事故物件が売れない3つの理由|売れにくい事故物件の特徴と確実に手放す方法も解説

いわゆる「事故物件」とされる不動産を所有していて、「なかなか売却が決まらない」「そもそも買い手が見つからないのではないか」といった不安を抱えている方は少なくありません。
事故物件という言葉自体に、法的な定義は存在しません。ただし、実務上、過去に自殺や他殺・火災などが発生し、購入希望者が心理的抵抗を抱きやすい物件を「事故物件」と呼ぶのが通例です。
とくに、自殺・他殺・特殊清掃が行われた履歴のある物件については、売主には「告知義務」が課せられます。もし、告知を怠った場合、契約解除や損害賠償請求につながる可能性もあるため、慎重な対応が求められます。
このように、事故物件が売却しづらい背景には、先述のような心理的な要因に加え、以下のようなハードルもあります。
- 清掃・リフォームにかかる費用が価格に転嫁され、相場感よりも割高な印象を与えてしまう
- 購入後に再販しても買い手が付きにくく、出口戦略が描きにくい
- 賃貸に転用しても、入居希望者が集まりにくく収益化が難しい
たとえば、売却前に清掃やリフォームを実施しても、その費用を価格に上乗せすれば、買い手側は「事故物件なのに高い」と判断し、購入を見送るケースが少なくありません。さらに、不動産会社や投資家の立場から見ても、事故物件は再販や賃貸による収益性が低いため、取り扱いを敬遠されやすい傾向があります。
こうした事情から、事故物件は通常の居住用不動産と比較して明らかに流通性が低く、成約までに時間を要することが多いのが実情です。そのため、できるだけ早期に手放したいと考える場合には、事故物件を専門に扱う不動産買取業者へ直接相談することが現実的な選択肢となります。このような業者は、事故物件の特性を把握したうえで、現状のまま買い取る体制を整えており、煩雑な手続きを避けながら早期売却を実現できます。
本記事では、事故物件が売却しにくい主な理由、特に売れにくい物件の特徴、さらに売却成功の可能性を高める方法について詳しく解説します。事故物件の売却でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧いただき、適切な対応の参考にしてください。
目次
事故物件に法的な定義はない
「事故物件」という言葉に法律上の定義は存在しません。ただし、実務上では、過去に事件や事故が発生し、入居希望者に心理的抵抗を与える要因(心理的瑕疵)がある物件を指すのが通例です。
具体的には、以下のような事例が事故物件に該当しやすいです。
- 室内での自殺、他殺、転落事故などの死亡事故が発生した物件
- 自然死や孤独死であっても、死後長期間放置され、特殊清掃や原状回復が必要になった物件
こうした心理的瑕疵がある場合、不動産取引においては「告知義務」が生じます。つまり、売主や貸主は契約の前に、買主や借主に対してその事実を説明しなければなりません。
告知を怠ると、契約不適合責任を問われ、契約の解除や損害賠償請求を受けるリスクがあります。そのため、心理的瑕疵の有無については、事前に正確かつ適切に説明する必要があります。
ここでは、どのような事案が「事故物件」に該当し、告知義務が発生するのかについて詳しく解説します。
一般的に、自殺や他殺・事故死があった物件は事故物件に該当する
事故物件には法律上の明確な定義はありませんが、自殺や他殺、事故死など人の死が発生した物件は、心理的瑕疵があるものとして事故物件に分類されることが多いです。
特に殺人事件や自殺があった場合、買主や借主に強い心理的抵抗が予想されるため、契約時には死亡の日時・場所・死因などを正確に告知する必要があります。
ただし、すべての死亡が事故物件に該当するわけではありません。たとえば、家族に看取られて亡くなった高齢者の自然死は、一般的に事故物件とはみなされず、告知義務の対象外とされています。
国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」にも、「自然死や日常生活の中での不慮の死」については原則として告知義務が課されないことが示されています。
宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン
自然死や不慮の事故死でも特殊清掃が必要な場合は事故物件に該当する
前述の通り、自然死や不慮の事故死があった物件は通常、事故物件には含まれません。
国土交通省のガイドラインにも、自然死に関する告知義務について以下のように明記されています。
【告知義務がない場合】
①【賃貸借・売買取引】対象不動産で発生した自然死や日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)。
※経過期間の制限はなし
引用元: 宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン|国土交通省
しかし、孤独死などで発見が遅れ、遺体の損傷により臭気や汚染が残った場合は、心理的影響が大きいと判断され、事故物件とみなされることがあります。
特に通常の清掃では除去困難な汚れや臭気が残るケースでは、「特殊清掃」が行われます。特殊清掃とは、体液の除去、臭気対策、害虫駆除など、一般的な清掃では対応できない衛生問題を専門業者が処理する作業を指します。
国交省ガイドラインでは、特殊清掃が実施された場合は、「事案発覚時期」と「特殊清掃の実施事実」を告知する義務があると定められています。
したがって、事件性がない死であっても、特殊清掃を伴う場合は事故物件として扱われやすいのが通例です。
事故物件に買い手が付きにくい理由
事故物件の買い手が付きにくい理由として、主に以下の3つが挙げられます。
- 清掃などの費用が余計にかかる
- 通常の物件よりも敬遠されやすく再販するのが難しいから
- 賃貸に出しても収益をあげにくい
それぞれの理由について、次の項目から詳しくみていきましょう。
清掃などの費用が余計にかかる
事故物件は長期間空き家として放置されることが多く、定期的な換気や掃除などの管理が行き届かず、建物内部が劣化しやすくなります。
売却可能な状態にするためにリフォームをする場合もありますが、綺麗な状態に復元しても事故物件であることに変わりはなく、告知義務も消えることはありません。
また、自殺や事故死があった場合には、臭いやシミが残ってしまうことも多く、通常の掃除では対応できないため特殊清掃を依頼する必要があります。その際の費用は、基本的に売主が負担することになります。
そのため、売却時には「リフォームや特殊清掃にかかった費用を売却価格に上乗せしたい」と考える方も少なくありません。しかし、事故物件は一般的な物件に比べて需要が少なく、価格を高く設定するとさらに買い手が見つかりにくくなります。
売却するためには価格を下げざるを得ないのですが、値下げをしても必ず売却できるとは限らず、管理や清掃の手間や費用だけかかってしまうリスクがあります。
通常の物件よりも敬遠されやすく再販するのが難しいから
事故物件は、購入を検討する側の心理的な抵抗感が大きく、通常の物件に比べて売れにくい傾向があります。仮に事故物件を格安で買い取ったとしても、再販をする際に買い手が見つかりにくく、結果として長期にわたって売れ残ってしまうケースも少なくありません。
不動産会社が事故物件を買い取る場合、再販売による利益を狙いますが、心理的瑕疵がどの程度影響するのかを完全に予測するのは難しいものです。そのため、事故物件の扱いに慣れていない一般的な不動産会社では、再販が難しいことを理由に買取を断られるケースも少なくありません。
上記のような理由から、事故物件の買取は一般の不動産会社ではなく、事故物件などの扱いに慣れている訳あり物件専門の買取業者に依頼するのがおすすめです。
賃貸に出しても収益をあげにくい
事故物件は、賃料を相場より大幅に下げることで一時的に入居者が見つかることもあります。
しかし、心理的な抵抗感から入居が長く続かず、すぐに退去されてしまうケースも少なくありません。その結果、家賃収入が安定せず、収益を思うように上げられない状況に陥ってしまいます。
また、事故物件に対する不安や噂が広がることで、少しの騒音や生活トラブルでもクレームが入りやすく、管理に手間がかかるケースも多いです。不動産の管理者にとっては、手間と費用がかかるわりに収益性が低い物件となり、長期的には賃貸経営が難しくなることがあります。
上記のような理由から、賃貸経営者にとって事故物件は扱いにくく、敬遠されやすい存在となっています。
売れにくい事故物件の特徴例
前述の理由から、事故物件はただでさえ買い手が付きにくい物件ですが、以下のようなケースではさらに売れにくくなります。
- 長期間放置され、劣化が激しい
- 立地や形状などが悪く、資産価値が低い
- 事故物件であることが広く知られている
それぞれのケースについて、詳しく紹介します。
長期間放置され、劣化が激しい
事故物件は、所有者や親族が心理的ショックを受けて管理に手が回らなかったり、相続手続きが長引いたりすることで、長期間空き家として放置されることがあります。
手入れがされないまま時間が経つと、室内のカビやホコリが目立ったり庭に草木が生い茂ったりなど、劣化がどんどん進行していきます。
とくに事故物件はもともとマイナスな印象を抱かれやすいことから、見た目の状態が悪いとさらに敬遠される原因となり、売却の難易度が高まります。
立地や形状などが悪く、資産価値が低い
事故物件であるかどうかに関係なく、立地や土地の形状など条件が悪い物件は、買い手が見つかりにくい傾向があります。
一例として、資産価値を下げる要因は以下のとおりです。
- 駅から遠い
- 周辺にスーパーやコンビニがない
- 道路が狭く車両が通りにくい
- 土地の形がいびつで活用しづらい
- 建物に老朽化や欠陥がある
上記のように、立地や土地、建物のいずれかにマイナス要素があると、資産価値を下げる原因となります。とくに複数の要因が重なっている場合は、より買い手に敬遠されてしまいます。
事故物件というマイナスイメージに加えて立地や形状まで悪いと、仮に価格を下げても売却が難しくなる可能性が高いでしょう。
事故物件であることが広く知られている
事故物件であることが世間に広く知れ渡っていると、買い手がより見つかりにくくなります。とくに、事件や事故が大々的に報道された物件は、地域の住民や周囲の人々の記憶に残りやすく、売却活動にも悪影響を与えます。
さらに、事故物件情報を共有するサイト「大島てる」に掲載されてしまうと、誰でも簡単に「事故物件かどうか」「どのような事件・事故が起きたのか」を確認できるため、購入希望者が敬遠する可能性が高まります。
掲載内容が事実であれば完全に情報を削除するのは難しく、事故物件としてのイメージが長期にわたって残り続けることは避けられません。
上記のような理由から、事故物件であることが広く知られているケースでは、売却価格を下げても売れにくい状況に陥ってしまう可能性があります。
売れない事故物件を確実に売る方法は専門の買取業者に依頼すること
事故物件は、一般の不動産会社や個人の買い手が敬遠するため、売却が長期化しやすいのが実状です。事故物件をすぐにでも手放したい場合は、訳あり物件専門の買取業者に依頼する方法を検討しましょう。
専門の買取業者に事故物件の買取を依頼するメリットは、以下のとおりです。
- そのままの状態で事故物件を買い取ってもらえる
- スピーディーに現金化が可能
- 仲介手数料などの余計な費用負担がない
- 契約不適合責任が免除される
専門の買取業者であれば、建物の状態が悪くても現状のままスピーディーに買い取ってもらえるため、売主がリフォームや特殊清掃をおこなう必要がありません。
業者が直接買い取るため仲介手数料がかからず、契約不適合責任がすべて免除される点も大きなメリットです。契約後のトラブルを避けたい人にとっても、安心して売却できる方法といえるでしょう。
買取業者を選ぶ際には、まず事故物件の買取実績が豊富かどうかを確認しましょう。そのうえで、口コミや評判がよい業者を複数ピックアップし、見積もりを取ってから最終的に依頼する業者を選ぶ方法がおすすめです。
事故物件を売れやすくするその他の方法
専門の買取業者に依頼する以外にも、事故物件を売れやすくする方法はあります。
- 売却相場より価格を下げる
- 一定期間を空けてから売却する
- リフォームや特殊清掃を実施してから売却する
- 建物を解体して更地で売却する
以下、それぞれの方法について解説します。
売却相場より価格を下げる
ここまで説明してきた通り、事故物件は需要が低いため、市場価格のままでは買い手を見つけるのが難しいケースが多いです。事故内容や物件の状態にもよりますが、一般的に事故物件の売却価格は通常物件より1割から5割ほど安くなることが多いです。
したがって、不動産会社による査定を受けた後、あえて査定価格よりも低い価格で売りに出すことで、購入希望者の関心を引きやすくなります。価格設定が売却成約の重要なポイントとなるため、急ぎで売却したい場合は値下げを検討してください。
一定期間を空けてから売却する
事件や事故が発生した直後は心理的抵抗が非常に強いため、買い手がつきにくいのが実情です。そこで数年程度の期間を置くことで、心理的瑕疵の影響が和らぎ、売却しやすくなる可能性があります。
ただし、時間を空ける間にも維持費や固定資産税がかかるほか、建物の経年劣化による資産価値の減少リスクが伴います。そのため、売却時期については不動産会社と相談し、計画的に決めることが重要です。
リフォームや特殊清掃を実施してから売却する
事故による損傷や異臭が残ったままでは、買い手が心理的に強い抵抗感を抱くことが多いです。
特に血痕や体液の染み、強い臭気がある場合には専門の業者に依頼して特殊清掃を行い、徹底的に除去してから売りに出すことが必要です。室内を清潔に保つことで心理的瑕疵を軽減し、買主の安心感を高められます。
また、軽度のリフォームや内装の補修で見た目を整えることも有効ですが、購入者の中には「自分でリフォームしたい」と考えるケースも多いため、過度なリフォームは控えるのが望ましいでしょう。
まずは必要最低限の特殊清掃を行い、不動産会社のアドバイスを受けながらリフォームの範囲を決める方法がおすすめです。
建物を解体して更地で売却する
建物を取り壊し更地にすることで、土地の利用用途が広がり、買い手がつきやすくなる場合があります。また、事故があった建物のイメージを払拭しやすくなるメリットもあります。
ただし、建物解体によって事故の事実に関する告知義務が消えるわけではありません。また、解体には数十万から数百万円の費用がかかるほか、「住宅用地の特例」が適用されなくなり、固定資産税が最大6倍に増加するリスクがあります。
さらに、再建築不可の土地の場合、建物を取り壊すことで土地活用が制限されるケースもあるため、解体の判断は不動産会社などの専門家と相談し慎重に進める必要があります。
まとめ
事故物件は、心理的な抵抗感や管理・清掃の負担などから、通常の物件に比べて買い手が付きにくい傾向にあります。とくに、特殊清掃やリフォームといった余計な費用がかかること、再販が難しいこと、賃貸に出しても収益が安定しないことが大きな要因です。
また、物件自体の条件が悪いと、さらに売れにくくなります。たとえば長期間放置されて劣化が激しい、立地や形状が悪く資産価値が低い、事故物件であることが周囲に広く知られているなどの条件が重なると、価格を下げても買い手がなかなか見つかりません。
そのため、事故物件を確実に手早く売却したい場合は、事故物件や訳あり物件専門の買取業者に依頼しましょう。専門業者であれば、現況のままスピーディーに買取してもらえるうえ、契約不適合責任が免除されたり仲介手数料が不要だったりなど、多くのメリットがあります。
当サイトを運営する株式会社Clamppyでも、事故物件をはじめとする訳あり物件の買取をおこなっています。事故物件が売れずに困っている方は、ぜひ一度弊社にお問い合わせください。
よくある質問
事故物件であることを隠して売ることはできませんか?
事故物件であることを隠して売却することはできません。
告知義務は宅地建物取引業法で定められている法的な義務であり、国土交通省が公表する「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」においても、事故から何年経過していても告知義務は消えるものではないと記載されています。
告知義務を怠った場合は契約不適合責任に問われ、売買契約の解除や代金の返還、リフォーム費用の請求、さらに慰謝料請求などを受けるおそれがあります。契約不適合責任のリスクを回避するためには、事件・事故の内容をはっきりと告知して売却しなければなりません。
なお、訳あり物件専門の買取業者などに売却した場合は、売主の契約不適合責任が免除されます。リスクを負いたくないときは、買取業者に売却を依頼しましょう。
大島てるに掲載されてしまったのですが削除できませんか?
「大島てる」は、自殺や他殺、火災などがあった物件情報をユーザー投稿で共有する事故物件情報サイトです。一度掲載されると、多くの人が簡単に情報を閲覧できるため、売却活動に影響することがあります。
掲載内容が事実と異なる場合は、物件ページのコメントフォームから削除依頼を申請できます。名前やメールアドレスを入力し、間違いである旨を説明すれば削除される可能性があるため、申請してみましょう。
しかし、掲載されている情報が事実であれば、削除要請やクレームに応じてもらうことはできません。掲載されている情報が正しい場合、削除してもらうのは難しいと認識しておきましょう。
事故物件の買取価格の相場を調べるにはどんな方法がありますか?
事故物件の買取価格を調べる方法は、大きく分けて「自分で計算する方法」と「買取業者に査定を依頼する方法」の2つがあります。
自分で計算する場合は、まず同じエリア・条件の通常物件の市場価格を調べ、その金額から特殊清掃やリフォーム費用、業者の利益分を差し引いて目安を出してみましょう。たとえば、市場価格が500万円、諸経費が200万円、業者の利益が相場の3割(150万円)だとすると、「500万円-200万円-(500万円×0.3)=150万円」が目安の買取価格となります。
一方、正確な価格を知りたいなら買取業者への査定依頼がおすすめです。複数の業者で価格差が出ることも多いため、2~3社に査定を依頼し、比較検討してみましょう。