事故物件でも売却する方法はある!売却相場や高値売却のポイントまで事故物件を売却するための完全マニュアル
事故物件を所有する人のなかには、「事故物件は売却できるのか」のように考えている人もいることでしょう。
人の死があったことから、事故物件は通常物件よりも買い手がつきづらいですが、絶対に売却できないわけではありません。また、事故物件として扱われるのかどうかは人の死の原因によって変わるため、人の死があった物件が必ず事故物件として扱われるわけではありません。
事故物件の売却を検討している場合、まずは所有する物件が事故物件に該当するのかを確かめるのがよいでしょう。
なお、事故物件を売却する場合、基本的には「告知義務」が生じるため、買い手に対して人の死があったことを伝えなければなりません。
告知義務を果たさずに売買契約を締結させると損害賠償を請求される可能性があるため、事故物件を売却するのであれば、告知義務に関しても十分に把握をしておくべきです。
当記事では、事故物件の売却方法から、売却相場や高値売却のポイントまで解説していきます。また、告知義務についても解説していくため、事故物件の売却を検討している場合には参考にしてみてください。
目次
事故物件の売却前にまずは事故物件の定義を確認しておく
そもそも事故物件とは、買い手や借り手が心理的に敬遠してしまうような瑕疵がある物件のことです。敬遠されてしまう主な原因としては人の死が挙げられ、「心理的瑕疵物件」とも呼ばれることもあります。
そして、物件内で起きる人の死には、「他殺」「自殺」「病死」などさまざまな原因が考えられます。基本的に人の死が起きた物件は心理的に敬遠されやすいですが、抵抗を感じる基準は人によって異なり、「人の死があった物件でも構わない」という人も少なくも存在します。
つまり、人の死があったからといって必ず心理的に敬遠されてしまうわけではないため、事故物件として扱われないケースもあるのです。
国土交通省が公表する「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、人の死があった物件でもその事案を告知する必要がないケースもあると記載されています。ガイドラインを参考にして、事故物件として扱われるケースと扱われないケースをまとめましたので、参考にしてみてください。
- 事故物件に該当するケース:殺人・他殺・火事などの事故死があった物件
- 事故物件に該当しないケース:自然死や日常生活における不慮の死があった物件
基本的に、事故物件は心理的に敬遠されやすいため、通常物件よりも売却が難しいです。しかし、事故物件に該当しないような物件であれば、心理的な抵抗を与えづらく、買い手が現れることも考えられます。
事故物件の売却を検討している場合、まずは所有する物件が事故物件として扱われるのかどうかを確認しておくのがよいでしょう。
事故物件に該当するケース:殺人・他殺・火事などの事故死があった物件
国土交通省が公表する「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」には、不動産取引において契約を締結する際の判断に重大な影響を及ぼす可能性がある場合、売り手や貸し手は物件で起きた事案を告知する必要があるとされています。具体的には、事件性、周知性、社会に与えた影響などが高い事案は告げるべきとされています。
自然に起こり得る死因でない場合、事件性や周知性、社会に与えた影響などが高いといえるため、「殺人」「他殺」「火事などの事故死」などが起きた物件は事故物件として扱われます。
事故物件に該当しないケース:自然死や日常生活における不慮の死があった物件
居住用の不動産において、自然死や日常生活における不慮の死は発生しうる事案です。このような死は心理的瑕疵に該当しないとの判例もあり、下記のような死が起きた物件は基本的に事故物件に該当しません。
- 老衰
- 病死
- 階段からの転落
- 入浴中の溺死や転倒事故
- 食事中の誤嚥(ごえん)
参考:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
そのため、老衰や病死などがあった物件は事故物件として扱われないのが一般的で、その場合は売却や賃貸の際にその事案を告知する義務はありません。
特殊清掃を行った場合は死因が不慮の死でも事故物件として告知が必要になる
自然死や日常生活における不慮の死は心理的瑕疵に該当しないと解説しましたが、特殊清掃を行った場合には告知が必要です。人の死が原因で特殊清掃を行った場合、物件内の欠陥である物理的瑕疵によって買い手や借り手に心理的な抵抗を与える可能性があるためです。
物理的瑕疵とは、物件内にある物理的な欠陥のことです。人の死が原因で発生する物理的瑕疵の例には、下記が挙げられます。
- 遺体が長期間放置されていたために体液がフローリングに滲み込んでいる
- 遺体の異臭が部屋中に染み付いている
体液が滲み込んでいたり、異臭が染み付いていたりする場合、特殊清掃をしたとしても買い手に心理的な抵抗を与える可能性があります。これらは売買契約を締結するための判断に影響を及ぼす可能性があるため、日常生活において発生しうる死因であっても事故物件として扱われるケースがあるのです。
事故物件の売却方法には仲介または買取の2種類ある
事故物件の売却を検討している場合、どのような方法で売却するかを考えている人もいることでしょう。
事故物件に限りませんが、不動産の売却方法には「仲介」「買取」の2種類があります。どちらも異なる特徴があるため、所有している事故物件や売却できるまで待てる期間に合わせて売却方法を選ぶのがよいでしょう。
概要 | 向いているケース | |
---|---|---|
仲介 | 不動産会社に売却活動を依頼して、現れた購入希望者に売却する方法。市場価格に近い価格で売却できるため、買取よりも高値がつきやすい |
・立地や広さや築年数といった条件がよい ・売却までに数か月待てる |
買取 | 買取業者に依頼して、直接不動産を買い取ってもらう方法。仲介よりも早く売却できるのが一般的だが、売却価格は安くなりやすい。 |
・条件がよいとはいえず、買い手がつきそうにない ・なるべく急ぎで事故物件を売りたい |
ここからは、事故物件の売却方法である「仲介」「買取」について、それぞれ解説していきます。
仲介:立地や築年数などの条件がよい場合
立地や築年数といった条件がよい事故物件であれば、まずは仲介で売却することを検討するのが得策です。
不動産における仲介とは、不動産会社が売り手と買い手の間に入り、第三者である一般の人に不動産を売却する方法のことです。所有する事故物件を買いたいと考えている人を不動産会社に探してもらい、そのような人が現れれば事故物件を売却できます。
市場価格に近い価格で売却できるのが一般的であるため、仲介であれば事故物件の高値売却に期待できます。
ただし、買い手が現れなければ仲介で事故物件を売却することはできません。そもそも、事故物件は心理的な抵抗を与えやすい物件であるため、条件がよい物件でなければ高値売却どころか、買い手がつかない可能性もあります。
そのため、事故物件の条件がよく、買い手がつく見込みがある場合には仲介で売却することを検討するのがよいでしょう。条件がよい事故物件の例としては、下記が挙げられます。
- 都心のような人気のエリアにある
- 駅から徒歩5分圏内にある
- タワーマンションなど価値が高い物件
- 築年数が5年以下の築浅物件
なお、仲介で物件を売却するには、不動産会社による売却活動が必要です。条件が良い物件でも、不動産会社に依頼すればすぐに買い手が現れるわけではありません。
一般的には、仲介で物件売却できるまでにかかる期間は3か月〜6か月程度が目安といわれています。そのため、売却までにある程度の期間がかかっても問題ない場合には、仲介で事故物件を売却することを検討してみてもよいでしょう。
買取:条件がよいとはいえず買い手がつきそうにない場合
事故物件の売却方法には、買取も挙げられます。
不動産における買取とは、不動産買取業者が買い手となり、直接不動産を買い取ってもらう方法のことです。仲介で行われるような売却活動が不要で物件を買い取ってもらえるため、基本的には仲介よりも買取のほうが売却できるまでの期間が短くなります。
また、不動産買取業者の目的は、買い取った物件の価値を高めて再販売をすることで利益をあげることです。仮に買い取った物件の価値が低かったとしても、リフォームやリノベーションを行って価値を高めたうえで再販売するため、条件が悪い物件であっても売却に期待できます。
そのため、条件が悪いために仲介で売れないような事故物件であっても、買取であれば売却できる可能性があります。
ただし、不動産買取業者はその物件の価値を高めるためのコストを考慮したうえで買取を行います。それらのコストを差し引いた金額が買取価格になるため、仲介よりも安価になるのが一般的です。
あくまで目安ですが、買取の場合は仲介の7〜8割程度が相場といわれています。そのため、「安値であっても事故物件を売却したい」という場合には、買取業者に依頼することを検討するのがよいでしょう。
事故物件を売却する可能性を少しでも高めるポイント
心理的な抵抗を与えやすい事故物件は買い手が現れづらく、仲介では売却が難しいことも少なくありません。また、買取業者に依頼すれば絶対に売却できるとも言い切れません。
事故物件を売却する場合、その可能性を少しでも高めるために下記を実践しておくことも検討してみてください。
- 心理的な抵抗を軽減するために特殊清掃やリフォームをしておく
- ご供養やお祓いをしておく
- 事件が風化するまで売却を控える
ここからは、事故物件を売却する可能性を少しでも高めるポイントについて、それぞれ解説していきます。
○売れないからといって事故物件を解体するのはおすすめできない
事故物件の売却を検討している場合、「人の死があった建物を解体すれば土地部分は売却できるのでは?」のように考える人もいるかも知れません。しかし、独断で事故物件を解体するのは避けるべきといえます。
事故物件を解体するには費用がかかり、100万円以上の解体費用がかかることも珍しくありません。また、解体したからといって、その土地を売却できる保証もありません。
そもそも、建物を取り壊したとしても人の死があった事実はなくならないため、事故物件を解体しても告知義務は残ります。
事故物件の売却が難しいとしても、独断で建物の解体はせずに、そのままの状態で売却することを検討するのが得策です。
心理的な抵抗を軽減するために特殊清掃やリフォームをしておく
事故物件が売れづらいのは、主に人の死があったことが理由です。人の死があったこと自体はなくせませんが、特殊清掃やリフォームをすることで事故物件の心理的瑕疵を和らげることは可能です。
事故物件を売却する可能性を少しでも高めたいのであれば、特殊清掃やリフォームをしたうえで売却を依頼することを検討してみるのもよいでしょう。
ただし、特殊清掃やリフォームをするには費用がかかります。特にリフォームの場合は数百万円ほどの費用がかかるケースもあるため、不動産会社に相談しながらどの部分をリフォームするべきかを決めるのが得策です。
ご供養やお祓いをしておく
事故物件の心理的な抵抗をやわらげる方法として、ご供養やお祓いをしておくことが挙げられます。
ご供養やお祓いをした事実は、そのまま買い手に伝えることが可能です。そのため、ご供養やお祓いをしていない事故物件よりも心理的な抵抗の軽減に期待できます。
事故物件においてご供養やお祓いの費用相場は、3万円〜5万円程度といわれています。不動産会社によっては住職や神主を紹介してもらえるため、事故物件の売却を検討している場合にはご供養・お祓いをすることも視野に入れてみてください。
事件が風化するまで売却を控える
人の死がどのように起きたかにもよりますが、ある程度の時間が経過すれば、事故物件で発生した事件が風化する傾向があります。そのため、事故物件の売却が難航しそうであれば、事件が風化するまで売却を控えることも対策になります。
事件内容にもよりますが、ニュースで報道されたような事件であれば、数年程度経過してから事故物件の売却活動をするのも得策です。
事故物件の売却が難航しそうなら専門の買取業者を検討するべき
事故物件の売却が難航しそうな場合、専門の買取業者に依頼することも検討してみてください。事故物件専門の買取業者に依頼することには、下記のようなメリットがあるためです。
- そのままの状態でも事故物件を買い取ってもらえる
- 数日〜1か月程度で事故物件を売却できる
- 契約不適合責任がが免除されるのが一般的
ここからは、専門の買取業者に事故物件を売却するメリットについて、それぞれ解説していきます。事故物件の売却が難航しそうであれば、参考にしてみてください。
そのままの状態でも事故物件を買い取ってもらえる
不動産を売却する際には、家財などの残置物を撤去しておくのが一般的です。そのため、家財などが残っている事故物件を売却する場合、売り手が事前に残置物を処分しなければなりません。
一方、専門の買取業者であれば、基本的には残置物がある事故物件でもそのまま買い取ってもらえます。そのため、「残置物を撤去する費用や手間を省きたい」という場合、専門の買取業者に依頼するのが得策です。
数日〜1か月程度で事故物件を売却できる
専門の買取業者の場合、事故物件の買取に関するノウハウがあります。そのため、ほかの業者に依頼するよりも、スムーズに売却手続きを進めてもらえるのが一般的です。
買取にかかる期間は業者によって変わりますが、数日程度で買い取ってもらえる事故物件専門の買取業者もあります。
心理的な抵抗を与えやすい事故物件の場合、売却できるまでに期間がかかってしまうと予測されます。「少しでも早く事故物件を売却したい」という場合、専門の買取業者を検討してみてもよいでしょう。
契約不適合責任がが免除されるのが一般的
事故物件に限らず不動産を売却する場合、売り手は「契約不適合責任」を負うのが一般的です。
契約不適合責任とは、売却する不動産が契約内容に適さない場合、売り手が負担しなければならない責任のことです。
たとえば、売却したい事故物件に雨漏りのような欠陥があると仮定します。それを買い手に伝えずに不動産の売買契約を結んだ場合、売り手は契約不適合責任に問われて損害賠償や契約の解除を求められる可能性があります。
一方、事故物件専門の買取業者では、契約不適合責任が免除されるのが一般的です。そのため、事故物件の売却で契約不適合責任に問われるリスクは低いといえます。
事故物件売却には告知義務が生じる!事故物件であることは原則隠せない
事故物件を売却する場合、原則売り手には告知義務があります。
前提として、事故物件で発生した人の死は、売買契約の締結を判断する際に大きな影響を及ぼす可能性があります。国土交通省が公表する「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、重要な影響を及ぼす可能性がある事案は、買い手に対して告知をしておくべきと記載されています。
これを「告知義務」といい、事故物件を売却する場合、売り手は買い手に対して事前に人の死があったことを原則告知しなければなりません。
事故物件の売却を検討している場合、「人の死があったことは隠せないのか」と考えるかもしれません。しかし、告知義務が生じることから、人の死があったことを隠して事故物件を売却することは基本的にできません。
なお、前述したように、自然死や日常生活における不慮の死があった物件は事故物件に該当しないため、これらの物件を売却する際に告知義務は生じません。とはいえ、買い手から人の死があったかどうかなどを尋ねられた際には、正しい情報を提供しなければならないため注意してください。
事故物件の売却の際に告知をする方法
事故物件であることの告知は、売買契約が締結されるまでに行う必要があります。基本的には、重要事項説明書や売買契約書に記載をして告知を行います。
なお、宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインでは、事故物件であることを告知する際に下記の項目を告げるように定められています。
項目 | 概要 |
---|---|
発生時期 | 人の死がいつ発生したのかについて。特殊清掃を行った場合は、いつ特殊清掃が入ったのかを告知する。 |
発生場所 | 人の死がどこで起きたのかについて。共用部分で起きた場合、その場所を明確に伝える。 |
死因について | 「病死」「他殺」「自殺」などと人の死の原因について告知する。 |
特殊清掃の有無 | 特殊清掃を行ったかどうかについてを告知する。 |
参照:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
いずれか1つでも告知をしなかった項目があると、告知義務を果たしたことにはなりません。事故物件を売却する場合、少なくとも上記の項目は買い手に対して伝えるようにしてください。
事故物件の売却時に告知義務を果たさないと契約解除や損害賠償の請求の可能性がある
事故物件であることを隠そうと、人の死があったことを売却した場合、告知義務違反となります。
告知義務違反をすると、売買契約の解消や損害賠償の請求となる可能性があります。実際に、過去には1年以上前に建物内で自殺があったことを故意に隠して賃貸借契約をした賃貸人が賃借人から訴訟を起こされ、約114万円の支払いを命じられた判例もあります。
そもそもですが、不動産取引は公正に行われるべきであって、物件を売ったり貸したりする場合には、取引相手が適切な判断をするための情報を提供するべきです。人の死があった事実を隠すのは公正な取引とはいえないため、この点からも事故物件を売却する際には、人の死があったことを隠すのは避けましょう。
事故物件の売却において告知義務はなくならない
「事故物件の告知義務はなくなるのか」のように考えている人もいることでしょう。
宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインでは、賃貸契約であればおおむね3年の時効がありますが、売却契約の場合は時効は定められていません。
そのため、事故物件を売却する場合、人の死から何年経過していてもその事実を買い手に伝えなければならないのです。
事故物件の売却相場は死因によって異なる
事故物件の場合、通常物件よりも買い手がつきづらいため、市場価格よりも価格を安くして売却活動をするのが一般的です。あくまで目安ですが、事故物件の売却相場は通常物件よりも1割〜5割ほど下がるといわれています。
また、その物件で起きた死因によって、事故物件の売却相場の下落率は異なります。当サイトを運営する「株式会社クランピーリアルエステート」での買取事例を参考に、死因に応じた事故物件の買取相場をまとめましたので参考にしてみてください。
- 孤独死や病死があった物件:通常物件よりも1割〜2割ほど下がりやすい
- 自殺があった物件:通常物件よりも1割〜3割ほど下がりやすい
- 他殺があった物件:通常物件よりも3割〜5割ほど下がりやすい
※あくまで目安であり、必ずこの数値になるとは限らないため、目安程度にお考えください。
ここからは、死因に応じて事故物件の売却相場がどれほど下がるのかについて解説していきます。事故物件の売却を検討している場合、所有している物件の種類に応じた下落率を踏まえて、どの程度の金額で売却できるかを確かめてみてください。
孤独死や病死があった物件は通常物件よりも1割〜2割ほど下がりやすい
孤独死や病死は日常生活における不慮の死に該当するとされており、事件性がある死因よりも心理的な抵抗は少ないと考えられています。そのため、孤独死や病死があった物件は、事故物件のなかでも売却金額の下落率が少ない傾向があります。
あくまで目安ですが、孤独死や病死の場合は通常物件よりも売却相場が1割〜2割ほど下がる傾向があります。通常1,000万円で売却できる金額であれば、800万円〜900万円程度が相場です。
とはいえ、人が亡くなった物件であるため、心理的な抵抗を与えやすいのは変わりません。価格の下落率は少ないといっても、通常物件よりも売れづらいことを踏まえて、売却活動をするのがよいでしょう。
自殺があった物件は通常物件よりも1割〜3割ほど下がりやすい
自殺は周知性がある死因であり、孤独死や病死よりも心理的な抵抗を与えやすいとされています。そのため、自殺があった物件の場合、孤独死や病死があった物件よりも売却価格は下がるのが一般的です。
目安としては、通常物件の1割〜3割ほど売却金額が安くなる傾向があります。通常1,000万円で売却できる金額であれば、700万円〜900万円程度が目安です。
なお、自殺によって物件の状態にどの程度影響を与えたかによって、売却金額の下落率は変動します。たとえば、リストカットが原因の場合、比較的物件に与えるダメージが少ないため、売却金額の下落率はゆるやかになると考えられます。
また、当サイトを運営する株式会社クランピーリアルエステートの買取傾向からは、飛び降り自殺があった物件は比較的下落率がゆるやかになると予測されます。
あくまで目安ですが、通常の物件の1割程度になる傾向があり、立地がよい有名なマンションであれば飛び降り自殺があっても高値で売却できる可能性もあります。
他殺があった物件は通常物件よりも3割〜5割ほど下がりやすい
殺人などの他殺は事件性や周知性、社会に与えた影響が高い死因です。そのため、他殺があった物件は、事故物件のなかでは最も心理的に敬遠されやすいとされています。
目安としては、通常物件の3割〜5割ほど売却金額が安くなる傾向があります。通常1,000万円で売却できる金額であれば、500万円〜700万円程度が目安です。
また、この下落率は原因となった事件によっても変動します。たとえば、ニュースで全国的に取り上げられたような事件があった物件であれば悪印象が払拭されづらく、下落率が高くなり、場合によっては買取を断られることも考えられます。
事故物件を実際に買い取った事例
実際に業者が買い取った事例は、事故物件が実際にはいくらほどで売却できるかの参考になります。事故物件の売却を検討している場合、買取事例から相場感を確認しておくのもよいでしょう。
ここからは、当社「株式会社クランピーエステート」が実際に買い取った事例を紹介していきます。
- 孤独死があったマンションを1,000万円で買い取った事例
- 変死があった戸建てを500万円で買い取った事例
- 共用部分で飛び降りがあったマンションを1,300万円で買い取った事例
孤独死があったマンションを1,000万円で買い取った事例
東京都品川区にあるマンションを買い取った事例です。詳細は以下となります。
買い取った物件種類 | マンション |
---|---|
物件があるエリア | 東京都品川区 |
事故・事件の内容 | 1人住まいの居住者が脱衣所で亡くなり、腐臭が発生していた物件 |
買取金額 | 1,000万円 |
この物件は、1人住まいの居住者が脱衣所で亡くなり、その腐臭から近隣住民の方が通報し発覚した事故物件です。疎遠になっていた相続人からのご依頼で、相続手続きの相談を含めて1,000万円で買い取らせていただきました。
変死があった戸建てを500万円で買い取った事例
千葉県松戸市にある戸建てを買い取った事例です。詳細は以下となります。
買い取った物件種類 | 戸建て |
---|---|
物件があるエリア | 千葉県松戸市 |
事故・事件の内容 | 親子が建物内で変死してしまった物件 |
買取金額 | 500万円 |
この物件は、居住者である親子2人が建物内で変死してしまった事故物件です。2年以内に起きた事故で、なかなか買い手がつかなかったとのことですが、物件について詳しく調査をしたうえで査定を行い、500万円で買い取らせていただきました。
共用部分で飛び降りがあったマンションを1,300万円で買い取った事例
東京都足立区にあるマンションを買い取った事例です。詳細は以下となります。
買い取った物件種類 | マンション |
---|---|
物件があるエリア | 東京都足立区 |
事故・事件の内容 | マンションの共用部分で飛び降り自殺があった物件 |
買取金額 | 1,300万円 |
この物件は、マンションの共用部分で飛び降り自殺が起きた事故物件です。依頼者は早めの取引がご希望とのことでしたので、スピード感を持って物件調査を行い、1,300万円で買い取らせていただきました。
事故物件を売却できるまでの流れ
事故物件を売却できるまでの流れは、おおまかに下記のとおりです。
- 不動産会社や買取業者に査定を依頼する
- 依頼する業者を決めて売買契約を結ぶ
- 決済・事故物件の引き渡しを行う
- 確定申告のために譲渡所得税を算出しておく
ここからは、事故物件を売却する流れについて、各工程を解説していきます。
不動産会社や買取業者に査定を依頼する
事故物件を売却する場合、まずは不動産会社や買取業者に査定を依頼しましょう。不動産における査定とは、土地や建物がどの程度の金額で売却できるのかを調査してもらうことです。
査定を依頼すると、その業者から査定結果として売却金額の目安を提示してもらえます。提示してもらえた金額に問題がなければ合意をして売買契約に進みます。
なお、査定の方法や基準は業者によって変わる可能性があり、複数の業者に査定を依頼することで査定結果に差が出ることも考えられます。最も査定額が高い業者をみつけることも可能なため、事故物件を売却する際には複数の業者に査定を依頼するのがよいでしょう。
依頼する業者を決めて売買契約を結ぶ
依頼する業者が決まった後には、その業者と売買契約を結びます。
事故物件に限らず、不動産の売買を行う際には宅地建物取引業法によって「不動産売買契約書」の作成が義務付けられています。売買契約書には買取価格や引き渡し時期などの合意内容が記載されており、基本的には依頼した業者が契約書を作成してくれます。
なお、売買契約を締結させる際には、さまざまな必要書類を用意する必要があります。追加書類の提出が求められるケースもありますが、下記のような書類が必要になるのが一般的です。
必要書類 | 概要 |
---|---|
登記済権利書 | 法務局から所有者に登記名義人に交付される書類。再発行できないため、紛失した場合には法務局に相談をする |
固定資産税納付通知書 | 固定資産税などが記載された書類。税務署から毎年4月上旬ごろに送付される。 |
境界確認書 | 隣地との土地の境界を証明できる書類。測量士に依頼をして作成してもらえる |
印鑑証明書 | 原則3か月以内に発行したものに限られる |
本人確認書類 | 運転免許証やマイナンバーカードといった身分を証明できる書類 |
住民票 | 役所で取得できる書類 |
提出書類については所有する物件などによって変わることがあるため、依頼する業者が決まった際には、どのような書類が必要なのかを尋ねておくのがよいでしょう。
決済・事故物件の引き渡しを行う
売買契約が締結した後は、契約内容に沿って決済や事故物件の引き渡しを行います。
決済や引渡しの日程は、売買契約を締結させる際に決定されます。売買契約の際には、引き渡しの都合がつきそうな日程をあらかじめ決めておき、その日に引き渡しができるようにスケジュールを調整しておくとよいでしょう。
なお、事故物件を引き渡す際には、物件の鍵を買い手に渡す必要があります。引き渡し日には売りたい物件の鍵を忘れずに持っていきましょう。
確定申告のために譲渡所得税を算出しておく
事故物件を売却する場合、譲渡所得税を納めなければならないケースがあります。その場合、原則的には売却した翌年の2月16日〜3月15日までに確定申告をする必要があります。
譲渡所得税は個人でも算出することは可能ですが、いくつかの手順を踏んで算出しなければなりません。
譲渡所得税の算出は、まず事故物件の売却によって得られた利益である「譲渡所得」の計算から始めます。譲渡所得は「買い手から受け取った金額-(事故物件の取得費+譲渡にかかった費用)」の式で算出可能です。
たとえば、「取得費2,000万円」「譲渡費用150万円」「売却金額3,000万円」の場合を想定すれば、「3,000万円ー(2,000万円+150万円)=850万円」と計算できます。なお、譲渡所得税は譲渡所得によって発生するため、売却によって利益が出なければ譲渡所得税はかかりません。
次に、譲渡所得に一定の税率をかけて、譲渡所得税を算出します。一定の税率は、事故物件の所有期間によって下記のように変わります。
所有期間 | 所得税率 |
---|---|
5年超 | 15% |
5年以下 | 30% |
譲渡所得が850万円であれば、所有期間が5年以下の場合は「850万円×30%=255万円」、所有期間が5年を超えていれば「850万円×15%=127.5万円」と計算します。
なお、不動産会社や買取業者では、「譲渡所得税が発生するかどうか」「確定申告でどのような手続きをするのか」などを相談できる場合もあります。事故物件を売却する場合、譲渡所得税や確定申告について相談しておくとよいでしょう。
まとめ
事故物件は通常物件よりも売却が難しいといっても、絶対に売れないわけではありません。条件のよい物件であれば仲介で売れる可能性はあり、専門の買取業者であれば買い手がつきづらい事故物件でも売却に期待できます。
ただし、事故物件を売却する際には、基本的に告知義務が生じます。売買契約を締結する前に、買い手に対して人の死があった事実について説明しなければなりません。
仮に告知義務を果たさずに事故物件を売却した場合、契約解除や損害賠償の請求となる可能性もあります。事故物件の売却を検討している場合、売却の方法だけでなく告知義務についても把握しておくようにしましょう。