底地買取の交渉方法!売買価格の決め方や交渉術など買取交渉の完全ガイド

底地を借地人に買い取ってもらいたいと考えていても、「どのように交渉を進めれば良いのかわからない」「価格の目安がつかめない」と悩む方は少なくありません。
借地人に底地を売却する際の価格相場は、更地価格の50~60%程度が1つの目安です。借地権と底地が一体化して完全所有権となり、土地全体の価値が高まるため、第三者へ売却するときよりも高い水準の「限定価格」で取引されます。
もっとも、底地の買取交渉は価格だけで決まるものではありません。いきなり金額を提示すると、借地人に警戒され、話し合いが進まなくなることもあります。
交渉を成功させるには、価格の根拠を整理することに加え、進め方そのものを工夫することが重要です。
具体的には、次のようなポイントを押さえることで、合意に至る可能性が高まります。
- 底地買取交渉は価格提示より先に背景説明から始める
- 借地人が底地を買い取った場合のメリットを伝える
- 提案する買取価格には幅を持たせる
- 直接交渉は避け、不動産会社を入れて交渉する
- 借地人が交渉に合意しやすいタイミングを読む
本記事では、底地の買取交渉における売買価格の決め方、交渉を成功させるコツ、流れを解説します。あわせて、交渉が失敗した事例や、交渉が決裂した場合の代替案にも触れていきます。
目次
底地の買取交渉は「提案する価格」と「交渉の進め方」が重要になる
底地の買取交渉は、借地人に売却するケースが中心となります。交渉がうまくいくかどうかは、「提案する価格」と「交渉の進め方」にかかっています。
価格が重要なのは、地主と借地人では土地の価値の捉え方がそもそも異なることが多いためです。
| 地主の考え方 | 借地人の考え方 |
|---|---|
|
・更地であれば高く評価される土地だ ・長年保有してきた大切な資産だ ・地代収入がある以上、安く手放す必要はない |
・底地は自由に使えない土地だ ・第三者に売却すれば価格は下がるはずだ ・建物は自分の所有であり、すでに利用している土地だ |
この認識のズレを整理しないまま価格を提示すると、交渉は感情論に発展しやすくなります。底地の価格の仕組みを理解し、借地権と底地が一体になることで生まれる「統合利益」を踏まえて金額を考えることが大切です。
また、適切な価格であっても、進め方を誤れば交渉はまとまりません。いきなり金額だけを提示したり、十分に説明しないまま条件の話に入ったりすると、警戒されやすくなります。
交渉を進める際は、売却に至った背景や価格の根拠、借地人にとってのメリットを説明したうえで、条件の話へ進むことが大切です。相手の立場を尊重して段階的に進めれば、合意に近づきやすくなります。
底地の買取交渉の売買価格の決め方
借地人が底地を買い取る場合の相場は、更地価格の50〜60%程度が1つの目安とされています。一方で、第三者へ売却する場合は、収益物件として評価されるため、更地価格の10〜20%前後になるケースが一般的です。
この差が生まれるのは、借地人が取得すれば借地権と底地が一体化し、完全所有権の土地となることで土地全体の価値が高まるためです。このように一体化によって生じる付加価値を踏まえた価格を「限定価格」といいます。
実際の価格は、立地や契約条件、統合利益の配分などによって変動します。
具体的には、次のような手順で売買価格を決めていきます。
- 更地価格を把握しておく
- 借地権・底地の正常価格を把握する
- 統合利益を計算する
- 第三者への売却価格も把握しておく
限定価格については、次の記事も参考にしてみてください。
1. 更地価格を把握しておく
まずは、底地が完全所有権の土地であればいくらで売れるか、いわゆる「更地価格」を把握します。
更地価格とは、借地権などの権利が付いていない状態で、市場で取引される想定価格です。周辺の成約事例や不動産会社の査定などを参考にします。
更地価格を把握する理由は、借地人が底地を買い取って借地権と一体化したとき、土地全体の価値がどの水準になるのかを確認するためです。
2. 借地権・底地の正常価格を把握する
次に、借地権と底地をそれぞれ単体で売却した場合の「正常価格」を把握します。正常価格とは、第三者との通常の取引で成立する市場価格のことです。
たとえば、次のような条件を想定します。
- 底地の正常価格:800万円
- 借地権の正常価格:1,200万円
- 更地価格(底地と借地権が一体化した土地):2,500万円
借地権と底地を別々に評価すると合計は2,000万円になります。一方で、両者が一体となった土地(更地)は2,500万円という評価になります。「単体評価の合計」と「一体化した場合の評価額」の差額が、次に解説する売買価格の考え方につながります。
なお、借地権や底地の正常価格は、契約内容や残存期間、地代水準、立地条件などによって大きく変動します。単純な割合計算だけでは正確に算出できません。
そのため、実務では借地権・底地の取引に詳しい不動産会社へ査定を依頼し、市場水準を確認したうえで交渉設計を行うのが一般的です。
3. 統合利益を計算する
借地権と底地を一体化すると、完全所有権の土地になります。建て替えや売却などを自由に行えるようになるため、土地全体の価値は高まります。一体化によって生まれる価値を「統合利益」といいます。
統合利益は、次の計算式で求めます。
先ほどの例で統合利益を計算すると、次のようになります。
⇒統合利益は500万円
借地人が底地を買い取る場合、この統合利益の一部が底地価格に上乗せされ、売買価格(限定価格)が決まります。
統合利益の配分割合に明確な基準はありませんが、双方が一定の貢献をしていると評価される場合には、概ね折半を目安に交渉が進むこともあります。
統合利益を折半したと仮定した場合、底地価格は次のように計算できます。
地主側の貢献度が高いと判断される場合には、より多く配分され、1,050万円〜1,300万円程度で合意に至る可能性もあります。配分割合は、契約内容や地代の水準、これまでの経緯などを踏まえて個別に判断されます。
底地の価格を決める要素については、次の記事でも詳しく解説しています。
4. 第三者への売却価格も把握しておく
借地人との交渉を設計するうえで、第三者に売却した場合の価格水準も確認しておくことが重要です。
底地を第三者に売却する場合、収益物件として評価されるため、完全所有権の価格より大きく低くなるケースが一般的です。物件条件にもよりますが、更地価格の10〜20%前後が一つの目安とされることがあります。
この水準は、地主にとっての最低ラインとなります。借地人への提示価格が第三者売却価格を下回ると、地主側にとって合理性がなくなります。そのため、事前に査定を取り、売却可能価格の目安を把握したうえで交渉に臨むことが実務上は重要です。
底地買取の交渉術!交渉が成立しやすくなるコツ
底地の買取交渉は、「価格が妥当かどうか」だけで決まるものではありません。実務の現場では、話の切り出し方・順番・伝え方によって成立確率が大きく変わります。
とくに借地関係は長年の契約関係が前提にあるため、感情的な対立が生じると合意は一気に遠のきます。そのため、次のような交渉のコツを押さえて進めることが重要です。
- 底地買取交渉は価格提示より先に背景説明から始める
- 借地人が底地を買い取った場合のメリットを伝える
- 提案する買取価格には幅を持たせる
- 直接交渉は避け、不動産会社を入れて交渉する
- 借地人が交渉に合意しやすいタイミングを読む
底地買取交渉は価格提示より先に背景説明から始める
地主から借地人へ底地買取を提案する際、もっとも避けたいのはいきなり金額を提示することです。「◯◯万円で買いませんか?」という切り出し方をしてしまうと、借地人が警戒心を強めてしまう可能性があります。
まず必要なのは、「なぜ売却を検討しているのか」という背景の共有です。
たとえば、「相続対策として資産整理を進めている」「将来的な管理負担を見直したい」といった事情を丁寧に説明することで、単なる価格交渉ではないことが伝わり、借地人も話し合いの土台に乗りやすくなります。
底地の買取交渉は、地主に主導権があるように見えますが、実際に購入を決めるのは借地人です。関係性を崩してしまえば、価格が妥当であっても交渉は成立しません。
交渉の際は、まず売却に至った事情を共有し、そのうえで借地人にとってのメリットを説明するという順番を意識することが大切です。背景と納得感を丁寧に積み重ねることが、結果的に最短ルートになります。
借地人への最初の打診は、次のような文面が理想です。
〇〇様(借地人の氏名)
いつも大変お世話になっております。
〇〇(住所)の土地を所有しております〇〇です。
突然のご連絡となり恐縮ですが、将来的な資産整理や相続対策を検討する中で、現在お貸ししている土地についても一度整理を考えたいと思い、ご相談のご連絡を差し上げました。
長年にわたりご利用いただいている土地であり、今後も円滑な関係を続けていきたいと考えております。その一つの選択肢として、もし〇〇様にご意向があれば、底地部分をお譲りすることも検討できるのではないかと思い、ご提案させていただいた次第です。
底地と借地権が一体となれば、土地は完全所有権となりますので、将来的な建て替えや売却、担保設定などの自由度も高まるかと存じます。もちろん、すぐにご判断いただくものではございませんし、現時点でご興味がなければ従来どおりの契約を継続する考えです。
もし一度お話をさせていただけるようでしたら、現在の市場状況を踏まえた価格の考え方なども含め、具体的にご説明させていただければ幸いです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
〇〇(地主の氏名)
借地人が底地を買い取った場合のメリットを伝える
借地人にとって、底地の購入は大きな「支出」です。そのため、支払う理由が明確でなければ前向きに検討しにくいのが実情です。
そこで重要なのが、底地を取得して完全所有権になった場合のメリットを具体的に伝えることです。
たとえば、次のような点が挙げられます。
- 地代や更新料の支払いがなくなる
- 建て替えや増改築の際に、地主の承諾が不要になる
- 不動産としての価値が高まり、融資を受けやすくなる
- 将来売却する際に、買主が見つかりやすくなる
価格の説明だけでなく、「取得後にどんな変化があるのか」を具体的に示すことが大切です。買う理由が明確になれば、交渉は前向きに進みやすくなります。
提案する買取価格には幅を持たせる
底地の買取交渉では、希望価格だけを提示して合意を目指すのではなく、あらかじめ一定の価格幅を想定しておくことが重要です。
「最低限確保したい価格」と「希望価格」を事前に整理しておくことで、交渉に柔軟性が生まれます。
金額を一つに固定してしまうと、借地人にとっては「受けるか断るか」の二択になりやすく、心理的な負担が大きくなります。一方で、価格に幅を持たせておけば、双方が歩み寄れる余地が生まれ、合意点を見つけやすくなります。
実務上も、統合利益の配分割合に明確な基準はありません。だからこそ、一定の調整余地を残しておくことが、交渉成立の可能性を高めるポイントになります。
直接交渉は避け、不動産会社を入れて交渉する
借地関係は長年にわたる契約関係であり、一度感情的な対立が生じると、修復が難しくなることがあります。
また、借地借家法をはじめとする法律や、統合利益・限定価格といった専門的な価格理論が関係するため、地主個人ですべてを対応するのは容易ではありません。
そのため、底地の買取交渉は地主と借地人が直接やり取りするのではなく、借地権や底地に詳しい不動産会社を介して進めることが重要です。
不動産会社を入れて交渉を進めることには、次のようなメリットがあります。
- 価格の客観性を担保できる
- 感情的な衝突を避けられる
- 契約条件の整理や売買手続きを円滑に進められる
専門家を介することは、相手に圧力をかけるためではありません。あくまで、公正で冷静な交渉の場を整えるための方法です。底地をスムーズに売却したい場合は、専門家のサポートを受けましょう。
借地人が交渉に合意しやすいタイミングを読む
底地の買取交渉は、価格だけでなく「タイミング」によって成功率が大きく変わります。借地人にとって将来設計を見直す場面では、底地の取得を前向きに検討しやすくなる傾向があります。
具体的には、次のようなタイミングです。
- 借地人が建て替えを検討しているとき
- 借地人に相続が発生したとき
- 借地人が建物や借地権の売却を考えているとき
- 地代改定の話が出た直後
いずれも「今後どうするか」を真剣に考える場面です。このタイミングであれば、底地を取得して完全所有権にするという選択肢も、現実的な検討対象になりやすくなります。
相手の状況と意思決定のタイミングを見極めることが、底地の買取交渉を成立に近づける重要なポイントです。
底地買取の交渉が失敗してしまった事例
底地の買取交渉は、価格の妥当性だけでなく、進め方や順序が大きく影響します。理論上は適切な価格であっても、借地人が納得できなければ交渉は成立しません。
実務では「価格は間違っていないのにまとまらない」というケースも少なくありません。背景の共有不足や、条件整理の甘さ、タイミングの見誤りなどが原因となることもあります。
ここでは、弊社に寄せられた実際の相談事例をもとに、底地の買取交渉が失敗してしまったケースをご紹介します。
- 借地人に底地を買い取る動機がなかったために交渉が決裂したケース
- 更地価格を提示して借地人から納得を得られなかったケース
- 価格以外の条件整理をしなかったことで借地人から不信感を持たれたケース
- 過去の更新料問題が蒸し返され交渉が止まったケース
- 借地人の相続人間で意見が割れてまとまらなかったケース
- 話し合いの場を設けず一方的な提案で終わってしまったケース
借地人に底地を買い取る動機がなかったために交渉が決裂したケース
ご相談者様は、都内にある底地を相続で取得された地主の方でした。地代は毎月入ってくるものの、将来的な相続対策や資産整理を考え、借地人に底地を買い取ってもらえないかと直接相談されたそうです。
更地価格や借地権割合を調べ、ご自身なりに計算した価格を提示したところ、借地人からは
「建て替え予定もないので、今のままで困っていません」 「まとまった資金を出す予定はありません」と、あっさり断られてしまいました。
ご相談者様としては、完全所有権になれば借地人側にもメリットがあるはずだと考えていたため、なぜ前向きに検討してもらえないのか理解できなかったといいます。
しかし実務上、借地人側に“今すぐ買う理由”がなければ、断られるのは珍しくありません。建て替え予定がない、売却予定がない、資金に余裕がないという状況では、底地買取は優先順位が低くなります。
ご相談者様は「価格が高すぎたのかもしれない」「もっと下げれば応じてもらえるのか」と悩まれた末、弊社へのご相談に至りました。
底地の買取交渉では、価格の妥当性だけでなく、借地人にとっての「動機」があるかどうかが重要です。交渉を始める前に、借地人の状況やタイミングを見極めることが、失敗を防ぐポイントといえるでしょう。
更地価格を提示して借地人から納得を得られなかったケース
地主が更地相場を基準に価格を算出し、その水準に近い金額で借地人へ打診されました。地主側としては、「本来はこのくらいの価値がある土地だ」という認識でしたが、借地人側からは「底地は自由に使えない土地なのに、その価格は高すぎる」と強い反発を受け、話し合い自体が止まってしまったそうです。
その後、地代改定や更新料の話まで持ち出され、関係性がぎくしゃくし、当事者同士では冷静な協議が難しい状況になってしまいました。価格自体は地主なりに根拠をもって算出したものでしたが、そのロジックが十分に共有されていなかったことが大きな要因でした。
最終的に「このままでは関係が悪化するだけだ」と感じられ、別の整理方法を検討するために弊社にご相談が寄せられました。
底地の買取交渉では、たとえ適切な価格を提示しても、借地人の理解を得られるとは限りません。価格の根拠を整理し、専門家が客観的に説明することで、感情的な対立を防ぎやすくなります。
価格以外の条件整理をしなかったことで借地人から不信感を持たれたケース
地主様は、相場や借地権割合を参考に算出した価格を借地人へ提示しました。価格水準自体は極端ではありませんでしたが、借地人からは次のような質問が出ました。
「境界は確定しているのか」
「測量費用はどちらが負担するのか」
「地代の精算はどうなるのか」
「契約終了のタイミングはいつなのか」
しかし、地主側では、価格以外の条件を十分に整理できていませんでした。
借地人にとっては、条件が不透明なまま金額だけが提示されている状態に見え、不安や不信感が生まれてしまいました。結果として「もう少し整理してからにしましょう」と話が保留になり、交渉は実質的に止まってしまいました。
「価格が悪かったのではなく、進め方が問題だったのかもしれない」と感じられ、実務的な整理方法を確認するため、弊社へのご相談に至りました。
底地買取は、単なる価格交渉ではありません。測量や境界確定、清算方法、税務、契約終了のタイミングなどを含めた「取引全体の設計」が整っていなければ、借地人は安心して判断できません。
事前に条件を整理し、専門家を交えて客観的に説明できる体制を整えることが、信頼関係を崩さずに交渉を進めるための重要なポイントです
過去の更新料問題が蒸し返され交渉が止まったケース
ご相談者様は、長年貸している土地の整理を考え、借地人へ底地買取の打診をされました。価格も一定の根拠をもって提示し、当初は「検討します」と前向きな反応があったそうです。
しかし、協議を進める中で借地人から「前回の契約更新時の更新料が納得できていない」という話が持ち出されました。
地主側にとっては、すでに合意済みの過去の問題でしたが、借地人側にはわだかまりが残っていました。その結果、底地買取の話は次第に「過去の精算問題」へと論点がすり替わり、価格の妥当性とは別の感情的な対立へ発展してしまいました。
最終的には、「あの時の対応が納得できない」という感情が優先され、交渉は停滞。当事者同士での話し合いが難しくなったため、別の方法で底地を手放せないかと考え、弊社に相談が寄せられました。
底地買取は本来、将来に向けた整理のための協議です。しかし、過去の更新料や地代改定などに不満が残っている場合、交渉は簡単に過去の問題へと引き戻されてしまいます。
そのような場合は、まず過去の論点を切り分け、感情と価格を分離して整理することが重要です。専門家を交えて客観的に論点を整理することで、交渉を本来の目的に戻せる可能性が高まります。
借地人の相続人間で意見が割れてまとまらなかったケース
借地人が亡くなり、相続人が複数名いる状態で底地買取を打診しました。一部の相続人は「将来売却するなら完全所有権にしたほうがよい」と前向きでしたが、別の相続人は「今は住み続けるだけなので必要ない」と反対しました。
地主側としては話がまとまりそうでまとまらない状況が続き、協議は停滞。最終的には相続人間の意見調整がつかず、交渉は停止しました。底地を手放したいけれど、どうすれば良いかわからず、弊社にご相談が寄せられました。
借地人側が複数人で共有している場合、価格の妥当性以前に「誰が意思決定をするのか」が整理されていないと、合意形成は難しくなります。
交渉前に権利関係を確認し、必要に応じて相続人全員が参加できる協議の場を設けることが、実務上の前提条件となります。
話し合いの場を設けず一方的な提案で終わってしまったケース
地主様は、算定した価格と簡単な説明を文書で借地人へ提示しました。しかし、その後に面談や電話などの機会を設けなかったため、借地人側は疑問や不安を抱えたまま返答を保留。やがて連絡が途絶え、交渉は自然消滅のような形で終了してしまいました。
地主様としては「条件は提示したのだから、あとは返答を待つだけ」という認識でしたが、借地人側には十分な理解と納得の機会がありませんでした。その結果、借地人との関係もぎくしゃくし、交渉の場を設けるのが難しくなってしまいました。
底地を整理したいものの前に進めない状況に悩まれ、弊社への相談に至りました。
底地の買取交渉は、価格を提示すれば終わるものではありません。疑問や不安を一つずつ解消しながら合意を積み重ねていくプロセスが不可欠です。
交渉の進め方に不安がある場合は、早い段階で専門家を交え、公正で冷静な話し合いの場を整えることが、成立への近道になります。
底地買取の交渉をする前のチェックリスト
底地の買取交渉は、価格だけで決まるものではありません。契約内容や境界、借地人側の事情など、事前に押さえるべきポイントを把握しておくことで、交渉がこじれるリスクを大きく下げられます。
底地の買取交渉をする前に、次のような項目を把握しておきましょう。
- 借地契約の内容を正確に把握しているか
- 完全所有権価格(更地価格)の実勢を把握しているか
- 第三者に底地を売った場合の価格を把握しているか
- 借地人の状況を把握しているか
- 測量・境界は整理されているか
- 借地人との感情的な対立はしていないか
借地契約の内容を正確に把握しているか
まず最優先で確認すべきは、現在の借地契約の中身です。契約内容によって、借地人の権利の強さや、交渉で論点になりやすいポイントが変わります。
最低限、次の項目は整理しておきましょう。
- 適用法令(旧借地法、借地借家法)
- 契約期間と更新状況
- 地代の金額と支払い状況
- 更新料・承諾料の取り決め
- 特約の有無
この前提が曖昧なまま価格交渉に入ると、途中で「そもそも契約はどうなっているのか」という話に戻り、議論が脱線しやすくなります。結果として、合意までの時間が伸びたり、相手に不信感を与えたりする原因になります。
完全所有権価格(更地価格)の実勢を把握しているか
税金計算で使う評価額ではなく、「いま市場で売れるとしたらどの価格帯か」を把握していることが重要です。ここがずれていると、統合利益や限定価格の説明が曖昧になり、借地人の納得を得にくくなります。
実務では、次のような情報をもとに価格の目安をつかみます。
- 近隣の成約事例
- 不動産会社の査定額
- 直近の市場動向
底地の交渉では、「もし完全な所有権の土地ならいくらか」が出発点になります。この基準がはっきりしていれば、借地人への価格説明や、第三者売却との比較もスムーズになります。
第三者に底地を売った場合の価格を把握しているか
借地人が買わない・買えない場合に備え、「第三者へ底地を売るとしたらいくらか」を把握しておくことも重要です。交渉の最低ラインを決めるための材料にもなります。
確認したいポイントは次のとおりです。
- 底地単体としての売却水準(投資用としての価格感)
- 想定利回り(投資家が求める利回り)
- 需要の有無(底地を扱える投資家・買取業者がいるか)
借地人への提示価格が、第三者売却よりも低い水準だと、地主側として合理性がなくなります。交渉を組み立てるうえで、第三者売却価格は「下限のものさし」になります。
借地人の状況を把握しているか
意外と見落とされがちですが、「借地人の状況の把握」も重要です。借地人に「今すぐ買う理由」がなければ、価格が妥当でも交渉は進みにくいためです。
確認しておきたい代表例は次のとおりです。
- 建て替えや増改築の予定があるか
- 借地権を売却する予定があるか
- 相続が発生している、もしくは近い将来の相続が見込まれるか
- 年齢や家族構成(意思決定の主体が誰か)
- 住宅ローン残債があるか
- 底地を買い取る資金力があるか
交渉に入る前に、相手が「買う動機」を持ちやすい状況かを見立てておくことが重要です。動機が薄い場合は、タイミングや説明の順番といった進め方から設計し直したほうが成功率が上がります。
測量・境界は整理されているか
底地交渉は、価格よりも「条件」で止まることがよくあります。特に境界が曖昧だと、借地人は将来のトラブルをおそれて、買い取りを避ける可能性があります。
事前に次の点を確認しておきましょう。
- 境界が確定しているか
- 越境の有無(塀・樹木・建物・配管など)
- 測量図や資料があるか
境界問題は、後から発覚すると交渉が止まるだけでなく、関係性も悪化しやすいポイントです。できる範囲で整理してから提案するほうが、相手も検討しやすくなります。
借地人との感情的な対立はしていないか
過去の経緯にわだかまりがあると、交渉は価格の話ではなく「感情の精算」になりやすく、途端に難航します。
たとえば、次のような背景がある場合は要注意です。
- 地代改定で揉めた
- 更新料や承諾料で不満が残っている
- 相続人間の関係が悪く、話が通りにくい
- これまでの対応への不信感がある
この状態でいきなり価格提示をすると、「金額」ではなく「態度」や「過去の不満」に論点が移り、交渉が止まるケースが少なくありません。必要に応じて不動産会社など第三者を入れ、論点を整理しながら進めることが現実的です。
底地買取の交渉をする際の流れ
底地の買取交渉は、 借地借家法の規定や、長年続いてきた契約関係を前提に、段階を踏んで進めることが重要です。
具体的には、次のような流れで進めます。
- 不動産会社に仲介を依頼する
- 借地人に買取の打診をする
- 売買条件の交渉を行う
- 売買契約を締結する
- 引渡し・決済・登記を行う
不動産会社に仲介を依頼する
最初に行うべきなのは、底地や借地権の取引に詳しい不動産会社へ相談することです。底地の価格は、更地価格、借地権と底地の正常価格、統合利益の配分などを踏まえて設計する必要があります。単純な相場感だけで決められるものではありません。
また、契約内容や更新状況によっては、借地人の権利が強く、交渉の進め方を誤ると関係が悪化するおそれもあります。
専門家を入れることで、適切な価格水準を整理できるだけでなく、どの順番で交渉を進めるかまで設計できます。その結果、感情的な対立を避けながら、スムーズに話を進めやすくなります。
実務上は、価格を固めてから動くのではなく、「どう進めるか」という交渉設計の段階から相談することが成功の近道です。
借地人に買取の打診をする
準備が整ったら、借地人へ買取の打診を行います。ここで重要なのは、いきなり金額を提示しないことです。
まずは、「なぜ売却を検討しているのか」「今後どのように整理したいのか」といった背景を共有します。そのうえで、「もしご意向があれば、底地の譲渡も選択肢として考えています」という形で、選択肢として提案するのが基本です。
借地人に建て替え予定や売却予定がある場合は、話が進みやすくなります。 一方で動機がない場合は、すぐに結論を求めないことも大切です。
底地・借地権に詳しい不動産会社であれば、打診の方法や伝える順序、価格提示のタイミングまで具体的に設計してくれます。当事者同士では言いづらい内容も、第三者が間に入ることで冷静に伝えられるため、交渉が前向きに進みやすくなります。
売買条件の交渉を行う
借地人が前向きな姿勢を示した場合、具体的な条件交渉に入ります。交渉するのは価格だけではありません。
次のような項目を一つずつ整理していきます。
- 売買価格(限定価格)
- 支払方法(一括・分割など)
- 測量や境界確定の負担
- 地代や固定資産税の精算方法
- 引渡し時期
価格については、統合利益の考え方や第三者売却価格との比較を示し、「なぜその水準になるのか」を説明できる状態にしておくことが重要です。
実務では、不動産会社が交渉の窓口となり、条件整理や価格調整を主導します。しかし、価格の決まり方や配分の考え方を地主側もある程度理解しておくことで、交渉の局面で迷いにくくなります。
「どこまで譲れるのか」「最低ラインはどこか」を事前に整理しておけば、専門家と連携しながら冷静に判断でき、結果として合意に近づきやすくなります。
売買契約を締結する
価格や支払方法、引渡し時期などの条件について合意できたら、売買契約を締結します。
一般的には、売買契約締結時に手付金として売買代金の5〜10%程度を支払うケースが多くみられます。手付金は、契約が成立したことを明確にする役割を持ち、解約条件の整理にも関わります。
底地の売買では、借地契約との関係整理や、固定資産税などの税金の精算方法をどう定めるかも重要なポイントです。
不動産会社に仲介を依頼している場合は、こうした条件を整理したうえで、契約書の作成や重要事項説明の手続きを進めてもらえます。
引渡し・決済・登記を行う
最後に、売買代金の支払い(決済)と土地の引渡し、そして所有権移転登記を行います。
売買代金は、契約時に支払った手付金を差し引いた残額を支払います。あわせて、固定資産税や都市計画税などの税金は、引渡日を基準に日割りで精算します。
決済当日は、金融機関や司法書士の立ち会いのもとで行われることが多く、地主は登記識別情報や印鑑証明書などを提出します。司法書士が必要書類を確認し、その場で所有権移転登記を申請します。
登記が完了すると、法的にも土地の所有者は借地人へと変更され、借地権と底地は一体となった「完全所有権の土地」になります。これで底地整理の手続きは完了です。
なお、底地の売却によって利益が出た場合は、翌年の確定申告で譲渡所得税の申告が必要になります。
底地買取の交渉が決裂した場合の代替案
底地は借地人に買い取ってもらうのが理想ですが、交渉が成立しないケースもあります。その場合でも、底地を売却する方法は残されています。
- 底地専門の買取業者に依頼する
- 底地仲介を得意とする不動産会社に依頼する
それぞれ特徴や売買価格が異なるため、目的に応じて選ぶことが重要です。
底地専門の買取業者に依頼する
借地人以外への売却先として、底地を専門に扱う「買取業者」に直接売却する方法があります。
買取業者は自社で底地を購入するため、買主を探す期間が不要です。査定額に合意できれば、短期間で契約・決済まで進みます。
業者によっては、数日~1週間程度で現金化できるため、相続税の納付や資産整理など、早期の現金化を優先したい場合には有力な選択肢です。
一方で、買取価格は更地価格の10~20%程度と仲介よりも低くなる傾向があります。買取業者は将来の転売や保有リスクを見込んで価格を設定するためです。
買取業者に依頼するメリット・デメリット・向いているケースは次のとおりです。
| メリット |
・売却までが早い ・仲介手数料がかからない ・手続きがシンプル |
|---|---|
| デメリット | ・売買価格は「更地価格の10~20%程度」となる |
| 向いているケース |
・価格よりスピードを重視したい場合 ・借地人との関係整理を優先したい場合 |
底地仲介を得意とする不動産会社に依頼する
もう1つの方法は、底地取引に強い仲介会社に依頼し、投資家などの買主を探してもらう方法です。
仲介会社は売主と買主をつなぎ、売買成立時に仲介手数料を受け取る仕組みです。そのため、できるだけ高い価格で売却することが共通の目標になります。
地代収入が安定しており、立地条件も良い底地であれば、投資家の需要が見込めます。その場合、利回り水準にもよりますが、更地価格の40〜50%程度で売却できるケースもあります。
一方で、地代が低い、契約条件に制約が多いなど収益性が弱い底地では、買主が見つかるまでに時間がかかったり、想定より低い価格での売却となる可能性もあります。
| メリット |
・買取業者より高く売却できる可能性がある ・価格交渉や契約条件の整理を任せられる |
|---|---|
| デメリット |
・買主が見つかるまで時間がかかることがある ・仲介手数料が発生する |
| 向いているケース |
・収益性があり、投資家需要が見込める底地の場合 ・時間に余裕があり、価格を重視して売却したい場合 |
まとめ
底地の買取交渉は、単に金額を提示すれば成立するものではありません。いきなり価格から入ると、借地人に警戒心を与えてしまうおそれがあります。
まずは、なぜ底地を整理したいのかという背景や、借地人が買い取ることで得られるメリットを丁寧に伝え、話し合いの土台を整えることが大切です。そのうえで、「限定価格」という考え方に基づき、なぜその金額になるのかを説明できる形で価格を提示します。
もっとも、借地人側に「今、買う理由」がなければ、どれほど妥当な価格でも交渉は進みません。交渉がまとまらない場合は、買取業者に買い取ってもらう、仲介業者に買主を探してもらうといった選択肢も検討してみてください。
よくある質問
底地と更地ではどちらが高いですか?
基本的には、更地のほうが高く評価されるのが一般的です。更地は土地の所有権が完全に自由に使える状態であり、誰でも利用・転売できる価値があるためです。
一方、底地には借地権が付いているため、借地人が土地を使っている制約があり、流通性が低く評価額が抑えられることが多いです。
そのため、同じエリア・広さの土地でも更地のほうが高くなるケースが一般的です。
底地を手放したほうが良いケースは?
底地は借地権付きの土地で流通性が低く、管理や関係維持が負担になりやすい不動産です。次のような場合は、手放して整理することが検討されます。
- 底地の管理が負担な場合(借地人とのやり取りや雑務が続く)
- 収益性が低い場合(地代収入が少なく維持費が重い)
- 相続財産にしたくない場合(相続後の共有トラブルを避けたい)
- 借地人との関係が良くない場合(トラブル発生のリスクが高い)
これらの状況を放置すると、負担やトラブルが大きくなる可能性があるため、早めに底地を手放すことをおすすめします。
底地で発生しやすいトラブルについては、次の記事も参考にしてみてください。
底地を手放すメリット・デメリットは?
地主にとっての底地を手放すメリット・デメリットは次のとおりです。
| メリット | デメリット |
|---|---|
|
・相続対策になる ・低利回りから解放される ・資産整理ができる |
・将来的な地価上昇益を得られなくなる ・売却価格が想定より低くなる可能性がある |
価格だけでなく、将来的な負担や借地人との関係性も踏まえて判断することが重要です。
借地人に売るのと買取業者に売るのはどちらが良いですか?
一般的には、借地人に売却するほうが高値で成立しやすい傾向があります。借地権と底地が一体化することで土地の価値が高まるためです。
ただし、借地人に購入の意思や資金力がない場合や、交渉がまとまらない場合には売却が長期化する可能性があります。早期に現金化したい場合や、確実性を重視する場合は、買取業者への売却を検討するのも1つの方法です。

