アパートの立ち退きは、スムーズにいけば半年から1年ほどでの完了が目安となります。
一方で、立ち退き交渉が難航するケースも少なくありません。入居者が立ち退きを拒否することや交渉自体ができないケース、また交渉が長引けば裁判になることもあります。よって、アパートの立ち退き期間は、立ち退き交渉の状況により大きく異なってきます。
この記事では、アパートの立ち退きに掛かる期間や立ち退きに時間が掛かる理由、立ち退き交渉の進め方や立ち退きに関する疑問点について取り上げ、解説していきます。
目次
アパート入居者の立ち退きが終わるまではどれくらいの期間がかかるのか?
アパートの入居者の立ち退きが終わるまでの期間は、スムーズに行けば1年程度で終わることが予想できます。なお、立ち退き交渉が難航する場合には1年以上掛かることも珍しくありません。以下に、詳しく解説していきます。
スムーズに行けば1年ほどで終わることが予想できる
アパートの賃貸借契約で家主が入居者に退去を通知できるのは、借地借家法26条1項により退去日の1年から半年前までとなっています
要するに、交渉が難航せずスムーズに行く場合は半年〜1年程度かかるということがひとつ目安の期間。となります。
以下に、立ち退きの通知を半年以上前から行う理由について紹介していきます。
立ち退きの通知を半年以上前から行うべき理由
ここでは、立ち退きの通知を半年以上前から行う主な理由を3点挙げて、解説していきます。
- ①立ち退き交渉に時間が掛かるから
- ②立ち退きに合意後も退去には時間が掛かるから
- ③早めに退去してもらうことを促すため
①立ち退き交渉に時間が掛かるから
まずは、立ち退き交渉に時間が掛かるからです。
立ち退き交渉は、入居者との度重なる交渉機会が必要となります。初回の交渉では、立ち退きとなる経緯や理由など立退き自体について説明し理解を求めることや、入居者の意見や主張、立ち退きに対する不安などをヒアリングします。
その後、立ち退きに対する不安の解消や実際に被る損害や移転に掛かる実費の見積もりを提示し、合理的な立き退き料の選定を進めていきます。これらは家主に代わり弁護士によって進められますが、交渉は慎重かつ緻密に行う必要があるため、交渉に時間が掛かるのが一般的です。
また、入居者が立ち退きに否定的な立場を取れば、説得や理解を求めるには一定の時間が必要となるため、総じて時間が掛かってしまいます。
入居者は借地借家法に守られている
なお、入居者は原則借地借家法で守られています。借地借家法では、入居者が退去の意思を示さない限り、賃貸借契約の更新は当然にできるとされています。つまり、入居者に契約違反がない限り、家主から退去を申し出ることはできません。
入居者は家主から立ち退き要求があったとしても正当事由がなければ、拒否することができます。例えば、建物の老朽化だけでは正当事由を満たすケースは殆どありません。
建物の補修やメンテナンス、日常的な管理をしっかりと行うことで老朽化を回避できる状態であったとすれば、正当事由にはならないのです。よって、立ち退きを成立させるには、引っ越しに掛かる実費や迷惑料などを加味した立ち退き料を家主が負担することで、正当事由を補完することがあります。
つまり、経済的損失や迷惑を被る分を金銭で家主が負担することで入居者を納得させることができれば、正当事由は成立していないものの立ち退きには同意した、ということになります。
立ち退き料の設定に時間が掛かることや、なかには居座るケースもあるから
立ち退き料は、弁護士が合理的な金額を算出し入居者に提示を行います。しかし、立ち退き料には決まった金額や相場がないため、案件ごとに双方が合意できる金額が異なります。つまり、正解がない立ち退き料についての選定は、どのような金額が合意点であるのかを探っていく必要があります。
これには、入居者からさまざまな意見や主張を聞き入れつつ選定を行うため、必然的に時間が掛かります。また、入居者の中には立ち退きを拒否し、長期間居座るケースもあります。立ち退き交渉しようにも対面ができなかったり、書面で通知しても返信がなかったりなど、居座りの入居者に対して交渉が展開しづらくなります。
このように、立ち退き交渉ではさまざまなケースが起こるため交渉には時間が掛かります。
②立ち退き交渉に合意後も退去には時間が掛かるから
二つ目は、立ち退き交渉に合意後も、退去には時間が掛かるからです。
退去するには、引っ越し先の手配や引っ越し業者の手配、不用品の処分や水道やガスなどライフラインの住所変更など、時間が掛かります。よって、一定の時間が必要となります。
③早めに退去してもらうことを促すため
三つ目は、早めに退去してもらうことを促すためです。
半年以上前から立ち退き通知ができれば、早めに退去する可能性があります。1年前から立ち退き通知をしたら、なおさら退去が早まるでしょう。
入居者としても立ち退き期日が差し迫った状態で退去するよりは、立ち退き期日に余裕があるなかで退去できたほうが、精神的なゆとりが生まれます。
交渉が難航した場合は1年以上かかることも考えられる
立ち退き交渉が難航した場合は、立ち退き完了に1年以上掛かることも考えられます。では、交渉が難航する具体的なケースとはどのようなときになるのでしょうか?
交渉が難航する典型的なケース
交渉が難航する典型的なケースは以下の通りです。
- 立ち退きを拒否されたとき
- 交渉自体ができない
- 立ち退きの条件が折り合わない
立ち退きを拒否されたとき
まずは、立ち退きを拒否されたときです。
立ち退き交渉を行うも、入居者が聞く耳を持たないことや断固として立ち退きを拒否する姿勢を見せたときになります。このようなときは、交渉を進めるのが難しくなります。
交渉自体ができない
次に、交渉自体ができないことで、話し合いにすらならないことになります。立ち退きは入居者との合意が必要であるため、交渉自体ができないことは致命傷です。
立ち退きの条件が折り合わない
最後に、立ち退きの条件が折り合わないことです。立ち退き料の金額が折り合わない、立ち退き料以外の条件が折り合わないなどになります。双方が譲歩するのに時間が掛かるため、交渉が難航するケースが多くなります。
上記に挙げるようなケースの場合は弁護士の介入が必要だったり、調停や裁判といった裁判所手続きを利用しなければならなくなるケースもあるため、立ち退きにかかる期間は長期化するおそれがあります。
入居者に契約違反があれば正当事由なく強制退去させることも可能
入居者に契約違反があれば、正当事由なく強制退去させることも可能です。なおこの場合、立ち退き料が支払われることはありません。
強制退去となるケース
以下に、入居者が強制退去となるケースについて解説します。
- A.家賃滞納の常習、若しくは未納状態が続いている
- B.近隣とのトラブルを起こしている
- C.日常生活のマナーが悪すぎる
- D.無断転貸や居住以外での使用が発覚した
A.家賃滞納の常習、若しくは未納状態が続いている
一つ目は、家賃滞納の常習、若しくは未納状態が続いていることです。
家賃は、通常入居者の銀行口座から引き落としになるため、滞納や未納となることは原則ありません。しかし、口座にお金がなく引き落としができないと滞納や未納となってしまいます。
家主は、賃貸借契約時に預かった敷金を滞納された分に充てられますが、滞納が3か月以上続けば敷金からの回収は困難となります。一般的には、入居者の状況を鑑み滞納が半年以上続くと強制退去となるケースが多いようです。
B.近隣とのトラブルを起こしている
二つ目は、近隣とのトラブルを起こしていることです。
昼夜を問わず騒音を立てる、部屋をごみ屋敷にしてしまい悪臭や害虫などが発生している、無意味に罵声をあびせるなどの嫌がらせの行為をしていることになります。近隣とトラブルを起こす入居者がいると、他の入居者で退去が増え入居率が下がり、賃料収入は減ってしまいます。
これにより賃貸経営が成り立たなく可能性があるため、家主にとっての経済的損失が大きくなります。よって、このような入居者は強制退去の対象となってしまいます。
C.日常生活のマナーが悪すぎる
三つ目は、日常の生活マナーが悪いことです。ゴミ出しの日やゴミ出しのルールを守れないことや、共用廊下に私物が散乱しているなど、日常生活のマナーの悪さが目立つと他の入居者に迷惑が掛かります。
また、あまりにも酷すぎると他の入居者に退去が増える可能性があることから、日常生活のマナーが悪い人も強制退去の対象となります。
D.無断転貸や居住以外での使用が発覚した
最後に、無断での転貸や居住以外での使用が発覚したときです。つまり、賃貸借契約に違反する行為を行ったときになります。このようなときには当然に、契約違反をしている入居者を即刻退去させられます。
一般的な立ち退きの進め方とスケジュール
ここまで、アパートの立ち退きについて基本的な情報などをお伝えしてきました。
では、実際にアパートの立ち退き交渉はどのようなスケジュールで行われるのでしょうか?ここでは、一般的な立ち退き交渉の進め方とスケジュールについて解説します。
- ①入居者への立ち退き通知(退去日の半年~1年前)
- ②話し合い・立ち退きに合意(退去日の4カ月前~5カ月前)
- ③次の入居先の斡旋(退去日の3か月前~4カ月前)
- ④明け渡し
①入居者への立ち退き通知(退去日の半年~1年前)
まずは、入居者への立ち退き通知を書面にて行います。書面での通知は、家主若しくは弁護士より行います。立ち退きはなるべく早く完結させたいため、通常1年前には通知をするケースが多くなります。
②話し合い・立ち退きに合意(退去日の4カ月前~5カ月前)
次に、話し合いを行い立ち退きの合意を目指します。
契約違反など落ち度が全くない入居者を立ち退きさせる場合、入居者のほうが強い立場であるため、立ち退き自体に納得してもらえる交渉が必要です。そもそもの立ち退き自体に一定の理解を得ることや、その後の立ち退き条件などを決めていきます。
つまり、立ち退き交渉は決まった形がないため、双方が合意するポイントを探求する作業があります。これには、一定量の話し合いなどが必要なためどうしても時間が掛かるのが通例です。
全ての話し合いが済み、立ち退きに合意する時期としてはこのタイミングが理想となります。
③次の入居先の斡旋(退去日の3か月前~4カ月前)
続いて、次の入居先の斡旋です。
近隣に今のアパートと似たような条件の家賃や間取りの物件をピックアップし、情報として提供します。また、不動産会社の紹介や引っ越し業者の斡旋など、出来る限りのサポートをするのが良いでしょう。
④明け渡し
最後に、物件の明け渡しです。
入居者には、予め決められた退去日までに引っ越しを完了してもらいます。家主は入居者に立ち退き料の支払いを行い、入居者が鍵の返却をすれば立ち退きは完了です。
立ち退きをさせる前に家主が心がけること6つ
入居者を立ち退きさせる前には、家主が心がけておくことがあります。それは、経営的な部分や立ち退きに掛かる経費、入居者と立ち退き交渉するスタンスになります。以下に、代表的な6つを取り上げて解説します。
- ①家賃収入はなくなるので賃貸経営は赤字となる
- ②弁護士は立ち退きに強い弁護士を選任する
- ③立ち退き料と弁護士への成功報酬の支払いなどでけっこうな出費となる
- ④立ち退きは家主の都合であるので、入居者には丁寧に対応する
- ⑤今の住居に近い物件情報を提供するなど、入居者側に寄り添った交渉をする
- ⑥入居者とのコミュニケーションをなるべく多くとっておく
①家賃収入はなくなるので賃貸経営は赤字となる
一つ目は、家賃収入がなくなるので賃貸経営は赤字になります。
立ち退きや建て替え工事期間は、家賃収入は0円です。しかし、土地を所有しているため固定資産税などの固定費は負担しなければなりません。よって、赤字期間の支出を賄える分の貯蓄が必要となります。
なお、立ち退き交渉の期間が長引けば、赤字の期間はさらに増えその後の建て替え工事にも影響してくることから、家主としては当初の計画通りに立ち退きを完了させたいという考えがあります。
立ち退きを拒否する入居者がいた場合には、立ち退き料を多く負担することと賃貸経営の赤字期間に発生する損失を計算します。これにより、どちらが家主にとって費用の削減になりそうなのかを予測し、交渉を進める必要があります。
②弁護士は立ち退きに強い弁護士を選任する
二つ目は、立ち退きに強い弁護士を選任することです。
立ち退きが予定通りに進むかは、家主の代わりに交渉を行う弁護士の力量次第と言っても過言ではありません。さまざまな展開が予期される立ち退き交渉に於いて、どのような場面でも適切な対応や合理的な方向に話しをまとめられるかについては、実際に入居者と対峙する弁護士が大きな役割を担います。
また立ち退き交渉は、借地借家法が絡むので法律的な解釈は欠かせません。入居者有利の法律の下立ち退き交渉を進めるには、法律のプロである弁護士が理路整然と話しをする必要があります。さらに、ときには世間話で相手との距離を詰めて話しを展開していくなど、多くの技術が必要です。
立ち退きは、過去に立ち退き交渉の経験が豊富で、ノウハウをしっかりと持っている弁護士を選任するのが良いでしょう。
③立ち退き料と弁護士への成功報酬の支払いなどでけっこうな出費となる
三つ目は、立ち退き料と弁護士への成功報酬の支払いなどでけっこうな出費となることです。
まず、立ち退き料に決まった金額や相場はありません。立ち退き交渉1件ごとに金額は異なります。例えば、立ち退きをさせたい期日が差し迫っているときや早期の立ち退きを実現したい場合には、多額の立ち退き料を支払うケースもあります。
また、弁護士への成功報酬も弁護士事務所により異なりますが、着手金なども含めて多額の出費となることは間違いありません。
④立ち退きは家主の都合であるので、入居者には丁寧に対応する
四つ目は、立ち退きは家主の都合であるので、入居者には丁寧に対応することです。
立ち退きに一番の迷惑を被るのは入居者になります。また、立ち退きしてもらうには建て替えなどについて一定の理解を得ることが必要です。そのためには、入居者に対し丁寧に対応することが必須になります。
仮に、家主であるからと横柄な態度で一方的に話しを進めてしまうと反感を買う可能性があります。双方が冷静且つ有意義な交渉を進めるためには、必要なスタンスとなります。
⑤今の住居に近い物件情報を提供するなど、入居者側に寄り添った交渉をする
五つ目は、今の住居に近い物件情報を提供するなど、入居者側に寄り添った交渉をすることです。
先述では丁寧な対応が必要と紹介しましたが、このことも大事な要素となります。立ち退きは入居者にとっては、新しい転居先が見つかることや新しい生活に向けて不安なことばかりです。
よって、このような不安を取り除くには、入居者が今何を思っているのかをしっかりとヒアリングすることや、ヒアリングした内容に基づいて金銭的な補償以外の部分も提案することが重要となります。
原則は、迷惑を被る入居者が気持ちよく立ち退きに同意できるような提案をするなど、入居者側に寄り添ったスタンスが必要です。
⑥入居者とのコミュニケーションをなるべく多くとっておく
最後に、入居者とのコミュニケーションをなるべく多くとっておくことです。
これは建て替えが決まってからではなく、常日頃から行っておくことになります。朝の挨拶程度でもしっかりと行っていれば、お互いの印象が悪くなることはありません。
また、家主が入居者に積極的に声掛けすることで、住居内の不満や改善点など不平不満を聞くこと、またコミュニケーションが深まれば日常会話も問題なくできるでしょう。
このように、日常からコミュニケーションを深めておくことで、このような立ち退き交渉について一定の理解を得やすい環境を作り上げることができます。
立ち退きに関して気になる疑問5つ
立ち退きにはまだまだ疑問に思う点がたくさんあります。ここでは、立ち退きに関する主な疑問点を5つ取り上げ、その回答をご紹介します。
- ①入居者は原状回復を行う必要があるのか?、また敷金はどうなる?
- ②立ち退き料はどのようにして決められるのか?
- ③立ち退きを断られたらどうするのか?
- ④立ち退き料や弁護士費用はどの程度用意しておけば良いのか?
- ⑤高額な立ち退き料を請求された場合、正しい対応方法は?
①入居者は原状回復を行う必要があるのか?、また敷金はどうなる?
アパート建て替えでの立ち退きの場合、退去後に取り壊す物件についてわざわざ原状回復を行う必要はあるのでしょうか?また敷金はどうなるのでしょうか?
①の回答
原則、家主の都合での立ち退きとなるため、原状回復を行うことはありません。また、敷金は返還されます。
②立ち退き料はどのようにして決められるのか?
決まった金額や相場がない立ち退き料は、どのようにして決めていくのでしょうか?
②の回答
基本的には、転居などで掛かった実費部分と迷惑料で構成されます。
一般的には、立ち退き料は総額で家賃の6カ月から12か月分と言われていますが、交渉により金額は異なるケースが殆どです。合意できる金額については、弁護士が入居者との話し合いのもとベースとなる金額を算出し、その後合意できる金額などを交渉にて探求したのちに、最終的に決定していきます。
なお、家主が立ち退き交渉を急ぐ場合には、高額の立ち退き料が支払われることもあります。
③立ち退きを断られたらどうするのか?
立ち退きを入居者に断られてしまうケースも当然に考えられます。このようなときには、どんな対処法があるのでしょうか?
③の回答
立ち退きを断られてしまったら、粘り強く交渉を続けていくことが鉄則となります。立ち退き料を引き上げることや立ち退き料以外の提案を行うなど、入居者に寄り添う姿勢で交渉を展開します。
なお、最も避けなければいけないのは裁判です。よって、関係性だけは良好な状態を保てるように、まずは話し合いによって入居者の思いや主張を汲み取る姿勢が大事になります。
④立ち退き料や弁護士費用はどの程度用意しておけば良いのか?
立ち退き交渉で気になるのは、立ち退き料や弁護士費用がどの程度になるのかです。実際にどの程度の資金を用意する必要があるのでしょうか?
④の回答
立ち退き料は、多少多めに家賃の2年分相当額を想定しておくと良いでしょう。また、弁護士費用については「着手金+報奨金」という形になります。報奨金については、立ち退きにおける経済的利益に対しての概ね5%~10%を乗じた金額となるケース多くあります。
⑤高額な立ち退き料を請求された場合、正しい対応方法は?
入居者より、家主が想定した立ち退き料をはるかに超える高額な請求をされた場合の、正しい対処方法とは何か?
⑤の回答
高額な立ち退き料を請求された場合には、家主側が設定した立ち退き料の金額を提示し、その穴埋めの交渉を根気よくやるしかありません。
なお、高額な立ち退き料とは、例えば家賃10万円の物件の場合に、立ち退き料として1,000万円を請求されたときなどです。このとき年間の家賃の8年分相当以上の金額は、決められた相場はないとは言えあまりにも法外な金額となります。
入居者側が納得や譲歩しない場合には、双方の主張の食い違いが激しく、訴訟止む無しの状況になる可能性が高くなります。
万が一、裁判になったときのリスク2つ
立ち退き交渉で最も避けるべきことは、裁判になることです。では、立ち退き交渉が裁判になると、どのようなリスクがあるのでしょうか?以下に、2点取り上げて解説します。
- ①余計に時間が掛かり、建て替え計画自体の見直しも必要になる
- ②高額の裁判費用が掛かる
①余計に時間が掛かり、建て替え計画自体の見直しも必要になる
一つ目は、裁判となることで立ち退き完了までに相当な時間が掛かってしまうことです。また、建て替え自体も後ろ倒しになることで、計画自体の見直しも必要になる可能性があります。
さらに、立ち退き期間が延びることで、賃料収入がない期間が伸び賃貸経営が赤字となる期間が長くなります。家主が負う損失も大きくなりかねないので、なるべく裁判は避け早期の立ち退き交渉完了が望ましいということになります。
②高額の裁判費用が掛かる
二つ目は、高額の裁判費用の負担です。裁判には弁護士を選任する必要があります。立ち退き交渉している弁護士でも裁判となると別の費用負担となります。
家主が勝訴するとどうなる
裁判で家主の主張が認められた場合、入居者には立ち退きに応じるように命令されます。つまり、入居者は決められた時期までに建物を家主に引き渡すことになります。
家主が敗訴するとどうなる
裁判で家主の主張が認められない場合、入居者はそのまま住み続けることができ、立ち退きや建て替え計画自体が凍結する可能性が高くなります。入居者の退去を待つか、立ち退き料を見直すなどの再交渉が必要です。
判決が出る前に和解に持ち込むのが得策
裁判は判決までに時間が掛かることと、判決が確定し仮に家主の敗訴となると建て替え計画自体が頓挫しかねません。よって、判決を確定する前に弁護士同士で話し合いを行い、和解に持ち込むのが大抵の場合得策となります。
古いアパートなどを所有し、立ち退き交渉が面倒であれば当社が買取りします
古いアパートなどを所有し、立ち退き交渉や建て替えが面倒であれば当社が現況のまま買取りします。買取りであれば、立ち退き料や弁護士費用など余計な費用負担はありません。
また、通常アパートを不動産仲介で売却するには入居者を立ち退かせ空き家の状態での売却が必須です(入居者をそのまま引き継ぐオーナーチェンジもあるが、現況を確認できない分、安価で売却となる可能性が高い)。よって、古いアパートの売却は立ち退き交渉がない買取りがおすすめになります。
なお、㈱クランピーリアルエステートでは相続で貰った古いアパートの所有に困っている家主や売却を考えている家主に対して、無料の相談会を実施しています。詳しくは公式HPをご参照ください。
まとめ
アパートの立ち退きを完了させるには、1年程度の時間が掛かります。立ち退きは1件ごとに入居者との交渉が必要です。交渉自体に大変な時間が掛かることや、立ち退き合意後の退去にも時間が掛かってしまうため、総じて最低1年程度の時間が必要となります。
なお、立ち退きを拒否され訴訟になると、1年以上の期間が掛かることがあります。古いアパートの建て替えを検討するのであれば、早めのタイミングにて計画的に進めていくのがよいでしょう。
「アパート 立ち退き 期間」に関してよくある質問
スムーズに交渉が進めば、半年~1年程度になります。一方で、立ち退き交渉が難航した場合には、1年以上掛かることも珍しくありません。なお、立ち退きが難航するケースとは、「立ち退きを拒否される」「交渉自体ができない」「立ち退きの条件が折り合わない」ときになります。
立ち退き交渉自体に時間が掛かることや、立ち退きに合意できたとしても入居者の退去にも時間が掛かるからです。
主に、下記6つになります。詳細は本編にてご紹介します。
・家賃収入はなくなるので賃貸経営は赤字となる
・弁護士は立ち退きに強い弁護士を選任する
・立ち退き料と弁護士への成功報酬の支払いなどでけっこうな出費となる
・立ち退きは家主の都合であるので、入居者には丁寧に対応する
・今の住居に近い物件情報を提供するなど、入居者側に寄り添った交渉をする
・入居者とのコミュニケーションをなるべく多くとっておく
・①入居者への立ち退き通知(退去日の半年~1年前)
・②話し合い・立ち退きに合意(退去日の4カ月前~5カ月前)
・③次の入居先の斡旋(退去日の3か月前~4カ月前)
・④明け渡し
以下、2点が主なリスクとして考えられます。
・余計に時間が掛かり、建て替え計画自体の見直しも必要になる
・高額の裁判費用が掛かる
コメントを残す