賃料値上げを拒否されたらどうする?交渉をスムーズに進めるコツ

賃料の値上げを通知したところ、入居者から拒否されて困っているオーナーは多いでしょう。
賃料の値上げには入居者の同意が必要なので、拒否された場合は交渉や、調停・訴訟といった法的措置が必要です。
しかし、調停・訴訟には多くのコストがかかりますし、確実に自分の希望額で値上げできるとも限りません。
そのため、賃料が低く赤字になっていたり、利回りが低くて出口戦略が取れないといった場合は、低収益物件でも積極的に買い取る「訳あり物件専門の買取業者」への売却もおすすめです。
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この記事のポイント
- 賃料の値上げには入居者の同意が必要であり、無理やり値上げすることはできない。
- 「値上げを拒否するなら退去させる」といった対応は原則不可能。
- 話し合いで解決しない場合は調停や訴訟が必要。
賃料の値上げは拒否される可能性がある
オーナーは、入居者に対して賃料の値上げを請求する権利があります。契約時に特別なルールを定めていない限り、請求はいつでも可能です。
しかし、請求したからといって必ず値上げできるわけではなく、入居者にも拒否する権利があります。入居者の同意を得られない限り、賃料を値上げすることはできません。
「同意を得られないなら退去してもらえばいい」という人もいますが、入居者を強制的に退去させることは非常に困難です。
賃料の値上げや、拒否された場合の対応について、法律ではどのように取り扱われるのか見ていきましょう。
入居者の同意がないと勝手に値上げできない
賃貸借契約について定める借地借家法では、賃料の値上げについて次のように定めています。
建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
要約すると、賃料の値上げに納得できない入居者は裁判で最終的な結論が出るまで、現状の家賃さえ支払えば住み続けられるということになります。
言い換えれば、協議によって賃料値上げの同意が取れない場合は、裁判を起こして争う必要があるということです。
「値上げを拒否するなら契約は更新しない」という対処はできない
「契約更新に合わせて値上げして、同意しなければ退去するよう通知すればよいのでは?」と考えるオーナーもいますが、賃料について係争中に契約が満了した場合、法定更新が適用されます。
参照:e-Govポータル「借地借家法 第26条第1項」
つまり、賃料の値上げを拒否されても「契約を更新しない」という対処はできないのです。
それどころか、法定更新では期間の定めがなくなるので、今後は更新料が取れなくなってしまう可能性もあります。
借地借家法は基本的に入居者の保護を目的としているので、オーナーの都合で更新しなかったり、強制的に退去させたりするのはむずかしいと考えましょう。
賃料の値上げを拒否されたときの対処法
賃料の値上げを拒否されたとき、オーナーとして取れる対処法は次の通りです。
- 入居者と交渉をおこなう
- 調停・訴訟をおこなう
- 値上げを諦め物件の売却を検討する
まずは入居者と交渉をおこない、どうしても話がまとまらなければ調停・訴訟へ移行するのが基本的な流れとなります。
ただし、調停・訴訟には時間や費用がかかるうえ、必ずしも希望通りに値上げできるとは限りません。
「賃料値上げができないと利益がほとんどない」「このままだと賃貸経営が立ち行かない」というような状況であれば、売却も検討してみるとよいでしょう。
入居者と交渉をおこなう
まずは交渉によって、双方が納得できる条件を引き出すことから始めます。入居者に拒否されている以上、請求しているオーナーの方から譲歩が必要となるでしょう。
譲歩する条件としては、
- 最初に通知した金額より値上げ幅を抑える
- 値上げの代わりに次回の更新料をなしにする
- 共用部分の改修や新しい設備導入
- (退去してもらうなら)立ち退き料の支払い
といった、入居者側にもメリットとなる内容を提示するとよいでしょう。
あくまで交渉なので、当事者同士で納得していることが重要です。しっかりと話し合い、お互いの妥協点を探りましょう。
入居者の希望も聞いて真摯に話し合うことが大切
交渉で大切なのは、相手のことを思いやり誠実な態度で臨むことです。オーナーだからといって「住まわせてやっている」という態度では、相手も反発してしまいます。
値上げの理由を丁寧に説明し、相手が拒否する理由や日頃の不満点に耳を傾けることで、解決策が見えてきます。
過剰にへりくだる必要はありませんが、対等な相手として真摯に話し合うようにしましょう。
調停・訴訟をおこなう
当事者同士の交渉で問題が解決しない場合は、裁判所に申し立てて解決を図ります。裁判所での手続きには「調停」と「訴訟(裁判)」の2種類があります。
調停 | 裁判官や調停委員を介して和解案を決める手続き。協議の延長なので和解には当事者双方の同意が必要だが、成立した場合その内容は強制力を持つ。 |
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訴訟(裁判) | 裁判官が当事者双方の主張や客観的な証拠から、判決による強制的な解決をおこなう手続き。訴訟中に和解する場合もある。 |
賃料の値上げトラブルについては、訴訟前に必ず調停をおこなう「調停前置主義」となっています。調停で和解が成立しなかったときに、初めて訴訟ができると覚えておきましょう。
調停はおおむね3ヶ月程度、訴訟になると1年以上かかるのが一般的です。時間や手間だけでなく出費もかかり、弁護士費用も含めると50万円~100万円以上かかるケースもあります。
このように、調停・訴訟には多くのコストが生まれますが、最終的に自分の希望額で賃料を上げられるとは限りません。値上げが認められなかったり、希望の半額程度でしか値上げできない場合もあります。
賃料の値上げにどこまでこだわるべきかは、希望の値上げ幅や周辺の不動産動向などにもよるため、弁護士や不動産業者など専門家の意見も聞いてみることをおすすめします。
調停・訴訟には不動産鑑定が必要になる
調停や訴訟では、適正な賃料を主張するために「正確な物件の価値」を知ることが大切です。そこで必要なのが、不動産鑑定士による鑑定評価の依頼です。
不動産鑑定士とは、不動産の客観的価値を評価できる国家資格者です。立地や広さだけでなく、経済事情やオーナー・入居者間のこれまでの契約経緯など、さまざまな観点から「妥当な賃料」を算出します。
調停や訴訟においても重要な資料となるので、賃料の値上げでトラブルになったときは不動産鑑定士による鑑定評価が必須といえます。
不動産鑑定の費用相場は個別の事情によりますが、おおむね20~50万円が目安です。まずは鑑定目的や物件の状況を伝え、見積もりを出してもらいましょう。
値上げを諦め物件の売却を検討する
賃料の値上げを拒否された場合、調停・訴訟も想定すると、時間的にも費用的にも大きな負担が発生します。
実際、入居者側から「賃料の値上げは拒否するので不服であれば調停を起こしてください」と言われ、現状維持のまま諦めてしまうオーナーもいます。
しかし、賃料が安く低利回りのままでは、賃貸経営が立ち行かないというオーナーも多いはずです。
このように「値上げが困難だが賃貸経営の継続もむずかしい」という場合は、物件を売却することも検討してみましょう。
賃料の低い「低収益物件」を持ち続けるより、売却して新たな投資先を見つけたほうが、トータルでプラスになる可能性があります。
値上げにこだわるよりすぐに売ったほうがお得な場合もある
賃料値上げにかかる費用次第では、売却したほうが金銭的にお得な場合があります。
例えば、賃料を1万円上げられても、調停・訴訟や不動産鑑定に100万円かかった場合、費用を回収するまで100ヶ月=8年4ヶ月かかります。
中古物件の場合、8年も経てば市場価値が1,000万円近く下がることもありえます。賃料を値上げするより、すぐに売ったほうが経済的にプラスになるでしょう。
ただし、賃料が低く利回りの低い物件だと買い手が付かなかったり、安く買い叩かれる恐れもあります。そのため、低収益物件を売るときは「訳あり物件専門の買取業者」がおすすめです。
訳あり物件専門の買取業者なら自社で買い取るので数日で現金化できますし、不動産業者として低収益物件の活用方法も熟知しているので、高額買取を期待できます。
弁護士と連携した買取業者なら賃料トラブルがあっても売却できる
賃料の値上げをきっかけに入居者と争いになり、現在も調停や訴訟の真っ最中というオーナーもいるでしょう。
このように法的トラブルを抱えていると、売却したくても「まずはトラブルを解決してから来てくれ」と、不動産会社に断られるケースが多くなります。
しかし、こうしたトラブルを抱えた物件でも「弁護士と連携した買取業者」なら法的トラブルのスムーズな解決ができるので、積極的に買い取ってもらえます。
トラブルをそのまま不動産業者に引き継ぐこともできるので、売却とトラブル解消の両方をスピーディーに実現可能です。
「入居者とトラブルになっているけどすぐに売りたい」「調停や訴訟の対応が面倒だから手放したい」というオーナーは、ぜひ弁護士と連携した買取業者への相談を検討してみましょう。
賃料の値上げ交渉で拒否されないためのコツ
ここまで解説したとおり、賃料の値上げは話がこじれると多大なコストがかかります。
そのため、最初の交渉段階でいかに拒否されず、スムーズに同意を得るかが重要です。スムーズに値上げ交渉を進めるためにも、下記のポイントを押さえておきましょう。
- なるべく早めに値上げを通知する
- 値上げの根拠を説明する
- 値上げ額を少なくする
- 入居者のメリットとなる条件を付ける
- 普段から入居者とコミュニケーションを取る
- 交渉をすべて管理会社に任せる
これらのポイントを押さえておけば、入居者から同意をもらえる確率を上げることができます。
なるべく早めに値上げを通知する
賃料の値上げを通知する時期について、法律上のルールはありません。極端にいえば、値上げする前日に通知しても良いということになります。
しかし、急に値上げをすると伝えられても、入居者としては気分の良いものではありません。オーナーに対して悪い印象を持たれてしまい、交渉に支障が出る恐れもあります。
そのため、通知時期については「可能な限り早く」が原則です。最低でも、値上げする1ヶ月以上前には予告したほうが良いでしょう。
賃料値上げの通知時期については関連記事でも解説しているので、こちらも参考にしてください。

値上げの根拠を説明する
一方的に「値上げをする」と伝えても、入居者からすれば素直に受け入れられません。「なぜ値上げするのか?」と、疑問に思うのは自然な流れです。
そのため、値上げをおこなう理由とその根拠を伝えましょう。家賃相場より低いのであれば周辺の賃料一覧表を、固定資産税が上がったのであれば数年分の固定資産税証明書が根拠になります。
値上げは正当な理由でやむを得ないものだと理解してもらえば、拒否される可能性を減らせます。
賃料を値上げできる正当な理由とは?
賃料を値上げするときの「正当な理由」については、借地借家法で次のように定められています。
- 物件の固定資産税が増えた
- 経済事情の変動で物件価値が上がった
- 近隣の家賃相場と比べて安すぎる
個別の事情によってはこれらの理由以外でも認められますが、現実的には上記の3ケース以外で賃料を上げるのはむずかしいでしょう。
賃料値上げの正当理由については、下記の関連記事もぜひ参考にしてください。

「正当な理由はないが現状の賃料だと赤字になる」といった場合は、売却という形で損切りしたほうが、結果的な損益でプラスになる場合もあります。
訳あり物件専門の買取業者なら利回りの低い物件でも高額買取が可能なので、まずは無料査定を受けて、売却を検討してみると良いでしょう。
値上げ額を少なくする
値上げ幅は、周辺の家賃相場と比べて高すぎないよう適切な範囲内に収めるのが原則です。また、これまでの賃料から大幅に上げてしまうのも避けたほうがよいでしょう。
仮にこれまで10万円で貸していたとして、いきなり20万円にまで上げてしまうと、入居者の理解は得にくくなります。調停や訴訟でも「これまでいくらで貸していたか」という点は重視されます。
いままでの賃料からあまりにもかけ離れた金額を主張しても、認められないことがほとんどなので注意しましょう。
入居者のメリットとなる条件を付ける
賃料を値上げする代わりに、入居者のメリットとなる条件を提示することで交渉がスムーズになる可能性があります。
具体的な条件は、さまざまなものが考えられます。例えば、
- 次回の更新料を無料にする
- 駐車場や駐輪場の料金を値下げする
- 宅配ロッカーや無料のインターネットを導入する
などが考えられます。
とくに、設備導入やリノベーションなど入居者全員にメリットのある条件なら、今後も長く住んでもらえるようになりますし、物件自体の資産価値も上がります。
入居者のニーズをしっかりと把握し、相手が喜ぶ条件を提示しましょう。
普段から入居者とコミュニケーションを取る
相手が持つ自分への印象も、交渉を進めるうえで重要です。良い印象を持たれていれば、こちらの主張を聞いてもらいやすくなります。
顔を合わせたときにしっかり挨拶をしたり、修繕の相談やクレームが入ったときは迅速に対応するなど、当たり前のことでも丁寧におこなっていれば印象をアップできます。
普段から会話をしていれば、交渉にあたって相手のニーズを押さえた条件も提示しやすくなります。円滑な賃貸管理のためにも重要なので、可能な範囲で積極的にコミュニケーションを取りましょう。
交渉をすべて管理会社に任せる
交渉では冷静に話し合いを進めることが大切ですが、お金が絡むとどうしても感情的になってしまう場合があります。
お互いにヒートアップして暴言を吐いてしまうなど、賃料とは別のところでトラブルになってしまうこともありえます。
感情的になってしまうのを防ぐために、交渉をすべて管理会社に任せてしまうのも良いでしょう。管理会社が仲介役となるので、入居者と直接トラブルになることを避けられます。
家賃相場の調査など、値上げ交渉に必要な業務も代行してもらえるので、自主管理をおこなっているオーナーは管理会社への切り替えも検討してみましょう。
まとめ
賃料の値上げはいつでも請求できますが、入居者からの同意が必要となります。入居者からの同意がなければ値上げできず、拒否されたからといって追い出すことは基本的にできません。
交渉しても拒否され続ける場合は調停や訴訟をおこないますが、時間・費用のコストを考えると割に合わないケースも多々あります。
「賃料を上げないと赤字になる」「値上げできないならいっそ処分したい」というオーナーは、売却するのも1つの方法です。
弁護士と連携した不動産業者なら売却だけでなく、賃料値上げが可能かどうかの見極めまでサポート・アドバイスができるので、迷ったときは相談してみるのもおすすめです。
「月々の賃料」という目先の利益にとらわれず、長期的な観点でプラスとなる賃貸経営をおこないましょう。
賃料の値上げについてよくある質問
-
不動産経営をしているのですが、オーナー側から賃料の値上げを請求できますか?
はい、可能です。ただし、近隣の家賃相場と比べて著しく賃料が低いなど、値上げするのが妥当となる「正当な理由」が必要です。
-
賃料値上げの正当な理由とはどんなものですか?
法的には「物件の固定資産税が増えた」「経済事情の変動で物件価値が上がった」「近隣の家賃相場と比べて安すぎる」の3点があります。実際は、客観的に「値上げが妥当である」と判断できることが重要です。
-
正当な理由さえあれば、必ず値上げできますか?
いいえ、必ず値上げできるとは限りません。賃料の値上げには入居者の同意が必要なため、拒否された場合は交渉が必要になります。
-
入居者に値上げを拒否された場合、どうすればよいですか?
交渉で同意を得られない場合、裁判所に申し立てて調停や訴訟を起こす必要があります。ただし、調停・訴訟は時間や金銭的なコストがかかるうえに、最終的に自分の希望通り値上げできるとは限りません。
-
賃料の値上げが困難なら売却も検討したいのですが、利回りが悪く売れるか不安です。
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