相続放棄した家が倒壊したらどうなる?管理責任の範囲について

自分が相続人となったとき、相続することを拒否する方法として「相続放棄」があります。不動産の管理責任を避けるために、相続放棄をする人も多いでしょう。
しかし、相続放棄をしただけでは、不動産の管理責任から逃れられません。相続財産管理人の選任を申し立てる必要があります。
また、相続放棄は不動産以外の相続財産もすべて放棄する必要があるなど、デメリットも多数あります。
自分にとっては不要な家でも、売却すれば利益を得られる可能性があるため、一旦は相続することも検討してみましょう。
弁護士と連携した買取業者に相談すれば、相続問題から家の売却まで総合的なサポートを受けられるのでおすすめです。
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この記事のポイント
- 相続放棄しても管理責任から逃れられない場合がある。
- 相続財産管理人には報酬を支払わなければいけない。
- 相続財産に家が含まれる場合、相続放棄ではなく家を売却する方法もある。
相続放棄しても管理責任から逃れられない場合がある
相続が発生すると、相続財産のなかに家が含まれていることが多くあります。
不動産を相続できるなら損にはならないと思われがちですが「自分の家からは遠く管理も活用もできない」「使いみちがなさそう」「相続しても古くて価値がない」などの理由から相続放棄を検討する方がいます。
相続放棄をすると自分には所有権がありません。
所有権がないのですから、もしも倒壊などしても自分には責任がないように感じてしまいますね。
しかし相続放棄したとしても空き家の管理義務が残る可能性があります。
例えば1人しかいない相続人が相続放棄した、相続人全員が相続放棄したとなると、その家は誰も管理する人がいない状態になり、倒壊などの危険性があります。
そこで管理する人が途切れないよう民法には次のように定められています。
第940条第1項
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
相続放棄すると不動産の所有権はないにも関わらず、次に管理をする人の準備が整うまで管理義務は残るということです。
空き家を相続放棄する場合の注意点などについて、こちらの記事で詳しく解説していますので参考にしてみてください。
相続放棄した家が倒壊した際にどんな責任を負う可能性がある?
相続放棄した家がもしも倒壊した場合、管理義務が残っていると近隣住民への賠償や撤去費用の請求をされる可能性があります。
第三者に迷惑をかけ、金銭的な負担を被ることになりかねないため注意しなければいけません。
1.近隣住民への賠償責任
家を放置していると劣化が進み倒壊などの事故が起こる可能性があります。
それだけでなく、放火されて第三者に損害を与える可能性も否定できません。
もしも事故が起こってしまうと被害者から損害賠償請求を受ける可能性があります。
2.撤去費用の負担
誰も相続する人がいないと、相続放棄をしたとしても管理責任は残ります。
相続放棄した家を放置していると特定空き家に指定され、管理責任がある人が撤去費用などを負担しなければいけなくなります。
特定空き家に指定されると管理するよう行政指導が入ります。
行政指導に応じなければ行政代執行が実施され、家を強制的に修繕・解体されてしまいます。
行政が勝手に修繕・解体したのだからというわけにはいかず、かかった費用は管理責任のある人に請求されるので注意しなければいけません。
特定空き家の認定基準やリスクを知りたい人は、こちらの記事も参考にしてください。

相続放棄したことを新たな相続人に知らせる必要がある
空き家の管理義務からも開放されるには、相続放棄したことを新たな相続人に知らせなければいけません。
法律では相続人の優先順位が次のように決められています。
- 第1順位・・・配偶者と子または孫
- 第2順位・・・配偶者と両親または祖父母
- 第3順位・・・配偶者と兄弟姉妹または甥や姪
例えば第1順位の相続人が相続放棄をするなら、第2順位の相続人に相続放棄したことを知らせる必要があります。
民法には「放棄によって相続人となった者が相続財産の管理をはじめることができるまで」管理義務があると定められているため、相続放棄することを新たな相続人に早めに知らせたほうがよいでしょう。
相続人全員が相続放棄するなら相続財産管理人の選任申立をする
相続人がいない場合や相続人全員が相続放棄した場合、相続財産管理人の選任申立をしなければいけません。
相続する人がいない遺産は法人化し、相続財産法人として管理されます。
しかし相続財産法人になるにしても誰かが管理しなければいけません。
そこで、相続人全員が相続放棄する場合は家庭裁判所に相続財産管理人の選任申立をします。
相続財産管理人は弁護士や司法書士などから選ばれるケースが多く、相続財産管理人が選任されると相続放棄した人は家を管理する必要がなくなります。
相続財産管理人は被相続人(亡くなった人)の債権者などに被相続人の債務を支払うなどして精算をおこない、精算後に残った財産を国庫に帰属させます。
すなわち家を相続する人がいなければ、最終的に国が引き取ることになります。
相続財産管理人に支払う報酬は10万~100万円程度
前述したように相続財産管理人が選任されると相続放棄した人は管理義務から逃れることができます。
しかし相続財産管理人には報酬が発生します。
報酬は原則、相続財産から支払われ、相続財産が少ない場合などは申立人が支払います。
報酬はあらかじめ裁判所に予納金として納めなければいけません。
予納金の額は10万~100万円程度といわれており、具体的には裁判所がケースごとに決定します。
相続放棄することで管理や維持する費用がかからないと思われがちですが、相続財産管理人の費用が嵩む場合もあるため注意しなければいけません。
不要な家を相続放棄するメリットとデメリット
不要な家を相続しない相続放棄にはメリットとデメリットがあります。
検討する際には両方を知っておかなければいけません。
相続放棄のメリットは次の2つです。
- 1.すべての財産を放棄できる
- 2.固定資産税を支払わずに済む
相続放棄のデメリットは次の3つです。
- 1.すべての財産を放棄できる
- 2.固定資産税を支払わずに済む
- 3.相続放棄しただけでは家の管理義務はなくならない
それぞれ詳しく解説していきます。
相続放棄するメリット1.すべての財産を放棄できる
相続放棄の1つ目のメリットはすべての財産を放棄できることです。
相続財産は、相続する人にとってプラスとなる財産ばかりではありません。
相続しても費用ばかりかかって持て余してしまう家、借金や債務など、マイナスとなる財産が含まれる場合もあります。
借金などでマイナスの財産がプラスの財産を上回ると、それを支払わなければいけません。
マイナスの財産がプラスの財産を上回るなら、相続したくないと考えるのは自然ですね。
相続放棄するメリット2.固定資産税を支払わずに済む
家に限らず、土地や建物には固定資産税がかかります。
例え住宅ローンの支払いなどを終えた家を相続したとしても、固定資産税の支払いは続きます。
すでに住む家を所有している人にとって、自分の家と相続した家の固定資産税を支払うのは負担になることもあるでしょう。
相続放棄するとその家を管理しなくて済むだけでなく、固定資産税を支払わなくてもよくなります。
相続放棄するデメリット1.すべての相続財産を放棄しなければいけない
つづいては相続放棄するデメリットです。
すべての相続財産を放棄できるのはメリットであると解説しましたが、場合によってはデメリットにもなります。
相続放棄はすべての財産を放棄する方法ですから、預貯金は引き継ぎたいが家は手放したいなどと選ぶことができません。
仮に500万円の預貯金があるが家を相続したくない場合、相続放棄をすると500万円の預貯金も手放すことになります。
しかし、相続財産にマイナスの財産が含まれる場合は、限定承認という方法も検討します。
家の価値が1,000万円、借金が500万円だったら、500万円の借金を精算して余った500万円を引き継げます。
家の価値が1,000万円、借金が1,300万円だとしたら、1,000万円の借金のみ引き継がれ残りの300万円は切り捨てられます。
借金がどれくらいかわからないといった場合は相続放棄ではなく限定承認を選択したほうがよいケースもあります。
相続放棄するデメリット2.他の相続人に迷惑がかかる
相続放棄をすると、相続権は次順位の人に移動します。
例えばすでに父親が亡くなっており、母親が亡くなったので相続が発生したとします。
相続財産に不要な家や借金が含まれていたため兄弟全員が相続放棄をすると、相続権は次順位である母親の兄弟姉妹に移ります。
兄弟から見て叔父や叔母に相続権が移り、自分たちが放棄した相続財産を押し付けるような印象を与えることにもなりかねません。
関係が疎遠でなければ叔父や叔母にも相続放棄をするよう連絡ができますが、関係が疎遠で連絡し忘れていた、行き違いがあったということが起こると、相続放棄の期限が過ぎてしまう可能性もあります。
相続放棄は「相続の開始があったことを知った日」から3ヶ月以内に手続きしなければならず、期限を過ぎてしまうと叔父や叔母に借金などが相続され迷惑をかけてしまう恐れがあります。
相続放棄するデメリット3.相続放棄しただけでは家の管理義務はなくならない
前述したとおり「相続放棄しただけでは家の管理義務はなくならない」という点もデメリットといえます。
不要な家を相続放棄したいと思う理由は、家の管理などをしたくない、できないと考えるからです。
それなのに相続放棄しても家の管理義務はなくならないのですから、デメリットといえます。
相続放棄以外で不要な家の管理から解放される方法
ここまで解説してきたように、相続放棄は不要な家だけでなくすべての相続財産を放棄しなければならず、相続放棄するだけでは家の管理責任はなくなりません。
さらに、相続財産管理人を申し立てるなら費用や報酬も発生してしまいます。
これらのデメリットを考えると、相続放棄ではなく別の方法も検討してみたいと考えますね。
相続財産に家が含まれる場合、相続放棄ではなく家を売却するのも1つの方法です。
売却すれば家の管理責任から逃れられますし、売却の方法によっては持ち出すお金はなく、不要な家がお金に変わるというメリットもあります。
家を売却する方法には「仲介」と「買取」があり、早く現金化したい、時間をかけたくないと考える方には「買取」がおすすめです。
仲介業者に依頼して売却する
家の売却方法として一般的なのは、仲介業者に依頼して売却する方法です。

仲介は、買ってくれる人が見つかるまで時間にゆとりがある、できるだけ高く買ってくれる人をじっくり待ちたいという人に選ばれる売却方法です。
しかし買主との間に不動産会社が入るため仲介手数料を支払わなければならず、買主が現れるまでに半年から1年ほどの時間的余裕を見ておく必要があります。
エリアや物件状態によってはそれ以上待っても売れないこともあります。
専門の買取業者に買い取ってもらう
早く現金化したい、時間をかけたくないという方は専門買取業者に買い取ってもらいましょう。
自殺や孤独死があった事故物件、建物に傾きがある欠陥物件、雨漏りやシロアリ被害がある物件など、このままでは誰も買ってくれないのでは?と感じるような家も専門買取業者に買い取ってもらえます。

「買取」は「仲介」のように買主が現れるのを待つのではなく、専門買取業者が直接買い取ってくれます。
そのためスムーズにトラブルなく売却でき、仲介手数料がかからないというメリットもあります。
専門買取業者の探し方
「買取」を希望する場合、買取を専門におこなう専門買取業者を探さなければいけません。
安心して依頼できる業者かどうかを見極めるためには、ホームページで所在地や実績を公開しているか、口コミや評判がよいかどうか確認しましょう。
また、弁護士や司法書士と連携している業者なら、相続問題の解決や各種法手続きも適切にサポートしてもらえるので安心できます。
安心できる専門買取業者のポイントについて、こちらの記事で詳しく解説していますので参考にしてみてください。
専門買取業者に買い取ってもらう場合の流れ
専門買取業者に買い取ってもらう場合、次のような流れになります。
- 不動産の買取査定を依頼する
- 買取価格や売却スケジュールの決定
- 不動産売買契約の締結
順番に解説していきます。
1.不動産の買取査定を依頼する
安心できる専門買取業者を見つけたら、電話やメールで買取査定を依頼します。
内容によっては簡単な査定価格をその場で知ることもできますが、最終的な査定価格はヒアリングや現地調査を通して提示されます。
2.買取価格や売却スケジュールの決定
査定額に問題がなければ、売主(依頼者)と買主(専門買取業者)双方の同意の上で買取価格が決定します。
同時に、物件の引き渡し条件や日程調整もおこないます。
3.不動産売買契約の締結
最後に不動産売買契約書などにサインや押印をします。
契約書に記載された期日に買取金額が入金され、契約が締結されます。
査定依頼から契約締結までが1週間以内に終わるケースも少なくなく、短期間に現金化できるというメリットが魅力です。
まとめ
相続しても家の管理などはできない、価値がなさそうなどの理由から相続放棄を検討しますが、相続放棄するだけでは管理義務は残ってしまいます。
相続人が全員相続放棄するなら相続財産管理人の選任申立をしなければならず、報酬などの費用が発生します。
しかし、専門買取業者に買い取ってもらうなら費用は発生せず、管理義務からも開放されます。
相続放棄するのか、相続してから専門買取業者に買い取ってもらうのかを判断するには、プラスとなる財産、マイナスとなる財産などを総合的に判断しなければいけません。
相続放棄をしたほうがよいケースもありますが、不要な家を買い取ってもらうという方法も知っておくとより適した方法を選択できますね。
家の相続放棄に関するFAQ
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管理義務が残った家を適切に管理していないとどのような問題が発生しますか?
空き家を放置していると壁や屋根などが崩れ通行人に被害をおよぼす可能性があります。管理責任を問われると、損害賠償請求を受けるなどのリスクが発生します。
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相続放棄の注意点はありますか?
相続放棄は相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所での手続きが必要です。また、預貯金を解約したり家の名義変更をおこなったりすると相続放棄が認められない場合もあります。
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相続放棄できる期日を過ぎてしまったが、家を必要としていない、管理できない場合はどうしたらよいでしょうか?
早く処分したいと考えるなら「買取」をおすすめします。買取では費用も発生せず、不要な家を現金化できます。
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相続物件を買い取ってもらえる業者はどんなところですか?
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相続財産を巡って他の相続人とトラブルになったときはどうすればいい?
まずは相続問題に詳しい弁護士へ相談しましょう。相続人との交渉や相続放棄などをサポートを受けられ、最善の解決方法をアドバイスしてもらえます。