別居中でも共有不動産を売却する方法!売却すべきタイミングも解説

別居中であっても、夫婦の共有不動産を売却することは可能です。主な方法は次の3つです。
- 配偶者から同意をもらって不動産全体を売却する
- 自分の共有持分を配偶者に売却する
- 自分の共有持分のみを買取業者に売却する
夫婦双方が不動産全体の売却に同意している場合は、不動産会社へ仲介を依頼し、買主を探して売却できます。ただし、別居中の配偶者が共有不動産に住み続けたい場合などは、同意を得られず売却できないこともあります。
その場合は、共有不動産に住み続ける配偶者へ、自分の共有持分を売却する方法も選択肢です。配偶者に持分を買い取る意思と資金があれば、不動産を夫婦の一方に残しながら共有関係を解消できます。
配偶者への売却が難しい場合や、そもそも話し合いができない場合は、自分の共有持分のみを買取業者へ売却する方法もあります。買取業者が直接買い取るため、比較的早く現金化できます。別居中に共有関係や固定資産税などの負担を早く解消したい場合に検討できる方法です。
ただし、配偶者に知らせず共有持分を売却すると、「なぜ勝手に売却したのか」と反発され、離婚協議や財産分与で争いになる可能性があります。配偶者が共有不動産に住んでいる場合はトラブルにつながりやすいため、可能であれば事前に売却の意向を伝えておきましょう。
また、住宅ローンが残っている共有不動産には注意が必要です。夫婦が売却に合意していても、売却代金や自己資金で住宅ローンを完済できなければ、抵当権を抹消できないため通常売却はできません。この場合は、金融機関の同意を得て進める任意売却を検討します。
本記事では、別居中に共有不動産を売却する方法をはじめ、住宅ローンが残っている場合の進め方や売却するタイミング、売却代金の分け方、注意点を詳しく解説します。
目次
別居中でも共有不動産は売却できる?
夫婦が別居中であっても、共有不動産を売却することは法的に可能です。同居しているか別居しているかによって、共有不動産の売却ルールが変わるわけではありません。
不動産全体を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。別居中でも、夫婦ともにすでに転居している場合や、不動産を現金化して住宅ローンや維持費の負担を整理したい場合など、売却の意向や条件について合意できれば、不動産全体の売却を進められます。
一方、別居中で互いに連絡を取りたくない場合や、売却条件について意見が合わない場合は、夫婦の合意が得られず、不動産全体の売却に至らないことがあります。
その場合、自分が所有する共有持分を配偶者や買取業者などの第三者に売却する選択肢もあります。買取業者への売却に配偶者の同意は必要ありませんが、配偶者に知らせず共有持分を売却すると、離婚協議で争いになることがあるため、可能であれば事前に配偶者へ相談したうえで進めましょう。
共有持分を共有者に知らせずに売却するリスクについては、次の記事を参考にしてみてください。
別居中に共有不動産を売却する方法
別居中に共有不動産を売却する方法は、主に以下の3つです。
- 配偶者から同意をもらって不動産全体を売却する
- 自分の共有持分を配偶者に売却する
- 自分の共有持分のみを買取業者に売却する
買取業者への持分売却は、原則として自分の意思のみで進められますが、不動産全体の売却や配偶者への持分売却は、相手の同意や手続きへの協力が必要です。
別居中は連絡や売却条件の調整が難しくなりやすいため、合意内容を書面やメールに残して認識の違いを防ぎましょう。
各方法の売却の流れについては、次の記事でも詳しく解説しています。
配偶者から同意をもらって不動産全体を売却する
別居中でも、夫婦双方が売却に同意していれば、共有不動産全体を売却できます。
まずは配偶者と話し合い、最低売却価格や売却方法、住宅ローン・売却費用の負担、売却代金の分け方などを決めます。そのうえで不動産会社へ査定を依頼し、仲介または買取で売却を進めます。別居中は対面でのやり取りが難しいこともあるため、不動産会社を窓口として連絡や必要書類の準備を進める方法もあります。
不動産全体を売却するメリットは、共有持分のみを売るよりも買主を見つけやすく、市場価格に近い条件で売却しやすい点です。また、別居中に不動産を現金化しておけば、離婚時に売却代金を財産分与として清算しやすくなり、住宅ローンや固定資産税などの負担も解消できます。
一方で、売却価格の決定や売買契約、所有権移転登記などでは、原則として夫婦双方の同意や協力が必要です。どちらか一方が共有不動産に住んでいる場合は、退去や引渡しの時期について合意できず、売却が進まないこともあります。
この方法は、次のようなケースに向いています。
- 夫婦双方が不動産全体の売却に同意している
- 持分のみではなく、不動産全体をできるだけ高く売りたい
- 離婚前に共有関係や住宅ローンなどの負担を解消したい
【別居中の不動産売却は仲介・買取のどちらがよい?】
離婚までに時間があり、できるだけ高く売りたい場合は仲介、離婚に向けて早く現金化し、共有関係を解消したい場合は買取が向いています。
次の違いを参考に、売却価格と売却までの期間のどちらを優先するか、配偶者と相談したうえで選びましょう。
| 比較項目 | 仲介 | 買取 |
|---|---|---|
| 買主 | 主に一般の個人 | 不動産買取業者 |
| 売却までの期間の目安 | 3ヵ月〜9ヵ月程度 | 数週間〜1ヵ月程度 |
| 売却価格の傾向 | 市場価格に近い価格で売れやすい | 仲介より低くなる傾向がある |
自分の共有持分を配偶者に売却する
別居後も配偶者が共有不動産に住み続けたい場合や、不動産を手放したくない場合は、自分の共有持分を配偶者に売却する方法があります。
まずは不動産全体の市場価格を確認し、売却価格や代金の支払方法、登記費用の負担などを配偶者と話し合います。合意後は、売買契約、代金の支払い、共有持分の移転登記を行います。別居中で直接のやり取りが難しい場合は、不動産会社や司法書士を通して、書類の準備や手続きを進めることも可能です。
自分の持分すべてを売却すれば、配偶者の単独名義となり、夫婦の共有関係を解消できます。第三者を新たな共有者にせず、不動産を夫婦の一方に残せるのがメリットです。売却する側も代金を受け取り、共有不動産の管理や費用負担から離れられます。
一方で、配偶者に持分を買い取る資金がなければ、この方法を利用することはできません。別居中で夫婦関係が悪化している場合は、持分の価格や支払条件について意見が合わず、話し合いが進まないこともあります。
この方法は、次のようなケースに向いています。
- 別居後も配偶者が共有不動産に住み続けたい
- 夫婦の一方が不動産を取得し、共有関係を解消したい
- 配偶者が持分を買い取るための資金を用意できる
- 持分の価格や支払条件について夫婦で合意できる
【夫婦間で共有持分を売買する場合は価格設定に注意】
夫婦間の持分売買では、「不動産全体の市場価格 × 持分割合」 を価格交渉の出発点とするのが一般的です。 たとえば、不動産全体の市場価格が3,000万円、持分割合が2分の1であれば、1,500万円を目安に売却価格を検討します。
ただし、配偶者へ時価より著しく低い価格で持分を売却すると、時価と売却価格との差額が贈与とみなされ、持分を取得した配偶者に贈与税がかかる可能性があります。相場を踏まえて売却価格を決めましょう。
また、別居中の夫婦間では、売却価格や代金の支払時期、登記費用の負担などをめぐって認識が食い違うこともあります。仲介手数料は発生しますが、不動産会社の仲介を利用して売買契約を締結し、合意した内容を書面に残すことで、「代金を受け取っていない」「合意した価格と異なる」といったトラブルを防ぎやすくなります。
自分の共有持分のみを買取業者に売却する
配偶者が不動産全体の売却や持分の買い取りに応じない場合でも、自分の共有持分のみであれば、配偶者の同意を得ずに買取業者へ売却できます。
売却する際は、共有持分を取り扱う買取業者へ査定を依頼し、買取価格や売却条件を確認します。条件に合意したら売買契約を締結し、代金の受け取りと共有持分の移転登記を行います。
買取業者への持分売却は、一般の買主を探す必要がないため、数週間〜1ヵ月程度で持分を現金化できます。別居中の配偶者との話し合いが難しい状況でも、自分の判断で共有関係を解消し、翌年度以降の固定資産税などの負担から離れられる点がメリットです。
一方で、配偶者への売却よりも価格が低く、一般的には「不動産全体の市場価格 × 持分割合 × 1/3~1/2」が1つの目安とされています。持分割合や居住者の有無などの個別の事情によっても異なるため、まずは複数社に査定依頼してみるとよいでしょう。
この方法は、次のようなケースに向いています。
- 配偶者が不動産全体の売却や持分の買い取りに応じない
- 別居中で配偶者との話し合いを続けることが難しい
- 売却価格よりも、共有関係や費用負担の早期解消を優先したい
- 離婚協議への影響を確認したうえで、自分の持分のみを売却したい
ただし、売却後は買取業者が配偶者との新たな共有者になります。配偶者に知らせず売却すると反発を招き、離婚協議が難航する可能性があるため、可能であれば事前に相談したうえで進めましょう。
なお、別居の有無にかかわらず、共有持分を売却する場合の売却先や査定・契約・登記の流れについては、共有持分の売却方法をまとめた記事で詳しく解説しています。
【別居中に持分を売って揉めない?専門家の調整で不動産全体の買取に至った事例】
弊社には、別居中の共有者から「配偶者が不動産全体の売却に応じないため、自分の持分だけを売りたいが、離婚協議で揉めないか心配」と相談が寄せられたことがあります。
別居中であっても共有持分の売却は法的に可能ですが、無断で進めると夫婦間の対立が深まる可能性があります。そこで弊社から提携弁護士を紹介し、離婚協議への影響を確認しながら配偶者との話し合いを進めてもらいました。
話し合いの結果、売却自体に支障があるのではなく、夫婦間の感情的な対立によって協議が進んでいなかったことがわかりました。共有持分のみより不動産全体の方が高く売れやすく、離婚前に現金化すれば財産分与も進めやすいことから、夫婦双方が売却に合意し、弊社が不動産全体を買い取りました。
持分売却を検討している場合でも、専門家を介して条件を整理することで、不動産全体を売却できるケースがあります。話し合いがまとまらない場合は持分のみの買取も検討できるため、売却方法を決め切る前にご相談ください。
共有持分の売却相場については、次の記事も参考にしてみてください。
別居中の共有不動産の売却方法は住宅ローンを完済できるかで変わる
共有不動産に住宅ローンが残っている場合は、売却代金や自己資金でローンを完済できるかによって、売却方法が次のように変わります。
- アンダーローンの場合|売却代金で完済して通常売却する
- オーバーローンでも不足額を補える場合|自己資金を加えて通常売却する
- オーバーローンで不足額を補えない場合|金融機関の同意を得て任意売却する
アンダーローンの場合や不足額を自己資金で補える場合は、売却時に住宅ローンを完済し、抵当権を抹消して通常売却できます。不足額を補えない場合は、金融機関に相談し、任意売却を検討します。
ただし、別居中の共有不動産では、夫婦間の連絡や金融機関との調整、必要書類の準備が進まず、売却手続きが滞ることがあります。ローンの名義や残債、用意できる自己資金を夫婦それぞれが確認し、売却方法や不足額の負担について早めに話し合っておきましょう。
【抵当権が付いた共有持分のみを売却するのは難しい】
抵当権とは、住宅ローンを返済できなくなった場合に、金融機関が不動産を競売にかけて残債を回収するための権利です。抵当権が付いた共有持分も法的には売却できますが、実務上は買主を見つけるのが難しいといえます。売却後も抵当権は残るため、住宅ローンが返済されなければ、買主が取得した持分も競売の対象となるおそれがあるためです。
持分の売却に合わせて抵当権の一部を抹消するには金融機関の同意が必要ですが、持分だけを担保から外すと、金融機関が残債の回収に充てられる不動産の範囲が狭くなるため、同意を得るのは容易ではありません。
共有持分専門の買取業者であれば、抵当権が付いたままでも買取を検討する場合があります。ただし、残債や返済状況、不動産の価値、抵当権が設定されている範囲などによって判断が異なるため、実際に査定を依頼しなければ買取の可否はわかりません。
住宅ローンが残っていて、売却以外の選択肢も考えている場合は、次の記事も参考にしてみてください。
アンダーローンの場合|売却代金で完済して通常売却する
アンダーローンとは、不動産の売却価格が住宅ローンの残債を上回る状態です。この場合、決済時に売却代金で住宅ローンを完済し、抵当権を抹消して通常売却できます。
まずは金融機関で住宅ローンの残債を確認し、不動産会社へ査定を依頼します。査定額から売却費用を差し引いた金額と残債を比べ、完済できる見込みがあるかを確認したうえで、夫婦で売却条件を決めて不動産会社へ売却を依頼します。
買主が決まり、売却価格と決済日が確定したら、あらためて住宅ローンを完済できるかを確認し、金融機関へ全額繰上返済を申し込みます。決済日には、住宅ローンの完済と抵当権抹消登記、所有権移転登記を行います。
アンダーローンは売却手続きを比較的進めやすく、住宅ローンや売却費用を差し引いたお金が残る可能性がある点がメリットです。
ただし、売却には夫婦双方の意思確認や必要書類の準備、決済日の調整が必要であり、別居中はこうしたやり取りに時間がかかることがあります。 また、一方が共有不動産に住んでいる場合は、内覧への対応や退去・引渡しの時期についても、あらかじめ合意しておく必要があります。
夫婦がそろって手続きするのが難しい場合は、オンラインでの申込みや司法書士による書類の代理受領に対応しているか、金融機関へ確認しましょう。
オーバーローンでも不足額を補える場合|自己資金を加えて通常売却する
オーバーローンとは、不動産の売却価格だけでは住宅ローンを完済できない状態です。不足額を自己資金で補える場合は、売却代金と自己資金で住宅ローンを完済し、抵当権を抹消して通常売却できます。
まずは金融機関で住宅ローンの残債を確認し、不動産会社の査定額から売却費用を差し引いて、不足額の目安を把握します。不足額を自己資金で補える見込みが立ったら、不動産会社へ売却を依頼します。
買主が決まり、売却価格と決済日が確定したら、最終的な不足額を確認して自己資金を用意し、金融機関へ全額繰上返済を申し込みます。決済日には、売却代金と自己資金で住宅ローンを完済し、抵当権抹消登記と所有権移転登記を行います。
不足額が比較的小さい場合は、預貯金や親族からの借入などで補い、通常売却を進められる可能性があります。
別居中に夫婦の一方が不足額を多く負担する場合は、離婚時の財産分与でどのように清算するかまで話し合っておきましょう。住宅ローンの契約内容や持分割合を確認したうえで負担方法を決め、合意内容や支払額、入出金の記録を残しておくことが大切です。
オーバーローンで不足額を補えない場合|金融機関の同意を得て任意売却する
売却代金だけでは住宅ローンを完済できず、不足額を自己資金でも補えない場合は、通常売却では抵当権を抹消できません。別居中に住宅ローンの返済を続けることが難しく、どうしても売却したい場合は、金融機関の同意を得て抵当権を抹消し、不動産を売却する「任意売却」を検討します。
任意売却を希望する場合は、まず住宅ローンを借りている金融機関へ相談し、不動産会社へ査定を依頼します。不動産会社の査定結果をもとに金融機関が売出価格を確認し、承認を得た価格で販売活動を進めます。
買主が決まったら、売却価格や仲介手数料など売却代金から控除する費用、抵当権の抹消について金融機関の最終承認を得ます。そのうえで決済を行い、抵当権抹消登記と所有権移転登記を進めます。
任意売却であっても、通常売却と同じように不動産会社の仲介によって一般市場で買主を探すため、市場価格に近い価格で売却できる可能性があります。
ただし、金融機関が任意売却を認めるとは限りません。認められた場合も、販売活動や決済を進める過程で、売出価格や値下げ、売却代金から控除する費用などについて、その都度承認を得る必要があります。
また、売却後に残った住宅ローンについては、金融機関と返済方法を調整しなければなりません。通常売却よりも金融機関との調整が多いため、任意売却の経験がある不動産会社へ相談するとよいでしょう。
別居中は夫婦間の連絡が取りにくく、金融機関や不動産会社への返答、必要書類の準備、値下げや引渡し時期の判断が滞ることがあります。自分と配偶者のどちらが窓口になるかを決め、相手への共有方法や回答期限についても話し合っておきましょう。
共有不動産の任意売却や、任意売却に強い不動産会社については、次の記事を参考にしてみてください。
共有不動産を売却すべきタイミングは?別居中・離婚時・離婚後を比較
共有不動産を売却するタイミングに、一律の正解はありません。夫婦の合意状況や住宅ローン、売却代金を財産分与として清算したいか、離婚後に元配偶者とのやり取りを残せるかによって、適した時期は異なります。
主な目安は、次のとおりです。
- 別居中:離婚前に不動産を現金化し、住宅ローンや維持費の負担を早くなくしたい場合
- 離婚時:売却条件や代金の分け方を離婚条件とあわせて決め、財産分与として清算したい場合
- 離婚後:離婚成立を優先し、転居や売却の条件を整えてから売りたい場合
売却を急ぐか、財産分与とあわせて清算するか、離婚成立を優先するかを基準に検討しましょう。
別居中の売却が向いているケース
別居中の売却が向いているのは、次のようなケースです。
- 夫婦双方が売却条件に合意している
- 不動産を早めに現金化し、財産分与を進めやすくしたい
- 住宅ローンや固定資産税、管理費などの負担を早くなくしたい
- 離婚後に元配偶者とのやり取りを残したくない
夫婦双方が売却に合意している場合は、別居中に不動産を現金化することで、住宅ローンや維持費の負担、離婚後の共同手続きを早めに解消できます。
ただし、不動産全体を売却するには、売却価格や退去時期、費用負担などについて夫婦で合意し、手続きに協力する必要があります。
また、離婚成立前に持分割合と異なる割合で売却代金を分けると、贈与税がかかる可能性があります。税務上の注意点は、「離婚成立前に持分割合を超えて売却代金を分けると贈与税がかかることがある」で解説します。
なお、売却代金を離婚時の財産分与で清算する予定であれば、専用の口座で管理するなど、残額や使い道を確認できる状態にしておくとトラブル防止につながります。
離婚時の売却が向いているケース
離婚協議中に売却条件を決め、離婚成立に合わせて不動産の売却や代金の清算を進めるなど、離婚時の売却は次のようなケースに向いています。
- 売却方法や売却代金の分け方を離婚条件とあわせて決めたい
- 離婚成立までに住宅ローンや共有関係を解消したい
- 離婚後に元配偶者との連絡や共同手続きを残したくない
- 売却代金を財産分与として清算したい
離婚条件と並行して売却を進めれば、売却代金の分け方や住宅ローンの清算方法まで夫婦でまとめて決められます。離婚後に共有関係や共同手続きを残したくない場合にも向いています。
登記上の持分割合とは異なる形で売却代金を清算したい場合にも、離婚時の売却が向いています。財産分与として売却代金を清算すれば、原則として贈与税もかかりません。
ただし、買主がすぐに見つかるとは限らず、離婚成立までに売却が完了しないこともあります。売却が長引く場合に備え、最低売却価格や値下げの判断、売却費用の負担、代金の分け方を決めておきましょう。
売却代金や自己資金で住宅ローンを完済できない場合は、金融機関へ相談し、任意売却を含む売却方法を検討する必要があります。
なお、売却や清算について合意した内容は、離婚協議書や公正証書などに残しておくと、離婚後の認識違いやトラブルを防ぎやすくなります。
離婚後の売却が向いているケース
離婚成立後も共有名義を維持し、転居や売却の条件が整ってから不動産を売却することも可能です。このような離婚後の売却は、次のようなケースに向いています。
- 不動産の売却を待たずに離婚を成立させたい
- 離婚成立までに売却条件をまとめられない
- 一方が一定期間住み続けたあとに売却したい
- 住宅ローンや転居先の調整に時間がほしい
不動産の売却には時間がかかることもあるため、離婚成立を優先したい場合は、先に離婚届を提出し、その後に条件を整えて売却する方法があります。一方が子どもの進学や転居の時期まで住み続ける場合など、すぐに売却できない事情があるときにも選択肢になります。
ただし、離婚後も共有名義を続ける間は、不動産全体を売却する際に元配偶者の同意や協力が必要です。住宅ローンや固定資産税、管理費、修繕費などの負担も続きます。
どちらかが売却に反対したり、元配偶者と連絡が取れなくなったりすると、売却を進められない可能性があります。離婚前に、売却時期や最低売却価格、費用の負担、売却までの居住方法などを書面で決めておきましょう。
【離婚後の財産分与はいつまで?家庭裁判所への申立期限に注意】
離婚後、双方が合意して財産を分けるための話し合い自体には、法律上の期限はありません。ただし、話し合いがまとまらず、家庭裁判所へ財産分与請求調停や審判を申し立てる場合は次の期限があります。
- 2026年4月1日以降に離婚した場合:離婚日の翌日から5年以内
- 2026年3月31日以前に離婚した場合:離婚日の翌日から2年以内
期限を過ぎると、相手が財産分与に応じない場合でも、家庭裁判所へ調停や審判を申し立てることができません。離婚後に不動産を売却して財産分与を行う予定であれば、売却や話し合いにかかる期間も踏まえて早めに進めましょう。
別居中に共有不動産を売却する際の売却代金の分け方
別居中に共有不動産を売却した場合、売却代金の受け取り方は、売却した範囲によって異なります。
- 不動産全体を売却した場合:原則として、各共有者が持分割合に応じた売却代金を受け取る
- 自分の共有持分のみを売却した場合:持分を売却した本人が売却代金を受け取る
たとえば、夫婦が持分2分の1ずつの不動産全体を3,000万円で売却した場合、原則として夫婦が1,500万円ずつ受け取ります。一方、妻が自分の共有持分のみを1,000万円で売却した場合、その1,000万円は妻が受け取ります。
なお、離婚成立前に一方が持分割合を超える売却代金を受け取ると、超過分が贈与とみなされ、贈与税がかかることがあります。詳しくは、「離婚成立前に持分割合を超えて売却代金を分けると贈与税がかかることがある」で解説します。
また、売却時に受け取った金額が、そのまま各自の財産として確定するとは限りません。婚姻中に夫婦が協力して取得した不動産であれば、別居中に受け取った売却代金も、離婚時の財産分与で清算の対象になる可能性があります。
そのため、離婚成立までは売却代金の入出金を記録し、生活費などに使った場合も、金額や使い道を確認できるようにしておきましょう。
別居中に共有不動産を売却する際の注意点
別居中に共有不動産を売却する場合は、売却できるかだけでなく、売却代金の分け方や離婚協議への影響も確認しておく必要があります。
とくに注意したい点は、以下のとおりです。
- 離婚成立前に持分割合を超えて売却代金を分けると贈与税がかかることがある
- 配偶者に知らせず共有持分を売却すると、離婚協議で争いになることがある
- 仮差押えや処分禁止の仮処分が登記されると売却が難しくなる
離婚成立前に持分割合を超えて売却代金を分けると贈与税がかかることがある
別居中に不動産全体を売却した場合、売却代金は原則として登記上の持分割合に応じて各共有者が受け取ります。
離婚成立前に持分割合を基準とした受取額より多く分けると、その差額が夫婦間の贈与として扱われ、贈与税が発生する場合があります。
贈与税には年間110万円の基礎控除があり、基礎控除後の金額に応じて10~55%の税率が適用されます。計算方法は、次のとおりです。
たとえば、夫婦の持分が2分の1ずつで、分配する売却代金が2,000万円の場合、本来の受取額は1,000万円ずつです。一方が1,500万円、もう一方が500万円を受け取ると、持分割合を超えた500万円が贈与と判断される可能性があります。
配偶者からの贈与には一般贈与財産の税率が適用されるため、同じ年にほかの贈与がなく、特例の適用もない場合、500万円の贈与にかかる贈与税は53万円です。
贈与税が発生するリスクを避けるためにも、別居中に不動産を売却する際は、登記事項証明書でそれぞれの持分割合を確認し、原則としてその割合に応じて売却代金を分けましょう。
【離婚後の財産分与なら贈与税はかからない?】
離婚後に適正な財産分与として受け取った財産には、通常、贈与税はかかりません。不動産の売却代金についても、財産分与として双方が合意していれば、持分割合と異なる割合で分けることができます。
ただし、婚姻中に夫婦が築いた財産などを踏まえても分与額が多過ぎる場合は超過分に、贈与税や相続税を免れる目的で離婚したと認められた場合は受け取った財産すべてに、贈与税がかかることがあります。 売却代金を財産分与で調整したい場合は、離婚時にほかの財産とあわせて分け方を決めましょう。
配偶者に知らせず共有持分を売却すると、離婚協議で争いになることがある
別居中や離婚協議中に自分の共有持分のみを売却することは法律上可能ですが、売却によって離婚協議で争いになることがあります。
たとえば、著しく低い価格で売却した場合や、売却代金を隠したり使い込んだりした場合は、財産分与の対象となる財産を実質的に減らしたと判断される可能性があります。
その場合、将来の財産分与請求権(民法768条)を害する行為として争われ、離婚協議が難航したり、財産分与額を決める際に不利に考慮されたりすることがあります。
また、共有持分を売却すると、配偶者は買取業者などの第三者と不動産を共有することになります。配偶者が知らないうちに共有者が変われば、反発を招き、離婚協議や財産分与の話し合いが難しくなるおそれがあります。
自分の共有持分を売却する場合は、できる限り事前に配偶者と話し合い、査定書や売買契約書、売却代金の入出金記録を残しておきましょう。売却価格の妥当性や財産分与の対象となる金額、売却代金の使い道を確認する資料になります。
【妻に知らせず共有持分を売却し、取消しが争われた裁判例】
過去の裁判例には、夫婦が2分の1ずつ共有していたマンションについて、別居中の夫が、離婚訴訟を提起した妻に知らせず、自分の共有持分を買取業者へ2,500万円で売却したものがあります。マンション全体の価格は、約1億円と見込まれていました。
妻は、夫による持分売却が財産分与請求権などを害するとして、詐害行為取消請求(民法424条)により、買取業者への持分移転登記の抹消を求めました。裁判所は、通常より著しく低い価格での売却だったと認めたものの、買取業者が妻を害すると知っていたとは認められないとして、取消請求を認めませんでした。
このように、配偶者に知らせず共有持分を売却すると訴訟に発展し、離婚問題がさらに複雑化することがあります。自分の持分は単独で売却できますが、離婚問題をこじらせないためにも、配偶者に知らせず処分することは避けたほうがよいでしょう。
参考:静岡大学法政研究「夫婦の居住不動産の不当処分に対する配偶者居住権・信託受益権と詐害行為取消権」(東京地方裁判所 平成28年5月11日判決の判例解説)
仮差押えや処分禁止の仮処分が登記されると売却が難しくなる
別居中や離婚協議中に不動産を処分されるおそれがある場合、配偶者が裁判所へ仮差押えや処分禁止の仮処分を申し立てることがあります。
仮差押えは、財産分与や慰謝料など将来の金銭請求に備え、預金や不動産など相手の財産を一時的に押さえる手続きです。一方、処分禁止の仮処分は、特定の不動産に関する権利を守るため、第三者への売却や担保の設定を制限する手続きを指します。
裁判所の命令が出ると、申立ての対象に応じて、相手方である配偶者の共有持分に、仮差押えや処分禁止の仮処分が登記されます。これらの登記の有無は、登記事項証明書で確認できます。
なお、仮差押えまたは処分禁止の仮処分の登記後も法律上は売却できますが、買主は将来、不動産を差し押さえられたり、取得した持分の登記を抹消されたりするリスクを負います。そのような条件で購入する買主はほとんどいないため、実務上の売却は難しくなります。
別居中の共有不動産の売却に関するよくある質問
別居中に共有不動産を売却せず、離婚後も共有名義のままにしても問題ない?
離婚後も不動産を共有名義のままにしておくこと自体に、法的な問題はありません。ただし、離婚後も元夫婦で不動産を共有し続けると、次のようなリスクが生じます。
- 売却や管理の際に元配偶者とのやり取りが必要になる
- 住宅ローンが残っている場合、相手の返済が滞るリスクを抱えることになる
- 離婚後の居住状況によっては住宅ローンの契約に違反する可能性がある
共有不動産全体の売却や建て替えには共有者全員の同意が必要であり、賃貸や修繕などの管理についても元配偶者との協議が必要になる場合があります。そのため、離婚後も不動産に関するやり取りを続けなければなりません。
また、住宅ローンが残った状態で共有名義を続ける場合は、返済を負担する側の収入状況などによって返済が滞る可能性にも注意が必要です。滞納が続くと不動産が競売の対象となり、住み続けることが難しくなる場合があります。
さらに、住宅ローンによっては、契約者本人が物件に居住することを条件としている場合もあります。離婚によって契約者が家を出る場合や、名義・返済方法を変更したい場合は、金融機関に無断で進めず、承諾や契約変更、借り換えが必要か事前に確認しましょう。
共有名義を解消しないリスクやトラブル事例については、次の記事も参考にしてみてください。
共有不動産を売却せずに財産分与する方法はありますか?
離婚時に共有不動産を分ける方法は、主に「代償分割」と「換価分割」の2つです。換価分割は不動産を売却して代金を分ける方法であるため、不動産を残したい場合は代償分割を選択します。
代償分割とは、夫婦の一方が不動産を取得し、もう一方に取り分に相当する現金やほかの財産を渡して調整する方法です。
財産分与は、夫婦の財産を2分の1ずつ分けるのが基本です。たとえば、夫婦の財産が3,000万円の不動産と1,000万円の預貯金だったとします。この場合、夫が不動産、妻が預貯金を取得し、夫から妻へ1,000万円を支払えば、それぞれ2,000万円ずつの財産を取得できます。
ただし、夫婦双方が合意すれば、2分の1以外の割合で分けることも可能です。上記の例でも、双方が納得していれば、差額を調整せずに夫が不動産、妻が預貯金を取得する形も考えられます。
代償分割では、不動産の評価額によって相手に渡す財産の金額が変わるため、適正な評価額を把握しておくことが重要です。評価額をめぐるトラブルを防ぐためにも、不動産会社へ査定を依頼し、評価額を確認したうえで分け方を話し合いましょう。
離婚時の財産分与については、次の記事も参考にしてみてください。
まとめ
別居中であっても夫婦共有名義の不動産は売却できますが、配偶者の同意が得られなければ、不動産全体を売却することはできません。住宅ローンが残っている場合は、売却代金や自己資金でローンを完済できるかも確認する必要があります。
自分の共有持分のみを売却する方法もあるものの、配偶者に相談せず離婚前に処分すると、離婚協議で争いになる可能性があります。
そのため、別居中の売却は、離婚前に不動産を現金化したいなどの理由があり、夫婦双方が不動産全体の売却に合意している場合に向いています。
一方、売却代金を財産分与として分けたい場合は離婚時、売却条件をじっくり決めたい場合や離婚届の提出を優先したい場合は離婚後など、夫婦の状況に応じて別居中以外のタイミングも検討しましょう。

