親子で有する共有持分は売却できる?売却方法と注意点を解説

相続などがきっかけで、親子で不動産を共有している人も多いでしょう。共有名義の不動産では、各共有者の所有権を「共有持分」といいます。
共有不動産全体の売却は、共有者全員の同意が必要です。もしも親が認知症になってしまえば、売却が困難になります。
そのため、親が高齢の場合はなるべく早めに共有名義を解消するか、売却することをおすすめします。
また、自分の共有持分だけであれば、いつでも好きなときに売却が可能です。
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この記事のポイント
- 親子で共有している不動産の共有持分であっても、自分の意思のみで売却できる。
- 親子の共有不動産で親が認知症になったときのリスクを避けるには、共有持分の売買や贈与で共有名義を解消しておく。
- 親が既に認知症を患っている場合は「成年後見制度」を活用する。
親子で有する共有持分の売却方法と注意点
配偶者は常に相続人になるため、被相続人が亡くなって不動産を親子で相続するケースは多いです。
相続した不動産に住んでいない共有者の中には、不動産を売却する現金化を検討している人もいると思いますが、勝手に売却しても問題はないのでしょうか?
親子で有する共有持分の売却方法には、以下の3つがあります。
- 自身の共有持分のみを売却する
- 不動産を分筆してから売却する
- 不動産を一括で売却する
それぞれの売却方法と注意点について詳しく見ていきましょう。
自身の共有持分のみを売却する
まずは自身の共有持分のみ売却するという方法です。
相続で不動産を親子で取得した場合、相続割合に応じて不動産の共有持分を取得します。
不動産を一括で売却する場合は、勝手に売却すると共有持分を有する他の共有者の権利を大きく害することになるため、共有者全員の同意が必要です。
しかし、自身の共有持分のみを売却する場合は他の共有者の同意を得る必要はなく単独で売却できます。

そのため、速やかに現金化したいと考えている人にはこの方法をおすすめします。
売却価格が安くなる
速やかな現金化が期待できるのがこの方法の魅力ですが、売却価格が安くなるという点に注意が必要です。
その理由は、共有持分だけを取得しても他の共有者と共同でその不動産を使用する権利を取得するだけだからです。
購入者にとってはメリットがないため、買い手が投資目的の業者や投資家に限定されます。
買取価格は相場よりも安く売却すると損をすることになるため、急にお金が必要になって現金化が必要なケースに限って利用した方が良いでしょう。
購入後の第三者とトラブルに発展する可能性がある
共有持分のみの売却では、購入後の第三者が共有物分割請求訴訟を提起して他の相続人とトラブルに発展する可能性があるので注意が必要です。
共有物分割請求訴訟とは、共有者が共有物の分割を裁判所に請求することです。
裁判所は不動産の分割や共有者間での共有持分の売買、不動産を競売にかけて売却代金を分割するといういずれかの方法を選択します。
他の共有者が望んでいない結末になって迷惑をかける可能性があります。
売却の同意を得る必要はありませんが、共有持分を売却する旨は伝えておきましょう。
不動産を分筆してから売却する
続いて不動産を分筆してから売却するという方法です。

共有持分を有しているのが土地の場合は、持分割合に応じて土地を分筆することによって単独名義になるため、単独で売却できるようになります。
また、共有持分のみの売却とは違い、購入者は単独で土地を使用できるので共有持分のみの売却よりも多くの現金を得ることが可能です。
そのため、共有持分を有しているのが土地で、多くの現金を手に入れたい人にはこの方法をおすすめします。
分筆したことによって価値が下がる可能性がある
分筆して売却することによって多くの現金を得ることができると言いましたが、必ずしも多くの現金を得られるとは限りません。
その理由は、土地を分筆したことで分筆前よりも価値が下がる可能性があるためです。
相続した土地が大きな100坪を超える大きな土地であれば問題ありませんが、50坪程度の土地の場合は2人で均等に分けると25坪程度になります。
宅地は35~40坪程度が平均と言われており、上記のように平均を下回った場合には需要が低くなって価値が下がる可能性があるので注意が必要です。
また、均等に分けていても分け方によっては価値に差が生じることもあります。
そのため、分筆すべきかどうか悩んだ場合には、土地の専門家である土地家屋調査士などに相談しましょう。
不動産を一括で売却する
最後は不動産を一括で売却するという方法です。

この方法は他の共有者に大きな影響を与えることから、単独での売却は認められておらず共有者全員の同意が必要です。
共有者全員の同意を得るのに手間と時間がかかりますが、上記の2つの方法と比べて最も高く売ることが期待できます。
そのため、共有者全員の同意を得られる可能性があって、多くの現金を手に入れたい人にはこの方法をおすすめします。
同意を得られなければ一括売却できない
不動産を一括で売却するのが最も簡単で多くの現金を手に入れることが期待できますが、同意を得ることが容易ではないケースもあります。
例えば、他の共有者がその不動産に住んでいるケースや先祖代々その土地に暮らしているケースなどではなかなか同意が得られません。
他の共有者がその不動産に住んでいるケースでは話し合いの末、転居先を確保することで同意を得られる可能性があります。
しかし、先祖代々その土地に暮らしているケースでは空き家であっても同意を得られない可能性が高い点に注意が必要です。
共有物分割請求訴訟を提起する
前述のように必ず同意を得られるとは限りません。
そのような場合には共有物分割請求訴訟を提起するという選択肢があります。
共有物分割請求訴訟については、「購入後の第三者とトラブルに発展する可能性がある」の見出しで既に触れましたが、何らかの形での現金化が可能です。
しかし、共有物分割請求訴訟は手間と費用がかかるという点に注意が必要です。

親が高齢の場合の対処法
相続が発生した時点で親が高齢であることも多いです。
親が高齢の場合は、不動産をそのまま放置していると認知症を患って将来的にトラブルに発展する可能性があるので早めに不動産をどうするのか話し合っておく必要があります。
親が高齢の場合の対処法には、以下の2つがあります。
- 親子間で共有持分を売買する
- 親子間で共有持分を贈与する
それぞれの対処法について詳しく見ていきましょう。
親子間で共有持分を売買する
親が不動産に住んでいる場合は親が子供の共有持分を買い取る、子供が住んでいる場合は子供が買い取って共有名義を単独名義に切り替えます。
そうすれば売却して現金化する場合も単独名義なので速やかに売却することが可能です。
単独名義に切り替えておくことは売却時に有利なだけではありません。
共有状態でリフォームやリノベーションなどの増改築を行う場合は、共有持分の過半数の同意を得る必要がありますが、単独名義であれば必要なくなります。
親子間で共有持分を贈与する
親子間で共有持分を売買したいと思っていても、共有持分を買い取れるだけの自己資金を有していない場合には贈与するという方法もあります。
贈与であれば共有持分を買い取らずに済むため、自己資金が不足している場合でも名義を単独名義に切り替えることが可能です。
しかし、贈与の場合は贈与税が発生するため、どのくらいの税金を納める必要があるのかを事前に確認しておきましょう。
税率の高い贈与税が課されるので注意
親子間で共有持分を贈与する場合、税率の高い贈与税が課されるので注意が必要です。
贈与財産が不動産の場合における贈与税の計算式は「(路線価または固定資産税評価額から算出した評価額-基礎控除110万円)×贈与税率-控除額」です。
参照:贈与税の計算式
なお、贈与税率は子供がその年の1月1日時点で20歳未満か20歳以上かで以下のように異なります。
【20歳未満の場合(一般税率)】
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
【20歳以上の場合(特例税率)】
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | – |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
参照:国税局 贈与税率
贈与税の税率は最大55%となっているため、税負担も含めて売却と贈与のどちらが良いか決める必要があります。
また、売買の場合もどちらか一方が有利になるように相場よりも安く売却した場合、差額が贈与税の対象となることもあるので注意が必要です。
相続時精算課税制度を活用する
共有持分を買い取る資金がない、贈与税を支払う資金もない場合は相続時精算課税制度を利用するという方法があります。
相続時精算課税制度とは、贈与時に贈与税が課されるのではなく、親が亡くなった時の相続財産と生前の贈与財産の全てに相続税を課すという制度です。
相続時精算課税制度を利用すれば、2,500万円までは贈与税を課されずに済みます。
しかし、親の年齢が贈与した年の1月1日時点で60歳以上、子供が20歳以上でなければ相続時精算課税制度を利用できません。
また、相続時精算課税制度を利用すれば、毎年110万円まで贈与税を課されずに贈与できる暦年贈与を利用できなくなって損をする可能性も。
参照:相続時精算課税制度
どうすれば良いか分からずに悩んでいる人は、税金の専門家である税理士に相談することをおすすめします。
参照:相続時精算課税制度
親が既に認知症を患っている場合は成年後見制度を利用する
認知症になっている人は、不動産の売却を含むあらゆる法律行為ができません。意思能力(自分の行為がどのような結果を起こすか判断する能力)がないため、売買契約を結んでも無効になります。
つまり、親が認知症になっていると共有不動産全体の売却もできませんし、親のもつ持分だけ売却することもできません。親子間で持分を売買・贈与することも不可能です。
「親が認知症だが、いますぐ共有不動産を売却したい」といった場合は、成年後見制度を利用することになります。成年後見制度とは、認知症または障害などの理由で、判断能力が低下している人の代わりに財産の管理や法的な手続きを支援する制度です。
被後見人(後見を受ける人)の利益や生活の保護が目的なら、後見人(後見をする人)の判断で不動産を売却できるようになります。
成年後見制度は、任意後見制度と法定後見制度の2つに分かれます。
1.任意後見制度
任意後見制度とは、意思能力が十分な状態で自ら将来に向けて後見人になってくれる人を選びたいというケースで利用できる制度です。

本人が家族や弁護士などに依頼し、任意後見契約を結びます。このとき、財産をどのように管理するのか、あるいは処分してしまうのかなどを本人の意思で指定します。
その後、本人の意思能力が低下してきたとき、本人・配偶者・4親等内の親族・任意後見契約を結んだ相手のいずれかが家庭裁判所に申し立てを行います。
申し立てを受けた家庭裁判所から任意後見監督人が選任されると、任意後見契約を結んだ相手は正式に任意後見人となり、後見業務をスタートします。
親が任意後見契約をしているかわからないという場合は、法務局の戸籍課に問い合わせるとわかります。家庭裁判所への申し立て時に必要な登記事項証明書も、法務局で取得できます。
2.法定後見制度
法定後見制度とは、意思能力の状態に応じて家庭裁判所が支援者を決定する制度です。

意思能力が不十分な場合は、裁判所が認めた一定の業務のみを代行する補助人を決めます。
意思能力が著しく不十分な場合は、補助人が行う業務範囲に加えて金銭や不動産に関わる同意見や取消権を持つ補佐人を選任します。
一方、意思能力がないと判断された場合は、補佐人の業務範囲に加えて法律行為の代理権や取消権を持つ成年後見人を選任するという流れです。
家庭裁判所に選任された補助人・補佐人・成年後見人などは、定期的な財産管理などを報告、日常生活以外の出費や財産の処分について家庭裁判所に相談しなければなりません。
参照:法定後見制度
成年後見制度による不動産の売却は「被後見人の利益や生活のため」に限られる
成年後見制度は被後見人の財産管理や法的手続きを支援する制度であり、本人以外の人物が好き勝手に財産を処分するための制度ではありません。
そのため、任意後見制度の場合は任意後見監督人が、法定後見制度の場合は家庭裁判所が、適切に後見業務をおこなっているかチェックします。後見人であっても、被後見人の財産を自由に売却できるわけではないのです。
具体的にどのような不動産売却が「被後見人の利益や生活のため」とみなされるかは個々のケースによりますが、主な例は下記のとおりです。
- 被後見人の医療費を出すため
- 介護施設への入所費用を出すため
- 被後見人のもつ借金を返済するため
成年後見制度を利用することになった場合は、何かと手間と時間がかかるようになるため、親が認知症になる前に不動産の共有持分をどうするのかを決めておきましょう。
まとめ
相続が発生した場合に親子で不動産の共有持分を取得することは多いです。
現金化する場合にはいくつかの売却方法から選ぶことができますが、いずれもメリットとデメリットがあるため、よく考えてから選ぶことが重要です。
現金化する必要がないからと言って共有状態のまま放置しておくことはおすすめしません。
親が認知症になった場合は成年後見制度を利用することになり、何かとその後の手続きに手間と時間がかかってしまいます。
手間と時間がかかる、トラブルに発展するリスクを踏まえると、現金化する必要がなくても早めに不動産の共有持分をどうするのか話し合っておくことをおすすめします。
親子の共有持分についてよくある質問
-
そもそも、共有持分とはどんなもの?
共有持分とは、共有不動産における「共有者ごとの所有権割合」を表したものです。相続時や、共同出資で不動産を購入したときなど、複数人で不動産を所有するときに発生します。
-
共有持分のみでも売却は可能?
はい、共有持分のみでも売却可能です。他共有者の同意も不要で、自分の意思のみで売却できます。「共有持分の専門買取業者」に依頼すれば、高額かつ最短数日での買取を期待できます。→【弁護士と連携!】共有持分の無料査定はこちら
-
親子間での共有持分を売買したり、贈与することはできる?
はい、可能です。とくに、贈与の場合は「相続時精算課税制度」を使うことで課税を相続時まで先送りできます。贈与税より相続税のほうが税率は低く、課税額が安くなるのでお得です。
-
親が認知症になってしまったが、親のもっている共有持分はどうすればいい?
成年後見制度を利用すれば、認知症になった親の共有持分を管理できるようになります。ただし、管理はあくまで本人(後見を受ける人)の生活や利益を守るためにおこなう必要があり、後見人になったからといって自由に共有持分を処分できるわけではないので注意しましょう。
-
共有不動産を巡って親子でトラブルになったときはどうすればいい?
まずは不動産問題に詳しい弁護士へ相談し、適切な交渉や法手続きをおこないましょう。トラブルの解決が難しいようであれば、持分売却などで早めに共有名義を解消することをおすすめします。