借地人が底地を買い取る場合の価格はいくら?限定価格の考え方と計算方法

借地人が底地を買い取る場合の価格は、「いくらが相場なのか」「どうやって計算するのか」「第三者より高くなるのはなぜか」が分かりにくくものです。
あくまで実務上の目安に過ぎませんが、更地価格の40%〜60%前後が一つの基準になります。計算の基本は「更地価格 − 借地権価格 = 底地価格」という考え方です。
たとえば、更地価格が2,000万円、借地権割合が60%の地域であれば、借地権は1,200万円、底地は800万円が理論上の出発点になります。
しかし、借地人が購入する場合は事情が異なります。
借地権と底地が一体化すると土地は完全所有権となり、建替え・売却・担保設定が自由になります。つまり、これまで制限のあった土地が「通常の所有権の土地」に変わるということです。
その結果、第三者に売る場合よりも価値が高まりやすく、理論上の底地価格に一定の上乗せが生じることがあります。これがいわゆる「限定価格」の考え方です。
たとえば、800万円の底地と1,200万円の借地権が一体化するケースでは、単純に2,000万円の土地になるとは限りません。立地や利用状況によっては2,500万円程度の評価になる可能性もあり、この場合は500万円の価値増加が生じます。
仮に借地人が800万円で底地を取得した場合、この500万円の価値増加をすべて借地人が得ることになります。実務では、この差額(統合利益)を地主と借地人の貢献度や交渉力に応じて配分し、双方が納得できる水準で価格を決めるのが一般的です。
均等配分や地主側にやや厚めに配分するケースを想定すると、上記の例における限定価格は1,050万円〜1,300万円程度になる可能性があります。
もっとも、価格は一律ではありません。借地権割合(地域ごとに30%〜90%)、契約の残存期間、地代の水準、接道条件、再建築の可否、地主との関係性などによって大きく変動します。
このように、借地人が底地を買い取る場合の価格は、単純な相場だけで決まるものではありません。感覚的に交渉を進めてしまうと、統合利益の配分を見誤り、相場とかけ離れた価格で合意してしまう可能性もあります。
そのため、適正価格を見極めるには、更地評価と借地権割合を正しく把握したうえで、借地権実務に詳しい専門家に相談しながら進めることが重要です。
本記事では、借地人が底地を買い取る場合に適用される「限定価格」の考え方や具体的な計算方法、価格シミュレーションを実務目線で解説します。あわせて、交渉の注意点、買い取りの適切なタイミング、手続きの流れ、メリット・デメリット、発生する税金まで整理していきます。
目次
借地人が底地を買い取る場合は「限定価格」が適用される
借地人が底地を買い取る場合は、市場価格ではなく「限定価格」が用いられるのが実務上の基本です。
限定価格とは、特定の当事者間でのみ成立する価格です。国土交通省「不動産鑑定評価基準」では、限定価格が適用される代表的なケースとして、次のような例が示されています。
- 借地権者が底地の併合を目的とする売買に関連する場合
- 隣接不動産の併合を目的とする売買に関連する場合
- 経済合理性に反する不動産の分割を前提とする売買に関連する場合
借地人が底地を取得すると、借地権と底地が併合され、土地は完全所有権となります。利用・活用・売却を自由に行える単独所有の土地になるため、土地全体の価値が高まります。
このように、借地人が底地を取得すると借地権と底地が併合され、土地は完全所有権になることで、第三者が取得する場合には生じない付加価値が発生します。そのため、借地人が底地を買い取る場合の価格は単なる底地の市場価格ではなく、完全な所有権になることで高まる価値を考慮した金額で話し合われるのが一般的です。
これが不動産鑑定評価基準でいう「限定価格」の考え方です。
借地人以外に売却した際の底地の相場について知りたい場合は、次の記事も参考にしてみてください。
借地人が底地を買い取る場合の限定価格の相場と計算方法
借地人と地主の関係における限定価格は、「底地と借地権が一体化することで新たに生じる価値(統合利益)を、地主と借地人の貢献度に応じて分け合う」という考え方に基づいて算定されます。簡単にいえば、「別々に持っているよりも、一つにまとめたほうが土地の価値は上がる。その上がった分をどう分けるか」という考え方です。
まずは、第三者がその不動産を購入する際の「正常価格」を把握します。
- 借地権の正常価格
- 底地の正常価格
- 一体化した土地の正常価格(更地価格)
次に、一体化した土地の正常価格から、借地権と底地それぞれの正常価格を差し引きます。
この計算によって求められる差額が、統合利益です。
借地人が底地を買い取る場合、借地人はこの統合利益を取り込んだ「完全所有権の土地」を取得できます。そのため、第三者に売却する場合よりも高い価格で取引されるのが基本です。
たとえば、底地の正常価格が800万円、借地権の正常価格が1,200万円で、両者を一体化すると正常価格が2,500万円になる場合、統合利益は500万円です。
このケースで借地人が底地を買い取る場合は、底地の正常価格800万円に対し、統合利益の500万円の一部が上乗せされるのが一般的です。統合利益を均等に配分、もしくは底地の買取に応じた地主の貢献度を評価して、地主側に多く配分される可能性もあるため、1,050万~1,300万円の間で取引される可能性があります。
もっとも、統合利益の配分割合は一律ではありません。建物の建築・維持管理を誰が負担してきたか、借地契約の内容、地代の水準、これまでの経緯などを踏まえて、個別に判断されます。
そのため、実際の取引で適切な限定価格を判断するには、借地権の実務に詳しい不動産会社などの専門家に相談し、客観的な評価を確認したうえで交渉を進めることが重要です。
借地権・底地・更地の正常価格は相続税路線価とは異なる
限定価格の算定で基準になる「借地権」「底地」「一体化した土地(更地)」の正常価格は、第三者間での売買を前提とした価格です。
一方、相続税の計算に使われる「相続税路線価」は、相続税・贈与税を公平に課税するための評価基準であり、実際の売買価格(正常価格)とは異なります。
そのため、限定価格を検討するうえでは、相続税路線価をそのまま「正常価格」と考えることはできません。
ただし、「まずは大まかな価格感を知りたい」という場合には、相続税路線価を使った概算計算が参考になることもあります。実務でも、初期検討の目安として使われるケースは少なくありません。
相続税路線価を使った概算の計算式は、次のとおりです。
底地価格:更地価格 × (1−借地権割合)
借地価格:更地価格 × 借地権割合
路線価や借地権割合については、国税庁が公表している「路線価図・評価倍率表」で確認できます。
上記にあてはめた計算例は次のとおりです。
更地価格:24万円 × 1.25 × 100㎡ =3,000万円
底地価格:3,000万円 ×(1−0.6)=1,200万円
借地権価格:3,000万円 × 0.6 = 1,800万円
これらはあくまで税務上の評価をもとにした概算です。おおよその価格の把握には役立ちますが、適正価格を出すには、不動産鑑定士による不動産鑑定評価や、不動産会社の査定が必要となります。
借地人が底地を買い取る場合の価格シミュレーション
ここでは、実務でよく用いられる考え方をもとに、 借地人が底地を買い取る場合の価格がどの程度になるのかを更地価格ごとにシミュレーションしていきます。
なお、以下はあくまで考え方を理解するためのモデルケースです。実際の取引価格は、契約内容や地代水準、当事者間の交渉状況などによって変動します。1つの目安として参考にしてください。
更地価格2,000万円の場合の価格シミュレーション
次の条件を想定します。
借地権の正常価格:960万円
一体化した土地の正常価格(更地価格):2,000万円
この場合、統合利益は次のとおりです。
この400万円が、借地権と底地が一体化することで新たに生じた価値です。借地人が底地を買い取る場合は、この統合利益の一部を底地価格に反映させる形で限定価格が決まります。
たとえば、統合利益を借地人6:地主4で配分する場合、限定価格は次のようになります。
一方で、交渉状況によっては、統合利益の大部分が地主側に配分され、800万円~1,040万円程度の範囲で合意されるケースもあります。
更地価格3,000万円の場合の価格シミュレーション
次の条件を想定します。
借地権の正常価格:1,500万円
一体化した土地の正常価格(更地価格):3,000万円
この場合、統合利益は次のとおりです。
この統合利益の500万円を底地価格に上乗せして、限定価格を形成します。仮に、借地人6:地主4で配分すると、限定価格は次のようになります。
価格交渉の段階で、統合利益の大部分または全額が地主側に帰属すると判断された場合は、1,200万円~1,500万円程度の範囲で合意される可能性もあります。
更地価格5,000万円の場合の価格シミュレーション
次の条件を想定します。
借地権の正常価格:2,400万円
一体化した土地の正常価格(更地価格):5,000万円
この場合の統合利益は次のとおりです。
統合利益が1,000万円規模になると、配分割合の違いによって、限定価格に数百万円単位の差が生じます。
たとえば、統合利益を借地人5:地主5で均等に配分した場合は、次のようになります。
一方、地主側の交渉力が強いケースでは、 2,100万円~2,600万円程度の範囲で合意される可能性もあります。
これらのシミュレーションから分かるとおり、 限定価格には明確な「正解」があるわけではなく、統合利益をどう分けるかが価格を大きく左右します。
そのため、金額が大きくなりやすいケースほど、 借地権の実務に詳しい不動産会社などの専門家に相談し、 客観的な視点を持ったうえで交渉を進めることが重要です。
借地人が底地を買い取る場合の注意点
底地を買い取る際の価格は、最終的には地主と借地人の双方の合意によって決まります。
ただし、知識のないまま交渉に臨むと、相場以上の価格になってしまったり、話し合い自体がこじれてしまったりするリスクもあります。
底地の買い取りを成功させ、価格面で後悔を残さないためにも、次のような点に注意することが大切です。
- 限定価格の考え方を理解せずに交渉を進めない
- 「借地人は買わざるを得ない立場」と見られないようにする
- 専門家を介さず感覚的に価格交渉をしない
限定価格の考え方を理解せずに交渉を進めない
借地人が底地を買い取る場合に用いられる「限定価格」は、単に底地の市場価格にいくらか上乗せした金額ではありません。
底地と借地権が1つになれば、活用制限が消えて資産価値が高まります。この「一体化で生まれた利益(統合利益)」を地主と借地人のどちらに、どの程度配分するかという視点で決まるのが限定価格です。
この仕組みを理解しないまま交渉を始めると、次のようなリスクが生じます。
- 「借地人が買うのだから高くて当然」という地主側の言い分を、そのまま受け入れてしまう
- 「限定価格=必ず地主有利な価格になる」と誤解し、相場よりも高い価格で合意してしまう
実務では、地主から提示される価格が、統合利益の大部分あるいは全額を地主側に配分した前提で設定されているケースも少なくありません。
そのため、「提示された価格の根拠は何か」「底地と借地権それぞれの正常価格はいくらと評価されているのか」といった点を冷静に確認したうえで交渉を進めることが重要です。
限定価格の判断は専門性が高いため、不動産鑑定士や借地権の実務に詳しい不動産会社に相談しながら進めることで、過度に不利な条件で合意してしまうリスクを抑えられます。
「借地人は買わざるを得ない立場」と見られないようにする
借地人は、すでに建物を所有していることや、長年その土地を使用している事情があります。法律で定められているわけではありませんが、実務上では地主側に「いずれ底地を買わざるを得ない立場」と見られやすい傾向があります。
その結果、交渉の場面では次のような状況に陥りがちです。
- 地主の強気な価格提示を、そのまま受け入れてしまう
- 地主との関係を気にして、価格交渉に踏み込めない
しかし、実際には、借地人が必ずしも底地を買い取らなければならないわけではありません。借地権を維持したまま利用を続ける選択肢もあれば、条件が整えば借地権を第三者に譲渡するという方法もあります。
交渉においては「買わなければならない」という前提で話を進めるのではなく、複数の選択肢があることを理解したうえで、対等な立場で協議する姿勢が重要です。
専門家を介さず感覚的に価格交渉をしない
限定価格の算定には、底地と借地権それぞれの正常価格や、統合利益の考え方、地主と借地人の貢献度配分など、複数の専門的な評価理論が関係します。
そのため、「提示された金額が妥当かどうかを検証しない」「何となくの相場感だけで判断してしまう」といった感覚的な交渉で価格を決めてしまうと、結果として借地人側に不利な条件で合意してしまうリスクがあります。
価格面で後悔しないためには、不動産鑑定士や、借地権の実務に詳しい不動産会社に相談し、提示された価格が妥当かどうか、交渉の余地があるかを客観的に確認することが重要です。
特に、金額が大きい場合や交渉が難航している場合には、第三者の専門的な意見を取り入れることで、不要なトラブルや過度な金銭的負担を避けやすくなります。
借地人が底地を買い取る場合に適したタイミング
底地を買い取りたいと考えていても、地主の合意が得られなければ売買は成立しません。そのため、価格交渉そのものだけでなく、「いつ話を切り出すか」も重要なポイントです。
実務では、次のようなタイミングであれば、地主側も売却を前向きに検討しやすく、買い取り交渉がまとまりやすい傾向があります。
- 地主に相続が発生した時
- 借地契約の更新時
地主に相続が発生した時
現在の地主が亡くなり相続が発生すると、相続人が底地を引き継ぐことになりますが、必ずしも底地経営を続けたいと考えているとは限りません。
実務上、相続人からは「管理や借地人との関係が負担に感じている」「遺産分割のために現金化したい」「相続税の納税資金を確保したい」といった理由で、底地の処分や売却について相談を受けることが少なくありません。
あくまで筆者の実務経験に基づく実感値ではありますが、相続によって取得した底地については、半数以上が何らかの形で売却や現金化を検討している印象があります。
底地は借地権が付いているため、一般の土地と比べて第三者への売却が難しく、借地人にまとめて売却したほうが手間や調整が少ないという事情もあります。
そのため、相続をきっかけに「この機会に底地を整理したい」と考え、借地人からの買い取り提案に前向きに応じてもらえるケースは多くみられます。
借地契約の更新時
借地契約の更新時も、底地の買い取りを検討する良いタイミングです。更新時には、更新料や今後の地代条件について話し合う必要があり、地主・借地人双方が将来の関係を見直す機会になります。
実務上、更新交渉の場面では「更新料を支払う代わりに、底地を買い取る選択肢はどうか」「将来の管理や相続を考えると、いま売却したほうがよいのではないか」といった話題が自然に出てくることも少なくありません。
また、一般的に底地から得られる地代収入は、固定資産税・都市計画税の3~5倍程度が目安とされていますが、賃貸経営など他の土地活用方法と比べると、収益性は高いとはいえません。
たとえば、底地にかかる固定資産税・都市計画税が年間20万円の場合、地代収入は年間で約60万~100万円、月額にすると5万~8万円程度が目安です。
そのため、地主が「底地経営から手を引きたい」「将来の相続や管理の負担を減らしたい」「まとまった資金を確保したい」と考えている場合には、借地人からの買い取り提案に前向きに応じてもらえる可能性が高まります。
借地人が底地を買い取る場合の流れ
地主から底地を買い取りたい場合は、一般的に次のような流れで進めます。
- 地主に買い取りの意向を伝える
- 買取価格の交渉をする
- 売買契約を結ぶ
- 支払いと土地の引渡しを行う
- 所有権移転登記を行う
交渉や手続きには一定の時間がかかるため、全体像を把握したうえで、余裕を持って進めることが重要です。
1.地主に買い取りの意向を伝える
まずは、地主に対して底地を買い取りたいという意向を伝えます。この段階では、具体的な金額を提示する必要はなく、「将来的に買い取りを検討している」「一度話し合いの場を設けたい」といった形で問題ありません。
実務上、いきなり価格の話を切り出すよりも、背景や理由を丁寧に説明したほうが、その後の交渉がスムーズに進みやすい傾向があります。地主側も、相続や資産整理のタイミングによっては、売却に前向きなケースがあります。
2.買取価格の交渉をする
地主が売却に応じる意思を示した場合、次に買取価格の交渉に入ります。「借地人が底地を買い取る場合は「限定価格」が適用される」で説明したとおり、借地人が底地を買い取る場合は、第三者への売却とは異なり、「限定価格」を前提に話し合われるのが一般的です。
実務では、底地の正常価格や借地権の価値、更地になった場合の価値などを踏まえながら、双方が納得できる価格を探っていきます。感覚的な交渉ではなく、不動産鑑定評価や専門家の意見を参考にしながら進めることで、話がこじれにくくなります。
3.売買契約を結ぶ
価格や条件について合意できたら、売買契約を締結します。 契約書には、売買代金、支払時期、引渡日、固定資産税などの精算方法といった重要事項が記載されます。
一般的には、売買契約の締結時に、手付金として売買価格の5~10%程度の金額を、売主である地主に支払うケースが多くみられます。手付金は、契約が成立したことを示す意味合いがあり、後日のトラブルを防ぐ役割もあります。
個人間で底地を売買する場合、必ずしも売買契約書を作成する義務はありません。しかし、実務上は、条件の認識違いや後日の紛争を避けるためにも、売買契約書を作成することが推奨されます。
ただし、底地の売買は権利関係が複雑になりやすいため、個人間だけで進めると、条件の詰め不足や手続き漏れが生じるリスクがあります。
そのため、実務では、不動産会社や司法書士などの専門家を介して契約内容を確認しながら進めるのが一般的であり、安心して取引を進めるうえでも望ましい方法といえるでしょう。
4.支払いと土地の引渡しを行う
売買契約で定めた条件に従い、売買代金の支払いと土地の引渡しを行います。 この際、売買代金から、契約時に支払った手付金を差し引いた残額を、売主である地主に支払うのが一般的です。
あわせて、固定資産税・都市計画税についての精算も行います。引渡日を基準に日割り計算した金額を、当事者間の合意のもとで精算するのが一般的です。
実務では、代金決済と土地の引渡し、次項で説明する「所有権移転登記」を同日にまとめて行うケースが多く、このタイミングで、地主が保有している登記識別情報(権利証)も司法書士に提出されます。取引の安全性を確保するため、金融機関や司法書士が立ち会うこともあります。
5.所有権移転登記を行う
最後に、底地の所有者を地主から借地人へ変更する「所有権移転登記」を行います。登記が完了することで、法的にも土地の所有者が借地人であることが明確になります。
所有権移転登記を行う際には、主に次のような書類が必要となります。
- 登記原因証明情報(売買契約書)
- 登記識別情報(または登記済権利証)
- 固定資産税評価証明書
- 地主の印鑑証明書
- 借地人の本人確認書類
- 借地人の住民票
- 委任状(司法書士に依頼する場合)
登記手続きは専門的な知識が必要となるため、実務上は司法書士に依頼するのが一般的です。必要書類についても、司法書士から具体的な案内があり、それに従って準備を進める形になります。
登記が完了すれば、一連の手続きは完了です。その後、登記識別情報が、司法書士経由または法務局から交付されます。将来その土地を売却したり、担保に入れたりする際に必要となる重要な書類のため、紛失しないよう大切に保管しましょう。
借地人が底地を買い取る場合のメリット
底地の買い取りには地主との調整が欠かせませんが、買い取ることができれば、借地人にとっては次のようなメリットがあります。
- 地代や更新料の支払いがなくなる
- 建替えや増改築を自由に行える
- 資産価値が高まり、売却しやすくなる
地代や更新料の支払いがなくなる
借地契約のもとで土地を利用している間は、地主に対して地代を支払うのが一般的です。また、契約内容や地域慣行によっては、借地契約の更新時に更新料が発生するケースもあります。
底地を買い取って土地の所有権を取得すると、借地契約は終了し、地代の支払い義務はなくなります。あわせて、契約更新という考え方自体がなくなるため、更新料を支払う必要もなくなります。
実務上、借地のまま利用を続けていると、契約更新のタイミングや固定資産税の増加、周辺相場の変化などを理由に、地代の増額を求められることも少なくありません。底地を買い取れば、こうした将来的な地代改定や値上げに関する交渉からも解放されます。
毎月・毎年発生する固定的な支出に加え、将来の負担増加リスクを抑えられることは、長期的に見て大きなメリットといえます。
地主からの地代の値上げなど、借地権にまつわるトラブルについては、次の記事でも詳しく解説しています。
建て替えや増改築を自由に行える
借地の状態では、建物の建替えや大規模な増改築を行う際に、地主の承諾が必要となるのが一般的です。
契約内容や地域慣行によっては、承諾を得るための条件調整や承諾料の支払いが求められることもあり、計画どおりに進まないケースも少なくありません。
底地を買い取って土地が完全所有権になると、こうした地主の承諾は不要となり、建て替えや増改築、将来的な用途変更などを自分の判断で進めやすくなります。
住み替えや二世帯住宅への建て替え、賃貸併用住宅への変更など、将来の選択肢が大きく広がる点は、実務上も大きなメリットといえます。
参考として、借地のまま土地を利用する場合に、地主の承諾が必要となる主な行為と、承諾料の目安は次のとおりです。
| 地主の承諾が必要となる行為 | 承諾料の目安 |
|---|---|
| 借地権の売却(譲渡) | 借地権価格の10%程度 |
| 建て替え | 更地価格の3~5%程度 |
| 増改築 | 更地価格の2~3%程度 |
| 大規模リフォーム | 更地価格の3~5%程度 |
| 転貸 | 借地権価格の10%程度 |
| 抵当権の設定 | 借地権価格の10%程度 |
| 借地条件の変更(住居から店舗など) | 更地価格の10%程度 |
※上記はあくまで実務上の目安であり、契約内容や地域慣行、交渉状況によって金額や要否は異なります。
資産価値が高まり、売却しやすくなる
借地権付き建物は、一般の不動産と比べて買主がつきにくい不動産です。 土地を借りているという性質上、買主は購入後も地代の支払いや契約更新、建て替え・活用時の地主の承諾などを気にする必要があり、こうした点が購入のハードルになりやすいためです。
実務上も、「毎月地代を払い続けなければならない」「更新料や承諾料がかかる可能性がある」「自由に使えない土地である」といった点を理由に、購入を見送られるケースは少なくありません。その結果、買主が投資家など一部に限られたり、価格交渉で不利になったりする傾向があります。
一方、底地を買い取って土地が完全所有権になると、こうした制約はなくなります。地代や更新料、承諾料を気にする必要がなくなり、買主は土地を自由に使い、活用し、売却できるようになります。
要するに、借地ではなく「普通の土地」として扱われるようになるため、買主は住宅ローンの利用もしやすくなり、購入検討者の幅が広がります。その結果、借地のままよりもスムーズに売却を進めやすくなり、資産としての評価も高まりやすくなります。
借地人が底地を買い取る場合に発生する税金
地主の合意を得て底地を買い取る場合、購入代金とは別に、次のような税金が発生します。事前にどのような税金がかかるのかを把握しておくことが大切です。
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 印紙税
- 固定資産税・都市計画税
不動産取得税
不動産取得税とは、不動産を購入したり、贈与を受けたり、新築したりした際に、一度だけ課される税金です。
税額は、原則として次の計算式で求められます。
ただし、土地や住宅については、一定の条件を満たすことで軽減措置が適用され、税率が3%となる場合があります。また、宅地については課税標準を「固定資産税評価額の2分の1」とする特例が適用されるケースもあります。
そのため、固定資産税評価額が1,000万円の底地であっても、必ず30万円または40万円になるとは限りません。宅地の課税標準の特例と軽減税率の両方が適用される場合には、15万円程度になることもあります。
不動産取得税は物件の条件や取得時期によって税額は異なるため、評価額や軽減措置の適用有無を確認したうえで試算することが重要です。
参照:総務省|不動産取得税
参照:国土交通省|不動産取得税に係る特例措置
登録免許税
登録免許税は、底地の名義を地主から借地人へ変更する「所有権移転登記」を行う際に課税される税金です。
税額は、原則として次の計算式で求められます。
ただし、土地の売買による所有権移転登記については、一定期間、軽減税率が適用され、税率は1.5%となります。
たとえば、固定資産税評価額が1,000万円の底地で、軽減税率が適用される場合、登録免許税は15万円が目安となります。
印紙税
印紙税は、底地を買い取る際に作成する売買契約書に対して課される税金です。契約金額に応じた額の収入印紙を契約書に貼付し、納税します。
不動産売買契約書については、一定期間、印紙税の軽減措置が設けられており、軽減措置が適用される場合の税額は次のとおりです。
| 売却金額 | 税額 |
|---|---|
| 100万円超500万円以下 | 1,000円 |
| 500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
| 1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 |
| 5,000万円超1億円以下 | 3万円 |
参照:国税庁|No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置
固定資産税・都市計画税
固定資産税および都市計画税は、土地や建物の所有者に対して毎年課される税金です。都市計画税は、都市計画事業や土地区画整理事業の対象となるエリアにある不動産に対して課税されます。
税額は、次の計算式が目安となります。
都市計画税:固定資産税評価額 × 税率(最大0.3%)
たとえば、固定資産税評価額が1,000万円の底地の場合、固定資産税は約14万円、都市計画税は最大で約3万円となり、合計で年間17万円程度になるイメージです。
これらの税金は、毎年1月1日時点で登記簿上の所有者に課税されます。年の途中で底地を購入した場合、その年分の税金については、引き渡し日を基準に日割り計算し、売主である地主と精算するのが一般的です。
まとめ
借地人が底地を買い取る場合の限定価格は、地主と借地人それぞれの貢献度に応じて、統合利益を配分することで算定されるため、単純な相場や計算式だけで決まるものではありません。
実務では、土地の面積や立地が同程度であっても、地代の水準、借地契約の内容、これまでの経緯、当事者間の交渉状況などによって、最終的な価格に大きな幅が生じるケースもあります。
そのため、感覚的に交渉を進めてしまうと、底地を想定以上に高値で買い取ってしまうリスクもあります。価格面で後悔しないためにも、必要に応じて不動産鑑定士や借地権の実務に詳しい不動産会社に相談しながら進めることが重要です。
「いくらなら妥当なのか」「どこに交渉の余地があるのか」を冷静に見極め、借地人・地主双方が納得できる形での解決を目指しましょう。
よくある質問
借地人が底地を買い取る際に住宅ローンを組むことはできる?
借地人が底地を買い取る際に、住宅ローンを利用できるケースはあります。
一般的に住宅ローンは「土地と建物を一体で取得すること」を前提としていますが、借地人が底地を買い取る場合は、すでにその土地上に自己所有の建物があるため、土地と建物を合わせて担保評価され、住宅ローンの対象として扱われることがあります。
特に、借地権付き建物を購入した際に住宅ローンを利用している場合は、同じ金融機関に相談することで、底地購入資金として追加融資や借り換えが認められるケースもあります。
ただし、金融機関によって対応は異なり、住宅ローンの利用を断られる場合や、次のような条件が付くこともあります。
- 担保評価が低く、融資額が制限される
- 地主の売却承諾書や契約内容の確認を求められる
そのため、借地人として底地を取得するケースであることを前提に、事前に金融機関へ相談し、利用可能なローンや条件を確認することが重要です。
底地を買い取れないので借地権を手放したい。売却はできる?
借地権は、地主の承諾を得ることで第三者に売却することが可能です。多くの場合、借地契約書で譲渡に関する条件が定められており、売却時には地主の承諾や承諾料が必要となります。
ただし、借地権は権利関係が複雑なため、一般の不動産市場で個人の買主を見つけるのは難しいのが実情です。地代水準や契約期間の残存年数、契約内容によっては、売却活動が長期化したり、買主が見つからないケースも少なくありません。
そのため、実務上は借地権の取り扱いに慣れた買取業者へ売却する方法が現実的とされています。地主との交渉や契約調整を含め、専門家と連携して対応してくれる業者であれば、安心して手続きを進めることができます。
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借地権の売却については、次の記事も参考にしてみてください。
借地人が底地を買い取るデメリットは?
借地人が底地を買い取る場合、主に次のようなデメリットがあります。
- 購入資金の負担が大きい
- 税金の負担が増える
- 地主との交渉が難航する可能性がある
底地は更地より価格が抑えられる傾向があるものの、買い取りにはまとまった資金が必要になります。また、金融機関によっては、住宅ローンを利用できないケースもあります。
完全所有権を取得すると、固定資産税・都市計画税を自分で負担することになり、購入時には不動産取得税や登録免許税などの税金も発生します。
さらに、底地の買い取りは地主の同意が前提となるため、価格交渉などで意見が対立し、関係が悪化するリスクがあります。
とはいえ、底地を買い取ることには、土地を自由に使えるようになる、建て替えの制約がなくなるなどのメリットもあります。資金状況や将来の活用・売却予定を踏まえ、メリットとデメリットを比較したうえで判断することが大切です。

