共有私道の土地を売却する方法とは?事前の確認事項とトラブル対策

共有私道とは、文字どおり複数人で共有している私道(国や自治体の所有ではない道路)のことです。
土地に接している道路が共有私道だと、通行やインフラ工事で制限がかかる場合もあります。
共有私道の種類や、確保しておくべき権利をしっかり把握しておきましょう。
土地を売却予定で、共有私道に関するトラブルがある場合、弁護士と連携した買取業者に相談するのもおすすめです。
弁護士と連携した買取業者なら、権利関係を自社で調整することが可能なので、共有私道に関するトラブルがある土地でもそのまま買い取ってもらえます。
この記事のポイント
- 共有私道は「共同所有型私道」と「相互持合型私道」の2種類。
- 共有私道に接する土地を売却するときは接道義務や掘削承諾について確認しておく。
- スムーズに売却するなら弁護士と連携した買取業者に相談するのが良い。
共有私道に接する土地を売るときに確認すること
共有私道は複雑な権利関係になっているため、まずは売却予定の土地がどのような状態なのか把握しましょう。
共有私道に接する土地の基礎知識として、下記の4つはとくに重要です。
- 共有私道の種類
- 接道義務を満たしているか
- 掘削承諾の有無
- 私道持分をもつことで発生する費用
それぞれ詳しく解説していきます。
共有私道の種類
共有私道には「共同所有型私道」と「相互持合型私道」の2種類があります。
この2つは同じ共有私道でも権利関係が大きく異なるため、それぞれの違いをしっかり把握しておきましょう。
共同所有型私道
共同所有型私道 とは、1つの私道を複数人で共有している状態の道路です。共有者全員が私道を使う権利をもっています。
通行など一般的な使用については共有者ならだれでも可能ですが、水道管などのインフラ工事で私道を掘り返す場合は、持分割合の過半数の同意が必要です。
また、私道全体を大規模に改装する場合には共有者全員の同意が必要など、私道に対する行為によって必要な持分割合が変わります。
共同所有型私道の持分割合を確認する方法
持分割合は、登記簿謄本(登記事項証明書)で確認できます。
登記簿謄本(登記事項証明書)にはどのような不動産なのか、所有者はだれなのか、そして共有であればだれがどれくらいの持分を所有しているのかが記載されています。
登記簿謄本(登記事項証明書)はだれでも閲覧・取得が可能で、法務局の窓口やオンライン申請があります。
窓口の業務取扱時間は平日8時30分~17時15分まで、オンラインでは平日8時30分~21時まで申請可能です。
登記簿謄本(登記事項証明書)の取得について、詳しくは以下のページを参考にしてください。
相互持合型私道
相互持合型私道とは私道全体を分筆し、分筆された部分的な私道を近隣住民がそれぞれ所有している状態の道路です。
小さな土地がパズルのように組み合わさって、1本の道を形成しているイメージです。
それぞれ別名義の土地なので、本来であれば使用・管理について各名義人でルールを話し合うべきですが、あいまいな取り決めで管理されているケースも多々あります。
接道義務を満たしているか
接道義務とは、建物のある敷地が道路にどれくらい接するべきか取り決めたものです。
原則、建物のある敷地は「幅員4m以上の道路に敷地が2m以上」接していなければいけません。
例えば、下記のイラストでは、AもBも幅員4mの道路に敷地が2m以上接しているので、接道義務を満たしています。
一方、下記のイラストでは土地が道路に2m以上接しているものの、道路の幅が4m未満のため接道義務を満たしていません。
また、次のイラストでは一見すると接道義務を満たしていますが、よく見ると土地の一部が細くなり、土地と道路を接続する通路部分に1.9mのところがあります。このようなケースも未接道です。
もし接道義務を満たしていなければ、その不動産は「再建築不可」となり、建て替え・解体・増改築ができなくなってしまいます。
再建築不可物件は資産価値が低下し、いつまでも売れずに残ってしまうか、相場よりも7~8割ほど安い売却価格になってしまいます。
また、未接道であることを買主に告知しなければ、告知義務違反として契約解除や損害賠償請求などがあるかもしれません。
未接道物件の売却については下記の関連記事で解説しているので、ぜひ参考にしてください。

掘削承諾の有無
掘削(くっさく)承諾とは、水道管やガス管を引き直すために私道を掘ったり削ったりしてもよいという承諾をもらうことです。
共有私道で掘削工事をおこなう場合、他の共有者から掘削承諾を得る必要があります。
そして、共有私道に接する土地を売却する場合、一般的には売主が事前に掘削承諾を得ておきます。なぜなら、掘削承諾がないと買主は家の新築や建て替えができなくなるからです。
買主が土地の購入後スムーズに利用できるよう、掘削承諾を得た状態で売り出す必要があるのです。
掘削承諾の取り方は、共有私道が「共同所有型私道」なのか「相互持合型私道」なのかで対応が異なってきます。
「共同所有型私道」であれば共有者全員から、「相互持合型私道」であれば掘削予定の部分の所有者から掘削承諾を得る必要があります。
私道持分をもつことで発生する費用
私道持分をもっていると、共有私道の補修工事や固定資産税などで出費が発生します。この出費がどれくらいかかるのか明確にしておき、買主に伝えなければいけません。
私道にかかる費用は以下のようなものが考えられます。
- 私道の補修工事費用
- 掘削工事の承諾料
- 私道の固定資産税・都市計画税
私道の補修工事費用は、前回いつ工事をし、そのときにどれくらいの費用を負担したのかが分かっていればそこから算出できます。
掘削工事の承諾料については、共有者間の契約書などがないか探してみましょう。
固定資産税と都市計画税については、周辺住民しか使わない私道の場合に発生します。毎年送られてくる納税通知書を見れば、正確な税額を把握可能です。
私道にかかる費用の分担方法
私道にかかる費用は、共有者全員で分担します。
共同所有型私道の場合は、持分割合に応じて負担します。例えば、補修工事の費用総額が30万円だった場合、持分割合1/3の人の負担額は10万円です。
相互持合型私道の場合、共有者同士の取り決めによります。ただし、税金は各名義人へ別々に課税されるため、他の名義人と話し合う必要は原則的にないでしょう。
共有私道に接する土地を売却する方法
共有私道に接している土地であっても、売却時は「不動産の仲介業者に依頼して買主を探してもらう」が基本です。
しかし、接道義務を満たしていない場合や、掘削承諾がない場合など、トラブルを抱えている土地は仲介だと売れにくくなります。
そのため、なんらかのトラブルを抱えている土地は、物件を直接買い取る「買取業者」に依頼するとよいでしょう。
それぞれの特徴について、詳しく解説していきます。
仲介業者は高く売れやすいが買主が見つからない場合もある
仲介業者は、売主と買主の間を取り持つことで仲介手数料を得る不動産会社です。一般的に不動産を売買するときは、仲介業者を利用します。
仲介業者に依頼すれば、土地の売却価格は市場相場とほぼ同じになるので、高値で売却しやすくなります。しかし、買主が見つからなければいつまでも売却できません。
共有私道に接している土地は権利関係でトラブルになりやすく、一般的な需要は低くなります。そのため、仲介では数年間売れ残ってしまうケースもありえるでしょう。
また、売却するためには掘削承諾を得ておくなど、売主側の負担も発生します。時間や手間をかけてもよい場合のみ、仲介業者で高く売る方法を検討してみましょう。
買取業者はトラブルを抱えた土地でもスピーディーに売却できる
買取業者は、物件を直接買い取る業者です。自社で買い取るため買主を探す手間がかからず、スピーディーな売却ができます。
仮に私道の共有者とトラブルになっていても、そのまま買い取ってもらえます。掘削承諾の取得なども不要なので、現状のまま早く売りたい人にはうってつけの売却方法です。
デメリットは仲介より価格が下がりやすい点で、およそ2~3割ほど、物件の状況によっては半額まで下がる場合もあります。買取業者は買い取った物件を運用・再販して利益を得るので、その分のコストを差し引かれるのが原因です。
ただし、買取業者のなかでも弁護士と連携している業者なら、権利関係の調整や法的手続きを効率的におこなえるため、自主のコストを抑えて高額買取ができます。
高額かつスピーディーな売却を実現するなら、ぜひ弁護士と連携した買取業者に相談してみましょう。
>>【共有名義の専門家】弁護士と連携した買取業者に相談はこちら!
共有私道に接する土地のトラブル事例と解決法
前項では、共有私道に接する土地を売却する際に気をつけたいポイントを解説してきました。
トラブルを避けるためにさまざまなことに気をつけていても、問題が起こることもあります。
ここからは共有私道に接する土地を売却する際の代表的なトラブルを4つ紹介し、解決方法も解説していきます。
代表的なトラブルとは以下の4つです。
- 私道が建築基準法を満たしていない
- 掘削承諾が得られない
- 売却前に私道の修繕をしたいが同意を得られない
- 私道の持分がない
これらのトラブルには解決法があります。
解決法を知っておけば、売却もスムーズに進められるでしょう。
接道義務を満たしていない
土地の売却を検討していると、接道義務を満たしていなかったということがあります。
前述したように、接道義務とは建築基準法第43条に定められている「幅員4m以上の道路に敷地が2m以上」接していなければ、建物を建て替えられないというものです。
このままでは買主が建て替えや増改築をしたくてもできず、資産価値が低下してしまいます。
なかなか買主が見つからないということもあるかもしれません。
そこで、この問題を解決するには、セットバックという方法があります。
接道義務を満たすためセットバックする
セットバックとは、道路の幅を4m確保するために土地を後退させるという方法です。
どれくらいの幅を後退させなければいけないのかは、主に2つのパターンがあります。
道路の向かい側も宅地であれば、道路の中心線からそれぞれが2mセットバックしなければいけません。
例えば幅が3mの道路を挟んでいるなら、道路の中心線から境界線まで現状では1.5mです。
2mセットバックするには、向かい合うお互いが0.5m後退することになります。
もうひとつのパターンは、道路の向かい側が川や線路などの場合です。
道路の向かい側にあるものが境界線を動かせない場合は、建物が建つ側だけでセットバックしなければいけません。
例えば道路の幅が3mで向こうが川となっている場合、境界線を1m後退させることになります。
「訳あり物件専門の買取業者」ならセットバック不要でそのまま売却できる
セットバックをする場合、工事に費用や手間がかかります。しかし、人によっては「現状のままですぐに売却したい」「セットバックの費用をだせない」というケースもあるでしょう。
そのようなひとは、訳あり物件専門の買取業者に、現状のまま買い取ってもらうことをおすすめします。
訳あり物件専門の買取業者なら、自社で買い取った後にセットバックを施工できるため、接道義務を満たしていない物件でも問題なく買い取れます。
業者が直接買い取るので売却後にトラブルとなる心配もなく、早ければ2日で現金化することも可能です。手間なくスピーディーに売却したいときは、ぜひ訳あり物件専門の買取業者を利用してみましょう。
掘削承諾が得られない
掘削承諾を得ようとしても、応じてくれないなどのトラブルがあります。
「断られる理由が分からない」「嫌がらせで断られている」「不当な金銭を要求される」など、その理由はさまざまです。
このままではライフラインに必要不可欠な水道やガスの工事ができず、買主が付かないかもしれません。
このようなトラブルが生じた場合は、土地の所有者が承諾しないのだから仕方ないと諦めるのではなく、交渉の専門家である弁護士に相談しましょう。
交渉を弁護士に依頼する
掘削承諾の取得は共有者との交渉となるため、法的な知識と、理路整然と相手と話し合える交渉力が重要です。
そこで、不動産に強い弁護士に依頼すれば、合理的な妥協点を探りつつ相手と交渉を進めることができます。
個人間での交渉ではスムーズに進まなかくても、弁護士に依頼することで解決への糸口を掴むことができるでしょう。
売却前に私道の修繕をしたいが同意を得られない
土地に接する私道の状態が悪いと、売却したい物件のイメージも下がる可能性があります。
そのため私道の修繕をしたいが、共有者の同意を得られないというトラブルがあります。
共有者が同意をしない理由として考えられるのが費用負担です。
「多少水はけが悪くても困るほどではない」「お金をかけるほどではない」と言われてしまうと解決策がないように感じますが、補助金や助成金が受けられることを知らない可能性もあります。
自治体の助成制度があることを説明する
共有私道の修繕をすると持分の割合に応じて費用を負担するのが一般的です。持分のみの負担だとしても、持分割合が多ければ負担額は大きくなります。
しかし、私道の整備には自治体から一定の条件のもと補助金や助成金が交付されます。
例えば東京都練馬区では、舗装の場合の助成額は通り抜け道路で「区算定工事費の90%」、行き止まり道路で「区算定工事費の80%」となっています。
持分にかかった費用を全額負担するのではないことを知れば、私道の修繕を前向きに検討してくれる可能性も高くなります。
参照:練馬区「私道整備の助成制度」
私道の持分がない
売却したい土地が私道に接しているが、私道の持分はもっていないというケースもあります。
その場合、慣習的に、あるいは暗黙の了解で私道を利用させてもらっていたということになりますが、土地の所有者が変わったことを機に私道を使わせてもらえなくなる可能性もあります。
暗黙の了解で私道を使わせてもらっているという状態は、買主にとっては不安材料となり購入をためらう要因です。
そのため、私道の持分を持っていないのであれば以下のような対策が有効です。
通行地役権を設定してもらう
私道の持分がないのであれば、通行地役権を設定してもらいましょう。
通行地役権とは、私道の所有者でない人が私道を通行できる権利のことです。
「利用料が発生するのか」「金額をどのように設定するのか」「車両の通行も可能か」などを、通りたい私道の所有者と相談して決めます。
話し合いがまとまれば司法書士に依頼し、契約書の作成や登記を行いましょう。登記は必須ではありませんが、権利関係を明確に残しておくことで将来的なトラブルを防げます。
このような場合も、通行地役権設定登記をしていると「この土地の通行地役権を所有している」と裁判所などに主張することが可能です。
私道持分を購入する
土地に面している私道に通行地役権を設定してもらうのではなく、私道の持分を買うという方法もあります。
持分があれば私道を自由に使うことができ、私道の利用料などを支払う必要もありません。
ただし、私道を買うには資金が必要です。利用料として支払い続ける金額と私道を買う金額、総合的にどちらが得なのかを検討して決めるようにしましょう。
まとめ
共有私道に接する土地を売却する際には、共有私道の種類や接道義務など、基礎知識をしっかり押さえて確認しておきましょう。そうすれば、共有私道に接する土地をスムーズに売却できます。
手間なくスムーズに売却したい場合は、弁護士と連携した買取業者に買い取ってもらうのもおすすめです。トラブルを抱えていたり、権利関係が曖昧になっている土地でも、現状のまますぐに買い取ってもらえます。
共有私道についてよくある質問
-
共有私道とはどんなもの?
私道(国や自治体が管理している公道以外の道路)のうち、所有者が複数いる私道を指します。「共同所有型私道」と「相互持合型私道」の2種類があり、それぞれで権利関係が異なります。
-
共同所有型私道とは?
共同所有型私道 とは、1つの私道全体を複数人で共有している状態の道路のことです。私道が実際に区分けされているのではなく、共有者はそれぞれ持分(権利の割合)をもっています。
-
相互持合型私道とは?
相互持合型私道とは、私道全体を分筆し、分筆された部分的な私道を近隣住民がそれぞれ所有している状態の道路です。「各自のもっている土地が、パズルのように組み合わさることで道路になっている」と考えると、イメージしやすいでしょう。
-
土地の売却あたって、接している私道の権利を有していないと、どんなリスクがある?
通行や掘削(インフラ工事などで道路を掘り返す作業)に私道共有者の許可が必要になるため、買主に避けられる恐れがあります。対策としては、売却前に私道の共有者全員と話し合い、通行権や掘削承諾を確保しておくことで売れやすくなります。
-
共有私道を巡ってトラブルになったときはどうすればいい?
不動産問題に詳しい弁護士へ相談し、適切な交渉や法手続きをおこないましょう。通行権や掘削承諾の確保といった、トラブル解決に向けた具体的な対策を進めてもらえます。