お寺の土地に税金が課されないケースとは?非課税にする方法を解説

土地を所有していると固定資産税が課税されますが、お寺の土地に関しては例外的に非課税とされています。
しかし、お寺所有の土地であっても、無条件で非課税となるわけではありません。宗教法人の範疇を超えた利用をおこなうと課税されてしまいます。
また、非課税対象であっても、自治体への申請が必要です。何もしなければ課税されるので注意しましょう。
法律知識がないと、お寺のある土地のせいで税務署から注意される恐れもあるため、不動産業者や税理士といった専門家に相談することをおすすめします。
この記事では、お寺の土地と税金について詳しく解説しているので、適切な土地運用のためにぜひ参考にしてください。
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この記事のポイント
- お寺の不動産のうち「境内建物」や「境内地」は非課税。
- お寺の土地を収益事業に用いていると課税される。
- 住職名義の自宅を建てるケースも課税対象となる。
目次
「お寺の土地は税金が課税されない」とは限らない
「坊主丸儲け」といわれますが、実のところ「お寺には税金が一切かからない」というわけではありません。
たしかに「宗教活動」に関する税金は免除されますが、営利目的の「収益事業」と判断されると、さまざまな税金が課税されてしまうのです。
まずは、お寺の税金に関する仕組みと、課税される税金の種類を見ていきましょう。
「宗教活動」にかかる税金は非課税
原則として、営利事業をおこなう一般法人は、各種税金を納める義務があります。
しかし、お寺などの宗教法人は営利目的でない「公益事業」を扱うため、一部の税金が免除されるのです。
宗教法人において非課税となる税金は以下のとおりです。
種類 | 具体例 |
---|---|
法人税 | 収益事業以外は非課税 |
所得税 | 宗教法人が受け取る利子や配当は非課税 |
地方税 | 収益事業以外は非課税 |
消費税 | 宗教活動による収益は非課税 |
登録免許税 | 宗教活動に必要な境内建物および境内地であれば非課税 |
固定資産税 | 宗教活動に必要な境内建物および境内地であれば非課税 |
都市計画税 | 宗教活動に必要な境内建物および境内地であれば非課税 |
つまり、宗教活動に用いるのであれば、お寺の土地に税金は課税されません。
ただし、非課税対象となるのは、次のような「境内建物」「境内地」に限ります。
種類 | 具体例 |
---|---|
境内建物 | 本堂 |
社務所 | |
庫裏 | |
境内地 | 境内建物の敷地 |
画地 | |
参道 |
「宗教活動のために必要かつ、営利目的でない土地や建物」であれば、税金が免除される仕組みです。
「収益事業」と判断されると課税対象
お寺の土地を収益事業に用いている場合、通常どおり税金の課税対象となります。
近年、宗教活動だけでは生活が成り立たず、副業をおこなう住職も少なくありません。
本来であれば税金が免除される宗教法人だとしても、営利目的の事業をおこなうと収益事業とみなされて、課税対象になる恐れがあります。
「収益事業」とは、法人税法で定められている34種類の事業を指します。
収益事業の一覧 | ||
---|---|---|
物品販売業 | 写真業 | 美容業 |
不動産販売業 | 席貸業 | 興行業 |
金銭貸付業 | 旅館業 | 遊技所業 |
物品貸付業 | 出版業 | 理容業 |
不動産貸付業 | 飲食店業 | 医療保健業 |
製造業 | 周旋業 | 技芸教授業 |
通信業 | 放送業 | 代理業 |
駐車場業 | 運送業 | 運送取扱業 |
仲立業 | 信用保証業 | 倉庫業 |
問屋業 | 無体財産権の提供業 | 請負業 |
土石採取業 | 印刷業 | 浴場業 |
料理店業その他の遊覧所業 |
上記のように、収益を得られる事業の大半は「収益事業」に含まれます。
ただし、宗教活動の一環で収益事業をおこなった場合、国税庁の判断によっては、課税対象とみなされないケースもあります。
具体的にいうと、以下のような事業は課税対象とみなされません。
- 「お守り」「お札」「おみくじ」などの販売
- 「神前結婚式」や「仏前結婚式」の実施
- 「保育園」や「幼稚園」などの経営
収益事業が「主たる活動」になると課税対象とされますが、あくまでも公益事業に伴う「従たる活動」であれば非課税対象にできます。
お寺の事業が「収益事業」にあたるか心配な場合、事前に税務署へ問い合わせるとよいでしょう。
お寺の土地に課税される税金は5つ
課税対象とみなされた場合、どのような税金がお寺の土地に課税されるのでしょうか?
お寺の土地へ課税される恐れのある税金は以下の5種類です。
- 土地を取得する際の「不動産取得税」
- 土地を取得・売却する際の「登録免許税」
- 土地に毎年かかる「固定資産税」
- 収益事業をおこなう際の「所得税」
- 土地を売却する際の「譲渡所得税」
まず、土地を取得する際に「不動産取得税」や「登録免許税」が課税されます。
土地を所有している限り「固定資産税」が毎年かかる上、収益事業をおこなうと「所得税」も支払う必要があります。
そして、土地を売却する際には「譲渡所得税」や「登録免許税」を負担しなければなりません。
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お寺の土地に税金が課税されないケース
お寺の運営が「公益事業」と認められれば、各種税金を非課税にできます。
そのため、以下のようなケースでは、お寺の土地に税金は課税されません。
- 宗教法人の名義で土地を取得する場合
- 宗教法人の名義で土地を所有している場合
- 無料利用できる駐車場を設営する場合<
- 宗教活動として墓地を貸し出す場合
わかりやすくいうと、営利目的ではなく宗教活動のために土地を取得・所有する場合、非課税対象になるのです。
それぞれのケースを1つずつ見ていきましょう。
宗教法人の名義で土地を取得する場合
宗教法人が土地を取得する場合、基本的に不動産取得税は課税されません。
地方税法でも、次のように非課税対象として認められています。
地方税法第73条4項2号
宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法(昭和二十六年法律第百二十六号)第三条に規定する境内建物及び境内地(旧宗教法人令(昭和二十年勅令第七百十九号)の規定による宗教法人のこれに相当する建物及び土地を含む。)
ただし、土地が非課税対象となるのは、境内建物や境内地に用いる場合に限ります。
具体的には、以下のケースであれば、不動産取得税が非課税となります。
- 境内建物または境内地の権利の取得
- 墳墓地として用いる土地の取得
- 宗教法人が運営する学校・保育所・幼稚園に関する土地の取得
- 博物館・運動場・実習用地など、教育に関わる土地の取得
宗教法人の名義で土地を所有している場合
土地の名義が宗教法人であれば、毎年の固定資産税も課税されません。
地方税法によって「境内建物」「境内地」は固定資産税の非課税対象とされています。
地方税法第348条2項3号
宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第三条に規定する境内建物及び境内地(旧宗教法人令の規定による宗教法人のこれに相当する建物、工作物及び土地を含む。)
他にも、以下のような土地であれば、固定資産税が非課税となります。
- 宗教活動のための境内建物および境内地
- 墳墓地として用いる土地
- 宗教法人が設置する学校などに用いる土地
- 宗教法人が設置する博物館などに用いる土地
ただし、土地の固定資産税を非課税にするには、自治体への申告が必要です。
無料利用できる駐車場を設営する場合
多くのお寺では駐車場を併設していますが、無料利用できる駐車場であれば、収益事業と見なされないので非課税対象にできます。
お寺の駐車場を非課税対象にできる条件は以下のとおりです。
- 無料で利用できる
- 参詣者用の駐車場である
- 参詣者数に適した駐車場である
- 境内地から距離が離れていない
- 駐車場を設置する必要性がある
看板などを設置して、参詣者用の駐車場であることを明示しておけば、基本的に非課税対象として認められます。
ただし、参詣者数に比べて敷地が広すぎる駐車場は、課税対象となる恐れがあるため注意しましょう。
宗教活動として墓地を貸し出す場合
不動産貸付業に該当しないため、宗教法人による墓地の貸付は課税対象になりません。
これについては、法人税法施行令で明示されています。
法人税法施行令第5条
五 不動産貸付業のうち次に掲げるもの以外のもの
ニ 宗教法人法(昭和二十六年法律第百二十六号)第四条第二項(法人格)に規定する宗教法人又は公益社団法人若しくは公益財団法人が行う墳墓地の貸付業
そのため、墓地を貸して得た「永代供養料」などに対して、税金は課税されません。
ただし、高額な利益を得てしまうと「収益事業」とみなされて、所得税を課税される恐れがあるため注意しましょう。
お寺の土地に税金が課税されるケース
基本的に宗教法人の土地は非課税対象ですが、例外的に課税されるケースもあります。
以下のようなケースでは、お寺の土地に税金が課税されます。
- 住職名義の自宅を建てる場合
- 土地を有償で貸し出す場合
- お寺の土地を売却する場合
わかりやすくいうと、宗教法人の範疇を超える個人的な利益を得た場合、お寺の土地でも税金が課税されるのです。
それぞれのケースを1つずつ見ていきましょう。
住職の自宅を建てる場合
「お寺の土地は自分のもの」と思い込んで、住職名義の自宅を建てるケースも珍しくありません。
しかし、宗教法人名義の土地を私的に利用すると、脱税とみなされて、税務署から警告を受ける恐れがあります。
ですので、お寺の土地に住職の自宅を建てる場合、次のように脱税を避けましょう。
- 宗教法人から適切な賃料で借りる
- 適切な価格で土地を買い取る
宗教法人へ相応の対価を支払えば、お寺の土地でも住職の自宅を建てられます。
ただし、価格が安すぎると、みなし贈与と扱われる恐れもあるので注意が必要です。
そのため、不動産業者へ相談して、周辺地域の地価相場などを教えてもらい、適正価格で取引するように心がけましょう。
土地を有償で貸し出す場合
お寺の土地を有償で貸し出すと「不動産貸付業」として課税対象になってしまいます。
アパート・マンションなどの賃貸物件はもちろん、貸しビル業・テナント業についても、不動産貸付業と扱われるため注意が必要です。
もし、宗教法人がこうした不動産貸付業をおこなった場合、その収益に対して所得税などを納税しなければなりません。
お寺の土地を売却する場合
お寺の土地を売却する場合、譲渡所得税が課税されてしまいます。
なぜなら、土地売却で得た売却益は住職や宗教法人の利益と扱われるため、営利目的でない「公益事業」とは見なされずに課税対象とされてしまうのです。
ですので、宗教法人がお寺の土地売却で得た利益「譲渡所得」に対して「譲渡所得税」を納税しなければなりません。
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お寺の土地にかかる固定資産税を非課税にする方法
地方税法では、お寺の土地は非課税対象とされていますが、自動的に固定資産税が免除される訳ではありません。
以下の方法で、お寺の土地が非課税対象であると認めてもらう必要があります。
- 土地を宗教法人の名義にしておく
- 自治体へ固定資産税の免除を申請する
具体的には、土地を宗教法人の名義にすることで「公益事業」であることを証明した後、自治体へ固定資産税の免除を申請することで固定資産税が免除されます。
なお、すでに土地が宗教法人の名義となっている場合、免除の申請だけで大丈夫です。
それぞれの方法について、順番に解説していきます。
土地を宗教法人の名義にしておく
まずは、お寺の土地を宗教法人の名義にしておきましょう。
住職名義の土地では、非課税対象である「共益事業」に用いる土地とは見なされず、通常の土地と同様に固定資産税などが課税されてしまいます。
以下の方法で、お寺の土地を宗教法人の名義に変更できます。
- 登記申請書を作成する
- 法務局で所有権移転登記をおこなう
「登記申請書」という書類を作成して、法務局に提出することで「所有権移転登記」をおこなえば、土地の所有権を宗教法人へ移すことが可能です。
それぞれの手順を順番に解説していきます。
【手順1】登記申請書を作成する
はじめに「所有権移転登記」で必要となる「登記申請書」を作成しましょう。
法務局のサイトから「所有権移転登記申請書」の様式をダウンロードして、以下の内容を記入します。
- 登記の目的
- 原因
- 権利者・義務者
- 添付書類
- 申請日・法務局
- 代理人(いる場合)
- 課税価格
- 登録免許税
- 不動産の表示
土地を個人から法人へ名義変更する場合、登記原因は「贈与」「売買」「現物出資」のいずれかを記入することになります。
法務局のサイトにも記載例が掲載されているので、それに従って内容を記入すれば問題ありません。
【手順2】法務局で所有権移転登記をおこなう
「所有権移転登記申請書」を作成したら、必要書類と共に法務局へ提出します。
ただし、一般的な所有権移転登記とは異なり、所有権を移す側と受取る側、双方の必要書類を用意しなければなりません。
お寺の土地における所有権移転登記の必要書類は以下のとおりです。
- 土地の登記済証または登記識別情報
- 印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)
- 住民票(発行から3ヶ月以内)
- 土地の固定資産評価証明書
- 登記原因証明情報
なお、所有権移転登記をおこなう際「登録免許税」がかかるため注意しましょう。
固定資産税評価額は毎年届く「固定資産税納税通知書」に記載されていますが、手元にない場合は、市区町村役場で取得できる「固定資産評価証明書」でも確認できます。
必要書類を法務局へ提出すると、約1~2週間で「登記完了証」と「登記識別情報通知書」が交付されます。
これをもって、所有権移転登記が完了して、土地の名義が住職から宗教法人へ移ります。
自治体へ固定資産税の免除を申請する
お寺の土地を宗教法人へ名義変更した後、自治体へ固定資産税の免除を申請しましょう。
以下の手順で、お寺の土地にかかる固定資産税を非課税にできます。
- 「固定資産税非課税申告書」を作成する
- 「固定資産税非課税申告書」を自治体へ提出する
- 認可が下りると固定資産税が非課税になる
ただし、固定資産税の免除を申請する方法は各自治体によって異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
【手順1】「固定資産税非課税申告書」を作成する
まずは、自治体へ提出する「固定資産税非課税申告書」を作成しましょう。
「固定資産税非課税申告書」については、自治体によって名称が異なりますが、多くの場合は自治体のホームページからダウンロードできます。
「固定資産税非課税申告書」には、以下の内容を記入します。
- 土地の所在地番
- 土地の地目
- 土地の地積
- 土地の用途
- 非課税の用に供し始めた年月日
- 所有者の住所
- 所有者の氏名
- 非課税の用に供し始めた年月日
今回は個人ではなく法人なので、宗教法人の所在地と名称を記載します。
多くの場合、自治体のホームページに記入例が掲載されているので、そちらを参考に記入すれば問題ありません。
参照:「固定資産税・都市計画税非課税申告書 記入例」(東京都主税局)
【手順2】「固定資産税非課税申告書」を自治体へ提出する
つづいて、作成した「固定資産税非課税申告書」を自治体へ提出しましょう。
このとき、土地や宗教法人の情報を確認するため、以下の添付書類も提出します。
- 該当箇所の案内地図
- 該当地番の図面や外観が確認できる写真
- 宗教法人であることを証明する書類
「固定資産税非課税申告書」の提出先は、お寺のある土地を管轄する市区町村役場です。
【手順3】認可が下りると固定資産税が非課税になる
「固定資産税非課税申告書」を提出すると、自治体による実地確認調査が実施されます。
実地確認調査とは、土地の利用状況を調べて、地方税法や市税条例に反した「収益事業」をおこなっていないかを確認する作業です。
実地確認調査の結果、要件を満たしていれば、土地の固定資産税が非課税になります。
まとめ
お寺が非営利目的の「公益事業」であれば、土地にかかる税金を非課税にできます。
お寺の土地を宗教法人の名義にして、自治体へ「非課税申告書」を提出すれば、固定資産税が免除されるので、まだ手続きしていない人は申請するとよいでしょう。
ただし、営利目的の「収益事業」をおこなったり、お寺の土地を私的利用すると、非課税対象から外されるだけでなく、脱税を疑われる恐れもあるため注意が必要です。
お寺の土地にかかる税金を減らすには、税金と不動産にまつわる法的知識が必要となるため、必ず不動産業者や税理士といった専門家に相談することをおすすめします。
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お寺のある土地の税金に関するよくある質問
-
お寺の土地は税金が課税されないのですか?
宗教活動などの「公益事業」であると判断されれば、お寺の土地に税金は課税されません。ただし、営利目的の「収益事業」と見なされると、通常どおり各種税金が課税されます。
-
お寺の土地には、どのような税金が課税されますか?
土地の取得時に「不動産取得税」や「登録免許税」が課税されます。そして土地を所有している限り「固定資産税」が毎年かかります。また、収益事業をおこなうと「所得税」が、土地を売却するか「譲渡所得税」が課税されます。
-
どのような場合、お寺の土地に税金が課税されませんか?
宗教法人の名義で土地を取得・所有する場合は税金が課税されません。また、無料利用できる駐車場を貸し出す場合や墓地を貸し出す場合も非課税対象になります。
-
どのような場合、お寺の土地に税金が課税されますか?
住職の自宅を建てる場合は非課税対象として認められません。また、土地を有償で貸し出したり、お寺の土地を売却する場合は収益が得られるので、税金が課税されてしまいます。
-
どうすれば、お寺の土地にかかる税金を非課税にできますか?
まずは土地を宗教法人の名義にして「公益事業」であることを証明しましょう。そして自治体へ免除を申請すれば、お寺の土地にかかる税金を非課税対象にできます。