賃貸物件の収益改善などを狙って、賃料の値上げを検討する不動産オーナーも多いでしょう。
通知時期について具体的な決まりはありませんが、トラブルを避けるためにもできるだけ早く通知するのがおすすめです。
ただし、どれだけ通知時期を早くしても、入居者の同意が得られない場合は値上げできません。退去もせず値上げにも同意しない入居者に対しては、調停や訴訟が必要になります。
調停や訴訟になると解決まで数ヶ月以上かかるため、値上げしないと賃貸経営が立ち行かないような低収益物件だと、売却したほうがトータルでプラスになる場合もあります。
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- 賃料の値上げ通知は可能な限り早めが良い。
- 確実に賃料を値上げするには入居者への思いやりも必要。
- 「賃料値上げが困難」「入居者とトラブルになってしまった」という場合は売却も検討しよう。
賃料の値上げ通知は可能な限り早めが良い
結論からいうと、賃料の値上げを通知する時期は「可能な限り早く」です。
法律による通知時期の決まりはありませんが、入居者も新賃料で住み続けるか考えなければいけません。値上げ直前に通知すると、入居者にクレームを入れられる恐れもあります。
退去される可能性も考えると、引っ越しシーズンの1~2ヶ月前がよいでしょう。退去されても次の入居者を見つけやすいので、空き室リスクを下げられます。
法律上の決まりはないが直前の通知はトラブルの元
賃料を値上げするときの通知について、法律上の定めはありません。極端にいえば、値上げの1日前に通知することもできます。
しかし、直前の通知は入居者にとって迷惑でしかありません。入居者も新賃料で住み続けるか考える必要があるため、急に賃料を上げるといっても素直に受け入れてもらえない可能性があります。
また、入居者が値上げを不服として調停・訴訟を起こしたり、賃料の不払いを起こす恐れがあります。このようなトラブルが起こると、解決するまで数ヶ月~1年以上かかるでしょう。
法律上の決まりがないからこそ入居者を思いやり、できるだけ早めに通知しましょう。十分な期間を空けることで、スムーズに新賃料へ移行できます。
契約更新と合わせた値上げ通知は「更新時期の1ヶ月以上前」が一般的
賃貸借契約の更新と合わせて賃料の値上げをおこなう場合、最低でも更新時期の1ヶ月前に通知するのが一般的です。
これは、入居者の解約予告期間を1ヶ月間に設定している賃貸借契約が多いためです。解約予告期間の前に値上げを通知すれば、入居者は更新するか退去するか検討することができます。
実際に通知するときは入居者に考える時間を与えるためにも、賃貸借契約で決めた解約予告期間よりさらに余裕をもったタイミングで通知するとよいでしょう。
「解約予告期間が1ヶ月なら通知は更新時期の2ヶ月前」というようにすれば、入居者も賃料値上げを受け入れやすくなります。
自動更新の場合は通知時期によって更新料が安くなる場合もある
賃貸借契約の更新を自動更新にしている場合、通知時期による更新料への影響も把握しておきましょう。
例えば、契約書に「期間満了日の1ヶ月前までに貸主・借主双方から申し出がない場合は同一条件で更新されたものとし、新賃料の1ヶ月分の更新料を支払う」という記載があるとします。
この場合、新賃料の通知が期間満了日の1ヶ月前を割ってしまうと、更新は旧賃料でおこなわれたとみなされる恐れがあります。
つまり、値上げした金額で更新料をもらえるはずだったのに、通知が遅れたことで旧賃料での計算になるかもしれないのです。
実際の判断は細かい事情によりますが、確実に新賃料で更新料をもらうためには、更新条件が確定するタイミングを踏まえて値上げを通知しましょう。
退去される可能性を考えると「引っ越しシーズンの1~2ヶ月前」がおすすめ
賃料の値上げをきっかけに、現在の入居者が退去するケースは少なくありません。賃貸経営において、空き室状態はなるべく避けたいリスクです。
そうしたリスクに備えるなら、新賃料の値上げは引っ越しシーズン(1月~3月)の1~2ヶ月前に通知するのがおすすめです。
現在の入居者が退去することになっても、引っ越しシーズンであれば次の入居者を見つけやすいでしょう。空き室になる期間を減らし、安定した賃料収入を確保できます。
賃料を確実に値上げする6つのコツ
賃料の値上げをおこなうには、入居者の同意がなければいけません。入居者が同意しない場合は交渉が必要となります。
交渉が長引けば調停や訴訟に発展して、さらに手間がかかってしまうかもしれません。確実に同意を得るには、下記のコツを押さえておきましょう。
- 正当な理由であることを通知する
- 値上げの根拠となるデータを通知する
- 入居者にも何かしらのメリットを付ける
- 大幅な値上げはしない
- 普段から入居者の満足度を高める配慮をする
- リノベーションや設備改善などをおこなう
これらのコツを押さえておけば、スムーズに賃料の値上げを進められるでしょう。
1.正当な理由であることを通知する
入居者視点だと「なぜ値上げをするのか」「この値上げは正当な行為なのか」といった点は気になるところです。あくまで正当な理由で値上げを請求していると、貸主のほうから説明しましょう。
なお、借地借家法では、賃料値上げの正当な理由として下記の3点が定められています。
- 物件の固定資産税が増えた
- 経済事情の変動で物件価値が上がった
- 近隣の家賃相場と比べて安すぎる
以上の3点が、法律上の正当理由です。単純に「儲けを大きくしたい」という理由だけでは、値上げできないと考えましょう。
賃料値上げの正当な理由については、下記の関連記事でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

なお、正当な理由はないものの現在の賃料では赤字にしかならないという場合は、物件を売却して損切りするという判断も必要です。
弁護士と連携した不動産業者なら、物件の売却だけでなく賃料の値上げが可能かどうかもアドバイスしてもらえるので、判断がむずかしいときは無料相談を利用してみましょう。
2.値上げの根拠となるデータを通知する
値上げする理由と合わせて、その根拠となるデータも一緒に通知しましょう。客観的なデータが揃っていれば、入居者も納得しやすくなります。
具体的なデータとしては、下記のような資料が考えられます。
賃料を値上げする理由 | 根拠となる資料の例 |
---|---|
物件の固定資産税が増えた | 数年分の固定資産税証明書 |
経済事情の変動で物件価値が上がった | 不動産鑑定士の鑑定書 |
近隣の家賃相場と比べて安すぎる | 近隣で条件が近い物件の賃料一覧 |
これらのデータがしっかりと揃っていれば、調停や訴訟になってしまったときも有利に話を進められるでしょう。
3.入居者にも何かしらのメリットを付ける
入居者のメリットとなる条件を提示することで、賃料値上げの同意を得やすくなる場合もあります。
例えば、
- 次回の更新料を無料にする
- 宅配ロッカーを設置する
- 無料のインターネットを導入する
といった条件を提示すれば、賃料値上げの理解も得やすいでしょう。
貸主側からも歩み寄りを見せて、双方にメリットのある状況を作ることがポイントです。
4.大幅な値上げはしない
値上げをするにしても、いきなり何万円も上げようとすると入居者の反感を買いやすくなります。
値上げ幅はなるべく抑えて、入居者が「これぐらいなら許容範囲」と思える金額設定にすることが大切です。
また、近隣の家賃相場と比べてあまりにも高い賃料だと、裁判で認められなくなってしまいます。
住民感情と家賃相場の両方を考慮して、値上げ幅を決めましょう。
5.普段から入居者の満足度を高める配慮をする
普段から入居者の印象を良くしておくと、賃料を値上げするときも受け入れてもらいやすくなります。
共用部分の清掃や植栽の管理をこまめにおこない、修繕の相談などがあればすぐに対応するなど、貸主として誠意をもって管理にあたりましょう。
快適な住環境を整えておけば、自然と長く住み続けてもらえます。空き室リスクを下げるためにも、普段から入居者の満足度を高めておきましょう。
6.リノベーションや設備改善などをおこなう
リノベーションや設備改善など、賃貸物件としての価値を高めることで値上げ交渉がしやすくなる可能性があります。
先にも紹介した宅配ロッカーや無料インターネットのほか、屋根付きの駐輪場やボックス型のゴミステーションの設置、外壁のリニューアルなど、工夫次第でさまざまな方法があります。
資産価値を上げておけば将来の出口戦略も取りやすくなるので、資金があれば積極的に取り組んでいきましょう。
賃料の値上げを拒否されたら売却したほうが良い場合もある
賃料の値上げは入居者にとって大きなデメリットなので、拒否されるケースも多くなります。
交渉で話がまとまれば良いのですが、意見が平行線のまま調停や訴訟といった裁判所での手続きが必要になるかもしません。
また、値上げを理由に退去されてしまい、その後も空き室状態が長く続くといったリスクもあります。
賃料値上げを拒否されたときの対処法については、下記の関連記事でも解説しているので参考にしてください。

基本的に賃料の値上げはむずかしく、現状より賃貸経営が悪化するケースが珍しくないため、コストパフォーマンス次第では売却も視野に入れておきましょう。
調停や訴訟になると解決まで数ヶ月以上かかる
賃料の値上げについて入居者の同意が取れない場合、裁判所へ申し立てて調停や訴訟(裁判)をおこなうことになります。
調停とは、裁判官や調停委員を交えた話し合いで、法律に詳しい第三者を介しながら公平な和解をするための手続きです。
訴訟は、調停で和解できなかった場合におこないます。裁判官が双方の主張を聞いたうえで判決を下し、強制的にトラブルを解決します。
個別の事情によりますが、調停の場合は3ヶ月程度、訴訟になった場合は1年以上かかるのが一般的です。費用については50万円~100万円を超えるケースも少なくありません。
それだけのコストをかけても確実に値上げできるとは限らないため、調停・訴訟になりそうな場合は弁護士と相談し、慎重に検討するようにしましょう。
退去され空き室状態が続くとキャッシュフローが悪化する
値上げを通知したことで入居者が退去した場合、次の入居者が決まるまで収入がゼロになってしまいます。仮に家賃が10万円なら、空き室状態が1年続けば120万円の損失です。
その間の税金や各種維持費を考えると、収支はさらにマイナスとなってしまいます。キャッシュフローが悪化し、賃貸経営の継続ができなくなる場合もあるでしょう。
すぐに入居者が見つかりそうなエリアなら別ですが、賃貸需要の低い地域であれば、家賃を上げて退去されるより現状維持で住み続けてもらうことも考えましょう。
弁護士と連携した不動産買取業者なら値上げトラブルを抱えていても売却可能
「賃料の値上げがむずかしい」「入居者に拒否されてトラブルになっている」というケースでは、下手に値上げにこだわるより、物件を売却したほうが良い場合もあります。
調停・裁判にかかるコストをカットできますし、売却益を元手にしてもっと賃料の高い物件を買うことも可能です。
しかし、賃料の値上げが必要な物件は利回りが低いケースも多く、売却価格が安くなってしまう恐れがあります。入居者とすでにトラブルを起こしている場合、買い手が付きにくいという問題もあるでしょう。
そこでおすすめなのが「弁護士と連携した不動産買取業者」で、例えば次のようなメリットがあります。
- 物件を自社で買い取るので数日で現金化できる
- 不動産会社として物件活用の知識があるので低収益物件でも高く買い取れる
- 弁護士と連携することで入居者とのトラブルがあっても買取可能
弁護士と連携した不動産買取業者に相談することで、物件をスピーディーかつ高値で売却できます。
賃貸経営がうまくいっていない、あるいは賃料を上げようとして逆に赤字化してしまったというオーナーは、無料査定を受けて売却も検討してみるとよいでしょう。
まとめ
賃料値上げの通知時期に法律の決まりはありませんが、できるだけ早く通知することが大切です。
最低でも1ヶ月以上前、可能であればさらに余裕をもって通知しましょう。貸主側の都合だけでなく、入居者に対して思いやりをもった対応が必要です。
また、賃料値上げはあくまで交渉なので、入居者から拒否された場合は調停や訴訟になるリスクもあります。
「賃料を値上げしないと賃貸経営が立ち行かないけど、実際に上げるのはむずかしそう」という場合は、売却なども検討してみましょう。
賃料の値上げにこだわってトラブルを起こすより、売却して別の投資先を見つけたほうが、結果的にプラスとなるかもしれません。
賃料の値上げについてよくある質問
はい、可能です。ただし、近隣の家賃相場と比べて著しく賃料が低いなど、値上げするのが妥当となる「正当な理由」が必要です。
法律上の決まりはありませんが、トラブルを避けるためにはできるだけ早く通知しましょう。最低でも1ヶ月以上前には通知することをおすすめします。
いいえ、必ず値上げできるとは限りません。賃料の値上げには入居者の同意が必要なため、拒否された場合は交渉が必要になります。
裁判所で調停を申し立て、裁判官や調停委員を介した話し合いで和解案を決めます。調停も不成立となった場合、訴訟に移行して裁判官の判決に従うことになります。
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