共有名義の不動産は、管理・利用・売却に共有者同士の話し合いが必要となるため、トラブルが起こりやすい物件です。
トラブルを回避するには「共有名義の解消」がベストですが、具体的にどんな方法で解消するのかわからない人も多いでしょう。
この記事では、共有名義の解消方法として代表的な「共有物の分割」について、わかりやすく解説しています。
また、共有者に反対されて共有物の分割をおこなえない人や、共有者との話し合い自体をしたくない人は、自分の共有持分を売却するという方法もあります。
この記事を参考に、自分の状況や希望に合った共有名義の解消をおこないましょう。
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- 共有物を分割する方法は「現物分割」「代償分割」「換価分割」の3つ。
- 分割に反対する共有者がいれば共有物分割請求をおこなう。
- 短期間のうちに、自分の意思のみで共有名義を解消したいなら共有持分の売却がおすすめ。
目次
「共有物の分割」とは共有名義の解消をおこなう手続きのこと
共有物の分割とは、不動産を分割し、共有名義を解消する方法です。
共有名義の不動産を分割せずにいると、管理の仕方や利用方法の決定、不動産全体の売却などに、他共有者との話し合いが必要です
共有者の数が多くなると話し合いをするだけでも困難ですし、意見が対立すれば裁判で争うケースもありえます。
そこで、共有物の分割をおこなうことで次のようなメリットが得られ、共有者同士のトラブルを防げるのです。
- 不動産を自由に管理・利用・売却できる
- 複雑な権利関係を解消できる
- 「利用していない不動産」にかかる維持費や税金の負担がなくなる
共有名義の不動産において、どんな行為に共有者同士の話し合いが必要なのかは、下記の関連記事で解説しています。

共有物を分割する3つの方法
共有物を分割する具体的な方法は、次の3つです。
- 「現物分割」で不動産を切り分ける
- 「代償分割」で共有者間の持分売買をおこなう
- 「換価分割」で不動産を売却して現金で分割する
共有者で話し合い、どの分割方法にするか全員の合意をもって決定します。
次の項目から、各方法の具体的な内容を紹介するので、自分や他共有者の都合にあわせて適切な方法を選びましょう。
分割方法1.「現物分割」で不動産を切り分ける
現物分割とは、不動産を持分割合に合わせて切り分け、それぞれを単独名義にする方法です。

基本的には、土地を共有しているときに使われる方法です。土地を切り分ける「分筆」という手続きで、現物分割をおこないます。
建物の場合、原則として現物分割はおこないません。1棟の建物を切り分けても、管理や利用を別々におこなうのは実質的に難しいためです。
ただし、区分所有を伴う現物分割であれば、建物であっても可能です。区分所有とは、マンションやアパートのように専有面積ごとの所有権が分かれている状態を指します。
この場合、廊下や外階段など専有部分以外のスペースは共有名義のままとなります。
現物分割をおこなうときは、もともとの持分割合の価格と、分割後の不動産の価格が同じになるよう切り分ける必要があります。
しかし、同じ価格になるよう切り分けられない場合は、のちほど解説する「部分的価格賠償」で差額を精算することもできます。
複数の共有不動産があれば「持分の交換」による現物分割もできる
現物分割とは、もともと「資産の種類(土地や建物、現金、有価証券など)を変えずに分割する方法」という意味です。
そのため、同じ種類の資産である共有持分を交換することで、現物分割をおこなうという方法もあります。
この場合、建物CにおけるAの持分と、建物DにおけるBの持分を交換すれば、それぞれの建物を単独名義にすることができます。
資産価値が同じであれば交換できるので、持分同士ではなく「500万円の土地」と「500万円の土地共有持分」といった組み合わせでも交換が可能です。
ただし、土地と建物の組み合わせは違う種類の資産とみなされるため、交換はできません。
分割方法2.「代償分割」で共有者間の持分売買をおこなう
代償分割とは、共有者同士で共有持分の売買をおこなう方法です。

共有者のうち1人が他共有者の持分を買い取ることで、不動産を単独名義にします。共有名義不動産をまるごと単独名義に変えられるという点は、他の分割方法にはないメリットです。
ただし、代償分割をおこなうには次の要件を満たしている必要があります。
- 買取をおこなう共有者が代償分割を希望している
- 買取をおこなう共有者が不動産全体を取得することに合理性がある
- 客観的に見て適正な価格で持分を売買する
「不動産全体を取得することの合理性」は個々の事例によって判断されますが、例えば次のケースは合理性があるとされます。
「全面的価格賠償」と「部分的価格賠償」の違い
代償分割は、一般的に価格賠償と言い換えられる場合もあります。
しかし、価格賠償には「全面的価格賠償」と「部分的価格賠償」の2種類あり、代償分割を価格賠償と言い換えるときは、全面的価格賠償のことを指すため注意しましょう。
部分的価格賠償は、現物分割で持分割合と分割後の不動産に差額が発生したとき、現金で精算する方法です。
賠償の種類 | 内容 |
---|---|
全面的価格賠償 | 持分すべてを金銭で賠償する方法。代償分割と同じ。 |
部分的価格賠償 | 現物分割において、もともとの持分割合と分割後の不動産の価値に生じた差額を金銭で賠償する方法。 |


分割方法3.「換価分割」で不動産を売却して現金で分割する
換価分割とは、共有名義の不動産全体を売却し、売却益を分割する方法です。売却代金から経費を差し引き、残った利益を持分割合に応じて分割します。

1円単位で分割できるため公平性が高く、共有者全員が固定資産税や維持費の負担から抜け出せます。
共有名義の不動産全体を売却する場合、契約締結や物件引き渡しに共有者全員の立ち会いが必要ですが、それ以外は単独名義の不動産と同じ流れで売却できます。
「遠方に住んでいる」「入院している」などの理由で立ち会いができない共有者は、委任状を作成して他共有者や弁護士などを代理人にすることも可能です。
不動産の売却を相談する不動産業者には、仲介業者と買取業者の2種類があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットは、下記の記事を参考にしましょう。

「共有物分割請求」とは他共有者に分割を請求する権利と手続きのこと
共有物の分割をしたくても、他共有者が反対している場合や、話し合いを拒否してくるケースは少なくないでしょう。
しかし、共有持分をもっている人は、他共有者に分割を求める「共有物分割請求」の権利があります。
民法第256条
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。(後略)
共有者であれば誰でも、例え持分割合が少ない人であっても共有物分割請求を起こせます。
他共有者が分割や話し合い自体を拒否する場合、裁判所に調停や裁判を申し立てることも可能です。
共有物分割請求の流れ
共有物分割請求は、次の流れで手続きを進めていきます。

- 共有者同士が話し合う「共有物分割協議」
- 裁判所で調停委員を挟んで話し合う「共有物分割調停」
- 裁判所で裁判官に分割方法を決定してもらう「共有物分割訴訟」
最初に共有者同士で協議(話し合い)をおこなう必要があり、協議をせずに調停や訴訟を申し立てることはできません。
具体的にどんなことをするのか、次の項目から流れにそって解説していきます。
1.共有者同士が話し合う「共有物分割協議」
まずは他共有者に協議を申し込み、話し合いによる分割方法の決定を図ります。共有者全員が納得し、合意した上でないと分割を実施できません。
話し合いの方法にルールはないため、電話やメール、手紙など、直接会わずに話し合う方法でも協議は成立します。
ただし、話し合いがまとまらず、次の段階である訴訟へ移行する際に、裁判所に「協議をおこなったが話し合いがまとまらなかった」ということを証明する必要があります。
そのため、共有物分協議の申し入れは内容証明郵便を使うのが一般的です。
内容証明郵便を使えば、いつ・どんな文書を・誰から誰に送ったかを郵便局が証明してくれるので、協議をおこなった証拠となります。
参照:郵便局「内容証明」
2.裁判所で調停委員を挟んで話し合う「共有物分割調停」
調停とは、一般市民から選ばれた調停委員と、裁判所の裁判官もしくは調停官が話し合いを仲介し、客観的な意見をもとに話し合いを進める手続きです。
調停で和解が成立すれば、調停証書を作成し、その内容にしたがって共有物の分割をおこないます。
あくまで話し合いの延長なので、無理やり和解させられることはありません。調停をせずに訴訟を起こすことも可能です。
調停は、訴訟を起こしてまで事を荒立てたくない場合や、分割自体は合意しているが条件などで揉めているときにおこなうとよいでしょう。
調停の申し立ては、相手方となる共有者の住所を管轄する簡易裁判所でおこないます。共有者がすべて親族の場合のみ、家庭裁判所での申し立ても可能です。
3.裁判所で裁判官に分割方法を決定してもらう「共有物分割訴訟」
協議や調停の話し合いで和解できないとき、裁判所に適切な分割方法を決めてもらう最終的な手続きが共有物分割訴訟です。
裁判官の判決によって強制的な分割ができますが、原告側の希望とは異なる分割方法になる恐れもあります。
また、換価分割の判決が下された場合、競売手続きで共有不動産を売却します。競売は通常の売却より代金が低くなるため、各共有者の取得できる金銭も少なくなってしまうのがデメリットです。
訴訟はあくまで最終手段と考え、なるべく協議や調停で和解したほうが、共有者全員が損せず分割をおこなえます。
共有物分割訴訟については、下記の関連記事で詳しく解説しています。

共有者の話し合いで共有物分割請求を禁止することもできる
共有者全員の同意があれば、最長で5年の間、共有物分割請求を禁止する取り決めを設定できます。
民法第256条
1. (前略)5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
2. 前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から5年を超えることができない
分割を禁止する取り決めは「共有物分割禁止特約」といわれ、法務局で登記することも可能です。
共有物分割禁止特約を登記すると、特約の設定時に共有者ではなかった人に対しても、分割禁止の主張ができます。
例えば、持分売買や相続で共有者が変わっても、登記をしておけば特約はなくならず、禁止期間を継続できるのです。

不合理な分割請求は訴訟で棄却される
共有物分割請求が訴訟まで発展した場合、不合理な分割請求は裁判官の裁量で棄却される可能性があります。
不合理な分割請求の例としては、次のようなものがあります。
- 経済的に余裕がある共有者が請求を起こしている
- 共有不動産を分割すると住む場所を失う共有者がいる
- 遺産分割協議を済ませずに遺産の不動産を共有している
これらは「権利の濫用」とみなされる可能性が高く、分割請求そのものが却下されやすいケースです。
訴訟で分割請求が棄却された場合、共有名義のまま現状維持することになります。
権利の濫用については、下記の関連記事でも詳しく解説しています。

共有物の分割はどの専門家に相談すべき?
実際に共有物の分割をおこなうにあたって、どこに相談すればよいかわからない人も多いでしょう。
共有物の分割に関わる専門家は、次の3つです。
- 司法書士
- 土地家屋調査士
- 弁護士
状況によって対応できる専門家は変わるため、適切な相談先を選ぶ必要があります。次の項目から、各専門家に相談すべき状況を解説します。
共有物の分割をおこなうだけなら司法書士に相談すればOK
共有者の間で分割に合意しており、後は分割の手続きをおこなうだけであれば、司法書士に相談しましょう。
共有物の分割をおこなう場合、持分移転登記の手続きが必要となります。
司法書士は登記事務の専門家で、共有物の分割に必要な書類の準備や、法務局での申請もすべて代行してくれます。
持分移転登記については、下記の記事もぜひ参考にしてください。

土地の現物分割をおこなうときは土地家屋調査士への相談も必要
土地の現物分割をおこなう場合、現地の測量や境界の決定に土地家屋調査士の依頼が必要となります。
土地の現物分割には面積の測量や土地分筆登記が必要となり、これらを依頼できる専門家は土地家屋調査士だけです。
司法書士と連携している場合が多く、持分移転登記と土地分筆登記をまとめて依頼できるところもあります。
共有者と揉めている場合は弁護士に相談すべき
共有物の分割をめぐって共有者間のトラブルが起きている場合、まずは弁護士へ相談しましょう。
話し合いにおける交渉を任せたり、調停・訴訟で必要な手続きを代行してもらえます。
適切な分割方法や共有者と交渉するコツなど、具体的なアドバイスを教えてもらうことも可能です。

【自分の意思だけでできる】分割以外で共有状態を解消する方法
共有名義の解消方法として代表的な共有物の分割ですが、共有者の合意を得るか、訴訟による判決によって分割する必要があります。
しかし、人によっては「共有者と関わりたくない」「訴訟で時間をかけたくない」といった事情もあるでしょう。
そこで、自分の意思だけですぐに共有名義を解消する方法として、次の2つを紹介します。
- 1.自分の共有持分だけ売却する
- 2.自分の共有持分を放棄する
1.自分の共有持分だけ売却する
自分の共有持分だけであれば、他共有者に確認を取ることなく、自分の意思のみで売却できます。
共有持分を売却すれば、自分は共有名義から抜けることになるため、維持・管理にかかる費用などの負担もなくなります。
ただし、共有持分のみを欲しがる買主は少なく、売却価格も本来の価値から下がりやすい点には注意が必要です。
そのため、共有持分を売却するときは、高額かつスピーディーな買取が可能な「共有持分専門の買取業者」に相談するのが一般的です。
共有持分専門の買取業者に相談すれば最短2日で売却できる
共有持分専門の買取業者は、共有持分を買い取った後に自社で収益化する知識があるため、高額での買取ができます。
また、買取業者は自社で物件を買い取るため、代金の支払いが早いのも特徴です。
仲介業者(自社で買うのではなく、買主を探して仲介料をもらう業者)だと売却まで数ヶ月~1年かかりますが、買取業者なら最短2日で現金化ができます。
買取業者を選ぶときは、弁護士と連携している業者がおすすめです。弁護士と連携していれば、共有者と権利トラブルになっている物件でも、現状のまま買い取ってもらえます。
2.自分の共有持分を放棄する
自分の共有持分は、自分の意思で放棄することも可能です。他共有者に放棄の意思を伝えるだけで、共有持分の放棄は成立します。
ただし、放棄された共有持分の名義は他共有者に移す必要があり、そのための持分移転登記は他共有者と協力して申請する必要があります。
他共有者が放棄に伴う持分移転登記を拒否する場合、登記引取請求訴訟をおこないます。訴訟により登記すべきと認められると、他共有者の協力がなくても持分移転登記が可能です。
まとめ
共有名義の不動産は権利関係が複雑になりやすく、利用や管理をめぐってトラブルになりやすい状態です。
トラブルが起こる前に、共有物の分割をおこなって共有名義を解消することをおすすめします。
共有物の分割は、共有者であれば誰でも請求が可能です。例え自分の持分割合が小さくても、当然の権利として請求をおこなえます。
ただし、共有者との話し合いが難しかったり、分割方法で揉めてしまう場合は、持分売却など自分の意思のみでおこなえる共有名義の解消方法も検討しましょう。
共有持分専門の買取業者に依頼すれば、最短2日で共有持分を買い取ってもらえます。
共有物の分割についてよくある質問
共有物の分割とは、不動産を分割し、共有名義を解消する方法です。共有名義の不動産は管理・利用・売却に共有者同士の話し合いが必要なため、制限が多くなります。共有物の分割で共有名義を解消すれば、複雑な権利関係を解消して自由に管理・利用・売却できるようになります。
共有物を分割する具体的な方法は、不動産を切り分ける方法(現物分割)、共有者間の持分売買をおこなう方法(代償分割)、不動産を売却して現金で分割する方法(換価分割)の3つがあります。
共有物分割請求で、協議・調停・訴訟をおこないましょう。訴訟まで進めれば、最終的に裁判官の判決で強制的に分割方法を決定してもらえます。
共有物の分割に必要な手続きだけなら、司法書士に依頼できます(土地の現物分割のみ、土地家屋調査士への依頼が必要)。共有者と分割を巡って揉めている場合は、弁護士に相談しましょう。
自分の共有持分だけ売却すれば、他共有者の同意がなくても共有名義から抜け出せます。共有持分専門の買取業者に相談すれば、最短2日での売却が可能です。→【小型物件でも高額査定!】共有持分の無料査定はこちら
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