再建築不可になる理由は?再建築可能にする対策も解説

再建築の可否を判断する前提として最初に確認すべきポイントは、再建築の可否を判断する前提として、所有している土地が建築基準法で定める「道路」と適切に接しているかどうかです。幅4m以上の建築基準法上の道路に、敷地の入り口が連続して2m以上接していない土地では、建築基準法で定める「接道義務」を満たしていないため、新築や建て替えができません。

下記の条件に当てはまる土地は、建築基準法の要件を満たさないため「再建築不可物件」として扱われます。

  • 再建築不可となる典型的な土地の例
  • 道路にまったく面していない土地
  • 入り口部分が2m未満の細い通路でしか道路へ出られない土地
  • 幅4m未満で法定の道路に該当しない通りにしか面していない土地
  • 路地部分が不足していて、避難経路として機能しない土地

再建築不可の土地にある建物を一度解体して更地にすると、その土地が建築基準法で定める道路の条件を満たさない限り、新しく建物を建てることはできません。大規模な修繕・リフォームも建築行為として扱われ、役所から建築確認が下りないため計画自体が成立しない場合もあります。

加えて、2025年4月の建築基準法改正で審査が厳格になり、構造に関わる工事は以前より実現が困難になりました。老朽化が進むほど、安全管理・維持費・固定資産税・近隣トラブルの負担が増えやすい点にも注意が必要です。

なお、建て替えができない土地でも、条件を整えることで再び建物を建てられるようにできる場合があります。

  • 敷地の一部を道路として提供し、道路幅を4m以上に広げる
  • 隣地を買い取り、道路への接面を2m以上に広げる
  • 隣地の一部を通路として借りて、道路までのつながりを確保する
  • 隣地と土地の一部を交換し、道路に2m以上接するようにする
  • 自分の土地に通路を整備して、正式な道路として認めてもらう

いずれの方法も、代表的なハードルは「費用負担が大きいこと」と「隣地所有者や役所との手続きに時間がかかること」です。法律上の条件をすべてクリアするのが現実的でない場合は、専門の買取業者に現状のままで引き取ってもらう選択肢が資金面・時間面で有利になるケースも少なくありません。

本記事では、再建築不可になる主な理由、再建築可能に近づけるための具体策、長期保有で生じやすいリスク、売却時に押さえたい実務ポイントを解説します。相続で物件を引き継いだ人や、老朽化で維持に悩む人は、解体や大規模な修繕・リフォームを決める前に、上記の対策可否と費用感を整理し、並行して買取ルートの査定も進めておきましょう。

なお、弊社クランピーリアルエステートでは、再建築不可の買取を行っています。仲介で売れないような物件も買取対象で、士業と連携して買取するため「共有者と揉めている」「相続登記が済んでいない」といった場合でも相談いただけます。

再建築不可になる理由

再建築不可物件とは、建築基準法で定められた接道義務や道路の規定を満たしていない土地に建つ建物を指します。

再建築ができない物件が存在してしまっている背景には、戦後の都市化や法整備が不十分だった時代に住宅が密集して建てられた歴史があります。当時は幅の狭い路地や周囲を他人の土地に囲まれた袋地にも住宅が建てられていました。その後、建築基準法が改正された際に接道義務が導入されました。結果的に、現行法に適合しない土地が多数残ることとなります。

再建築不可物件は、古い住宅地や都市部の密集地に集中しており、現在も相続や売買の場面で大きな課題となっています。まず、再建築ができない状態にある不動産の条件を詳しく確認しましょう。

  • 道路に接する敷地の間口が2m未満
  • 土地が道路に面していない
  • 接する道路が4m未満で建築基準法の規定外
  • 道路に接する路地部分が短い

再建築不可物件の典型的な原因は上記4つで、いずれも建築基準法で定められた安全確保のための基準を満たさない土地です。再建築不可物件に該当する場合、資産価値の低下や流通の難しさにつながり、相続や売却のハードルが上がります。特に、間口不足や非接道といった条件に該当する土地は、更地にしても住宅を新たに建てることはできません。

道路に接する敷地の間口が2m未満

建築基準法第43条では、建築物の敷地が建築基準法第42条で定義された道路に「連続して2m以上」接していなければならないと規定しています。

間口が2m未満の敷地は、接道義務を満たさないため、新築・建て替えの建築確認は下りません。間口不足の敷地の場合、消防車や救急車の進入経路を確保できず、防災上の安全性が担保できないためです。

間口が2m未満の敷地の現実的な用途は、自動車の常時出入りを伴わない利用が中心になります。具体的には、自転車・バイクの駐輪や植栽スペース、家庭菜園、人力搬入が可能な範囲の資材置場などが考えられます。自動車の月極駐車場としての運用は、進入幅や転回スペースの確保が難しく成立しにくいのが一般的です。

■「間口」とは?
建築基準法上の道路に接している敷地の接道部分の幅を指す。

土地が道路に面していない

建築基準法第43条によると、建築物の敷地は「建築基準法第42条で定義された道路」に接している必要があります。つまり、建築基準法上の道路に接していない敷地は、接道義務に不適合となり、新築・建て替えの建築確認は交付されません。緊急車両の進入路だけでなく避難経路も確保できず、防災上の安全性を担保できないことが不適合の理由です。

■「建築基準法上の道路」とは?
建築基準法第42条の「道路の定義」に該当する道路を指す。
・42条1項1号:国道・都道府県道・市区町村道といった道路法の適用を受ける公道
・42条1項2号:都市計画法・土地区画整理法などの事業で築造される道路
・42条1項3号:建築基準法施行時に既に存在し、特定行政庁が指定した道路
・42条1項4号:法令に基づく事業計画で築造予定として特定行政庁が指定した道路
・42条1項5号:特定行政庁が位置を指定した私道を含む位置指定道路
・42条2項:みなし道路(既成市街地の既存道を道路とみなす)
※42条1項の道路(1〜5号)=原則として幅員4m以上が必要
※42条2項(みなし道路)=4m未満でも可能

接する道路が4m未満で建築基準法の規定外

建築基準法第42条では、原則として幅員4m以上の通路が建築基準法上の「道路」として扱われます。ただし、建築基準法第42条2項の「みなし道路」であれば、4m未満でも法律上の道路とみなされます。幅員4m未満で、みなし道路にも該当しない通路は法的な道路としては扱われないため、接している該当敷地は建築基準法第43条が求める「連続して2m以上の接道」を満たせず、新築・建て替えの建築確認は交付対象外となります。

道路に接する路地部分が短い

接道幅が2m以上あり、間口の基準を満たしていても、道路から敷地本体へつながる路地部分の奥行きが極端に短い場合、避難経路や緊急車両の進入路として実際に機能しないため接道義務を満たさない扱いとなり、新築や建て替えの建築確認は交付されません。
路地部分が短い敷地は、接道幅が不足する間口不足の宅地とは不適合の原因が異なります。間口不足は道路に接する幅が2m未満であるのに対し、路地部分不足は接道幅は確保されているものの奥行が短すぎて導線として成立しない状態を指します。いずれの場合も安全な避難路や緊急車両の経路を確保できないため、防災上の観点から再建築不可と判断されます。

再建築不可物件でも再建築可能にする方法はある

再建築不可物件は、建築基準法で定められている接道義務を満たしていないため建て替えができないケースが多くあります。しかし、土地の状況や工夫次第で再建築可能な状態に改善できる方法はいくつか存在します。

以下にそれぞれの方法の要点と、検討に適した状況を整理しました。

位置指定道路としての認定所有地と隣地の一部を交換し、自分の土地が法定道路に接するようにする隣地所有者と双方にメリットがあり、交換の合意が取れる場合

方法 ポイント 検討が向いている状況
セットバック 道路と敷地の境界を後退させて接道義務を満たす 通路幅4m未満で、敷地に余裕がある場合
隣接地を購入 隣の土地を買い取り、道路までの接道部分を確保する 資金に余裕があり、隣地所有者が売却に応じる場合
隣接地を借地 隣地を借りて通路化し、法定道路への2m以上の接道を確保する 土地の買取は難しいが、借地契約で通路利用が認められる場合
土地の一部交換 自分の土地を整備し、行政の認定を受けて法定道路として認定をもらう 隣地の購入・借地が難しく、自分の土地で通路整備が可能な場合

どの方法を選ぶべきかは、土地の広さや資金面、隣地所有者の協力が得られるかどうかで大きく変わってきます。それぞれの方法をより詳しくみていきましょう。

接道義務を満たせるようにセットバックをする

再建築不可物件を再建築可能に変える最も基本的な方法の1つが、自分の敷地を後退させて通路幅を確保する「セットバック」です。セットバックを行えば、幅が4m未満の通路でも、建築基準法上の道路として扱われるようになり、法的に建築可能な条件を整えることができます。
具体的には、現況の通路幅を基準に、不足している分を自分の敷地から後退させて、全体で4m以上の幅を確保します。例えば、通路の幅が2.5mしかない場合は、自分の土地を下げて1.5m分を通行のための空間として提供するイメージです。後退距離は現場ごとに異なり、行政の指導により指定されます。

セットバックによって十分な通路幅が確保されれば、再建築不可だった土地も建築基準法上の接道義務を満たす扱いとなり、建て替えが可能になるケースがあります。

ただし、後退した部分は所有権が残るものの道路扱いとなり、建物や塀を建てることはできません。また、セットバックによって通路として提供したエリアは建ぺい率や容積率の計算対象外となるため、建築計画の見直しが求められます。よって、土地の有効面積が減る点を踏まえたうえで、役所の建築指導課に相談し、必要な後退距離を確定させることが重要です。

セットバックは、隣地を購入したり借りたりすることが難しい場合や、敷地の一部を提供しても建築スペースに十分な余裕がある場合に向いています。自分の土地の範囲内で対応できるため、隣地との交渉を必要とせず、比較的スムーズに再建築可能化を進められる方法です。建築計画の自由度を重視する人や、早期に法的要件を満たしたい人にも適しています。

接道義務を満たせるように隣接している土地を購入する

隣接地を購入して、現在道路に接していない敷地を道路までつなげることで、再建築が可能になる場合があります。隣の土地を買い足して敷地を道路まで延ばせば、接道義務を満たすことができ、建て替えが認められることがあるのです。

ただし、隣地を取得するには、所有者の売却意思が前提となります。個人所有の土地であれば、直接交渉や不動産会社を通じた仲介で売買契約を締結し、取得後に合筆登記を行って既存の敷地と一体化させます。登記を完了させれば、新しい敷地全体が建築基準法上の接道義務を満たす土地として扱われる場合があります。

隣接地を購入する方法は、敷地を削って通路を確保するセットバックとは異なり、有効面積を減らさずに再建築可能な条件を整えられる点が大きな利点です。一方で、購入費用・登記費用・測量費用などの初期コストが発生し、隣地所有者との交渉が難航する可能性もあります。また、隣地の地目や登記上の権利関係によっては、購入しても法的に接道として認められない場合があるため注意が必要です。

隣接地を取得する際は、境界確定測量を行い、法務局や建築指導課で再建築の可否を確認することが欠かせません。費用と時間を要する手段ではありますが、再建築不可を根本から解消できる確実性の高い方法です。

接道義務を満たせるように隣接している土地を借りる

隣接地を借りて、自分の敷地から建築基準法上の道路まで通路を設けることで、接道義務を満たせる場合があります。購入が難しい場合でも、隣地の一部を借りて通路化し、建築基準法上の道路への2m以上の接道を確保すれば、再建築が認められる可能性が高まります。

通路として利用する土地を借りる際には、必ず書面で契約を結び、建築確認申請に対応できる内容に整えることが重要です。借地契約書には、使用範囲・契約期間・更新条件・建築確認申請への同意などを明記し、通路部分を法定道路に接続する通路として扱えるようにしておく必要があります。土地を借りて通路化し、法定道路への2m以上の接道を確保することが、この方法の目的です。

ただし、借地権は所有権と異なり、契約期間が終了すれば通路としての利用権も失われます。更新拒否や第三者への売却によって、再び再建築不可になるおそれもあります。そのため、契約期間を建物の耐用年数に見合う長さに設定し、更新条件を明文化しておくことが欠かせません。

また、通路の有効幅や扱い方は自治体によって異なります。最終的な可否や必要幅は自治体の運用基準に左右されるため、建築指導課との事前協議が不可欠です。建築士や不動産専門家の協力を得て、図面や契約内容を自治体の基準に合わせて調整することが、再建築可能化を実現するうえでの重要なポイントとなります。

隣接地を借りて接道義務を満たす方法は、隣地の購入が難しい場合や、売却までは応じてもらえないが貸し出しには前向きな所有者がいる場合に適しています。また、建て替え時期を限定しており、長期間にわたって土地を確保する必要がないケースにも向いています。

所有している土地と隣接している土地の一部と交換する

再建築不可を資金負担を抑えて解消したい場合には、所有地と隣地の一部を入れ替える「土地の一部交換」が有効です。多くのケースでは、隣地が道路に面しており、自分の土地が面していないため、自分の土地が道路に届くように隣地の一部を交換します。隣地全体を買い取るのではなく、一部のみをやり取りすることで、金銭負担を抑えつつ接道条件を整えられるのが特徴です。

交換する土地の大きさや形は、「所有地が法定道路に連続して2m以上接すること」「通路を計画する場合は有効幅が自治体基準を満たすこと」が前提となります。また、交換によって隣地側の私道に接する形となる場合は、通行承諾や掘削承諾、持分の整理も同時に進めておくと、建築確認時の手戻りを防げます。

土地交換を行う際には、登記費用・測量費用・司法書士報酬などの諸経費が発生します。さらに、不動産取得税や登録免許税、交換する土地の評価額に差がある場合には贈与税や譲渡所得税が発生することもあるため、税理士による事前確認が欠かせません。隣地が別の用途地域や建築規制区域に属している場合には、交換後に適用される建ぺい率・容積率・高さ制限などが変わる可能性もあるため、都市計画情報の確認も重要です。

土地の一部交換が向いているのは、隣地所有者にもメリットがあり、敷地の形状を整理することで双方の使い勝手を改善できる場合です。特に、現金での購入が難しい人や、わずかな部分の入れ替えで道路までの接道を確保できる人に適しています。隣地との協議が必要になりますが、建築指導課での事前相談と、建築士・測量士・司法書士などの専門家が連携して進めることで、現実的かつ費用効率の良い再建築可能化を実現できます。

位置指定道路として認めてもらう

自分の土地や私道を整備し、行政から「位置指定道路」として認定を受けることで、再建築が可能になる場合があります。位置指定道路とは、建築基準法第42条第1項第5号に基づき、私有地を整備して法的に「道路」として扱ってもらうための制度です。認定を受けた位置指定道路に2m以上接していれば、建築基準法上の接道義務を満たす扱いとなり、建て替えが可能になります。

認定を受けるには、自分の土地または共有している私道を幅4m以上の通路に整備し、公道に直接つなげることが必要です。あわせて、排水設備や舗装、側溝、境界標などを整備して、安全に通行できる状態にすることも求められます。これらの基準を満たしたうえで自治体に申請し、現地審査で問題がなければ初めて位置指定道路として認められます。

位置指定道路に認定された部分は、自分の所有地のままですが、建物や塀を建てることはできず、通行のための空間として維持管理する義務が生じます。共有している私道を位置指定道路とする場合は、共有者全員の同意を得て申請する必要があります。

位置指定道路の認定を受ける方法は、すでに自分の敷地内または共有私道に通路があり、隣地の購入や借地による接道確保が難しい人に適しています。自分の土地を整備して法定道路として認めてもらうことで、再建築不可の状態を解消できる実務的な方法です。

再建築不可物件を所有し続けることのリスク

再建築不可物件は、建て替えができないという制約を抱えているため、所有を続けるほど資産価値が下がりやすく、維持コストや安全面でのリスクが増していきます。そのため、特別な理由がない限りは、再建築不可の状態を解消するか、早めに手放す判断を検討することが重要です。

建物の老朽化が進めば、修繕費や固定資産税などの負担が重くなるうえ、建物の倒壊や近隣への損害など思わぬトラブルに発展する可能性もあります。

本章では、再建築不可物件を所有し続けることで生じる主なリスクを整理し、それぞれの内容を詳しく解説します。

  • 大規模リフォームをしたくても確認申請が通らない
  • 倒壊したとしても再建築できない
  • 近隣や通行人から損害賠償を請求されるおそれがある
  • 次の世代に負の遺産として不動産を残してしまう
  • 処分したくても売却が難しい

上記のように、再建築不可物件を長期間保有することは、資産価値の下落だけでなく、安全性・法的責任・相続問題など多方面でリスクを抱える結果につながります。

大規模リフォームをしたくても確認申請が通らない

再建築不可物件では、建築確認申請が通らないため、大規模リフォームは実質的に行えません。

大規模リフォームとは、柱・梁・耐力壁・床・屋根など建物の構造耐力上主要な部分に手を加える工事や、間取り変更・スケルトンリフォーム・防火設備の変更など、建物の安全性や防火性能に影響する工事を指します。大規模リフォーム工事は、建築基準法上では建築または、大規模の修繕・模様替えに該当し、原則として建築確認申請が必要です。

建築基準法 第6条第1項では、「建築物の建築や大規模の修繕、大規模の模様替えを行おうとする者は、建築主事または指定確認検査機関の確認を受けなければならない」旨が明記されています。

しかし、再建築不可物件は接道義務を満たしていないため、申請自体が認められません。結果として、屋根や壁の張り替え、耐震補強、間取り変更など建物の老朽化を防ぐ工事も行えない可能性があります。

さらに、2025年の建築基準法改正により、既存不適格建物に対する安全基準が厳格化され、これまで以上に確認申請のハードルが高まりました。たとえリフォームを希望しても、法的に建築行為とみなされれば、現状のままでは認可が下りない可能性が高いといえます。

結果として、所有者は老朽化していく建物を軽微な修繕にとどめざるを得ず、安全性や快適性が損なわれたまま放置されやすくなります。修繕も建て替えもできない状態が続くことで、資産としての価値も急速に低下し、賃貸運用や売却も難しくなってしまうのです。

倒壊したとしても再建築できない

再建築不可物件は、地震や老朽化などで建物が倒壊してしまうと、新たに建て直すことができません。倒壊後に再建築を行うには建築確認申請が必要ですが、申請が受理されないため、所有者は更地のまま土地を維持するしかない状況に陥ります。

倒壊した建物を撤去するには、多額の費用がかかります。解体工事には建物の構造や広さによって数百万円が必要となり、所有者の経済的負担は軽くありません。撤去を後回しにすると、崩れた壁材や瓦礫が近隣の敷地に飛散したり、雑草・害虫が発生したりと、周辺住民とのトラブルに発展するおそれもあります。

自治体に「特定空き家」に指定されれば、倒壊していなくても撤去命令や指導を受ける可能性があり、対応が遅れれば命令・過料など行政措置の対象となる場合もあります。

■特定空き家とは?
特定空き家とは、老朽化や管理が行き届かないことによって、危険や衛生上の問題を起こしている空き家を、市区町村が指定したものである。倒壊の危険がある空き家や、ゴミ・害虫の発生で周囲に迷惑をかけている建物などが対象となる。

建物を撤去して更地にした場合も、新たな負担が発生します。住宅が存在しなくなると「固定資産税の住宅用地特例」から外れ、課税標準が最大6倍に引き上げられます。再建築不可物件では新たに家を建てることができないため、住宅用地としての特例を取り戻すこともできません。結果として、再建築できない土地に高額な固定資産税を支払い続ける状況が続き、経済的な負担が長期化します。

倒壊した再建築不可物件は、撤去費用・管理責任・税金の増加という三重のリスクを抱えることになります。建物が失われた時点で土地の活用ができなくなり、所有し続けること自体が大きな負担となるのです。

近隣や通行人から損害賠償を請求されるおそれがある

再建築不可物件を放置した結果、建物の倒壊や部材の落下などで他人に被害を与えた場合、所有者が損害賠償責任を負うおそれがあります。屋根瓦や外壁の一部が剥がれて隣家や隣人の車を傷つけたり、通行人がケガをしたりすれば、過失が認められた所有者に賠償請求が行われる可能性があります。

民法第717条では、「土地の工作物等の占有者及び所有者の責任」として、土地や建物などの工作物の所有者には安全管理義務が課されています。老朽化や損傷を放置し、崩落や倒壊を防ぐための対策を怠った場合、所有者が被害者への損害を補償しなければならないと定められています。たとえ再建築ができない物件であっても、可能な範囲で修繕や補強を行い、安全性を確保する義務があります。

再建築不可物件は、建て替えができないだけでなく、管理不十分によって第三者を巻き込むリスクを抱えています。所有者が適切に管理を行わない限り、損害賠償や法的責任を負う事態に発展する危険があるため、できるだけ早急な対応が欠かせません。

次の世代に負の遺産として不動産を残してしまう

再建築不可物件を相続すると、子どもや孫といった次の世代が大きな負担を背負う可能性が出てきます。建て替えができず、修繕にも制限があるため、居住・賃貸・売却といった実用的な選択肢がなく、維持費や税金だけがかかり続けるためです。相続人が活用できない不動産を引き継いだ場合、結果的に「負の遺産」となり、経済的にも精神的にも大きな負担を与えることになります。

特に問題となるのが、固定資産税や管理費用の継続的な支出です。再建築不可の土地でも課税は続くため、利用できないにもかかわらず年間数万円から十数万円の固定資産税を支払わなければなりません。さらに、老朽化した建物を放置すれば倒壊や火災の危険が高まり、特定空き家に指定されるリスクもあります。特定空き家に指定されると、固定資産税の住宅用地特例優遇措置から外れ、負担が大きくなります。

また、相続した不動産を複数の相続人で分け合う場合や、処分方法について合意が得られない場合には、建物や土地が「共有状態」となります。共有状態にある不動産では、売却や解体といった重要な手続きに共有者全員の同意が必要となるため、意見の不一致によって手続きが進まないことがあります。結果として、相続人の誰も利用できないまま放置され、税金や管理費だけがかかり続ける負担の大きい不動産になってしまうおそれがあるのです。

処分したくても売却が難しい

再建築不可物件は、市場での需要が極めて低く、売却が難しい不動産です。建て替えも大規模リフォームもできないという制約があるため、不動産市場では敬遠されます。不動産会社によっては再建築不可の物件を取り扱わないこともあり、通常の住宅よりも売却までに時間を要する、または買い手が見つからないケースが少なくありません。

さらに、金融機関の多くが再建築不可物件を担保として評価しないため、住宅ローンの利用がほぼできません。買主は原則として現金での購入に限られ、結果として購入希望者の母数が大幅に減少します。立地条件が良い場合でも、再建築できない時点で資産価値は大きく下がり、周辺の再建築可能物件よりも査定額が各段に下がるケースが一般的です。
老朽化が進んでいる建物では、修繕や撤去に多額の費用がかかります。建物を解体して更地にしても、固定資産税の住宅用地特例を受けられず、税負担が増えるため価格を下げても買い手が見つかりにくいのが実情です。処分を先送りにすると、時間の経過とともに老朽化が進み、修繕費や管理負担がさらに増えるため、所有を続けること自体が大きなリスクとなります。

再建築不可物件を処分するなら専門の買取業者に売却するのが得策

再建築不可物件は、建替えや増築ができないため一般の市場では需要が低く、売却に苦戦するケースが多く見られます。仲介での売却を試みても、買主が見つからないまま長期間売れ残ることも珍しくありません。

再建築不可物件を長期的に所有するのはリスクを伴うため、再建築不可物件の取扱いに慣れた専門の買取不動産会社に直接売却するのが現実的です。買取業者は、法規制や建物状況を踏まえたうえで、再生・転用のノウハウを持ち合わせており、スピーディーな現金化を実現できます。以下では、専門の買取業者に売却する主なメリットを紹介します。

  • 仲介では売却できなかった物件でも買取に期待できる
  • 数日〜1週間程度で売却できる
  • そのままの状態でも売却が可能
  • 契約不適合責任が免除される

再建築不可物件は「売れない」と諦める前に、業者に売却という選択肢を検討してみましょう。

仲介では売却できなかった物件でも買取に期待できる

仲介で売れなかった再建築不可物件でも、買取業者であれば売却できる可能性があります。

理由は明確で、買取専門会社は自社資金で購入できるため、銀行融資の審査に左右されません。さらに、建て替えができない土地でも採算を取るノウハウやネットワークを持っているため、通常は敬遠されがちな再建築不可物件でも買い取ることができます。例えば、既存建物を改修して賃貸用に再利用したり、老朽化した建物を解体して駐車場や資材置き場として運営したり、隣地を取得して接道条件を整えたりと、状況に応じた活用方法を柔軟に選択できます。

加えて、買取業者は土地所有者や隣地の持ち主との交渉力にも長けています。借地契約や等価交換などの複雑な取引を進める際には、土地家屋調査士や司法書士、不動産鑑定士などの専門家と連携し、法的・技術的な課題を解消しながら土地の価値を高める体制を整えています。

このように買取専門会社は専門知識と実務力を活かし、物件の特性に合った再利用プランを提示して再建築不可物件を買い取ります。一般仲介では買手が見つからない再建築不可物件でも、買取業者なら売却が期待できるのです。

弊社クランピーリアルエステートでは、仲介ではもちろん、他社買取業者が買い取れなかった再建築不可物件の買取も可能です。訳あり物件専門の買取業者で、年間3,000件以上の相談があるため買取後の活用ノウハウも豊富。全国1,200以上の士業事務所と連携があり、共有者や隣人とのトラブルを理由に売却を断られた物件にも対応が可能です。

数日〜1週間程度で売却できる

再建築不可物件は、買取業者に売却すれば最短で数日から1週間ほどで現金化できます。買主が業者自身であるため、広告掲載や内覧対応を行う必要がなく、売却手続きが格段に早く進むためです。

買取業者は、現地調査から査定・契約・入金までを自社で一括対応しており、銀行融資の審査やローン承認を待つ時間が発生しません。自社資金で即時決済できる体制を持つため、売主は契約後すぐに代金を受け取ることが可能です。

また、買取業者は物件の状態や法的制限を事前に把握し、再利用や転用のプランを立てたうえで買取を行うため、判断から支払いまでがスムーズに進められます。相続や離婚などで早急に名義整理や資金確保が必要な人にとって、短期間で取引が完了する点は大きな安心材料となるでしょう。長期間買い手が見つからなかった不動産でも、短期間で確実に資金化できる点が最大のメリットです。

弊社では、最短12時間で査定・最短48時間での現金化が可能。買取業者の中でもトップクラスのスピード感を誇ります。

そのままの状態でも売却が可能

老朽化が進んだ再建築不可物件でも、買取業者なら現状のまま売却できます。仲介では「修繕・リフォームしなければ売れない」と言われることも多く、工事や解体の費用を用意できずに売却を断念するケースも珍しくありません。

買取業者は修繕や再生を自社で行う体制が整っているので、仲介で売却する時のように売主が手を加える必要はありません。建物が傾いていたり雨漏りがあったり、屋内に残置物が多くても買取が可能です。そのままの状態で売却できることで、費用・時間・労力のすべてを大幅に削減できます。特に、老朽家屋や空き家を放置して管理負担が増している場合、業者による買取は早期解決の手段として非常に有効です。

弊社でも、現状ままの買取を行っています。「物件が遠方で、残置物の片付けや清掃ができない」「手放したいだけなので、修繕や清掃にお金をかけたくない」という場合でも、追加負担の心配なく売却が可能です。

契約不適合責任が免除される

再建築不可物件を買取業者に売却する場合、多くのケースで売主の契約不適合責任が免除されます。

契約不適合責任とは、売却後に物件へ欠陥や不具合が見つかった際、売主が修補や損害賠償に応じなければならない義務を指します。仲介で売却する際の個人間取引では、契約不適合責任が売主に課せられるため、売却後にトラブルが発生し、補償を要求されるリスクがあります。

しかし、買取業者は不動産取引のプロとして調査・査定を行い、物件の現状を把握したうえで購入を決定します。専門知識を持つ業者がリスクを承知のうえで取引するため、契約書であらかじめ「契約不適合責任を免除する」と定められるのが一般的です。つまり、売却後に雨漏りやシロアリ被害、設備の故障などが後から発覚しても、修繕費や損害賠償を負担する必要がありません。

ただし、免責は義務ではないため、契約によっては契約不適合責任を課されるケースもあります。契約時には、契約不適合責任の有無を必ず確認しておきましょう。

クランピーリアルエステートでは、売主様の契約不適合責任は免責で買取を行っています。引き渡し後に物件に新たなトラブルが発覚しても、売主様への請求は一切ないので安心して売却いただけます。

まとめ

再建築不可物件は、建築基準法の接道義務に適合しない土地に起因して建て替えが認められない不動産です。再建築不可になるのは、「間口不足」「非接道」「法定外の狭幅通路」「路地奥行不足」が主な原因となります。

不動産は、再建築不可であっても所有を続けるほど老朽化が進み、建物の安全性低下や維持費の負担増大、第三者への損害賠償などの問題が顕在化しやすくなります。さらに、2025年4月の建築基準法改正により、大規模な修繕や模様替えに対する審査が厳格化され、構造に関わる工事は一段と難度が上がりました。

打開策として、自分の土地を道路に整備したり、隣接地の購入や賃貸によって接道を確保したりといくつか手段はあります。しかし、いずれも費用負担が大きく、隣地所有者との交渉や行政手続きにも時間がかかるため、実現には相応の労力と時間を要します。そのため、「どうしても土地を所有し続けたい」「建て替えを前提に活用したい」といった特別な事情がない限りは、専門業者への売却を検討するのが現実的です。

仲介では買手が見つからない再建築不可物件でも、買取専門業者であれば自社資金での即日査定や、数日から1週間程度での売却が期待できます。再建築不可物件を多く取り扱う業者なら、修繕や清掃をしなくても現状のままで買い取ってもらえるケースが多いため、資金化までの時間と手間を大幅短縮が可能です。
まずは、複数の専門業者に査定を依頼し、価格や対応を比較して最も信頼できる会社を選ぶことが、後悔のない売却につながります。

よくある質問

再建築できない理由は何ですか?

再建築ができない主な理由は、建築基準法で定められた「接道義務」を満たしていないためです。接道義務とは、建物を建てる敷地が幅4m以上の道路に連続して2m以上接していなければならないという建築基準法による決まりであり、災害時の避難経路や消防活動を確保するために設けられています。

接道義務を満たしていない土地は、「再建築不可物件」として扱われ、安全性が確保できないと判断されるため新築・建て替え・大規模リフォームが認められていません。結果、売却や活用といった資産活用が難しく、長期的なリスクを抱える不動産となります。

建て替えができない家はどうすればいいですか?

建て替えができない家を再建築可能にするためには、法的な条件を満たすための具体的な手段を検討することが重要です。

  1. 敷地の一部を後退させて通路幅を確保する
  2. 隣接地を購入して道路までの通路を確保する
  3. 隣接地を借りて一時的に接道義務を満たす
  4. 自分の土地と隣地の一部を交換して道路に接するようにする
  5. 自分の敷地や私道を整備し、位置指定道路として行政の認定を受ける

いずれも、建築基準法で定められた接道義務を満たすことを目的とした法的な救済措置です。どの方法が適用できるかは土地の形状や道路の位置、自治体の基準によって異なるため、再建築可能な状態を目指す際は、建築士や不動産会社などの専門家と相談しながら最適な手段を選ぶことが欠かせません。

1. 所有者が敷地を後退させて接道義務を満たす
所有者が自分の敷地の一部を後退させ、道路の幅を4m以上に広げる(セットバック)方法です。通路幅を確保することで、建築基準法上の接道義務を満たし、再建築が可能になる場合があります。ただし、後退した部分は道路扱いとなるため、建物や塀を建てることはできません。

2. 所有者が隣接地を購入して接道を確保する
所有者が隣地の一部を買い取り、道路までの通路を確保することで接道義務を満たす方法です。土地の所有権を得ることで長期的に安定して利用でき、恒久的に再建築条件を整えることができます。ただし、購入費用や登記手続きなどの負担が大きく、隣地所有者との交渉が必要です。

3. 所有者が隣接地を借りて通路を設ける
所有者が隣地の一部を借りて通路を設け、道路への2m以上の接道を確保する方法です。購入より初期費用を抑えられる点がメリットですが、借地契約が終了すれば通路利用の権利も失われます。長期的に建物を維持する場合は、契約期間や更新条件を慎重に設定することが重要です。

4. 所有者が自分の土地と隣地の一部を交換する
所有者が自分の土地と隣地の一部を入れ替え、道路に接するようにして接道条件を整える方法です。隣地の一部を購入するより費用を抑えられる場合があり、双方にとって敷地の形状を整理できる点がメリットです。ただし、測量・登記・税務手続きが必要となり、専門家の関与が欠かせません。

5. 所有者が自分の敷地を整備して位置指定道路として認定を受ける
所有者が自分の敷地や私道を整備し、行政から「位置指定道路」として認定を受けることで再建築を可能にする方法です。位置指定道路に2m以上接していれば、建築基準法上の接道義務を満たす扱いとなります。隣地を購入せずに法的な接道を確保できる現実的な方法ですが、自治体の基準に沿った整備が必要です。

再建築不可物件は2025年からどうなりますか?

2025年4月の建築基準法改正によって、再建築不可物件のリフォームは従来より難しくなります。これまでは、木造2階建て以下などの小規模住宅に対して「4号特例」という制度があり、建築確認の手続きが一部省略されていました。そのため、再建築不可の建物でも、構造を大きく変えない範囲であれば、大規模な修繕やリフォームがしやすい状況だったのです。

しかし改正後は、4号特例の対象が縮小され、同じような建物でも大規模リフォームを行う際には建築確認申請が必要になります。耐震性や省エネ性能などの基準を満たす必要があり、建築確認の取得が難しくなるケースが増えることになります。キッチンや浴室の交換、壁紙や床の張り替えなどの小規模リフォームは引き続き可能ですが、構造部分に手を加える改修は実質的に困難になります。

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