夫婦共有名義の財産分与はどうやる?トラブルなく公平に分ける方法

夫婦共有名義 財産分与

離婚をするときには財産分与をしなければいけませんが、夫婦共有名義の家を所有している場合、どのように財産分与をすればよいのかと悩んでしまうのではないでしょうか。

結論からいえば、夫婦共有名義の家を財産分与する際には、持分割合に関係なく1/2ずつで分けるのが原則です。

住宅ローンがなければ、不動産全体を売却して現金で分割するといった方法があります。

しかし、住宅ローンの支払いが残っている場合だと、通常の方法では家を売却できず、任意売却が必要です。

任意売却は法律知識も必要になるため、弁護士と連携した不動産買取業者に相談してみましょう。買取業者なら、離婚トラブルが起きている家でもスムーズに現金化が可能です。

>>【弁護士と連携!】離婚物件・共有不動産の買取業者はこちら

この記事のポイント

  • 共有名義の家を財産分与で分けるときは、持分割合に関係なく1/2ずつにするのが原則。
  • 共有名義のままにしておくとトラブルになりやすい。
  • 住宅ローンがある場合の財産分与の方法は3つある。

財産分与では婚姻中に築いた夫婦の財産を1/2ずつに分ける

「離婚時には財産分与をしなければいけない」ということは、ほとんどの人が知っていると思います。

では、具体的にどうやって財産分与するかというと、原則として「結婚してから築いた財産全て」を折半します。

財産分与は折半が原則_pc

・協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができるものとする。
・当事者双方がその協力により財産を取得し、又は維持するについての各当事者の寄与の程度は、その異なることが明らかでないときは、相等しいものとする。

引用:法務省「民法の一部を改正する法律案要綱 第6 協議上の離婚 1項、2項」

上記は法制審議会総会が作成した法律の改正案で、2021年現在において正式な法律にはなっていませんが、家庭裁判所の判断基準として事実上ルール化しています。

実際に労働でお金を稼いだだけでなく、家事・育児なども「財産を築くための寄与」と認められるため、専業主婦であっても財産の半分を取得する権利があります。

つまり、夫婦で不動産を購入し、資金の負担に差があっても、財産分与では双方が半分ずつ取得する権利をもつということです。

例えば、3,000万円の家を購入するにあたり夫2,000万円、妻1,000万円を負担したなら、持分割合は夫2/3、妻1/3となります。
共有不動産を売却して分ける場合、通常であれば持分割合にしたがい夫2/3、妻1/3で分けます。
しかし、財産分与ではこの持分割合に関係なく、1/2ずつで分けなければいけません。

ただし、上記はあくまで原則なので、夫婦が合意していれば異なる割合で財産分与をおこなうことも可能です。

また、夫婦の一方が会社経営や特殊な資格・職業で高額な収入を得ている場合、財産を築くための寄与が大きいとして、財産分与の割合も大きくなる場合があります。

財産分与の対象となるのは婚姻中に築いた夫婦の財産

財産分与の対象となるのは、婚姻中に築いた夫婦の財産です。

例えば以下のようなものがあります。

  • 夫婦共有名義の不動産
  • 自動車
  • 家具や家財
  • 預貯金
  • 有価証券
  • 保険解約返戻金
  • 退職金

財産の名義が夫婦どちらかになっていても財産分与の対象です。

例えば、夫名義の車だから夫の財産というわけではなく、婚姻中に築いたものであれば夫婦の共有財産とみなされます。

家の財産分与をする3つの方法

預貯金などであれば単純に1/2ずつにできますが、家はどのように分けるのかが気になりますよね。

家の財産分与をする方法は3つあります。

  • 1.不動産を1/1で売却して得たお金を分ける
  • 2.どちらかが相手の持分を買い取って住み続ける
  • 3.どちらかが家を譲り受け相当する財産を相手に分与する

それぞれの方法を詳しく解説していきます。

1.不動産を1/1で売却して得たお金を分ける

家を売却して現金化する

1つ目は不動産を1/1(丸ごと)で売却し、得たお金を1/2ずつ分ける方法です。

仮に600万円で売却できたとしたら、持分割合に関係なく300万円ずつに分けます。

3つの方法のなかで一番シンプルでトラブルが少ない方法ですが、夫婦のどちらかが家を残したいと考え、反対してくる場合もあります。

2.どちらかが相手の持分を買い取って住み続ける

家をどちらかが譲り受け、代償金を渡す

2つ目は、どちらかが相手の持分を買い取って住み続ける方法です。

離婚後も家に住み続けたい、子供の環境を変えたくないなどの事情がある場合に有効な方法で、家に住み続ける配偶者が、家から出ていく配偶者の持分を買い取ります。

仮に600万円の家であれば、家に残る配偶者が家から出ていく配偶者に300万円を払うことで、家を半分に分けた場合と同額の資産を取得する結果になります。

ただし、この方法は相手への支払いが高額となってしまうため、資金が用意できなければ難しい方法となるでしょう。

3.どちらかが家を譲り受け相当する財産を相手に分与する

どちらかが家を譲り受け、それに相当する財産を分与する

3つ目はどちらかが家を譲り受け、相当する財産を相手に分与する方法です。

例えば600万円の家を財産分与するなら、どちらかが家を譲り受け、300万円に相当する他の財産を相手に分与します。

預貯金や有価証券、自動車など、家と同価値の共有財産が他にもあるなら候補に挙がる方法です。

不動産が財産分与の対象にならない3つのケース

財産分与の対象となるものや、その分け方について解説しましたが、財産分与の対象にならないケースもあるので注意しなければいけません。

財産分与の対象にならない3つのケースは、次のとおりです。

  • 結婚前に片方が購入したケース
  • 結婚前の貯金で購入したケース
  • 一方の親族が費用負担したケース

不動産が、片方が結婚前に購入していた場合や、結婚前の貯金で購入した場合、一方の親族から購入費用の全額を援助してもらった場合だと、財産分与の対象にはなりません。

共有名義のままにしておくとトラブルになりやすい

「共有名義のまま片方が住み続けるようにしたい」という夫婦も多いでしょう。

もしくは「わざわざ売却などをしなくても、家の持分割合を1/2ずつに変更すればよいのでは?」と考える人もいるかもしれません。

確かに、共有名義のまま相手が住み続けることは可能ですし、持分割合を1/2ずつにすることも可能ではあります。

しかし、共有名義のままにしておくと、次のようなリスクが発生するのです。

  • 1.売却や活用に相手の同意が必要
  • 2.相続で権利関係が複雑になる

それぞれどのようなリスクなのか、具体的に見ていきましょう。

売却や活用に相手の同意が必要

共有不動産を貸したり売ったりする場合、共有名義人全員の同意が必要です。

家を増改築したり、家を担保に入れてお金を借りたりする場合なども共有名義人の承諾が必要となります。

その都度承諾を得なければいけない上に、意見が合わずにトラブルになる可能性もあります。

また、離婚後も相手との関係が続いてしまうというデメリットもあります。

相続で権利関係が複雑になる

もう1つの懸念点は、相続で権利関係が複雑になることです。

仮にどちらかが亡くなってしまった場合、亡くなった人の共有持分は亡くなった人の遺族が相続します。

例えば、亡くなった元夫が再婚していたら、元夫の持分は新しい配偶者と子供が相続します。
そうなると元妻と新しい妻、その子供との共有不動産となってしまい、家の売却なども新しい妻たちと話し合う必要があります。

このように、権利関係が複雑になるとトラブルになる可能性が高まります。

住宅ローンがないなら財産分与は簡単

住宅ローンがなければ、財産分与をする方法は自由に選択できます。

先に解説した3つの方法のなかから、夫婦間での話し合い次第で決められるため、比較的簡単ともいえるでしょう。

分割方法で揉めている場合や、不倫などのトラブルから直接の話し合いが難しい場合、弁護士を間に挟んで話し合いましょう。

必要であれば、調停や訴訟など裁判所への手続きに移行します。その際も、弁護士に依頼しておいたほうがスムーズに手続きを進められます。

住宅ローンがある場合の財産分与の方法

住宅ローンが残っている家の財産分与は、話が少し複雑となります。

金融機関とのローン契約も関わるため、夫婦間の話し合いのみで財産分与の方法を選択できないからです。

住宅ローンがある家を財産分与するには、まずはアンダーローンかオーバーローンかを調べ、自分たちが採れる方法を明確にします。

アンダーローンなら通常の売却ができますが、オーバーローンならどちらかが住み続けるか、任意売却という方法になります。

アンダーローン/オーバーローンとは?
アンダーローンは住宅ローンの残高が家の売却価格を下回ること、オーバーローンは反対に住宅ローンの残高が家の売却価格を上回ることをいいます。
アンダーローンとオーバーローン

アンダーローンかオーバーローンかを確認するには、住宅ローンの残高と売却価格を調べなければいけません。

住宅ローンの残高は、金融機関から毎年10月下旬ころに郵送されてくる残高証明書で確認できます。

売却価格は、不動産会社の査定を受けて知ることができます。

アンダーローンなら通常の売却ができる

住宅ローンの残高が現在の自宅の売却価格より低い「アンダーローン」なら、通常の不動産と同じように売却が可能です。

共有不動産を売却したお金で住宅ローンを完済し、残った売却益を1/2ずつに分けます。

オーバーローンならどちらかが住み続けるor任意売却をする

住宅ローンの残高が現在の自宅の売却価格より高い「オーバーローン」の場合、共有不動産を自由に売却できません。

共有不動産を売却してもその代金で住宅ローンを完済できず、抵当権を抹消できないからです。

オーバーローンとなった場合の選択肢と、それぞれ気をつけなければいけないポイントは次のとおりです。


オーバーローンとなった場合の選択肢 注意点
どちらかが住み続ける ・住宅ローンを借り換えて住み続ける人の単独名義にする
・新しい連帯保証や連帯債務者を立てる
任意売却をする ・任意売却にはメリットだけでなくデメリットもある

それぞれの注意点を、詳しく解説していきます。

住宅ローンを借り換えて住み続ける人の単独名義にする

どちらかが住み続けるなら、住宅ローンを借り換えて住み続ける人の単独名義にしましょう。

なぜなら、次のようなリスクがあるからです。

  • 共有名義のままだとトラブルになりやすいから
  • 相手のローン返済が滞る可能性があるから

前述のとおり、共有名義のままにしておくとトラブルが起こりやすくなります。

売却や増改築時に相手の同意が必要となり、相続が発生するとさらに権利関係が複雑になってしまいます。

また、相手のローン返済が滞る可能性にも気をつけなければいけません。

住み続ける人にとっては住宅ローンの支払いが住居費の支払いとなりますが、家を出た人はそうではありません。自分は住んでいないからと、返済が滞る可能性があるのです。

上記両方のリスクを避けるために、住宅ローンを借り換えて住み続ける人の単独名義にします。

住宅ローンの借り換えには収入アップなどポジティブな要素が必要

住宅ローンを借り換えるには審査に通らなければいけません。

共有不動産の場合、夫婦2人の収入を基準に住宅ローンを借り入れているケースも多く、1人の収入で審査される単独名義への借り換えは難しい場合があります。

住宅ローンを借り換えるには、住宅ローンの残債が少なくなっている、住宅ローンの購入当初より収入がアップしているなどポジティブな要素が必要です。

「既存の住宅ローンの名義変更」は原則できない

「借り換えで審査を受けなくても、住宅ローンの名義変更をしたらよいのでは?」と疑問に思う人もいるでしょう。

しかし、住宅ローンの名義変更は原則としてできません。

銀行にとって、住宅ローンの名義変更はリスクが高く、メリットもありません。そのため、相談しても断られるケースが大半です。

そのため、新しく住宅ローンを契約する借り換えが必要となるのです。

住宅ローンの名義変更や借り換えについては、下記の関連記事でも解説しています。

新しい連帯保証人・連帯債務者を立てる

どちらかが住み続ける場合は、お互いが連帯保証人、連帯債務者になっていないかも確認しましょう。

連帯保証人や連帯債務者は、主たる債務者と同じ返済義務があります。主たる債務者が返済を滞らせた場合、金融機関から全額の返済請求をされます。

住宅ローンが夫婦ペアローンの場合、夫婦はお互いが連帯保証人となっているため、相手が返済を滞らせると自分に返済の請求がきます。
例えば、妻が返済を滞納した場合、夫は自分の住宅ローンに加えて、妻の住宅ローンも返済することになってしまうのです。

「返済を肩代わりしたくない」と思っても、金融機関は夫婦間のトラブルに関与しません。

連帯保証人になっている限りは、代わりに返済を請求される恐れがあるのです。

このようなトラブルを避けるために、新しい連帯保証人・連帯債務者を立てなければいけません。

自身と同じか、それ以上に収入や勤続年数のある人を立てる必要があります。

任意売却にはメリットもデメリットもある

「オーバーローンとなり自由に売却できないことがわかったが、どちらも住み続けるつもりはない」ということなら、任意売却という方法があります。

任意売却とは?
金融機関の承諾のもと、住宅ローンが残っている状態で抵当権を外し、家を売却する方法。売却益は返済に充てられ、不足分は分割で支払いを続ける。

任意売却には、次のようなメリットがあります。

  • 競売よりも余裕を持って売却できる
  • 残債は無理なく返済できる

住宅ローンの返済が滞ると家は差し押さえられ、競売にかけられます。競売になると市場価格より安い金額で落札される上、退去の時期などを選ぶことができません。

しかし、任意売却であれば価格や退去の時期をある程度調整でき、余裕を持って売却できます。

オーバーローンとなっているため任意売却をしても住宅ローンの残債は残ってしまいますが、残債の返済方法について金融機関等の債権者と協議して決めることができます。

無理のない返済計画を立てられるのも任意売却のメリットです。

一方、任意売却には次のようなデメリットがあります。

  • ブラックリストに載る
  • 債権者の同意が必要
  • 連帯保証人の協力が必要

任意売却をするには3~6ヶ月程度、住宅ローンの返済を遅延・延滞しなければいけません。

しかし、住宅ローンを2ヶ月以上滞納すると、一般的にはブラックリスト(信用情報機関)に記録されてしまいます。

そうなると5~10年間はローンを組めなくなり、クレジットカードの新規発行もできなくなります。

また、金融機関と連帯保証人の同意も必要なため、自分の意思だけで任意売却をすることはできません。

任意売却のメリットとデメリットについては、下記の関連記事でも詳しく解説しています。

相手が売却にも買取にも応じないなら自分の共有持分のみ売却する

共有不動産の財産分与について話し合いがうまくいかず、相手が売却にも買取にも応じないというケースもあるでしょう。

もし意見が食い違うのなら、自分の共有持分のみを売却することも可能です。

自分の共有持分のみの売却であれば、相手の同意は必要なく自由に売却できます。

共有持分を売却すれば、自分は家と一切関わらなくてよくなります。「とにかく早く家を手放したい」と考えている場合はおすすめの方法です。

共有持分のみの売却は専門の買取業者に依頼しよう

共有持分のみの売却は特殊な不動産売買なので、一般の不動産業者ではなく専門の買取業者に依頼しましょう。

早ければ2日程度で、共有持分を現金化できます。

離婚に伴って共有持分を売る場合、法律問題や離婚問題も相談できるよう「弁護士と連携した買取業者」がおすすめです。

財産分与だけでなく、離婚に関する悩みを総合的にサポートしてもらえます。

まとめ

離婚時の財産分与において、共有不動産は持分割合にかかわらず1/2ずつで分ける必要があります。

まずはアンダーローンかオーバーローンかを調べ、自分たちが採れる選択肢を明確にしなければいけません。

住宅ローンの完済が困難ということであれば、任意売却という方法もあります。

財産分与の方法で意見が食い違い、話し合いがまとまらないということであれば、自分の持分のみの売却も検討してみましょう。

共有名義不動産の財産分与に関するFAQ

  • 共有名義不動産の財産分与は、どのように分割すればよいですか?

    持分割合にかかわらず、1/2に分けるのが原則です。家を売却して現金で分割したり、夫婦間で持分売買をおこなうなどの方法があります。

  • 離婚時、住宅ローンの残債も分け合うのでしょうか?

    住宅ローンは財産分与の対象にはなりません。分け合う必要はありませんが、離婚協議で双方が合意すればこの限りではありません。

  • 共有不動産のまま離婚をし、相手の持分が競売にかけられた場合、自分の持分はどうなりますか?

    共有者が自己破産すると、その人の持分のみが競売にかけられます。他の共有者の持分まで競売にかけられることはありませんが、競売の結果、第三者が共有者となります。このようなリスクを避けるためにも、共有名義のまま離婚することは避けた方がよいでしょう。

  • 離婚が決まり共有不動産を売却したいです。銀行と不動産業者どちらに相談すればよいでしょうか?

    まずは不動産業者に相談し、査定額を出してもらいましょう。不動産の売却予想価格がわかった後、住宅ローンの残債と突き合わせて、適切な方法を選択します。

  • 離婚協議がまとまらないのですが、自分の共有持分だけ売ることはできますか?

    離婚協議が終わる前であっても、自分の共有持分を売却することは可能です。ただし、売却で得られた利益も財産分与の対象となります。適切な状況やタイミングで売却するためには、弁護士と連携した共有持分の買取業者に相談するとよいでしょう。→【弁護士と連携!】離婚物件・共有持分の無料査定はこちら