収入合算時の持分の決め方は?ローンの種類別に割合ルールを解説

収入 合算 持分 決め方

家を購入する際に、夫婦で収入を合算して住宅ローンを組むケースは少なくありません。収入合算すると、借入額の上限を引き上げられるというメリットがあります。

しかし、収入合算して住宅ローンを組むと、家は共有名義となり、夫婦それぞれの所有権割合を表す「持分割合」を決める必要があります。

持分割合は、出資額に合わせて決めるのが一般的です。出資額の比率と持分割合が違うと、贈与税が課される恐れもあります。

この記事では、持分割合を決める方法と、夫婦で住宅ローンを借りる3つのパターンについて解説します。

適切な収入合算をおこない、余計な税金が課せられないようにしましょう。

この記事のポイント

  • 収入合算した場合は出資額に応じて持分割合を決める。
  • 出資額を無視して持分割合を決めると贈与になる恐れがある。
  • 夫婦で住宅ローンを借りる方法は3つある。

目次

収入合算した場合は「出資額」に応じて持分割合を決める

家は高額な買い物となるため、多くの方が住宅ローンを借りて家を購入しますよね。

住宅ローンには、さまざまな種類や借り方があります。そのなかの1つが、収入合算という借り方です。

収入合算とは夫婦の収入を合算して住宅ローンを借りる方法で、夫婦のうち一方の収入だけで借りるよりも借入額を増やせます。

収入合算して夫婦どちらもが出資したのなら、家は共有不動産となります。

共有不動産は共有者それぞれに持分があり、誰がどれくらいの持分割合を有しているかを決めなければいけません。

持分割合とは?
共有者それぞれの所有権の割合のこと

持分割合は夫婦で話し合って自由に決められるものではなく、出資額に応じて決めます。

例えば3,000万円の家を購入する際に夫が2,000万円(2/3)を、妻が1,000万円(1/3)を出資したのなら、持分割合も夫2/3、妻1/3にしなければいけません。

収入合算とは夫婦の収入を合算して借入額を増やす方法

家を購入する際、夫婦のうち一方の収入だけでは希望する住宅ローンを組めないことがあります。

「理想的な家を見つけたのに、このままでは住宅ローンを組めずに諦めなければいけない。どうにかしたい!」

そんなとき検討したいのが、収入合算です。

収入合算とは、夫婦の収入を合算して借入可能額を増やす借り方です。

金融機関は「この年収ならこれくらいの返済はできるだろう」という額を貸してくれます。

夫婦の収入を合算すると判断基準となる年収がアップするため、借入可能額も高くなるという仕組みです。

持分割合とは所有権の割合のこと

持分割合とは、各共有者がもつ所有権の割合のことです。

不動産を1人で購入したら「単独名義」となり、所有権のすべては購入した人のものです。

しかし複数人で購入したら「共有名義」となり、出資した人それぞれに出資額に応じた所有権(持分)があります。

このように共有不動産の各共有者が、それぞれにもつ所有権(持分)の割合のことを持分割合といいます。

出資額を無視して持分割合を決めると贈与とみなされる

前述したように、持分割合は出資額に応じて決めなければいけません。

夫2/3、妻1/3の出資割合であれば、持分割当も夫2/3、妻1/3とするのが原則です。

もし出資額を無視して持分割合を決めた場合は、夫から妻へ贈与があったとみなされてしまいます。

例えば3,000万円の家を夫婦で購入し、夫が2,000万円、妻が1,000万円を出資したのなら持分割合は夫2/3、妻1/3となります。
しかし持分割合を1/2ずつに設定してしまうと、夫も妻も1,500万円ずつ出資したことになります。
実際には妻は1,000万円しか出資していないため、差額の500万円は夫から妻への贈与があったとみなされてしまうのです。

2人で住宅ローンを借りる方法1.夫婦に等しく返済義務がある「連帯債務型」

2人で住宅ローンを借りる方法は3つあります。

まずは夫婦に等しく返済義務がある「連帯債務型」から解説します。

連帯債務型は1つの住宅ローンを夫婦2人で契約し、夫婦共に債務者になります。

連帯債務型

夫婦に等しく返済義務が生じるため、夫婦どちらもが出資したことになります。

すなわち夫にも妻にも持分が与えられます。

連帯債務型の持分割合は収入割合で決める

夫婦に等しく返済義務が生じる連帯債務型は、夫婦どちらもが出資していることになります。

持分割合は出資額に応じて決めると解説しましたが、夫婦で家計が一緒になっているのに「どちらが」「どれだけ」出資したのかわからないのでは?という疑問が出てきますね。

連帯債務型の場合、出資割合は夫婦の収入割合をもとに判断するのが一般的です。

例えば夫が700万円、妻が300万円の収入だとします。この場合は出資割合が夫7/10、妻3/10となり、持分割合も夫7/10、妻3/10となります。

連帯債務型のメリット

連帯債務型には次の3つのメリットがあります。

連帯債務型のメリット
  • 1.借入額を増やせる
  • 2.夫婦ともに住宅ローン控除の対象になる
  • 3.諸費用の総額が単独ローンと変わらない

1.借入額を増やせる

申込者本人の収入だけでは希望する住宅ローンを組めないことがありますが、連帯債務型であれば妻(夫)の収入と合算してローン審査を受けられるため、借入額を増やすことができます。

2.夫婦ともに住宅ローン控除の対象になる

住宅ローンを利用して家を購入した人は、住宅ローン控除を利用できます。

住宅ローン控除(住宅ローン減税)とは?
一定要件のもと所得税や住民税が10~13年間毎年控除される制度です。

年間1人当たり最大40万円の控除を受けられるため、大きな節税効果があります。

ここで注目したいのが「住宅ローンを利用して家を購入した人が利用できる」という点です。

単独で住宅ローンを借りると申込者1人しか利用できない制度ですが、連帯債務型は夫婦どちらもが債務者のため2人ともこの制度を利用できます。

そうなると最大控除額は2倍になり年間で最大80万円も節税でき、連帯債務型を利用する大きなメリットといえます。

3.諸費用の総額が単独ローンと変わらない

住宅ローンの契約にはさまざまな諸費用が必要です。

諸費用は物件価格の約5~10%ほどかかるといわれており、家はそもそも高額なため諸費用も少ない額ではありません。

夫婦が別々に住宅ローンを契約すると諸費用も2本分になりますが、連帯債務型であれば住宅ローンの契約は1本のため、単独ローンと変わらず1本分の諸費用で済みます。

夫婦で収入合算するメリットを受けつつ、諸費用は最小限に抑えられます。

連帯債務型のデメリット

連帯債務型のデメリットは次の2つです。

連帯債務型のデメリット
  • 1.連帯債務者は団信に加入できない
  • 2.扱っている金融機関が少ない

1.連帯債務者は団信に加入できない

住宅ローンの契約を考えている人は、団体信用生命保険(団信)という言葉を聞いている人も多いと思います。

団信とは?
住宅ローンの債務者が返済期間中に万が一死亡または高度障害になったとき、保険金で住宅ローンの残債を完済できる保険です。

残された家族が、生活費に加えて住宅ローンの返済までしなければいけないとなると大きな負担ですが、保険で住宅ローンを完済できるのであればとても助かります。

連帯債務型は夫婦で出資しているのでどちらも団信に加入できそうですが、実際は夫婦の一方しか加入できません。

連帯債務型で団信に加入できるのは主債務者のみです。連帯債務者に何かあったときには、主債務者が1人で住宅ローンを返済しなければいけません。

その逆に、主債務者に何かあったときには団信に加入しているので住宅ローン残債は保険金で完済されます。

ただし、なかには主債務者のみでなく連帯債務者も団信に加入できる金融機関もあります。希望する場合は、金融機関へ確認してみましょう。

2.離婚した場合でも連帯債務者の返済義務は続く

夫婦が離婚した場合でも、住宅ローンの返済義務はどちらもなくなりません。

「夫が主債務者、妻が連帯債務者」というケースで離婚があっても、妻が連帯債務者であることに変更はないのです。

離婚を理由に連帯債務者から外れることはできないため、夫婦どちらも返済義務が続きます。

連帯債務型が向いている人

連帯債務型には夫婦そろって住宅ローン控除を受けられるという大きなメリットがありますが、住宅ローン控除の適用には「収入があり所得税や住民税を納めていること」が条件です。

そのため、夫婦ともに働き続けることを前提としている人に向いています。

いずれ妻が専業主婦になる予定があるなら、住宅ローン控除は夫しか受けられなくなり連帯債務型を選ぶメリットが減ってしまいます。

また、連帯債務型は家の所有権が夫婦2人となるため、離婚や別居によりトラブルが起こる可能性もあるので注意しなければいけません。

2人で住宅ローンを借りる方法2.住宅ローンが単独名義になる「連帯保証型」

続いては「連帯保証型」を解説していきます。

連帯保証型も夫婦2人の収入を合算して住宅ローンを契約しますが、夫婦のどちらかが債務者、もう一方が連帯保証人となり、債務者の単独名義の契約です。

連帯保証型

債務者のみに返済義務があり、連帯保証人は債務者が返済できない場合に返済義務が発生します。

連帯保証型は購入費を負担した人の単独所有になる

連帯保証型は債務者の単独名義になるため、連帯保証人に持分はありません。

夫を債務者、妻を連帯保証人として連帯保証型の住宅ローンを契約したなら、家は夫の単独所有になります。

妻には持分がないため、持分割合を決める必要がありません。

連帯保証型のメリット

連帯保証型には次の2つのメリットがあります。

連帯保証型のメリット
  • 1.借入額を増やせる
  • 2.諸費用の総額が単独ローンと変わらない

1.借入額を増やせる

連帯債務型も夫婦2人の収入を合算できるため、借入額を増やせます。

夫婦の収入を合算することで理想の家を手に入れられるというメリットがあります。

2.諸費用の総額が単独ローンと変わらない

連帯保証型も住宅ローンの契約は1本です。

そのため、連帯債務型と同じように夫婦が別々に住宅ローンを契約するよりも諸費用を節約できます。

連帯保証型のデメリット

連帯保証型のデメリットは次の2つです。

連帯保証型のデメリット
  • 1.連帯保証人は住宅ローン控除を受けられない
  • 2.連帯保証人は団信に加入できない

1.連帯保証人は住宅ローン控除を受けられない

前述したように、住宅ローン控除は年間1人当たり最大40万円、所得税や住民税の控除を受けられる制度です。

連帯債務型は債務者も連帯債務者も住宅ローン控除を受けられましたが、連帯保証型は債務者しか受けられません。

連帯保証人は住宅ローン控除を受けられないのがデメリットです。

2.連帯保証人は団信に加入できない

住宅ローンの債務者が返済期間中に何かあったときに、保険金で住宅ローンの残債を完済できるのが団信です。

団信には債務者しか加入できません。

連帯保証人は加入できないので注意が必要です。

連帯保証型が向いている人

夫婦どちらかの収入がメインではあるが、単独名義の住宅ローンより借入額を増やしたいという人に向いています。

また、共有名義にしたくない場合も連帯保証型が向いているといえます。

例えば夫の収入がメインなので夫名義の家を購入したいが、夫の収入だけでは希望する物件に手が届かないため、妻が連帯保証人になり収入合算するというケースが多くあります。

2人で住宅ローンを借りる方法3.夫婦それぞれが住宅ローンを組む「ペアローン」

正確には収入合算ではないですが、夫婦2人で住宅ローンを借りる方法に「ペアローン」があります。

連帯債務型と連帯保証型は1本の住宅ローンを契約する方法でしたが、ペアローンは夫と妻が別々に住宅ローンを組み、契約は2本になります。

ペアローン型

夫も妻もそれぞれが自身の契約の債務者となり、ほとんどのケースでお互いが連帯保証人となります。

ペアローンは夫婦どちらもが出資しているため、連帯債務型と同じように持分割合を決めなければいけません。

ペアローンの持分割合は頭金と借入額の総額で決める

ペアローンの持分割合は、頭金と借入の総額で設定します。

ペアローンの持分割合pc
例えば5,000万円の家を購入するにあたり、頭金1,000万円(夫が500万円、妻も500万円)で、住宅ローン4,000万円(夫2,500万円、妻1,500万円)だったとします。
合計すると夫は3,000万円、妻は2,000万円の出資です。
持分割合は出資額に応じるという考えから、夫3/5、妻2/5の持分割合となります。

ペアローンのメリット

ペアローンには、次の3つのメリットがあります。

ペアローンのメリット
  • 1.借入額を増やせる
  • 2.夫婦ともに住宅ローン控除の対象になる
  • 3.夫婦ともに団信に加入できる

1.借入額を増やせる

収入合算とは少し違いますが、それぞれの収入に応じて借り入れを受けられるため、2人合わせると借入額を増すことが可能です。

例えば購入を検討している家が4,000万円なのに対し、夫1人の申込みでは3,000万円しか借り入れられないとします。そんなときにペアローンを利用して、夫3,000万円、妻1,000万円のペアローンを組めば、3,000万円から4,000万円へと借入額を増やせます。

2.夫婦ともに住宅ローン控除の対象になる

夫婦それぞれが住宅ローンの契約者となるため、夫婦ともに住宅ローン控除の対象となります。

3.夫婦ともに団信に加入できる

ペアローンは夫婦ともに団信に加入できます。

ただし、夫婦で契約は別のため、どちらかに万が一の事態が起きたときは、該当者の残債のみ保険で完済されます。

夫婦2人分が完済されるわけではないので注意が必要です。

詳しくはデメリットで解説します。

ペアローンのデメリット

ペアローンには次の2つのデメリットがあります。

ペアローンのデメリット
  • 1.諸費用が2本分かかる
  • 2.団信から残債に充当されるのは死亡した本人分のみ

1.諸費用が2本分かかる

ペアローンは契約が2本のため、印紙代や事務手数料、団信の保険料などの諸費用が2本分かかります。

2.団信から残債に充当されるのは死亡した本人分のみ

ペアローンでは夫婦どちらも団信に加入できます。

しかし、もしものときに団信から残債に充当されるのは死亡した本人分のみです。

例えば夫3,000万円、妻1,000万円でペアローンを組み、夫の残債が2,000万円のときに夫が亡くなったとします。
すると夫の残債である2,000万円のみが団信から完済されますが、妻の住宅ローンは継続するので注意しなければいけません。

ペアローンが向いている人

デメリットにあったように夫婦が各自で団信に加入するため、夫が亡くなったとしても妻の住宅ローンは残ります。

引き続きローン返済は継続するため、夫婦ともに働いている場合は向いているでしょう。

また、夫婦が別々に住宅ローンを契約するため、夫婦ともに収入を減らさず働き続けられるかもポイントです。

子どもをもっても妻は正社員で働き続けるのかや、介護での休職や退職が起こり得るのかなど、将来のことまで考えなければいけません。

まとめ

収入合算して住宅ローンを借りるなら、家の持分割合を決めなければいけません。

持分割合は出資額に応じて決めます。出資額を無視して決めると贈与とみなされる恐れがあるので注意しましょう。

理想の家を手に入れるには借入額が足りないとなったとき、夫婦2人で住宅ローンを借りることを検討します。

2人で住宅ローンを借りる方法は「連帯債務型」「連帯保証型」「ペアローン」の3つがあります。

どの方法にもメリットとデメリットがあるため、自分たちにはどの借り方が向いているのかを見極めなければいけません。

住宅ローンの返済は長期間におよぶため、いまだけでなく将来のライフプランも考えてベストだと思える借り方を選んでくださいね。

収入合算した場合の持分に関するFAQ

  • 収入合算と何ですか?

    収入合算とは、夫婦などがそれぞれの収入を合算し、借入の上限額を大きくする方法です。
    収入合算で住宅ローンを借り入れた場合、購入した不動産は共有名義となります。

  • 収入合算した場合、持分の決め方にルールはありますか?

    収入合算して住宅ローンを組んだなら、持分は出資額に応じて決めます。
    出資額を無視して決めることも可能ですが、そうなると贈与税が課せられる恐れがあります。

  • 収入合算したいですが、家の名義は夫の単独名義にしたいです。可能ですか?

    収入合算して住宅ローンを借りる方法に連帯保証型があります。夫を債務者として連帯保証型を選択すれば、妻に家の所有権はないため夫の単独名義となります。

  • 夫婦で収入合算するにあたって、どのようなローンの組み方がありますか?

    夫婦が共同で住宅ローンを組む場合、3つの方法があります。
    「連帯債務型」は、夫婦双方が債務者となりますが、主債務者と連帯債務者にわけられます。
    「連帯保証型」は、債務者となるのは1人だけで、もう1人は連帯保証人です。
    「ペアローン」は、正確には収入合算ではありませんが、夫婦それぞれが別々にローンを組んで1つの不動産を購入する方法です。

  • ペアローンを検討していますが、家が共有名義になるデメリットは何ですか?

    共有名義になるデメリットはいくつかありますが、離婚時の財産分与が複雑になることが挙げられます。
    離婚時の財産分与では持分割合に関係なく半分ずつわけるのが基本です。しかしどちらかが住み続けることを希望する、持分割合に沿って分割したいと言い出すなどのトラブルが起こりがちです。