共有持分の決め方とは?計算方法をを状況別に解説

共有持分 決め方 計算

共有名義の不動産は、各共有者がどれくらいの割合で所有権をもっているかを表す「持分割合」を決める必要があります。

持分割合は、原則として「不動産購入で出資した負担金額」や「相続分もしくは遺産分割の協議結果」などに合わせます。

上記とは異なる割合にすることも可能ですが、贈与税が発生する恐れもあるので注意しましょう。

共有名義不動産の取得経緯(購入か相続か)で考え方も変わるので、この記事を参考に適切な持分割合の決め方を把握しておきましょう。

また、贈与税が発生しないようにする対策についても解説しているので、余計な税金を支払わないための参考にしてください。

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この記事のポイント

  • 不動産を共同購入した場合は「負担金額の割合」で持分割合を決める。
  • 相続で不動産を共有名義にした場合は「法定相続分」や「遺産分割の協議」によって持分割合を決める。
  • 持分割合を負担金額や相続分・遺産分割結果とは違う比率にした場合、差額分に贈与税が課せられる。

不動産持分割合の決め方は購入か相続によって異なる

不動産を共有で所有するとき、不動産持分の割合の決め方は購入の場合と相続の場合で異なります

ここでは、購入の場合と相続の場合それぞれの決め方について説明します。

共同購入の場合は購入時の負担金額で持分割合を決める

共同で不動産を購入した場合は、購入時の負担金額によって持分割合を決定します

つまり、購入時の支払い額÷不動産の購入代金(物件価格+諸費用)=持分割合となります。

不動産の購入代金には物件価格と諸経費が含まれます。また、住宅ローンの金額も購入時の支払い額に含まれます。

次の項で物件価格として計算できるものと諸費用として計算できるものを説明します。

物件価格として計算できるもの

物件価格として計算できるものは以下の通りです。

  • 土地・建物の購入代金
  • 建築費
  • 解体費
  • 測量費
  • 整地費
  • 設計費
  • 下水道工事費
  • 擁壁工事費
  • 増改築やリフォーム費

諸費用として計算できるもの

諸費用として計算できるものは以下の通りです。

  • 仲介手数料
  • 登記手数料・登記免許税
  • 売買契約書印紙代
  • 不動産取得税
  • 固定資産税の清算金
  • 都市計画税の清算金
  • 住宅ローンの保証事務手数料
  • エアコン・給湯設備等(建物に付属する設備)
  • 借入金の金利(借入日から使用開始までの期間の利息)

以下は、物件価格にも諸費用にも含まれません

  • ローン金利
  • ローン保証料
  • 火災保険料
  • 地震保険料
  • 家財保険料
  • インターネット加入料
  • つなぎローンの事務手数料
  • つなぎローンの金利
  • 団体信用生命保険料
  • 管理費
  • 修繕積立金
  • 引っ越し費用
  • 家具家電の購入費
  • 町内会費

夫婦で3,000万円の不動産を購入した場合の例

不動産を共同購入した場合は購入時の負担割合によって持分割合を決めるのですが、計算式だけでは分かりづらいと思います。

そこで、例として3,000万円の不動産を夫婦で購入したと仮定し、その持分割合の計算を行います。

持分割合の計算は大きく分けて現金で購入した場合と住宅ローンを組んだ場合とで分けられ、住宅ローンを組んだ場合は、そこからさらに3つのパターンに分けられるのです。

それぞれのパターンについての説明を行います。

現金で購入した場合

住宅ローンを組まずに現金一括で不動産を購入した場合です。

3,000万円の不動産を夫が2,100万円、妻が900万円支払って購入したとします。

そうすると夫は2,100万円÷3,000万円=0,7

つまり夫の持分は全体の10分の7ということになります。

妻は900万円÷3,000万円=0,3

妻の持分は全体の10分の3ということになります。

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住宅ローンを組んだ場合

住宅ローンを組んだのであれば「どちらか一方が債務者になる場合」、「ペアローンを組む場合」、「夫婦で連帯債務者となる場合」の3パターンがあります。

今回は3,000万円の不動産を夫は手持ち資金として600万円、妻は300万円支払って購入したとします。

パターンによってそれぞれ計算方法が異なるため、1つずつ説明していきます。

<どちらか1人が債務者になる>

夫か妻のどちらかが債務者となり、もう一方が連帯保証人になる連帯保証型のパターンです。

この場合は、購入資金として不足している2,100万円を夫が1人で借りることになります。

そうなると、夫の負担総額は2,700万円となり

2,700万円÷3,000万円=0.9

つまり夫の持分は全体の10分の9ということになります。

そして妻は300万円÷3,000万円=0.1

妻の持分は全体の10分の1ということになります。

ちなみに、購入の際に妻の手持ち資金がなく支払いをしていない場合は、一般的に名義は夫のみのものとなります。

<ペアローンを組む>

夫婦がそれぞれ債務者となって、個別に住宅ローンを組む方法をペアローンといいます。

夫が1,500万円借りて、妻が600万円借りるとします。

そうすると夫の負担総額は600万円+1,500万円=2,100万円となり

2,100万円÷3,000万円=0.7

つまり夫の持分は全体の10分の7ということになります。

そして妻の負担総額は300万円+600万円=900万円となり

900万円÷3,000万円=0.3

妻の持分は全体の10分の3ということになります。

<夫婦で連帯債務者となる>

ペアローンは夫と妻それぞれが個別に住宅ローンを組みます

それに対して、1つの住宅ローンの契約で夫婦が2人が債務者となるのがこの連帯債務型です。

連帯債務型の持分の決め方は収入と同じ割合で設定するのが一般的です。

例えば、収入比が夫と妻で5:2だったとしましょう。

購入資金の不足額である2,100万円の住宅ローンの返済も夫と妻で5:2になるように設定します。

そうすると夫の返済分が1,500万円、妻の返済分が600万円となります。

結果として、夫の負担総額は600万円+1,500万円=2,100万円となり

2,100万円÷3,000万円=0.7

つまり夫の持分は全体の10分の7ということになります。

そして妻の負担総額は300万円+600万円=900万円となり

900万円÷3,000万円=0.3

妻の持分は全体の10分の3ということになります。

相続の場合は法定相続分や遺産分割の協議によって持分割合を決める

不動産を相続して共同名義で所持することになった場合は、法定相続分や遺産分割の協議の内容によって持分割合が決定します

法定相続分によって決める

法定相続分とは民法によって定められた相続の割合のことをいい、この法定相続分が認められる相続人のことを法定相続人といいます

法定相続人になれる範囲は「配偶者」と「子ども」、「父母」、「兄弟・姉妹」といった血縁関係にある人と定められています。

配偶者は必ず法定相続人であり、血縁関係にある人の中でも「子ども→父母→兄弟・姉妹」といった優先順位があります。

そのため、順位はこのようになります

法定相続人 優先順位
配偶者 常に相続人
子ども(すでに亡くなっている場合は孫) 第1順位
父母(すでに亡くなっている場合には祖父母) 第2順位
兄弟・姉妹(すでに亡くなっている場合には兄弟・姉妹の子) 第3順位

つまり、被相続人に配偶者がいた場合には、配偶者と最も優先順位が高い人が相続人になることができます

また、配偶者がいない場合には、最も優先順位が高い人のみが相続人になります。

このように、法定相続分は一律で決まっているわけではなく、被相続人の状況によって割合が異なるのです。

配偶者のみの場合

被相続人に配偶者がいて、第1順位から第3順位に該当する人がいない場合には持分すべてが配偶者のものとなります

配偶者と第1順位の法定相続人の場合

被相続人に配偶者がいて、第1順位の法定相続人がいる場合には配偶者に持分の2分の1が相続され、第1順位の法定相続人に持分の2分の1が相続されます。

第1順位の法定相続人が複数いるのであれば、相続された2分の1の持分をさらに分け合うこととなります。

配偶者と第2順位の法定相続人の場合

被相続人に配偶者がいて、第2順位の法定相続人がいる場合には配偶者に持分の3分の2が相続され、第2順位の法定相続人に持分の3分の1が相続されます。

つまり、被相続人の両親が法定相続人になるのであれば、3分の1の持ち分をさらに分け合って6分の1ずつとなります。

配偶者と第3順位の法定相続人の場合

被相続人に配偶者がいて、第3順位の法定相続人がいる場合には配偶者に持分の4分の3が相続され、第3順位の法定相続人に持分の4分の1が相続されます。

第3順位の法定相続人が複数いるのであれば、相続された4分の1の持分をさらに分け合うこととなります。

遺産分割の協議によって決める

遺産分割協議とは、相続が発生した際に相続人同士で行う遺産の分割の仕方についての話し合いのことをいいます。

相続の場合は不動産を購入した場合と異なり、購入時の負担金額という指標がありません。

相続人全員の同意があれば、法定相続分に依存せず自由に相続の持分割合を決めることも可能です。

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持分割合を適当に決めてしまうと税金面で損をしてしまうことも

持分割合を決める際に決め方が分からなかったり、面倒だといった理由から適当に決めてしまっている人も多いようです。

しかし、持分割合を適当に決めてしまうと贈与税が発生してしまったり、住宅ローンの控除が減額されてしまったりして、税金面で損をしてしまうこともあります。

そこでここでは、贈与税が発生してしまうケースと住宅ローン控除が適用されない、または減額されてしまうケースについて解説します。

贈与税が発生してしまうケース

夫婦で共有名義にした場合に購入時の負担額を無視して持分割合を設定してしまうと贈与税が発生してしまうことがあります。

例えば、3,000万円の不動産を夫が2,000万円、妻が1,000万円支払って購入した場合の持分割合を1:1と設定したとします。

持分割合が1:1ということは、それぞれの持分の金額は1,500万円です。

そうなると、夫は2,000万円の支払いで1,500万円の不動産を取得し、妻は1,000万円の支払いで1,500万円の不動産を取得したこととなります。

この差額の500万円は、妻は夫から500万円分の財産を贈与されたとみなされてしまい、贈与税が発生してしまうことがあるのです。

参照:国税局HP

このように贈与税を課されないためにも、不動産購入時の負担金額をもとに持分割合を決めることをおすすめします。

条件が合えば配偶者控除を使って対策が可能

購入時の負担額に差があったとしても、どうしても持分割合を1:1にしたいということもあるでしょう。

そのようなときには、贈与税の配偶者控除の特例が利用できるかどうか検討してみましょう

内容としては、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。

参照:国税庁HP

この特例を受けるには、以下の条件に当てはまる必要があります

  • 婚姻期間が20年以上経過した後に行われた贈与である
  • 配偶者から贈与された財産は居住用不動産である(もしくは居住用不動産を取得するための金銭である)
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与によって(もしくは贈与された金銭によって)取得した居住用不動産に贈与を受けたものが住んでいること。またその後も引き続き住み続ける予定である

ちなみにこの特例は生涯で1度しか受けることができません。

この特例を受けたい場合には、戸籍謄本と登記事項証明書を取得し、税務署に贈与税の申告をする必要があります。

戸籍謄本は市町村役場の窓口、もしくは役所のホームページより請求書を印刷して郵送で取り寄せましょう。

また、コンビニ交付を導入している市区町村であれば、コンビニで発行をすることも可能です。

コンビニ交付を導入しているかどうかは以下のサイトで調べることができます

参照:コンビニ交付

コンビニで交付する際は、マイナンバーカードか住民基本台帳カードが必要です。

オンラインによる請求は法務局のホームページで行えます

参照:法務局のホームページ

住宅ローン控除が適用されないケース

住宅ローン控除とは、10年間の住宅ローンの年末残高の1%を控除してくれる制度です。

住宅ローン控除は建物の持分がないと適用されなくなってしまうので要注意です。

例えば、夫婦で連帯債務者となる住宅ローンを組み、夫が建物の名義を妻が土地の名義を所有する形で登記を行ったとします。

この場合、妻は住宅の名義を持っていないため、住宅ローンの控除の対象外となってしまうのです。

住宅ローン控除はあくまで住宅のローンを控除するものですので、土地のみのローンでは使えないのです。

建物の持分を夫婦の共有持分とすることで、双方が住宅ローン控除を利用することができるようになるため、共有名義で登記を行って住宅ローン控除を受けられるようにしましょう

住宅ローン控除が減額されてしまうケース

不動産購入時の負担金額を無視して持分割合を設定してしまうと住宅ローン控除が減額されてしまう可能性もあります。

例えば、3,000万円の不動産を夫が2,000万円、妻が1,000万円の住宅ローンを組んで購入した場合の持分割合を1:1と設定したとします。

住宅ローン控除は住宅ローンの年末残高を1%控除してくれるため、2,000万円の1%である20万円が控除されるはずです。

しかし、持分を1:1にしていると3,000万円の半分である1,500万円の1%である15万円までしか控除対象になりません。

そうなると、妻の控除が増えるのではないかと考える人もいるかもしれませんが、そうではありません。

妻の控除額は1,000万円の1%である10万円までしか控除対象にならないため、結果的に損をしてしまうのです。

このような事態を避けるためにも、不動産購入時の負担金額をもとに持分割合を決めることをおすすめします。

まとめ

不動産持分割合の決め方は購入か相続かによって異なり、購入の場合は購入時の負担金額によって持分割合を決めるのが一般的です

相続の場合は法定相続分や遺産分割協議の内容によって持分割合を決めます。

持分割合は自由に決めることができますが、適当に決めてしまうと贈与税が発生する可能性があります。

また住宅ローン控除が適用されない、もしくは減額されてしまうこともあるため注意が必要です。

税金関係で損をしないためにも、購入時の負担金額によって持分割合を設定するのが良いでしょう。

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共有持分のよくある質問

  • そもそも、共有持分とはどんなものですか?

    共有持分とは、共有不動産における「共有者ごとの所有権」を表したものです。相続時や、共同出資で不動産を購入したときなど、複数人で不動産を所有するときに発生します。

  • 持分割合とはなんですか?

    持分割合とは、各共有者がもっている共有持分が全体に対してどれくらいの割合なのかを表します。不動産全体の所有権を1として、2人の共有者が半分ずつ所有権をもっているなら「1/2ずつの持分割合で共有持分もっている」ことになります。

  • 持分割合はどのように決めますか?

    不動産を共同購入した場合は「負担金額の割合」で、相続で不動産を共有名義にした場合は「法定相続分」や「遺産分割の協議」によって持分割合を決めます。

  • 負担金額や法定相続分・遺産分割協議とは違う比率で持分割合を設定することはできますか?

    負担金額や法定相続分・遺産分割協議とは違う比率で持分割合を設定しても、罰則はありません。ただし、差額分は「贈与した」とみなされるため、贈与税が課税されます。

  • 共有不動産を巡って共有者とトラブルになったとき、どうすればよいですか?

    まずは不動産問題に詳しい弁護士へ相談し、適切な交渉や法手続きをおこないましょう。トラブルの解決が難しいようであれば、持分売却などで早めに共有名義を解消することをおすすめします。