立ち退き請求に必要な正当事由とは?判例や立ち退きの流れも紹介

立ち退き請求に必要な正当事由とは?判例や立ち退きの流れも紹介

「長年貸してきた物件を建て替えたい」「自分や家族が住むために使いたい」そんな理由があっても、入居者がすぐに退去に応じてくれないことがあります。立ち退きはデリケートな問題で、感情的な対立や裁判に発展することも少なくありません。だからこそ、法律で定められた「正当事由」を理解し、適切に対応することが重要です。

裁判で入居者に立ち退きを求めるには、オーナーの都合だけでは足りず「正当事由」が必要です。正当事由とは、オーナーが契約を終了させて入居者から建物を明け渡してもらうために、法律上合理的と認められる理由のことです。この仕組みは借地借家法によって定められ、オーナーの一方的な要求から入居者を守る役割を果たします。そのため、裁判で争いになった場合、正当事由の有無が最大の焦点となります。

正当事由とされる主な要素には、次のようなものがあります。

正当事由の主な要素と具体例
正当事由の要素 具体例
オーナーの使用目的 自分や親族の居住、事業用としての利用
入居者の事情との比較 生活基盤としての重要性、家族や健康への影響
建物の状況 老朽化や耐震性不足による安全性の問題
契約後の経過や利用状況 契約違反の有無、長期間未使用の有無
補償(財産上の給付) 立ち退き料の支払い、代替物件の提供

これらの要素を総合的に考慮して正当事由が判断されます。補償を加えることで立ち退きが認められやすくなる場合もあれば、入居者側の事情が重ければ、補償があっても認められない場合もあります。

一方で、裁判をせずとも話し合いで双方が合意すれば正当事由は不要です。ただし、立ち退き料や代替住居の提供などの補償がなければ、入居者が納得することはほとんどありません。任意交渉で解決できない場合には、裁判による解決を検討することになります。

立ち退きを検討する際は、まず任意での交渉を試みると同時に、不動産や借地借家法に詳しい弁護士へ早めに相談することが重要です。正当事由の見込みや補償額の相場を把握しておくことで、無用なトラブルや裁判リスクを避けられます。

それでも解決が難しい場合には、最終手段として物件を売却し、資産を現金化する方法もあります。

本記事では、裁判で必要となる「正当事由」の考え方や具体例、判例の傾向、交渉から訴訟までの流れを解説します。立ち退きトラブルを防ぐための実務的なポイントを整理しました。

目次

裁判での立ち退き請求に必要な「正当事由」とは?

正当事由とは、オーナーが賃貸借契約を終了させて建物の明け渡しを求める際、法律と社会の常識から見て妥当と認められる理由のことです。これは民法や借地借家法に基づき、オーナーと入居者それぞれの事情を総合的に比較して判断されます。

(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
引用元 e-Gov「借地借家法 第二十八条」

具体的にはオーナーの使用目的や必要性、物件の老朽化や安全面の問題、入居者の生活への影響、そして提示された立ち退き料の額などが考慮されます。

ただし、オーナーに正当事由があれば必ず退去が認められるわけではありません。裁判所はオーナー・入居者双方の事由を踏まえて総合的に判断するため、オーナー側に一定の事情があっても「正当事由」として不十分と判断される場合もあります。

したがって、正当事由はあくまで退去請求の前提条件であり、必ずしもその主張が通る保証はない点に注意が必要です。では、実際にどのようなケースだと、裁判で正当事由として認められやすいのか見ていきましょう。

オーナーが物件を自己使用せざるを得ない事情がある

オーナーが自らの居住や事業のために物件を使用せざるを得ない事情がある場合、正当事由として認められることがあります。

例えば、老朽化ビルの一体再開発と立退料の提示により契約解除が認められた事例のように、オーナー側の使用必要性が具体的かつ合理的であり、入居者への補償措置が十分に講じられている場合、自己使用の必要性が正当事由として評価されやすくなります。

反対に、「計画が抽象的で裏づけに乏しい」「入居者の不利益による緩和の対応が不十分」と判断されると、正当事由として評価されない可能性もあります。

建物の老朽化により大規模修繕・建て替えが必要

築年数が古くなり、修繕・建て替えが必要なことも正当事由のひとつです。しかし、築年数が古いという事実だけでは正当事由として認められません。

実務(実際の現場でよく行われている対応や相場)では躯体の劣化や耐震不足、配管破損の反復など、具体的な事情の提示が求められます。結果としてこのまま居住を継続すると、倒壊の危険性や大規模な修繕が必須と見込まれるかどうかが、判断のポイントになります。

説得力を高めるためには、専門家による診断や客観資料の整備が前提になります。例えば、次のような裏づけがあると、安全性の観点から建て替えが必要と判断されやすくなるでしょう。

各書類の概要と入手方法
書類名 概要 主な依頼先 費用目安
劣化診断報告書 建物全体の劣化状況を専門家が調査・診断し、報告書にまとめたもの。耐震性や老朽化の根拠資料になる。 一級建築士事務所、建物調査会社、マンション管理会社経由で専門家へ 20〜100万円程度(規模・調査範囲による)
落下・漏水等の事故履歴や行政からの是正指導の記録 外壁タイル落下や漏水などの事故の履歴、またそれに対して行政(建築指導課等)が出した是正指導や命令の記録。 管理会社・管理組合(事故記録)、施工業者(修繕報告書)、自治体の建築指導課(是正指導記録) ・管理会社への確認は無料〜実費程度
・行政での閲覧・写し取得はコピー代程度
工事計画書 建替えや修繕工事を行う際に、工事の内容・工程・安全性や技術的妥当性をまとめた書類。建築確認申請や立退き交渉時の根拠資料にも用いられる。 設計事務所や施工会社。必要に応じて行政へ提出 数十万円〜(工事規模による)

老朽化を理由に交渉を進める際は、危険箇所や再発状況、代替案の検討過程を具体的に可視化することで説得力が増します。併せて立ち退き料や仮住まい支援などの不利益緩和策を明確に提示しておくことで、入居者の理解を得やすくなります。
参照:賃貸アパート建て替え時に必要な立ち退き料はいくら?相場と交渉の流れを解説 | イエコン

再開発事業計画により建物を取り壊す必要がある

都市再開発法に基づく市街地再開発事業が決定された場合、該当区域内の建物は取り壊しの対象となるため、立ち退きの正当事由に当たります。

市街地再開発事業として事業計画が決定・告示されると、明け渡しの時期や進め方が公的な手続きとして提示されます。そのため、示されたスケジュールに沿って退去対応を進める必要があります。

ただし、再開発事業の決定に対しては、公告・縦覧期間に意見を述べる機会や、事業計画認可に対する不服申立ての制度も設けられています。そのため、入居者が取り壊しを望まない場合は、法に定められた手続を通じて異議を申し立てる必要があります。

入居者が賃貸契約に違反している

入居者による契約違反は、立ち退き請求の正当事由として認められる要因のひとつです。ただし、軽微な違反だと契約解除は認められにくく、信頼関係を破綻させるほどの重大な違反行為があった場合に限り、法的な効力を持つとされています。

契約解除の根拠となりやすい主な違反行為を見てみましょう。

契約違反の例 主な内容 解除の根拠
近隣住民への迷惑行為 深夜の騒音、共用部分への私物放置・不法投棄、危険物の持ち込み、トラブルの繰り返しなどが該当。
是正を求めても改善がない場合、契約違反として扱われます。
用法遵守義務(民法612条)
善管注意義務(民法400条)
債務不履行解除(民法541条・543条)
家賃の滞納 家賃は契約の中核義務。複数月の滞納や支払見込みの欠如がある場合、解除の対象になります。
督促の有無、分割交渉、保証会社の対応状況なども判断要素です。
債務不履行解除(民法541条・542条・543条)
用法違反 住居専用契約での無断事務所・民泊利用、ペット禁止違反、無断転貸などが該当。
悪質または周囲に影響が大きい場合、解除の正当性が強まります。
用法遵守義務(民法612条)
譲渡・転貸の制限(民法612条2項)
債務不履行解除(民法541条・543条)

契約違反を理由とする立ち退き請求では、違反事実を客観的に証明できる証拠の収集が重要です。騒音であれば録音記録や近隣住民の証言、家賃滞納であれば支払い記録などが必要となる場合があります。

また、契約解除には厳格な手続きが求められるため、法的な不備を避けるためにも弁護士などの専門家に相談することがおすすめです。

参照:家賃滞納者を強制退去させるには?条件や手順・費用について紹介 | イエコン

正当事由の判断に影響を与える5つの要素

これまで説明してきた正当事由は、該当する理由があれば必ず認められるというものではありません。裁判所では複数の要素を総合的に検討し、オーナーと入居者の利害バランスを慎重に判断したうえで、立ち退き請求の可否を決定します。

借地借家法第28条では、正当事由の判断において考慮すべき要素が定められており、これらの要素がどの程度該当するかによって最終的な判断が左右されます。

以下では正当事由の判断に大きな影響を与える、主要な5つの要素について詳しく解説します。

1. 建物の使用を必要とするオーナーと入居者双方の事情

正当事由は一方の事情だけで結論づけられるものではなく、双方の必要性を並べて判断されます。代替手段や影響の程度といった要素を積み上げて、相対的に評価されるのが特徴です。

オーナー側の使用必要性が認められやすいケース

区分 具体的な事情 実務上の評価
オーナー側 親族との同居や介護のために居住が必要 事情の切実さがあれば考慮される
転勤から戻ってきて自宅として再利用したい 他に住居がなければ考慮対象となる
現在の住居が手狭で、広い住まいが必要 必要性の強さ次第で判断が分かれる
健康上の理由から住環境を変えたい 医師の診断等があれば判断材料となる
老朽化により建物の建て替えが必要 安全性に問題があれば認められやすい
建物の売却による資金確保を希望している やむを得ない事情があれば補足的に考慮

入居者側の使用必要性が重視されるケース

区分 具体的な事情 実務上の評価
入居者(居住) 長期間の居住実績がある 生活の基盤とされ強く保護される
高齢者・障がい者などで転居が困難 転居の負担が重いため配慮されやすい
子どもの学区など地域を離れづらい 教育環境への影響があれば考慮される
経済的に他の物件を確保できない 生活再建が困難な場合は重視される
入居者(事業用) その立地での営業が事業継続に不可欠 立地依存が強いと保護されやすい
移転により顧客関係に影響が出る 営業損失が大きい場合は考慮される
設備の移設コストが大きい 移転費用が高額なら判断に影響する
移転により廃業の可能性がある 営業継続が困難なら重く見られる

オーナー・入居者のいずれにとっても「建物の使用の必要性」は、正当事由の有無を判断するうえで重要な要素です。特に入居者側の生活や営業への影響が大きいと認められる場合、オーナーの事情だけでは正当事由として認められない可能性もあります。

オーナーが立ち退きを求める際は、自己使用の必要性が客観的に明確であり、ほかに代替手段がないことを具体的に立証することが求められます。

2. 建物の賃貸借に関する従前の経過

「従前の経過」とは、過去にどのような貸し借り(賃貸借契約)が行われてきたか、その経緯や状況の変化を指します。借地借家法第28条では、賃貸借契約の解約(立ち退きなど)が正当事由に当たるかどうかを判断する際「建物の賃貸借に関する従前の経過」も考慮すべきと定められています。

たとえば、借家人が長年問題ごとを起こさず住み続けていた場合、オーナーが一方的に「自分が使いたいから出て行ってほしい」と言っても、その主張が通りにくくなるでしょう。

逆に、長期滞納や近隣トラブルなどが続いていた場合は、オーナー側の主張が認められやすくなります。従前の経過を証明するには、以下のような情報を記録しておくことが有効です。

  • 家賃滞納の入金記録や督促状・内容証明郵便などの送付記録
  • 騒音・ゴミ出しなど近隣トラブルに関する、管理会社の報告書や近隣住民の陳述書
  • 契約書に反する使用状況の写真・動画・報告書
  • 過去の注意喚起や指導の記録(メール、書面、通知書など)

上記のような記録を残しておくことで、裁判や調停になった際に「従前の経過に問題があった」と認めてもらいやすくなります。

要するに「これまでの借り方・貸し方の状況」が、立ち退きの可否を左右する大事なポイントになる、ということです。

3. 建物の利用状況

入居者による賃貸物件の使い方も、正当事由の判断に影響する要素のひとつです。具体的には「契約で定めた用途や建物の種類に沿った利用か」「近隣や安全面への配慮がなされているか」といった観点が重要視されます。

確認対象の一例を以下にまとめました。

評価項目 内容
用途の適合 住居専用物件での実居住の有無、事務所・店舗契約での営業実態などが契約と合致しているか
用法違反の有無 無断転貸や名義貸し、民泊運用など規約で禁じられた行為(深夜の騒音・危険物の保管など)を行っていないか
利用の実態 日常的に使用されており、大きな原状変更や過度な設備負荷が生じていないか

契約に沿って利用しており、近隣トラブルや安全上の懸念が見当たらない場合、入居者側の使用継続の必要性が評価されます。一方で、継続的な用法違反や長期不在、物置化などが確認された場合、オーナー側の主張が配慮されやすくなります。

4. 建物の現況

正当事由の判断材料として「建物の状態」も該当します。単に築年数が経っているだけでは足りず、構造体の劣化や耐震性、設備の故障・漏水の頻度といった「具体的な安全性・維持可能性」が問われます。

具体的には、耐震診断で基準未達とされた場合や、外壁・配管の不具合が繰り返し発生している場合など、安全性に直結する事情が重視されます。

老朽化や耐震不足を理由とする場合は、以下のような客観資料が必要です。

書類名 入手先
耐震診断結果/耐震基準適合証明書 建築士事務所、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関など
劣化診断報告書 建築士や診断専門業者(マンション管理組合支援団体など)
長期修繕計画・見積 管理組合、管理会社
事故・是正の記録(漏水・落下等) 管理会社、管理組合の議事録・点検報告書

なお、築年数に準ずる建ての基準は設けられていません。維持管理の実態や不具合の再発状況、修繕と建て替えの費用対効果などを総合し、建物の現況から退去の必要性がどこまで裏づけられるかがポイントです。

5. 財産上の給付

「財産上の給付」とは、立ち退きに際してオーナーが提示する金銭や代替物件を提供することです。正当事由の判断では明け渡しの条件として、提示された給付の有無と内容が考慮されます。

給付自体が結論を決めるわけではありませんが、「入居者の不利益をどこまで緩和できるか」という観点が評価に影響を与えます。

給付の代表例を以下にまとめました。

  • 引越し費用や新居の初期費用を含む立ち退き料
  • 代替物件の提供・斡旋
  • 一定期間の家賃免除
  • 原状回復費用の免除

事業用物件ではさらに、内装の移設費や休業に伴う損失への補填(営業補償)といった項目が検討されます。いずれも実費や見積書で裏づけられる具体性、支払時期・方法の明確さ、個別事情への配慮が重視されます。

合意形成を進めるうえでは、内訳を示した金額根拠や支払のタイミング、再入居の取り扱い等を文書で明らかにし、必要に応じて弁護士など専門家の助言を得ることが基本です。

立ち退き料を提示することで正当事由を補完できる可能性もある

借地借家法ではオーナーが解約を申し入れる場合、双方の使用必要性や契約経過、建物の状態などを総合的に判断し、正当事由があると認められる必要があります。その際、立ち退き料の提示が正当事由を補う要素となることがあります。

立ち退き料を提示することにより、正当事由が認められた事例を一つ紹介します。

これは築50年以上経過し耐震性に問題がある、アパートの立ち退きが争われた事例です。

オーナーは老朽化や入居者減による収益悪化を理由に立ち退きを求めましたが、入居者は30年以上居住し高齢であることから、双方の必要性を比較すると直ちに正当事由があるとはいえませんでした。

しかし、オーナーが家賃6か月分(27万円)の立退料を支払うことで入居者の不利益を補い、結果として立ち退き請求が認められました。

オーナー側の必要性だけでは正当事由が認められにくい場合でも、金銭的補償を加えることで総合判断が変わる可能性があります。立退き料は交渉や訴訟において有効な補完手段のひとつです。

立ち退き料の相場と必要性

立ち退き料の支払いは義務付けられていませんが、借地借家法において正当事由が十分でない場合、立ち退き料という財産上の給付が正当事由を補完するケースがよくあります。

立ち退き料の相場は、先ほどの事例で家賃6ヶ月分の立ち退き料で正当事由が認められたように、家賃の約6〜12ヶ月分と言われています。

立ち退き料の交渉が決裂すると裁判に移行することもある

もし当事者間で話がまとまらない場合、裁判に移行することも可能ですが、実際に立ち退き交渉から裁判に発展するのは3%程度と言われています。つまり、ほとんどのケースは交渉の段階で合意に至るか、交渉が打ち切られて裁判にすらならずに終了しているのが実情です。

なお、裁判所統計によると、地裁の民事第一審(訴訟手続による民事事件の第一回目の裁判)全体では事件の終局区分は以下のように推移しています。

  • 判決:45〜47%
  • 和解:33〜36%
  • 取下げ:18%前後

この結果は立ち退きに限らず民事事件全般を対象としたものですが、裁判に至った場合でも判決に至るとは限らず、和解や取下げで終結する事例も多いことがわかります。

正当事由が認められた判例

正当事由があるように見えても、状況や証拠の不足によって立ち退き要求が認められない場合があります。

裁判所が「正当事由あり」と判断した立ち退き要求の判例を取り上げ、その要因を解説します。

老朽化ビルの一体再開発と立退料の提示により契約解除が認められた事例

項目 内容
退去を求めた理由 築約40年を経過した都心ビルを近接する自己所有ビルと一体再開発し、大型商業施設を建築するため
立ち退き料の有無 有(各区画ごとに1,580万円~5,215万円、休業中店舗は180万円)
正当事由が認められた要因 建物の老朽化に加え、具体的かつ合理性のある再開発計画と、営業損失や移転費用を補う適正な立退料の提示

オーナーは、昭和46年竣工の老朽化ビルを近接する自己所有ビルと一体的に再開発し、大型商業施設を建設する目的で取得しました。

95%の区画は退去に応じたものの、一部テナントが残ったため、オーナーはテナントの借主に対して老朽化・再開発・自己使用の必要性を理由に契約解除を申し入れ、加えて立退料の支払いを提示しました。

裁判所は、都市再生緊急整備地域に指定されていることや、空室率95%という状況を踏まえ、再開発計画の具体性と必要性を認めました。その上で、借主が営業を継続する必要性はあるものの、十分な金銭補償があれば移転可能と判断し、各区画に応じた立退料を条件に契約解除を認容しました。

本件は単なる老朽化にとどまらず、都市計画や開発の合理性といった事情が「正当事由」として重視されました。さらに、営業損失や移転費用を加味した立退料が補完要素となった事例です。

過度な迷惑行為により賃貸借契約解除と明渡しが認められた事例

項目 内容
退去を求めた理由 「夜間・早朝に他室を訪問」「ドア叩いたり勝手に開けたりする」という迷惑行為を繰り返し、ほかの入居者が退去
立ち退き料の有無
正当事由が認められた要因 契約書・管理規則に明記された禁止行為に該当し、再三の注意にも従わず信頼関係が著しく損なわれたため

判例概要(東京地裁 令和3年6月30日判決)
賃貸人Xは、入居者Yが夜間や早朝にほかの部屋を訪問し、インターホンを鳴らす、ドアを叩く、勝手に開けるなどの行為を繰り返したため、本件賃貸借契約を解除し明渡しを求めました。

ほかの入居者は迷惑行為を理由に退去し、再三の注意にも従わなかったことから、契約書の解除事由に該当すると判断され、解除と明渡請求が認められました。

本件は契約条項で明確に禁止された迷惑行為が繰り返され、ほかの入居者が退去したことや事業損害につながった点が重視されました。賃貸借契約における「信頼関係の破壊」に該当し、迷惑行為の証拠を記録していたことが、契約解除の決め手となった事例です。

立退き料の提示によって老朽化アパートの契約解除が認められた事例

項目 内容
退去を求めた理由 築45年の老朽化による倒壊リスクや耐震補強費用の負担、売却の必要性
立ち退き料の有無 有(100万円)
正当事由が認められた要因 建物の老朽化と経済的負担に加え、立退料による入居者の不利益を補完

入居者は契約更新を拒んだことで期間の定めのない契約となっていましたが、オーナーは建物の状態と自身の生活資金確保の必要性を理由に解約を申し入れ、立退料として100万円の支払いを提示しました。入居者はこれに反対しましたが、裁判所は立退料を正当事由の補完と認め、明渡しを認容しました。

本件では建物の構造的老朽化に加え、高額な補修費用と今後の維持が困難だということが認められました。ただし、入居者にも居住継続の必要性があるとされ、オーナー側の正当事由だけでは足りないと判断されました。

そこで、オーナーが提示した立退料100万円により入居者の不利益が補われるとして、契約解除の正当事由が補完されました。老朽化物件での契約終了をめぐる典型的な補完事例のひとつです。

旧耐震建物の建替えに伴い、立退料の支払いで正当事由が認められた事例

項目 内容
退去を求めた理由 旧耐震基準建物の倒壊リスク、一体建築ビルの建替え計画、条例による耐震化要請
立ち退き料の有無 有(約3,820万円)
正当事由が認められた要因 耐震性の欠如による建替えの必要性、ほかのテナントの退去実績、立退料の支払い

特定緊急輸送道路沿いにある旧耐震建物に入居していたテナントが、オーナーの建替え計画に反対し明渡しを拒否した事案です。

建物は昭和49〜56年にかけて建設され、耐震診断では倒壊のリスクが高いとされました。オーナーは耐震化義務と建て替えの必要性を主張し、立退料として約3,820万円を提示しました。裁判所は建物の構造的危険性や他テナントの退去状況などを総合考慮し、正当事由を認めました。

本件では、緊急輸送道路沿いにある旧耐震ビルの建替え計画において、費用対効果の観点から耐震補強が現実的でないと判断され、建替えの必要性が認められました。

入居者が営業上の必要性を主張したものの、移転できる可能性や相応の立退料の支払いが補完要素となり、正当事由が認められました。都市部における耐震化義務と立退き交渉のバランスを示す事例です。

正当事由が認められなかった判例

前項目では正当事由が認められた判例を通して、その判断背景を整理しました。本項目ではその対照として、裁判所が「正当事由なし」と判断した事例を取り上げ、どのような要因や事情が評価されなかったかについて解説します。

老朽化を理由とする戸建住宅の解約申入れが認められなかった事例

項目 内容
退去を求めた理由 築57年の老朽化と建替えの必要性
立ち退き料の有無 有(840万円)
正当事由が認められなかった要因 建替えの緊急性が乏しく入居者に高い居住必要性があり、立退料を検討する以前に正当事由が否定された

築57年の木造平屋住宅について、オーナーは老朽化と耐震性の問題を理由に賃貸借契約の終了と明渡しを求め、立退料として840万円の支払いを提示しました。

しかし裁判所は、入居者は高齢で重度の肺疾患を抱えており居住継続の必要性が極めて高いこと、建替えの緊急性が認められないことを理由に正当事由を否定し、請求を棄却しました。

本件は建物の老朽化や高額な立退料の提示があっても、入居者側の健康状態や生活上の不利益が強く考慮され、正当事由が補完されない典型的な事例です。

オーナーが自己使用を理由に明渡しを求めたが認められなかった事例

項目 内容
退去を求めた理由 来日時の住居として使用するため
立ち退き料の有無
正当事由が認められなかった要因 入居者の使用必要性が上回っており、老朽化等の事情もなく立退料の提示もなかったため

オーナーは月1〜2回の来日を想定した使用必要性を主張したが、入居者は実際に居住しており、更新料の支払い実績などもありました。裁判所は建物の現況や使用状況を踏まえ、オーナーの必要性が入居者を上回るとはいえず、正当事由を否定しました。

この判例では、外国籍のオーナーによる「自己使用の必要性」が争点となりましたが、入居者が居住を継続しており、建物に老朽化などの退去を要する事情も見られなかったことが大きく影響しました。加えて、オーナーからの立退料の提示もなく、正当事由の補完要素も欠けていました。

契約更新を拒絶するには、単なる使用目的の主張だけでは不十分であることがわかる事例です。

敷金処理と家賃滞納をめぐる事例

項目 内容
退去を求めた理由 8か月分の家賃滞納(旧賃貸人から承継)
立ち退き料の有無
正当事由が認められなかった要因 敷金の充当をめぐる誤解と経緯、支払能力の存在、信頼関係の破壊にあたらないと判断されたため

旧賃貸人の死亡・破産を経て新たに建物を購入し賃貸人となった原告Xが、8か月分の賃料滞納を理由に契約を解除し、明渡しと滞納賃料の支払いを求めた事例です。

賃借人Yは賃料の一部を支払い済みであり、敷金の充当処理について旧賃貸人との間に誤解があったと主張しました。裁判所は信頼関係の破壊は認められないとして、Xの解除・明け渡し請求をすべて棄却しました。

この判例は、敷金の扱いや賃料の承継をめぐる誤解がある中でも、賃借人に支払能力があり弁済の意志も示されていたことから「信頼関係の破壊」とまでは言えないと判断された事例です。

旧賃貸人との交代や破産といった特殊な背景があり、賃借人が支払いを一時停止した事情にも合理性が認められました。入居者側の一方的な滞納ではなく、法的整理や承継に関わる事情を配慮して判断された点が特徴です。

立ち退きを求めるための流れ

立ち退きを求める場合は、法律で定められた手順や期間を守りながら進める必要があります。自己判断で進めてしまうと通知が無効となったり、後に法的トラブルへ発展するおそれがあります。

立ち退きを求めるための具体的な流れは以下のとおりです。

手順 概要 ポイント
①通知 契約満了の1年前〜6ヶ月前までに書面で更新拒絶や解約の意思を伝える 期限を過ぎると無効になる可能性あり
②交渉 退去日や立ち退き料など条件を話し合い、合意を目指す 負担軽減策の提案で合意が進みやすい
③退去 合意内容を契約書にまとめ、期日までに明け渡しを完了する 不履行の場合は法的手段を検討

この流れを守ることで、オーナー・入居者双方が納得できる形で立ち退きを進めやすくなります。それぞれのステップについて具体的な進め方や注意点を見ていきましょう。

①入居者へ通知(契約期間満了の1年前〜6ヶ月前)

立ち退きを求めるには「契約が切れる日の1年前から6か月前の間」に入居者へ通知する必要があります。

(建物賃貸借契約の更新等)
第二十六条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
引用元 e-Gov「借地借家法 第二十六条」

通知期間を過ぎると、更新拒絶が無効と扱われるおそれがあります。通知を受けた入居者はその期間内に新居探しや資金手当てを進めることになるため、できるだけ早い段階で書面を届けることがトラブル防止につながります。

また、通知書には更新を行わない理由と退去期限を明示し、説明の機会を設けることが望ましいです。

②入居者と任意交渉をおこない、合意を目指す

通知を済ませたあとは、入居者と具体的な条件を詰める段階に入ります。話し合いの柱になるのは以下の3点です。

  • 立ち退きを求める理由の説明
  • 明け渡し日や引越しスケジュールの調整
  • 立ち退き料など財産上の給付の内容

特に立ち退き料は、入居者側の負担をどこまで補えるかが正当事由の補完要素にもなります。金額だけでなく支払時期や方法、追加費用の有無まで具体化して提案すると交渉が進みやすくなります。

立ち退き料の水準は、過去の判例や地域の相場だけで決まるわけではありません。転居費や新居の初期費用、営業補償(事業用の場合)など、個別事情を積み上げて算出し、入居者が根拠を理解できる形で提示することが求められます。

交渉は当事者同士で進めるケースもあれば、弁護士や管理会社を介在させて第三者的に進めるケースもあります。いずれの場合も、議事録や覚書などで経緯を残し、合意事項を文書化しておくことがトラブル防止の観点でもおすすめです。

③合意した期日までに退去してもらう

立ち退き条件や期日について合意が整ったら、双方が署名・押印した合意契約書を作成します。この契約書には退去日や立ち退き料の金額と支払時期、原状回復の有無、鍵の返却方法などを記載しましょう。書面化することで、後のトラブルを事前に防止できます。

引渡し時には立会いを行い、室内や設備の状態を確認し、鍵の返却と併せて退去を完了させます。もし交渉を重ねても合意に至らない場合や、合意後に入居者が期日までに退去しない場合には、法的手段を検討することになります。

立ち退き交渉をスムーズに進めるポイント

立ち退き交渉を成功させるためのポイントは3つあります。

ポイント 概要 効果
入居者の事情を理解し、負担軽減策を提案する 退去時期の調整、費用負担、新居紹介などで入居者の不安を解消 信頼関係を保ち、交渉が前向きに進みやすくなる
適切な立ち退き料を提示する 相場や個別事情を踏まえた金額を根拠とともに提示 正当事由を補完し、裁判になった場合も有利に働く
交渉内容を記録に残す 書面や録音で条件や経緯を明確化 「言った・言わない」の争いを防ぎ、証拠として活用できる

上記のポイントを意識することで、入居者にとって納得感のある条件提示が可能になり、交渉の停滞や対立を防ぎやすくなります。
それぞれのポイントについて具体的な進め方や注意点を詳しく見ていきましょう。

相手に事情を聴き、負担を軽減できる点を探す

まずはオーナー側が立ち退きを求める理由を正直に伝えましょう。自己使用や老朽化による建て替えなど理由はさまざまですが、事実を隠すと信頼関係が損なわれ、話し合いが進みにくくなります。

そのうえで、入居者の事情や退去をためらう要因を丁寧に聴き取り、障害となっている点をひとつずつ解消していく姿勢が重要です。

たとえば、退去時期や引越し先の確保、移転費用の負担が不安要素になっている場合があります。このような場合、退去時期の柔軟な設定や立ち退き料を一部前払いするなどの工夫、代替物件のあっせんといった対応が効果的です。

事業用物件であれば、内装移設や営業再開までの支援策を提案することで、合意に近づけるケースもあります。交渉の前に譲歩できる範囲を整理しておくと、入居者の要望に応じて提案しやすくなります。具体例は以下のとおりです。

  • 退去時期を前後させる柔軟な調整
  • 建て替え後の優先入居の提案
  • 近隣の物件情報や契約条件の提示
  • 引越し費用や初期費用の負担

入居者への配慮を組み合わせることで負担感が軽減され、合意形成の可能性が高まります。また、法定の予告期間より早く通知を行い、十分な準備期間を確保することもスムーズな立ち退き交渉には欠かせません。

適切な立ち退き料を提示する

立ち退き料の設定は「入居者の不利益をどこまで補えるのか」「正当事由を補完する要素」という2つの観点が重要です。金額を決める際には、オーナー側の立ち退き理由の合理性や緊急性、入居者の生活・事業への影響の大きさ、転居先の確保に必要な費用などを総合的に踏まえる必要があります。

立ち退き料の相場は、家賃の約6〜12ヶ月分と言われています。この相場内で、正当事由をどの程度補う必要があるかによって増減するケースが多いです。

過去の判例や地域の相場は参考になりますが、最終的には個別の事情によって妥当とされる金額は変わります。引越し費用や新居の初期費用、事業用であれば営業補償など、必要な補填項目を具体的に洗い出し、根拠のある数字として提示することが望ましいです。

適切な範囲で理由と内訳を明確に示し、双方が納得できる条件として提示することが円滑な合意形成につながります。建物の明渡請求訴訟を起こすことになった場合でも、この提示額や根拠が判断材料のひとつとされるため、準備段階から慎重に検討しましょう。

交渉内容を書面や録音に残しておく

立ち退きに関する話し合いはその場の口約束だけにとどめず、必ず記録として残すことが重要です。書面や録音があれば、後になって「言った・言わない」の争いを防ぎ、合意内容を明確に示す証拠にもなります。

記録は最終合意だけでなく、交渉の途中段階から残しておくことが有効です。たとえば、一度は立ち退き料や条件について合意しかけたものの、後になって金額や期限を変更されるような事態も想定されます。

このような食い違いを避けるためにも、交渉時に確認した内容をメモや文書で残しておきましょう。

立ち退きを拒否された場合の法的な対処

入居者が立ち退きに応じず交渉が行き詰まった場合、オーナーは法的手段を検討することになります。立ち退き拒否から強制執行までの大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 建物の明渡請求訴訟を提起
  2. 裁判手続き
  3. 判決に従わない場合は強制執行を実施

また、裁判に進む前に調停で話し合いが行われることもあります。しかし、最終的に判決が出ても自発的に退去しない場合は、裁判所を通じて強制的に明け渡しが行われます。
参照:立ち退きを拒否されたら?立ち退きトラブル解決のポイント | イエコン

入居者に対する建物明渡請求訴訟を提起する

話し合いが決裂して任意での退去が見込めない場合、オーナーは建物の明渡請求訴訟を起こすことになります。訴訟で立ち退きが認められるには、借地借家法で求められる「正当事由」が存在することに加え、その不足を補うだけの適切な立退料の提示が必要です。

裁判では立ち退きの必要性や、補償内容について双方の主張や証拠が審理されます。多くの場合、裁判所は和解案を提示し、合意が成立すれば判決前に解決しますが、合意できなければ判決が下されます。

正当事由が認められれば「立退料の支払いと引き換えに明け渡す」という形で命じられ、認められなければオーナーの請求は退けられます。

オーナーが勝訴したにも関わらず立ち退かない場合、強制退去を実施

判決で立ち退きが命じられても、入居者が自主的に退去しない場合は「裁判所へ強制執行の申し立て」を行います。この手続きを経ずにオーナーが自ら入居者を排除することは「自力救済」となり、法律違反として逆に損害賠償を請求されるおそれがあります。

強制執行を行うには以下の資料を揃え、物件を管轄する地方裁判所に提出しましょう。

必要書類 入手場所
申立書 裁判所のホームページでダウンロード
送達証明書 裁判所のホームページでダウンロード
判決の正本 明け渡し請求の判決確定時
資格証明書(大家・賃借人のどちらかが法人の場合) 登記所
物件の所在地が分かる書類 物件の場所を表わした地図

参照:家賃滞納者を強制退去させるには?条件や手順・費用について紹介 | イエコン
強制執行には、予納金や収入印紙代などの費用を事前に納める必要があります。

費用項目 内容 目安金額
予納金 執行官の日当・手続費用など 約6万円前後(余りは返金)
収入印紙・切手 申立手数料・書類送付費用 数千円〜1万円程度

申立てが受理されると、裁判所の執行官が入居者に対し「○日までに退去してください」という催告書を送付します。

期限を過ぎても退去がなければ、執行官が立ち会って強制退去を実施し、家財の搬出・明け渡しを実施するという流れです。

また、入居者が激しく抵抗するなど安全上の問題がある場合は、警察が「執行妨害を防ぐため」に立ち会うことも可能です。警察は直接的に家財を運び出すわけではなく、あくまで治安維持・トラブル防止のための補助的な役割を担います。

強制退去にかかる費用

強制退去を実施する際、家財の運搬・処分などさまざまな費用が発生します。代表的な項目と目安は以下のとおりです。

費用項目 内容 目安金額
鍵の開錠費用 解錠技術者による錠前開錠 2万円〜
家財の運搬費用 残置物の搬出・搬送(業者手配) 10万円〜(物量次第で100万円超も)
廃棄処分費用 不要物の処分・処理 10万円前後〜
鍵交換費用 明渡し後の錠前交換 数万円前後

強制退去にかかる費用は、物件の規模や残置物の量によって大きく変動します。また、民事執行法第42条に基づき、原則として強制退去にかかった費用は入居者に請求できます。

(執行費用の負担)
第四十二条 強制執行の費用で必要なもの(以下「執行費用」という。)は、債務者の負担とする。

ただし、滞納者に支払い能力がない場合や連絡が取れない場合は回収が難しく、実務上はオーナーが負担を余儀なくされることも少なくありません。そのため、可能であれば任意交渉の段階で円満な合意形成を図り、強制執行に至らない形での解決を目指すことが望ましいです。
引用元 e-Gov「民事執行法」

ただし、滞納者に支払い能力がない場合や連絡が取れない場合は回収が難しく、実務上はオーナーが負担を余儀なくされることも少なくありません。そのため、可能であれば任意交渉の段階で円満な合意形成を図り、強制執行に至らない形での解決を目指すことが望ましいです。

解決が難しい場合は不動産全体の売却も選択肢のひとつ

立ち退き交渉が長期化したり、老朽化や低収益化で物件の維持が難しい場合は「不動産全体の売却」という方法も手段のひとつです。特に、賃借人との交渉や権利調整に時間やコストがかかり続けると、所有者にとっては大きな負担となります。

弊社は共有名義や底地・借地、再建築不可物件、事故物件、老朽化した収益物件など、一般の不動産市場では売却が難しい「訳あり不動産」の買取りを得意としています。立ち退き交渉が進まない場合でも、オーナー様に代わって権利者への配慮を欠かさず、誠実に対応いたします。

全国対応の無料査定はもちろん、弁護士や税理士など士業との連携により、相続や税務のご相談もワンストップで可能です。

「他社で断られた」「解体費用が用意できない」「すぐに現金化したい」といったお悩みも、まずはお気軽にご相談ください。

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まとめ

立ち退きを請求するには、借地借家法で定められた「正当事由」が必要です。正当事由は自己使用や老朽化、契約違反、再開発計画などの事情に基づきます。いずれもオーナーだけの都合では認められにくく、入居者の事情や補償内容を含めて総合的に判断されます。

補償として提示される立ち退き料は、引越費用や新居の初期費用、事業用の場合は営業補償などが含まれ、金額はケースによって異なるのが特徴です。老朽化や耐震不足などの理由があっても、入居者の生活基盤や健康状態によっては立ち退きが否定されることもあります。

交渉を進める際は少なくとも契約満了の半年前までに通知し、退去時期や補償の詳細を具体的に提示することが重要です。立ち退き料の支払いや仮住まいの手配など、不利益を緩和する提案を行うことで合意に近づける可能性が高まります。

それでも合意に至らない場合は、調停や裁判に発展することもあります。法的手続きは時間と労力を要するため、早めに不動産問題に詳しい弁護士や専門業者へ相談し、適切な戦略を立てることが円滑な解決への近道です。

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