他共有者から共有持分を買い取る方法がわからず、困っている人も多いでしょう。
共有不動産の利用・管理・処分には共有者同士の話し合いが必要であり、実質的な制限があるため、共有持分を買い取って単独名義にしたいという人は少なくありません。
他共有者に対して共有持分の買取請求をおこなう場合、話し合いで地道に交渉するか、共有物分割請求などの制度を使う方法があります。
この記事では、共有持分の買取請求方法を3つ紹介するので、他共有者からスムーズに共有持分を買い取るための参考にしてください。
また、買取の目的が「共有名義の解消」であれば、買い取るより自分の共有持分を売るほうが簡単です。専門買取業者なら最短2日での買取も可能なので、スピーディーな対応が必要な人は検討してみましょう。

- 他共有者から共有持分を買い取りたいときは地道な交渉が必要。
- 共有物分割請求をおこなえば、強制的な持分買取が可能な場合もある。
- 共有者が税金などの負担を拒否している場合、共有持分買取請求権で強制的な買取ができる。
共有持分を買い取りたい!買取請求をする3つの方法
他共有者から共有持分を買い取りたい場合、3つの請求方法があります。
- 任意の話し合いをおこなう
- 共有物分割請求をおこなう
- 共有持分買取請求権を行使する
「共有物分割請求」や「共有持分買取請求権」を利用すれば強制的な買取も可能ですが、各種条件や注意点もあるため、実行前に内容をしっかり検討することが大切です。
それぞれどんな方法か、詳しく解説していきます。
1.任意の話し合いをおこなう
まずは共有者と話し合いをおこない、共有持分を売ってもらえるよう交渉しましょう。
相手の承諾をもらうためには、地道に交渉する必要があります。いくらなら売ってもらえるか、その他になにか条件はないか聞いてみましょう。
話し合いをスムーズに進めるためには、事前準備も大切です。例えば、不動産全体の価格相場を調べておけば、買取価格を提案するときの参考になります。
共有者の求めていることや、不動産の状態をしっかりと把握し、相互に納得できる買取条件を話し合いましょう。
話し合いでトラブルになったら弁護士に相談するとよい
話し合いを重ねるうちに、条件が折り合わず相手との関係性が悪化するケースもあります。
そのようなときは、弁護士に相談して話し合いの手助けをしてもらうのも1つの方法です。法律家が第三者の立場からアドバイスすることで、スムーズに交渉を進められるでしょう。
不動産問題に詳しい弁護士であれば、個々の状況に応じてベストな解決策を提案してくれます。希望すれば、交渉そのものを弁護士に代行してもらうことも可能です。
2.共有物分割請求をおこなう
共有物分割請求とは、文字通り「共有不動産の分割」を求める手続きです。持分権者(共有持分をもつ人)であれば、だれでも請求可能です。
分割方法には、次の3つがあります。
現物分割 | 不動産そのものを物理的に分割する |
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代償分割 | 共有者の間で金銭と共有持分を交換する(共有者同士の持分売買) |
換価分割 | 不動産全体を売却して現金で分割する |
自分が共有持分を買い取りたい場合、代償分割になるよう交渉することになります。
共有物分割請求のポイントは、すべての共有者が必ず共有不動産の分割に向けて話し合わなければいけない点です。
つまり、共有者は共有物分割請求を拒否することができないため、最終的にはなんらかの形で共有不動産を分割することになります。
ただし、例外的に共有物分割請求ができないケースもあります。詳しくは下記の関連記事で解説しているので、ぜひ参考にしてください。

訴訟を起こせば強制的な持分買取ができる可能性がある
共有物分割請求は、次の3段階にわかれます。
- 共有物分割協議
- 共有物分割調停
- 共有物分割訴訟
協議はいわゆる話し合いで、当事者同士で分割方法を決定できます。調停は裁判所の調停委員を介しますが、協議と同じように当事者の合意が重要なので、強制的に分割方法を決められることはありません。
協議や調停で話がまとまらなれなければ、訴訟を起こすことになります。訴訟で和解することも可能ですが、最終的には裁判官の判断で強制的に分割方法が決定されます。
裁判官が「代償分割をおこなうのが適切」と判断すれば、強制的な持分買取が可能です。
ただし、裁判官が他の分割方法を選ぶこともあるため、自分の希望とは違う結果になるケースもあります。
共有物分割請求訴訟の流れについては、下記の関連記事も参考にしてください。

3.共有持分買取請求権を行使する
「共有持分買取請求権」とは、共有者が共有不動産に関する費用の負担を拒否するとき、共有持分を強制的に買い取ることができる制度です。
1 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
2 共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。
共有持分買取請求権が認められれば、相手方に買い取る旨を通知し、買取代金を支払うことで、相手の意思に関係なく共有持分を買い取れます。
買取に伴う持分移転登記には相手の協力も必要ですが、仮に相手が登記に協力しなくても、訴訟を起こして登記手続きをおこなうことが可能です。
「税金など不動産関係の費用」を1年以上立て替えていれば強制的な買取ができる
共有持分買取請求権を行使する条件を整理すると、次の2つになります。
- 税金や修繕費など、不動産関係の費用を他の共有者が立て替える
- 立て替えた費用を請求しても支払いを拒否し、その状態が1年以上続いている
費用負担を立て替えてから1年が経てば、相手方に「買い取る旨の通知」をおこなうことで強制的な買取をおこなえます。
なお、口頭で通知すると相手から「通知を受けていない」と反論され、トラブルになる恐れがあります。
そのため、通知には内容証明郵便を使い、後から証明できるようにしておくのが一般的です。
共有持分の買取請求をする人が知っておくべき基礎知識
共有持分の買取請求をおこなうにあたって、次の2点は覚えておきましょう。
- 共有持分の買取価格は「不動産全体の価値×持分割合」が基本
- 「共有名義の解消」が目的なら買取請求以外の方法も検討するとよい
あまりにも安く買い取ってしまうと後からトラブルになる恐れもあるため、共有持分の資産価値は正しく測る必要があります。
また、買取請求の目的が「共有名義の解消」であれば、相手との交渉が不要な「持分放棄」や「持分売却」も検討の余地があります。
共有持分の買取価格は「不動産全体の価値×持分割合」が基本
共有持分の資産価値は「不動産全体の価値×持分割合」で決まります。仮に不動産全体の価値が1,000万円であれば、共有持分1/2の価値は500万円です。
そのため、共有持分の買取価格を決めるときは、まず不動産全体の価格を算出する必要があります。
不動産全体の価格を算出するには、公的な評価基準と、売買市場の価格相場があります。公的な評価基準については、下記の関連記事を参考にしてください。

売買市場の価格相場を調べるには、不動産会社の査定を受ける方法が確実です。不動産の状態や最新の市場動向などから、相場価格を算出してもらえます。
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「共有名義の解消」が目的なら買取請求以外の方法も検討するとよい
他共有者から共有持分を買い取ろうとすると、どうしても交渉が必要です。相手が承諾しないと買取はできませんし、共有物分割請求をおこなう場合は手続きに時間がかかります。
そのため、買取請求の目的が「共有名義の解消」ならば、他の方法も選択肢にいれることをおすすめします。
次の2つは自分の意思のみで実行できる方法なので、共有名義を解消したいときは検討してみましょう。
- 自分の共有持分を放棄する文
- 専門の買取業者に自分の共有持分を売却する
方法1.自分の共有持分を放棄する
共有持分は、他共有者の同意なしに放棄することが可能です。放棄した共有持分は、他の共有者に分配されて帰属します。
無償で譲る「贈与」と似ていますが、相手側の意思に関係なく実行できる点と、各共有者の持分割合に応じて分配される点が違います。
ただし、税金に関しては「みなし贈与」とされるため、贈与したときと同じように相手方に贈与税が課されるので注意しましょう。
持分放棄については下記の関連記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

方法2.専門の買取業者に自分の共有持分を売却する
自分の共有持分だけであれば、自分の意思で好きなときに売却できます。買主が共有者以外であっても売却可能です。
ただし、共有持分を買っても不動産全体の利用・管理には実質的な制限があるため、一般的な不動産売却の方法では買主を見つけるのは困難です。
そこで、共有持分を売却するときは「共有持分専門の買取業者」に依頼することをおすすめします。
共有持分専門の業者であれば、共有持分を売買する知識を豊富にもっているため、高額での買取が期待できます。
また、買取業者は自社で直接買取をおこなうため、スピーディーな売買が可能です。早ければ2日で、共有持分を現金化できるでしょう。
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共有持分の買取請求をされる人が知っておくべき基礎知識
他の共有者から「共有持分を売って欲しい」と言われた立場であれば、相手と交渉する前に次の2点を押さえておきましょう。
- 不動産を手元に残したいなら相手の共有持分を買い取るのが確実
- 売却するなら「共有者と一緒に不動産全体を売却」するほうが高く売れる
自分が不動産を残したいのか、処分してもよいのかで取るべき対応が変わります。
不動産を手元に残したいなら相手の共有持分を買い取るのが確実
先に解説したとおり、他共有者から共有物分割請求を起こされた場合、最終的に共有不動産は分割されてしまいます。
そのため、不動産を手元に残したい場合は自分が相手の共有持分を買い取るとよいでしょう。不動産を単独名義にすれば、利用や管理も自由におこなえます。
自分も買取を希望する場合、お互いに買取を請求し合うことになります。自分の買取請求を通すためには、相手の買取目的を理解し、それに応じた交換条件を出すことが必要です。
お互いの目的をしっかりとすり合わせ、双方が納得できる条件を取り決めましょう。
売却するなら「共有者と一緒に不動産全体を売却」するほうが高く売れる
一般的に、持分売却より共有不動産全体を売却するほうが、売却価格は高くなります。
共有持分だけをもっていても不動産全体の利用・管理に制限があるため、不動産市場の評価は下がってしまうのです。
一般的にはおおむね3割程度、物件によっては半額近く値下がりするので、売却価格が750万円になってしまう場合もあります。
共有者同士の買取請求でも、このような不動産市場の事情を基準に、安い買取価格を提示されるケースがあります。
そのような買取請求をされた場合、そのまま共有持分を売るより、一緒に不動産全体を売却し、持分割合に応じた売却益の取り分をもらうほうがお得です。
共有者全員が売却に同意できるのであれば、協力して共有不動産をまるごと売却したほうがよいでしょう。
まとめ
他共有者から共有持分を買い取りたい場合、相手方との交渉は必須です。
まずは話し合いの場を設け、お互いの希望を細かく確認しましょう。トラブルになると共有名義の解消も遅れてしまうので、双方が納得いくまで話し合うことが大切です。
また、共有不動産の処分も選択肢に入るなら、他の共有者と協力して一括売却をおこなったり、自分の共有持分だけ売却するといった方法もあります。
共有持分を買い取ることにこだわりすぎると、かえって問題が長期化するケースもあります。共有者の意向や状況に合わせて、柔軟な対応をしていきましょう。
共有持分の買取請求についてよくある質問
はい、可能です。共有者同士であっても、共有持分を売買することができます。
まずは任意の話し合いをおこない、買取価格やその他条件をすり合わせましょう。相手が請求を拒否した場合は「共有物分割請求」で共有名義の解消を求めるとよいでしょう。
共有物分割請求とは、自分以外の共有者に対して、共有不動産の分割を求める手続きです。共有者の間で共有持分と金銭を交換する「代償分割」で分割すれば、実質的に共有持分の買取が可能です。
「現物分割」や「換価分割」など別の分割方法になってしまうと、共有持分の買取はできません。交渉や訴訟のなかで「自分が共有持分を買い取ることが適切である」と主張していく必要があります。
共有不動産に関する費用負担を拒否している共有者に対しては、「共有持分買取請求権」によって強制的な持分買取が可能です。共有持分買取請求権を行使するには、拒否された費用負担を立て替えてから1年以上経っていることが条件となります。
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