共有名義人が死亡したら固定資産税はどうなる?今後の払い方について

不動産の共有名義人が亡くなると、固定資産税の納税義務は持分と一緒に、相続人に承継されます。
したがって、固定資産税は相続人が納めなければなりません。
ただし、亡くなった人に相続人がいない場合は、他共有者に持分と納税義務が帰属します。
相続人も他共有者も、共有不動産の固定資産税を納めたくない場合は、持分を売却しましょう。
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この記事のポイント
- 共有不動産の固定資産税は、各共有者が持分割合に応じて負担する。
- 共有名義人の1人が亡くなったら、その人の相続人が支払い義務を承継する。
- 相続人がいなければ、他の共有者に持分と納税義務が帰属する。
- 亡くなった人が共有名義不動産の代表者であれば、代わりの代表者を設定するために届け出が必要。
目次
共有名義人が死亡したら固定資産税の納税義務は相続人に承継される
固定資産税は相続の対象となるため、固定資産税の納税義務は相続人に承継されます。
共有不動産の固定資産税は共有者全員に納税義務があり、共有持分割合に応じて負担することが一般的です。
そのため、相続人は亡くなった人が納めるはずだった固定資産税を支払う必要があります。
もしも、相続人が誰もいなければ、他の共有者に「持分と納税義務」が帰属します。
それぞれ詳しく解説します。
相続登記が完了するまでは相続人全員が納税義務者となる
共有名義の不動産を相続すると、相続人は亡くなった人が本来負担すべきだった固定資産税を納めなければなりません。
相続登記していなければ、共有持分の所有者が確定していない状態なので、確定するまで納税を先延ばしにできると思う人もいるでしょう。
しかし、相続登記が完了するまでは相続人「全員」が納税義務者となります。
なぜなら、相続登記していなければ登記上は「相続人全員の共有財産」となるからです。
相続人それぞれの納税額は法定相続割合に従うのが原則
相続人全員が納税義務者となっている場合の、納税額は法定相続割合に従うのが原則です。
「相続人が2人だから、2分の1ずつ負担する(人数で均等に分割する)」わけではありません。
したがって、納税額の負担割合も妻が2分の1、子どもが4分の1ずつとなります。
なお、固定資産税は相続財産ですので、その支払いも亡くなった人の預貯金など相続財産から支払って問題ありません。
相続人がいなければ他の共有者に「持分と納税義務」が帰属する
相続人が誰もいない場合でも、亡くなった人が納めるべきだった固定資産税の納税義務はなくなりません。
相続人が誰もいない場合は他の共有者に、亡くなった人の「持分と納税義務」が帰属します。
したがって、他の共有者はいままでの持分割合に追加して、帰属することになった持分割合に応じた固定資産税を負担することになります。
1人が亡くなって、その人の持分と納税義務が帰属する場合には、残された2人が持分2分の1ずつの所有です。
このときの固定資産税はそれぞれ半分ずつ負担します。
亡くなった人が共有名義不動産の代表者であれば対応が必要
これまで説明した通り、共有名義不動産の固定資産税は代表者がまとめて納税します。共有者それぞれに納税義務がありますが、別々に納めるわけではありません。
そのため、亡くなった人が共有名義不動産の代表者であれば別途、対応が必要です。
その対応は代表者の地位を相続人が承継するかどうかで下記のように異なります。
- 【相続人が引き続き代表者となる場合】相続人代表者指定届を提出する
- 【他の共有者が代表者となる場合】共有者代表指定届を提出する
それぞれの手続きについて説明します。
【相続人が引き続き代表者となる場合】相続人代表者指定届を提出する
相続人が引き続き代表者となる場合は、市役所に「相続人代表者指定届」を提出します。
相続人代表者指定届を提出することで、亡くなった人に届くはずだった固定資産税納税通知書等の書類が直接届くようになります。
相続人代表者はあくまで、遺産分割協議で相続人が確定するまでの一時的なものです。相続人代表者になったからといって、共有持分を必ず相続しなければならないという決まりはありませんので安心してください。
もしも、相続人代表者指定届を提出しなければ、市役所が相続人の中から1人を代表者と指定して書類を送付します。
なお、固定資産税の基準日である1月1日までに相続登記が完了するのであれば、相続登記のみで問題ありません。
【他の共有者が代表者となる場合】共有者代表指定届を提出する
続いて、相続人ではなく他の共有者が代表者となる場合です。
この場合には、代表者を決めて「共有者代表指定届」を市役所に提出します。
共有者代表指定届とは、亡くなった人の「固定資産税納税通知書」などの書類を受け取る代表者を、指定するための届出書です。
もしも、相続人代表を決めなければ、市役所に相続人代表者を指定されます。
地方税法9条の2の2項
相当の期間内に同項後段の届出がないときは、相続人の一人を指定し、その者を同項に規定する代表者とすることができる。この場合において、その指定をした地方団体の長は、その旨を相続人に通知しなければならない。
引用:e-Govポータル、地方税法9条の2の2項
本来であれば共有者全員の署名・押印が必要ですが、亡くなった旧代表者のものは不要です。
参照:萩市ホームページ「固定資産税の納税義務者が亡くなったとき・相続人代表者を変更したいとき」
固定資産税の滞納はNG!預貯金・給与を差し押さえられる恐れがある
共有名義不動産の持分を相続した際「いままで使っていなかった不動産の固定資産税を支払うのは納得できない」と思うかもしれません。
しかし、その言い分はまず通りません。どのような理由があっても、税金を支払わなければ「滞納」となります。
市役所からの督促が届いても支払わなければ、貯金や給与を差し押さえられて強制的に徴収される恐れもあるので、絶対に支払いましょう。
納めるべき固定資産税が高額な場合には相続放棄も検討する
相続で取得する共有名義不動産が立地のよい場所だったり、広大な面積の場合には固定資産税が高額になります。
また、もしも亡くなった人が固定資産税を滞納していた場合には、その滞納額も合わせて相続人が納めなければなりません。
そうなれば、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多くなるケースもあります。自分の預貯金を合わせても支払いに足りないかもしれません。
そのため、支払い義務を相続しないで済むように「相続放棄」も検討しましょう。
相続放棄しても納税義務者となるケースがあるので注意
相続放棄するとプラスの財産も引き継げませんが、固定資産税などマイナスの財産も引き継がないので、納税義務もありません。
しかし、相続放棄の申立てが受理される前に、固定資産税の課税台帳に所有者として登録されると納税義務者となります。
課税台帳に登録された「所有者」が1月1日に亡くなっていた場合「所有者」は「相続人」に置き換えて取り扱われます。
したがって、固定資産税の納税義務を負わないためには、12月中に相続放棄が「受理」されていることが必要です。
相続放棄の申請から受理まで2週間程度かかります。相続放棄するつもりであれば、タイミングも注意しましょう。
自分で手続きしようとすると必要書類も多く、手間がかかります。正確に手続きを完了させるためにも、司法書士や弁護士などの専門家へ依頼することをおすすめします。
翌年以降の固定資産税を納めたくない場合の対応方法
最後に、翌年以降の固定資産税を納めたくない場合の対応方法を解説します。
その方法は大きく2通りです。
- 遺産分割で共有持分を相続しない
- 相続する持分を売却する
上記の方法であれば相続放棄することなく、翌年以降の納税義務を負わずに済み、プラスの財産も通常どおり相続できます。
ちなみに、相続放棄であれば「相続が発生した年」の納税義務も負いません。
遺産分割で共有持分を相続しない
遺産分割では相続人全員の同意が得られるのであれば、法定相続割合を無視して、相続財産の分け方を決められます。
したがって「共有持分は相続人の1人が引き継いで、残りの財産を相続人で分配する」こともできます。
そして、共有持分を相続した人へ名義変更する相続登記が完了すれば、他の相続人は固定資産税の納税義務を負いません。
亡くなった人が共有名義不動産に住んでおり、相続人の中に一緒に住んでいた人がいれば、その人が共有持分を代表して相続するとよいです。
引き続き共有不動産を利用するので、翌年以降も固定資産税を負担しても納得できるでしょう。
相続する持分を売却する
2つ目は、相続する持分を売却する方法です。
共有名義不動産全体を売却する際には、共有者全員に同意が必要です。
しかし、持分のみであれば単独で売却できます。
そのため、遺産分割が確定したあと、自分の相続分となった共有持分は他の相続人の了承なしで売却できます。
また、相続人全員が共有持分の相続をしたくない場合には、遺産分割協議の際に売却して、その代金を分割してもよいです。
持分の売却先は「他の共有者」か「買取業者」
持分単独では、購入しても買主が自由にできることは少ないです。
そのため、相続した持分の売却先は「メリットを得られる他の共有者」か「事業として持分を取得している買取業者」が一般的です。
市場価格に近い価格で売却しようと思えば「他の共有者への売却」がおすすめです。
一方で、短期間で売却して現金化したい場合には「買取業者への売却」をおすすめします。
買取業者の中でも「共有持分を専門に取り扱っている買取業者」であれば、より高価買取を期待できるでしょう。
他の共有者へ売却する場合は売却価格に注意
他の共有者へ持分を売却するとき「親戚なので格安で譲りたい」と考えているかもしれません。
お互いに納得したうえで取引するのであれば、安価で取引しても問題ありませんが、不動産市場価格からあまりにも売却価格が低い場合には注意が必要です。
市場価格との差額を「贈与」とみなされて、購入者に贈与税が課税される恐れがあります。
「1年に110万円以上」の贈与があると、贈与税が課せられます。
そのため、適正な売却価格で取引できるよう、不動産鑑定士に評価してもらっておくと安心です。
参照:国税庁ホームページ「著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」
まとめ
共有名義人が死亡すると、固定資産税は相続人に承継されます。
そして、相続登記が完了するまでは相続人全員が納税義務者となります。
固定資産税を滞納すると市役所から督促が届き、それでも滞納し続ければ預貯金や給与などの財産を差し押さえられるリスクがあるので注意してください。
1月1日までに相続放棄が受理されれば納税義務を負わないので、固定資産税が高額な場合には検討するとよいでしょう。
ここまで解説してきたように、共有不動産の持分を相続することになった場合、相続人はさまざまな対応があります。
自分の状況に合った選択ができるよう、共有持分を専門に取り扱っている不動産業者や弁護士に相談してみてください。
共有名義人が死亡した際のよくある質問
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共有名義人が死亡したら納税義務はどうなる?
共有名義人が死亡したら固定資産税の納税義務は相続人に承継されます。また、複数人で相続する場合は法定相続割合に従って納税します。
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相続人がいないときはどうなるの?
相続人がいなければ、他の共有者に「持分と納税義務」が帰属します。
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共有名義人が死亡したときにすべきことは?
亡くなった人が共有名義不動産の代表者であれば「相続人代表者指定届を提出する」か「共有者代表指定届を提出する」のどちらかをおこなう必要があります。
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自分が使ってなかった土地でも、相続したら固定資産税を払わなきゃいけないの?
どのような理由があっても、税金を支払わなければ「滞納」となります。固定資産税を滞納してしまうと貯金や給与を差し押さえられる恐れもあるため注意が必要です。
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利用しない土地だから、固定資産税を納めたくない・・・
「遺産分割で共有持分を相続しない」もしくは「相続する持分を売却する」ことで、納税義務を負わずに済みます。利用しない共有不動産の持分を相続したなら、共有持分の専門買取業者に売却するとよいでしょう。→共有持分を専門に取り扱う買取業者はこちら