「持ち家と賃貸のどちらがよいか」という話題はよく議論の的になりますが、これからの日本を背負っていく20~30代は、持ち家の購入についてどのように考えているのでしょうか?
また、「日本は収入が上がらない」とよくいわれますが、若者の持ち家購入意欲にどう影響しているのかも気になるところです。
今回は、20〜30代の100人に持ち家の購入意欲や、必要な収入などの意識調査を実施しました。
平均年収や不動産価格の推移など、国のデータも交えながら、若者に家を買ってもらうには社会になにが必要か分析していきます。
目次
将来的に持ち家を持ちたい若者は全体の約70%
「持ち家(マンション含む)を購入することは将来設計に入っていますか?」という質問に対して、全体の70%近くが持ち家を購入したいと答えました。
「持ち家と賃貸のどちらがよいか」とはよくいわれますが、若者の意識としては、将来的に持ち家を希望する層が多いとわかります。
なお、2018年におこなわれた国の統計によると、住宅全体に占める割合「持ち家住宅率」は61.2%となっています。
若者の持ち家需要は、実際に持ち家をもっている世帯より高い傾向にあるようです。
参照:総務局統計「都道府県別でみる住宅状況~住宅及び世帯に関する基本集計(確報値)より~」
【収入の壁】今のままでは持ち家を買えないと思っている若者も多い
一方、「現在の仕事を続け、将来的に持ち家を購入できると思いますか?」という質問に対しては、「はい」と「いいえ」の回答がちょうど半分ずつとなっています。
「持ち家の購入意欲がある」と答えた人だけで見ると、67人中21人が買えないと思っていました。つまり、現状のままでは買いたくても買えないと考えている層が一定数いるということです。
若者が感じている収入の壁を、国の調査からも紐解いてみましょう。下記は、不動産の市場価格動向を表す「不動産価格指数」と、国民の収入について調査した「民間給与実態統計調査」を合わせたグラフです。
不動産価格指数の数値は、2008年~2020年の間に1.15倍以上まで上がっています。しかし、同期間における20~30代の平均給与額は横ばいで推移しています。
上記のグラフにはありませんが、すべての年代を合わせた平均年収も、2008年は430万円、2020年は433万円と横ばいです。
これらのデータを見ると、価格と収入の動向が比例していないため、不動産は年々買いにくくなっているといえるでしょう。
「持ち家購入に必要な年収は500~700万円」という考えが多数
持ち家の購入にあたって必要だと感じる年収は、500~700万円がボリュームゾーンとなっています。
一方、給与所得者全体の平均年収は、先述したとおり433万円です。
これらのデータを見ると、持ち家購入に必要と考える年収に届かず、家の購入に踏み切れないという人が多い可能性が予測できます。
「許容できる月々の返済額」から逆算すると潜在的に不動産を購入できる人も多い
「持ち家購入には年収500~700万円が必要」という答えが多い一方、支払いで許容できる金額は、月5万円~10万円で約80%を占めている点は着目すべきポイントです。
住宅ローンには、年収に対する返済額の割合を表す「返済比率」というものがあり、金融機関によっては返済比率に上限を設定しています。
フラット35における返済比率の条件は30~35%以内です。月8万円を返済するなら320万円、月10万円を返済するなら400万円の年収があれば借入できるのです。
上記を踏まえると、持ち家を買うために必要な年収は、実態と若年層の認識とズレが生じているといえそうです。
アンケートでは「住宅ローンを払い続けられる年齢は60歳~70歳まで」と答えた人が70%を超えていますが、20~30代が35年の長期ローンを組めば、返済額を許容範囲内に納めることは十分可能といえるでしょう。
参照:フラット35「10月よりフラット35のご利用条件を簡素化します(【フラット35】(保証型)も同様に簡素化します)」
購入意欲がない人のほとんどが年収に不安
「持ち家の購入が将来設計に入っていない」と答えた人の内訳を見ると、29人が「今の年収では買えないと思う」と答えていました。
年収的には購入可能と考えているのはわずか4人だけであり、収入の低さが持ち家の購入意欲に強く影響を与えている可能性があるでしょう。
逆にいえば、年収が上がれば持ち家の購入意欲を持つ人も増えるかもしれないということです。
テレワーク普及で見えた郊外・地方移住の兆し
持ち家購入にあたって「通勤1時間超の郊外や、地方移住も許容できると」と答えた人は全体の約40%でした。
「許容できる」と答えた人のうち、理由として「安く買えるから」などの価格関連を挙げたのは11人で、もっとも多くなりました。
ただし、次に多かった理由は9人が答えた「テレワークなどで通勤の必要がない」というもので、価格関連と大きく差がない点は興味深いポイントです。
近年はコロナの影響もあり、テレワークやノマドワーカーが増えています。社会のあり方が変わったことで、家探しで何が重要視されるかも変わってきているといえるでしょう。
郊外・地方移住を嫌がる理由には「プライベート時間の確保」が多数
郊外や地方移住を避ける理由として多く挙げられたのは、通勤時間の問題でした。
「通勤が1時間以上かかるのは許容できない」という声が多く、家事・育児や睡眠時間など、プライベートの時間を削られたくない人が多いとわかります。
また「都会のほうが便利で住みやすい」「地方に移住してまで持ち家は欲しくない」といった意見も見受けられ、郊外・地方の不動産需要を高めるのは、地域全体の発展が重要であるといえるでしょう。
まとめ
今回のアンケートからは、20~30代の若年層は全体的に持ち家の購入意欲が高いとわかりました。
購入を考えていない人も、年収さえ上がれば需要を喚起することは可能と考えられます。
また、テレワークの普及によって社会が変容し、郊外・地方の需要も上昇する可能性は十分考えられます。
若者の持ち家購入数を増やすには、平均給与の上昇と地域の活性化、あるいはテレワークに対応できる企業の仕組みづくりが重要といえるでしょう。
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