相続財産のなかにアパートがあるものの、管理の面倒さなどから「相続したくない」と考える人は少なくありません。
親が存命中であれば処分してもらうよう直接相談することもできますが、すでに相続が発生している場合は「売却」か「相続放棄」によってアパートの相続を避ける必要があります。
相続放棄の場合はアパート以外の財産も放棄する必要があるため、基本的には相続してから売却するほうが金銭的なメリットは大きいでしょう。
「アパートが売れるかどうか不安」「売却手続きも大変では?」と考える人もいますが、不動産を自社で直接買い取る「買取業者」であれば、最短2日でスムーズに売却が可能です。
とくに、弁護士と連携した買取業者なら、相続手続きに関するサポートやアドバイスもできるので、アパートの相続について悩んでいる場合はぜひ相談してみましょう。

- アパート以外に相続したい財産があるなら、一旦相続してから売却がおすすめ。
- 相続トラブルや借金の相続を避けたいときは相続放棄がおすすめ。
- 相続放棄だとアパート以外の財産も放棄する必要があるので注意。
相続予定のアパートが不要な場合はどうする?
相続予定のアパートが不要な場合、手放す方法は「売却」と「相続放棄」の2つです。
売却は現金化できるため無駄なくアパートを処分できますが、一時的に相続する必要があります。
相続放棄は相続そのものを避けられますが、アパート以外の相続財産も一緒に放棄しなければいけません。
このように、どちらの方法もメリット・デメリットがあるため、個々の状況に合わせたものを選びましょう。
売却と相続放棄、それぞれの特徴や具体的なやり方を解説していきます。
アパート以外で相続したい財産があるなら「売却」がおすすめ
アパートを相続したくない理由が「管理が面倒」「賃貸経営を引き継ぎたくない」といった理由なら、売却することで簡単に処分が可能です。
一時的に相続しなければいけませんが、すぐに売却すればまとまった現金を手に入れることができます。
ここで問題となるのが、築年数が古かったり、利回りの低い物件だったりで「相続しても売れない」というケースです。売却できないリスクを恐れて、相続をためらう人も多いでしょう。
しかし、上記のような「売りにくい物件」でも、訳あり物件専門の買取業者なら最短2日での高額買取が可能です。業者がアパートを直接買い取るので、査定額がそのまま売却価格となります。
相続登記の前に査定だけ受けることもできるので、アパートが売れるかどうか不安な場合はまず無料査定を依頼してみましょう。
売却なら「アパートだけ処分できる」点がメリット
相続してから売却するメリットは、特定の相続財産だけ処分できる点です。
つまり、現金や自宅など残しておきたい財産はそのまま引き継ぎ、不要なアパートだけ売却することができます。
相続放棄だとすべての財産を放棄する必要があるため、「相続財産のうちアパートだけ不要」という場合は、相続してから売却するようにしましょう。
「借金も相続する」点がデメリット
相続してから売却する場合、借金も一緒に相続してしまう点がデメリットです。
被相続人名義のローンや、連帯保証人としての地位も引き継ぐことになるので、マイナスの財産が多いと相続することが損失になってしまいます。
相続で損失を抱えないためには、事前の財産調査が重要です。弁護士などとも相談し、被相続人の持っていた財産と借金をすべて調べあげましょう。
相続アパートの売却に必要な費用
相続アパートの売却にかかる出費は、相続費用と売却費用に分けられます。
下記の表は相続費用と売却費用の目安です。税率は2022年時点のものなので、制度が変更されている可能性も考慮したうえで参照してください。
費用項目 | 金額の目安 |
---|---|
戸籍や住民票などの書類取得費 | 1,000円程度 |
印紙代(登録免許税) | アパートの価額の0.4% |
司法書士報酬 | 6万円~10万円程度 |
相続税 | 相続財産の総額や法定相続人の人数、アパートの空室率などで変動 |
費用項目 | 金額の目安 |
---|---|
印紙代(売買契約書の作成) | 200~48万円 |
譲渡所得税(所得税+住民税) | ・短期譲渡所得(被相続人が取得したときから5年以下)= 売却益×30.63% ・長期譲渡所得(被相続人が取得したときから5年以下)= 売却益×15.315% |
仲介手数料 | (売却額×3%+6万円 )+消費税 |
上記の表は一般的な例なので、個々の状況次第では大きく変わる場合もあります。
例えば、遺産分割で裁判になっているなら弁護士報酬がかかりますし、売却時に仲介業者ではなく買取業者を使えば仲介手数料は不要となります。
なお、仲介業者と買取業者の違いは次の通りです。
仲介業者 | 「買主と売主の仲介」をおこない、売買契約が成立したときに仲介手数料を取る不動産業者。市場相場で売却できるが、買主が見つかるまで時間がかかることもある。 |
---|---|
買取業者 | 自社が買主となり、直接物件を買い取る不動産業者。仲介より価格は安い傾向にあるが、訳あり物件のような「仲介では売りにくい物件」でも売却できる可能性が高い。 |
相続後なるべく早く売りたい場合や、利回りが低く売りにくいアパートの場合は、スピード売却が可能な買取業者に依頼しましょう。
相続アパートを売却するときの流れ
相続したアパートを売却するときは、次の流れに沿っておこないます。
売却にかかる期間は、仲介業者に依頼した場合は数ヶ月程度、買取業者に依頼した場合は数日程度が目安となります。
なお、不動産業者には弁護士と連携しているところもあるので、そうした業者なら相続に関するサポートやアドバイスも受けられるのでおすすめです。
相続アパートを売却するときの注意点
相続してからアパートを売却するときの注意点としては、買主が見つかるまでの管理責任があります。
アパートを売るには一時的であっても自分の名義にする必要があるので、売れるまでの間になにかトラブルがあれば責任を負わなければいけません。
入居者の賃料滞納であったり、老朽化による雨漏りや倒壊などがあれば、売却にも支障が出てしまいます。
入居者や近隣に被害があれば損害賠償責任が発生する場合もあるので、相続から売却まではなるべくスムーズに終わらせるようにしましょう。
相続財産をすべて手放しても良いなら「相続放棄」がおすすめ
相続放棄は財産ではなく「相続権」を放棄する手続きで、放棄することで最初から相続人ではなかったとみなされるのが特徴です。
相続人ではなくなるので、遺産分割で他の相続人と話し合う必要もありません。相続に関するすべての手続きから除外することができます。
「相続トラブルに巻き込まれたくない」というときには有効な方法ですが、アパート以外の相続財産も手に入らなくなる点には注意が必要です。
単純にアパートの管理を引き継ぎたくないのであれば、相続放棄ではなく売却のほうも検討してみましょう。相続してすぐに売却すれば、管理責任を問われることもありません。
相続放棄なら「相続トラブルを避けられる」点がメリット
相続放棄のメリットは、相続に関するあらゆる手続きやトラブルを避けられる点です。
例えば「他の相続人と仲が悪いため関わりたくない」という場合は、相続放棄をすることでやり取りする必要もなくなります。
また、相続財産に借金がある場合も有効な対策になり、マイナスの財産を引き継がずに済みます。
アパートだけでなく相続財産全体に一切の魅力がない場合は、相続放棄を検討してみると良いでしょう。
「アパートのみを放棄ができない」点がデメリット
先にも解説しましたが、相続放棄のデメリットは特定の財産のみを放棄することができない点です。
相続する権利そのものを放棄するため、現金や自宅など「アパート以外の相続財産」で欲しい物があっても、すべて諦めなければいけません。
1つでも手元に残しておきたい財産がある場合、相続放棄は向いていないといえるでしょう。
また、アパートを相続したくない理由が「管理が面倒」といった場合は、一旦相続してから売却したほうが現金を得られるのでおすすめです。
相続アパートの相続放棄に必要な費用
相続放棄をするときは、次のような費用がかかります。
費用項目 | 金額の目安 |
---|---|
戸籍や住民票などの書類取得費 | 1,000円程度 |
印紙代(相続放棄の申述代) | 800円 |
郵便切手 | 500円程度 |
司法書士報酬 | 2万円~5万円程度程度 |
自分で手続きをおこなうなら合計でも数千円程度ですが、司法書士に依頼した場合は実費に加えて2万~5万円ほどかかります。
相続アパートを相続放棄するときの流れ
相続放棄をするときの手続きは、以下の流れでおこないます。
相続放棄の期限は被相続人が亡くなってから3ヶ月以内(正確には相続開始を知ってから3ヶ月以内)なので、なるべく早く手続きを始めましょう。
なんらかの理由で3か月以内に間に合わない場合は、期限延長を申し立てることもできます。
相続アパートを相続放棄するときの注意点
アパートを相続放棄する際の注意点は、自分以外に相続人がいない場合の手続きです。
自分が相続放棄をしても、他に相続人がいればその人たちがアパートを管理、もしくは処分します。
しかし、自分以外に相続人がいない場合、相続財産の管理・処分を代行する「相続財産管理人」の選任が必要です。
相続財産管理人を選任するまでの間は、例え相続放棄をしてもアパートを管理しなければいけません。
相続財産管理人の選任にかかる期間は2ヶ月程度、費用は約20〜100万円程度が目安となります。選任方法などより詳しい解説は、下記の関連記事を参考にしてください。

親が存命中にアパートの相続を回避する方法
「親はまだ生きているが、いまのうちにアパートの相続を回避したい」という人もいるでしょう。そういったときに取れる方法としては、下記の3つがあげられます。
- 親に資産の組み換えをお願いする
- 生前贈与をしてもらってから処分する
- 「成年後見人制度」を利用する【親が認知症の場合】
親がまだ健康で、財産の管理も自分でできる状態であれば、直接話し合って資産の組み換えや生前贈与をお願いしてみましょう。
認知症で判断能力が失われている場合は、成年後見人制度を利用することで親のアパートを処分することが可能です。
それぞれの方法を詳しく解説していきます。
親に資産の組み換えをお願いする
資産の組み換えとは、保有している資産を別の資産に組み替える方法です。とくに、低収益の不動産を別の不動産に買い替える方法を指します。
例えば、空き室の多いアパートを売却して都心のワンルームマンションに買い替えれば収益性が上がりますし、管理がしやすくなるというメリットもあります。
また、古いアパートは市場価値に比べて相続税評価が高くなるため、資産の組み換えをおこなうことで評価額が下がり、相続税を節税できる効果もあります。
アパートを相続したくない理由が「得られる収益が少ない」「賃貸物件としての将来性がない」といったものなら、資産組み換えによって解決することが可能でしょう。
生前贈与をしてもらってから処分する
アパートを生前贈与してもらい、自分のものにしてから売却するという方法もあります。自分の名義であれば好きなときに売却できるので、相続開始まで待つ必要もありません。
また、生前贈与では「相続時精算課税制度」を使って節税することも可能です。
例えば、贈与時に100万円の贈与税を収めていた場合、将来の相続税からその100万円を差し引くことができます。
相続時精算課税制度の贈与には特別控除もあり、2,500万円以下の財産なら課税されることなく財産を引き継ぐことができます(超過分に対して20%の贈与税を課税)。
注意点として、相続時精算課税制度で贈与した財産は、相続税を計算するときに課税対象として加算されます。
財産の状況によっては支払う税金が多くなる場合もあるので、相続時精算課税制度を利用するときは税理士に相談してから検討することをおすすめします。
「成年後見人制度」を利用する【親が認知症の場合】
不動産を売るには所有者本人の意思が必要になるため、認知症でアパート所有者の判断能力が失われると、原則として売却できなくなります。
しかし、そうした認知症患者を保護するための「成年後見人制度」を利用すれば、本人の利益となる範囲で売却が可能です。
成年後見人制度には、本人があらかじめ後見人を決めておく「任意後見制度」と、本人が認知症になってから周りの家族などが申し立てる「法定後見制度」の2種類があります。
詳しい内容や手続きについては別の記事で解説しているので、こちらを参考にしてください。

まとめ
アパートを相続したくない場合、考えられる選択肢は「相続して売却」か「相続放棄」のどちらかです。
相続放棄は「他の相続人と関わりたくない」「借金まで引き継ぐのは嫌だ」という場合には有効ですが、アパートだけ放棄することはできないので注意が必要です。
相続財産に多額の借金が含まれない限り、相続してからアパートだけ売却したほうが、現金を手に入れられるのでお得といえるでしょう。
築古などで売却がむずかしいアパートであっても、訳あり物件専門の買取業者に相談すれば最短2日で買い取ってもらうことが可能です。
無料査定でもすぐに売却価格がわかるので、まずはアパートがどれくらいで売れるのか確認してから売却・相続放棄を決めると良いでしょう。
アパートの相続についてよくある質問
相続放棄はすべての相続財産を放棄する必要があるので、アパート以外の財産も不要なら選択肢に上がります。ただし、相続財産がトータルでマイナスにならないのであれば、一旦相続してから売却したほうがお得です。
自分で手続きをおこなうなら合計でも数千円程度ですが、司法書士に依頼した場合は実費に加えて2万~5万円ほどかかります。
アパートの資産価値にもよりますが、相続費用と売却費用で100万円以上かかるケースが多いでしょう。
「収益還元法」という方法で算出可能です。「年間の純利益÷還元利回り」という計算式で、おおよその売却価格を査定できます。
築古などの売りにくいアパートでも、訳あり物件専門の買取業者なら積極的に買い取ってもらえます。早ければ2日で買い取ってもらえるので、スムーズに売却したい人にはおすすめです。→【老朽化アパートでも高値で売却!】訳あり物件の買取相談窓口はこちら
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