共有物分割請求訴訟を提起するには、裁判所へ提出する訴状を作成する必要があります。
訴状には記載するべき項目が定められているので、スムーズに手続きを進められるように、それらの項目を把握することが大切です。
この記事では、訴状作成前に確認すべきポイントと書式を説明しています。
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目次
共有物分割請求訴訟とは裁判所の判決によって共有状態の解消を図ること
一般的に、共有状態を解消する手段は当事者による話し合いです。
しかし、いくら話し合いをしても共有者全員が納得できる結論に至らない場合があります。
このような当事者間で問題が解決しない場合に、裁判所の判決によって共有状態の解消を図る方法が「共有物分割請求訴訟」です。
通常の裁判とは異なり、原告の主張を「認める」「認めない(共有状態を解消できない)」は判断しません。
原告の主張はあくまで「当事者からの提案」としか扱われないとされています。
したがって、原告が「共有不動産を売却することで、共有状態の解消を求める」と訴訟を提起しても、裁判所は「共有者1名が他の共有者の持分を買い取る」という判断を下せます。
訴訟の提起には「共有物分割協議をおこなっていること」が必須
「共有物分割請求訴訟」は、持分割合の大小は関係なく、共有者であれば誰でも提起できます。
ただし、共有者がどんなときでも事由に訴訟を提起できるわけではないので注意してください。
訴訟を提起するには、前提として「共有物分割協議をおこなっている」ことが必要です。
共有者間で話し合うことなく、判決に強制力がある共有物分割請求訴訟は起こせません。
なお、共有物分割協議は必ずしも共有者全員が集まる必要はありません。
「電話」「メール」「手紙」などによる協議も認められています。
訴訟の提起には協議したことを証明する必要があるので「手紙」を利用する際には「内容証明郵便」がおすすめです。
郵便局で「差出人」「日付」「内容」を保管・証明してもらえるので、協議した証明として利用できます。
万が一、他の共有者から「手紙を受け取っておらず協議していない」と虚偽の説明をされても対処でき、トラブルを避けられます。
共有物分割請求訴訟で下される判決は3種類
共有物分割請求訴訟では、下記3種類いずれかの分割方法が判決として下されます。
- 現物分割
- 代償分割
- 換価分割
原則的には「現物分割」が検討され、現物分割が難しい場合に「代償分割」「換価分割」が検討されます。
それぞれの分割方法について説明します。
現物分割
「現物分割」は共有物そのものを分割します。
例えば「土地」の共有状態を解消する場合には、持分割合に応じた土地の現物分割が検討されます。
土地であれば、評価額が同じになるよう境界を引き、分割することも不可能ではありません。
分筆後の土地それぞれを共有者の単独名義となるようにすれば、共有状態を解消できます。
一方で、共有物に「建物」が含まれる場合は物理的に分けることが難しいため「代償分割」や「換価分割」となるケースがほとんどです。
代償分割
「代償分割」は共有者の1人が、他の共有者から持分を買い取ることで共有状態を解消する方法です。
共有名義だった不動産は、持分を買い取った共有者の単独名義となります。
共有者の持分に相当する金額を渡すことから「代償」といわれます。
共有物分割請求訴訟によって「Aによる代償分割」となった場合、AはB・Cに200万円ずつ支払うことで共有状態を解消します。
なお、判決には共有者それぞれの資産状況も考慮されます。
したがって、支払い能力を超える人が代償分割で「持分を買い取る人」に決まることはありません。
換価分割
「換価分割」は、共有不動産を競売にかけて現金化することで、共有状態を解消する方法です。
現物分割が難しく、代償分割するにも共有者の支払い能力が不足する場合に選択されるケースが多いです。
落札価格を持分割合に応じて共有者へ分配します。
競売の落札価格相場は、市場価格相場の7割程度まで下がることが一般的です。
そのため、共有者それぞれが得られる現金は「競売」よりも「共有者全員同意のもと一般市場で売却」の方が多いです。
共有物分割請求には時間とお金がかかります。
各共有者の資産状況から「換価分割になる可能性が高い」と考えられる場合は、訴訟を提起するよりも、共有者同士で話し合って、売却手続きを進めることをおすすめします。
共有物分割請求の訴状を作成する前に確認すること
共有物分割請求訴訟を提起する際には、訴状を作成します。
この訴状を作成する前に、以下の内容を確認しておくとスムーズに作成できるでしょう。
- 訴訟を提起する「原告」を確定する
- 訴額を計算する
- 訴状貼付用印紙を計算する
- 「被告の住所地」または「不動産の所在地」を確認する
それぞれ説明します。
訴訟を提起する「原告」を確定する
「原告」とは、訴訟を提起する当事者です。
したがって、共有物分割請求訴訟では「裁判によって共有状態の解消を求める人たち」を指します。
原告が1人である必要はありません。
あなた以外にも共有状態の解消を求める人がいれば「原告」として訴訟を提起できます。
訴状には「原告」「被告」を分けて記載するので、まずは「誰が原告となるのか?」を確定させましょう。
訴額を計算する
「訴額」とは、一般的に「原告がその訴訟で勝訴した場合に得られる金銭的な利益」のことです。
共有物分割請求訴訟では原告の「持分」をもとに訴額を計算します。
共有不動産全体の評価額が基準とはなりません。
訴額は「土地」「建物」でそれぞれ分けて、以下のように計算します。
- 土地の訴額:固定資産税評価額×持分割合×1/6
- 建物の訴額:固定資産税評価額×持分割合×1/3
このケースにおける訴額は、
・土地の訴額=2,000万円×1/5×1/6=約66.7万円
・建物の訴額=500万円×1/5×1/3=約33.3万円
で、合計した「約100万円」が訴額です。
訴状貼付用印紙を計算する
訴訟を提起する際には、裁判所へ納付する手数料がかかります。
この手数料は原則、収入印紙で訴状に貼り付けて納付します。
納める手数料額は、訴額によって定められています。
一例として、訴額に対応する手数料を下記に示します。
訴額 | 手数料 |
---|---|
100万円 | 1万円 |
500万円 | 3万円 |
1,000万円 | 5万円 |
2,000万円 | 8万円 |
訴額が100万円の場合に納める印紙は1万円です。
参照:「手数料」(裁判所)
「被告の住所地」または「不動産の所在地」を確認する
最後に「被告の住所地」または「不動産の所在地」を確認しましょう。
訴状の提出先は、上記どちらか2つの場所を管轄する裁判所だからです。
「被告の住所地」は、被告のうち1人でもその場所にいれば問題ありません。
・原告の所在地は「東京」
・共有不動産の所在地は「京都」
・被告の所在地は「福岡」「大阪」「札幌」
とします。
この場合に、訴状を提出する先は「京都」「福岡」「大阪」「札幌」のいずれかです。
原告の所在地である「東京」の裁判所へは提訴できないので注意してください。
共有物分割請求訴訟を提起する訴状の書式と書き方
それでは、実際に共有物分割請求訴訟を提起する訴状の書式と書き方を説明します。
訴状は下図のような書式で作成します。

訴状

請求の趣旨

物件目録
訴状に必要な項目は以下のとおりです。
- 原告
- 被告
- 請求の趣旨
- 請求の原因
- 物件目録
「誰が」「誰に」「どのような理由で」「どのような結果を望むのか」を明確に記載することがポイントです。
それぞれの書き方を説明します。
「原告」には提起する共有者(自分含む)の氏名・住所を書く
「原告」として、訴訟を提起する共有者の氏名・住所を記載します。
基本的には「原告」と記載した横に「氏名」を書きます。
原告が複数人になる場合は、氏名・住所の欄を書き加えて作成します。
「被告」には原告を除く共有者全員の氏名・住所を書く
原告と同様に、被告の住所・氏名を記載します。
「被告」は「原告にならない共有者全員」です。
住所の記載も必要ですので、事前に共有不動産の登記事項証明書を取得して、調べておきましょう。
「請求の趣旨」には希望する分割方法を書く
「請求の趣旨」には、訴訟によって原告が望む判決を記載します。
共有物分割請求訴訟においては「共有不動産の分割方法」にあたります。
ただし「請求の趣旨」は「当事者としての提案の意義」にすぎません。
必ずしも希望する分割方法とはならないことは覚えていてください。
「請求の原因」には主に共有状態となった経緯を書く
「請求の原因」には、請求を特定するのに「必要な事実」や請求を「理由付ける事実」などの法律的な根拠や理由、主張を具体的に記載します。
共有物請求訴訟では主に「共有状態となった経緯」を記載してください。
判決の検討材料ですので「請求の趣旨」が妥当となるよう意識して作成することがポイントです。
「物件目録」には共有不動産の情報を記載する
「物件目録」に「共有不動産の情報」を記載します。
記載する項目は「対象不動産を特定して認識できる程度」とされています。
具体的には、以下のとおりです。
土地 | 「所在」「地番」「地目」「地積」 |
---|---|
建物(区分建物を除く) | 「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」 |
(a)一棟の建物の表示 | 「家屋番号」「建物の名称」「種類」「構造」「床面積」 |
(b)専有部分の建物の表示 | 「家屋番号」「建物の名称」「種類」「構造」「床面積」 |
(c)敷地権の目的たる土地の表示 | 「土地の符号」「所在及び地番」「地目」「地積」 |
(d)敷地権の表示 | 「土地の符号」「敷地権の種類」「敷地権の割合」 |
なお、記載内容は不動産登記事項証明書の表示どおりとなるように注意して記載します。
共有物分割請求訴訟の訴状を作成する際のポイント
続いて、共有物分割請求訴訟の訴状を作成する際のポイントについてです。
- 作成する訴状は「被告の数+1」通
- 持分の現金化を希望する場合は請求の趣旨は「競売」とする
- 訴状の作成には法律の専門知識が必要なので弁護士への依頼が確実
これら3点について、以下で説明します。
作成する訴状は「被告の数+1」通
裁判所へ提出する訴状の数は「被告の数+1」通です。
裁判所で保管する「正本」が1通と、被告へ送付する「副本」が被告の数です。
それぞれに押印、訂正印が必要です。
なお、印紙を貼り付けるのは裁判所へ提出する「正本」のみで問題ありません。
訴状は原告の控えとして1通を手元に残しておくとよいでしょう。
参照:「民事訴訟」(裁判所)
持分の現金化を希望する場合は請求の趣旨は「競売」とする
持分の現金化を実現する分割方法は「他の共有者による持分の買取」または「競売」です。
しかし、共有物分割請求訴訟では「他の共有者による持分の買取」を請求できないとされています。
したがって、持分の現金化を希望する場合、請求の趣旨には「競売」と記載する必要があります。
「競売」の判決が確定すると、自動で競売にかけられるわけではありません。
別途、地方裁判所へ競売の申立が必要なので、実際に現金化するには、さらに時間がかかります。
訴状の作成には法律の専門知識が必要なので弁護士への依頼が確実
「訴状を作成する」だけであれば、弁護士へ依頼せずとも本人で可能です。
ただし「希望する判決となるような訴状」を作成するには、弁護士への依頼が確実です。
法律的に認められる主張をするには正しい法律の専門知識が必要であり、証拠や資料の準備をしなければならないからです。
自分で作成するよりも、希望が通る確率は高いでしょう。
高額な財産である不動産の分割方法を決める裁判ですので、できる限り希望の結果となるよう訴状の作成から弁護士へ依頼することをおすすめします。
速やかに現金化したければ「持分売却」がおすすめ
共有物分割請求訴訟をすれば、共有状態を解消できますが、費用も時間もかかります。
弁護士に依頼すると、裁判費用だけでなく弁護士費用もかかるため、支出も大きいです。
速やかに現金化したければ「持分売却」をおすすめします。
「自分の持分」は他共有者の同意なしに売却できるので、共有物分割協議も不要です。
「持分のみ」取得しても使いみちが限られるため、ほとんどの場合で「買取業者」へ売却します。
一般的な買取業者は「持分のみ」の買取を取り扱っていなかったり、買取価格が非常に安いケースがあります。
持分売却する場合は、共有持分を専門的に取り扱っている買取業者へ売却しましょう。
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まとめ
共有物分割請求訴訟をする際には訴状の作成が必要です。
訴状は一般的な書式が定められていますので、自分で作成する際には、その書式にならうようにしましょう。
また、書類に不備があるとスムーズに手続きが進まず、共有状態の解消に時間がかかります。
希望する分割方法が判決として下される確率を上げるためにも、専門家の弁護士に依頼することをおすすめします。
共有物分割請求訴訟に関するよくある質問
裁判所の判決によって共有状態の解消を図ることです。
現物分割・代償分割・換価分割という3種類の判決が下されます。
訴訟を提起する「原告」を確定して、訴額と訴状貼付用印紙を計算しましょう。また「被告の住所地」または「不動産の所在地」を確認する必要もあります。
原告には提起する共有者(自分含む)の氏名・住所、被告には原告を除く共有者全員の氏名・住所、請求の趣旨には希望する分割方法、請求の原因には主に共有状態となった経緯、物件目録には共有不動産の情報を記載しましょう。
作成する訴状は「被告の数+1」通であること、持分の現金化を希望する場合は請求の趣旨は「競売」とすることに注意しましょう。
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