共有名義人が固定資産税を滞納したまま死亡!どう対応すべきか解説

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共有者が固定資産税を滞納したまま亡くなった場合、滞納金の支払いはどうなるか疑問に思うことでしょう。

そもそも、共有名義不動産の固定資産税は、共有者全員が持分割合に応じて負担するのが原則です。共有者の1人が滞納すれば、他の共有者が肩代わりします。

そして、肩代わりした負担は、滞納した共有者に請求できます。滞納した共有者が亡くなれば、その相続人に請求が可能です。

しかし、滞納した共有者やその相続人に支払い能力がない場合、請求しても肩代わりした分を精算してもらえない恐れがあります。

滞納分の支払いが足りないときは、持分を売却するなどの方法で納税資金を準備するとよいでしょう。

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この記事のポイント

  • 共有名義不動産の固定資産税は、持分割合に応じて共有者全員が分担する。
  • 代表者が各共有者から集金し納付する。
  • 共有者の誰かが支払わない場合は、他共有者が肩代わりする必要がある。
  • 滞納していた共有者が死亡した場合、支払い責任は相続人に引き継がれる。

共有名義不動産の固定資産税は代表者がまとめて納税する

共有名義不動産の固定資産税は地方税法の規定により、共有者全員が固定資産税の納税義務を負い、連帯して納付する「連帯納税義務」となっています。

例えば、3人の共有者A,B,Cで所有している不動産の固定資産税が10万円だったとします。

このとき、A,B,Cそれぞれに10万円の納税義務があり、1人が10万円を納付すれば残りの人が負っていた納税義務は消滅します。

そのため、共有名義不動産の固定資産税は持分に応じて共有者それぞれに課税されるのではなく、代表者がまとめて納税します。

また、納付書も代表者のみに送付されます。

共有名義不動産の代表者を選ぶ際のポイント

共有名義不動産を新規で登記した際には、代表者を指定し、市区町村に届け出ます。

代表者は共有者のうち誰でもよいですが、基本的に下記の優先順位で決めるとよいでしょう。

  1. 共有名義不動産に居住している人
  2. 共有名義不動産が所在する地域内に居住している人
  3. 持分が一番多い人
  4. 共有名義不動産の世帯主
  5. 登記簿で一番上に名前を記載する人

まず、実際に居住している人が代表者になるのは納得しやすいと思います。固定資産税だけでなく、そのほかの手続きや連絡も居住している人が窓口となるほうがスムーズです。

次に、誰も共有名義不動産に居住していない場合には、共有名義不動産の所在と同じ地域に居住している人を代表者にします。固定資産税は地方税ですので、同じ管轄地域内に住んでいる方が手続きや問い合わせのときに便利なことが多いです。

どちらかに当てはまる人が共有者内にいない場合には、持分割合の大きさ、世帯主、登記簿に記載された名前順から代表者を決めます。

ここで説明した優先順位は、代表者を届け出ない場合に、納税通知書の送付先を市区町村が独自で決定する優先順位と近いものです。

代表者を話し合いで決める際には参考にしてみてください。

納税した固定資産税はあとから他の共有者に請求できる

ここまで説明してきたように固定資産税は代表者がひとまとめに納税します。

とはいえ、代表者が固定資産税を全額負担する必要はありません。持分割合に応じた負担をあとから他の共有者に請求できます。

もしも、固定資産税額が15万円の不動産をA(代表者),B,Cで共有しており、それぞれの持分割合が3分の1だった場合には、Aが15万円納税したあと、B,Cに5万円を請求できます。

万が一払ってもらえない場合には共有不動産のトラブルに慣れた弁護士へ相談しましょう。当事者間で直接、督促するよりも専門家に任せる方が解決しやすいです。

固定資産税を滞納している人が死亡したら滞納金はどうなる?

固定資産税を滞納している人が死亡したからといって、滞納金は免除されません。原則、相続人が滞納金を納める必要があります。

また、相続人がいなければ、死亡した人の滞納金は共有持分とあわせて他共有者に帰属します。

次の項目から、詳しく解説していきます。

死亡した人の滞納金でも相続人・他共有者に支払い義務がある

滞納金は借金と同じく「マイナスの財産」として、相続人に承継されます。複数の相続人がいる場合には法定相続割合に従って承継されることが原則です。

とはいえ、最初に説明したように固定資産税は「連帯納税義務」となっているため、相続人がそれぞれ滞納金を分割して納めるわけではありません。

代表者が一括して滞納金を支払い、そのあと相続人の中で精算します。

遺産分割協議をしていれば、代表者が他の相続人が負担すべき滞納金分を多めに相続すると、あとからの精算がなく対応が楽になるでしょう。

延滞税も加算されるので可能な限り早く納めるべき

相続人が承継する固定資産税の滞納金には、延滞税が含まれます。

延滞税は相続した時点からではなく、滞納が発生した時点からの計算となります。延滞金の計算方法は、納付期限を過ぎた期間によって異なり複雑です。

正しい金額は共有名義不動産が所在する市役所や税理士へ確認する方が確実です。

また、延滞税は「完納する日」までで計算するので、可能な限り早く納めましょう。

参照:延滞税の計算方法|国税庁

滞納し続けると預貯金・給与・不動産を差し押さえられる恐れがある

固定資産税を滞納していると20日以内に「督促状」が届きます。そのまま納税しないでいると「催告書」が届きます。

それでも納税しなければ、市役所は滞納者の財産を差し押さえるための調査を開始します。この調査は法律に基づいたもので、金融機関への預貯金に関する問い合わせもおこなわれ、その際に滞納者の了承は不要です。

そして、調査結果をもとに市役所から「いつまでに納税しなければ、どのようなものを差し押さえる」内容の「差押調書」が届きます。

固定資産税の滞納金は、たとえ自己破産しても免責にはなりません。気づいたタイミングで速やかに納税しましょう。

相続人がいる場合は相続人に「共有持分と納税義務」が相続される

滞納者が亡くなったとき、相続人がいればその人に「共有持分と納税義務」が相続されます。

相続人が複数いる場合、遺産分割協議で「特定の1人が共有持分を相続する」とできますが「特定の1人が納税義務を相続する」ことはできません。

相続する共有持分の割合によらず、納税義務は相続人全員が承継します。

相続放棄すれば相続人に対する納税義務はなくなる

金銭状況によっては「納税義務を相続しても現金がないので支払えない」こともあると思います。

そのような場合には「相続放棄」を検討しましょう。

相続放棄すればプラスの財産も相続できませんが、滞納金といったマイナスの財産も相続せずに済むため、納税義務はなくなります。

ただし、相続放棄の受理が翌年以降となり、1月1日時点での課税台帳に登録されてしまった場合には、相続放棄していても納税義務を負うので注意してください。

相続人がいなければ他共有者に「共有持分と納税義務」が帰属する

滞納者が亡くなったとき、相続人がいなければ他共有者に「共有持分と納税義務」が帰属します。

帰属する割合は他の共有者と等分です。

例えば、3人の共有者A,B,Cがそれぞれ持分3分の1ずつで所有している不動産があったとします。

Aが亡くなり、Aに相続人がいない場合にはB,CにAの共有持分と納税義務が帰属するので、B,Cの持分は2分の1ずつとなり、固定資産税も2分の1ずつ負担します。

このように、相続人のいない滞納者が亡くなっても納税義務は消滅しません。

固定資産税を滞納したまま共有者が死亡した場合の対応

それでは、固定資産税を滞納したまま共有者が死亡した場合に、どのような対応をすればよいのでしょうか。

滞納した固定資産税が免除されるわけではありませんので、次に説明する3つの対応が考えられます。

  1. 他の共有者が代わりに納税して、相続人に請求する
  2. 遺産で固定資産税を納税する
  3. 現金が遺されていない場合は「被相続人の共有持分」の売却益から納税する

次の項目から、1つずつ解説します。

他の共有者が代わりに納税して相続人に請求する

共有名義不動産の固定資産税は、共有者全員に納税義務があります。

そして、延滞税は滞納している固定資産税を完納する日までで計算します。

相続が発生して確定するまでには日数がかかり、その間も延滞税は加算され続け、財産差し押さえのリスクも高まります。

そこで、相続に関する諸々の手続きが完了する前に先行して、他の共有者が代わりに納税することで納税義務を消滅させます。

この方法であれば、共有名義不動産を差し押さえられるリスクをなくしたあとで、あわてずに滞納金分を相続人に請求できます。

遺産で固定資産税を納税する

延滞税を含めて固定資産税の滞納金を超える遺産があれば、そこから納税しましょう。

相続人が複数いて、遺産分割協議が長引きそうな場合は、先に代表者が立て替えて納税し、立て替え分は遺産から受け取ります。

このような対応であれば、延滞税の加算を最小限にできます。

現金が遺されていない場合は「被相続人の共有持分」の売却益から納税する

現金が遺されていない場合には「被相続人の共有持分」を売却して、その代金から納税する方法があります。

しかし、共有持分のみの売却はなかなか買主が見つかりません。その理由は、共有持分のみを取得しても、その不動産を自由に利用できないからです。

納税のため速やかに現金化する必要がある場合には、買取業者への売却をおすすめします。

弁護士と連携している買取業者に相談すれば、相続登記が済んでいない共有持分でも、売却のアドバイスをしてくれます。

まとめ

固定資産税を滞納したまま亡くなっても、滞納分が免責されることはありません。延滞税も含めて相続人が承継します。

相続人がいない場合には、他の共有者に被相続人の共有持分と納税義務が帰属します。

そして、固定資産税を滞納したままでいると、預貯金や給与、不動産などの財産を差し押さえられる恐れがあります。

手元に納税できるだけの現金か十分な遺産があれば、速やかに納税しましょう。現金がない場合も「被相続人の共有持分」を売却して、その代金から納税してください。

共有不動産の固定資産税についてよくある質問

  • 共有不動産の固定資産税はどう払う?

    共有不動産の固定資産税は代表者がまとめて納税します。そして、代表者は納税した固定資産税はあとから他の共有者に請求することで、固定資産税を納めます。

  • 他共有者が固定資産税を払ってくれない・・・

    払ってもらえない場合には共有不動産のトラブルに慣れた弁護士へ相談しましょう。当事者間で直接、督促するよりも専門家に任せる方が解決しやすいです。

  • 固定資産税を滞納している人が死亡したら滞納金はどうなる?

    固定資産税を滞納している人が死亡したからといって、滞納金は免除されません。相続人・他共有者に支払い義務が相続・帰属します。

  • 固定資産税を滞納した共有者が死亡したら、どうやって払えばいいの?

    「他の共有者が代わりに納税して、相続人に請求する」「遺産で固定資産税を納税する」ことで、固定資産税を支払いましょう。

  • 他共有者が滞納していた固定資産税を払う余裕がないのですが・・・

    「被相続人の共有持分」を売却して、その代金から納税する方法があります。納税のため速やかに現金化する必要がある場合は、訳あり物件専門の買取業者に相談するとよいです。→相続時の共有持分でも売却可能な買取業者はこちら