不動産売却時の登記費用はいくら?登記の種類別に相場を解説

不動産売却で必要な登記は原則「抵当権抹消登記」「所有権移転登記」「抵当権設定登記」の3種類です。
しかし、登記簿上の記載と実際の情報で差異がある場合は、登記簿上の記載を正しくするために別の登記申請をする必要があります。
それら登記申請にも費用はかかり、原則「売主負担」です。
また、登記申請には登記申請書の他にさまざまな添付書類が必要です。
そこでこの記事では、不動産売却で必要な登記の「種類」「費用」「必要な書類」について説明します。
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不動産売却で必要な不動産登記は最大6種類
不動産売却では最大で下記6種類の登記申請が必要です。
- 住所変更登記
- 氏名変更登記
- 相続登記
- 抵当権抹消登記
- 所有権移転登記
- 抵当権設定登記
なお、これら登記申請は不動産の「権利」に関する部分にあたり、法律で義務付けられているわけではありません。
しかし、不動産売却においては買主と金融機関を保護するために必ず手続きします。
というのも、不動産に対する権利は登記してはじめて、第三者に主張できるようになるからです。
買主は購入時に「売主がたしかに所有者であること」を確認でき、購入後は「自分がたしかに不動産の所有者であること」を証明できます。
金融機関は「債務不履行の場合に、自社が最初に弁済を受けられること」を確認・主張できます。
このように登記を正しくおこなうことで、権利関係を明確にし、不動産売却におけるトラブルを防ぐことにつながるのです。
それでは具体的に、各登記の内容について説明します。
1.住所変更登記
住所変更登記は「売主の印鑑証明書」と「登記簿謄本(登記事項証明書)」に記載されている住所を一致させるために必要な手続きです。
買主が不動産の所有権移転登記をする際に、売主は印鑑証明書を添付します。
これは、登記簿謄本に記載された氏名・住所を比較し、売主が登記名義人と同一であることを確認するために利用されます。
そのため「売却前に引っ越して住民票を移動させた」「購入前に住んでいた住所で所有権移転登記した」などの場合に、住所変更登記が必要です。
2.氏名変更登記
氏名変更登記は、住所変更登記と同様に「売主の印鑑証明書」と「登記簿謄本」に記載されている氏名を一致させるために必要な手続きです。
一般的には、離婚や結婚で苗字が登記した時点から変更があった場合に登記申請します。
具体的には「不動産を購入したあとで結婚し、苗字が変わった」「結婚後に不動産を購入し、離婚で苗字を旧姓に戻した」のような場合です。
また、家庭裁判所の許可を得て「名」を変更した場合にも、氏名変更登記します。
3.相続登記
相続登記とは、相続を原因とした不動産の所有権移転登記です。
不動産の所有者が亡くなった場合に、登記名義人を相続人へ変更します。
相続が発生し、その不動産を相続人が誰も使用せずに売却する場合でも必要な手続きです。
その理由は、所有者が亡くなった時点で、相続人へ所有権が継承されているからです。
亡くなった人名義のままでは、売却できません。

数代前からの相続登記は手続きが煩雑
相続登記は必須の手続きではありません。
そのため、売却する不動産が代々受け継がれてきていた場合、登記名義人が祖父母あるいは曽祖父母のままとなっている恐れがあります。
相続で継承される権利は、その相続人が亡くなるとさらに相続されます。
相続人はねずみ算式に増えていくため、曽祖父の代から数えると「相続人が数十人」となるケースも珍しくありません。
そして、相続登記には「相続人全員の同意」が必要です。
不動産の名義人が数代前で止まっていると、相続人全員の特定から始めなければなりません。
連絡がつかない人や海外に住んでいる人などもいて、相続登記に多大な時間と労力がかかることでしょう。
さらに不動産の相続登記が完了できたとしても、その不動産は所有者数十人の共有不動産です。
売却の際にも相続人全員の同意が必要なため、売却が難しくなる恐れがあります。
4.抵当権抹消登記
抵当権抹消登記とは、不動産を担保に設定された抵当権を登記簿から抹消する手続きです。
不動産売却では一般的に、残金決済・引渡し時に売却代金で住宅ローン残債を完済したあと、買主への所有権移転登記・抵当権設定登記と同時におこないます。
また、抵当権は住宅ローンを完済したタイミングで消滅しますが、登記簿の記載から消えるわけではありません。
すでに住宅ローン返済済みの不動産を売却する場合でも、抵当権が記載されたままの可能性があります。
とはいえ、買主へ引き渡す際に抹消されていればよいので、住宅ローン残債がある場合と同様に、残金決済時の手続きで問題ありません。
5.所有権移転登記
所有権移転登記は、不動産の登記名義人を売主から買主へ変更する手続きです。
買主は所有権移転登記してはじめて、第三者に対しても法的に権利を主張できるようになります。
もしも、あなたが登記をせず、何らかの理由で別の人(Xとします)が売主から不動産を購入し、登記した場合には、権利者として認められるのは「X」となります。
たとえ代金を支払っていたとしても、登記名義人ではないため、所有権を主張できません。
所有権移転登記はこのように重要な手続きであるため、原則、残金決済日と同日速やかに行います。
6.抵当権設定登記
抵当権設定登記とは、買主が住宅ローンを組んで不動産を購入する際に、金融機関がその不動産担保に設定する手続きです。
中古一戸建て物件の場合には、土地と建物の両方に抵当権を設定します。
抵当権を設定することで、万が一、買主の返済が滞ったとしても、不動産を差し押さえて競売にかけ、その落札代金から弁済を受けられます。
また、抵当権には順位があり、順位が高い方から優先して弁済を受けられるので、基本的に、住宅ローンを組む際には「第1順位の抵当権が設定できること」が条件です。
参照:フラット35|抵当権は必ず第1順位でないといけませんか。
売主が費用を負担する登記は4種類
ここまで紹介した不動産登記のうち、売主が費用を負担する登記は通常、以下の4種類です。
- 住所変更登記
- 氏名変更登記
- 相続登記
- 抵当権抹消登記
登記簿に記載された情報と現状を一致させるための手続きです。
正しく申請されていなければ、そもそも不動産を売却できません。
したがって「売却に必要な登記申請は売主負担が原則」と考えてください。
なお、登記費用を誰が負担するかはあくまで「原則」です。
買主と合意のうえであれば、買主が上記の登記費用を負担しても問題ありません。
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不動産売却で発生する「登記費用」には原則「司法書士手数料」を含む
一般的に「登記費用」といえば「登録免許税のみ」を指しますが、不動産売却では「司法書士手数料」を含むことがほとんどです。
不動産売却で発生する多くのケースは売主の「抵当権抹消登記」と買主の「所有権移転登記」「抵当権設定登記」を同時におこないます。
このうち「抵当権抹消登記」と「抵当権設定登記」は売主と買主だけでなく、住宅ローンを融資する金融機関も関係する手続きです。
複数の登記申請をまとめて実施する手続きは複雑で、金融機関からは専門家である司法書士へ委託するように要請されます。
手続きの間違いが許されないため、自分で手続きすることは原則認められません。
以上のような理由で、不動産売却で発生する「登記費用」の内訳は「登録免許税」と「司法書士手数料」の合算となります。
次から具体的な費用について説明します。
不動産登記で発生する司法書士手数料の相場
司法書士手数料は、司法書士が自由に設定できるため、一律で決まっているわけではありません。
また、登記内容によっても手数料は異なります。
日本司法書士会連合会が実施した報酬アンケート結果によると、各登記申請の司法書士手数料相場は下表のとおりです。
登記内容 | 手数料相場 |
---|---|
住所変更登記 | 1万円~1.5万円 |
相続登記 | 6万円~7万円 |
抵当権抹消登記 | 1.5万円~2万円 |
所有権移転登記 | 4万円~6万円 |
抵当権設定登記 | 3.5万円~4.5万円 |
参照:日本司法書士会連合会|報酬アンケート結果(2018年(平成30年)1月実施)
なお、不動産売却では司法書士が残金決済の場に立ち会うことが一般的です。
そのため、上記手数料とは別に「出張費」がかかる場合があります。
詳細な費用については、委託する司法書士へ確認するようにしてください。
各登記で必要な登録免許税
次に、各登記申請で必要な登録免許税について説明します。
登録免許税は不動産1個あたりで金額が決まっている場合と、固定資産税評価額に基づいて算出する場合の2通りがあります。
固定資産税評価額は、売却価格とは異なる点に注意してください。
それでは具体的な金額をお伝えします。
1.住所変更登記
住所変更登記にかかる登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。
そのため、戸建ての場合は土地と建物の合計2個を住所変更するので、登録免許税は2,000円です。
2筆の土地にまたがって建物がある場合には合計3個で3,000円となります。
なお、住居表示の実施により住所変更登記する際の登録免許税は非課税です。
2.氏名変更登記
氏名変更登記にかかる登録免許税は、住所変更登記と同じく不動産1個につき1,000円です。
また、氏名変更と住所変更は同じ登記申請書で手続きできます。
登録免許税もまとめられ、戸建ての名義人住所氏名変更に必要な費用は住所変更のみの場合と同じ2,000円です。
3.相続登記
相続登記にかかる登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%です。
税率は土地・建物どちらも同じです。
不動産の固定資産税評価額は、毎年送られてくる固定資産税納税通知書に記載されています。
固定資産税納税通知書を紛失している場合は、固定資産税評価証明書を役所で取得して確認できます。
4.抵当権抹消登記
抵当権抹消登記にかかる登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。
通常、不動産を住宅ローンで購入する際には、土地と建物の両方に抵当権が設定されているため2,000円になります。
めったにないケースですが、20個を超える不動産に対して1回の申請で抵当権抹消登記手続きをする場合は「申請件数1件につき20,000円」と定められています。
したがって、抵当権抹消登記する不動産の数が30個でも50個でも、同一の申請書であれば、必要な登録免許税は「一律20,000円」です。
5.所有権移転登記
不動産売却による所有権移転登記の登録免許税は、固定資産税評価額の2%です。
税率は土地・建物どちらも同じです。
なお、土地にかかる登録免許税は、2023年3月31日までに登記を受ける場合は軽減税率が適用されます。
その場合の税率は1.5%です。
また、建物は買主がマイホームとして使う場合であれば、一定の要件を満たすことで、2022年3月31日までに登記すれば、軽減税率が適用されます。
軽減措置は複数あり、税率は0.1%~0.3%にまで下がります。
参照:国税庁|土地の売買や住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ(令和3年4月)
6.抵当権設定登記
抵当権設定登記にかかる登録免許税は、債権金額の4%です。
なお、1,000円未満の金額は切り捨てて計算します。
また、買主がマイホームとして利用し、不動産が一定の要件を満たしていれば、2022年3月31日までに登記する場合は軽減措置が適用されます。
軽減措置が適用される場合の税率は0.1%です。
「登記費用」を支払うタイミングは「残金決済・引渡し時」
ここまで説明した登記申請は、残金決済・引渡し時に司法書士が代行します。
そのため、登記費用の支払いタイミングも同じく「残金決済・引渡し時」です。
売買契約締結後、残金決済前に支払っておくケースもあるので、実際の支払いタイミングは不動産会社の担当者に確認してください。
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不動産売却で発生する登記のために必要な書類
最後に、不動産売却で発生する登記申請の必要書類を説明します。
必要書類が足りなければ、登記申請できません。取引停止にもつながり、買主・金融機関に多大な迷惑がかかるので、必ず確認して準備しましょう。
「登記申請書」と司法書士への「委任状」は共通して必要ですので、以下では、登記申請で必要となる「添付書類」を説明します。
1.住所変更登記の添付書類
住所変更登記では「登記記録上の住所」「現在の住所及び住所移転の日」が記載されている書類が必要です。
住民票の写しには、1つ前の住所が記載されている場合が多いので、1度の引越しであれば「住民票の写し」で問題ありません。
2回以上、住所を変更している場合は、住民票の写しだけでは、登記記録上の住所から現在の住所までのつながりがわからない場合があります。
その場合は「戸籍の附票の写し」を添付書類としてください。
参照:法務局|10)登記名義人住所・氏名変更登記申請書(住所移転の場合)
2.氏名変更登記の添付書類
氏名変更登記では「戸籍全部(個人)事項証明書」と「本籍が記載された住民票の写し」を添付します。
戸籍全部(個人)事項証明書で氏名変更の記録と本籍地はわかります。
しかし、住所は記載されていません。
同姓同名の人は複数いるので、氏名だけでは登記名義人本人か判断できません。
そこで「本籍が記載された」住民票の写しも添付することで「氏名」「住所」「本籍地」の3点から本人確認ができます。
なお、戸籍全部(個人)事項証明書に変更前の氏名が記載されていない場合、変更の記載がある「除籍全部(個人)事項証明書」をあわせて添付します。
参照:法務局|12)登記名義人住所・氏名変更登記申請書(氏名変更の場合)
3.相続登記の添付書類
相続登記に必要な書類は「遺言書」「遺産分割協議」「法定割合」など、どのように不動産が相続されたかで必要書類が異なります。
ここでは、相続不動産を売却するケースで多い遺産分割協議による相続で必要な書類を説明します。
- 遺産分割協議書
- 被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までの経過が記載された戸籍全部事項証明
- 除籍全部事項証明書
- 相続人全員の戸籍全部(一部)事項証明書
- 相続人全員の住民票の写し
- 固定資産税評価証明書
相続人の戸籍全部事項証明書は「被相続人が亡くなった以後の証明日」であることが条件です。
また、遺産分割協議書には、遺産分割協議を行った相続人全員の印鑑証明書が必要です。
4.抵当権抹消登記の添付書類
抵当権抹消登記では
- 解除証書または完済証明書
- 金融機関の登記事項証明書
を添付します。
売却代金を使って完済する場合には通常、残金の着金を確認したあと、司法書士がその金融機関まで抹消書類を受け取りに行き、手続きを進めます。
そのため、あなたが事前に準備する添付書類はありません。
5.所有権移転登記の添付書類
所有権移転登記で必要な書類のうち、売主が準備する書類は以下のとおりです。
- 売却した不動産の登記済権利証または登記識別情報
- 印鑑証明書
- 固定資産税評価証明書
- 本人確認書類(顔写真付きの運転免許証やマイナンバーカードなど)
- 不動産売買契約書
固定資産税評価証明書は、登録免許税を算出する際に使用します。
上記の書類は売買契約を交わすまでに原則、準備している書類のはずです。
そのため、あらためて準備する書類はありません。
ただし、印鑑証明書は発行から3ヶ月以内であることが条件ですので、発行日に注意してください。
6.抵当権設定登記の添付書類
抵当権設定登記の必要書類は、買主と住宅ローンを融資する金融機関が準備します。
買主が準備する書類は、以下のとおりです。
- 登記済権利証または登記識別情報
- 印鑑証明書
- 本人確認書類
このうち、売主が準備する必要がある書類は「登記済権利証または登記識別情報」のみです。
これまでの手続きで準備済みの書類ですので、とくに気にする必要はありません。
まとめ
不動産売却で行われる主な登記申請は「抵当権抹消登記」「所有権移転登記」「抵当権設定登記」です。
このうち売主が登記費用を負担する手続きは「抵当権抹消登記」のみです。
ただし、登記簿に記載された情報と現在の情報が異なる場合には「住所変更登記」「指名変更登記」「相続登記」などの手続きも行います。
これらの費用は売主負担です。
また、各登記申請で必要書類も異なり、漏れや誤りがあると手続きを進められません。
そうなれば、売却手続きも進められずトラブルになるため、必要書類は担当の不動産会社へ確認しながら、余裕を持って準備しましょう。
自分で準備する時間がなかったり、相続登記で書類を集める手間がかかる場合には、司法書士や弁護士などの専門家に依頼すると早く、確実です。
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不動産売却時の登記に関するよくある質問
-
不動産売却時はどの登記が必要ですか?
住所変更登記、氏名変更登記、相続登記、抵当権抹消登記、所有権移転登記、抵当権設定登記の最大6種類が必要です。
-
不動産売却時の登記費用は、売主と買主どちらが負担するのですか?
住所変更登記、氏名変更登記、相続登記、抵当権抹消登記の4種類は原則売主が負担します。
しかし、双方の同意があればどのように負担しても構いません。 -
登記費用はいつ支払うのですか?
基本的に残金決済・引渡し時です。
ただ、不動産業者によっては前払いの場合もあるので、不動産業者へ確認するのが確実です。 -
登記にかかる司法書士の費用はいくらですか?
登記の種類や司法書士事務所によっても異なりますが、1件当たり1~5万円程度が平均です。
ただし、相続登記だけは相場が6~7万円と高くなっています。 -
何のために登記をするのですか?
登記をすることによって、買主が法的に不動産の所有者だと主張できます。
逆に、登記をしないと法的に所有者は買主とならず、所有者はいつまでも売主のままとなってしまいます。
そうなると、相続で買主が子供に不動産を引き継いだり、好きなタイミングでの売却ができなくなってしまうなどの弊害が生じるので、登記は必ず必要なのです。