元妻・元夫との共有不動産に住宅ローンがあるときの名義解消方法4つ

元妻や元夫と住宅ローンを組んだ共有不動産を解消したいものの、どうすれば良いか分からないという人は多いでしょう。
長いこと連絡を取っていないので連絡がしにくい…という方もいらっしゃるかもしれません。
共有不動産を解消する方法は4通りあり、不動産を売却するのか、どちらかが引き取るのかによって、適切な解消の方法対処法も異なります。
元妻や元夫との共有不動産を放置していると、さまざまなトラブルに見舞われる可能性が高いので、すぐに対応することをおすすめします。
「とにかく早く共有名義から抜けたい」ということであれば、共有持分の売却も検討しましょう。弁護士と連携した買取業者であれば、離婚問題から持分売却まで適切なサポートが可能です。
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この記事のポイント
- 共有不動産を売却するなら売却額を元夫婦で2分の1ずつ分ける
- 共有不動産をどちらかが引き取るなら一方の持ち分を売買する
- 共有不動産を手放す予定ですぐ現金化したいなら共有持分を業者に売却する
- 共有不動産を解消するにはまず話し合いが必要だが会わずに済む場合もある
目次
元妻・元夫と一緒に住宅ローンを組んだ共有不動産を解消する4つの方法
元妻や元夫との共有不動産を解消する方法は以下の4つがあります。
- 不動産を売却してお金を分ける
- 元配偶者の持ち分を買い取る
- 元配偶者に自身の持ち分を買い取ってもらう
- 共有持分を業者に売却する
それぞれの方法について、詳しく解説していきます。
解消方法①不動産を売却してお金を分ける
お互いに共有不動産に住み続ける意思がなく、売却しても良いという場合に選ぶのが売却額を分ける方法です。
共有不動産を売却する場合、通常は持ち分の割合に応じて売却額を分けることになります。
しかし、離婚に伴い財産分与するとなれば、持分割合は無関係となるため、夫婦で2分の1ずつ分けるのが原則です。
オーバーローンの場合は売却できない可能性もある
共有不動産は双方が同意すれば売却できますが、住宅ローンが残っていて、売却価格が住宅ローンの残債より安い場合は注意しましょう。
売却価格が住宅ローン残債より安い場合(オーバーローン)には、共有不動産を売却できない可能性があります。
売却価格と住宅ローン残債の差額がそれほど大きくなければ、双方の預貯金などを差額分に充てて住宅ローンを完済し、売却することができます。
しかし、どうしても住宅ローンの完済ができないのであれば、任意売却やどちらかが住み続けることを検討しなければなりません。
一方、売却価格が住宅ローン残債より高い場合(アンダーローン)には、共有不動産を売却してローンを完済したあとに残ったお金を元配偶者と均等に分けるだけなので安心してください。
解消方法②元配偶者の持ち分を買い取る
自身が共有不動産に住み続ける場合に選ぶのが、元配偶者の持ち分を買い取る方法です。
離婚に伴い財産分与する場合、持分割合は無関係となるので、共有不動産の評価額の2分の1を配偶者に支払うことになります。
つまり、評価額が3,000万円となれば、1,500万円を支払うことになるのです。
このように、元配偶者に支払う費用が高額になる可能性が高いので、持ち分の買い取りでは十分な財力を必要とします。
また、共有不動産の住宅ローンが残っている場合は、金融機関の同意のもとで債務引受または住宅ローンの借り換えをして、元配偶者の住宅ローンの名義を自身に変更しなければなりません。
金融機関や自身の収入状況によっては、債務引受や住宅ローンの借り換えができない場合もあるので注意してください。
解消方法③元配偶者に自身の持ち分を買い取ってもらう
元配偶者が共有不動産に住み続ける場合に選ぶのが、元配偶者に自身の持ち分を買い取ってもらう方法です。
持分割合に関わらず、共有不動産の評価額の2分の1を配偶者から受け取ることができます。
多額のお金を受け取るとなれば、贈与税の支払いが不安になるでしょうが、離婚による財産分与では基本的に贈与税はかからないので安心してください。
ただし、財産分与の金額があまりにも高額だと贈与税がかかる場合があるので、念のため税務署や税理士などに相談してみると良いでしょう。
また、元配偶者が共有不動産に居座り、占領し続けていたのであれば、これまでの家賃分として不当利得返還請求をできる場合もあります。
不当利得返還請求について知りたい方は以下の記事をご覧ください。
解消方法④すぐに現金化したいなら共有持分を売却するのも一つの手段
自身は共有不動産に住み続ける意思がないにも関わらず、元配偶者が売却に応じてくれない、元配偶者が自身の持ち分を買い取ってくれないといった場合には、業者に自身の共有持分の売却をすることも検討しましょう。
共有持分の売却には、共有者の同意は必要ありません。
そのため、元配偶者の同意を得ずに独断で買取業者に売却することができるのです。
ただし、共有持分の需要が低いことや、買取業者が他の共有者とのやり取りやトラブル解消をする必要があるため、売却価格は低めになることに注意が必要です。
実際、共有持分は通常の不動産の50%ほどの価値になるケースもあります。
さらに、売却益は財産分与の対象となることに注意しなければなりません。
しかし、査定から現金化までの期間が短いのが業者に売却する魅力と言えます。
共有持分の売却までの流れをまとめた記事もぜひご覧ください。
元妻・元夫との共有不動産を解消するまでの流れ
元妻や元夫との共有不動産を解消する際には、どういった流れで手続きを進めていくのか把握しておくと安心です。
元妻や元夫との共有不動産を解消する流れはこちらです。
- 元配偶者と話し合い
- 話し合いが困難なら共有物分割調停
- 調停が決裂したら共有物分割訴訟
共有不動産を解消する具体的な流れ
共有不動産の解消の具体的な流れをまとめていきます。
①まずは元配偶者との話し合い
共有不動産を解消するには、まず他の共有者、つまり元配偶者との話し合いが必要です。
そこで共有不動産を今後どうするのかしっかり決めましょう。
双方が売却に納得するのであれば売却し、売却額を均等に分ければ良いですし、どちらかが済み続けるのであれば持ち分を売買すれば良いです。
話し合いがまとまらない、そもそも話し合いが困難な場合には次の段階へ進みましょう。
②話し合いが難しいなら共有物分割調停
話し合いがまとまらない、もしくは話し合いが困難だという状況であれば、裁判所で共有物分割調停をする必要があります。
共有物分割調停とは、裁判所の調停委員が仲介役として話し合いを進めてくれる手続きです。
調停の際にも元配偶者と対面する必要がありません。
第三者に仲介してもらえることで、スムーズに話し合いがまとまる期待ができます。
なお、共有物分割調停を行う裁判所は、相手方の所在地を管轄する簡易裁判所です。
そのため、自身が東京、元配偶者が大阪で暮らしている場合、元配偶者に対して共有物分割請求調停をするときは大阪に出向く必要があります。
ただし、当事者間の合意があればどの簡易裁判所でも調停を行えます。
③調停が決裂したら共有物分割訴訟
共有物分割調停は話し合いによる解決方法なので、双方が納得できなかった場合は共有物分割訴訟という裁判によって解決する必要があります。
共有物分割請求訴訟は、裁判所に適切な分割方法を裁定してもらう手続きです。
共有物分割訴訟では以下3通りのいずれかの判決が下ることになるでしょう。
分筆 | 共有持分割合に応じて物理的に不動産を分ける |
価額賠償 | 「部分的価格賠償(一部価格賠償)」による清算、または「全面的価格賠償」で一方の持ち分を買い取る |
換価分割 | 不動産を競売にかけて売却額を持分割合に応じて分ける |
共有物分割請求訴訟における判決の詳細や、訴訟の流れなどはこちらの記事をご覧ください。

共有物分割訴訟となれば、半年から1年程の時間を要しますし、期待しているような結果が出ない場合もあります。
また、裁判所や弁護士に支払う費用も負担しなければならないことを把握しておきましょう。
元妻・元夫に「会えない」「会いたくない」場合はどうする?
離婚に至った経緯によっては、元妻や元夫とは会いたくない、連絡すらとりたくない場合もあるでしょう。
そういった場合でも、共有不動産の解消は可能なのか気になるところです。
結論から申し上げると、元配偶者と会わずに共有分の売却をすることはできます。
前述したように、自分の持分のみを業者に売却する、共有物分割調停をするといった方法であれば元配偶者と連絡を取り合う必要はありません。
ほかにも、代理人へ委任もしくは持ち回り契約で共有不動産を売却するという方法もあります。
元妻や元夫とは会えない、会いたくない事情がある場合には、以下の記事を参考に、共有不動産の売却を進めましょう。

元妻・元夫と一緒に住宅ローンを組んだ共有不動産を放置しているとどうなる?
共有不動産を放置するとさまざまなトラブルのもとになるので、なるべく早いうちに解消するのがおすすめです。
共有不動産を解消せずにいると、どういう事態になる可能性があるのか解説します。
元配偶者の同意がないと売却ができない
共有不動産を売却する際には、共有者全員の同意が必要です。
そのため、共有名義の状態では売却したいときに単独では売却できません。
また、売却のみならず、リフォームや建て替え、長期の賃貸契約までも制限されるので、共有不動産を何かしら変更しようとするたびに元配偶者に連絡をとり同意を得なければなりません。
離婚した相手と連絡を取り合いたくない方にとっては、非常に煩わしいでしょう。
さらに、離婚してからすぐであれば元配偶者と連絡がとれる場合もあるでしょうが、数年後に売却しようと思ってもそのときには連絡がとれなくなっている可能性もあります。
子どもたちが相続人になったときに収集がつかなくなる
共有不動産は相続の対象となるので、もしも共有者のどちらかが亡くなった場合にはその遺族が相続することになります。
離婚後に元配偶者が再婚する場合もあるでしょうが、そうなると元配偶者の再婚相手や子供も共有者となるのです。
このように、共有者不動産を解消しなければ、再婚相手や子、さらには孫までもが相続する可能性があり、どんどん共有者が増えてしまうでしょう。
共有者が増えると、売却や建て替えなどの際にはすべての共有者に同意を得なければならず、とても面倒になるはずです。
税金の支払いについて不満が生じる
不動産の所有者には固定資産税や都市計画税といった税金が課せられますが、共有不動産の税金は基本的に共有者全員が持ち分に応じて負担することになります。
しかし、納付書は共有者の代表者に送られてきて、代表者がまとめて納付することになるので、共有したままだと離婚した後でも元配偶者と税金について毎年やり取りをしなければなりません。
さらに、共有不動産の税金は連帯納付義務があるため、共有者の1人が納付しない場合には、他の共有者が納付することになります。
とくに、どちらかが共有不動産に住み続ける場合、共有不動産に住んでいない方は納税したくないと不満に思う可能性は高いです。
逆に、元配偶者が住み続けているのに、元配偶者が税金を支払ってくれなければ、自身が全額支払う羽目になることもあるので注意が必要です。
固定資産税を放置することで起こり得るトラブルについて気になる方は、以下の記事も参考にしてください。
元配偶者がローンの支払いを放棄すると連帯保証人は多額の負債を抱える
住宅ローンが残っている共有不動産の場合、養育費や慰謝料の名目で離婚後も家を出て行った元配偶者がローンを支払う場合があるでしょう。
しかし、共有不動産は連帯債務やペアローンでの契約となっているため、元配偶者が住宅ローンの支払いを放棄すると自身が連帯債務または連帯保証人として全額負担しなければなりません。
元配偶者が住宅ローンをいつまでも払ってくれるとは限らないので、自身が多額のローンを1人で抱える可能性もあるのです。
まとめ
元妻や元夫と住宅ローンを組んだ共有不動産を解消するには、4通りの方法があります。
- 共有不動産を売却する
- 元配偶者に不動産評価額の2分の1を支払ってもらう
- 元配偶者へ不動産評価額の2分の1を支払う
- 業者に持ち分を売却する
一方、共有不動産に住み続けたいなら、元配偶者へ不動産評価額の2分の1を支払う必要があります。
このように、共有不動産を今後どうしたいのかによって解消する方法は異なります。
なお、共有不動産の解消では、基本的には元配偶者との話し合いが必要ですが、会わずに対処することもできるので安心してください。
自身にとって最も良い方法で、なるべく早く共有不動産の解消をしましょう。
元妻・元夫と一緒に住宅ローンを組んだ共有不動産についてのQ&A
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共有不動産を解消するためには元配偶者と直接話し合う必要がありますか?
可能であれば話し合いで解決するのが良いですが、会わずに共有不動産の解消をすることもできます。たとえば自分の持分のみを業者に売却する、共有物分割調停をするといった方法であれば元配偶者と連絡を取り合う必要すらありません。
また、代理人へ委任する、持ち回り契約で共有不動産を売却するといった方法もあります。 -
共有不動産を解消するにはどういう方法がありますか?
共有不動産の解消方法は、売却する、共有者の持ち分を売買する、自身の持ち分を業者に売却するというものがあります。共有不動産を手放しても良いのか、所有し続けたいのかによって、選択肢が異なります。また、住宅ローンの残債によって手続きが変わることもあるので注意してください。
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共有不動産をそのまま放置しておくのはダメですか?
共有不動産の解消が面倒でも、放置していると後々面倒なことになります。具体的には、売却や建て替えなどでは元配偶者の同意が必要だったり、相続によって共有者が増えたりするのです。金銭的なトラブルに繋がる可能性も高いので早めに解消するのがおすすめです。