共有物分割請求訴訟とは、複数人で共有している不動産の分割を求めて、裁判所に訴訟を起こす方法です。
共有者の間で持分と金銭を交換する「代償分割」や、売却して現金で分割する「換価分割」といった方法から、適切な分割方法が裁判官の判決で下されます。
訴訟を提起するときは、弁護士に手続きを依頼することが大半です。訴訟費用に弁護士報酬などを合わせると、共有持分の時価の1割程度が費用としてかかります。
ただし、訴訟で共有不動産の分割を実現できても、訴訟費用で利益が小さくなる場合もあるので注意が必要です。
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- 共有物分割請求訴訟には時間と手間、費用がかかる。
- 共有物分割請求訴訟は「最終手段」として考える。
- 自分の共有持分だけを売却することもできる。
目次
共有物分割請求には「弁護士費用」と「実費」の2つがかかる
不動産の売却について話し合ったものの同意を得られなかった場合、裁判所に共有物分割請求訴訟を提起できます。
共有物分割請求訴訟とは、共有者同士で共有物のどのように扱うのかを話し合ったものの解決できなかった場合、裁判所に共有物の分け方を決めてもらうことです。
詳細は後述しますが、裁判所は現物分割、代償分割、換価分割の中から最も合理的な方法を選択して判決を下します。そのため、必ずしも自分の希望通りになるとは限りません。
共有物分割請求訴訟を提起する際は、主に以下の2つの費用がかかります。
- 印紙代や郵便切手代などの実費
- 相談料や着手金などの弁護士費用
それぞれの費用について詳しく解説していきます。
①印紙代や郵便切手代などの実費
印紙代とは、共有物分割請求訴訟を提起する際に裁判所に対して支払う費用(手数料)です。
印紙代は不動産(共有持分)の固定資産税評価額に基づいて以下のように異なります。
訴訟の目的の価額 | 印紙代 |
100万円までの部分 | 1,000円(10万円までごとに) |
100万円超500万円までの部分 | 1,000円(20万円までごとに) |
500万円超1,000万円までの部分 | 2,000円(50万円までごとに) |
1,000万円超10億円までの部分 | 3,000円(100万円までごとに) |
10億円超50億円までの部分 | 1万円(500万円までごとに) |
50億円超の部分 | 1万円(1,000万円までごとに) |
参考:裁判所 手数料
郵便切手代は、裁判所が関係者(他の共有者)に共有物分割請求訴訟の提起に関する書類を送付するのにかかる費用です。
自身を除く共有者が1人の場合で6,000~8,000円程度、1人増えるごとに2,000円程度が加算されます。
裁判で代償分割(価格賠償)の判決が下った場合は、不動産の価値を正確に把握するために数十万円程度の鑑定費用が上乗せされることもあるので注意してください。
②相談料や着手金などの弁護士費用
共有物分割請求訴訟は弁護士に頼らなくても自身で裁判所に提起できますが、スムーズに手続きを進める、自分の意向に近い判決を勝ち取るには弁護士のサポートが不可欠です。
弁護士に共有物分割請求訴訟の提起を依頼した場合の費用は主に以下の3つです。
- 相談料
- 着手金
- 報酬金
相談料とは、弁護士にどのような依頼内容なのかを相談する際にかかる費用です。相談料の相場は1時間1万円程度ですが、初回のみ無料で相談を受け付けている弁護士事務所も。
着手金とは、弁護士が依頼を引き受ける際にかかる費用です。最終結果に関係なく弁護士が案件に着手した時点でかかる点に注意してください。
報酬金とは、案件が成功した場合にかかる費用(成功報酬)です。
着手金と報酬金の計算方法は大きく以下の2つに分けられます。
- 経済的利益に基づいて計算する
- 共有持分の時価に基づいて計算する
それぞれの計算方法を詳しく解説していきます。
着手金と報酬金①経済的利益に基づいて計算する
経済的利益とは、依頼内容が解決した場合に依頼者が得られる経済的な利益です。
共有持分の固定資産税評価額(時価)の1/3を経済的利益として報酬を計算します。
報酬は依頼する弁護士事務所によって異なります。以下は報酬の一例です。
経済的利益 | 着手金 | 成功報酬 |
300万円以下 | 8% | 16% |
300万円を超え3,000万円以下 | 5%+9万円 | 10%+18 万円 |
3,000万円を超え3億円以下 | 3%+69万円 | 6%+138万円 |
3億円を超える | 2%+369万円 | 4%+738万円 |
参考:共有持分の教科書「共有物分割請求の弁護士費用はどれくらい?算出方法と節約術を詳しく解説」
共有持分の時価が900万円の場合には、着手金と報酬金は時価の1/3の300万円を経済的利益として以下のように計算します。
報酬金:300万円×16%=48万円
棄却されずに判決が下れば、24万円と48万円を合算した72万円を弁護士に支払います。交通費などの実費がかかった場合はそれらも上乗せされます。
着手金と報酬金②共有持分の時価に基づいて計算する
経済的利益に基づく計算方法の場合、時価を1/3にして各弁護士事務所で定められている着手金と報酬の計算式に当てはめる必要があるので面倒でした。
しかし、共有持分の時価に基づいて計算するという方法は、時価の5~10%を報酬金として算出するので計算が簡単です。
報酬金を時価に基づいて計算する方法を採用している弁護士事務所は、着手金を30万円に設定しているケースが多いです。
経済的利益に基づいて計算する場合と同様、最後にかかった実費が上乗せされます。
協議や調停で解決すれば弁護士費用は3分の2程度に抑えられる
共有物分割請求訴訟は、前段階の不動産の分割について話し合う共有物分割協議、裁判所の調停委員と共有者全員で話し合う共有物分割調停で解決できなかった場合の最終手段です。
仮に弁護士に依頼して協議や調停までで話し合いがまとまれば、弁護士費用を2/3程度に抑えることができます。
共有物分割請求の手続きの流れ
「共有不動産の扱いについて他の共有者の同意を得ることが難しそう」という理由だけで共有物分割請求訴訟を提起することはできません。
共有物分割請求訴訟を提起する際は、以下の6つの流れで手続きを進める必要があります。
- 共有物分割協議を行う
- 弁護士と委任契約を結ぶ
- 地方裁判所に訴状を提出する
- 裁判所から共有者全員に呼出状が送付される
- 口頭弁論または答弁書を提出する
- 裁判所から判決が下される
流れの詳細については共有物分割請求訴訟を起こすときの流れや注意点、すぐに共有状態を解決するための方法を解説しますで詳しく解説しているので、合わせてご覧ください。

共有不動産の分割方法3つ
また、裁判所の判決により訴訟が認められると、3つ分割方法のいずれかが採用されます。
- 現物分割
- 代償分割
- 換価分割
それぞれの分割方法について詳しく解説していきます。
分割方法①共有物を持分割合に応じて分ける「現物分割」
現物分割とは、共有物を持分割合に応じて不動産を物理的に分割する方法です。共有物分割請求訴訟では、原則この分割方法が採用されます。
例えば、共有物が土地の場合は持分割合に応じて分割(分筆)、建物と土地の場合は建物の権利を共有者の1人、土地の権利を共有者の1人に分けます。
しかし、分割(分筆)することにより土地の資産価値が下がる可能性がある、土地と建物の権利を分けることにより将来的にトラブルが発生する可能性も。
上記のように現物分割は全てのケースに対応しているわけではないため、他の分割方法を採用した方がいいと判断された場合には代償分割、換価分割のいずれかを採用します。
分割方法②1人が共有物を取得して代償金を支払う「代償分割」
代償分割とは、共有者の1人が代表して不動産の権利を取得して、他の共有者に持分割合の時価に応じた現金(代償金)を支払う方法です。価格賠償とも呼ばれています。
不動産の取得を希望しているのが1人で、他の共有者は現金化したいと考えている場合に採用されます。
しかし、不動産を取得する人に代償金を支払うだけの十分な資力(お金)がなかった場合は代償分割を採用できません。
また、代償金の設定金額によっては、他の共有者の不満が募ってしまうので代償金の評価をしっかりおこないましょう。
分割方法③不動産を現金化し分ける「換価分割」
換価分割とは、不動産を売却により現金化してから持分割合に応じて分ける方法です。
公平性が高く、共有者に資力がなくても問題ないので広く採用されています。
ただし、換価分割の判決が下った場合、一般的な不動産の売却ではなく裁判所の競売命令に従うことになるという点に注意してください。
共有物分割請求を避けた方がいい2つの理由
共有物分割請求訴訟を提起した場合、希望通りの分割方法が採用される可能性があるため、共有物分割請求訴訟を提起すべきと考えた人も多いと思います。
しかし、実際には以下の2つの理由から共有物分割請求訴訟は避けた方がいいです。
- 共有物分割請求にかかる費用が大きい
- 解決までに時間と手間がかかる
それぞれの理由について詳しく解説していきます。
理由①共有物分割請求訴訟にかかる費用が大きい
共有物分割請求訴訟を提起する際は、裁判所に支払う印紙代、郵便切手代、弁護士に支払う相談料や着手金、報酬金など多額の費用がかかります。
全てを合計すると共有持分の時価の1割程度を費用として支払わなくてはならないことを考えると、あまりおすすめできる方法とはいえません。
また、以下の2つのケースのように資産価値が下がるまたは受け取れる現金が少なくなる可能性もあるので注意してください。
現物分割では不動産の価値が下がる可能性がある
現物分割で土地を分割(分筆)することになった場合、分割前の敷地が広大で分割した後も十分な広さを確保できる場合は問題ありません。
しかし、敷地が分割によって小さくなった場合には、用途が限られてくることにより需要が少なくなるため、価値が下がる可能性があります。
広大な敷地ではない、共有者の人数が多い場合には共有物分割請求訴訟を提起せずに、他の解決方法を選択することをおすすめします。
競売になると相場の7割程度しか現金を受け取れない
「共有持分のみの売却よりも不動産を一括で売却した方が多くの現金が得られる」という話を聞いたことがある人も多いと思います。
確かにできることが限られている共有持分のみの売却よりも不動産を一括で売却した方が高く売却できるため、最終的に多くの現金が手に入る可能性が高いです。
しかし、それはあくまでも通常の売却方法を選択した場合のことで、共有物分割請求訴訟で競売が選択された場合のことではありません。
競売になった場合は、不動産の売却価格は相場の7割程度にしかならず、持分割合に応じて分けても共有持分のみを売却した場合と大きく変わらないことも。
共有物分割請求訴訟の提起にかかる費用も考えると、共有持分のみを売却した方が多くの現金を得られる可能性が高いです。
理由②解決までに時間と手間がかかる
共有物分割請求訴訟を提起すれば、速やかに不動産の分割方法が決まると思っている人も多いかもしれませんが、決してそうではありません。
協議・調停は3ヶ月~半年、訴訟は半年以上かかる
共有物分割訴訟を提起する前に必ず共有物分割協議をおこなう必要があります。
共有物分割協議には共有者全員が参加する必要があり、共有物分割協議だけで話し合いがうまくまとまったとしても、期間はおおよそ1~2ヶ月程度です。
協議では話し合いがまとまらず、共有物分割調停になった場合は3ヶ月~半年程度、さらに共有物分割請求訴訟に発展した場合は判決が下されるまでに半年以上かかります。
その間も固定資産税や都市計画税、水道光熱費、マンションだと管理費や修繕積立金などの維持コストがかかることを考えると、他の解決方法を選択することをおすすめします。
共有物分割請求以外の解決方法4つ
共有物分割請求訴訟はおすすめしないとのことですが、他に現金化するまたは共有状態を解消する方法はあるのでしょうか?
共有物分割請求訴訟以外の解決方法として、以下の4つがあります。
- 共有持分だけを買取業者に買い取ってもらう
- 共有持分を他の共有者に売却する
- 共有持分を他の共有者に贈与する
- 共有持分を相続放棄する
それぞれの解決方法を詳しく解説していきます。
解消方法①共有持分だけを買取業者に買い取ってもらう
1つ目は共有持分だけを買取業者に買い取ってもらうという方法です。
共有持分だけを取得しても購入者はできることが制限されるので、一般の人が共有持分を買い取ってくれることは基本的に期待できません。
しかし、共有持分専門の買取業者がおり、その業者に買い取ってもらうことができればすぐ共有持分を現金化できます。
また、買い取ってもらうという方法であれば不動産会社に仲介を依頼していないため、仲介手数料を支払う必要もありません。
今すぐに現金化したい、売却にかかる手間と費用を抑えたい人におすすめです。
解消方法②共有持分を他の共有者に売却する
2つ目は共有持分を他の共有者に売却するという方法です。
共有者の1人が不動産を占有しているケースでは、リフォームやリノベーションといった改良をおこなう際に、いちいち他の共有者の同意を得なくてはならないことに煩わしさを感じているという人も。
そのような共有者の場合、自身の持分割合を増やすことを希望している可能性があるため、買い取ってくれることも多いです。
しかし、買取価格で揉める、売却後に揉める可能性もあるため、不動産会社などの専門家に仲介を依頼することをおすすめします。
解消方法③共有持分を他の共有者に贈与する
3つ目は共有持分を他の共有者に贈与するという方法です。
他の共有者に贈与すれば自身の共有持分を失うことになるため、共有状態を解消できます。
そのため、共有状態を今すぐ解消したいと考えている人におすすめです。
しかし、贈与により相手に贈与税が課される可能性があるため、黙って贈与するのではなく事前に相手に伝えておく必要があります。
また、共有持分は持っていてもできることが限られている価値の低い資産ですが、贈与だと1円も手に入りません。
共有持分の売却であれば共有状態を解消できるだけでなくお金も手に入ることを考えると、共有持分の売却をおすすめします。
解消方法④共有持分を相続放棄する
4つ目は共有持分を相続放棄するという方法です。
共有持分を相続放棄した場合は、自身が相続するはずの共有持分は他の共有者に移るので共有状態を解消できます。
しかし、共有持分のみを相続放棄することはできず、全ての財産を放棄することになるので注意してください。
共有持分の相続放棄を選んだことが原因で損をする可能性もあるため、相続放棄について詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
【相続放棄】売却して現金化した方がお得なことも!相続放棄以外の選択肢を解説します
まとめ
共有持分を持っている人の中には、現金化や共有状態の解消を希望しているものの、同意を得られず悩んでいる人もいると思います。
同意を得らなかった場合における最終手段である共有物分割請求訴訟の提起は、裁判所が最も合理的な分割方法を決定して判決を下してくれます。
そのため、共有物分割請求訴訟を提起したいと考える人も多いかもしれませんが、裁判所に支払う印紙代や郵便切手代、着手金や報酬金などの弁護士費用を考えると共有物分割請求訴訟を提起することはあまりおすすめしません。
単に共有状態を解消したい、現金化したいのであれば、共有持分のみを売却した方が手間を省ける、すぐに現金化できるのでおすすめです。
買取業者によって共有持分の買取価格に差があるため、複数の買取業者に査定を依頼して最も高く買ってくれる買取業者に買取を依頼しましょう。
共有物分割請求訴訟の弁護士費用に関するQ&A
共有不動産の分割を、自分以外の共有者へ請求するための訴訟です。共有者同士での話し合いで分割が決まらない場合に提起できます。裁判官がもっとも合理的だと思われる分割方法を決定し、判決によって強制的に分割をおこないます。
共有状態のまま放置することはおすすめしません。例えば、共有状態のまま放置すると、相続によって共有者が次々と増えて、同意を得ることがより困難になる可能性があります。また、固定資産税や都市計画税、水道光熱費などの維持コストは共有者全員で分担します。将来的にトラブルに発展するリスク、無駄な支出が生じる可能性があることを踏まえると、速やかに共有状態を解消することをおすすめします。
費用面では、相談料無料、着手金や報酬金の設定が安い弁護士だと負担を抑えられます。しかし、経験が不十分な弁護士に依頼すると、希望通りの結果に至らない可能性もあるため、過去の実績、特に共有物分割請求訴訟に関する実績が豊富な弁護士に依頼しましょう。
自分の共有持分だけであれば他共有者の同意がなくても売却できるので、いつでも好きなときに共有持分を処分できます。
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