自殺物件は安くなる?資産価値への影響や売却のコツを解説

自殺物件

自殺物件の資産価値下落は、必然といっても過言ではありません。賃貸運用時に、家賃下落を避けることは難しいでしょう。

なぜ、自殺物件に資産価値や家賃相場の下落があるのかというと、一般的に心理的瑕疵が強い物件であるからです。

つまり、自殺が起きた物件は気色悪いや幽霊が出そうなど、物件の見た目とは関係ない部分で敬遠されてしまいます。

では、自殺物件の資産価値や家賃の下落は、一般的にどの程度になるのでしょうか?

また、自殺物件を売却や賃貸するときに、買い手や借り手は直ぐにみつかるものなのか、さらに買い手や借り手が見つからないときに、何か対策はあるのでしょうか?

一方、自殺物件に住んでみたいと思ったとき、どのように探せばよいのでしょうか?

今回は、上記について解説していきます。

この記事のポイント

  • 自殺物件の資産価値は30%下落するのが一般的。
  • 自殺物件の売買・賃貸には告知義務が伴う。
  • 売却時は事故物件を専門に扱う不動産業者に相談しよう。

自殺物件は狙い目?どれぐらい安くなるかと資産価値について

自殺物件は、一般的に周辺相場より割安に販売されているケースが殆どで、価格的にみれば狙い目でありお得感はあります

例えば、住みたい街ランキングで毎年上位にくるような、横浜・自由が丘・吉祥寺・中目黒などの人気エリアで物件を検討するとします。

近年では、中古でも価格が高いことやそもそも希望通りの物件自体が少なく、予算内で考慮すると築年数が相当古いものしかないということは良くあります。

そんなとき、築年数の比較的浅い自殺物件が周辺相場より安く販売されていたら、興味を持たないということはないでしょう。

では、自殺物件はどの程度安くなるのが一般的なのでしょうか?

自殺物件の資産価値は30%下落するのが一般的

自殺物件の場合では、周辺相場より30%程度の下落が一般的です

したがって、周辺で3LDKの70㎡が5,000万円で販売されていれば3,500万円位になり、数字だけみれば大変お得な物件になります。

価格下落の要因は、主にそもそも自殺物件を検討する人が少ないことと、自殺物件であるからこそ安く買いたいという消費者心理から来るものです。

尚、下落幅には事故の要因により相場があります。

自殺物件は30%程度ですが、他に孤独死であれば10%~20%、殺人事件であれば40%~50%です。

この下落幅は、立地や需要等によって微妙に変化し、仮に人気の街であることや需要が高いエリアであれば、下落幅が低く納まることもあります。

賃貸物件の家賃相場は30%下落するのが一般的

また、賃貸物件の家賃相場も30%程度の下落が一般的です

賃貸も購入時と同様に心理的瑕疵の度合いにより、下落幅が変わります。一方、人気の街や需要が高いエリアであれば、当然に家賃下落を抑えられる可能性もあります

すべては、周辺の稼働率や街の人気度合い(=住みたいと思う人がどの程度いるのか)にもよるので、賃貸需要が低い地域などでは相場の下落幅を上回るケース、若しくは賃借人がつかない可能性も考えられます。

心理的瑕疵が気にならず、できるだけ安く住みたい人は向いている

自殺物件に住みたいと思う人は、心理的瑕疵が気にならず、できるだけ安く住みたいと思っている人です

住みたいと思っている街で賃貸を借りようにも、家賃が高いことや予算内では古い物件や立地が不便な物件しかないなど、個人により事情はさまざまです。

心理的瑕疵からくるストレスは個人により異なり、なかには自殺が起きた物件あろうとも全く気にならず、家賃が安ければよいという人もいます。心理的瑕疵よりも家賃が安いというお得感重視の人もおり、事故物件を敢えて探して住む人もいるくらいです。

事故発生から3年以上経過すると家賃設定が元に戻ることも

自殺物件は事故発生から3年を経過すると告知不要となるため、家賃設定を元に戻すことは当然可能です

しかし、告知期間中に賃貸借契約を結んだ場合に告知期間満了と同時に、家賃を元の設定金額に戻すことは難しいと考えたほうが良いでしょう

借地借家法により、大家さんに家賃の値上げ自体は認められているものの、値上げには賃借人を納得させられる妥当性があるかがポイントになります。

例えば、値上げ理由として認められることは、所有する土地建物の固定資産税が上がった、物価が上昇するなど経済的事情が変化したとき、です。

つまり、告知期間が満了したのでいきなり家賃を30%値上げするということは、妥当性がなく現実的には困難です。

よって、家賃設定が戻るときは、告知期間に賃貸借契約を結んだ賃借人が、告知期間満了後に退去したあとの新たな入居者を募るタイミングになります。

尚、告知期間の3年経過後家賃設定を元に戻したいのであれば、告知期間中の賃貸借契約は定期借家契約とし、更新ができないような契約形態にすることがおすすめです。

気になる自殺物件と告知義務の関係について

自殺物件には、告知義務があります。しかし、賃貸と売却では告知義務の期間について違いがあります。

自殺物件の取引には告知義務が伴う

まず、自殺物件の取引には告知義務が伴います

告知期間中に物件を賃貸や売買する場合には、自殺が起きた時期や場所について、詳細に伝えなければなりません。

尚、一戸建て等の場合には家の中以外に、庭やガレージなど外の敷地内で起きたことも伝える必要や、マンションの場合は専有部分以外に共用廊下や階段など、共用部にて起きたことについても告知が必要です。

告知が必要な事象は、孤独死・自殺・殺人などとなり自然死は含まれません

告知義務が生じる期間

告知義務が生じる期間は、賃貸と売却で異なります

告知期間については2021年5月に発表された国土交通省のガイドラインに基づいています。

尚、これまで賃貸や売却で自殺物件となった場合の告知義務や期間については、特に決まっていなかったのです。

賃貸の場合では、業界の暗黙の了解で事故発生後1組目の賃借人には告知義務があり、家賃を値下げして賃貸借契約を結ぶものの、2組目以降の賃借人には告知しなくてよいというルールになっていました。

また、一部悪質な不動産業者では、自殺発生後に自社の社員などを1か月程度住まわせることで自殺物件の告知義務を無くし、その後2組目の賃借人を周辺相場の家賃で募集し、家賃の減収期間を少なくするという手法も行われていました。

このように事故物件の告知は、オーナーや不動産会社任せであったことで、過去に自殺が起きた物件であったと知らずに契約し、トラブルになることも多々ありました。

賃貸物件の場合は3年

賃貸の場合の告知期間は、3年です

自殺発生から3年以内に行う賃貸借契約には、必ず過去に自殺が起きた物件であるという告知を行います。一方、3年を経過したあとに賃貸借契約を結ぶ場合、告知の必要はありません。

では、なぜ告知期間が3年なのか?についてです。3年という期間は、これまでの自殺物件トラブル時に行われたいくつかの判例が影響しています。

判例では、事案発生後相当な期間が経過している場合の住み心地や居住性に関して、いつまで事案の存在を告げるべきかについて言及しています。事案発生後、第3者である別の賃借人が居住することで、徐々に事案が希薄化するという考えの判例や、賃貸不可期間が1年、賃料に影響が出る期間が2年であるという判例があるのです。

これにより、事案発生から3年相当の期間経過すれば、賃料に影響ある期間や事象自体が希薄化しているので、告知する義務はないと定義されています。

売却の場合は無期限

次に、売却の場合、告知期間は無制限です

つまり、自殺発生後に売買を行うには、発生から何年経過しても必ず告知義務が生じます。

また、自殺があった建物を取り壊しても、告知義務だけは残ることが要注意です。仮に、告知を怠り契約を進めてしまうと、告知義務違反に問われてしまいます。

告知を怠った場合は告知義務違反に問われる

先述でもお伝えしましたが、告知期間中に告知を怠ると告知義務違反に問われます

例えば、売買の場合には契約不適合が問われる可能性が高いです。契約不適合とは、売主から引き渡された物件が買主の思ったような物件でないときに売主に追求できる権利となります。

これまでの瑕疵担保責任で問われていた、隠れた瑕疵のみが対象ということではなくなりました。

買主は、日常の快適性を求めて物件を購入しており、自殺物件だと思って契約していることは、まずありません。

自殺物件であることで心理的瑕疵があり、快適な日常生活を送ることが難しいのであれば、当然に契約不適合を売主に追及できます。

尚、中古物件の場合、契約時に契約不適合を免責とする特約を結ぶこともあります。

これは、不動産仲介会社が独自のアフターサービスを付けることでケアしていることや、なかには中古物件で契約不適合を追及するときりがないことから免責とすることがありますが、これらは双方同意のもとでしか設定できません。

告知義務を怠ったことによるペナルティは、契約解除のみに留まらず、裁判により多額の損害賠償を請求される可能性もあることから、後々を考慮すると告知をしっかりと行うことが賢明です

【自殺物件の取引の実態】買い手や借り手は見つかりやすいのか?

では、自殺物件の取引実態はどうなのかが気になるところです。

ここでは、自殺物件の買い手や借り手がみつかりやすいのか?、について解説します。

買い手・借り手は見つかりにくい

自殺物件の買い手や借り手は、見つかりにくいと思っていたほうがよいでしょう

一般的に住宅を探す時に、わざわざ自殺があった物件に住みたいとは普通思いません。

よって、自殺物件の需要は低いと考えるべきです。買い手や借り手を探すには、何かしらの工夫が必要となります。

買い手・借り手が見つからない場合には、工夫が必要です

以下に、買い手や借り手がみつかりにくいときに行う対策について解説します。

尚、各々相場より価格・賃料は下げているという前提です。

買い手を探すとき

はじめに、自殺物件の買い手を探すときです。

価格は、相場より30%程度値下げして販売していますが、買い手がなかなかみつからないときに行う対策となります。

中古でもアフターサービスが付く大手不動産業者などに売却依頼する

一つ目は、買い手にとってメリットとなるように、アフターサービスが付く不動産業者に売却依頼することです。

駅前に店舗を構えるような大手不動産業者であれば、中古住宅にもアフターサービスを付けているところがあります。

アフターサービスは不動産業者が無料でつけているケースが多いので、売主や買主に負担にはならず、買主にとっては安心材料を得ることができます。

家具付きで販売し、1日程度お試しで宿泊できるサービスを行う

二つ目は、家具付きで販売し、お試しで宿泊できるサービスを行うことです。

不動産の購入で気になるのは、自殺物件を問わず住み心地が良いのかになります。

住環境や部屋内の快適性、また自殺物件であれば、心理的瑕疵がどの程度であるかを確認しておきたいところです。

購入を決断する前に、お試しで宿泊できれば買主にとって大きな検討材料となるでしょう。

解体して更地にする(一戸建ての場合)

一戸建てであれば、解体して更地にすることもおすすめです。

特に、古い家であれば買主が建物を使うことはなく、解体となることが多いでしょう。

よって、解体を行い更地にすることで、買主にとっては煩わしい解体する手間や解体費用が省けるのと、更地にすることで土地の現況を確認しやすいというメリットが生まれます。

また、解体して更地にすれば心理的瑕疵が和らぐ可能性もあり、より相場に近い金額で売却できることもあるでしょう。

買取り業者に売却する

上記対策を講じても買い手がつかないなどの場合には、買取り業者に売却するしかありません。

買取りであれば即売却ができ、早ければ1週間程度で現金化も可能です。

よって、買い手が見つからない場合の最終手段として考えておきましょう。尚、買取り価格は、自殺物件で下落した金額からさらに20%~30%安くしなければなりません。

借り手を探すとき

次に、自殺物件の借り手を探すときです。

賃料は、相場より30%程度値下げして募集していますが、借り手がなかなか見つからないときに行う対策になります。

家具付きにする

一つ目は、家具付きにすることです。

家具は、ニトリやイケアや無印良品などで安く手に入り、気軽にコーディネートもできる時代になりました。部屋に家具を置くことで、借り手にとっては入退去時の手間が軽減します。

また、自殺物件であること忘れさせてくれるくらいにお洒落にコーディネートができれば、借り手が見つかる確率は高くなるでしょう。

テーマを決めてリフォームを行う

二つ目は、テーマを決めてリフォームを行うことです。

部屋の雰囲気は壁紙一面を変えるだけでも、大きく違ってきます。

また、部屋の内装等もテーマを決めてリフォームすることで、先述と同じく自殺物件であることを忘れるくらいの設えにすることも一つの手です。ヨーロピアン風、南国風、和風テイスト、ジャンク風など、その地域に居住しそうな人をイメージしながら部屋造りをするのもよいでしょう。

賃料を50%OFFにする

最後は、賃料を50%OFFにするなどさらに安くすることです。

この方法は、どうしても賃借人が付かず赤字幅を少しでも減少したいときに行う最終手段です。

尚、一度下げた賃料を再び元の賃料に戻すことは難しく、定期借家契約がおすすめとなります。

【自殺物件の見つけ方】住みたい・買いたい場合はどう探せばいい?

では、自殺物件に興味があり、住みたい・買いたい場合にどのように探せばよいのでしょうか?賃貸の場合、購入の場合について解説します。

賃貸の場合

はじめに、賃貸の場合です。自殺物件を専門で扱うホームページはなく、下記条件にて不動産ポータルサイトなどで探すのが一番みつかりやすいでしょう。

周辺相場より家賃が安い物件を探す

一つ目は、周辺相場より家賃が安く設定されている物件を探すことです。

このような物件は、何かしらの訳アリ物件であることが多く、自殺物件である可能性もあります。

もちろん、訳アリの要素は自殺物件だけではないので、さまざまな訳アリ要素を確認しつつ、事故物件を検討してみるのがよいでしょう。

「告知事項あり」の物件を検索する

二つ目は、不動産ポータルサイトの中の検索条件で、「告知事項あり」にて検索することです。

この条件でヒットした物件は、事故物件である可能性が高くなります。物件情報の欄の概要等にて、告知事項の内容を確認しておきましょう。

購入する場合

次に、購入の場合です。

購入の場合は、事故物件を専門で扱う不動産業者があるので、ホームページ上で検索するなどし、問い合わせをするのが一番の近道です。

事故物件を専門で扱う不動産業者を検索する

検索サイトにて、「事故物件 購入」「訳アリ不動産」で検索すると、専門の不動産業者を簡単に探すことは可能です。

このような不動産業者は、自殺物件などを買取り綺麗な状態にリフォームして、他業者に卸すか自社内で再販売を行っています。

自殺物件等の扱いには慣れているので、購入検討者も安心です。

不動産屋が語る心理的瑕疵の真実|なぜ自殺物件は敬遠されがちなのか?

ここまで自殺物件を売主や貸主、または買主や借主の目線で解説してきましたが、ではそもそも自殺物件はなぜ敬遠されてしまうのでしょうか?

その根底にあるものは、人はその目の前に横たわっている死体に対し、恐怖感を感じることが多いと言います。それは、普段の生活の中で「人の死」というものを遠ざけ、誰にでも訪れることであるにも関わらず、その事実すら考えようとしないことにあると思います。

よって、人の死が起きてしまった場合に「恐怖」「嫌悪感」「気色悪い」など、普通に考えればありえないような思考に陥ってしまいます。

以下に、自殺物件が敬遠される理由として以下3点を挙げてみました。

特殊清掃をしても臭いや跡が残ってしまうから

自殺発生後に特殊清掃を行うことは殆どですが、死体の状況によっては臭いや痕跡が残ってしまうこともあります

オゾン発生装置による脱臭の他、リフォームにより臭い発生部分等を除去することはできますが、死臭などの強烈な臭いは部屋内にこびりついてしまうことが多く、取り切れないこともあります。

自殺という事象のイメージが悪すぎるから

次に、自殺という事実自体のイメージが悪すぎることです。自殺があった部屋にわざわざ住みたいとは普通は思いません。

近所へのインパクトも強く、風評被害が根強く残るから

最後に、近所など周囲へのインパクトが強く、風評被害が根強く残るからです。

自殺物件があったマンションなどを簡単に調べられるサイトもあり、自殺発生後の風評被害はなかなか衰えることはありません。

まとめ

自殺物件の資産価値は下落します。理由は、自殺物件に住みたい人が少ないからです。

一方、自殺物件に住む場合には、お得な物件となります。人気の街でお得に住みたいのであれば、自殺物件という選択肢もありでしょう。

尚、心理的瑕疵には個人差があるので、金額の安さだけに惑わされずに、必ず内見して住むか否かを判断していきましょう。

自殺物件に関してよくある質問

  • 自殺物件の資産性はどのくらい下落するのか?

    自殺物件の資産性は、周辺相場より30%程度の下落が一般的です。また、家賃相場も周辺相場より30%程度の下落になります。尚、下落幅は立地や賃貸需要等により変わります。

  • 過去に自殺があった物件の告知期間はどのくらいになるのか?

    賃貸の場合の告知期間は、自殺が起きた日から3年間です。売買の場合の告知期間は、無制限となります。

  • 告知期間中の契約にも関わらず、告知を怠るとどうなるのか?

    告知を怠ると、告知義務違反に問われます。契約解除のみに留まらず、多額の損害賠償を請求される可能性があります。

  • 自殺物件の買い手や借り手は見つかりやすいのか?

    自殺物件の買い手や借り手は、見つかりにくいと考えるのが無難です。よって、自殺があった物件を売却や賃貸する場合には、相場より売価若しくは賃料を下げるなど一定の工夫が必要となります。

  • 自殺物件を借りて住みたい、買いたい場合にはどうすればよいのか?

    自殺物件を借りて住みたい場合には、不動産ポータルサイトにて周辺より家賃が安い物件を探すことや、「告知事項あり」で検索します。また、購入したい場合には「事故物件 購入」「訳アリ不動産」で検索すると専門の不動産業者を簡単に探すことができます。