事故物件の売却相場は通常よりも1~5割減!価格の調べ方や高額で売る方法を解説

一般的に、事故物件の売却金額は安くなると言われています。事故物件の売却を検討している場合、「事故物件はどの程度の金額で売れるのか」のように考える人もいることでしょう。
あくまで目安にすぎませんが、事故物件の売却相場は通常物件の1割〜5割程度下落した価格とされています。
とはいえ、事故物件に限らず、不動産の実際の売却金額はその物件の条件や状態などによって変動するため、不動産の売却金額を正確に断言することはできません。また、事故物件の場合、物件で起きた事件や事故の内容によって、売却相場が変わる傾向があります。
そのため、事故物件の売却金額を知りたい場合、なんとなくの相場感を知るだけでなく、自身が所有する物件の条件や状態などに応じた相場を把握することが大切です。
当記事では、事故物件の売却相場をテーマに、売却価格の調べ方や高値売却のポイントなどを解説していきます。また、弊社クランピーリアルエステートが969人に実施した事故物件についての独自アンケートも紹介します。
なお、事故物件を売却する場合、売主には原則告知義務が生じます。人の死があったことを隠して売却することは告知義務違反になり、契約解除や損害賠償の請求になる可能性があるため、事故物件を売却する場合には買い手にその事実を伝えるのが重要です。
当記事では事故物件の告知義務についても解説していくため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
事故物件の売却相場は市場価格よりも安くなりやすい
結論から先に述べると、事故物件の売却相場は市場価格よりも安くなりやすいです。物件の条件や状態などによって実際の売却金額は変動しますが、一般的には通常物件の1割〜5割程度価格が下落するのが目安とされています。
事故物件は人の死が起きたことから買い手に心理的な抵抗を与えやすい物件です。いわゆる「心理的瑕疵物件」として事故物件は扱われて通常物件よりも需要が低くなりやすく、市場価格よりも値下げをして売却せざるを得ないことが多いです。
その結果、一般的に事故物件の売却相場は通常物件よりも安くなってしまいます。
事故物件の売却相場は事故の原因によって変わる
事故物件に対する心理的な抵抗は、その物件でどのような事件・事故が起きたかによって変わります。物件で起きた事件・事故の種類によって抵抗の大小が変わるため、事故物件の売却相場は人の死因によっても変わると考えられます。
実際に、当サイトを運営する「株式会社クランピーリアルエステート」での買取事例を参考にしたところ、死因に応じて下記のように事故物件の買取相場が変わることがわかりました。
下落率 | |
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孤独死や病死があった事故物件 | 通常物件よりも1割〜2割程度下がる |
自殺があった事故物件 | 通常物件よりも1割〜3割程度下がる |
他殺があった事故物件 | 通常物件よりも3割〜5割程度下がる |
※あくまで目安であり、必ずこの数値になるとは限らないため、目安程度にお考えください。
ここからは、物件で起きた事件・事故に応じた事故物件の売却相場について解説していきます。事故物件の売却を検討している場合、所有している物件がどの程度の金額で売却できるかを参考にしてみてください。
特殊清掃(孤独死・病死・自然死)があった事故物件:1割〜2割程度下がる
国土交通省が公表した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関する ガイドライン」やこれまでの不動産取引の慣習では、孤独死や病死は日常生活における不慮の死に該当するとされています。そのため、買主側の心理的な抵抗は比較的小さいと考えられており、孤独死や病死があった物件は事故物件のなかでも売却金額の下落率がゆるやかになる傾向があります。
あくまで目安ですが、孤独死や病死の場合は通常物件よりも売却相場が1割〜2割ほど下がる傾向があります。通常1,000万円で売却できる金額であれば、800万円〜900万円程度が売却相場です。
とはいえ、通常物件よりも心理的な抵抗を与えやすいのは変わりません。価格の下落率は少ないといっても、通常物件よりも売れづらいことを踏まえて、売却活動をするのがよいでしょう。
○特殊清掃を行ったかどうかによっても売却相場は変わる
孤独死や病死があった物件によっては、遺体の発見が遅れてしまったために特殊清掃を行った物件もあることでしょう。
特殊清掃を行うとその事案を買い手に告知する義務が生じます。それにより、買い手に心理的な抵抗を与えやすくなることもあるため、孤独死や病死であっても特殊清掃を行った物件は、特殊清掃を行っていない物件よりも売却相場が安くなる傾向があります。
一方、遺体の発見が早く特殊清掃を行っていない物件であれば、心理的な抵抗が少ないため、市場価格で売却できるケースも少なくありません。
自殺があった物件:1割〜3割程度下がる
自殺は日常生活における不慮の死といえない死因です。そのため、心理的な抵抗を与えやすく、自殺があった事故物件は孤独死や病死があった物件よりも売却価格が下がるのが一般的です。
目安としては、通常物件の1割〜3割ほど売却金額が安くなる傾向があります。通常1,000万円で売却できる金額であれば、700万円〜900万円程度が目安です。
なお、どのような事件が起きたかによっても心理的な抵抗は変わります。
たとえば、自殺の原因がリストカットである場合、物件自体に与えるダメージは比較的少なく、自殺があった事故物件のなかでも売却相場の下落率はゆるやかになる傾向があります。
当サイトを運営する株式会社クランピーリアルエステートの買取傾向からは、飛び降り自殺があった物件は物件内のダメージがほとんどないため、こちらも売却相場の下落率は比較的ゆるやかです。
あくまで目安ですが、通常の物件の1割程度になる傾向があり、立地がよい有名なマンションであれば飛び降り自殺があっても高値で売却できる可能性もあります。
一方で、血痕が残る、遺体の損傷が激しいなど忌避感が強い自殺や大規模なリフォーム・清掃が必要な事案となったときは、3割以上価格が下がるケースも珍しくありません。
他殺があった物件:3割〜5割程度下がる
殺人などの他殺は事件性や周知性、社会に与える影響が高く、心理的な抵抗を強く与えやすい死因です。そのため、他殺があった物件は事故物件のなかでも買取相場の下落率が大きくなるのが一般的です。
目安として、他殺があった物件の場合は通常物件の3割〜5割ほど売却金額が安くなる傾向があります。通常1,000万円で売却できる金額であれば、500万円〜700万円程度が目安です。
また、ニュースで全国的に取り上げられたような周知性が高い事故が起きた物件の場合、心理的な抵抗を与えやすく、その分売却相場の下落率も大きくなります。場合によっては、買取自体を断られてしまうことも少なくありません。
事故物件を実際に買い取った事例
実際の事故物件の売却金額は、物件で起きた事故・事件の内容や物件自体の状態などによって変動します。そのため、所有する事故物件によっては、売却金額が相場とは大きく異なるケースも少なくありません。
実際に業者が買い取った事例を参考にすれば、事故物件が実際にはいくらほどで売却できるかがみえることもあります。事故物件の売却相場を知りたい場合、買取事例も参考にするのもよいでしょう。
ここからは、当社「株式会社クランピーエステート」が実際に買い取った事例を紹介していきます。
- 孤独死があったマンションを1,000万円で買い取った事例
- 変死があった戸建てを500万円で買い取った事例
- 共用部分で飛び降りがあったマンションを1,300万円で買い取った事例
孤独死があったマンションを1,000万円で買い取った事例
東京都品川区にあるマンションを買い取った事例です。詳細は以下となります。
買い取った物件種類 | マンション |
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物件があるエリア | 東京都品川区 |
事故・事件の内容 | 1人住まいの居住者が脱衣所で亡くなり、腐臭が発生していた物件 |
買取金額 | 1,000万円 |
この物件は、1人住まいの居住者が脱衣所で亡くなり、その腐臭から近隣住民の方が通報し発覚した事故物件です。疎遠になっていた相続人からのご依頼で、相続手続きの相談を含めて1,000万円で買い取らせていただきました。
発見が遅れた遺体があった事故物件でも、クランピーリアルエステートなら売却後の手続きを含めてしっかりと買取対応いたします。
変死があった戸建てを500万円で買い取った事例
千葉県松戸市にある戸建てを買い取った事例です。詳細は以下となります。
買い取った物件種類 | 戸建て |
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物件があるエリア | 千葉県松戸市 |
事故・事件の内容 | 親子が建物内で変死してしまった物件 |
買取金額 | 500万円 |
この物件は、居住者である親子2人が建物内で変死してしまった事故物件です。2年以内に起きた事故で、なかなか買い手がつかなかったとのことですが、物件について詳しく調査をしたうえで査定を行い、500万円で買い取らせていただきました。
クランピーリアルエステートなら、社会的影響や周知性の高い人死があって買い手が付かなかった物件でも、正しく査定したうえで適正価格で買取いたします。
共用部分で飛び降りがあったマンションを1,300万円で買い取った事例
京都足立区にあるマンションを買い取った事例です。詳細は以下となります。
買い取った物件種類 | マンション |
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物件があるエリア | 東京都足立区 |
事故・事件の内容 | マンションの共用部分で飛び降り自殺があった物件 |
買取金額 | 1,300万円 |
この物件は、マンションの共用部分で飛び降り自殺が起きた事故物件です。依頼者は早めの取引がご希望とのことでしたので、スピード感を持って物件調査を行い、1,300万円で買い取らせていただきました。
本事例はマンションの共有部分での人死で告知義務がないことを考慮し、高額査定にて買取いたしました。クランピーリアルエステートなら、事故物件であっても事案や状態をしっかりと調査したうえで査定額を提示いたします。
事故物件の家賃相場は通常物件よりも20〜30%程度安くなる
事故物件は売却価格の相場だけでなく、貸し出す場合にもマイナスの影響を受けやすくなります。入居者を探すのが難しくなることに加えて、通常物件よりも家賃を安くして貸し出すのが一般的です。
前提として、事故物件を貸し出す場合、家賃を値下げしなければならないルールはありません。通常物件と近い家賃を設定して、賃借人を募っても問題はありません。
しかし、人の死があった物件は心理的な抵抗を与えやすく、売却と同様に通常物件よりも家賃を値下げしなければ借主が現れないのが一般的です。そのため、基本的には事故物件の家賃相場も通常物件より安くなります。
あくまで目安に過ぎませんが、事故物件の家賃相場は通常物件よりも20〜30%程度安くなるのが一般的です。売却ではなく賃貸で事故物件を活用する場合、基本的には家賃収入に値下げの影響が出ると考えておきましょう。
○誰かが一度住んだ物件であっても事故物件の家賃相場は安くなるのが一般的
インターネットなどでは、「誰かが一度住んでいれば、事故物件として伝える必要はない」のような情報もみられます。
確かに、以前まではそのような判断をしていた不動産会社もあったようですが、現在は物件で起きた事故・事件について告知する義務が定められており、誰かが一度住んだとしても事故物件であることは原則借主に伝えなければなりません。
そのため、誰かが一度住んだ物件であっても、それが事故物件であれば家賃相場は安くなるのが一般的です。
人の死が起きてから3年程度が経過すれば賃貸借契約なら事故物件として告知する義務はなくなる
人の死が起きてからおおむね3年が経過していれば、借主に対して事故物件として告知する義務はありません。国土交通省が制定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」にも記載されているように、賃貸契約における事故物件の告知義務には時効が定められているためです。
前提として、事故物件を売ったり貸したりする場合、契約を締結する前に取引相手に対して物件で起きた事故・事件の内容を伝えなければなりません。これを「告知義務」と呼び、売り手や貸し手はこの義務を果たしたうえで契約をする必要があります。
しかし、賃貸借契約においては例外的に、人の死があってからおおむね3年が経過していれば時効となり、貸主は告知をする義務が原則なくなります。そのため、事件・事故から3年が経過した事故物件であれば、告知が必要な物件よりも入居希望者が現れやすくなるとも考えられます。
とはいえ、借主から「事故・事件が起きていないか」のように尋ねられた場合には、正しく情報を伝えなければならないため注意が必要です。また、社会的影響、周知性、事件性などを総合的に見て、事案が発生してから3年を超えても告知すべきと解釈されるケースがあります。告知義務が必要か否かは、不動産会社や不動産に強い弁護士などの専門家に確認を取るのがよいでしょう。
事故物件は本当に人気がない?独自アンケートからわかった本音
事故物件を含めたさまざまな訳あり物件を取り扱うクランピーリアルエステートでは、2024年10月に「【事故物件】住める?住めない?事故物件への本音を969人に大調査!」として、アンケートを実施しました。
969人へおこなった事故物件に関するアンケートの主な結果は、次の通りです。
- 事故物件に抵抗を感じる人は男性73%・女性92%
- 孤独死・自然災害死なら抵抗感が薄れる傾向にある
- 心理的抵抗がない人は「霊を信じていない」「部屋がきれいならよい」と考えている
以下では、独自アンケートからわかった買主側の事故物件への本音を考察しました。
参考:PRE TIMES「【事故物件】住める?住めない?事故物件への本音を969人に大調査!」
事故物件に抵抗を感じる人は男性73%・女性92%
事故物件に居住することに関して抵抗を感じる人は、男性73%・女性92%となっていました。ほとんどの人に心理的抵抗が存在し、とくに女性は抵抗がないと答えたのがわずか8%と、事故物件への嫌悪感が強いという結果となっています。
後述する心理的抵抗がない人は「霊を信じていない」「部屋がきれいならよい」と考えているでは事故物件でも問題ないとするケースも紹介しますが、原則として事故物件は一般の人からは忌避されるものと考えておくのがよいでしょう。そのため、事故物件の売却は売却先や対応方法の選定が、売買契約締結のために重要になると言えます。
孤独死・自然災害死なら抵抗感が薄れる傾向にある
アンケート調査にて事故物件の要因別で調査し、住むのに心理的抵抗がない物件の種類がどうなっているかを割合で示しました。
事故物件となった要因 | 割合 |
---|---|
自然災害死(特殊清掃済み) | 21.6% |
孤独死(特殊清掃済み) | 20.1% |
共有部分での死亡 | 15.8% |
事故死 | 12.3% |
孤独死(死後数日以内) | 12% |
火災 | 9.5% |
自殺 | 4.2% |
殺人 | 2.4% |
その他 | 2.1% |
特殊清掃済みの「自然災害死」と「孤独死」なら、事故物件のなかでも比較的心理的抵抗が少ない傾向が見られます。
心理的抵抗がない人は「霊を信じていない」「部屋がきれいならよい」と考えている
事故物件に対して心理的抵抗がない人は、抵抗がない理由として「霊を信じていない」「部屋がきれいなら問題ない」「家賃が安いほうがよい」という意見を挙げていました。
霊を信じていないから
- 霊とかそういった類のものは全く信じていなく、そんなことで値段が安くなるなら大歓迎なので。(50代男性)
- 幽霊を信じてないのと、虫やネズミに比べたら幽霊の方がマシだからです。(30代女性)
部屋がきれいなら問題ない
- 清掃済みであれば、普通の部屋と変わらないと思うので。(40代男性)
- 特殊清掃やリフォーム済みできれいにしてあるのなら、どんな状況だったか分からないから(40代女性)
家賃が安いのが一番だから
- なぜ相場よりも安いのかが納得できれば、あまり抵抗を感じることがないからです。(40代男性)
- 事故物件とはいえ家賃が安いのであればその方が魅力的です。私自身霊的な物とかは信じないタイプなのもあります(50代女性)
少数派ではあるものの、事故物件に住むデメリットを感じない、事故物件のメリットのほうに惹かれるといった人は、事故物件でも気にしないという傾向にあるようです。なかには家賃の安さであえて事故物件を選ぶ人もいるため、仲介による事故物件売却時においては、売却価格の安さが特定のニーズにつながる可能性があると言えるでしょう。
事故物件であることを隠して契約をするのはNG!事故物件売却の際には告知義務に注意
事故物件の売却を検討している場合、「事故物件であることを隠せれば高く売れるのでは」のように考えるかもしれません。しかし、事故物件であることを隠して売買契約を締結させるのは、告知義務に違反するため絶対に避けましょう。
事故物件を売却する場合、売り手には告知義務が生じます。これは、事故物件のように瑕疵を抱えた物件は、借主・買主が契約締結を判断する際に大きな影響を及ぼす可能性があるとされているためです。
たとえば、事故物件であることを隠して売買契約を締結させた場合、それが契約後に発覚すれば、「事前に告知されていれば購入しなかった」と考える人もいます。決して公平な不動産取引とはいえないため、このような事態を避けるためにも事故物件に対しては告知義務が生じるのです。
そして、告知義務を果たさなかった場合、買主から契約解除や損害賠償の請求をされる可能性もあります。事故物件を売却する場合、その事実を隠そうとせず、売買契約を締結させる前に告知をするようにしてください。
売買契約の場合は告知義務に時効がない
人の死が起きてから3年程度が経過すれば賃貸借契約なら事故物件として告知する義務はなくなるにて「賃貸借契約では概ね3年経過すれば告知義務がなくなる」と解説しました。しかし売買契約の場合だと、人死が発生してからいくら時間が経とうとも原則として告知義務の時効がありません。
売買契約における事故物件の告知義務の時効がない点については、国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」でも明記されています。
たとえば東京地裁八王子支部平成12年8月31日判決の裁判例には、50年以上前に発生した猟奇殺人における告知義務違反が認められたものがあります。そのため、事故物件を売却する際には必ず告知義務が発生するものと認識しておくのがよいでしょう。
事故物件以外にも告知が必要になるケースもある
不動産取引を行う際には、公平性を保つために売り手や貸し手はその物件の状態について、可能な限り取引相手に伝えなければなりません。事故物件の場合、人の死が起きたことを告知する必要がありますが、ほかにも買主に伝えなければならない事項もあります。
具体的には、事故物件に下記のような瑕疵がある場合、それについても告知義務が生じます。
概要 | |
---|---|
物理的瑕疵 | その物件自体が抱える物理的な欠損 |
環境的瑕疵 | その物件の周辺環境が抱える瑕疵 |
法律的瑕疵 | その物件や土地が抱えている法的な問題 |
これらの瑕疵があるにもかかわらず不動産取引をした場合、告知義務違反となり、買主から契約解除または損害賠償の請求となる可能性があります。事故物件の売却を検討している場合、買主に告知が必要な瑕疵がないかを確かめておくことも重要です。
ここからは、事故物件の心理的瑕疵以外にも告知するべき瑕疵について、それぞれ解説していきます。
物理的瑕疵
物理的瑕疵とは、その物件が抱える物理的な欠陥のことです。たとえば、下記のような欠陥は物理的瑕疵に該当し、買主に告知が必要です。
- 建築資材にアスベストが使用されている
- 柱などに使われている木材がシロアリに食い荒らされている
- 壁にひび割れが起きている
- 雨漏りがある
- 化学物質などで土壌が汚染されている
- 地盤がゆがんでいたり、沈んでいたりする
- 土地の境界があいまいで、周囲の物件が自分の土地を侵食している
- 地中に障害物や埋蔵物がある
- 耐震強度が国の基準を満たしていない
環境的瑕疵
環境的瑕疵とは、その物件の周辺環境が抱える瑕疵のことです。物件自体に問題がなかったとしても、その周辺環境に問題がある場合には環境的瑕疵物件として扱われます。
たとえば、下記のような欠陥は環境的瑕疵に該当し、売買契約の前に買主へ告知が必要です。
- 周囲に暴力団の事務所がある
- 近所に暴力団構成員が住んでいる
- 周囲に繁華街があり、騒音トラブルが頻繁に起きる
- 周囲に火葬場や産業廃棄物処理施設がある
- 周囲に悪臭を放つような建物がある
法律的瑕疵
法律的瑕疵とは、その物件や土地が抱えている法的な問題のことです。
土地や建物に対しては「都市計画法」「建築基準法」「消防法」などの法律が適用されます。法律で定められた基準を満たしている必要がありますが、土地や建物によっては基準を満たさないものもあり、それらは法律的瑕疵物件として扱われます。
たとえば、下記のような欠陥は法律的瑕疵に該当し、売買契約の前に買主へ告知が必要です。
- 火災報知機やスプリンクラーなどの防災設備が古い
- 接道義務を満たしておらず再建築不可である
- 市街化調整区域内にあり再建築不可である
- 計画道路指定を受けており建築の制限がある
- 構造上の安全基準を満たしていない
- 建ぺい率を違反している
告知義務に違反すると契約不適合責任として損害賠償や契約解除になる
万が一、不動産の売買契約における告知義務に違反すると、当該売買契約は「契約不適合責任」が発生します。契約不適合責任とは、売買や請負契約において目的物の種類、数量、品質が契約内容と相違があったときに、売主が買主に対して負担をする民法上の法的責任です。
告知義務違反による契約不適合責任を買主から追求されると、以下のいずれかの対応が必要となります。
- 物理的瑕疵の修繕や足りない窓の追加工事などの「履行の追完」
- 不適合の割合に応じた「売却代金減額請求」
- 契約不適合責任に基づき発生した「損害賠償請求」
- 当該売買契約の「契約解除」
事故物件に関する告知義務違反については、国土交通省「心理的瑕疵の有無・告知義務に関する裁判例について」にてさまざまな裁判例が掲載されています。
売却したい事故物件の相場を調べる方法
事故物件の実際の売却金額は、その物件の条件や状態などによっても変動します。相場とは異なることも考えられるため、相場だけで事故物件の売却金額は測れません。
そのため、所有する事故物件の売却金額をより詳しく知りたい場合、下記のような方法を実施してみてください。
事故物件の相場の調べ方 | 向いている人 |
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条件が似ている物件の買取金額を参考にする | 費用をかけずに家などで手軽におおまかな金額を知りたい人向け |
公的機関が運営するWebサイトで調べる | 費用をかけずに家などで手軽におおまかな金額を知りたい人向け |
買取業者の査定額を参考にする | 専門知識と経験に基づいた実勢価格を知りたい人向け |
不動産一括査定の結果を参考にする | 多くの不動産会社の査定結果からより確度の高い査定額を知りたい人や査定額を比較検討したい人向け |
不動産鑑定士に依頼してより正確に査定してもらう | 自分の対応範囲のなかでもっとも正確な不動産価値を知りたい人向け |
以下では、それぞれの詳細を見ていきましょう。
条件が似ている物件の買取金額を参考にする
所有する事故物件の売却金額を知りたい場合、条件が似ている物件の買取価格を参考にするのも1つの方法です。所在地や広さ、最寄り駅までの距離といった条件が似ている物件の買取事例があれば、その金額から所有する事故物件の売却金額の目安を調べられます。
たとえば、所有する事故物件と条件が似た物件が2,000万円で買い取られていた場合を想定します。この物件が通常物件であれば、所有する事故物件の買取金額はその金額よりも安くなると予測され、おおむね1,000万円〜1,800万円が買取相場となります。
条件が似ている物件の買取金額を調べる際には、不動産会社が運営する公式の不動産ポータルサイトを活用するのがおすすめです。
公的機関が運営するWebサイトで調べる
国土交通省などの公的機関が運営するWebサイトでも、事故物件の売却相場を調べられます。
たとえば不動産流通機構が運営する「レインズ・マーケット・インフォメーション」なら、実際の成約価格に基づく取引情報を確認できます。検索した取引価格から、事故物件の相場である1~5割を差し引いてください。
なた、2024年4月に国土交通省が公開した「不動産情報ライブラリ」なら、レインズ・マーケット・インフォメーションの成約価格に加え、不動産取引価格情報や類似物件の情報をすぐに調べられます。
不動産会社の不動産ポータルサイトよりも詳しい情報が手に入る反面、調べるのに少し手間がかかるので注意しましょう。
買取業者の査定額を参考にする
売却したい事故物件の相場を調べる方法として、買取業者の査定額を参考にすることも挙げられます。
不動産における査定とは、土地や建物がどの程度の金額で売却できるのかを調査してもらうことです。買取業者に査定を依頼した場合、査定結果の金額が実際の売却金額の目安となります。
そのため、買取業者に依頼をすることで、売却したい事故物件が実際にいくらくらいで売れるのかの目安を把握できます。
買取業者は査定のみの依頼に対応しているのが一般的で、査定のみであれば基本的に無料で行ってもらえます。最短翌営業日に査定結果を提示してもらえる買取業者もあるため、実際の買取価格を調べてもらいたい場合には検討してみるのもよいでしょう。
ただし、買取業者によって買取対象とする物件種別が異なるうえ、心理的な抵抗を与えやすい事故物件は買取対象としていない業者も少なくありません。
事故物件を専門とする買取業者もあるため、査定を依頼する場合にはそのような業者を探すのが得策です。
不動産一括査定の結果を参考にする
所有する事故物件の売却金額を知りたい場合、不動産一括査定サイトを利用するのもよいでしょう。
不動産一括査定サイトとは、不動産の査定を複数社に依頼できるサイトのことです。不動産一括査定サイトを利用することで、複数の業者から所有する事故物件の査定結果を提示してもらえます。
買取業者によって査定結果は異なると考えられるため、複数の業者からの査定結果を提示してもらうことで適正な売却相場をつかむことが可能です。
不動産一括査定サイトの多くは無料で利用できるため、「より適正な売却価格を知りたい」「費用をかけずに事故物件の相場を知りたい」といった場合には活用を検討してみてください。
不動産鑑定士に依頼してより正確に査定してもらう
事故物件の売却価格を調べるうえで、もっとも正確な査定額を期待できるのが、不動産鑑定士への依頼です。不動産鑑定士とは、不動産の経済価値を判定する高度の専門職業家で、日本の国家資格のなかでも難関とされる「不動産鑑定士」を取得した人を主に指します。
不動産鑑定士はその専門知識と実務能力を基に、不動産ごとに適した鑑定評価手法で不動産の価値を高精度で評価できます。
ただし、不動産鑑定士への依頼には20万~50万円の依頼料が一般的には必要です。それでもより高い精度で正確な売却価格を知りたい人は、不動産鑑定士を利用するのがよいでしょう。
事故物件を高値で売却するためのポイント
事故物件の売却を検討している場合、「なるべく高値で売却したい」と考える人もいることでしょう。その場合、事故物件を高値で売却するためのポイントを確認してみてください。
- リフォームや特殊清掃をして資産価値を高める
- 人の死が起きてから時間をあけてから売却する
- 独断で建物の解体をしない
ここからは、事故物件を高値で売却するためのポイントについて、それぞれ解説していきます。
リフォームや特殊清掃をして資産価値を高める
事故物件が安値になりやすいのは、値下げをしなければ買主が現れづらいことが原因です。逆にいえば、買主が現れるのであれば、事故物件を値下げする必要はありません。
とはいえ、人の死があったことから、通常物件よりも買主が現れづらいのは事実です。そこで、事故物件を売却する際には、リフォームや特殊清掃を行って資産価値を高めておくことも検討してみてください。
価値が高い物件であれば、買主が現れる可能性はあります。そして、物件の資産価値はその物件の状態によっても変動します。
リフォームや特殊清掃をして物件の状態をよくすることで、物件の資産価値を高められるため、買主が現れる可能性が高まり、必要以上に値下げをせずに済むことも考えられるのです。
また、特殊清掃やリフォームをすれば、しない場合よりも事故物件の心理的瑕疵を和らげられます。心理的瑕疵が和らげば買主が現れることも考えられるため、事故物件を少しでも高く売却したい場合は、特殊清掃やリフォームをしたうえで売却することも検討してみてください。
ただし、特殊清掃やリフォームをするには費用がかかります。特にリフォームの場合は数百万円ほどの費用がかかるケースもあるため、不動産会社に相談しながらどの部分をリフォームするべきかを決めるのが得策です。
人の死が起きてから時間をあけてから売却する
物件で起きた事件や事故の内容にもよりますが、ある程度の期間が経てば、事故物件で発生した事件は風化する傾向があります。その場合、心理的な抵抗も和らぐと考えられ、その分事故物件を必要以上に値下げせずに売却できる可能性があるのです。
そのため、少しでも高く事故物件を売却したい場合、事件が風化するまで売却を控えることも検討してみてください。事件内容にもよりますが、ニュースで報道されたような事件であれば、数年程度経過してから事故物件の売却活動をするのも得策です。
独断で建物の解体をしない
事故物件の売却を検討している場合、「人の死があった建物を解体すれば土地部分を市場価格で売却できるのでは」のように考える人もいるかもしれません。しかし、少しでも高く事故物件を売却したいのであれば、独断で物件を解体するのは避けるべきです。
前提として、建物を取り壊したとしても人の死があった事実はなくならないため、事故物件を解体しても買主に事件・事故があったことを伝えなければなりません。そのため、解体をしても土地部分に対して心理的な抵抗をなくせるとは限らず、値下げが必要になることも考えられます。
そして、建物を解体するには費用がかかり、100万円以上の解体費用がかかることも珍しくありません。仮に事故物件を解体して買主が現れたとしても、値下げが必要になれば、解体費用分の金額がすべて赤字になってしまう可能性もあるのです。
事故物件を売却する場合、独断で建物の解体はせずに、そのままの状態で売却することを検討するのが得策です。
事故物件の売却なら専門業者がおすすめ!買取業者の選び方は?
心理的な抵抗を与えやすい事故物件は買主が現れづらいため、仲介では売却が難航することも少なくありません。場合によっては、「不動産会社に仲介を依頼してから何年も売れ残っている」というケースも考えられます。
そのため、事故物件の売却を検討している場合、専門の買取業者に依頼することも検討してみてください。事故物件を専門とする買取業者であれば、買い取った物件を活用するためのノウハウがあるため、仲介で売れる見込みがない事故物件でも積極的に買い取ってもらえるのが一般的です。
また、事故物件専門の買取業者に依頼することには、ほかにも下記のようなメリットがあります。
- そのままの状態でも事故物件を買い取ってもらえる
- 数日〜1か月程度で事故物件を売却できる
- 契約不適合責任がが免除されるのが一般的
これらのメリットがあることから、「売却できそうにない」「早く事故物件を売却したい」といった場合、事故物件専門の買取業者に依頼することを視野に入れるのもよいでしょう。
なお、事故物件専門の買取業者は多々存在するため、「どのような業者に依頼するべきかわからない」という人もいることでしょう。
ここからは、事故物件専門の買取業者の選び方について解説していきます。事故物件専門の買取業者を探す際には参考にしてみてください。
所有する事故物件の種類の買取に対応しているか
事故物件専門の買取業者では、買取対象としている物件種別が業者によって異なります。たとえば、事故物件全般を買取対象にしている業者もあれば、孤独死があった物件を主な対象にしている業者もあります。
買取対象としていない業者に依頼しても、所有する事故物件を買い取ってもらえない可能性もあります。そのため、事故物件専門の買取業者を選ぶ際には、売却したい物件を買取対象としている業者を探すのがよいでしょう。
買取や相談の実績が豊富か
事故物件の買取業者を選ぶ際には、その業者の買取実績を確認することも大切です。
買取実績が豊富な買取業者であれば、買い取った物件の活用方法や高値での転売に関するノウハウがあると予測されます。ノウハウが豊富な買取業者に依頼すれば高値で買取に期待できるうえに、買い取りまでの手続きをスムーズに進められることも考えられます。
買取業者の公式サイトには、過去の買取実績が掲載されているのが一般的です。事故物件を専門とする買取業者を探す際は、業者の公式サイトから買取実績を調べたうえで、依頼する業者を探すとよいでしょう。
特殊清掃やお祓いにも対応しているか
事故物件の売却を検討している場合、特殊清掃やお祓いをしていない人もいるかもしれません。
「特殊清掃やお祓いをしなければ事故物件を絶対に売却できない」というわけではありませんが、これらを行っておくことで心理的な抵抗を和らげられるため、基本的には売却前に行っておくのが得策です。
事故物件を専門とする買取業者のなかには、特殊清掃やお祓いを代行してもらえる業者もあります。そのような買取業者に依頼すれば、特殊清掃やお祓いにかかる費用を抑えつつ、事故物件の売却が可能です。
特殊清掃やお祓いをしていない場合、これらを代行してくれる専門業者を探すのもよいでしょう。
まとめ
事故物件は心理的な抵抗を与えやすく、通常物件よりも売却金額が安価になりやすいです。あくまで目安ですが、事故物件の場合は通常物件の1割〜5割程度価格が下落するのが相場とされています。
また、物件内で起きた事故・事件によって心理的な抵抗の感じやすさも変わるため、事故物件の売却相場は人の死因によっても変わる傾向があります。
孤独死や病死があった物件は心理的な抵抗が少ないとされており、売却金額の下落率も1割〜2割程度と比較的ゆるやかになるのが一般的です。一方、他殺があった物件は心理的な抵抗が大きくなりやすく、下落率も3割〜5割程度と事故物件のなかでも安価になりやすいです。
なお、事故物件を売却する場合には、原則売主には告知義務が生じます。人の死があったことを隠して売却をすると告知義務違反になり、契約解除や損害賠償の請求となる可能性があるため、事故物件を売却する場合にはその事実を買い手に必ず伝えるようにしてください。
事故物件の売却相場に関するFAQ
適正な事故物件の売却相場を知るにはどうすればいいでしょうか?
不動産会社や買取業者に査定を依頼するのが得策です。査定を行ってもらうためある程度の期間が必要ですが、物件の状態や条件、事件・事故の内容などを考慮したうえで買取価格の目安を提示してもらえます。
マンションの他の部屋で人の死があった場合も売却相場は安くなりますか?
基本的にはその部屋に告知義務が生じ、隣などの他の部屋は告知の必要がありません。そのため、事故や事件が起きた部屋よりも心理的な抵抗は少なく、売却相場もさほど下がらない傾向があります。
売却金額を下げたくないのですが、事故物件であることはバレるのでしょうか?
売買契約時にはバレない可能性がありますが、契約後に知られる可能性は大いにあります。その際には契約解除や損害賠償の請求になるおそれがあるため、必ず告知義務は果たしましょう。
売却したい事故物件がマンションだったときに気をつけたいことは?
事故物件がマンションの場合だと、人死が発生した箇所が専有部分(部屋のこと)か共有部分かで扱いが変わる可能性があります。たとえばマンションの共有部分で人死が発生しても、原則として買主への告知義務は発生しません。また、人死が発生した部屋の隣の部屋を売却するときも、買主への告知は原則として不要です。とはいえ、事案の社会的影響の大きさや周知性、事件性などによっては告知義務が発生するので、告知義務の必要性は事前に専門家へ確認を取っておきましょう。弊社クランピーリアルエステートは事故物件となったマンションの買取実績が多数存在します。