共有持分の遺産分割協議書の書き方!状況別の記載例から失敗しない対策まで徹底解説

共有持分の遺産分割協議書について、「書き方がわからない」「相続登記の申請が通るのか不安」と感じている方も多いのではないでしょうか。
遺産分割協議書とは、相続人全員で遺産の分け方について話し合い、その内容を正式に取りまとめた書面のことです。
単独で不動産を相続する場合と異なり、共有持分については「誰がどの不動産を取得するか」だけでなく「不動産の持分をどのような割合で取得するのか」まで明確にする必要があります。
「誰がどの持分を取得するのか」が分かるよう、持分割合まではっきりと記載することが重要です。
共有持分における遺産分割協議書の具体的な作成ポイントを、以下の表にまとめました。
共有持分の記載でとくに注意したいのは、「不動産全体に対する持分」と「被相続人が保有していた持分」を混同してしまうことです。
例えば、被相続人が「不動産全体の2分の1」の持分を有しており、その持分の半分を相続人Aが取得する場合、Aが今回の相続で取得する持分は不動産全体の4分の1です。遺産分割協議書では、「被相続人が有していた持分2分の1のうち、その2分の1を取得する」と記載したり、「不動産全体に対する持分4分の1を取得する」と記載したりする方法が考えられます。
もし共有持分の遺産分割協議書の書き方を誤ってしまうと、法務局から補正を求められ、その後の相続登記(名義変更)の手続きまで滞ってしまいます。遺産分割協議書の基本と、持分ならではの記載時の注意点を事前に押さえておき、不備のない共有持分の遺産分割協議書を作成できるようにしてください。
なお、遺産分割協議の手続きの煩雑さや、親族間で協議がまとまらないといった事情から、相続によって取得した共有持分を売却・現金化したいと考える方もいます。弊社では、共有持分の査定や買取も行っておりますので、「相続後の共有持分を手放したい」「このまま保有するべきか迷っている」といった場合もお気軽にご相談ください。
本記事では、共有持分の相続における遺産分割協議書の基本的な書き方、状況別の記載例、よくある失敗例、作成手順を詳しく解説します。実務でつまずきやすいポイントも紹介しているので、これから手続きを進める方はぜひ参考にしてください。
遺産分割協議書は遺産の分割方法などの合意内容をまとめた書類のこと
遺産分割協議書とは、相続人全員で合意した遺産の分け方について、正式な書面としてまとめた書類のことです。単なる話し合いの記録ではなく、遺産分割協議の内容に基づいて相続登記などの手続きを進める際に、合意内容を証明する役割を担います。
引用元: 法務局|記載例
相続人全員で、遺産をどのように分けるのかを話し合う手続きです。相続人全員の合意が得られれば、法定相続分(民法で定められた遺産分割の割合)や、遺言書の内容ではなく、協議した内容に沿った遺産分割が可能です。ただし、遺言執行者や受遺者がいる場合や、遺言書で遺産分割が禁止されている場合などは、別途対応が必要です。
遺言書がなく、複数の相続人が遺産の分け方を話し合って決める場合には、相続人全員で遺産分割協議を行います。
遺産分割協議は口頭でも成立し得ますが、その合意内容に基づいて相続登記をする場合には、遺産分割協議書などの書面で内容を証明する必要があります。
そして遺産分割協議によって不動産の取得者を決める場合、被相続人が所有していた共有持分を引き継ぐケースや、同じ不動産を複数の相続人で共有するケースでは、取得する持分を協議書に明記しなければなりません。
例えば、以下のケースだと遺産分割協議書に共有持分について記載することがあります。
- 両親が実家を共有しており、母親が亡くなった際に母親の共有持分を相続することになった
- 父親が単独所有していた土地を、兄弟3人がそれぞれ持分を取得して共有することになった
一方で、以下に該当する場合、遺産分割協議書に共有持分の記載が不要になる、または遺産分割協議書の作成自体が不要になる可能性があります。
- 遺言書に従う場合
- 遺産分割協議を行わず、法定相続分に従う場合
- 遺産の中に不動産が含まれていない場合
- 相続人が1人しかいない場合
- 被相続人が単独所有していた不動産を、遺産分割協議によって特定の相続人が単独で取得する場合
実務上、不動産が絡む遺産分割協議において、共有持分について記載するケースは珍しくありません。不動産について遺産分割協議を行う場合、特定の相続人に持分をまとめて取得させたり、今後の利用予定を踏まえて相続人ごとの取得割合を調整したりするケースが多く見られるためです。
遺産分割協議書の作成が必要になる際には、本記事で紹介する共有持分部分についての書き方が役に立つでしょう。
■遺産分割協議書関係の実務は専門家にサポートを依頼できる
遺産分割協議書は、遺産分割や相続登記といった手続きにかかわる重要な書類です。不備があれば法務局に受理してもらえなかったり、再協議が必要になったりなどのケースも実際に存在します。
自分たちだけで作成するのが不安な場合は、弁護士や司法書士などの専門家に作成の代理やその他サポートを依頼するのがよいでしょう。
他の相続人との交渉も任せたい場合は弁護士、協議書の作成から相続登記まで依頼したい場合は司法書士など、必要な手続きに応じて依頼先を選んでください。
弁護士や司法書士に遺産分割協議書の作成を依頼するメリットは、「共有持分の遺産分割協議書の作成を士業に依頼するメリット」で詳しく解説します。
共有持分の遺産分割協議書の基本的な書き方
遺産分割協議書には、法律で決まった所定の書式や様式はありません。遺産分割協議書には、法律で決まった所定の書式や様式はありません。また、記載方法は手書きとパソコンのどちらでも大丈夫です。
ただし、対象となる財産や取得者、取得する持分などが不明確だと、合意内容をめぐって争いが生じたり、相続登記の申請で補正を求められたりする可能性があります。
手続きに必要な情報は、被相続人や相続財産を特定できる情報、相続人全員の氏名・住所、実印による押印などです。共有持分を相続する場合は、「誰が」「どの持分を」「どの範囲で取得するのか」も正確に記載する必要があります。
まずは、共有持分相続における遺産分割協議書の記載例を紹介します。

※上記はあくまでもサンプルであり、実際の遺産分割協議書は不動産の取得内容や相続人の状況など個別の事情に応じて内容を調整する必要があります。
遺産分割協議書を作成する際には、被相続人や共有名義不動産などの必要な情報が確認できる、以下の書類を準備しておきましょう。
すべてを一律に用意する必要があるわけではないため、相続関係や財産の内容、利用する手続きに応じて確認してください。また、固定資産税関係の書類は、自治体によって名称や交付窓口が異なります。
以下では、上記の記載例と必要書類を基に、簡単な書き方の例を解説します。
被相続人の氏名・死亡日・最後の住所などを記載する
一番上部には、表題と被相続人に関する情報を記載します。「誰からの相続なのか」を明確にするためです。
被相続人の名前、生年月日、死亡日、本籍、最後の住所を記載します。
被相続人 : ○○○○(昭和○年○月○日生)
死亡日 : 令和○年○月○日
本籍 : ○○県○○市○○○○
最後の住所: ○○県○○市○○○○上記被相続人の遺産について、相続人全員で協議した結果、以下のとおり遺産分割を行う。
・被相続人の戸籍謄本・除籍謄本
・住民票の除票や戸籍の附票
記載する際は、被相続人と登記名義人が同一人物であること、誰の持分が今回の相続対象なのかを確認しましょう。同姓の親族が共有者になっている場合も、氏名や住所を照合し、他の共有者と取り違えないように注意してください。
登記上の住所が最後の住所と異なる場合は、戸籍の附票などで住所のつながりを辿っておきます。もし登記名義が祖父母など以前の所有者のままの場合は、過去の相続関係も整理する必要があります。
登記事項証明書を確認し不動産の表示を記載する
次に、「不動産の表示」です。「どの不動産を相続するのか」を明確にする情報です。
土地であれば所在・地番・地目・地積、建物であれば所在・家屋番号・種類・構造・床面積などを記載します。画像の第1条は土地の記載例なので、建物も分割の対象とする場合は、その表示を別途記載してください。
被相続人が下記不動産について有していた持分2分の1を、相続人A○○○○および相続人B○○○○が、次条に定める割合で取得する。
【不動産の表示】
1.所在 ○○市○○町○丁目
2.地番 ○番○
3.地目 宅地
4.地積 ○○㎡
・登記事項証明書(登記簿謄本)
・固定資産税の課税明細書
・名寄帳(非課税の私道など不動産の見落としを防ぐため)
普段使っている住所をそのまま書くのではなく、登記事項証明書の表題部を確認して、所在や地番などを正確に転記してください。
例えば、土地と建物は別の不動産なので、所有者や持分が同じとは限りません。「建物は全部被相続人名義でも、敷地の持分が2分の1」「前面の私道の持分8分の1のみ保有」など、所有関係が複雑になっている可能性もあります。
被相続人がどのような不動産を所有していたのかをしっかり調査したうえで、不動産の表示・所有者・持分・今回取得する人を照合することが大切です。マンションの場合は、専有部分の共有持分と敷地権の割合を混同しないよう、区分建物(マンションなどのこと)の登記内容に沿って確認します。
相続の対象となる被相続人の持分を明記する
対象となる不動産を特定したら、その不動産について被相続人が保有していた持分を記載します。今回の記載例では、「被相続人が相続不動産について、持分2分の1のみを所有していた場合」を想定しています。
前条の被相続人の持分2分の1について、各相続人は次のとおり取得する。
・登記事項証明書
不動産の共有持分割合は、登記がなされていれば、以下の例のように登記事項証明書の権利部の甲区に記載されています。
持分2分の1の記載例-1.png)
所有権に関する情報が記載された権利部の甲区を確認し、被相続人の氏名と持分を照合します。
持分の追加取得や一部の売却がある場合は、最新の登記事項証明書で、被相続人に関する取得・移転・更正などの記録を確認します。過去の1つの記載や最新の記載だけで判断せず、被相続人が最終的に保有していた持分を確認してください。
誰がどの持分を取得するのかを記載する
次に、持分を取得する相続人の氏名と、それぞれが取得する持分を記載します。「被相続人の持分に対する配分割合」と「不動産全体に対する取得持分」を区別し、どちらを示しているかが分かる表現にしましょう。
今回の記載例では、被相続人の持分2分の1を、相続人Aが3分の2、相続人Bが3分の1の割合で取得します。
被相続人が有していた持分2分の1のうち、その3分の2を取得する。
(今回の相続により取得する不動産全体に対する持分は3分の1)
2.相続人B○○○○
被相続人が有していた持分2分の1のうち、その3分の1を取得する。
(今回の相続により取得する不動産全体に対する持分は6分の1)
・登記事項証明書
この記載例では、被相続人の持分2分の1を、相続人Aと相続人Bに2対1の割合で配分しています。実務では、遺産分割協議をしたうえで、このような複雑な分け方をするケースはそこまで多くありません。
分け方に応じた合意事項を記載する
次に、代償金の支払いや売却代金の分配など、分け方に応じた合意事項を記載します。今回のケースは持分を分けて取得する基本例であるため、不動産以外の遺産については、相続人の間で別途協議したうえで分割方法を決めることとしています。
上記不動産以外の遺産については、相続人間で別途協議のうえ、その分割方法を定める。
・登記事項証明書
・不動産の査定書や売却費用の見積書、支払資金を確認できる書類など
分割方法や内容が具体的に決まっている場合は、その旨を明確に記載しましょう。例えば、売却して得た代金を分ける換価分割の場合、次のような事項を合意内容として記載します。
- 売却対象が被相続人の持分だけなのか、不動産全体なのか
- 誰が売却を進め、価格や条件の変更をどのように決めるのか
- 仲介手数料・測量費・残置物の処分費などを誰が負担するのか
- 売却代金からどの費用を差し引き、残額をどの割合で分けるのか
- 誰が代金を受領し、いつまでに各相続人へ分配するのか
共有持分が関わる遺産分割の場合、どのような分割方法を選ぶかによって、相続後の所有財産の状況やトラブルの有無が大きく変わります。相続人全員が納得できるよう、適切な分割方法が何かをしっかりと話し合ってください。
作成日・相続人の住所氏名・署名押印を確認する
最後に、日付と相続人全員の住所・氏名を記載し、署名・押印を整えます。相続登記に使用する協議書では、通常、相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付します。
相続人全員は、第1条から第3条までの内容に合意したことを確認する。以上のとおり協議が成立したので、本書2通を作成し、相続人全員が署名押印のうえ各自1通を保有する。
令和 年 月 日
【相続人A】
住所:○○県○○市○○町○丁目○番○
氏名:○○○○ 実印
【相続人B】
住所:○○県○○市○○町○丁目○番○
氏名:○○○○ 実印
・遺産分割協議で話し合った内容が分かる資料
・相続人を確定するための戸籍関係の書類
・相続人の印鑑証明書
・登記事項証明書
住所・氏名は印鑑証明書などと照合し、日付は協議が成立した日など、実際の経緯に沿って記載します。
不動産の持分を取得しない相続人も、遺産分割協議の当事者として合意を確認する必要があります。取得者だけで協議書を完成させないように注意してください。
遺産分割協議書で決めた不動産の取得者や持分に基づいて、相続登記を申請します。
相続後の居住・利用や不動産全体の売却を進める際には、取得した持分に加え、他の共有者との合意や既存の利用関係も確認する必要があります。そのため、遺産分割協議の段階で「この不動産を将来どうするのか」まで検討しておきましょう。
【状況別】共有持分の遺産分割協議書の記載例
共有持分の遺産分割協議書は、相続の状況によって記載方法が異なります。ここでは、相続方法や不動産の種類が異なる4つのケースについて、具体的な記載例を紹介します。
- 相続人全員で均等に共有持分を引き継ぐ場合の記載例
- 持分割合を調整して共有する場合の記載例
- 一部の相続人のみで共有する場合の記載例
- マンションの共有持分を相続する場合の記載例
相続人全員で均等に共有持分を引き継ぐ場合の記載例
今回の記載例では、配偶者と子ども1人の計2人で、被相続人が土地と建物それぞれに有していた共有持分を均等に引き継ぐケースを想定しています。
被相続人
氏名:○○○○
生年月日:昭和○年○月○日
死亡年月日:令和○年○月○日
本籍地:東京都○○区○○町○○番地
被相続人、○○○○の遺産について、相続人全員が協議し、下記の通り遺産分割を行うことに合意した。
1.相続人(配偶者)○○○○が取得する遺産
【預貯金】○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○
上記口座の相続開始日時点の残高および相続開始後に発生した利息その他の付随金の2分の1
【土地】
所在:○○市○○町○○丁目
地番:○番
地目:宅地
地積:○○.○㎡
取得内容:上記不動産について、被相続人の有していた持分2分の1のうち、その2分の1(※不動産全体に対する持分4分の1)を取得する
【建物】
所在:○○市○○町○○丁目○番地
家屋番号:○番
種類:居宅
構造:木造瓦葺3階建
床面積:1階○○.○○㎡ 2階○○.○○㎡ 3階○○.○○㎡
取得内容:上記不動産について、被相続人の有していた持分2分の1のうち、その2分の1(※不動産全体に対する持分4分の1)を取得する
2.相続人(子)○○○○が取得する遺産
【預貯金】○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○
上記口座の相続開始日時点の残高および相続開始後に発生した利息その他の付随金の2分の1
【土地】
所在:○○市○○町○○丁目
地番:○番
地目:宅地
地積:○○.○㎡
取得内容:上記不動産について、被相続人の有していた持分2分の1のうち、その2分の1(※不動産全体に対する持分4分の1)を取得する
【建物】
所在:○○市○○町○○丁目○番地
家屋番号:○番
種類:居宅
構造:木造瓦葺3階建
床面積:1階○○.○○㎡ 2階○○.○○㎡ 3階○○.○○㎡
取得内容:上記不動産について、被相続人の有していた持分2分の1のうち、その2分の1(※不動産全体に対する持分4分の1)を取得する
3.上記以外の被相続人にかかる遺産が新たに発見された場合、相続人○○○○が相続する
以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、本協議書を2通作成し、署名・押印のうえ、各1通ずつ保管する。
令和○年○月○日
住所:東京都○○区○○町○○番地
相続人氏名:○○○○(自署・実印による押印)
住所:東京都○○区○○町○○番地
相続人氏名:○○○○(自署・実印による押印)
※上記のひな形はあくまでも一例であるため、実際に作成する際は司法書士などの専門家に相談してください。
配偶者と子どものように被相続人の持分を2分の1ずつ取得する場合、一見シンプルな分割に思えますが、記載方法で重要なのは、「どの財産を」「どの割合で取得するのか」を明確にすることです。
今回の記載例では、「被相続人が有していた持分2分の1のうち、その2分の1を取得する」という形で、それぞれの相続人が取得する範囲を個別に記載しています。これにより、各相続人が今回の相続で取得する持分は、不動産全体の4分の1であることが明確になります。
一方で、対象となる財産や被相続人の持分を明示せずに「各自2分の1ずつ取得する」とだけ記載すると、取得範囲が不明確になり、登記申請時に補正を求められることがあります。今回の例のように、財産ごとに取得対象と割合を明確に記載しましょう。
持分割合を調整して共有する場合の記載例
今回の記載例では、配偶者と子ども1人の2人で相続し、持分割合を調整して共有するケースを想定しています。被相続人が有していた共有持分について、配偶者が3分の2、子どもが3分の1の割合で取得するなど、状況に応じて取得割合を変更するパターンです。
被相続人
氏名:○○○○
生年月日:昭和○年○月○日
死亡年月日:令和○年○月○日
本籍地:東京都○○区○○町○○番地
被相続人、○○○○の遺産について、相続人全員が協議し、下記の通り遺産分割を行うことに合意した。1.相続人(配偶者)○○○○が取得する遺産
【預貯金】○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○
上記口座の相続開始日時点の残高および相続開始後に発生した利息その他の付随金の3分の2
【土地】
所在:○○市○○町○○丁目
地番:○番
地目:宅地
地積:○○.○㎡
取得内容:上記不動産について、被相続人が有していた持分2分の1のうち、その3分の2(※不動産全体に対する持分3分の1)を取得する
【建物】
所在:○○市○○町○○丁目○番地
家屋番号:○番
種類:居宅
構造:木造瓦葺3階建
床面積:1階○○.○○㎡ 2階○○.○○㎡ 3階○○.○○㎡
取得内容:上記不動産について、被相続人が有していた持分2分の1のうち、その3分の2(※不動産全体に対する持分3分の1)を取得する
2.相続人(子)○○○○が取得する遺産
【預貯金】○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○
上記口座の相続開始日時点の残高および相続開始後に発生した利息その他の付随金の3分の1
【土地】
所在:○○市○○町○○丁目
地番:○番
地目:宅地
地積:○○.○㎡
取得内容:上記不動産について、被相続人が有していた持分2分の1のうち、その3分の1(※不動産全体に対する持分6分の1)を取得する
【建物】
所在:○○市○○町○○丁目○番地
家屋番号:○番
種類:居宅
構造:木造瓦葺3階建
床面積:1階○○.○○㎡ 2階○○.○○㎡ 3階○○.○○㎡
取得内容:上記不動産について、被相続人が有していた持分2分の1のうち、その3分の1(※不動産全体に対する持分6分の1)を取得する
以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、本協議書を2通作成し、署名・押印のうえ、各1通ずつ保管する。
令和○年○月○日
住所:東京都○○区○○町○○番地
相続人氏名:○○○○(自署・実印による押印)
住所:東京都○○区○○町○○番地
相続人氏名:○○○○(自署・実印による押印)
※上記のひな形はあくまでも一例であるため、実際に作成する際は司法書士などの専門家に相談してください。
持分割合を調整するケースでは、それぞれの取得割合を計算したうえで記載するため、割合の取り違えに注意が必要です。重要なのは、「誰が」「どの割合を取得するのか」を正確に書き分けることです。
今回の記載例のように「3分の2」と「3分の1」で分ける場合は、それぞれの相続人に対応する割合を取り違えないように注意が必要です。記載内容を誤ると、登記申請時に補正を求められたり、内容の修正が必要になったりして、手続きが煩雑になることがあります。
また、持分の合計についても確認が必要です。ここで確認すべきなのは、不動産全体ではなく、被相続人が有していた持分をすべて相続人に配分できているかという点です。
たとえば、被相続人の持分を「3分の2、3分の1」で分ける場合は、被相続人の持分全体を1として、配分割合の合計が1になるかを確認します。ここで割合を誤ると、遺産分割協議書の内容に不整合が生じ、修正や再作成が必要になることがあります。
記載ミスの内容によっては、遺産分割協議書の修正や再作成に加え、相続人全員から改めて署名・実印による押印を受ける必要があり、手間も時間もかかります。持分割合を調整する場合は、記載内容と計算の両方を確認したうえで作成することが大切です。
一部の相続人のみで共有する場合の記載例
今回の記載例では、配偶者と子ども2人の計3人が相続人となり、被相続人が土地・建物それぞれに有していた持分2分の1を子ども2人が半分ずつ相続し、配偶者はその持分を取得しないケースを想定しています。
たとえば、将来的な二次相続や、その後の不動産の権利関係などを考慮し、相続人全員の合意によって、被相続人の不動産持分を子どもだけで取得するパターンが考えられます。ただし、誰が取得するのが適切かは、他の相続財産や税金、居住状況によって変わるため、実際には税理士や司法書士、弁護士などの専門家に確認しながら判断することが大切です。
被相続人
氏名:○○○○
生年月日:昭和○年○月○日
死亡年月日:令和○年○月○日
本籍地:東京都○○区○○町○○番地被相続人、○○○○の遺産について、相続人全員が協議し、下記の通り遺産分割を行うことに合意した。1.相続人(配偶者)○○○○が取得する遺産
【預貯金】○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○ 全額
2.相続人(子)○○○○が取得する遺産
【土地】
所在:○○市○○町○○丁目
地番:○番
地目:宅地
地積:○○.○㎡
取得内容:上記不動産について、被相続人の有していた持分2分の1のうち、その2分の1(※不動産全体に対する持分4分の1)を取得する
【建物】
所在:○○市○○町○○丁目○番地
家屋番号:○番
種類:居宅
構造:木造瓦葺3階建
床面積:1階○○.○○㎡ 2階○○.○○㎡ 3階○○.○○㎡
取得内容:上記不動産について、被相続人の有していた持分2分の1のうち、その2分の1(※不動産全体に対する持分4分の1)を取得する
3.相続人(子)○○○○が取得する遺産
【土地】
所在:○○市○○町○○丁目
地番:○番
地目:宅地
地積:○○.○㎡
取得内容:上記不動産について、被相続人の有していた持分2分の1のうち、その2分の1(※不動産全体に対する持分4分の1)を取得する
【建物】
所在:○○市○○町○○丁目○番地
家屋番号:○番
種類:居宅
構造:木造瓦葺3階建
床面積:1階○○.○○㎡ 2階○○.○○㎡ 3階○○.○○㎡
取得内容:上記不動産について、被相続人の有していた持分2分の1のうち、その2分の1(※不動産全体に対する持分4分の1)を取得する
4.上記以外の被相続人にかかる遺産が新たに発見された場合、相続人○○○○が相続する
以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、本協議書を3通作成し、署名・押印のうえ、各1通ずつ保管する。
令和○年○月○日
住所:東京都○○区○○町○○番地
相続人氏名:○○○○(自署・実印による押印)
住所:東京都○○区○○町○○番地
相続人氏名:○○○○(自署・実印による押印)
住所:東京都○○区○○町○○番地
相続人氏名:○○○○(自署・実印による押印)
※上記のひな形はあくまでも一例であるため、実際に作成する際は司法書士などの専門家に相談してください。
一部の相続人のみで不動産の持分を取得する場合は、「誰が」「どの持分を取得するのか」を明確にしておくことが重要です。今回の記載例では、被相続人が有していた不動産の持分は子ども2人が取得し、配偶者は預貯金を取得する形にしています。なお、被相続人以外の共有者が従来から有している持分は、今回の遺産分割の対象には含まれません。
記載例では、子ども2人それぞれについて、土地・建物ともに「被相続人の有していた持分2分の1のうち、その2分の1」を取得すると記載しています。これにより、各自が今回の相続で取得する持分は、土地・建物それぞれの全体に対して4分の1であることを明確にしています。
不動産の持分を一部の相続人のみで共有する場合は、誰がどの財産・持分を取得するのかをはっきりさせたうえで、財産ごとに持分を具体的に記載することが、手続きをスムーズに進めるためのポイントになります。
マンションの共有持分を相続する場合の記載例
マンションの共有持分を相続する場合も、誰が被相続人の持分を取得するのかを遺産分割協議書に記載します。ただし、土地と戸建てを相続する場合とは、不動産の表示や確認する項目が異なります。
今回の記載例では、配偶者と子ども1人の計2人が相続人となり、被相続人が敷地権付きのマンション住戸について有していた共有持分2分の1を子どもがすべて取得し、配偶者は預貯金を取得するケースを想定しています。
被相続人
氏名:○○○○
生年月日:昭和○年○月○日
死亡年月日:令和○年○月○日
本籍地:東京都○○区○○町○○番地
被相続人、○○○○の遺産について、相続人全員が協議し、下記の通り遺産分割を行うことに合意した。1.相続人(配偶者)○○○○が取得する遺産
【預貯金】○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○ 全額
2.相続人(子)○○○○が取得する遺産
【一棟の建物の表示】
所在:○○市○○町一丁目○番地
建物の名称:○○マンション
【専有部分の建物の表示】
家屋番号:○○町一丁目○番の○○○
建物の名称:○○○号
種類:居宅
構造:鉄筋コンクリート造1階建
床面積:5階部分 ○○.○○㎡
【敷地権の表示】
符号:1
所在及び地番:○○市○○町一丁目○番
地目:宅地
地積:○○○.○○㎡
敷地権の種類:所有権
敷地権の割合:1000分の35
取得内容:上記不動産について、被相続人が有していた持分2分の1の全部を相続人○○○○が取得する
3.上記以外の被相続人にかかる遺産が新たに発見された場合、相続人○○○○が相続する
以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、本協議書を2通作成し、署名・押印のうえ、各1通ずつ保管する。
令和○年○月○日
住所:東京都○○区○○町○○番地
相続人氏名:○○○○(自署・実印による押印)
住所:東京都○○区○○町○○番地
相続人氏名:○○○○(自署・実印による押印)
※上記のひな形は、敷地権付きの一般的な分譲マンションを想定した一例です。実際に作成する際は、登記事項証明書の記載を確認したうえで、司法書士などの専門家に相談してください。
マンションの場合、土地と戸建てを個別に記載するケースとは異なり、登記事項証明書の内容に沿って「一棟の建物の表示」「専有部分の建物の表示」「敷地権の表示」などを記載し、対象となる不動産を特定する方法が一般的です。
マンション名や部屋番号だけで判断せず、家屋番号や床面積、敷地権の種類・割合など、登記事項証明書に記載された内容を確認して不動産を正確に特定しましょう。
とくに注意したいのが、「敷地権の割合」と「被相続人が専有部分について有していた共有持分」の違いです。
敷地権の割合は、その専有部分(マンションの1住戸のイメージ)に対応する敷地についての権利(その住戸とセットになっている土地の権利のイメージ)が、敷地全体のどの程度を占めるのかを示したものです。
一方、専有部分の共有持分は、被相続人がその住戸をどの割合で所有していたのかを示すものです。
例えば、記載例の「敷地権の割合1000分の35」は、この住戸全体に対応する敷地権の割合です。一方、「被相続人の持分2分の1」は、被相続人がこの住戸について有していた共有持分を表しています。
登記事項証明書の表題部に記載される敷地権の割合と、権利部で確認できる被相続人の共有持分を混同せず、被相続人の持分を誰が取得するのかを記載することが大切です。
敷地権の登記の有無や土地の筆数などによって登記事項証明書の内容は異なるため、実際の遺産分割協議書では、対象となるマンションの登記事項証明書を確認して不動産を特定することが大切です。
マンションの敷地権や共有持分については、以下の記事で詳しく解説しています。
共有持分の遺産分割協議書の作成でよくある失敗例
共有持分の遺産分割協議書は、一見するとひな形に沿って作成すれば問題ないように見えますが、実務では細かなミスが原因で手続きが止まる場合もあります。ここでは、弊社の実務経験をもとに、実際の手続きで起こりやすい代表的な失敗例を紹介します。
- 不動産の表記ミスにより登記が通らない
- 相続人を見落とし、全員の合意を得ていない
- 持分割合を明確に記載していない
- 実印で押印しておらず手続きが進まない
- 古い権利証の情報をそのまま転記してしまう
不動産の表記ミスにより登記が通らない
不動産の表記ミスがあると、法務局から補正を求められることがあります。遺産分割協議書に記載した不動産の表示が登記記録と食い違い、対象の不動産を正確に特定できなくなる場合があるためです。
とくに注意したいのが、持分を取得する不動産について普段使っている住所(住居表示)をそのまま記載してしまうケースです。不動産の表示を記載する際は、登記事項証明書に記載されている「所在」と「地番(建物の場合は家屋番号)」を確認しましょう。住居表示だけでは対象の不動産を特定できず、補正を求められることがあります。
日常で使う住居表示をそのまま書いてしまった。
所在地:○○市○○町1-1-1【成功例】
登記事項証明書どおりに正確に記載した。
所在:○○市○○町○丁目
地番:○番
地目:宅地
地積:○○.○㎡
また、所在の省略や地番の記載漏れといったミスも、補正の対象になることがあります。不備の内容によっては、遺産分割協議書を作り直したうえで、相続人全員から改めて署名・実印による押印を受ける必要が生じます。
不動産の表示は登記事項証明書を確認し、その記載に沿って正確に転記することが、手続きをスムーズに進めるための基本です。
相続人を見落とし、全員の合意を得ていない
遺産分割協議は、相続人全員の合意があって初めて成立します。そのため、相続人の一部を見落とし、その人の合意を得ずに行った協議は、原則として無効です。その内容を記載した協議書も、そのままでは相続登記に使用できません。
実務上、とくに注意が必要なのは「戸籍を確認して初めて見知らぬ相続人の存在が発覚した」といったケースです。
たとえば、被相続人に前の配偶者との間の子どもがいる場合や、認知した子どもがいる場合などが該当します。また、被相続人より先にその子が亡くなっており、孫などが代わって相続する「代襲相続」や、遺産分割などの手続きが終わる前に相続人が亡くなり、さらに相続が発生する「数次相続」では、協議に参加すべき人の範囲が複雑になり、見落としが起こりやすくなります。
相続人A・Bのみで遺産分割協議書を作成したが、後から相続人Cの存在が分かり、Cの合意を得ていなかったため、協議が無効であることが判明した。
事前に戸籍調査をしたため、相続人A・B・C全員で遺産分割協議を行い、協議書に署名・押印をした。
相続人を見落としていた場合は、その人を含めて遺産の分け方を協議し、全員の合意を得る必要があります。さらに、協議書の再作成や、相続人全員から改めて署名・実印による押印を受ける対応が必要になることがあり、手続きに大きな手間と時間がかかります。
なお、相続人全員が合意しているものの、協議書に氏名の記載漏れがあるだけの場合は、遺産の分け方を最初から話し合い直すとは限りません。合意内容を正しく証明できるよう、協議書の修正などを行う必要があります。
このようなミスを防ぐためには、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍に加え、相続関係に応じて必要となる相続人などの戸籍も取り寄せ、協議に参加すべき人を正確に確定させたうえで遺産分割協議書を作成することが大切です。
持分割合を明確に記載していない
遺産分割協議に基づいて相続登記をするには、「誰が」「どの持分を取得するのか」を、協議書全体から明確に読み取れる必要があります。読み違いを防ぐため、取得割合は「2分の1」などの分数で記載しましょう。
「共有する」とだけ記載して、協議書全体から各相続人の取得割合が読み取れない場合や、不動産全体と被相続人の持分のどちらを基準に分けるのかが不明確な場合には、補正を求められることがあります。
各相続人の取得割合を決めないまま、共有することだけを記載した。
例:被相続人が有していた持分2分の1を、相続人Aと相続人Bが共有し、各自の取得割合は後日決める
被相続人の持分と、協議で決めた各相続人の取得割合を記載した。
例:被相続人が有していた持分2分の1を、相続人Aと相続人Bがそれぞれその2分の1ずつ(不動産全体に対する持分は各4分の1)取得する
取得割合を後日決めるとしている場合は、相続人全員でその割合を協議し、合意した内容を遺産分割協議書に反映する必要があります。
また、持分割合の記載で見落とされやすいのが、共有持分の合計です。
たとえば、被相続人の持分を分ける場合は「被相続人の持分(○分の○)のうち、相続人Aがその2分の1、相続人Bがその2分の1を取得する」といった形で記載します。被相続人の持分全部を相続人に分ける場合は、その持分を1として、配分割合の合計が「1(全部)」になるかを確認しましょう。
割合の組み合わせに誤りがあると、内容に矛盾が生じ、法務局から補正を求められたり、遺産分割協議書の修正や再作成が必要になったりする場合があります。
持分割合を記載する際は、対象となる持分を示したうえで、「誰がどの割合で取得するのか」を数値で明確に記載することが、誤解や記載ミスを防ぐためのポイントです。
実印で押印しておらず手続きが進まない
相続登記で遺産分割協議書を提出する場合は、通常、相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付します。
遺産分割協議書は相続人全員の合意内容を証明する書類であり、実印の押印と印鑑証明書によって、協議書に押された印が相続人本人の登録印であることを確認します。
認印やシャチハタで押印すると、そのままでは相続登記を完了できないことがあります。法務局から補正を求められたり、実印で押印し直す必要が生じたりするため、注意しておきましょう。
相続人Aが手元にあった認印でそのまま押印してしまい、登記の段階で補正対応が必要になった。
相続人全員がそれぞれ実印で押印し、印鑑証明書もあわせて用意したことで、そのまま登記手続きに進めた。
押印をやり直す際、相続人が遠方に住んでいる場合や人数が多い場合は、書類の再送・回収に時間がかかり、手続きが大きく遅れる原因になります。
なお、遺産分割協議書に添付して相続登記に使用する印鑑証明書には、「発行後何ヶ月以内」といった有効期限は設けられていません。ただし、預貯金などの相続手続きでは、金融機関ごとに「発行後6ヶ月以内」など、発行時期に関する条件が定められている場合があります。自動車の相続による名義変更でも、発行後3ヶ月以内の印鑑証明書が求められる場合があるため、提出先の案内を確認しましょう。
遺産分割協議書を作成する際は、実印で押印し、登記申請に必要な印鑑証明書を用意しましょう。
古い権利証の情報をそのまま転記してしまう
手元にある権利証(登記済証)や登記識別情報通知書に記載された不動産の情報を、そのまま遺産分割協議書に転記すると、現在の登記内容との不一致が生じることがあります。
これらの書類には登記をした当時の情報が記載されており、現在の登記内容と一致していない可能性があるためです。
不動産は、分筆や合筆、地番の変更、建物の増改築などによって登記内容が変わっていることがあります。そのため、手元の書類に記載された不動産の情報をそのまま転記すると、現在の登記事項証明書と内容が一致しないケースが起こり得ます。
昔取得した権利証を見ながら遺産分割協議書を作成したところ、地番が現在の登記情報と一致せず、登記手続きが滞ってしまった。
事前に登記事項証明書を取得して最新情報を確認し、その内容どおりに記載したことで、そのまま手続きを進めることができた。
現在の登記内容と遺産分割協議書の記載が食い違い、不動産を正確に特定できない場合などには、補正や書類の修正・再作成が必要になることがあります。
遺産分割協議書を作成する際には、手元の権利証(登記済証)や登記識別情報通知書だけを参照するのではなく、最新の登記事項証明書を法務局で取得し、それをもとに不動産の情報を記載しましょう。
共有持分の遺産分割協議書の作成手順|相続手続きから協議内容の登記まで解説
共有持分を相続する場合、遺産分割協議書の記載内容が不動産の売却や管理、共有者間のトラブル防止に大きく影響します。
共有不動産は相続後の扱いが複雑になりやすく、相続人や財産調査に誤りがあると、遺産分割協議書の修正が必要となり、共有状態が長期化してしまうおそれがあります。協議書の作成から相続登記まで円滑に進めるためには、それぞれの手順を正確に踏むことが重要です。
- 相続人を確定する
- 相続財産をすべて洗い出す
- 共有持分の割合を決める
- 分割内容を遺産分割協議書として文章化する
- 相続人全員が署名・実印で押印する
- 相続登記を行う
①相続人を確定する
最初に行うべきは、遺産分割協議に参加する相続人の確定です。相続人の一部を見落とし、その人の合意を得ずに遺産分割協議を行った場合、協議は原則として無効となります。
遺産分割協議は相続人全員の合意が前提となるため、協議に参加すべき人が1人でも欠けている場合、その内容を記載した協議書を相続登記に使用することはできません。相続人の見落としは、相続登記に必要な戸籍を確認する過程などで発覚することもあるため、事前の確認が重要です。
あくまでも弊社の実務経験をもとにした一例ですが、以下のようなケースでは、相続人の見落としが起こりやすくなります。
- 前の配偶者との間に子どもがいる
- 認知した子どもがいる
- 代襲相続(被相続人より先にその子が亡くなり、孫などが代わって相続する)が発生している
- 数次相続(相続の手続き中に別の相続人が亡くなる)が起きている
相続人を正確に確定するためには、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を取り寄せて確認します。なお、数次相続が発生している場合は、相続手続きの途中で亡くなった相続人についても戸籍を確認する必要があり、調査の範囲が広がる点に注意が必要です。
相続関係が複雑な場合や時間が取れない場合は、司法書士などの専門家に依頼することを推奨いたします。
②相続財産をすべて洗い出す
相続人を確定した後は、被相続人が所有していた財産をすべて洗い出します。相続財産に漏れがあると、後から追加の協議や手続きが必要になることがあるため、遺産分割協議の前にしっかり確認しておくことが大切です。
共有持分を相続する場合は、不動産の評価額や権利関係の把握が重要になります。これらが不正確だと、遺産全体の配分や代償金の金額にズレが生じ、不公平な分割や後のトラブルにつながるおそれがあります。
共有持分の分け方を中心に検討する際でも、預貯金や有価証券など、他の相続財産も併せてしっかりと調査しましょう。特定の相続人が共有持分を取得し、他の相続人が預貯金を取得するなど、遺産全体の配分を踏まえて分け方を調整することがあるためです。
調査対象となる主な財産は以下のとおりです。
- 不動産(共有持分)
- 預貯金・現金
- 株式や投資信託などの有価証券
- 自動車、貴金属などの動産
- 借金、ローン、未払税金などの負債
実務では、相続財産の見落としが後から発覚するケースもあります。たとえば、使っていない銀行口座や把握していなかった有価証券などが後から見つかると、協議書の内容によっては追加で協議が必要になります。
このようなリスクを減らすためにも、不動産については、登記事項証明書で権利関係を確認するとともに、不動産が所在する市区町村ごとに名寄帳などを取得し、把握していない物件がないか調べましょう。
取得時には共有名義の不動産も含めて確認したい旨を伝え、非課税の私道などが掲載されているかも確認することが大切です。
なお、後から新たな財産が見つかっても、原則として協議全体をやり直す必要はなく、その財産について追加で協議します(遺産全体の分け方に重大な影響を及ぼす場合などは除く)。
遺産分割協議書に「新たに判明した財産については、相続人全員で別途協議する」などと定めておくと、その後の対応方針を共有しやすくなるでしょう。
③共有持分の割合を決める
相続人と相続財産が確定したら、遺産分割協議を行い、「誰がどの割合で共有持分を取得するか」を決めます。共有持分の相続では、割合の決め方がその後の不動産の扱いに直接影響するため、慎重に決定する必要があります。
共有持分は単なる数字ではなく、共有不動産に対してどの程度の権利を持つかを示す割合です。たとえば、共有不動産の管理行為については原則として持分価格の過半数で決められますが、不動産全体を売却するような処分行為には共有者全員の同意が必要です。
また、共有物の管理費用などは、共有者が持分に応じて負担するのが基本です。一方、共有不動産に課される固定資産税については、自治体に対して共有者全員が連帯して納税義務を負います。
そのため、単に「均等に分ける」といった決め方をしてしまうと、将来的に意見がまとまらず、不動産を売却できない状態になることがあります。「話し合いがまとまらないから、とりあえず均等に分ける」という判断は、問題の先送りになってしまいかねません。
実際には、話し合いの手間を避けて法定相続分どおりに分けるケースもありますが、後から活用や処分で支障が出ることもあります。そのため、共有持分の実務に携わる立場からは、将来の使い方まで見据えて分け方を考えることを推奨します。
相続による共有者の増加や持分の細分化を避けたい場合は、被相続人が有していた共有持分を特定の相続人1人に集約し、必要に応じて他の相続人へ代償金を支払う方法などを検討してみてください。
遺産分割協議は相続人全員が一堂に会して行う必要はなく、電話やオンラインなどで意見を調整することもできます。ただし、相続登記に使用する遺産分割協議書には、相続人全員の署名(記名)と実印による押印が必要です。
連絡が取れない相続人や未成年の相続人がいる場合には、状況に応じて家庭裁判所での手続きなどが必要になることがあります。
連絡が取れない相続人がいる場合、状況によって必要な対応が異なります。住所や所在がわからない場合は、不在者財産管理人の選任が必要になることがあります。一方、所在は分かっているものの協議に応じてもらえない場合は、家庭裁判所での遺産分割調停を検討することになります。
また、未成年者と親権者がともに相続人となり、利益相反が生じる場合には、特別代理人の選任が必要です。
手続きは個人でも進められますが法的知識が必要になるため、迷ったときは弁護士に相談しましょう。
④分割内容を遺産分割協議書として文章化する
相続人全員で合意した内容は、遺産分割協議書として文章にまとめます。文章化する際には、「誰が、どの不動産の、どの持分を取得するのか」を、登記に使用できる形で具体的に記載することがポイントです。
例えば、同じ不動産を複数の相続人で共有する場合は、それぞれの相続人ごとに取得する持分を個別に記載します。
ここで重要なのが、「不動産全体に対する割合」なのか「被相続人が有していた持分に対する割合」なのかを区別して書くことです。区別が曖昧なままだと、登記内容と不一致となり法務局から補正を受ける原因になります。
遺産分割協議書の作成では、合意内容を正しくまとめるだけでなく、登記に使える精度で文章化することが求められます。記載内容に不備があると手続きが止まってしまうため、細かい部分まで丁寧に確認しながら作成することが大切です。
⑤相続人全員が署名・実印で押印する
遺産分割協議書の作成が完了したら、相続人全員による署名と実印での押印をします。
もし押印漏れがあったり、添付が必要な相続人の印鑑証明書が不足していたりすると、相続登記の手続きが滞ってしまいます。また、相続人が遠方に住んでいる場合は、郵送のやり取りに時間がかかることもあるため、事前の連絡が必須です。
相続人が近くに住んでいない場合は、以下の方法で対応できます。
- 遺産分割協議書を郵送で順番に回して署名・押印してもらう
- 同内容の書類を相続人ごとに用意し、それぞれ署名・押印して回収する
遺産分割協議書に添付して相続登記に使用する印鑑証明書には、「発行後3ヶ月以内」といった有効期限の制限はありません。
ただし、預貯金の相続手続きや自動車の名義変更など、提出先によっては発行から3ヶ月以内または6ヶ月以内のものを求められる場合があります。
そのため、相続登記以外の手続きも同時に進める場合は、できるだけ新しい印鑑証明書を取得しておくのがよいでしょう。
相続登記などの手続きに備え、通常は相続人全員が署名(記名)・実印による押印を行います。必要な押印や添付書類に漏れがあると、補正や再提出を求められることがあるため、最後まで慎重に確認しましょう。
⑥相続登記を行う
遺産分割協議書を作成しても、不動産の名義は自動的には変更されません。協議内容を反映するためには、法務局で相続登記(名義変更)を行う必要があります。
相続によって不動産の権利自体は取得していますが、法定相続分を超えて取得した部分を第三者に主張するには、相続登記が必要です。協議内容を登記簿に反映することで、誰がどの持分を取得したのかを公的に示せる状態になります。
2024年4月1日から、相続登記が義務化されています。
遺産分割によって共有持分などの不動産を取得した場合は、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容に応じた登記を申請する必要があります。ただし、遺産分割が成立していなくても、相続登記には原則として「相続によって不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内」という申請期限があるので注意しましょう。
協議がまとまらず、申請期限までに協議内容に基づく相続登記を行うことが難しい場合は、期限内に法定相続分による相続登記や相続人申告登記で対応します。
相続登記の申請期限や具体的な手続きについては、以下の記事で詳しく解説しています。
共有持分の遺産分割協議書の作成を士業に依頼するメリット
共有持分の遺産分割協議書は、記載内容の正確さだけでなく、相続人同士の利害調整や今後の不動産の扱いまで見据えて作成する必要があります。
手続き自体は自分で進めることも可能ですが、内容に不備があるとやり直しが発生したり、後のトラブルにつながることもあります。そのため、共有持分の遺産分割協議書で迷ったときは、弁護士や司法書士などの士業に依頼するのがよいでしょう。
ここでは、それぞれの専門家に依頼するメリットについて解説します。
弁護士に依頼するメリット
相続人同士で意見がまとまらない場合や、トラブルに発展する可能性がある場合は、弁護士への依頼を検討しましょう。共有持分の相続では、持分割合や不動産の扱いをめぐって意見が対立しやすく、話し合いが難航するケースもあります。
弁護士に依頼する主なメリットは以下のとおりです。
- 相続人の代理人として交渉を任せられる
- 法律に基づいた主張で不利な条件を避けやすくなる
- 調停や審判などの法的手続きにも一貫して対応できる
弁護士に他の相続人との交渉を任せることで、直接やり取りする負担を減らし、感情的な対立を避けやすくなります。
親族間の話し合いは、内容だけでなく感情面でも負担が大きくなりがちですが、自分の代理人として弁護士に対応してもらうことで、冷静に進めやすくなります。
あくまでも弊社の実務経験をもとにした一例ですが、以下のようなケースでは弁護士への依頼が向いています。
- 相続人同士で意見が対立している
- 話し合いが進まず協議が長引いている
- 共有持分の分け方や不動産の処分方法で揉めている
- 交渉から遺産分割協議書の作成まで一貫して依頼したい
上記のような状況では、当事者同士で無理に進めるよりも、弁護士に任せた方がスムーズに解決できることもあります。弁護士費用は発生してしまいますが、状況によっては依頼を検討してみてください。
司法書士に依頼するメリット
相続人同士で意見はすでにまとまっているものの、登記などの手続きに不安がある場合は、司法書士への依頼がおすすめです。共有持分の相続では、持分割合や不動産の記載内容が複雑であるため、遺産分割協議書の作成から司法書士に依頼すれば手続きがスムーズに進みやすくなります。
司法書士に依頼する主なメリットは以下のとおりです。
- 相続人間で合意ができている場合、遺産分割協議書の作成から相続登記まで一貫して任せられる
- 法務局への申請や補正への対応を任せられる
- 登記実務に沿って書類を作成してもらえる
- 戸籍収集や書類整理の負担を軽減できる
司法書士に依頼すれば、最新の登記情報に基づいて書類を作成してもらえるため、やり直しのリスクを抑えて手続きを進められます。戸籍の収集についても、司法書士に相続登記などの業務を依頼した場合は、業務に必要な範囲で戸籍等を取得してもらえるため、複数の役所から書類を取り寄せる負担を軽減できます。
ただし、司法書士は相続人同士の交渉を代理することはできません。そのため、相続人自身で話し合いを進められ、協議書の作成や相続登記を任せたい場合に依頼を検討するとよいでしょう。
あくまでも一例ですが、以下のようなケースでは司法書士への依頼が向いています。
- 相続人同士で合意ができている
- 共有持分の割合がすでに決まっている
- 相続登記をスムーズに完了させたい
- 手続きの手間や負担を減らしたい
相続人同士のトラブルは生じておらず、遺産分割協議書の作成や書類収集、登記など事務的な手続きを任せたい場合には、司法書士への依頼を推奨します。
共有持分の遺産分割協議書に関してよくある質問
遺産分割協議書に有効期限はありますか?
遺産分割協議書そのものに有効期限はありません。有効に成立した遺産分割協議の内容を記載した協議書は、時間が経過したという理由だけで無効になることはありません。
ただし、相続登記には申請期限があるため、協議書の作成後は早めに登記手続きを進めましょう。
遺産分割協議書は公正証書にしたほうが良いですか?
遺産分割協議書は、必ずしも公正証書にする必要はありません。相続人全員の合意内容を記載した通常の協議書でも、登記に必要な記載や押印、添付書類などを整えれば、相続登記に使用できます。
ただし、後から内容をめぐって争いになる可能性がある場合や、代償金の支払いなど確実に履行させたい条件がある場合など、公正証書として作成した方が良いケースもあります。
たとえば、代償金の支払いのように金銭の支払義務を定める場合、公正証書に強制執行認諾条項を付けておくことで、支払いが滞った際に裁判を経ずに強制執行の手続きへ進める場合があります。ただし、公正証書にすれば遺産分割協議書のすべての内容について直ちに強制執行できるわけではありません。必要に応じて、弁護士や司法書士に確認しながら作成することが大切です。
遺産分割協議書を自分で作成する場合、法務局で内容をチェックしてもらうことはできますか?
法務局では、登記申請書の記載方法や必要書類などについて、手続案内を受けられます。ただし、作成した遺産分割協議書の有効性や、その書類で登記できることを事前に保証してもらえるわけではありません。
また、遺産分割の内容が相続人にとって適切か、将来的なトラブルにつながらないかといった判断も、手続案内の対象外です。書類作成や登記については司法書士、相続人間の対立や法的な問題については弁護士などに相談しましょう。
手続案内は原則として予約制のため、利用する法務局の公式サイトなどで予約方法を確認してください。
まとめ
共有持分の相続では、遺産分割協議書の内容が登記や将来の不動産の扱いに影響するため、記載が曖昧だったり不備があったりすると、手続きが進まないだけでなく、後のトラブルの原因にもなります。
手続きを進めるうえでは、相続人を漏れなく確定し、相続財産を正確に把握したうえで、被相続人の共有持分を誰がどのように取得するかを決める必要があります。そのうえで、取得する持分の範囲や割合を明確にし、登記に使用できる形で遺産分割協議書に記載することが大切です。
手続きに不安がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することも検討してください。相続人同士で意見がまとまらない場合は弁護士、すでに合意ができているものの書類作成や登記に不安がある場合は司法書士というように、状況に応じて依頼先を選びましょう。
共有不動産では、各共有者は自分の共有持分だけであれば単独で売却できますが、不動産全体を売却するには原則として共有者全員の同意が必要です。そのため、相続時に十分に検討せず持分を複数人で分けると、後から売却や活用、管理費の負担をめぐって意見が分かれ、不動産全体の売却や活用が進まなくなることがあります。
相続後も共有関係が続く場合は、「誰が住むのか」「固定資産税や修繕費をどのように負担するのか」「将来的な売却についてどのように話し合うのか」まで、方針を検討しておくことが大切です。相続人以外にも共有者がいる場合は、その共有者との調整も必要になります。
不動産の専門家としては、遺産分割協議の段階で「被相続人の持分を1人が取得するか、複数人で分けるか」「取得後は他の共有者とどのように利用・管理していくか」まで見据えて検討することを推奨します。

