アパート売却で入居者を立ち退かせたい!出来るケースや交渉・手順を解説

アパート売却で入居者を立ち退かせたい!出来るケースや交渉・手順を解説

入居者が残っているアパートを売却する際、入居者の立ち退きをせず、オーナーチェンジ物件(入居者がいるままオーナーだけが入れ替わる売買形態)のままで売ることに不安を覚えるオーナーは少なくありません。

入居者の立ち退きをおこなったアパートは使用や取り壊しに制限がなくなるため、アパートを自由に活用したい買主からの需要が期待できます。

前提として、入居者と話し合って相手が納得すれば、特別な措置を取ることなく立ち退きが成立します。しかし、入居者によっては3か月以上の家賃滞納や継続的な迷惑行為を続けているにもかかわらず、立ち退きを拒否するケースも存在します。

アパートの入居者を法的に立ち退きさせるには、借地借家法や民法の規定や裁判例などに基づく、正当な事由が必要です。ただし正当な事由の有無だけではなく、正当な事由の強弱やオーナー・入居者双方の事情を踏まえたうえで、立ち退きが認められるかを総合的に判断されます。

入居者への立ち退きを要求する正当な事由に該当するものは、主に次の通りです。

立ち退きを要求する正当な事由 概要
賃貸借契約上の違反行為が見られる 3か月以上の家賃滞納、無断転貸・転居、用途違反、そのほか迷惑行為などが見られる
建物の老朽化などにより取り壊しの必要がある 老朽化や安全性の問題、再開発などで、建物の取り壊しがやむを得ないと判断される場合
貸主やその家族が居住用として利用する 貸している建物を貸主が利用する必要性が認められる
売却益を必要な支払いに充てる 借金の返済や相続税の支払いに建物の売却益を充てることが認められたケースがある

上記の正当な理由を主張しているにもかかわらず入居者が退去しないときは、明け渡し請求訴訟を提起し、裁判所にて立ち退き要求が正当かどうかを争います。裁判で立ち退きの判決が下れば、法的強制力をもって入居者を退去させれらます。とはいえ裁判で勝訴できるかは確実ではないうえに、裁判の準備や進行には多大な労力がかかるため、基本的には任意交渉での立ち退きを目指すのがよいでしょう。

任意交渉で穏便な立ち退きを実現するには、十分な立ち退き料の支払い、6か月~1年前の事前通知、立ち退き時の引っ越しサポートなどをおこない、入居者の負担を軽減することがポイントです。これらを実施しておくと、明け渡し請求訴訟に発展したときにもオーナー側に有利に働きやすくなります。

ここで注意したいのは、入居者に対して強引に退去を迫ることです。「不法行為による自力救済で立ち退かせる」「正当な理由が弱いにもかかわらず強引に訴訟を起こす」などをおこなうとと、立ち退きが認められないばかりか、損害賠償請求をされるリスクも出てきます。

もし「立ち退き要求が大変そうなので、オーナーチェンジ物件のままで売却したい」という場合は、オーナーチェンジ物件を取り扱う不動産買取業者の利用をおすすめします。買取業者である当社「クランピーリアルエステート」なら、入居者が残ったままのアパートでも買取対応が可能です。

本記事では、アパートの入居者を立ち退きさせる際の正当な事由、明け渡し請求訴訟の概要、立ち退き料、立ち退きをお願いするときのポイント・注意点、オーナーチェンジ物件として売却するときのメリットなどを解説します。

目次

アパートの入居者を立ち退きさせるには正当な事由が必要!具体例を解説

交渉での立ち退きに応じない入居者がいる場合は、法的手段をもって立ち退きを要求する必要があります。アパートの入居者の立ち退きを裁判所などで法的に認めてもらうには、借地借家法28条や民法第541条に基づく、正当な事由が必要です。正当な事由がなければ、オーナーがいくら立ち退きを要求しようとも入居者側は無理に立ち退く必要がありません。

(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
e-Gov法令検索 借地借家法第28条

(催告による解除)
第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
e-Gov法令検索 民法第541条

正当な事由かどうかの判断は、貸主・借主それぞれの状況・事情、借主の契約遵守の程度、アパートの利用状況などの有無や強弱で総合的に判断されます。一般的な判断基準は、借地借家法第28条に基づく次の要因です。

正当な事由の判断基準 概要
建物の使用を必要とする事情 貸主・借主がそれぞれ当該建物の使用を必要とする程度
建物の賃貸借に関する従前の経過 賃貸借契約締結時の経緯・事情、賃料の支払い状況、契約期間、更新回数など
建物の利用状況 借主の用途違反の有無、借主の建物の利用頻度、そのほか居住用・事業用などとしての利用状況
建物の現況 建物の老朽化の程度、補修に必要な費用、築年数、構造など
立ち退き料 立ち退き要請時に借主に支払う立ち退き料の金額、代替不動産の提供の有無など

たとえば、入居者が理由もなく家賃を長期間滞納し、オーナー側に非がないときは立ち退きが認められる可能性があります。一方、立ち退きの必要性とオーナーの個人的事情の両方が存在し、正当な事由の根拠が弱いときは立ち退きが認められないケースが想定されます。

イメージは天秤です。オーナーと入居者で事情を総合的に比較し、オーナー側の必要性が勝ったときに立ち退きが認められます。

なお、上記はあくまで入居者に立ち退きを拒否された場合の話です。正当な事由がなくとも、入居者が立ち退きに同意すれば認められます。

以下では、実務上の事情や実例などを参考に、正当な事由として認められる典型的なケースをいくつか紹介します。

  • 入居者が3か月程度家賃滞納など賃貸借契約上の違反行為が見られる
  • 建物の老朽化による建て替えや再開発による取り壊しなどを実施する
  • オーナーの自己使用に必要性が認められる
  • 借金の返済や相続税の支払いなどに売却益を充てる
正当な事由が必要になる背景には、現行法ではオーナー側よりも入居者側が強く保護される傾向が挙げられます。入居者の生活の要である「住」の部分を貸すオーナーが、力の行使による理不尽な家賃上昇や利用制限などをおこなうのを防ぐためです。

入居者が3か月程度家賃滞納など賃貸借契約上の違反行為が見られる

入居者が賃貸借契約上の違反行為をしているときは、立ち退きの正当な事由として認められる可能性があります。賃貸借契約上の違反行為の例は次の通りです。

  • 3か月以上の家賃滞納
  • 入居者による無断転貸・転居といった民法第612条違反
  • 住居用物件を事務所や店舗などに転用するといった用途違反
  • ペット飼育禁止の契約を無視したペット飼育
  • 入居人数オーバー
  • 入居者が原因の騒音、悪臭、そのほか迷惑行為の継続
  • オーナーに無断で部屋の改造・模様替え、室内破壊
  • 「暴力団員であったときは契約解除できる」との特別条項がある契約での暴力団員の入居

上記のうち、よく挙げられる事例は3か月の家賃滞納です。1~2か月の滞納だとまだ契約解除までは至らないものの、3か月以上の滞納になると「信頼関係破壊の法理」において、信頼関係の破壊があったと判断されるケースが実務上よく見られます。

信頼関係破壊の法理とは、賃貸借契約上でよく使われる理論です。賃貸借契約においては、「債務不履行や用法不遵守といった債務不履行・契約違反があった場合でも、信頼関係が破壊されたと認められる場合にのみ契約解除が認められる」という考え方です。

3か月はあくまで目安であり、法律で定められているわけではありません。たとえば借主側が滞納しながらも継続して支払いをおこない、裁判中に滞納分を全額返済したケースでは、1年以上の家賃滞納でも契約解除を認めなかった裁判例があります(東京地方裁判所平成19年6月27日判決)

3か月以上の家賃滞納や無断転貸・転居、用途違反など、入居者側の債務不履行が立ち退き要請の要因となった場合、後述する立ち退き料の支払いは基本的に不要です。

ただし円満な立ち退きを実現したい場合は、退去条件として入居者へ立ち退き料を支払うこともあります。

賃貸借契約上の違反行為が要因で立ち退きが認められた例

<3か月の家賃滞納によって立ち退きになった裁判例>
東京地方裁判所令和3年2月2日判決。

借主が家賃3か月分15万円の滞納。大家は催告をしたうえで、賃貸借契約の解除の意思表示。借主は催告期間内に11万円の支払いをおこなったが、催告期間中に滞納家賃を全額支払わなかった事実をもって、信頼関係の破壊があったとして借主に退去を命じる。

<無断転貸によって立ち退きになった裁判例>
東京地方裁判所令和3年11月29日判決。

借主は大家に無断でかつら販売業大手のA社との間で、商品販売業務に関する契約を締結。当該物件にて女性用ウィッグの専門店をオープンし10年間使用していた。「A社と借主の契約は商品販売業務の委託契約である」「借主に支払われる料金は家賃ではなく業務委託手数料である」との主張があったものの、借主の従業員が一人も本件店舗で働いていない事実などから無断転貸として認められる。無断転貸の結果、信頼関係の破壊があったとして借主に退去を命じる。

<入居者の迷惑行為によって立ち退きになった裁判例>
東京地方裁判所令和3年6月30日判決。

借主は、合理的な理由なく夜中や明け方にほかの部屋のドアを叩く、インターホンを鳴らすなどの迷惑行為を繰り返し他入居者とのトラブルを引き起こした。大家は借主に対して再三の注意をおこない、他入居者も警察への通報をおこなっていた。しかし収まらず、ほか入居者は迷惑行為を理由に退去。大家は借主に明け渡し請求訴訟を提起。大家が借主に無催告で解除できる定めがなかったものの、大家が経済的損害を被ったことが考慮され、著しい信頼関係の破壊とその継続があったとして目的物返還義務として借主に退去を命じる。

建物の老朽化による建て替えや再開発による取り壊しなどを実施する

建物の建て替えや取り壊しに正当な事由がある場合は、アパート入居者への立ち退き要請が認められる可能性があります。建て替え・取り壊しが立ち退きの正当な事由となるのは、実施しないと居住者の安全性が脅かされると認められるケースです。

正当な事由が認められる例は、次の通りです。

  • 建物の老朽化や災害による倒壊リスクが高く、安全性が確保できないことから居住に危険が伴う
  • 都市再開発法に基づく再開発事業である法定再開発によってアパートの取り壊しが必要になった
  • 遺産分割のためにアパートの解体が必要となり、その他取り壊し以外の相続法がないといった事情が背景にある

単純に建物が古くなったから建て替えたいなどの理由だと、正当な事由として認められる可能性は低いでしょう。

建て替えや取り壊しが要因で立ち退きが認められた裁判例

<都市計画による再開発で立ち退きになった裁判例>
東京地方裁判所平成25年9月17日判決。

本件建物は、都市再生緊急整備地域に指定されており、高層ビル建築が予定されていた。すでに老朽化が進んでいた建物を多額の費用をかけて存続させるより、取り壊して周辺土地と一体として有効利用したほうがよいという原告の主張に、合理性・相当性が認められる。賃貸借契約が約30年間継続していたことを考慮し、借地権価格1,060万円の半額530万円やその他移転にかかる補償である約366万円を立ち退き料として支払いの支払いをもって立ち退きを命じる。

<建物の耐震基準不足が原因で立ち退きになった裁判例>
東京地方裁判所立川支部平成25年3月28日判決。

独立行政法人都市計画機構(UR)が所有する11階建ての賃貸物件で、すべての階で耐震指標値が安全基準よりも下回っていた。1棟204戸の賃借があり倒壊で204世帯に被害が及ぶリスクがあった、取り壊し後の住み替えのための措置を講じていた、耐震強度の工事をおこなうには現実的ではない費用が必要だったなどの事情が考慮され、立ち退き料なしでの立ち退きが認められる。控訴審では移転費用の補填などを条件に盛り込んで和解が成立。

オーナーの自己使用に必要性が認められる

建物のオーナー自身が当該アパートを使用したい場合、その必要性が高ければ立ち退きの正当な事由となる可能性があります。自己使用の必要性が認められるケースとして上げられるのは、次の通りです。

  • オーナー自身やその家族の介護のための同居で物件が必要になる
  • 病気の療養中で当該物件が病院から近い
  • 建物の事業用に利用するかつ入居者に相応の立ち退き料を支払っている

オーナーの自己使用による立ち退きは、オーナー・入居者双方の事情の大小がとくに争われるケースです。裁判例のなかには、数千万円レベルの立ち退き料を支払ってようやく立ち退きが認められたものもあります。自己使用が要因の立ち退きを実現するには、ある程度の立ち退き料の支払いがセットになると思っておきましょう。

貸主やその家族による居住用利用に関する正当な事由が認められた裁判例

<オーナーが自分の介護のために自己使用>
東京地方裁判所平成28年7月14日判決。

85歳のオーナーを長男夫婦が介護するために、入居者へ立ち退きを要請した事例。入居者はがん治療中で転居の負担がかかることから、立ち退き料を請求。入居者には代替物件があるという背景も考慮し、入居者へ引越し費用相当額と賃料2年分合わせて立ち退き料200万円の支払いをもって、立ち退き要請を認める。

借金の返済や相続税の支払いなどに売却益を充てる

アパートを売却し、その売約益をオーナーの借金返済や相続税の支払いに充てたい場合も、正当な事由として立ち退きが認められる可能性があります。

ただし、先述したオーナーの自己使用による立ち退きと同じく、オーナー側に相応の事情がなければ正当な事由として認められることは難しいと思われます。

アパートの売却が正当な事由として認められるかは、「経済上の必要性」の有無・強弱が重要なポイントです。たとえば、オーナーがアパート以外に資産価値のある財産を持っておらず、アパートを売却しなければ資金が捻出できない場合は正当な事由になる可能性があります。

一方、「高額で購入してくれる人がいるから」といった、オーナーの利益のみが目的の売却だと正当な事由にはならないと考えられます。

過去の裁判例を見ると、経済的な困窮に加え、売却に緊急性や不可避性が存在するか否かが判断ポイントとなっていました。

正当な事由があるのに立ち退かない場合は明け渡し請求訴訟を起こす

正当な事由を理由に立ち退き要請をしているにもかかわらず、入居者が退去に応じないときは「明け渡し請求訴訟」を起こして争います。明け渡し請求訴訟を提起した後は、裁判所の判決または当事者同士の和解をもって、立ち退きの是非を争います。

明け渡し請求訴訟の主な流れは、以下の通りです。

明け渡し請求訴訟の流れ 概要
1. 内容証明郵便の送付 ・家賃滞納や迷惑行為などのトラブルを起こす入居者に対し口頭や書面で通知
・改善が見られないときは、内容証明郵便にて債務履行の請求や履行期日、従わない場合には契約解除する旨を通知
・内容証明郵便は任意だが訴訟の前提事実や証拠を残す意味で有効
2. 契約解除の意思表示 ・賃貸借契約の解除を明確に通知
・たとえば家賃滞納がある場合、相当期間を設けた催告を経たうえで解除する必要あり(民法541条など)
3. 訴状の作成・提出 ・訴状に「明け渡し請求」「滞納賃料請求」などの請求内容とその理由を記載し、管轄の地方裁判所に提出
・140万円以下の訴額を争うときは簡易裁判所に提出
・訴状には証拠(契約書、通知書、内容証明など)も添付
・裁判所から当事者双方に期日の通知がおこなわれ、被告側に答弁書提出が求められる
4.裁判 ・第一回口頭弁論にて訴状や答弁書の陳述
・その後は証拠調べ、主張整理、弁論などを実施
・途中で裁判所からの和解勧告や当事者同士での和解の話し合いなどを経て和解することも可能
・被告が欠席・答弁しない場合は原告の請求が認められる「欠席判決」になる可能性あり
5. 判決言渡し ・和解せずに弁論が終結した場合、裁判官が提出された証拠と主張に基づき明け渡しの可否について判決
・明け渡し命令が出た場合、入居者は一定の期間内の退去が必要
・被告が控訴しなければ判決確定
6. 判決確定・強制執行申立て ・入居者が判決を経ても明け渡しに応じないときは、「明け渡しの強制執行」を地方裁判所に申し立て
・強制執行となると執行官が強制的に建物の明け渡しや引き渡し等をおこなう

明け渡し請求訴訟のメリットは、勝訴判決さえ得られれば、裁判所の判断に基づいた法的強制力をもって立ち退きを実現できる点です。裁判所の法的判断が確定すれば、これまで立ち退かなかった入居者も任意で部屋を明け渡すはずです。仮に判決に従わない入居者であっても、強制執行で立ち退かせられます。

ただし明け渡し請求訴訟は、敗訴したときに立ち退きが法的に認められなくなるリスクがあります。いくら立ち退きに正当な事由が明確に存在したとしても、法廷で立証できなければ敗訴する可能性も十分に想定されるでしょう。

そのため、明け渡し請求訴訟を提起する際は、確実に勝訴できる立ち回りが必要です。立ち退きの正当な事由の有無や強弱を明確にし、証拠集め・取捨選択、相手の主張に対する反論を準備しておきます。また、訴訟提起に至るまでの入居者への注意喚起や、立ち退き要請を正しい手順で進めたかも重要になります。

明け渡し請求訴訟を有利に進めたいなら、不動産に強い弁護士への依頼がおすすめです。不動産問題の実績豊富な弁護士へなら、明け渡し請求訴訟に有効な証拠の精査、適切な内容証明郵便による催告、裁判所での主張・反論などを任せられます。

参考:裁判所「建物明渡請求
参考:裁判所「動産執行の申立て,不動産引渡(明渡)執行の申立て,保全処分の執行の申立てに必要な書類等
参考:裁判所「判決等はもらったけれど(強制執行の概要)

オーナー事情で立ち退きをお願いするときは立ち退き料を支払う

アパートの自己使用や再開発による取り壊しなど、オーナー事情や入居者に非がない立ち退きをお願いするときは、立ち退き料を支払うのが一般的です。

立ち退き料とは、オーナー側の事情などで立ち退きを余儀なくされた入居者に対して、立ち退きによって発生する損失を補填する目的で支払う金銭です。借地借家法における「財務上の給付」に該当し、立ち退きの正当な事由を補う要素となります。

たとえば、立ち退きの正当な事由がやや弱かったとしても、十分な立ち退き料の支払いを約束するのであれば、任意での立ち退きに応じてくれたり裁判で勝訴できたりする可能性があります。

(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
e-Gov法令検索 借地借家法第28条

アパートの明け渡し請求訴訟においても、立ち退きを認めると同時に借主への相応の立ち退き料の支払いが命じられる判決は数多く存在します。そもそも入居者が納得する立ち退き料を支払えば、訴訟に至る前にスムーズに立ち退きに応じてくれる事例は珍しくありません。

<アパートの立ち退き料の内訳>

  • 引越し費用
  • 新居のために必要な費用(敷金礼金・仲介手数料・初月分家賃など)
  • 生活関連設備の移設費用など(エアコンの移設、電話・インターネット回線の再設定など)
  • 立ち退きに対する慰謝料や協力金など

立ち退き料の金額には、法的に明確な基準は設けられていません。オーナーと入居者間の交渉によって、双方が納得する金額を決めていきます。立ち退きの正当な事由が強い(入居者側の非が強い)と安く正当な事由が弱い(入居者側の非が弱い)と高くなる傾向が見られます。

ただし立ち退き料は、立ち退きで発生する損失額や双方の事情を確認しつつ、過去の裁判例を参考に決定するのが通例です。アパートの入居者を立ち退きさせるには正当な事由が必要!具体例を解説で解説した裁判例でも、状況や裁判例を基に立ち退き料が決められています。

交渉や裁判で立ち退き料の金額を左右する要因として、以下のものが挙げられます。

  • 入居期間の長さ
  • 入居者の属性(年齢、収入、病気の有無など)
  • 入居者の生活実態(通院・通勤状況、家族との距離など)
  • 建物の老朽化度

なお、これまでの裁判例や当社クランピーリアルエステートが確認した事例を見ると、アパートの立ち退き料は家賃の6~12か月分がおおまかな相場です。

オフィス用物件の立ち退き料の相場は2~4年分、店舗用物件の立ち退き料の相場は5~10年と居住用物件と比較して高くなる傾向があります。これらは移動規模、移転コスト、事業場のリスクなど、居住用物件と比較して立ち退きにかかる負担が大きいからです。

アパートの入居者に立ち退きをお願いするときの手順

アパートで入居者の立ち退きをお願いする際には、まず任意での交渉から始めます。任意交渉では立ち退き料や引っ越しサポートなどの提案を含めて話し合い、相手が納得したうえでのスムーズな立ち退きが実現できるようにしましょう。

任意交渉を経ても相手が立ち退きを拒否した場合は、以下に示した正しい手順を踏んで立ち退きを要求します

  • 賃貸期間満了の6か月~1年前の期間に契約更新しない旨を通知する
  • 入居者の債務不履行が原因でなければ立ち退き料の交渉と支払いをする
  • 退去手続きを進める

正しい手順を踏まなければ、入居者からの反感を買い、スムーズな立ち退きが実現しないリスクが高まります。また、明け渡し請求訴訟においても不利に働き、立ち退き自体が認められない判決となるケースも想定されます。

以下の手順は、オーナー側に正当な事由があることを前提に解説します。

賃貸期間満了の6か月~1年前の期間に契約更新しない旨を通知する

アパートからの立ち退きをお願いする際には、まず入居者に対して「契約更新拒絶の通知」や「解約申し入れの通知」を、賃貸期間満了6か月~1年前におこないましょう。

契約更新拒絶の通知とは、賃貸借物件のオーナーが入居者へ賃貸借契約を更新しない旨を通知することです。一方で解約申し入れ通知は、契約期間の途中で契約解除する際に送付します。

借地借家法第26条にて、賃貸借契約を更新しないときは6か月~1年前に通知しなければ、従前の契約と同一条件で更新したものとみなすと定められています。

(建物賃貸借契約の更新等)
第二十六条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
2 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
3 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。
e-Gov法令検索 借地借家法第28条

通知した事実は、立ち退き交渉や明け渡し請求訴訟の際に証拠として立証できるように、書面として残しておきましょう。

入居者の債務不履行が原因でなければ立ち退き料の交渉と支払いをする

入居者の債務不履行が原因の立ち退きでなければ、入居者と立ち退き料やそのほか条件について交渉をおこないます。

一般的に、入居者側に家賃滞納や契約違反がなく完全な所有者都合で立ち退きを求める場合は、立ち退き料を支払うのが通例です。また、転居先探しや引っ越し業者の手配などのサポートの提案なら、立ち退き料と併せて交渉材料として有効に働きます。

交渉する際は、「立ち退きを求める理由を誠実に説明する」「入居者側の事情を聞く」という点を意識しましょう。オーナー側の事情を押し付けるのではなく、誠実な態度で交渉に臨むことが大切です。

退去手続きを進める

交渉が成立し立ち退きが決まったら、入居者の退去手続きを進めます。退去手続きを進める際には、「立ち退き合意書」を取り交わしましょう。

立ち退き合意書とは、オーナーと入居者間で立ち退きにおける条件に合意したことを証明する書類です。立ち退き合意書には、主に以下の項目を記載します。

  • 賃貸借契約を解除する旨の合意
  • 契約解除から実際に退去するまでの猶予期間
  • 立ち退き時の室内残存物の取扱
  • 立ち退き料の金額
  • 予定通り退去しなかったときの無断使用による損害金(使用損害金)
  • 敷金の返還について

立ち退き合意書の雛形やテンプレートは、インターネット上で無料で公開しているサイトがいくつもあります。

アパートからの立ち退きをお願いするときのポイント

アパートの入居者に立ち退きを要請する際、伝え方や設定条件に難があると、入居者とのトラブルに発展したり立ち退きの合意に時間がかかったりなどの問題が発生します。そこで、アパートからの立ち退きをお願いするときには、以下のポイントを意識するのがおすすめです。

  • 可能な限り早めに交渉を始める
  • 入居者が少ないときに立ち退き交渉を検討する
  • 新居の提案や立ち退き料の増額など立ち退きに関するサポートを惜しまない
  • 立ち退き交渉は弁護士に協力を依頼する

可能な限り早めに交渉を始める

立ち退き交渉開始日や立ち退き期日の設定は、可能な限り早めにしておくと、オーナー・入居者双方にとってメリットがあります。

早期交渉のメリット享受者 具体的なメリット
オーナー側のメリット ・入居者の立ち退きをフォローしやすい
・立ち退き料の設定や協議する時間に余裕ができ交渉の質が向上する
入居者側のメリット ・早期から新居探しや引っ越し手配などの準備できるためスムーズに動きやすい
・立ち退きついて入居者側としての意見を整理する時間が取れる

交渉は期限ギリギリの6か月前ではなく、立ち退きの準備期間に余裕を持たせて進めることが望ましいです。

入居者が少ないときに立ち退き交渉を検討する

入居者に立ち退きを要請するかの判断基準の一つに、現在の入居者数が挙げられます。入居者が少ないときに立ち退き交渉を進めたほうが、オーナー側にメリットが多い傾向があります。

<入居者が少ないときに立ち退き交渉を検討するメリット>

  • 交渉や手続きの数が減って書類作成や交渉の負担が軽減される
  • 立ち退き料やサポートにかかる金額を抑えられる傾向がある
  • 立ち退き条件の調整と説得がやりやすく合意形成がやりやすい
  • 空室率が高いほうが再建築や建て替え時の正当な事由が補強される可能性がある

アパートを空にして売却する予定があるときは、新しい入居者の募集を止めるなど入居者が少なくなるよう調整しておくとよいでしょう。

新居の提案や立ち退き料の増額など立ち退きに関するサポートを惜しまない

スムーズな立ち退きを実現するのに重要なのは、入居者の立ち退きに関するサポートを惜しまないことです。

いくら正当な事由があろうと、アパートの立ち退きは入居者にとって、生活環境の変化や家賃の変動など大きな負担を伴うものです。転居先探し、引っ越しの準備、移動にかかる各種費用などを考えると、任意での立ち退きに応じない入居者が出てくるのは当然でしょう。

円滑な立ち退きには、立ち退きに対する入居者の心理的抵抗や負担の軽減が鍵になります。オーナーが提供可能な、立ち退きに関するサポートは次の通りです。

  • 立ち退いた後の新居の提案
  • 入居者の損失・負担に見合った立ち退き料の掲示、交渉途中での立ち退き料増額
  • アパートの原状回復の不問
  • 退去までの家賃の減額
  • 建て替え後のアパートへの優先的な入居の提案
  • その他入居者の希望優先や条件の譲歩などの提案

立ち退き交渉で注意したいのは、嘘をつく、隠しごとをするといった、入居者へ不誠実な態度を取ることです。入居者の不信感や不安を煽り、交渉が決裂するリスクが高まります。

立ち退き交渉は弁護士に協力を依頼する

入居者との立ち退き交渉は、不動産に強い弁護士に協力を依頼することを推奨します。立ち退き交渉を弁護士に依頼するメリットは、次の通りです。

  • 立ち退きの正当な事由について法的かつ論理的に説明してくれる
  • オーナー・入居者の事情を考慮した適切な立ち退き料を算出してくれる
  • 立ち退き交渉や明け渡し請求訴訟の申し立てなどの手続きの負担を任せられる

数十万円~数百万円の弁護士費用がかかるものの、立ち退き交渉の成功率を高めることを期待できます。弁護士事務所の無料相談や法テラス、分割払いなどを活用すれば、弁護士費用を抑えられる可能性があります。

弁護士資格を所持していない不動産会社や管理会社に立ち退き交渉を依頼すると、非弁行為として違法になります。立ち退き交渉代理は弁護士、または認定司法書士(※請求額が140万円以下に限る)に依頼しましょう。なお、弁護士が所属している不動産会社や弁護士と提携している不動産会社であれば弁護士が対応してくれるため、問題はありません。

アパート入居者の立ち退きに関する注意点

アパート入居者の立ち退きを進める際の注意点として、「自力救済」と「訴訟での敗訴」の2つが挙げられます。いずれも法的な問題が絡んでおり、状況によっては立ち退き要請の無効や損害賠償に発展するリスクがあります。

自力救済は違法行為とみなされる

立ち退きにおける自力救済とは、オーナーが司法手続きを経ずに入居者の退去を実現しようとする行為です。

立ち退きに関する自力救済には不法行為に該当するものが多く、入居者から損害賠償請求される可能性があります。いくら立ち退きの正当な事由や入居者側の落ち度が存在しても、司法手続きを経ない退去の催促は認められません。

オーナーによる自力救済で退去を強制する例は、主に次の通りです。

  • 入居者の部屋の鍵を無断で交換し部屋に入れないようにする
  • 入居者の部屋の家財を無断で撤去する
  • 入居者の部屋の電気・水道・ガスなどのライフラインを止める
  • 入居者への威嚇、怒鳴る、そのほか迷惑行為を継続しておこなう

1999年12月札幌地方裁判所の裁判例では、管理会社が入居者の部屋のライフラインの停止や鍵の取り替えをして入居者を閉め出したことで、10万円の慰謝料が認められました。

平成30年3月の東京地方裁判所の裁判例だと、家賃滞納を理由に入居者の賃貸建物への立ち入れを不可能にしたうえで家財道具一式を撤去・処分したことで、オーナーに170万円強の支払いが命じられています。

入居者に立ち退きを要請する際、入居者の損害賠償請求が容認される事例だと、明け渡し請求訴訟においても裁判官の心証が悪化し敗訴するリスクが想定されます。トラブルを回避するためにも、立ち退き交渉は必ず法的手続きを踏んでおこなうことが重要です。

正当な事由が弱いと訴訟で負ける場合がある

明け渡し請求訴訟を提起したとしても、オーナー側が100%勝訴するわけではありません。正当な事由の立証ができない、正当な事由が弱い、オーナー側に過失があるなど、オーナー側の事情・弁論内容が不十分または立証できない場合は、敗訴は十分にありえます。

明け渡し請求訴訟に敗訴すると、入居者は立ち退きしなくてもよいという法的判断が確定してしまいます。第一審から控訴したとしても、控訴審では第一審の判断を基に審理がおこなわれるため、オーナー側が不利な状態で進むことになります。

そのため、明け渡し請求訴訟を提起する際には、オーナー側の正当な事由や入居者側の問題を立証できる主張と証拠の準備が非常に重要です。正当な事由の具体例については、アパートの入居者を立ち退きさせるには正当な事由が必要!具体例を解説の見出しをご覧ください。

アパートは入居者を立ち退きさせなくても売却できる

アパートの売却は、必ずしも入居者を立ち退きさせなくても可能です。

入居者がいる状態のままで売却しようとする賃貸物件を、オーナーチェンジ物件と呼びます。オーナーだけが交代することから、オーナーチェンジと呼ばれています。

オーナーチェンジ物件を売却したとしても、民法第605条に基づき、入居者との賃貸借契約は次のオーナーに引き継がれるのが原則です。入居者側にはとくに不利益は生じないため、取引自体に法的な問題もありません。

「入居者を立ち退かせるのが難しいけど、アパートを売却したい」という場合は、オーナーチェンジ物件としての売却を検討してみてください。

とはいえ、オーナーチェンジ物件は買主に敷金の返還義務や管理・修繕の責任も引き継がれるうえに、自分の居住用として活用するのは現実的に難しい建物です。また、購入前に内覧で室内を確認するのが物理的に困難であり、買主側にはリフォーム費用の予想や建物の老朽化具合などが確認しづらいリスクが付きまといます。

そのため、購入層が主に賃貸物件を経営したい投資家からの需要に限定される傾向があります。一般個人向けの不動産会社では、売買の取扱をしていない可能性も十分に考えられるでしょう。売却相場も、周辺物件と比較して割安になるのが一般的です。

オーナーチェンジ物件を売却する際には、オーナーチェンジ物件の取扱実績のある不動産会社の利用がおすすめです。当社クランピーリアルエステートでは、オーナーチェンジ物件を含めたさまざまな訳あり物件を直接買い取りしています。もし他の不動産会社に取り扱いを断られたアパートがあったときは、ぜひ一度当社の無料相談からお問い合わせください。

参考:e-Gov法令検索「民法第605条

入居者を立ち退きさせずオーナーチェンジ物件として売るメリット

入居者を立ち退きさせず、オーナーチェンジ物件として売るメリットは、主に次の通りです。

  • 家賃収入を求める買主からの需要が期待できる
  • 立ち退き手続き時に発生する入居者とのトラブルを回避できる
  • 入居者の退去手続きに伴う手間や費用負担を軽減できる

家賃収入を求める買主からの需要が期待できる

オーナーチェンジ物件はすでに入居者が入っているため、ある程度の家賃収入が最初から見込まれる状態です。

アパートを新築で建てた場合、入居者募集をおこなっている空き室期間は家賃収入を得られません。また、入居募集や管理会社の選定などに初期コストが発生するうえに、入居者が見つかる保証がないまま運営を続ける必要があります。アパート経営が初めてのオーナーだと、ノウハウ不足により空き室期間が想定以上に長引くリスクも想定されるでしょう。

その点、オーナーチェンジ物件ならすでに一定の運用実績があることから、最初から安定した家賃収入を求める買主からの需要を見込めます。売主がアパート経営に関する運用実績、入居者情報、管理ノウハウ、年間収支データなどをあわせて提示すれば、買主も安心して購入を検討しやすくなります。

たとえば、オーナーチェンジ物件を売りに出すときには「入居率◯%」「年間家賃収入見込み◯◯◯万円」「年間利回り実績◯%」といった定量データを示すと、購入検討者へリーチしやすいでしょう。

立ち退き手続き時に発生する入居者とのトラブルを回避できる

オーナーチェンジ物件として売却するなら、入居者に立ち退きを求める必要がありません。そのため、立退手続きにおいて発生しがちな入居者とのトラブルを回避しやすいメリットがあります。立ち退き手続き時に想定されるトラブルは、主に次の通りです。

  • 入居者同士が連携して立ち退きに一切応じない
  • 立ち退き料の増額や合意済みの立ち退き料の再交渉を求められる
  • 威圧的な言動や他入居者・オーナーへの嫌がらせなどの迷惑行為を継続しておこなう
  • 家賃の支払い拒否や長期滞納をおこなう
  • 原状回復を無視した室内の故意損壊や放置が発生する
  • 入居者が音信不通で連絡が取れず、立ち退き手続きが滞る

オーナーチェンジ物件での売却なら、原則として賃貸借契約や敷金などは新しい所有者に引き継がれます。入居者側としては立ち退きする必要もないため、従来通りの生活を続けることが可能です。その結果、オーナー交代を理由とした抗議が発生する可能性は低く、入居者関係のトラブルは防ぎやすいと考えられます。

入居者の退去手続きに伴う手間や費用負担を軽減できる

アパートから入居者を退去させるには、オーナー側にも労力・金銭面で一定の負担がかかります。立ち退きのためにオーナー側が負担するものは、主に次の通りです。

  • 入居者との立ち退き関する手続き・交渉
  • 正当な事由証明のための証拠集め
  • 入居者に支払う立ち退き料
  • 交渉に応じてもらうための入居者の新居探しや引っ越しサポート
  • 交渉が決裂した場合の明け渡し請求訴訟に関する各種対応
  • 交渉や訴訟に関して弁護士のサポートを受けるなら弁護士費用

オーナーチェンジ物件での売却なら、上記の対応は原則として不要です。入居者がそのまま居住し続ける前提で売却できるため、オーナー側の労力や費用負担を大きく軽減し、スムーズな売却が期待できます。

立ち退き関係のアパートの売却は買取業者の利用がおすすめ!

立ち退きが関連するアパートには、立ち退きに関する交渉や明け渡し請求訴訟の可能性など、通常物件にはないさまざまなリスクが存在します。専門知識や法的手続きのノウハウを持たないオーナーだけの対応だと、対応が難航して立ち退きがスムーズに進められないことも想定されるでしょう。

そこで、立ち退き関係のアパートの売却は、買取業者の利用をおすすめします。

買取業者とは、不動産を直接買い取るサービスを展開する会社です。買い取った不動産を独自ノウハウで活用することで、収益を得ています。立ち退き関係の不動産の売却に、買取業者をおすすめする理由は次の通りです。

  • 立ち退き交渉をせずともオーナーチェンジ物件のままで売却できる
  • 立ち退き交渉の実績が豊富な買取業者ならオーナーチェンジ物件でも適正価格での査定を期待できる
  • 内覧が難しさや入居者とのやり取りなど、立ち退き関係ならではの問題を把握したうえで買取対応してくれる
  • 買取業者が直接買い取りするため1週間以内のスピーディーな現金を期待できる
  • 原則として契約不適合責任免責での売買契約になるので売却後のトラブルを防止しやすい
  • 立ち退きに対する入居者の抗議行動や立ち退き交渉の決裂による訴訟リスクを確実に回避できる

当社クランピーリアルエステートでは、オーナーチェンジ物件を含めた立ち退き関係の不動産買取に対応しております。立ち退き関係のアパートであっても、適正価格で査定し買取いたします。

買取対応前の無料相談や無料査定も受け付けていますので、ぜひ一度お問い合わせください。

まとめ

任意交渉でも立ち退きに応じない入居者がいる場合、その入居者を法的に立ち退かせるためには正当な事由が必要です。正当な事由には3か月以上の家賃滞納、必要性のあるオーナーの自己使用などが該当し、その他オーナー・入居者双方の事情の強弱を総合的に見て、立ち退き要請に正当性があるかを確認します。

もしオーナーが正当な事由を主張しても、入居者がそれを不当だとして退去に応じない場合は、裁判所にて明け渡し請求訴訟を提起し裁判のなかで正当な事由の立証や立ち退きの是非を審理します。明け渡し請求訴訟で勝訴判決を得られれば、法的判断をもって入居者へ立ち退きを求めることが可能です。従わない場合でも、強制執行による強制退去対応にできます。

入居者に非がない状況で立ち退きを要請するときは、入居者に立ち退き料を支払うのが一般的です。適正な立ち退き料の提示や、新居探し・引っ越しサポートなどの提案をおこなうことで、入居者側もスムーズに応じてくれる可能性が高くなります。また、交渉を早めにしたり、入居者が少ないタイミングで始めたりなども意識しましょう。

逆に、自力救済による不法行為での強制退去や正当な事由が乏しい状態での明け渡し請求訴訟は、オーナー側への損害賠償や敗訴判決による立ち退き要請の無効につながるので、避けるようにしてください。

「入居者がいる状態で売却したい」「アパートを売却したいけど立ち退き交渉に自信がない」という場合は、当社クランピーリアルエステートへご相談ください。法的問題に強い当社なら、オーナーチェンジ物件のアパートでも適切に買取いたします。

よくある質問

入居者が定期借家契約なら満了に立ち退きさせられる?

入居者と締結した契約が定期借家契約なら、契約満了をもってオーナーが契約更新を終了させることが可能です。立ち退きの正当な事由も必要ありません。理由がなければ更新が原則の普通借家契約と異なり、もともと契約期間が定められているからです。

アパート売却によいタイミングはある?

一般的にアパート売却によいとされるタイミングは、主に以下の通りです。

  • アパート入居者が少なくなっている
  • 引っ越し需要が高まる春の3~4月や秋の9~10月
  • 築20年以下の不動産

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