共有私道の売却には、原則的に共有者全員の承諾が必要です。しかし、共有者が不明な場合はどのように売却すればよいのでしょうか?
結論からいうと、共有者不明の共有私道を売却するときは「不在者財産管理制度」を利用する必要があります。
また、私道の持分だけでも売却できますが、できれば「私道に接する土地」とあわせて売却すべきです。私道持分だけを売却しても、売却価格は安くなってしまいます。
共有者不明の共有私道を売る際は、共有持分を専門に扱う買取業者に相談するとよいでしょう。
弁護士と連携した買取業者であれあば、権利関係が複雑な私道もしくは私道に接する土地でも、安心して売却を任せられます。

- 共有私道の持分権だけでも売買できる。
- 「私道に接している土地」と「私道の持分権」はあわせて売買すべき。
- 私道を売買する際は「通行承諾書」と「掘削承諾書」の確保が重要。
目次
共有私道の持分権だけでも売却できる
公道ではなく、個人や法人が所有している道路を「私道」といいます。
そして、私道が複数人で共有されている場合でも、自分の所有する「持分権だけ」なら自分の意思だけで自由に売却できます。
また、共有私道を売却するときは、原則的に「通行承諾書」と「掘削承諾書」が必要です。
これらの承諾書を取得するには、私道の共有者全員から承諾を得る必要があります。共有者が多ければ、その分承諾を得るために時間や手間がかかってしまいます。
そのため、共有私道の売却を考えているなら、早めに承諾書を準備できるよう行動しておきましょう。
私道の共有者が不明でも不在者財産管理制度を利用すれば売却できる
前の項目で説明した通り、共有私道を売るためには原則的に、他共有者の同意が必要です。
しかし、他共有者が不明な場合はどうすれば売却できるのでしょうか?
共有私道の所有者が不明な場合は「不在者財産管理制度」を利用することで、共有私道の持分権を売却できます。
不在者財産管理制度によって代理人を選定することで、共有者不明の私道でも売却の同意を得られるようになります。
不在者財産管理制度は裁判所に申し立てる必要がある
不在者の財産を管理するために選ばれるため、不在者財産管理人には大きな権限が認められています。その権限を悪用されないために、職務を適切におこなえる人が選任されなくてはいけません。
ですので、不在者財産管理制度を利用するには、家庭裁判所に申し立てる必要があります。
家庭裁判所に申し立てることで、はじめて「不在者財産管理人」となる人が選任されます。不在者財産管理人は多くの場合、弁護士や司法書士などの専門職から選ばれることを覚えておきましょう。
なお、この申し立てをおこなえるのは「利害関係者または検察官」のみとされています。
民法第25条
従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。
引用:e-Govポータル、民法25条
私道の持分権利については法務局で調べられる
共有私道の持分権を売却する際は、持分割合や所有者を調べておくべきです。
もしも、正式な持分割合を知らなければ、売却時にトラブルの原因となる恐れがあります。
私道持分の持分割合や所有者は法務局で確認できます。次の順に法務局で書類を取得しましょう。
- 法務局で「公図」を取得して、私道部分の地番を確認する
- 私道部分の地番の「登記事項証明書」を取得する
登記事項証明書を取得することで、正確に私道の持分や所有者を把握できます。
私道の共有方法には2種類ある
私道の共有方法は、大きく分けると以下の2つです。
- 1つの私道を複数人で共有している「共同所有型」
- 分筆されて複数の土地として共有されている「分割型」
共同所有型の場合は、単一の私道を「持分権」で分け合ってそれぞれ所有している状態です。
一方で分筆型の場合は、単一の私道が複数あわさり、それが1つの共有私道となっている状態です。
次の項目から、それぞれ順番に詳しく見ていきましょう。
【ケース1.共同所有型】1つの私道を複数人で共有しているケース
1つ目は、1つの私道を複数人で共有している「共同所有型」です。
この場合は「私道の持分」を各共有者が「◯分の◯」というように持分権を分け合っています。
共同所有型の私道は「共有不動産」として扱われ、1つの私道を共同所有している状態です。
1つの私道を共有している場合は「持分の権利」を売却する
共同所有型の私道を所有している際は「私道の持分権」のみを所有している状態です。
そのため、共同所有型の私道を手放す際は「持分の権利」のみを売却することになります。
このケースで私道を売却する際は、私道の持分権を「1/6」売却します。
【ケース2.分割型】分筆されて複数の土地として共有されているケース
2つ目は、分筆されて複数の土地として共有されている「分割型」です。
この場合は、単一の私道を分筆し、それぞれが権利を持ち合っている状態です。
見た目上は1つの私道ですが、それぞれ所有権が分けられていて、各所有者が単独で所有しています。
つまり、私道の所有者がそれぞれの土地を通路として提供して、私道の権利を相互に利用し合っている状態です。
分筆されている場合は「単独名義の私道」を売却する
分割型の場合は、私道に対する持分権ではなく私道の一部を単独名義で所有している状態です。
そのため、私道が分筆されている場合は、持分権利ではなく「単独名義の私道」を売却することになります。
もしも、売却を検討している私道が公道に接していなければ、他共有者から掘削・通行承諾を得る必要があります。
私道の共有持分を売るときは「接している土地」もあわせて売却すべき
これまで説明した通り、私道の共有持分は共有者不明であっても売却可能です。共同所有型であっても、分筆型であっても売却できます。
ただし、実際に私道持分を売却する際は「私道に接する土地」もあわせて売却すべきです。
私道の持分権は、不動産にアクセスするためにあるからです。
共有私道の権利だけを売却してしまうと、他共有者の私道を通らなければ、公道に出られなくなります。

「私道の共有持分A」を手放してしまうと、他共有者の私道を通らなければ公道に出られないため、土地の価値も私道の価値も下がってしまいます。
私道持分だけを売却しようとしても売却価格が安くなってしまう
前の項目で説明した通り、私道の持分権利は不動産にアクセスするためにあります。
そのため、私道だけを売却しても、買主からするとその私道の権利を活かせないため、得られるメリットはほとんどありません。
このことから「私道だけ」を売却する際は、売却価格が大幅に安くなってしまいます。
ですので、私道の売却を検討しているなら、土地もあわせて売却するべきです。
私道を売買する際は「通行承諾書」と「掘削承諾書」が必要
私道の売却前には、購入者が家屋を建てたりライフラインを整えるための「通行承諾書」と「掘削承諾書」の用意が必要です。
私道の共有方法によって承諾をもらうべき相手が変わることに注意しましょう。
共同所有型の場合は、持分の所有者全員から承諾をもらう必要があります。
一方で分筆型の場合は「実際に通行・掘削するルート上にある私道」の持主からのみ、承諾が必要です。
ちなみに、承諾をもらうべき相手のなかに、所在不明者がいる場合は「不在者財産管理制度」を利用することで、承諾書を取得できます
承諾書の取得が困難な場合は「共有持分の専門買取業者」に売却しよう
通行承諾書・掘削承諾書を用意するには、私道の他共有者から承諾を得る必要があります。
しかし、共有者同士の仲がよくなかったり、承諾を得られないこともあるでしょう。
そのように承諾書の取得が困難な場合は、共有持分を専門に扱う買取業者に相談してみてください。
共有持分を専門に扱う買取業者なら、承諾書を用意できなくても買い取ってくれます。
私道や私道に接する土地の売却は、権利関係が非常に複雑です。売却後のトラブルを避けるためにも、弁護士と連携している買取業者にすべて任せた方が、スムーズに売却手続きを終えられます。
まとめ
共有私道を売却するためには、原則的に持分権の所有者全員からの承諾が必要です。
もしも、共有者の中に行方不明者がいる場合は、不在者財産管理制度を利用することで共有私道を売却できるようになります。
なお、私道の売却を検討しているなら「接している土地」もあわせて売却すべきです。
私道や私道に接する土地の売却は、権利関係が非常に複雑なため、共有持分を専門に扱う買取業者に相談してみてください。
共有者不明の私道を売却する際によくある質問
共有私道の所有者が不明な場合は「不在者財産管理制度」を利用できます。不在者財産管理制度を利用して代理人を選定することで、共有者不明の土地でも売却可能です。
私道が複数人で共有されている場合は「持分の権利」を所有している状態なので、持分の権利を売却します。一方で、分筆されて複数の土地として共有されている場合は「単独名義の私道」を売却します。
私道を売却する際は、私道に接する土地もあわせて売却する方がよいです。私道だけを売却しようとしても、売却価格が安くなってしまうことに注意しましょう。
私道の持分権利を売却する際は、共有私道の持分や所有者を明らかにする必要があります。そして、私道の持分権利については法務局で調べられます。
私道を売買する際は「通行承諾書」と「掘削承諾書」を用意しましょう。また、これらの書類を用意できなくても、共有持分を専門に扱う買取業者に依頼すれば、共有私道をすぐに現金化できます。【私道持分でも売却可能】共有持分専門の買取業者はこちら→
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