任意売却に強い不動産業者の選び方は?避けるべき業者の特徴も解説

任意売却に強い不動産業者の選び方は?避けるべき業者の特徴も解説

住宅ローンの返済が困難になったときに、競売を避けながら物件を売却できる手段として「任意売却」が挙げられます。この任意売却を成功させるためには、不動産業者の選び方が極めて重要です。

任意売却を成功させるためには、具体的に下記のような業者を選ぶのがポイントとなります。

  • 任意売却の実績が豊富
  • 対応スピードが早い
  • 弁護士や司法書士などの専門家と連携している
  • 売却後の生活再建支援を行っている

一般的な不動産の売却以上に、任意売却には競売や債務整理に関する法律や金融機関との交渉など、専門的な知識と経験が必要です。任意売却の実績が豊富な業者を利用できれば、時間的な制約がある中でも的確かつ迅速な対応が期待できます。法的な手続きも出てくるため、弁護士や司法書士といった法律の専門家と連携している業者だと、自分で探して依頼する手間なく進められるのでおすすめです。

さらに、任意売却では、債権者との条件交渉や調整が、売却条件や返しきれなかったローン残債の取り扱いを左右するこにとなります。有利な条件を引き出すためにも、任意売却での交渉における豊富な経験を持つ業者が欠かせません。不安になりがちな売却した後の生活までサポートしてもらえると、より安心です。

本記事では、任意売却に強い不動産業者の選び方から、避けるべき業者の特徴、任意売却にかかる費用と書類について解説します。任意売却の業者選びでは、単なる費用の比較ではなく、業者の経験値や対応力を見極めることが、売却を成功へ導く第一歩となります。

目次

任意売却に強い不動産業者の選び方は?チェックポイントを紹介

任意売却をスムーズに成功させるためには、業者の力をしっかりと評価・判断することが重要です。特に、実績の豊富さや交渉スキル、迅速な対応、そして専門家との連携体制は、売却額を大きく左右する可能性があります。

まずは、業者選びの際に押さえておきたい具体的なチェックポイントを紹介します。

  • 任意売却の実績が豊富か
  • 対応スピードが早いか
  • 弁護士や司法書士などの専門家と連携しているか
  • 売却後の生活再建支援を行っているか

1点でも欠けてしまうと、債権者との交渉が難航したり、売却期限までに手続きが間に合わなかったりするリスクも出てきます。各項目を丁寧に確認して、信頼できるパートナーを探しましょう。

任意売却の実績が豊富か

任意売却の実績は、必須の確認ポイントです。任意売却の実績が豊富な業者は、成功事例・失敗事例から幅広いノウハウや経験値を持っています。そのため、実績が多い業者ほど、必要な手順を逆算して、必要な手続きや買い手との交渉を進められ、期日に間に合うよう計画的な対応が可能です。
また、実績のある業者は、債権者である金融機関と信頼関係を築いていることも多く、スムーズに交渉を進めてもらえることが期待できます。

しかし、経験が浅い業者では、対応が遅れ、競売に移行しかねません。これまでに、業者の知識が浅かったことで、売却希望額が相場と見合わないまま募集をかけ、住宅ローンの滞納が発生してしまった事例もあります。なかには、任意売却になかなか応じてくれない金融機関も存在するため、業者選びでは任意売却の取扱件数や成約条件など、具体的な実績を必ず確認しましょう。

対応スピードが早いか

対応スピードが早い業者は、任意売却の期限内に手続きを完了できる可能性が高まります。しかし、任意売却は時間との戦いです。不動産業者の対応が遅れると、債務者は住宅ローンが支払えず、競売に移行するリスクが高まります。

依頼前でも下記のようなポイントから、業者の対応スピードを見極めることができます。

  • 問い合わせへの返信が早いか
  • 初回相談までの対応が迅速か
  • 無料相談でレスポンスを確認できるか
  • クチコミ・レビューで対応の速さが評価されているか
  • 初回相談時に必要書類やスケジュール感を具体的に提示してくれるか

業者の対応スピードを事前にチェックすることで、実際に依頼した際もスムーズな進行が期待できます。任意売却は売却期日までに確実に成約へ導けるかが最大の焦点です。初回相談の段階で必要書類やスケジュールを具体的に提示できる業者は、任意売却に精通している証であり、専門的な知見と迅速な対応力を兼ね備えているといえます。初動が遅い業者は、契約後も同様に対応が後手に周りがちなので注意が必要です。

弁護士や司法書士などの専門家と連携しているか

業者が弁護士や司法書士などの専門家と連携していれば、任意売却前後の法的な相談や手続きのサポートが期待できます。任意売却を目指すにあたり、登記手続きや差し押さえ・競売の停止申し立てなど法的な手続きが必要になることがあるため、専門家の存在が大きな支えとなります。また、任意売却後に残債が残る場合、債務整理が必要となるケースもあり、法的な知識や対応が欠かせません。

なかでも、「任意売却取扱主任者」「任意売却士」「任意売却不動産コーディネーター」など、任意売却に特化した資格を持つスタッフがいる業者は、法的な視点からも安心して相談できます。専門家との連携があれば、債権者との交渉や契約書の作成など、法的リスクを減らしながらスムーズに手続きを進められるでしょう。

後になって不利益を被らないよう、専門家との連携力も要チェックです。なお、当社クランピーリアルエステートは弁護士や司法書士などの専門家との連携が強みで、任意売却も必要に応じて専門家と連携しながら売却をサポートしています。

売却後の生活再建支援を行っているか

売却後の生活再建支援を行っている業者に依頼できれば、任意売却後も安心して新生活をスタートできます。任意売却は売却完了で終わりではなく、その後の住まい探しや残債の返済計画が重要となります。

たとえば、任意売却の専門業者の中には、引越し先の紹介や引越し代金の交渉、残債処理に関するアドバイスを行うほか、生活再建資金制度を案内してくれるところもあります。経済的に困窮し、住居まで売却するとなると、その後の生活に不安になる人は多いでしょう。

具体的には、下記のようなサポートがある業者は、単に物件を売るだけでなく、依頼者のその後の暮らしを見据えたサポートを行っている証拠です。

  • 引越し先の物件探しをサポートしてくれる
  • 残債の返済スケジュールや債務整理の選択肢を提示してくれる
  • 生活再建資金制度などの公的支援について情報提供してくれる

任意売却を依頼する際は、売却後のフォロー体制まで確認しておくと安心です。

任意売却する際に避けるべき業者の特徴

任意売却を安心して進めるためには、避けるべき業者の特徴も併せて把握しておくことが大切です。強引な契約や不透明な費用請求など、トラブルの原因になりやすい行動を取る業者は、期日までの任意売却が完了しないだけでなく、債権者との関係を悪化させ、結果的に競売へ移行してしまうリスクを高めます。

本項では、特に注意すべき3つのポイントを整理しました。

  • 強引に媒介契約を迫ってくる
  • 確実に引越し代を確保できると断言する
  • 案内料・申込料・依頼していない広告料などを請求する

依頼前にしっかり確認し、少しでも不安を感じた場合は別の業者を検討しましょう。

強引に媒介契約を迫ってくる

強引に媒介契約を迫ってくる業者は避けるべき業者の代表例です。任意売却では、不動産業者と媒介契約を結ぶ必要がありますが、契約形態や条件は依頼者の意思と状況に合わせて選ぶべきものです。しかしながら、相談段階で不安を煽って急がせたり、十分な説明を行わなかったりする業者では、相談者は契約内容を十分に理解することも、他の業者と比較することもできないため、結果的に不利益を被りかねません。

媒介契約には「専任媒介契約」や「専属専任媒介契約」があり、どちらも契約期間は最長3か月で、原則として媒介契約中の他社への依頼は不可です。

【媒介契約の種類について】
■専任媒介契約とは
特定の不動産業者1社のみに売却の仲介を依頼し、依頼者が自分で買主を見つけた場合には直接契約することもできる契約。契約期間は最長3か月で、レインズ(不動産流通機構)への登録義務は契約から7日以内。販売活動の報告は2週間に1回以上。

■専属専任媒介契約
特定の不動産業者1社のみに売却の仲介を依頼し、依頼者が自分で買主を見つけた場合にも必ずその業者を通して契約しなければならない契約。契約期間は最長3か月で、レインズへの登録義務は契約から5日以内。販売活動の報告は1週間に1回以上。

特に、専属専任媒介契約の場合、依頼者が自分で買主を見つけても業者を通さなければならず、仲介手数料が発生します。契約形態や契約期間の縛りを理解せずに締結してしまうと、売却活動の自由度が制限され、不利な条件で進めざるを得ない事態になりかねません。

さらに、強引な契約を結ぶ業者の中には、契約後に連絡が取りづらくなったり、進捗報告が不十分だったりして、売却期限までに買主が見つからず、結果的に競売に移行してしまうリスクが高まります。

不動産業者と契約する際は、複数の業者から説明を受け、それぞれの契約書の内容や解約条件をしっかり確認・比較することが重要です。少しでも不安を感じた場合は、その場で契約せず持ち帰って検討しましょう。

確実に引越し代を確保できると発言する

「必ず引越し代が出る」と断言する業者も、トラブルになる可能性があるため避けるべき業者といえます。引越し代の支給には債権者の同意が必要であり、実際に支給できるかどうかはケースバイケースで異なります。

経験豊富な業者であれば、「引越し代の交渉に強い」「過去に支給実績がある」など、条件付きで説明するのが一般的です。確約できない事柄に関して慎重な表現を用いる業者のほうが、現実的かつ信頼性の高い対応が期待できます。

依頼前に引越し代の扱いについて尋ね、根拠のない約束や保証をする業者は避けるようにしましょう。引越し代の支給が認められなかった場合の対応策を提案してくれる業者であれば、より安心して任意売却を進められるでしょう。

案内料・申込料・依頼していない広告料などを請求する

案内料や申込料、依頼していない広告料などを請求される業者も避けるべきでしょう。宅地建物取引業法では、正当な合意がない限り、仲介手数料以外の費用を依頼者に請求することは原則認められていません。

もちろん、依頼者が事前に合意した場合には、遠隔地にある不動産の現地調査料や一部広告費の請求が認められることもあります。しかし、事前の説明や合意なしに仲介手数料以外の費用を請求することは違法または不当な行為に該当します。

契約前に、仲介手数料以外に請求される費用の内訳や発生条件について確認しましょう。通常、見積書や重要事項説明書といった書面に加え、トラブル防止のため、口頭でも説明があるものです。手数料以外の費用について説明を曖昧にしたり、全く説明がなかったりする業者は注意してください。

金融機関から紹介される任意売却専門業者を選ぶメリットとリスク

住宅ローンの支払いが滞った際に、金融機関のほうから任意売却に向けて不動産業者を紹介されることがあります。金融機関から紹介される業者の利用には、メリットもある反面、安易な契約を避けたいリスクも存在します。

メリット リスク
・業者探しの時間や労力を節約できる
・金融機関との情報共有が早い
・債権者との交渉が円滑になりやすい
・売却条件が金融機関有利になりやすい

金融機関と懇意にしている業者であれば、依頼者にとっては業者探しの手間が省けるほか、連携が取りやすく任意売却の合意形成や手続きもスムーズに進められます。一方で、金融機関側の業者であるため、依頼者よりも金融機関が有利になる形で売却条件が進められる可能性があり、必ずしも良い条件で売却できるとは限りません。

そのため、金融機関から紹介された業者と契約する場合でも、売却方針や契約条件を自分でも確認し、必要であれば他の業者からも意見を聞くことが大切です。

できるだけ有利な条件で任意売却を進めたいという場合には、やはり複数の業者を比較して、依頼先を決めることを推奨します。

地域密着型と全国対応の業者、どちらを選ぶ?

任意売却専門の不動産業者は、大きく「地域密着型」と「全国対応型」に分けられます。それぞれ依頼にはメリットとデメリットがあるため、自分の状況や優先したい条件によって、どちらを選ぶべきかが変わってきます。

項目 地域密着型 全国対応型
強み 地元の不動産市場や債権者の事情に詳しく、地域特有の交渉や販売戦略に強い 幅広い地域に対応可能で、豊富な実績と多様な解決方法を持っているため、特殊な事情がある物件でも対応できる
弱み 対応範囲が狭く、他地域の物件や特殊案件には不向きな場合がある 地域特有の事情やネットワークが弱く、細かな交渉で不利になる場合がある
向いているケース 物件が地元にあり、地域の買主や金融機関との関係を活かしたい場合 遠方の物件や複雑な条件の物件や、広域で買主を探したい場合

表面的なサービス範囲だけで判断せず、自分の事情に合った強みを持つ業者を見極めましょう。もちろん、例外もあるため向いてるケース・向いていないケースに当てはまらないこともあります。どちらか迷った時は、両方に相談した上で決めることをおすすめします。

地域密着型の業者

地域密着型の業者は、地元の不動産市場や地元の金融機関・信用金庫の動向に詳しいため、交渉が有利に進むことが期待できます。特に、過去に同じ債権者と任意売却の実績がある場合、信頼関係から承諾を得やすくなることも珍しくありません。さらに、地元の購入希望者や投資家とのネットワークも持っているため、短期間で買い手が見つかる可能性もあります。

ただし、対応範囲が限られるため、他の地域にある物件や、より広く購入者を募りたい場合には、地域に限定した強みが不利になることがあります。

全国対応の業者

全国の物件に対応している業者は、広いエリアで多くの任意売却案件を取り扱っているため実績やノウハウが豊富です。遠方の物件や権利関係が複雑な物件にも対応できる柔軟性があります。また、広告や販売チャネルも全国規模で活用できるため、買い手を幅広く探せるのが強みです。広く買い手を募れば、買い手が見つかりにくい物件の売却が可能になる他、より高値での売却も期待できます。

一方で、地域特有の商慣習や相場に精通していない担当者がつく場合もあり、細かな条件交渉や地域密着のネットワークでは地元業者に劣るケースもあります。

任意売却をおこなう手順

任意売却を成功させるために、正しい手順を確認しておきましょう。大まかな流れを把握しておけば、業者への依頼だけでなく、手続きや対応の遅れを避けられます。

  1. 任意売却専門の不動産業者に相談・査定を依頼する
  2. 業者と媒介契約を結ぶ
  3. 債権者(金融機関など)から許可を得る
  4. 任意売却を開始する
  5. 買い手が見つかったら売買契約を結ぶ
  6. 決済・引き渡し・債権者への返済・抵当権抹消登記・所有者移転登記

住宅ローンの支払いが難しいことが分かった時点で早めに各ステップを丁寧に進めれば、競売よりも有利な条件で物件を手放せる可能性が高まります。それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。

任意売却専門の不動産業者に相談・査定

任意売却を始める第一歩は、任意売却の実績が豊富な不動産業者に相談し、物件の査定を受けることです。経験豊富な専門業者であれば、債権者との交渉や必要な書類の準備、売却戦略の立案まで一貫してサポートしてくれます。

査定の際には、物件の状態や市場価格に加え、住宅ローン残高と物件の売却価格の比較も重要です。この時点で「アンダーローン」の場合、債権者から許可を得やすくなります。一方、「オーバーローン」の状態では、債権者の同意が必須ですが同意が得られにくく、交渉力のある業者を選ぶことが任意売却の成否を分けます。

誠実で経験豊富な業者に依頼できれば、最適な売却プランを提案してもらえるだけでなく、後の債権者交渉や契約手続きがスムーズになり、競売へ移行するリスクを低減できます。

【住宅ローン残高と売却価格の差額による状態】
■アンダーローンとは
アンダーローンは、物件の売却価格が住宅ローン残高を上回っている状態(売却価格 > ローン残高)。売却によって住宅ローンを完済できるため、債権者の同意が得やすい。

■オーバーローンとは
オーバーローンは、物件の売却価格が住宅ローン残高を下回っている状態(売却価格 < ローン残高)。物件の売却後も住宅ローンを完済できないため、債権者の同意が得られにくい。同意を得るためには、残債の支払いについても債権者と協議する必要がある。

任意売却専門の不動産業者と媒介契約を締結

任意売却では売却活動の仲介を正式に依頼する「媒介契約」がないと、業者は他者の所有する不動産の販売活動を開始できないため、売却を進めるにはまず契約を締結する必要があります。

専任媒介契約が向いている人 専属専任媒介契約が向いている人
・自分でもSNS・広告・人脈を通じて買い手探したい
・不動産売却にある程度関わりたい
・少しでも仲介手数料を節約できる可能性を残したい
・不動産取引に慣れておらず、販売活動を業者に任せたい
・早期売却を最優先にしたい
・専任よりも優先的に販売活動を行ってほしい

任意売却では、債権者との交渉や進行管理が重要なため、経験豊富で交渉力のある業者と媒介契約を結ぶことが重要です。契約前には契約形態や期間、報告頻度、解約条件を十分に確認し、納得した上で締結しましょう。

時間的に余裕があるのであれば専任媒介契約を試して、契約更新時に専属専任媒介契約に切り替えることも可能です。しかし、任意売却の場合、債権者がやり取りの窓口を絞るために専属専任媒介を条件に任意売却に同意することが多いため、ほとんどのケースで専属専任媒介が選択されることとなります。

債権者の許可を取得

任意売却を行うには必ず債権者の許可が必要なので、不動産業者を通じて債権者と交渉し、任意売却の合意形成を目指します。

住宅ローンの延滞が続くと、債権者から「期限の利益喪失通知」が送られ、一括返済を求められます。特に、オーバーローンの場合は、売却の合意だけでなく、売却後に残る残債の分割返済や債務整理などについても合意が必要です。

■「期限の利益」とは
期限の利益とは、契約時に与えられた「分割で返済できる」権利を指す。返済が滞ると、債務者の分割で返済できる権利が喪失し、債権者は残債を一括で請求できるようになる。債務者の分割で返済できる権利が喪失したことを正式に知らせる書面が「期限の利益喪失通知」。一般的には、住宅ローンを3ヶ月程度滞納した時点で送付される。

債権者は物件の売却価格や残債の返済を重視するため、査定内容や販売計画が現実的であることが任意売却の同意を得る鍵です。また、債権者との交渉は、基本的に依頼した不動産業者が行うことになります。以上のことからも、業者選定が重要であることが分かるでしょう。

任意売却開始

債権者の許可が下りたら、いよいよ任意売却の販売活動を開始します。販売開始時には、物件情報をレインズや広告媒体に掲載し、買い手を探します。

任意売却では、債権者から「この日までに売買契約を成立させなければ競売手続きに移行する」という期限が設けられるため、状況によっては売却期間に余裕がない可能性があります。

通常の売却と同じく内覧対応や条件交渉を進めますが、期限までに成約しなければならないため、販売期間の管理が重要です。特に、売却価格の設定は、債権者の意向や不動産市場の動向をふまえて決定しつつも、短期間での成約を目指す必要があります。

経験豊富な任意売却専門の業者であれば、広告戦略や購入希望者への提案、債権者との条件調整を無駄なく進められるため、短期間での成約の可能性が高まります。販売開始後も進捗状況をこまめに確認し、必要に応じて戦略や価格の見直しを行うことが外せないポイントです。

買い手が見つかったら売買契約を締結

買い手が決まったら、速やかに売買契約を締結します。売却期限があるため、契約手続きを不備なく進めることが重要です。契約締結のタイミングが遅れると、競売手続きに入ってしまうリスクがあります。

売買契約は、売却価格や引き渡し日、契約解除条件などが明記され、債権者の承諾を得た上で正式に締結されます。不動産業者は、債務者は契約条件を十分に理解し、署名・押印する前に不明点を解消しておくことが大切です。契約後は、決済・引き渡しに向けた準備が本格的に始まります。

決済・引き渡し・債権者への返済・抵当権抹消登記・所有者移転登記

決済日には、売主・買主・債権者・不動産業者・司法書士のほか、買主がローンを組む場合は融資する金融機関の関係者が、税金を滞納している場合は役所担当者が立ち合い、書類・鍵の引き渡しや代金の清算を行います。

買主から受け取った代金は、事前に合意した通り、不動産業者・司法書士の報酬や引越し代などの必要経費を差し引き、残りは債権者に返済されます。決済と同時に抵当権の抹消が可能となり、司法書士が法務局で抵当権抹消登記を行うこととなります。買主への所有権移転登記も司法書士が進め、法的に新しい所有者が確定します。

競売と異なり、任意売却では引き渡し時期や条件を事前に調整できるため、売主は新居への引越し準備を比較的余裕を持って行えます。

任意売却のために必要な書類

任意売却の必要書類は、基本的に仲介を担当する不動産業者の指示に従って揃えます。ただし、事前に準備しておくことで手続きをスムーズに進められる書類もあります。

あらかじめ揃えておきたい書類をカテゴリーに分けて整理します。

【相談前に自分で揃えておきたい書類の例】
物件購入時に受け取った書類 ■共通
・登記識別情報通知書(登記済権利証)
・間取図
■戸建ての場合
・建築確認済書
・検査済証
■マンションの場合
・管理規約(使用細則)
・重要事項説明書
債権者から送られてきた書類 ・住宅ローンの残高証明書
・住宅ローンの返済予定表
・督促状や催告書
・代位弁済通知書や差押・競売開始決定通知書
自分で取得が必要な書類 ■共通
・固定資産評価証明書(土地と建物分)
■戸建ての場合
・地積測量図や境界確認書
■マンションの場合
・管理費と修繕積立金の明細書
本人確認書類 ・運転免許証
・マイナンバーカード
・印鑑証明書
・住民票の写し
・印鑑証明書の原本

不動産業者と媒介契約を結ぶときに必要な書類

媒介契約時には、不動産業者が正式に販売活動を開始できるよう、物件や権利関係を証明する書類を提出します。債権者への報告資料としても使われるため、不備がないように揃えることが大切です。

媒介契約時には、下記のような書類も追加で必要となります。

  • 登記識別情報通知書(登記済権利証)
  • 住民票の写し
  • 印鑑証明書の原本

なお、下記に関しては、不動産業者が用意します。

  • 専属(専任)媒介契約書
  • 不動産売買契約書
  • 評価証明書他取得に関する委任状

媒介契約締結後から決済までに必要な書類

媒介契約締結後は、「物件購入時に受け取った書類」「債権者から送られてきた書類」「本人確認書類」のほかに、自分で用意が必要な下記3点の書類が必要になります。

  • 固定資産評価証明書
  • 地積測量図・境界確認書(戸建ての場合)
  • 管理費と修繕積立金の明細書(マンションの場合)

ただし、必要書類の提出のタイミングは、業者によって異なるケースもあるため、早めに用意しておくのがおすすめです。

「固定資産評価証明書」は、不動産の所在地の市町村役場で取得が可能です。役場の窓口のほか、郵送やオンライン申請に対応している自治体もあります。

戸建ての場合、過去に売主や所有者が測量を行っていれば「地積測量図・境界確認書」を所有しているが、なければ新規で取得しなければなりません。まずは法務局で登記に地積測量図が添付されていないか確認し、添付があれば交付を依頼します。添付がない場合は、土地家屋調査士に依頼し、隣地所有者の立ち合いのもと、土地の境界を確定させてから「境界確認書」を作成してもらわなければなりません。ただし、確定測量は任意の工程なので、任意売却では時間的な制約から実施せずに進められる場合もあります。

マンションの「管理費と修繕積立金の明細書」は、これまで届いている請求書で代用できることがあるものの、正式な書類は管理会社に依頼しなければなりません。

なお、下記に関しては、不動産業者が用意します。

  • 不動産売買契約書
  • 重要事項調査報告書
  • 査定書・土地建物の評価証明書
  • 抵当権抹消に関する委任状
  • 配分表(配分案)
  • 不動産の写真(外観・内部の特徴がわかるもの)
  • 任意売却に関する申出書(場合によって不要)
  • 実査チェックシート(場合によって不要)

任意売却にかかる費用

最後は、任意売却にかかる費用を確認しましょう。

かかる費用 費用目安
不動産業者の仲介手数料 売却価格による
抵当権抹消費用・司法書士への報酬 1万6,000円前後
売買契約書に貼る印紙代 1万~3万円
滞納している税金・費用 滞納額による
引越し費用 10万~30万円程度
そのほか状況に応じてかかる費用 状況による

任意売却は、一般的に、売却代金から不動産業者への報酬を含め、かかった費用が支払われるため、手元に資金がなくても依頼が可能です。

不動産業者の仲介手数料

不動産業者に依頼すると、仲介手数料が発生します。仲介手数料は、宅地建物取引業法によって上限が定められており、売却価格に応じて算出されます。例えば、不動産の売却価格が、200万円超400万円以下の場合「売買価格×4%+2万円+消費税」・400万円を超える場合「売却価格×3%+6万円+消費税」が仲介手数料の上限となります。

■2,000万円の物件の仲介手数料上限の計算例
2,000万円× 3% = 60万円
60万円 + 6万円 = 66万円(税別)
66万円 × 0.1 = 6万6,000円(税込)
仲介手数料の上限は、66万円 + 6万6,000円で72万6,000円となる

任意売却では、仲介手数料も売却代金から差し引かれる形で支払われるのが一般的で、事前に自己資金を用意する必要はありません。依頼前に上限額と精算方法を確認しておくことで、売却後のトラブルを防ぐことができます。

抵当権抹消費用・司法書士への報酬

任意売却では、抵当権抹消にかかる費用と司法書士への報酬が発生します。抵当権は住宅ローンの返済担保として金融機関がローンを組んだ際に設定するもので、抹消しなければ所有権移転はできません。登記手続きは法務局への申請が必要で、専門的知識が求められるため、通常は司法書士に依頼します。

抵当権の抹消費用は登録免許税1,000円/件に加え、司法書士報酬として1万6,000円前後が一般的です。ただし、いずれも売却代金から支払われるため、売主側が用意する必要はありません。

売買契約書に貼る印紙代

印紙代は、売買契約書に印紙を貼付するための費用です。印紙税は国税で、契約金額に応じて金額が決まり、1万~3万円が一般的です。例えば、売買価格が1,000万超5,000万円以下の物件なら1万円、1億円以下の物件なら3万円(2027年3月31日まで延長の軽減税率適用時)の印紙代がかかります。

印紙代は契約書の作成者が負担するため、売主・買主のどちらが負担するかは事前の取り決めによって変わります。任意売却では売主が負担するケースが多いものの、いずれの場合でも売却代金から精算できるため、別途現金を用意する必要はありません。

滞納している税金・費用

任意売却では、滞納している税金やその他費用も売却代金から支払う必要があります。具体的には、固定資産税や都市計画税、マンションの管理費・修繕積立金、共益費などが該当し、滞納があるままでは所有権移転ができません。

滞納している分の支払いは売主の債務として扱われるため、売却後に買主へ引き継がれないよう、決済時に精算されます。滞納額が多い場合でも、任意売却では売却代金から優先的に充当されるため、事前に全額を用意する必要はありません。ただし、売却代金で滞納分の全額をまかなえない場合は、自分で残額を別途支払う必要があります。

引越し費用

売却後に新居へ移るための引越し費用は、債権者からの同意が必要なので、場合によっては自己負担となりますが、物件の売却代金から充当できることもあります。

債権者は、ローンの残債回収を最優先としているため、物件の売却価格や売却後のローン残債によっては、引越し費用を認めない可能性があります。引越し費用の支給が許可された場合の目安は、荷物量や移動距離、時期によって異なりますが、10万~30万円程度が一般的です。

そのほか状況に応じてかかる費用

物件や契約の状況によっては、不動産が差し押さえられている場合の「差押解除費用」や、登記識別情報通知書(登記済権利証)を紛失している場合の「司法書士への依頼報酬」がかかります。差押解除費用は売却代金から差し引いてもらえるものの、登記識別情報を紛失した場合の報酬は自己負担が一般的です。

その他、必要に応じて建物の解体費用、土地境界の確定や測量費、残置物処分費用、修繕費用などが発生することもあります。債権者との話し合いにもよりますが、多くは売却代金から精算できます。

まとめ

任意売却は、住宅ローンの返済が困難になった場合でも、競売を避けつつ売却代金から必要な費用を精算できる手段です。不動産業者への仲介手数料や滞納している税金などかかる費用の多くは売却代金から差し引かれるため、自己資金がなくても選択できます。

一方で、債権者が設定した任意売却の期限を過ぎると競売手続きへ移行するリスクがあるため、早期の行動が重要です。競売となれば、不動産の売却価格は大幅に下がるためローン残債が多く残るうえ、立ち退きまでの猶予が短いなど精神的な負担も大きくなります。

競売を避けるためには、経験豊富で金融機関や債権者との交渉力が高い不動産業者を選ぶことが必須といえます。複数の任意売却専門の不動産業者に相談し、過去の実績や対応のスピード、誠実さ、金融機関との関係性を比較して、依頼先を決めましょう。優良な業者と契約できれば、より好条件での任意売却に繋がります。

任意売却に関するよくある質問

任意売却の成功率はどのくらい?

任意売却の成功率は、一般的に50〜60%程度といわれています。厳密には、債権者が売却に同意し、買主が見つかるまでに期限内で契約成立するケースの割合です。

任意売却の成功の可否は、物件の条件や販売価格、任意売却を担当する業者の営業力、売却開始のタイミングによって大きく左右されます。物件の販売活動の開始が遅れると、買い手が見つからなかったり、競売手続きが進行してしまったりして、成功率が下がる傾向があります。ローン返済が滞ったら、できるだけ早く経験豊富な専門業者へ相談することが重要です。

任意売却後で売れなかったらどうなる?

任意売却で買い手が見つからず契約が成立せず、債権者との合意による売却期限を過ぎた場合、裁判所による「競売」手続きに移行します。競売は、市場価格より30~50%安く落札される傾向があり、売却代金でローン残債を完済できない可能性が高まります。

さらに、競売情報は公告やインターネットで公開されるため、近隣や知人に経済状況が知られるリスクもあります。立ち退き時期も落札者の都合で決まるため、引越し準備の猶予が短く、精神的な負担も大きくなります。

そのため、任意売却を行うのであれば期限を意識し、早めに信頼できる業者へ相談して売却成功の確率を高めることが重要です。

任意売却はどのくらいの期間がかかる?

物件の条件や市場状況によって異なりますが、任意売却にかかる期間は、一般的には3〜6ヶ月が目安とされています。ただし、売却活動を始める前に債権者との交渉や必要書類の準備が必要なため、実際の着手から契約成立までの期間はさらに長くなります。

また、任意売却では、競売手続きに移行する期限が設けられます。特に、債権者から競売開始決定通知が届いた後は、残された時間が限られるため、早めに任意売却専門の不動産業者へ相談し、スピーディーかつ計画的に売却活動を進めることが重要です。

任意売却について法律事務所に相談できますか?

法律事務所でも、任意売却に関する一般的な相談や債権者との交渉、契約内容の確認などは対応可能です。特に、債務整理や競売回避の観点からアドバイスを受けたい場合には、有益なサポートが得られるでしょう。

ただし、不動産の売却そのものは宅地建物取引業の免許が必要なので、法律事務所単独で売却活動まで行えるケースは多くありません。実際の売却手続きは不動産会社と連携して進める必要があります。

任意売却専門の不動産業者であれば、不動産売買に強い法律事務所と提携しているところもあるので、まずは不動産業者に相談し、必要に応じて弁護士を紹介してもらうのがおすすめです。

任意売却について借入している金融機関に相談できますか?

借入先の金融機関でも、返済が難しくなった場合には支払い方法の見直しや任意売却の提案を受けられることがあります。場合によっては、金融機関が提携している任意売却専門の不動産業者を紹介されることもあります。

ただし、金融機関側から紹介される不動産業者の場合、債権者側に忖度してしまうケースもあるため、売却価格や契約条件が債務者にとって最適な形でまとまるとは限りません。そのため、金融機関からの紹介だけに頼らず、自分でも複数の不動産業者を比較検討し、信頼できる依頼先を選ぶことが重要です。

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