相続時精算課税制度で取得した土地を売却する際の注意点について

相続時精算課税制度を利用して生前贈与された土地を売却するには、さまざまな注意点があります。
例えば、売却前の税務手続きや名義変更登記などが必要ですし、土地の売却には多額の費用が掛かることも理解しておかなければなりません。
土地の売却をおこなう前に、相続時精算課税制度で土地を貰ってから売却までの手続き全般を把握しておきましょう。
この記事では、土地を生前贈与された場合の注意点や売却前に行うべきこと、実際に売却する方法や少しでも高く売るコツなどを解説します。
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目次
相続時精算課税制度で取得した土地を売却したい!注意したいことは何か?
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母から18歳以上の子や孫への生前贈与について、子や孫の選択により利用できます。通常贈与時には贈与税を支払いますが、この制度を使うと特別控除額の2500万円に達するまで何回でも控除ができます。
なお、2500万円を超えた部分については一律20%の贈与税が掛かりますが、相続時に相続税が発生した場合には精算若しくは還付を受けられます。
では、便利な相続時精算課税制度を利用して土地を売却するときに、注意しておきたい点とはどのようなことになるのでしょうか?以下に、代表的な3つを取り上げて解説します。
- ①売却に際し税務手続きが必要になる
- ②売却前に必要手続きを行なっていないと売れない
- ③土地の売却には費用がかかる
①売却に際し税務手続きが必要になる
まずは、売却に際し各種税務手続きが必要となります。以下に3つの項目について解説します。
- A.相続時精算課税制度の選択届の提出
- B.贈与税の申告
- C.譲渡所得の所得税申告(売却成立時)
A.相続時精算課税制度の選択届の提出
一つ目は、相続時精算課税制度の選択届の提出です。
相続時精算課税制度を使うには、その意思を示す必要があります。仮に、届け出を提出しないままだと贈与税の課税対象となります。
相続時精算課税制度の選択の届出書は、国税庁のHPからダウンロードができます。記載内容は、主に贈与を受けた人の名前や住所、また添付書類として贈与を受けた人の戸籍謄本など公的な証明書が必要です。
これらは、贈与を受けた年の翌年の3月15日までに所管の税務署に提出します。
B.贈与税の申告
二つ目は、贈与税の申告です。
相続時精算課税制度を選択しない場合などには、暦年課税制度により1年間(1月1日から12月31日)で貰った土地などの財産に対し、贈与税を課税します。
贈与税の申告も、貰った年の翌年3月15日までに申告となります。
C.譲渡所得の所得税・住民税申告(売却成立時)
三つ目は、譲渡所得の所得税・住民税の申告となります。譲渡所得から取得費・仲介手数料など必要経費を差し引いた金額がプラスであれば課税対象です。一方で、マイナスの場合には課税とはなりません。
なお、贈与で貰った土地の場合、所有期間※は移転登記完了後からとなります。5年以下の所有期間の場合、短期譲渡所得として39.63%(所得税30.63%、住民税9%)の税率となります。また、5年超の所有期間の場合、長期譲渡所得として20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の課税となります。
※所有期間は、その年の1月1日時点での期間となります。よって、その年の9月に所有期間が5年を超えたとしても、1月1日時点では5年以下であるので、短期譲渡所得の税率が採用されます。
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②売却前に必要な手続きを行なっていないと売れない
次に、売却前には下記2つの手続きを行う必要があります。元の所有者から贈与を受けたという証明と、名義の変更の手続きを行います。
- A.贈与契約書の作成
- B.名義変更登記
A.贈与契約書の作成
まずは、贈与契約書の作成です。
贈与契約書は、名義変更登記を行うときに、「所有者が確かに不動産の贈与を希望している」という証拠となります。贈与は口約束による諾成契約でも成立します。一方で、書面を作成することにより贈与したという証拠になることや、元の所有者の気心が変わり「やっぱり贈与するのを辞めた」というのを防ぐことができます。
なお、贈与契約書のひな型に特別な決まりはありませんが、最低でも下記については記載した方が良いでしょう。
- 贈与者と受贈者の氏名と住所
- 贈与契約の締結日と実際に贈与する日
- 贈与する財産の種類(不動産・お金・金融資産など)、そのほか財産に関する情報など
- 贈与の方法(どうやってあげるのか)
B.名義変更登記
次に、名義変更登記を行います。
名義変更登記をする理由は、不動産は所有者でなければ売却ができないからです。名義変更登記は、司法書士に依頼し行います。その際に、登録免許税(不動産価格×0.4%)と司法書士の報酬(5万円~10万円)などが掛かります。
③土地の売却には費用がかかる
最後は、土地の売却には費用が掛かります。以下に、代表的な3つの費用について解説します。
- A.測量費
- B.仲介手数料
A.測量費
測量は、土地の正確な広さを知るための作業です。最近の分譲地であれば境界確定がされており、測量を行う必要はありません。一方で、その土地の購入時期が昭和の時代であるなど年代が古い場合に、隣地所有者との境界が曖昧なケースが良くあります。また、東京都心部など地価が高いエリアでは、土地の広さが少しずれるだけで価格が大きく違ってしまうため、測量をするケースがあります。
なお、土地の測量は、登記ができる土地家屋調査士が行います。
測量費は、測量自体に掛かる手間や境界確定の話し合いなどに掛かる手間など、掛かった日数などにより異なります。例えば、土地が整形地であれば測量自体に手間はかかりませんが、土地自体が広いことや変形地などであれば測量に要する作業が多くなり、費用が高くなることがあります。
測量費は、土地の広さや土地家屋調査士の報酬額の設定により異なりますが、おおよそ50万円~100万円位が一般的です。
B.仲介手数料
仲介手数料は、不動産売買が成立したときに、仲介した不動産会社に支払う費用です。400万円超の成約価格での速算式となりますが、以下の通りとなります。
〇仲介手数料=成約価格×3%+6万円+消費税
例えば、成約価格3,000万円の場合の仲介手数料は下記のように算出します。
30,000,000円×3%+6万円+(30,000,000万円×10%)=1,056,000円
この場合の仲介手数料は、1,056,000円です。なお、上記仲介手数料は宅建業法で定められた最大値であるため、不動産会社により異なる場合があります。
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土地を売る前に行うべきこと
土地を売るときには、不動産会社に出向き依頼するのが一般的な流れになります。しかし、売却前には下記に挙げた3つのことを行っておいた方がよいでしょう。
- ①土地の調査
- ②周辺の相場観の把握
- ③名義人が複数いる場合は売却意思の確認
①土地の調査
土地の調査とは、土地の状況や状態、また土地の履歴などを調べることです。
土地の調査を行う理由は、契約不適合責任を回避するためと、土地の状態を改めて把握する目的があります。土地の状況や状態とは、土壌汚染の有無や地盤の強さの確認、土中にガラやゴミなどが埋まっていないかなどの地中埋設物の確認となります。
また、土地の履歴とは市役所等で以前の住宅地図などを入手し、以前の当該の土地がどのように使われていたかを調査することです。例えば、以前田んぼや畑であった場合に軟弱地盤である可能性があることや、古くより住宅地であれば土壌汚染等の心配はないでしょう。
②周辺の相場観の把握
周辺の相場観の把握とは、不動産会社に査定などを依頼する前に周辺の相場観を予め確認しておくことになります。調査方法は、レインズマーケットインフォメーションや土地総合情報システムで、該当地域の取引事例を調べる方法がおすすめです。
これらを行うことで、不動産会社から査定を受けた時に、査定額の良し悪しなどが分かります。仮に、相場より高い査定額を提示する不動産会社には、査定の根拠を尋ねるなど少々突っ込んだ話ができます。
③名義人が複数いる場合は売却意思の確認
名義人が複数いる場合には、全員の売却する意思が必要です。仮に、誰か一人でも反対する意思を示した場合には、売却することはできません。よって、売却前に意思確認する必要があります。
少しでも高く売るなら「不動産仲介」がおすすめ
土地の売却で少しでも高く売るなら、「不動産仲介」がおすすめです。
不動産仲介は査定額を参考に自由に価格設定が可能となります。さらに、不動産自体に希少性が高く内見者を多く集めることができれば、内見者同士で競争が生まれ、結果として高値売却の可能性が高まります。
また、不動産仲介の査定額は周辺の相場に合わせて算出しているため、相場並みで売れることが多くなります。よって、高値売却はできなくとも相場並みで売却できる可能性が高いため、不動産仲介がおすすめです。
媒介契約の形態は「専属専任媒介契約」が良い
不動産仲介で売却を依頼するときには、媒介契約を結びます。その契約の形態は、「専属専任媒介契約」がおすすめです。
専属専任媒介契約を結ぶと、他の不動産会社へ同時期に売却依頼はできなくなりますが、その代わりに不動産会社から手厚いサービスを受けることができます。チラシやインターネットなどへの積極的な宣伝活動、レインズへの登録、1週間に一度以上の報告義務などです。
宣伝やレインズに登録することで内見者を多く募ることができることや、不動産会社より報告義務があることで反響の数や内見希望者の数など売却に関する状況を把握できます。
また、反響の数や内見者の数が少ない場合には、不動産会社の担当者と相談しながら価格を下げるなどの対処ができます。総じて、双方のやり取りがしやすく柔軟な対応ができることで、一番高い金額での売却に成功する確率が高まります。
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仲介を依頼する不動産会社選びのコツ5つ
土地の売却を不動産仲介で依頼する場合、不動産会社選びにはコツがあります。ここでは、代表的な5つのコツを紹介します。
- ①査定は複数社に依頼する
- ②査定の根拠をしっかりと聞く
- ③高値査定を出した会社に安易に飛びつかない
- ④周辺の市場や地域性を把握している不動産会社か確認する
- ⑤信頼できる担当者であるかを確認する
①査定は複数社に依頼する
まず、査定は複数社に依頼することです。
仮に査定が1社のみとなると、その査定額の善し悪しを判断することができません。よって、査定額の正当性を確認するには3社程度に査定を依頼し、おおよその今の相場観を掴んでおくのが良いでしょう。
②査定の根拠をしっかりと聞く
次に、査定額の根拠をしっかりと聞いておくことです。
不動産の査定は、概ね取引事例比較法を用いて査定額を算出します。取引事例比較法とは、過去の周辺の成約事例をピックアップし、査定物件と比較しながら点数化することで査定額を算出する方法です。
査定時に比較で用いた物件や実際点数化した査定書などを確認し、根拠をしっかりと聞いておきます。査定は過去の取引事例をもとに算出するので、適正な査定額であれば売却自体は問題ありません。
③高値査定を出した会社に安易に飛びつかない
続いて、高値査定を出した会社に安易に飛びつかないことです。
不動産仲介会社の中には、売却案件を取りたいがために、わざと売却が難しい高値査定額を提示するケースがあります。他の不動産会社の査定と比べて著しく高い金額であれば、その査定額には疑いを持ったほうが良いでしょう。
④周辺の市場や地域性を把握している不動産会社か確認する
続いて、周辺の市場や地域性を把握している不動産会社かを確認します。
不動産の売買が成功するかは、その不動産会社の経験値が影響することがあります。周辺で仲介に携わった物件数や地域性などを把握していることで、物件の成約スピードや売却が進まないときに適正な対処ができます。
⑤信頼できる担当者であるかを確認する
最後は、信頼できる担当者であるかを確認することです。
不動産に関する知識はもちろんのこと、親身に相談できる間柄であるか、要望に合わせて柔軟に対応できるかなどになります。また、査定時も査定の根拠や売却完了までのストーリーを構築できるかなど、総じて信頼できる担当者であることが重要となります。
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早めに買い手を見つけるためのコツ4つ
不動産仲介で売却活動をするのであれば、早めに買い手を見つけたいところです。ここでは、買い手を早めにみつけ早期契約を目指すには、どのような対策が必要であるのかについて解説します。
- ①高値での売却を求めず、相場並みで売れることを目指す
- ②事前に担当者と最低売却価格や値引き時の対応を決めておく
- ③売り出しの金額で進捗がない場合にどうするのかを事前に考えておく
- ④担当者とのやり取りは緻密に行う、また連絡をいつでも取れるような体制にしておく
①高値での売却を求めず、相場並みで売れることを目指す
まずは、高値売却を求めず、あくまで相場並みで売れることを目指すことです。立地により高値で売れるケースもありますが、殆どの不動産は相場並みの金額でしか売れません。
売却価格を欲張ることで、せっかくの取引機会を失うこともあります。よって、原則は相場並みの金額で買ってくれる人を探すスタンスが良いでしょう。
②事前に担当者と最低売却価格や値引き時の対応を決めておく
次に、事前に担当者と最低売却価格や値引き時の対応を決めておくことです。
不動産仲介での売却では、顧客から値引き要求があることは珍しいことではありません。商談を成立させるには、スピーディーな対応が勝負となります。よって、予め売値に対しての値引き幅を決めておくことや、最低売却価格を決めておくことで商談はスムーズに進みます。
③売り出しの金額で進捗がない場合にどうするのかを事前に考えておく
続いて、売り出しの金額にて進捗がない場合に、どのような対策をするのかを事前に考えておくことです。
不動産仲介は買い手を探す作業となりますが、買い手がなかなか見つからないケースも容易に想像ができます。つまり、売れることとばかりを考えるのではなく、売却がうまくいかないことも想定しておきます。
具体的には、金額を下げることや不動産会社を変えることが主な対策です。事前に心構えをしておくことで、冷静な対処ができるでしょう。
④担当者とのやり取りは緻密に行う、また連絡をいつでも取れるような体制にしておく
最後に、担当者とのやり取りは緻密に行い、いつでも連絡が取れる体制を整えておくことです。
例えば、担当者が買い手と商談している最中に、予め決めておいた最低売却額を超える値引き要求をしてきた場合です。その場で連絡が取れれば、商談の状況と値引きをどこまで受けるかなどの打ち合わせができます。一方で、連絡が取れなければ、商談そのものが進むことはありません。
つまり、自分の代わりに動いてくれている担当者に常に支持を出せることで、担当者は柔軟な対応が取りやすくなります。結果、両者の間を取るような形で商談が纏まる可能性も高くなります。よって、担当者とのやり取りは緻密に行い、連絡はいつでも取れるような体制にしておくことが良いでしょう。
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買い手が見つからなかった場合の選択肢3つ
不動産仲介で売却活動するも、買い手が見つからないケースも考えられます。先述で多少触れていますが、買い手が見つからなかったときの代表的な選択肢について3つ紹介します。
- ①不動産会社を変える
- ②買取りに出す
- ③土地活用も検討してみる
①不動産会社を変える
まずは、不動産会社を変えてみることです。
売却が成功するかは、不動産会社の力量次第であることもあります。よって、物件が立地する地元の不動産会社に変更することで、状況が変わることがあります。
②買取りに出す
次に、買取りに出すことです
買取りとは、不動産会社が買主となり売買を進める方法となります。買取りは、買取りをする不動産会社さえ決まれば、即契約と引き渡し、現金化ができるのが最大の特徴です。
よって、売却ができないときの最終手段と考えておきましょう。ただし、買値は相場の60%~70%程度になるのが注意点となります。
③土地活用も検討してみる
また、売却ではなく土地活用を検討してみるのもありです。住宅街であれば駐車場、周辺にお店や公共施設などがあればコインパーキング、マンションなどが多ければトランクルームなどになります。
土地活用で毎月の固定費を賄え、さらに収益を上げられる見込みがあれば土地活用するものおすすめです。なお、土地活用する際は、はじめに専門家などへ相談するのが良いでしょう。
まとめ
相続時精算課税制度を利用して生前贈与された土地を売却するには、贈与契約書の作成や名義変更登記を行い、自らの所有にする必要があります。一方で、土地を貰うときや売却するときには、多額の費用が掛かってしまうことは要注意です。
また、土地の売却は不動産仲介がおすすめとなります。もらった土地であれば原則売り急ぐことはないことと、相場並みで売れる可能性が高いからです。なお、売却がなかなか進まない場合には、不動産会社を変更や買取りに移行するなど、柔軟な対応が必要となります。
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「相続時精算課税制度で取得した土地を売却」に関してよくある質問
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相続時精算課税制度で取得した土地を売却するときに行う、税務手続きとは何か?
土地の売却時に行う税務手続きは、下記になります。
・相続時精算課税制度の選択届の提出
・贈与税の申告
・譲渡所得の所得税申告(売却成立時)相続時精算課税制度の選択の届出と贈与税の申告は、利用した翌年の3月15日までに所管の税務署に届け出ます。また、売却成立時に譲渡所得が発生した場合には、所得税と住民税の申告を先述と同時期に行います。
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土地の売却を行う前に行うべき手続きとは何か?
贈与契約書の作成と名義変更登記になります。生前贈与で貰った不動産は、名義変更登記を行い所有権を移す必要があります。なお、贈与契約書は、名義変更登記する際の贈与者の意思を証明するものになります。
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土地の売却時に掛かる費用とは何か?
土地の売却には、主に下記のものが掛かります。
・測量費
・仲介手数料測量費は、正確な土地の広さを知るために必要な作業です。仲介手数料は売買成立時に仲介した不動産会社に支払う費用となります。
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土地売却前に行うべきこととは何か?
土地売却前に行うべきことは下記になります。
・土地の調査
・周辺の相場観の把握
・名義人が複数いる場合は売却意思の確認土地の調査とは、土地の履歴や地盤調査、埋設物の確認となります。また、周辺の相場観の把握とはレインズマーケットインフォメーションなどを利用して周辺の取引事例を調べることです。最後に、名義人が複数いる場合には売却意思を確認する必要があります。
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仲介を依頼する不動産会社選びのコツとは何か?
以下に、不動産会社選びのコツを挙げていきます。
①査定は複数社に依頼する
②査定の根拠をしっかりと聞く
③高値査定を出した会社に安易に飛びつかない
④周辺の市場や地域性を把握している不動産会社か確認する
⑤信頼できる担当者であるかを確認する