共有物分割請求は拒否できない!請求する側・される側双方の対処法

共有物分割請求 拒否

共有物分割請求とは、文字どおり共有状態の解消を請求する手続きです。共有持分をもっていれば、持分割合に関わらず請求できます。

誰かが請求をおこなえば、共有者全員で共有不動産の分割方法を話し合います。

話し合いで解決しない場合は、訴訟を起こすことで判決による分割方法の決定がおこなわれます。判決には強制力があるため、共有状態の解消は最終的に拒否できません。

ただし、訴訟に発展すると、共有状態の解消を請求するほうも請求されるほうも、書類の作成や裁判所への出廷などで手間が発生します。

手っ取り早く共有状態を解消したいなら、自分の共有持分を売却する方法もあります。専門買取業者に相談すれば最短2日で買い取ってもらえるので、ぜひ検討してみましょう。

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この記事のポイント

  • 共有物分割請求をされると共有状態の解消は拒否できない。
  • 共有物分割請求をされた場合は5つの対処法がある。
  • 共有物分割請求に応じてくれない場合は3つの対処法がある。

共有物分割請求されると共有状態の解消は拒否できない

共有者から「共有不動産を売りたい」「建て直したい」などといわれても、同意できないこともありますよね。

そのようなときは、同意をしなければ共有者が勝手に売ることも建て直すこともできません。

共有不動産の売却などには共有者全員の同意が必要だからです。

しかし「共有物を分割して共有状態を解消したい」といわれた場合、話は違ってきます。

この場合、同意しなければ済むというわけにはいかないのです。話し合いによって解決しなければ、共有者が調停や訴訟を起こす可能性があります。

訴訟となると共有状態の解消を拒否することはできませんし、共有不動産をどのように分割するかも裁判所に決められることになります。

各共有者はいつでも共有物分割請求できる

共有不動産は複数人で共有しているからこそ、意見の食い違いなどで不自由さを感じてしまいますよね。

そこで、民法では共有物の分割を求める権利を規定しています。

各共有者は持分割合に関わらず、いつでも共有物の分割請求が可能です。

民法第256条
1.各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。(中略)

引用:e-Govポータル「民法第256条」

持分割合とは?
共有者それぞれがもつ所有権の割合。

仮に「自分の共有持分が1/3、相手の共有持分が2/3」というように相手の持分の方が多かったとしても、共有物分割請求が可能です。

共有物分割請求には3つのステップがある

共有物分割請求には次の3つのステップがあります。

共有物分割請求の3ステップ
  1. 共有物分割協議(必須)
  2. 共有物分割調停(必須ではない)
  3. 共有物分割請求訴訟

共有物分割請求する際には、いきなり訴訟からスタートすることはできません。

まずは当事者間で話し合う「共有物分割協議」が必要です。

協議で解決しなければ調停委員を交えて話し合う「共有物分割調停」を申し立てます。

それでも合意できなければ「共有物分割請求訴訟」を起こせます。

ただし、ステップ2の「共有物分割調停」は必須ではありません。

「共有物分割協議」のあと、すぐに「共有物分割請求訴訟」を起こすこともできます。

「調停を飛ばせるならすぐに裁判をした方が早そう」と感じるかもしれませんが、裁判となると労力や時間、お金がかかります。

必ずしも調停を飛ばした方がよいというわけではありません。

裁判所で調停委員を交えると合意が成立するケースもあるため、調停を飛ばさない選択を取るケースも多くあります。

訴訟になると3つの分割方法から決められる

協議や調停では、どのように分割すればよいか意見を出し合いながら協議します。

しかし「共有物分割請求訴訟」では、裁判所の判決によって不動産の分割方法を決定します。

分割方法は次の3つから選択されます。

分割方法の種類
  • 現物分割
  • 代償分割
  • 換価分割

裁判所の裁量によって分割方法を選択されるため、各共有者が特定の分割方法を拒否することも、選択することもできません。

3つの分割方法について詳しく解説していきます。

現物分割

現物分割は、共有不動産を切り分け、共有持分割合に応じて分割する方法です。

現物分割pc

実際に切り分けることができる土地の場合に、選択される可能性が高くなります。

土地を分割してそれぞれの単独名義にすることを「分筆」といいます。

分筆するには、土地の面積だけでなく形状や日当たりなども考慮しなければいけません。

切り分けることで一方の土地の価値が著しく低下する場合などは、土地であっても他の方法を選択されることがあります。

代償分割

代償分割は、共有持分とお金(代償金)を交換する方法です

価格賠償とも呼ばれ「部分的価格賠償」と「全面的価格賠償」の2つの方法があります。

部分的価格賠償は、共有不動産を現物分割した際に生じる価値的な差をお金(代償金)によって精算する方法です。

代償分割(部分的価格賠償)pc
例えば土地を2人で共有していたとします。
持分割合は1/2ずつのため土地も1/2にしたいのですが、分筆後の土地のうち道路に面していないものがあると、それぞれの資産価値に差が出てしまいます。
このような場合の差分を、現金で賠償する方法が部分的価格賠償です。

そして全面的価格賠償は、共有者の1人が不動産を取得し、他の共有者にお金(代償金)を払う方法です。

代償分割(全面的価格賠償)pc
例えば土地を3人で共有していたとします。
1人が他2人の共有持分をすべて買取る方法が全面的価格賠償です。

不動産を取得したい共有者がいれば優先的に選択されますが、強制的に持分の買取りを命じられることはありません。

換価分割

換価分割は、競売によって不動産を売却し、その売却代金を持分割合に応じて分配する方法です。

換価分割pc

現物分割も代償分割もできないときに選択されます。

例えば3人で共有している土地と建物があったとします。
共有者はどちらも代償金の支払い能力がなく、希望しても代償分割は選択できません。
また、建物は物理的に分けることが難しいため、現物分割も選択できません。
こうした場合に換価分割が選択されます。

換価分割では競売によって売却し、経費を差し引いた残金を共有持分割合に応じて分配します。

競売による売却のため、一般的な不動産売買と比べると大幅に安い価格で落札される恐れがあります。

特定の分割方法を拒否することも選択することもできない

共有物分割請求訴訟では裁判所が分割方法を決定するため、各共有者は分割方法を選択することができません。

例えばAさんは土地の現物分割を望んだものの、協議が決裂したために共有物分割請求訴訟を起こしたとします 。
Aさんは裁判所の判決で現物分割になることを望んでいるわけですが、必ず現物分割になるとは限りません。
日当たりなど土地の面積以外の条件を考慮した結果、部分的価格賠償を命じられる可能性もあるのです。

このように、共有物分割請求訴訟となると共有物の分割(共有状態の解消)はされますが、望んだ方法で分割されるとは限らない点に注意が必要です。

共有物分割請求されたときの対処法

ここまで解説してきたように、協議による共有物分割請求を拒否したとしても、裁判所の判決を拒否することはできません。

共有物分割請求訴訟まで進むと、3つの分割方法から最も適していると考えられる方法を命じられるからです。

共有物分割請求をされたとき、分割方法を希望する形に近づけるにはどうしたらよいのか、対処法を解説していきます。

不動産を手放したくない場合は相手の持分を買取る

共有物分割請求をされたが不動産を手放したくないと考えているなら、共有者の共有持分を買取りましょう。

共有物分割請求訴訟となると分割方法は選択できないため、競売になる可能性もあります。

競売を避けたければ、共有持分の買取りを提案してみましょう。

他の共有者も不動産を手放したくないと考えているなら、買取価格を高く設定する必要があります。

共有持分を買取るための資金を一括で用意できないのであれば、分割払いなどの方法も交渉しなければいけません。

難しい交渉になるかもしれませんが、相手側にとっても、競売を避けたほうがお得になるというメリットがあります。

相手のメリットも伝えることで、売買契約が成立しやすくなります。

不動産を手放してもよい場合は3つの選択肢がある

共有不動産を手放してもよい、もしくは手放したくはないが買取る資金を用意できないといった場合は、3つの選択肢があります。

共有不動産を手放す3つの方法
  • 共有者と協力して共有不動産を1/1で売却する
  • 共有者と会わずに共有不動産を1/1で売却する
  • 自分の共有持分のみを売却する

繰り返しになりますが、共有物分割請求は最終的に拒否することはできません。

訴訟になると大変な労力や時間がかかるのに拒否することもできないため、訴訟になる前に双方が譲り合える着地点を見つけることも大切です。

共有者と協力して共有不動産を1/1で売却する

不動産を手放すのなら、できるだけ高く売りたいと考えますよね。

共有不動産は1/1、つまり不動産全体を売却する方法が一番高く売れます。

共有不動産であっても、1/1で売却すれば通常の不動産と同等の価値があるからです。

「訴訟にかかる労力や時間を避けたい」「不動産を手放すにしても競売となった場合の金銭的なデメリットを避けたい」といった部分で共有者と合意できれば、1/1での売却は有効な手段です。

この場合、共有不動産を売却したお金を持分割合に応じて分配します。

共有者と会わずに共有不動産を1/1で売却する

共有不動産を1/1で売却する方法が最適だと思っても、これまでに話し合いがこじれており、共有者間の関係が悪化しているケースもあります。

また、病気や距離的な問題などから共有者全員が集まるのは難しいというケースもあるでしょう。

このような場合は、代理人へ委任して1/1で売却することもできます。

ただし、代理人は慎重に選ばなければいけません。信頼できる家族や親族、もしくは弁護士や司法書士などの専門家を代理人としましょう。

また、代理人に委任する場合は委任状を作成しなければいけません。委任状の作成方法や委任状以外に必要な書類は、こちらの記事で詳しく解説していますので参考にしてみてください。

自分の共有持分のみを売却する

共有不動産を1/1で売却するには共有者全員の同意が必要ですが、自分の共有持分のみの売却であれば他の共有者の同意は必要ありません。いつでも、自分の意思のみで売却できます。

「共有物分割請求され協議がこじれるうちに関係が悪化してしまった」「もう関わりたくない」「スピード解決したい」などの場合は、自分の共有持分のみを売却しましょう。

共有不動産を1/1で売却する場合は通常の市場で買主を見つけられますが、共有持分のみを売却する場合、通常の市場で買主を見つけるのは困難です。

そのため、共有持分のみを売却する場合は「専門の買取業者」に依頼しましょう。

専門買取業者への売却は、依頼から現金化まで最短で一週間ほどとスピーディーに解決できるのが魅力です。

共有物分割請求に応じてくれないときの対処法

共有物分割請求訴訟まで発展すると、分割(共有状態の解消)を拒否することはできないため最終的には解決します。

しかし裁判所が決定した分割方法に従わなければいけませんし、大変な労力とお金、時間がかかってしまいます。

標準的に、共有物分割請求訴訟を提起してから判決までは6ヶ月程度です。

できればスムーズに解決したいと考えるのは当然です。そこで、相手が共有物分割請求に応じてくれない場合の対処法を解説します。

内容証明郵便で協議がおこなわれた証拠を残す

共有物分割請求の1つ目のステップは共有物分割協議だと解説しました。

協議で解決しなければ調停や訴訟という選択肢がありますが、訴訟を提起するには協議が必須です。

訴訟へと進んだ際に「協議をしていない」と相手からいわれないようにするため、共有物分割協議をおこなったという確かな証拠を残したほうがよいでしょう。

共有物分割協議をおこなう際には「内容証明郵便」を使って協議の申し入れをします。

内容証明郵便では「いつ・誰が誰に・どのような内容の書面を送ったか」ということを証明できます。

受領人は印鑑や署名が必要になるため「受け取っていない」と嘘をつかれることを防ぐこともできます。

共有物分割協議をしたにも関わらず「していない」といわれてしまうと、余計なトラブルが発生してしまいます。

訴訟まで発展した場合のことも考えて、内容証明郵便で共有物分割協議の申し入れをしましょう。

訴訟によるデメリットを説明する

共有物分割請求に応じてくれないなら、最終的には訴訟も考えていること、訴訟になると拒否できないことを説明しましょう。

口頭弁論の準備や予定の調整などが必要となるので、相手にとってもデメリットです。

訴訟によるデメリットを説明することで、協議で和解を目指したほうがお互いのためになると納得してもらえるケースもあります。

自分の共有持分のみ売却する

共有状態を解消したいと考える人にとって、共有物分割請求訴訟は頼りになる法的な手続きです。

しかし、訴訟を提起する側にとってもデメリットがゼロなわけではありません。

訴訟には専門的な知識と経験が必要になるため弁護士への依頼が一般的です。依頼時には着手金を、問題解決時には報酬が必要です。

そして、分割方法は裁判所の判断に委ねられるため、思い通りの結果にならない恐れもあります。

これらのことから、相手が共有物分割請求に応じてくれない場合は訴訟まで発展させずに、自分の持分のみを売ってしまった方が賢明な場合もあります。

共有者同士でトラブルとなっており、スムーズに売却したいということであれば弁護士などの専門家と連携している業者に依頼すると安心です。

まとめ

共有物分割請求は協議からはじまり、協議で解決しなければ調停や訴訟を提起できます。

共有物分割請求を協議や調停で拒否したとしても、裁判所の判決を拒否することはできません。

そのため、共有状態を解消したいと考える人にとって、共有物分割請求訴訟は頼りになる法的な手続きです。

しかし、訴訟になると分割方法を選べないため、共有者の誰にとっても望まない分割方法を下される可能性もあります。

「共有者と意見が合わず関係が悪化している」「共有状態から早く解放されたい」ということであれば、共有持分の売却を検討することをおすすめします。

共有物分割請求に関するFAQ

  • 共有物分割請求とはなんですか?

    共有物分割請求とは、自分以外の共有者に対して、共有不動産の分割を求める権利および手続きです。請求を受けた共有者はこれを拒否できず、協議や訴訟によって分割方法を決定しなければいけません。

  • 共有物分割請求は何からするのですか?

    まずは協議をおこない、共有者による話し合いで解決を図ります。協議で解決しない場合、裁判所に申し立てて調停や訴訟へと進みます。

  • 共有物分割請求訴訟はどんな流れで進みますか?

    まずは裁判所に訴訟を申し立てます。その後、裁判所から共有者全員に呼出状が送付され、口頭弁論または答弁書の提出がおこなわれます。それらの内容や各種資料・証拠をもとに裁判所が判決を下して終了です。

  • 共有物分割請求訴訟の判決に納得ができない場合、控訴は可能ですか?

    控訴は可能ですが、控訴したからといって思い通りの内容に変わるとは限りません。

  • 共有物分割請求されたので、自分の持分のみを売却したいです。

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