
- 身分証明書と住民票
- 印鑑・印鑑登録証明書
それぞれの入手方法も含めて詳しく解説していきます。
①不動産の権利証
不動産の権利証は、その不動産の所有者であることを証明する書類です。
持分を取得した際に、法務局から登記名義人に交付されています。
平成17年以降に取得した共有持分であれば、権利証ではなく「登記識別情報」が登記名義人に発行されています。
権利証とは書かれていませんが、同じ扱いとなるものです。
登記識別情報は登記識別情報通知という書面に記載されている、12桁の英数字の組み合わせを指します。
権利証ではなく登記識別情報が発行されているのであれば、持分の売却時には登記識別情報通知そのものがなくても12桁の登記識別情報が分かれば問題ありません。
権利証を紛失した場合の対処法
権利証を紛失してしまった、もしくは登記識別情報が分からないという場合でも共有持分の売却は可能です。
ただし、どちらも再発行できないため、別の方法で共有持分の所有者であることを証明しなければいけません。
紛失した場合に多く取られている方法として、司法書士や弁護士に証明書を作成してもらう方法があります。
司法書士などに作成してもらった証明書は、共有持分の所有者であることを証明する書類として権利証の代わりとなるのです。
ただし費用は5万円~10万円程度かかります。
②土地測量図及び境界確認書(土地の場合)
土地の共有持分を売却する場合は、土地測量図及び境界確認書も必要です。
これらは土地の面積と隣地との境界を示す書類です。
「ここまでが自分の土地だ」と思っていても実際は違うということもあるため、境界が確定していないとトラブルになることもあります。
もしもまだ境界が曖昧だということであれば、土地を測量して境界を確定しなければいけません。
土地境界確定測量の方法
境界が確定していない不動産を売却する際には、土地家屋調査士に依頼して土地境界確定測量を行います。
土地境界確定測量は、約1ヶ月~2ヶ月の期間が必要です。
隣地所有者の立ち会いも必要なためお互いのスケジュールも合わせなければいけません。
状況によっては3ヶ月~4ヶ月かかってしまうこともあるため、共有持分の売却を検討しているなら早めに動く必要があります。
土地境界確定測量はおおまかに以下の流れでおこなわれます。
土地家屋調査士が隣地所有者に挨拶し、測量計算する
↓
関係者立会いで境界に関する説明を受ける
↓
土地境界確定測量の結果を基に土地測量図や境界確認書が作成される
土地境界確定測量の費用は土地の面積などによって大きく変動します。
相場は一般的な土地の場合で30万円前後~、隣地が公共用地であればさらに高くなり60万円前後~です。
③身分証明書と住民票
共有名義の不動産は共有持分の所有者1人ずつに所有権があるため、売却の際には共有者全員の身分証明書が必要です。
運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなどの本人確認書類を用意します。
登記されている住所と現住所が異なる場合は住民票の写しも用意しなければいけません。
④印鑑・印鑑登録証明書
売買契約書には共有者全員の実印を押印します。
そして実印であることを証明するために、印鑑登録証明書も必要です。
印鑑登録証明書は自治体の窓口で申請すればその場で発行してもらえるので、取得は難しくないでしょう。
ただし売買契約の際には3ヶ月以内のものが必要となるため、売却の目処がたってから用意します。
共有者全員が立ち会えない場合は委任状を書いてもらうことで売却ができる
共有持分の売却には共有者全員の立ち会いが必要ですが、「入院している」「海外にいる」などの理由から全員が立ち会えないケースもあります。
このような場合は、委任状を作成して代理人を選任すれば売却ができます。
有効な委任状とするためには必要な内容を漏れなく記載しなければいけませんし、委任状に貼付しなければいけない書類もあります。
そこでここからは、委任状にまつわる以下のことを解説していきます。
- 委任状のフォーマット
- 委任状の記載内容
- 委任状に必要な添付書類
- 代理人の選び方
これらを知ることで、共有者全員が立ち会えない場合の不安が解消するはずです。
委任状のフォーマット
委任状を作成し代理人を選任すれば、共有持分の売却におけるすべての手続を任せられるようになります。
まずは委任状を作成しなければいけませんが、委任状には法律で定められているフォーマットはありません。
ただし、効力のある委任状にするには「誰が誰に対して、どの不動産の、どのような内容を委任するか」が明らかでなければいけません。
記載すべき項目がいくつもあるので、何を記載しなければいけないのかをしっかりと理解して作成しましょう。
売却先の不動産会社のフォーマットに合わせる
不動産会社によっては委任状のフォーマットを用意していることもあります。
この場合、用意してあるフォーマットでなければ売却をキャンセルされてしまうこともあるようです。
勝手に別のフォーマットに変えることはせず、記載したい項目などがあるのであれば事前に不動産会社に相談しておいたほうがよいでしょう。
不動産会社がフォーマットを用意していないのであれば、自作のフォーマットで委任状を作成します。
共有名義不動産を売却する際の委任状のひな型例
不動産会社が委任状のフォーマットを用意していない、もしくは個人間で売買するので自分で用意しなければいけないということであれば、こちらのひな形を参考に作成してください。
委任状は「手書き作成」「パソコン作成」どちらでも構いません。
委任状がすぐに作成できるよう、ひな形のWordファイルを用意しました。
以下のリンクからダウンロードできますので、パソコンで作成する方はぜひご利用ください。
委任状の記載内容
ひな形を例に、上から順に記載内容を解説していきます。
①.タイトルは「委任状」とする
タイトルは「委任状」と記載します。
用紙中央に記載し、何の書類かがひと目で分かるようにしましょう。
②.受任者の住所・氏名を記載する
受任者(代理人)が誰であるかが明確に分かるよう、住所・氏名を正確に記載します。
受任者が署名するのではなく、誰を受任者にするのかを委任者が書きます。
②.委任する内容を明記する
ひな形にあるように、「誰に、どの不動産の、何の手続きを」委任するのかを明記します。
委任する権限については分かりやすく箇条書きにします。
ひな形では箇条書きにして以下の内容を記載しています。
- 売買契約に関する権限
- 登記等に関する権限
- 売買代金受領に関する権限、及びその他必要となる権限
齟齬なく伝えることが目的ですので、文章は変わっても問題ありません。
③.登記事項証明書を参考に不動産の情報を記載する
売却する不動産とはどの不動産なのかを正しく記載します。
正しく記載するには法務局で登記事項証明書を取得し、登記事項証明書に記載されている通りに記載しなければいけません。
また、売却する不動産が土地なのか建物なのかで記載内容が異なります。
【売却する不動産が土地の場合】
- 所在
- 地番
- 地目
- 地積
【売却する不動産が建物の場合】
- 所在
- 家屋番号
- 種類
- 構造
- 面積(床面積)
土地と建物どちらも含む場合はひな形例のように両方を記載します。
登記事項証明書は最寄りの法務局の窓口で交付請求できる他、郵送やオンラインでの交付請求もできますので、臨機応変に活用するとよいでしょう。
登記事項証明書の交付請求には認印や本人確認資料などを用意する必要はありません。
窓口申請と郵送申請であれば600円、オンライン申請で自宅などに郵送してもらうのであれば500円の手数料がかかります。
④.委任者の住所・氏名を記載する
委任者の住所と名前を記載し、「以上」で締めます。
これは他人が加筆して改ざんすることのないようするためです。
委任者の住所・氏名は委任者が手書きし、実印を押印します。
⑤.日付を記載する
最後に委任状を作成した日付を記載します。
委任状の有効期限は決まっていません。
しかし、公的機関などでは3ヶ月を過ぎた委任状は受け取ってもらえないことから、一般的に委任状の有効期限は3ヶ月以内とされています。
委任状に必要な添付書類
委任状を作成し、代理人を選定するためには委任状の他にも必要な書類があります。
必要な書類は以下5つです。
- 委任者の実印が押された委任状
- 委任者と受任者の実印・印鑑登録証明書
- 委任者の住民票
- 委任者と受任者の本人確認書類
- 売却する不動産の登記事項証明書
①.委任者の実印が押印された委任状
不動産会社のフォーマットで作成した委任状、もしくは先ほどのひな形を参考に作成した委任状など、どのようなフォーマットで作成したものでも必ず委任者の実印が押印されたものを用意します。
②.委任者と受任者の実印・印鑑登録証明書
委任状には委任者の実印しか押印していませんが、代理人を選定するためには委任者と受任者、両方の実印と印鑑登録証明書が必要です。
印鑑登録証明書は、印鑑登録証(印鑑登録カード)を役所や行政サービスコーナーの窓口に持参して申請すれば数百円で取得できます。
印鑑登録証は印鑑登録をした際に交付されています。
顔写真付きのマイナンバーカードがあればコンビニでも取得できますので、窓口時間を気にせず取得できます。
③.委任者の住民票の写し
委任者の住民票の写しも貼付しなければいけません。
住民票の写しも役所や行政サービスコーナーの窓口で申請すれば数百円で取得できます。
マイナンバーカードがあればこちらもコンビニ取得できます。
④.委任者と受任者の本人確認書類
委任者と受任者、両方の本人確認書類が必要です。
本人確認書類は運転免許証やパスポートなどを用意します。
顔写真付きの本人確認書類を用意できない場合は不動産業者に相談し、何を貼付するかを確認しましょう。
⑤.売却する不動産の登記事項証明書
登記事項証明書は委任状の不動産情報を記載する際に参考にしたものです。
登記事項証明書も貼付します。
代理人の選び方
委任者が委任状に名前を書いて指名すれば代理人になれます。
しかし、共有持分という財産の売却を代理人に任せるわけですから、代理人は慎重に選ばなければいけません。
委任状は決定権を代理人に委ね、代理人が決定したことは自分が決定したことと同じであるという意味になります。
もしも自分の意思と反する決定を代理人が下してしまうとトラブルになりかねません。
代理人の選定は信頼できる人、そして自分の思いを正確に伝えられる人を選びましょう。
①.家族や親族などを代理人に選定する
共有持分の売却では、共有者が親族ということは珍しくありません。
このように共有者のうちの1人が代理人になるケースは多いです。
もしくは、弟の息子が代理人となり兄と一緒に売却手続きを進めるなど、信頼できる近しい親族を代理人に選定します。
②.弁護士や司法書士などの専門家に依頼する
親族で共有しているが共有者間の関係がよくない、夫婦で共有していたが離婚するので売却したい、そもそも共有者とは親戚関係ではないというケースでは、弁護士や司法書士などの専門家に代理人を依頼するとよいでしょう。
弁護士や司法書士に依頼すると数万円の依頼料が発生しますが、委任状の作成から代理人までを任せられるのでミスなくスムーズに進められるので安心です。
まとめ
共有持分を売却する際の必要書類は以下の4つです。
- 不動産の権利証
- 土地測量図及び境界確認書(土地の場合)
- 身分証明書と住民票
- 印鑑・印鑑登録証明書
共有持分の売却では共有者全員が売買の取引に同席しなければいけませんが、さまざまな事情から同席できないこともあります。
その場合は委任状を用意し、代理人を選定することで売却が可能です。
代理人に委任する場合は、さらに以下5つが必要です。
- 委任者の実印が押された委任状
- 委任者と受任者の実印・印鑑登録証明書
- 委任者の住民票
- 委任者と受任者の本人確認書類
- 売却する不動産の登記事項証明書
代理人は近しい親戚や司法書士などの専門家を選定するとよいでしょう。
不動産業者のなかには司法書士などの専門家と連携して売買手続きを進めてくれる業者もあります。
どこの司法書士に依頼すればよいのか分からないという場合は、専門家と連携している不動産業者を選ぶのがおすすめです。
共有持分を売却する際の必要書類FAQ
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登記識別情報通知が送られてきた記憶がありません。必ず共有者全員に送られてくるものですか?
共有者全員で登記申請するのではなく、共有者のうち1人が代表で登記申請するケースがあります。この場合、申請者にしか登記識別情報通知は交付されません。このように初めから交付されていないケースもありますが、あとから交付することはできないため紛失の場合と同様の対応を取らなければいけません。
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土地測量図や境界確認書を紛失しており、隣地との境界がわかりません。
土地を売却するのであれば、境界の確認は必須です。土地家屋調査士に土地境界確定測量を依頼しましょう。
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委任状に捨印は押さなくてよいのでしょうか?
捨印はあらかじめ余白部分にはんこを押しておき、訂正があった場合の訂正印として使えるものです。捨印が押してあると委任状の内容を受任者に勝手に訂正されてしまう恐れがあるため、捨印は押さない方がよいでしょう。
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共有者のなかに認知症を患っている人がいます。委任状で対応できるでしょうか?
認知症の人の場合は委任状で対応することはできません。家庭裁判所に申し立てて「成年後見人」を選出し、成年後見人が代理で手続きをしなければいけません。
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