アパート経営を終わらせるには、必要な手続きがあります。主なものは、廃業届、売却若しくは建物の解体です。
アパート経営を始めたときに、アパート経営の終わらせ方を考えたことはあまりないでしょう。しかし、長年アパート経営していると建物の老朽化や入居率の低下、家賃の下落による収入の減少があります。一方で、老朽化による設備や建物の傷みは顕著となり、補修費用も掛かってきます。
また、年齢的な衰えで健康不安や体力低下があるなかで経営が難しくなるケースや、心労や苦労が多く収益が減ってきていることから廃業となるケースは少なくありません。
しかし、実際アパート経営は、終わらせ方も重要となります。例えば、先述のように空室が多くなったから廃業するといった場合、所有するアパートを売却しようにもなかなか買い手は現れません。なぜならば、空室だらけのアパートは投資基金の回収が見込めず、投資に失敗するリスクが高いからです。
では、アパート経営の終わらせるのは、どのようなタイミングがよいのでしょうか?また、アパート経営の終わらせ方や手続きなどについても知りたいところです。この記事では、アパート経営の終わらせ方、賃貸経営を辞める方法について解説します。
目次
アパート経営を辞めるには売却かアパートの解体をする
アパート経営を辞めるには、アパート自体を売却するか若しくは土地を所有しておきたいのであれば、アパートの解体が必要です。下記に、各々について解説します。
- ①売却
- ②アパートの解体
①売却
一つ目の方法は売却です。売却には、下記3つの方法があります。
- A.土地と建物を不動産仲介で売却する
- B.オーナーチェンジ
- C.買取りしてもらう
A.土地と建物を不動産仲介で売却する
まずは、土地と建物を不動産仲介で売却する方法です。
不動産仲介とは、不動産を売却する最もオーソドックスな方法となります。主に個人の売主が個人の買主をみつけ、不動産売買を行う方法です。しかし、個人では買主を見つけることや個人間売買では、契約書の作成・住宅ローンの斡旋・不動産登記・引き渡しなどを完了させることが難しいため、不動産会社が取引を仲介します。
これにより、個人間売買でも円滑に取引が進むようになります。また、取引が無事に完了した場合には、成功報酬として仲介した不動産会社に仲介手数料が支払われます。
なお、アパートを高く売る方法としては、土地・建物として不動産仲介で売却するのが最もよい方法と言えます。しかし、土地・建物としての売却の場合、入居者には退去してもらう必要があります。空き家の状態での売買となるので、買主はアパートを残すか、解体して自宅の新築やアパートを建て直すなど、不動産の用途は原則自由となります。
B.オーナーチェンジ
続いて、オーナーチェンジです。
アパートの売却で不動産仲介よりも手間が掛からないのが、オーナーチェンジでの売却となります。オーナーチェンジも厳密には、不動産仲介での売却となりますが、売却方法が異なるため項目を分けて記載しています。
オーナーチェンジとは、入居者はそのままで家主のみ交代することを言います。つまり、買主はアパートの所有権を購入し、入居者がいる状態から不動産投資をスタートできることになります。
オーナーチェンジを行うことで、これまで享受していた「賃料を得る権利」、空室になったときの「建物が返還される権利」、入居者が退去時に行う「原状回復の権利」を引き継いでもらいます。また、入居者に対しては「建物を利用させる義務」「建物の修繕義務」「退去時の敷金返還義務」を全うする必要があります。
なお、オーナーチェンジの場合、買主は建物の内部まで確認ができません。よって、不動産仲介で売却するよりも安価になることが殆どです。一方で、不動産需要が高い春先や満室稼働状態での売却となる場合には、不動産投資がしやすい状況となるため、高値で売却できることもあります。
C.買取りしてもらう
最後に、買取りです。
買取りは、現況のまま買取り専門の不動産会社が買い取ってくれる方法となります。買取りは、不動産仲介で売却を試みるも、売却に成功しなかった場合の最終手段と考えておきましょう。
買取りの特徴は、入居者を退去させる必要もなく、また空き家の状態での売却でも契約不適合責任を問われることはありません。さらに、買取りの不動産会社が決まれば契約後即引き渡し、その後現金化までがスピーディーです。
一方で、買取り金額は一般的に相場の60%~70%程度になります。また、アパートローンが残っている場合、買取り金額と自己資金を合わせてローンを完済できることが利用の条件となります。
売却時の注意事項2つ
アパート売却時には、注意事項があります。先述でも触れていますが改めて紹介します。
- ⑴土地・建物として売却するときには立ち退きが必要となる
- ⑵買取りは売却金額が安価になることもある
⑴土地・建物として売却するときには立ち退きが必要となる
一つ目は、アパートを不動産物件として売却する場合には、立ち退きが必要となることです。
買主にアパートではなく不動産として売却するには、アパートを空き家にします。なぜなら、買主はアパート経営に興味はなく、あくまで建物アリの土地をメインに検討しているからになります。
よって、アパートに入居者が残っていると建物の解体ができないため、立ち退きが必要となります。なお、入居者の立ち退きには時間が掛かることがあります。これは、賃貸住宅の入居者は借地借家法により強く守られており、正当事由を満たさないと原則立ち退きを拒否できるからです。
つまり、入居者がいる状態での売却は、立ち退き料が高額になるケースや立ち退き交渉自体が進まないケースもあり、売却自体のハードルが高くなってしまうことがあります。このケースで最も良いのは、アパートの入居者が契約満了で全住戸退去し、空き家の状態であることが望ましいということになります。
⑵買取りは売却金額が安価になることもある
二つ目は、買取りは売却金額が安価になることもあります。
買取り専門の不動産会社は、買い取った物件をリフォーム若しくは取り壊して新しく建て直し、アパート経営を行っていきます。よって、買取り金額は、アパート経営を再事業化するための資金を事前に確保するため、必然的に安価になります。
なお、アパート買取り後は買取り業者が立ち退き交渉を行い、リノベーションや建て替えを順次行っていきます。買取りは、アパート所有者にとっては、売却先が直ぐに決まる安心感と即現金化ができる手続きの速さがメリットです。
一方で、買取り業者にとっては、アパートを安価に仕入れられることがメリットで、建物の状態により既存建物を生かす方法や解体して建て替えるなどの選択ができます。専門業者は多彩なノウハウを持っており、リノベーションや建て替えたアパートを自社で運営若しくは新たに売却するなど、買い取ったアパートを自由に活用します。
売却のメリット・デメリット
ここでは、アパート売却のメリットとデメリットについて紹介します。
メリット | ・纏まった資金が手に入る ・月々のランニングコスト負担がなくなる |
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デメリット | ・土地が戻らない |
売却のメリット
売却のメリットは、土地と建物一切を手放すことになるため、纏まった資金が手に入ることになります。売却した資金で、老後の生活資金や趣味などに充てることができるでしょう。
また、固定資産税などの固定費が掛からなくなることで、月々のランニングコスト負担がなくなります。さらに、相続時も現金で相続できるため、子世代にアパート相続による苦労を掛けることはありません。
他にも、アパート経営から手を引くため、入居者間のトラブルや家賃滞納や未納などのトラブルによる苦労や心労がなくなることもあります。
売却のデメリット
売却のデメリットは、その土地が先祖代々から受け継いだ土地であれば、今後土地が手元に戻らないということです。土地を所有し続けたいのであれば、アパートを解体し月極駐車場などの土地活用を行うのが良いでしょう。
②アパートの解体
続いて、アパートの解体です。アパート経営を辞めるにあたり建物自体は取り壊し、土地は所有しておくという方法です。または、解体後しばらくして売却する方法もあります。
解体のメリット・デメリット
アパート解体のメリット・デメリットはどのようなことになるのでしょうか?以下に、各々を解説していきます。
メリット | ・土地活用しやすい ・近隣に迷惑を掛ける心配がない |
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デメリット | ・解体費用が掛かる ・固定資産税が上がる |
解体のメリット
解体のメリットは、更地にすることで土地活用がしやすいことです。
例えば、コインパーキングやトランクルームは専門業者に土地を貸してしまえば、一定の賃料収入を得ることができます。また、土地が必要なくなれば売却も可能です。また、先祖から受け継ぐ土地であれば、その土地を守り続けることもできます。将来的に相続で子世代に受け継ぐことや、自宅を新築するなど新たな使い方もできるでしょう。
また、近隣に迷惑を掛ける心配がありません。古いアパートを残しておくことで、建物が朽ちていき、廃屋のような見た目になることや台風などの突風で屋根などが吹き飛び近隣に被害を負わせる可能性がありますが、解体であればそのような心配もありません。
解体のデメリット
解体のデメリットは、解体費用が掛かってしまうことです。解体費用は相場がわかりにくい分野であるため、査定は複数社に依頼するのがおすすめとなります。
次に、固定資産税が上がってしまうことです。アパートがあった土地には固定資産税の特例措置が認められており、住戸1戸につき200㎡以下の部分(小規模住宅用地)については、課税標準×1/6に軽減されています。つまり、アパートがなくなることで建物分の固定資産税はなくなるものの、土地の固定資産税は約6倍になるので要注意です。
また、解体後しばらく更地にする場合には、固定費のみ掛かる形になるため、所有し続けるのであれば土地活用などを行い、固定費分を補填する形が良いでしょう。
アパート解体時の注意事項
ここでは、アパートを解体工事するにあたり注意すべきポイントについて解説します。
- A.解体見積もりは複数社に出す
- B.解体工事の前には近所に挨拶回りをする
A.解体見積もりは複数社に出す
一つ目は、解体の見積もりは複数社に依頼することです。
解体工事はあまり身近ではなく、費用がどの程度掛かるかは想像がしにくいところになります。また、インターネットで「解体業者」と検索すると、その会社数は意外と多くどこに依頼して良いかもわかりません。
よって、解体業者は複数社に見積もりを取ることで、おおよその相場観を掴むことができます。さらに、担当者に見積もり金額の説明や、工事内容等の説明などを受けることで解体工事全般を理解できます。
B.解体工事の前には近所に挨拶回りをする
二つ目は、解体工事前には近所に挨拶回りをすることです。
解体業者の中には、挨拶回りをしてくれるところもありますが自らでも親しい近所の人などには、解体工事がある旨を伝えておきましょう。解体工事は、日中大きな騒音や埃が発生します。また、大型トラックが道路を通ることで迷惑に感じることもあります。よって、今後の近所付き合いのためにも解体工事前には挨拶回りが必要です。
アパート経営を辞めるタイミング5つ
アパート経営は、辞めるタイミングがとても重要となります。一般的には、アパートの老朽化が進み空室率が上がったときのように思えますが、このようなときだと不動産投資として魅力が薄く高値売却ができません。
では、アパート経営の絶妙な辞め時とはどのようなタイミングが良いのでしょうか?以下に、5つの代表的なタイミングを紹介します。
- ①アパートが満室のとき
- ②引っ越しシーズンの前
- ③不動産価格が上がったとき又は上がる見込みがありそうなとき
- ④減価償却期間が満了したとき
- ⑤相続が面倒であるとき
①アパートが満室のとき
まずは、アパートが満室のときです。
オーナーチェンジで売却する場合には、満室稼働中に売却するのがベストになります。なぜなら、満室稼働中であれば賃料収入の見込みが立ちやすく、投資しやすいからです。また、古いアパートでオーナーチェンジ物件は、大抵安く売却されるのですが、満室稼働中であれば高値売却の可能性が高まります。
満室稼働時に売却することには躊躇いがあるかもしれませんが、買い手の立場になれば最も良い条件になります。アパートの辞め時には、売り時の見極めも大事です。
②引っ越しシーズンの前
次に、引っ越しシーズン前です。
一般的に転勤や大学への入学など人の移動が多い春先は、不動産の繁忙期になります。よって、春先の少し前あたりが不動産投資のピークということになるでしょう。よって、アパートの売却に動くには1月~2月が良いということになります。
なお、不動産として売却するにしても春先が最も需要の高い時期となるので、先述と同様の時期から売却に動き始めるのが良いでしょう。
③不動産価格が上がったとき又は上がる見込みがありそうなとき
続いて、不動産価格が上がったとき又は上がる見込みがありそうなときです。
これは、不動産市場に応じてアパート経営を辞めるタイミングを見計らう方法になります。売却の査定を出したら高値で売れることが分かった、周辺の不動産価格が10年前より確実に上がっているなど、不動産価格が上がったときや今後周辺の再開発などで上がりそうな見込みがあるときには、高値売却が期待できるでしょう。
④減価償却期間が満了したとき
続いて、減価償却期間が満了したときです。
減価償却とは、資産は時間経過とともに価値が減っていくという考え方です。構造や用途により減価償却資産耐用年数は決まっており、木造アパートであれば耐用年数は22年、鉄筋コンクリート造りであれば47年になります。
つまり、木造アパートであれば新築後22年間は減価償却費として経費計上ができ、収益から差し引くことができることで一定の節税効果が望めます。よって、減価償却期間が満了した物件は建物自体の減価償却費を経費計上できないために、節税効果が薄れてしまいます。
よって、減価償却期間が満了したときは、アパート経営を辞める良いタイミングと言うことができます。
⑤相続が面倒であるとき
最後に、相続が面倒であるときです。
自らが高齢となり相続が現実的になった場合、子世代に不動産を相続させるのが面倒なときや、子世代にアパートを相続させることで苦労を掛けたくないときになります。
また、相続前に売却し現金化ができれば、相続人が複数いる場合に分配がしやすいなどの利点があります。よって、相続が面倒なときにはアパート経営を辞める良いタイミングと言えます。
アパート経営の終わらせ方
ここまで、アパート経営を辞める方法や辞めるタイミングなどについて解説してきました。最後は、アパート経営を終わらせる方法となります。
下記、4つの手順に分けて解説します。
- ①廃業届の提出
- ②公共料金などの契約解除
- ③入居者への通知
- ④売却や解体の場合は立退き交渉
①廃業届の提出
個人事業主が事業を辞め廃業する場合には、税務署に廃業届を提出します。提出時期は、アパート経営を辞めた日から1か月以内です。なお、廃業届は出さなくても税法上の罰則はありません。
しかし、翌年以降も事業を継続しているとみなされ、未申告が続けば税務調査が入る可能性があるため、手続きはしっかりと行っておきます。
②公共料金などの契約解除
次に、電気・ガス・水道などの契約解除です。他にインターネット回線やケーブルテレビなどの解約も必要となります。
③入居者への通知
続いて、入居者への通知です。
家主が廃業する旨を書面等にて通知します。オーナーチェンジでの売却であれば、入居者が退去するなどの影響はひとまずありません。
④売却や解体の場合は立ち退き交渉
最後に、売却や解体の場合は、立ち退き交渉があります。
入居者には、賃貸借契約満了日の1年前から半年前までに廃業する旨と退去してもらう旨を書面にて通知します。廃業は家主の都合であるため、正当事由を満たすことはなく、立ち退き料が発生するケースが殆どです。
所有に困っているアパートは当社が買い取ります
古いアパートなど所有に困っている物件は、入居者が居住したままで当社が買取りします。
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まとめ
アパート経営を終わらせるには、建物を処分する必要があります。その方法が、売却して手放すか建物を取り壊すことになります。売却や解体には各々メリット・デメリットがあります。それぞれを理解して、どちらの手法が良いのかを判断していきましょう。
なお、アパート経営は終わらせるタイミングが重要です。高く売却するには、満室稼働中であるときや不動産価格が上がっているときなど、買い手が投資しやすい物件若しくは市況であるかなどがポイントになります。
「アパート経営の終わらせ方」に関してよくある質問
まずは、税務署への廃業届の提出があります。また、公共下水道やガスの解約、入居者への通知や不動産として売却するときには立ち退き交渉が必要です。
アパートの売却か解体があります。売却には、不動産として売却、オーナーチェンジ、買取りがあります。オーナーチェンジはアパートはそのまま残し所有権を売却すること、買取りは買取り専門の業者が買主となることです。各々の特徴などは本編にてご確認ください。
以下に、アパート解体時の注意事項を2点挙げていきます。
・解体見積もりは複数社に出す
・解体工事の前には近所に挨拶回りをする
以下に挙げたタイミングが、アパート経営を辞めるベストなタイミングになります。
・アパートが満室のとき
・引っ越しシーズンの前
・不動産価格が上がったとき又は上がる見込みがありそうなとき
・減価償却期間が満了したとき
・相続が面倒であるとき
満室稼働中であれば、不動産投資家が投資しやすい状況であるからです。投資後直ぐに家賃収入が見込めることで、回収しやすくなるからになります。
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