事故物件の損害賠償は遺族に請求できる!請求額の目安や未払い家賃はどうなる?

事故物件の損害賠償は遺族に請求できる!請求額の目安や未払い家賃はどうなる?

入居者が死亡し、所有する賃貸物件がいわゆる「事故物件」となった場合、オーナーは損害賠償を請求できる可能性があります。ただし、裁判で請求が認められるかどうかは下記のように、入居者に故意や過失があったかどうかが重要なポイントとなります。

請求の可否 具体例・条件 補足・説明
認められる場合 自殺、火の不始末など、入居者の故意・過失による死亡 入居者に責任がある場合は、裁判例上も遺族や連帯保証人への損害賠償請求が可能
認められない場合 孤独死、病死、他殺など、入居者に責任がない死亡 入居者に故意・過失がない場合は、遺族に損害賠償請求できないのが原則
請求が困難な場合 自然死で遺体発見が遅れ、腐敗や異臭で特殊清掃・大規模リフォームが必要になった場合 入居者に過失がない限り請求は基本的に困難。借主の健康状態や監督義務者の著しい過失など、特段の事情がある場合のみ例外的に請求が検討される可能性あり

このように入居者の責任の有無や死亡の状況によって請求の可否が異なるため、事案ごとの判断が非常に重要です。

また、事故物件化した場合にオーナーが請求できる損害の種類と具体例は下記のようになっています。

損害賠償の種類 具体例
原状回復費用(部屋を再び貸し出し・売却可能な状態に戻す費用) ・特殊清掃(除菌・脱臭・汚染箇所の清掃)
・オゾン脱臭、害虫駆除
・床・壁紙の張替え、畳撤去
・破損設備の交換、リフォーム
逸失利益(事故物件化によって得られなかった利益) ・次の入居者が決まるまでの空室期間の家賃
・通常家賃と減額後家賃の差額
・売却価格の下落分

上記の表から、事故物件に関連してオーナーが請求可能な損害には、部屋を元の状態に戻すための原状回復費用と、事故物件化によって得られなかった利益である逸失利益の2種類があることがわかります。それぞれ、清掃やリフォーム、家賃差額や売却価格の下落など、具体的な対応や損害内容に応じて請求の対象が異なります。

これらの損害を請求する際は、まず請求先を正確に特定することが非常に重要です。

通常は相続人や連帯保証人が対象となりますが、相続人が複数いる場合はそのうちの一人に請求でき、相続放棄した相続人には請求できません。相続人がいない、または全員が相続放棄した場合は、家庭裁判所が選任する相続財産清算人が請求先となります。

請求の手続きには専門的な知識が必要なため、弁護士に依頼することで適切かつ迅速に対応することが可能です。

なお、損害賠償請求が認められず、事故物件になったことでの経済的ダメージを回避したいと考えるオーナー様も少なくありません。その場合には、専門の買取業者への売却が現実的な選択肢となります。クランピーリアルエステートでは、事故物件の査定から売却までをワンストップでサポートし、迅速かつ安心できる取引を実現しています。処分を検討されるオーナー様は、ぜひご相談いただければと思います。

本記事では、事故物件の法的な位置づけ、損害賠償請求の可否や請求先、実際の手続きの流れ、そして実務上の留意点について整理します。事故物件への対応に悩まれている方にとって、適切な判断材料となれば幸いです。

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目次

事故物件とは?定義と判断基準

事故物件の明確な定義はありませんが、一般的には自然死・不慮の事故死以外の死や、特殊清掃が必要になる死が発生した心理的瑕疵のある物件を指します。

心理的瑕疵とは「知っていたら契約しなかった」と思われる可能性がある重要事項のことで、具体的には以下のようなケースが該当します。

  • 自殺や他殺などで入居者が亡くなった
  • 事件や事故によって命を落とした
  • 火災や災害により居住環境が著しく損なわれ、入居希望者に心理的抵抗を与える

自然死や不慮の事故死は原則として事故物件には含まれませんが、発見が遅れ腐敗が進行し、部屋の状況が心理的抵抗を与える場合には、事故物件として扱われることがあります。このように、事故物件は単に死亡の有無だけで判断されるわけではなく、入居者や購入希望者に与える心理的影響の大きさによって変わる点が特徴です。

さらに、事故物件かどうかは、賃貸契約や売買契約における「入居者や購入希望者に知らせる義務(告知義務)」とも深く関わります。たとえば、過去に自殺があった部屋を新たに貸す場合には、契約前に入居希望者に伝える必要があります。

国土交通省が2021年10月に公表した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」も、この告知義務があるかどうかを判断する目安を示したものに過ぎません。ガイドラインを事故物件の定義そのものだと誤解すると、告知すべき範囲を間違えて契約トラブルに発展するおそれがあります。

事故物件かどうか迷った場合は、不動産業者などの専門家に相談し、適切な判断や対応を仰ぐことがおすすめです。

損害賠償請求できる場合|入居者の死亡理由が自殺やその他過失による

入居者の死因によっては、オーナーが遺族に損害賠償を請求できるケースがあります。

以下の表では、代表的な死因ごとに請求の可否と判断基準を整理しています。

死因 貸主から遺族への損害賠償請求 具体的な判断基準
自殺 原則請求可能 入居者本人の故意による行為のため、原則として貸主は損害賠償を求めやすい
火災・事故による死亡(入居者の重大な過失あり) 原則請求可能 火の不始末など入居者に重大な過失がある場合は原則請求可能

入居者が賃貸物件内で自殺した場合、貸主は故人の相続人に対して損害賠償を請求できます。自殺は本人の意思による行為であり、部屋の価値低下や空室期間による損害が「故意」に基づくものとみなされるためです。

また、自殺以外でも火の不始末など入居者に重大な過失が認められる場合には、損害賠償請求が認められるのが原則です。つまり、入居者の死が故意や重大な過失によるものであれば、貸主が損害賠償を請求できる可能性が高いといえます。

このように、損害賠償請求が認められるかどうかは、入居者の死因や過失の有無、事故の状況などによって判断されるため、ケースごとの確認が重要です。

なお、実際にどの範囲・金額まで請求が認められるかは、判例や裁判所の判断により異なります。

損害賠償請求できない場合|入居者の死亡理由が孤独死・病死・他殺など入居者の責任でないもの

入居者に責任がない死因の場合は、原則として損害賠償を請求できません。

以下はその代表例です。

死因 貸主から遺族への損害賠償請求 具体的な判断基準
孤独死・病死 原則請求不可 遺体発見が遅れ、腐敗や悪臭で特殊清掃・リフォームが必要になった場合でも、病死等で借主の過失が認められなければ、実質的に必要費用を遺族に請求するのは困難
他殺 原則請求不可 被害者の落ち度がないため請求不可。事件性が高く報道される場合は物件イメージが大きく下がり、貸主の金銭的損失が大きいケース

孤独死や病死は故人に過失がないため、貸主は遺族に対して損害賠償を請求できません。国土交通省のガイドラインでも、自然死・不慮の事故・病死は原則として告知義務に該当しないとされています。

例え発見が遅れて腐敗や異臭が発生し、特殊清掃や大規模リフォームが必要となった場合でも、入居者に過失がなければ、その費用を遺族に負担してもらえる可能性は低いです。

また、他殺による死亡も入居者本人に責任がないため、遺族に損害賠償を行うことはできません

とくに事件性が高く報道などで広く知られた場合には、物件のイメージが著しく悪化し、資産価値の下落リスクが最も大きいケースといえるでしょう。

事故物件の損害賠償請求先は誰になる?

事故物件が発生した場合でも、貸主が損害賠償を請求できる相手は限られています。基本的には故人の相続人に対して行いますが、状況によって以下のように対応は変わります。

  • 相続人が複数いる場合は一人に対して請求する
  • 相続人が相続放棄した場合、その人には請求できない
  • 相続人がいない・全員が相続放棄した場合は相続財産清算人に請求できる

請求先を間違えると賠償を受けられなくなる恐れがあります。戸籍収集などで相続人を確認してから進めることが大切です。

相続人が複数いる場合は一人に対して請求する

事故物件に関する損害賠償は、民法第427条の定める「不可分債務」として扱われます。不可分債務とは、複数人で分けて支払うことができない債務です。

相続人が複数いたとしても、損害賠償金は分割して支払うことはできません。例えば相続人が2人いたとしても、それぞれが2分の1ずつ貸主に直接支払うことはできず、1人がまとめて全額を支払う必要があります。

そのため、貸主が損害賠償を請求できるのは相続人のうち1人に対してのみです。ただし実際に支払った相続人は、他の相続人に相続分に応じて負担を求めることができます。

また、入居者の死亡を理由に賃貸借契約を解除する場合には、民法第544条の「解除権の不可分性」により、相続人全員に対して解除を申し入れなければなりません。一部の相続人だけに解除を通知しても契約は終了せず、後から「契約はまだ続いている」と主張されるおそれがあります。

確実に解除を成立させるためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などを取得し、相続人を特定したうえで全員に通知する必要があります。

相続人が相続放棄した場合、その人には請求できない

相続人が相続放棄をすると、その相続人には損害賠償を請求できません。相続放棄とは、被相続人(亡くなった入居者)の財産や権利・義務を一切承継しないことを指します。

入居者の相続人が相続放棄をした場合、賃貸借契約に基づく権利義務も放棄されるため、その人は原状回復費用や逸失利益に関する責任を負うことはありません。貸主が請求できるのは、別の相続人や連帯保証人などに限られます。

相続放棄が有効となるのは、相続人が相続の開始を知ってから3ヵ月以内に家庭裁判所に申立てをした場合です。3ヵ月を経過し放棄の手続きが行われなければ、その相続人は原則として相続を承継することになり、損害賠償の請求対象となります。

相続人がいない・全員が相続放棄した場合は相続財産清算人に請求できる

相続人がいない、または全員が相続放棄をした場合には、貸主は「相続財産清算人」に対して損害賠償を請求できます。

相続財産清算人とは、相続人に代わり故人の財産を適切に管理・処分する人で、家庭裁判所が選任します。弁護士などの専門職が選ばれることが多く、相続人がいない場合の最終的な窓口です。

ただし、相続財産清算人の選任には時間と手間がかかります。

相続人を探すための公告が最低6ヵ月以上必要で、その後さらに債権者や受遺者を確認するために2ヵ月以上の公告期間を設ける必要があります。そのため、実際に請求ができるようになるまでに8ヵ月以上かかるケースも少なくありません。

さらに、請求が認められたとしても、故人の財産はまず税金や借金などに充てられるため、残された財産が少なければ貸主が受け取れる金額も限定されます。

場合によっては、回収額よりも裁判費用のほうが高額になるリスクもあるため、実務上は請求の可否を慎重に判断する必要があります。

事故物件の損害賠償請求には時効がある

損害賠償請求権には時効があるため、無期限に請求できるわけではありません。民法第724条1項・2項により、「損害および加害者を知った時から3年(生命又は身体を害する不法行為の場合は5年)」または「不法行為時から20年」のいずれか早い時点で請求権は消滅します。

起算点は必ずしも死亡時点ではなく、貸主が損害の発生と請求先を事実上特定できた時点から進行します。また、時効は自動的に成立するのではなく、相手方が「時効を援用」して初めて効力を持つものです。

相続人や相続財産清算人との交渉が長引けば、その間に時効が完成してしまう恐れがあります。内容証明郵便の送付や裁判上の請求によって時効を中断する方法もあるため、できるだけ早めに弁護士へ相談することが望ましいでしょう。

事故物件化した場合に請求できる損害賠償の種類と費用

事故物件となった場合、貸主が請求できる損害賠償は主に「原状回復費用」と「逸失利益」に分けられます。

損害賠償の種類 内容 根拠・具体例
原状回復費用 部屋を再び貸せる状態に戻すために必要な費用 ・特殊清掃や消臭
・破損した設備の交換、リフォーム
・民法621条に基づき請求可能
※経年劣化や通常使用による損耗は対象外
逸失利益 事故物件化によって本来得られたはずの利益 ・次の入居者が決まるまでの空室期間の家賃
・通常の家賃と減額後の家賃の差額
・売却価格の下落分
※判例や事例により補填範囲は異なる

以下では、それぞれの内容や具体的にどのような費用が対象となるのか解説します。

原状回復費用│特殊清掃やリフォーム費用など

原状回復費用とは、入居者の死亡によって損傷や汚染が生じた部屋を、再び貸し出し・売却できる状態にまで回復させるための費用です。民法621条では、原状回復義務は「通常の使用や経年劣化による損耗を除き、入居者の責めに帰すべき損傷部分」に限定されると定められています。

したがって、借主の過失による死(自殺等)の後に遺体の発見が遅れ、床や壁にシミ・臭気が残った場合には、その除去・修復のための特殊清掃やリフォーム費用が請求の対象となります。一方、通常の老朽化や使用に伴う消耗については請求できません。

実際に発生する原状回復費用は、部屋の広さや損傷の程度によって変動します。費用相場は以下のとおりです。

【間取り別の目安】

間取り 費用目安
1R・1K 4万〜30万円
1DK 5万〜15万円
1LDK 8万〜20万円
2DK 9万〜30万円
2LDK 12万〜35万円
3DK 15万〜50万円
3LDK 18万〜55万円
4LDK以上 20万〜60万円

【作業内容別の目安】

作業内容 費用目安
オゾン脱臭 3万円〜5万円
害虫駆除 1万円〜
床清掃 3万円〜
畳撤去 3,000〜9,000円/枚
消臭・除菌 1万〜2万円
汚物撤去 2万円〜

これらの費用は、以下のような作業で発生します。

  • 特殊清掃(除菌・脱臭・汚染箇所の清掃)
  • オゾン脱臭や害虫駆除
  • 床・壁紙の張替えや畳の撤去
  • 利用できなくなった設備の交換

請求にあたっては、見積書や写真、領収書などの証拠を確保し、経年劣化部分と明確に区別しておくことがトラブル防止につながります。

逸失利益│空室期間の賃料や家賃減額による損失など

逸失利益とは、本来得られるはずだったにもかかわらず得られなかった利益のことです。賃貸物件の場合は、「次の入居者が決まるまでの空室期間の家賃」や「通常家賃と減額後の家賃との差額」などが含まれます。

事故物件は、国土交通省のガイドラインに基づき、原則3年間は「自殺や孤独死など心理的瑕疵にあたる死亡があった部屋」であることを告知する義務があります。そのため、心理的な抵抗感を持つ人も多く、家賃を下げなければ入居者が見つからないケースが多いのです。

家賃減額に関する損害賠償請求の相場は、概ね2〜3年間の減額分の合計とされています。これはガイドラインにおける告知義務期間(3年)に基づくものです。

減額割合は事故の内容によって異なり、一般的には20〜30%程度、場合によっては50%以上の減額が必要になることもあります。売買物件の場合には、売却価格の下落分が逸失利益となり、特に事故情報が告知されなかった場合に損害賠償が認められるケースがあります。

事故物件化した場合に未払いの家賃も請求できる

事故物件となった場合でも、未払いの家賃については相続人に請求することが可能です。なぜなら、民法第896条において「被相続人の権利義務は相続人に包括的に承継される」と定められているためです。

請求できる範囲は、入居者が亡くなった時点で発生している未払い分だけでなく、相続人が部屋を明け渡し、完全に退去する日までの賃料が含まれます。

ただし、相続人が相続放棄をした場合、法律上は最初から相続人ではなかったものとみなされるため未払い家賃の請求はできません。

未払い家賃の請求可否は、相続人の有無や相続放棄の有無によって変わるため、早めに確認しておくことが重要です。

事故物件関連で損害賠償請求した判例

事故物件に関する損害賠償請求は、実際の裁判例でも判断が分かれる場合があります。裁判所は「遺体の発見状況」や「心理的瑕疵が及ぶ範囲・期間」などを重視し、原状回復費用や逸失利益の一部を認める一方で、過剰な請求は退ける傾向にあります。

ここでは、腐乱死により大規模修繕と逸失利益が認められた判例と、自殺による逸失利益が一部認められた判例を紹介します。

入居者が病死し、腐乱した状況で発見された際の損害賠償請求の判例

東京地方裁判所の平成29年判決では、事件性がなくても、遺体が腐敗した状態で発見された場合には、大規模な原状回復工事が必要と認められました。さらに、心理的瑕疵が生じたことによる逸失利益の請求も認容されています。

本件は、賃料7万円・管理費1万円の賃貸住宅において、入居者が餓死し、死亡から約1か月後に腐乱状態で発見された事案です。貸主は、室内の著しい汚損と遺体の腐敗状況により、約654万円の原状回復費用と、約136万円の逸失利益について損害賠償を請求しました。

裁判所は、室内の状況や原告の対応を踏まえ、一度スケルトン状態(室内を全解体した状態)にしてから設備交換・床板の張替えなどを行うことはやむを得ないと判断。さらに心理的瑕疵については「賃貸不能期間1年+賃料減額期間2年」として算定し、逸失利益を認めました。

この判例は、事故物件における損害賠償の範囲を判断する際、事件性の有無ではなく、遺体の発見状況や室内の損耗程度が重視されることを示した事例です。

アパート室内の自殺により貸主が損害賠償請求した判例

東京地方裁判所平成19年8月10日の判決では、賃貸物件内で入居者が自殺した場合における貸主の損害賠償請求が一部認められました

本件は、東京都区内のワンルームマンション(賃料月額6万円)において入居者が自殺した事案です。事故後、貸室は月額3万5,000円で新たな借主に貸し出されました。貸主は、貸室の逸失利益約288万円(132万円余+156万円余)と、隣室の逸失利益388万円余を損害として請求しました。

裁判所は、事故による心理的瑕疵を認め、本件貸室については「自殺後1年間は賃貸不能、その後2年間は賃料を半額にせざるを得ない」と判断。その結果、132万円余の損害賠償を認容しました。

一方で、残りの貸室逸失利益156万円余と隣室の逸失利益については棄却されています。裁判所は「心理的瑕疵は事故のあった部屋に限定され、隣室にまで当然に影響が及ぶとはいえない」とし、因果関係の範囲を限定的に解釈しました。

この判例は、事故物件における損害賠償の範囲について、心理的瑕疵が認められる期間と影響範囲を明確に制限した事例として位置付けられています。

損害賠償請求の手続きの流れ

損害賠償請求と聞くと、裁判をイメージされる人も少なくありません。しかし実際には、裁判に進む前に「交渉」や「調停」といった方法を取るのが一般的です。

損害賠償請求の方法には「交渉」「調停」「訴訟」の3つがあり、それぞれ特徴があります。

方法 内容 ポイント
交渉 当事者同士が裁判外で話し合い、和解を目指す方法。合意できれば合意書を作成する。 最も手軽。早期解決につながる一方で、相手が応じない場合は話が進まない。
調停 簡易裁判所の調停委員を介して話し合いを進める方法。合意内容は調停調書にまとめられ、判決と同じ効力を持つ。 第三者が入ることで冷静に話し合いができ、話がまとまりやすくなるが、強制力はない。
訴訟 裁判を起こし、裁判官の判断を仰ぐ方法。140万円以下は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所に提起する。 判決により強制執行が可能。ただし時間と費用がかかる。

一般的には次のような流れになります。

まず、相手に内容証明郵便を送付し、請求した事実と内容を証拠として残したうえで、任意での支払いを求める交渉から始めます。

交渉がまとまらないときは、簡易裁判所に調停を申し立て、調停委員を介して合意を図ることになるでしょう。

それでも解決に至らず、加害者が支払いに全く応じない場合には、訴訟を提起して裁判所の判断を仰ぐことになります。

最終的に判決が確定すれば、強制執行によって相手の財産を差し押さえることも可能です。

オーナーの対応次第では逆に損害賠償請求されかねないため注意が必要

入居者が亡くなって事故物件となった場合、オーナーが対応を誤ると逆に損害賠償を請求されるリスクがあります。

対応に注意が必要なのは次の2点です。

  • 遺品や残置物は相続人の確認をしてから適切に処理する
  • 事故物件を売却・賃貸する際には告知義務を果たす

ここでは、それぞれの注意点を具体的に解説します。

遺品や残置物は相続人の確認をしてから適切に処理する

入居者が亡くなり事故物件となった場合、その部屋に残された家電や家具、衣類などの遺品や残置物は、相続人に所有権が承継されます。

したがって、貸主であっても無断で処分することは認められていません。無断で撤去した場合には、所有権侵害として損害賠償責任を負う可能性もあります。

相続人が撤去に応じない場合でも、独断で処分することはできません。そのため、貸主が残置物を撤去するには訴訟を提起して建物明渡判決を得てから、裁判所を通じて残置物撤去の強制執行を申し立てる必要があります。

一方で、相続人が正式に相続放棄をした場合には、残置物の所有権も承継されないため、貸主が処分できます。

また、次のような場合には貸主が残置物を処理できる可能性があるでしょう。

  • 相続人が残置物の処分に同意した場合
  • 賃貸契約時に「残置物処理に関する特約」が定められている場合
  • 「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を用いて、あらかじめ受任者が指定されている場合

とくにモデル契約条項を導入しておけば、入居者の死亡時に指定受任者が残置物を処分できるため、貸主が直接相続人とやり取りする負担を減らし、トラブル防止につながります。

事故物件を売却・賃貸する際には告知義務を果たす

事故物件を売却・賃貸する場合、貸主・売主は「告知義務」を果たさなければなりません。告知義務とは、不動産の取引において、買主や借主の判断に重要な影響を与える事実を必ず伝えなければならないものです。

心理的瑕疵のある物件であるにもかかわらず、事故物件であることを隠したまま契約すると「契約不適合責任」を問われ、損害賠償を請求される可能性があります。

例えば、神戸地裁の平成28年7月29日判決では、強盗殺人事件の発生を告知せずに土地を売却した事案において、売買代金の約28%(5,575万円中1,575万円)が損害賠償として認められました。ただし、すべての事案で同様の比率が認められるわけではなく、損害額は事故の内容、事件性、社会的影響、契約条件次第で変動します。

告知すべき内容の例は以下のとおりです。

  • 事案の発生時期:死亡や事件がいつ起きたのか
  • 事案の発生場所:室内、ベランダ、共用部分など具体的な場所
  • 入居者の死因:自殺、他殺、事故死など
  • 特殊清掃の有無:清掃や修繕が必要だったかどうか
  • 情報を開示しなかった理由:自然死などガイドライン上で告知不要とされた場合は、その根拠

国土交通省のガイドラインによれば、賃貸借契約における告知義務は、原則として死亡事案の発生からおおむね3年間とされています。ただし、事件性や社会的影響が大きい場合は3年を超えても告知が必要です。

一方、売買契約については、3年経過後も告知義務がなくなることはなく、実質的に長期間義務が続くとされています。過去の判例では数十年前の事案でも心理的瑕疵が認定されたケースもあるため、長期間経過していても告知しておくのが望ましいでしょう。

オーナーが事故物件の損害に備えるための対策

事故物件による損害は、オーナーにとって大きな経済的リスクとなります。
しかし、あらかじめ対策を講じておけば、その負担を大幅に軽減することが可能です。

損害に備えるための主な対策は次の2つです。

  • 保険へ加入する
  • 管理会社を厳選する

ここからは、それぞれの対策について詳しく解説します。

保険へ加入する

入居者の孤独死や不慮の事故が起きた場合、オーナーは特殊清掃費用や原状回復費用、空室期間による家賃損失といった大きな負担を背負う可能性があります。こうしたリスクに備える手段のひとつが「家賃補償保険」や「孤独死対応保険」です。

保険の種類 主な補償内容
家賃補償保険 火災や事故で部屋を貸せない期間の家賃損失を補償
孤独死対応保険 孤独死や事件・事故に伴う清掃費用、修繕費用、空室損失を補償

これらの保険に加入しておけば、清掃・修繕費用や空室による家賃減少を一定期間カバーでき、万一の際の経済的負担を大きく軽減できます。数百万円規模の修繕費用や、数ヵ月〜1年分の家賃損失を補償する商品もあり、社会問題化する孤独死リスクへの有効な備えとなるでしょう。

なお、すでに加入中の火災保険に「家主費用特約」や「家賃収入特約」などのオプションを追加することで、孤独死や事故が原因の清掃費用や家賃損失にも対応できるケースもあります。

補償範囲や費用は商品によって異なるため、自身の物件や入居者層に合わせて適切なものを選ぶことが大切です。

管理会社を厳選する

賃貸物件の事故物件化を防ぐためにもっとも重要なのは、信頼できる管理会社を選ぶことです。事故物件の原因となりやすい入居者トラブルや孤独死も、入居者審査を徹底すればリスクを軽減できます。

管理会社の役割の中でも入居者審査は特に重要で、以下のような点をチェックします。

  • 家賃の支払い能力:収入や勤務状況から安定して家賃を払えるか
  • 保証人や保証会社の有無:万一の場合に備えられる体制があるか
  • 人物の信用性:過去のトラブル履歴や反社会的勢力との関わりの有無など

実績のある管理会社であれば、過去のデータや経験をもとにトラブルを起こしやすい入居者を見抜き、リスクを事前に回避できます。

空室対策の一環として「入居審査を緩めましょう」と提案される場合もあります。しかし、安易に審査基準を下げると、将来的なトラブルや事故物件化のリスクを高めかねません。

弊社クランピーリアルエステートは、入居審査の徹底に加え、弁護士や司法書士とのネットワークを活かし、オーナー様に代わって安心できる賃貸管理を行っています。

「事故物件化のリスクを少しでも抑えたい」「信頼できるパートナーに管理を任せたい」という人は、ぜひご相談ください。

事故物件を処分したい場合は事故物件専門の買取業者にご相談ください

事故物件は通常の市場では買い手がつきにくく、売却が長期化するリスクがあります。そのため、早期に処分したい場合は事故物件専門の買取業者に依頼するのが現実的な解決策です。

弊社クランピーリアルエステートは、事故物件や訳あり不動産を専門に多数取り扱ってきた実績があり、一般の不動産会社では対応が難しいケースでもスピーディーかつ安心の取引を実現しています。査定から契約、決済までワンストップで対応できるため「できるだけ早く現金化したい」「誰にも知られずに処分したい」といったニーズにも柔軟に対応可能です。

事故物件を早く安全に処分したいとお考えの方は、ぜひ無料相談窓口よりお問い合わせください。

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まとめ

賃貸物件が事故物件となった場合でも、損害賠償が認められるかどうかは死亡理由によって異なります。

入居者が自殺した場合は損害賠償請求できる一方、孤独死や病死、他殺といった入居者の責任ではないケースでは基本的に請求はできません。

また、損害賠償の請求は故人の相続人に行いますが、相続放棄されている場合は請求できません。相続人が存在しない、または全員が放棄した場合には、相続財産清算人に対して請求することになります。

賃貸物件の事故物件化を防ぐためには、信頼できる管理会社を選ぶことが大切です。

弊社クランピーリアルエステートは、入居者審査の徹底やトラブル防止に加え、弁護士や司法書士とのネットワークを活かしてオーナー様をサポートしています。事故物件リスクを少しでも減らしたいとお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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