共有名義人の持分が差し押さえられた場合の対処法とは?他の共有者への影響も解説

債務の返済や税金・保険料などの支払いを滞納すると、不動産が差し押さえられる可能性があります。差し押さえ対象の不動産が共有名義の場合、他の共有者に影響が出てしまうのか不安になるでしょう。
共有名義の不動産の差し押さえが発生する場合、差し押さえは債務者の共有持分のみが対象です。そのため、債務者以外の持分や不動産全体が差し押さえられることはありません。
しかし、共有者の持分が差し押さえられ競売にかけられた場合、新しい買主と共有状態になることが想定されます。その際に、以下のようなことが発生しトラブルに発展する可能性があります。
- 新しい共有者から賃料を請求される
- 新しい共有者が差し押さえ対象以外の持分を安値で買い取ろうとする
- 新しい共有者(知らない人)が敷地に入ってくる
- 新しい共有者から共有物分割請求訴訟を起こされる
これらのリスクを解消する方法として、5つの対処法が挙げられます。
| 対処法 | 所有したい or 手放したい | 概要 |
|---|---|---|
| 差し押さえ前に債務者の持分を購入する | 所有したい | ・債務者から直接買い取れる ・差し押さえ直前の買取は「詐害行為取消」の対象となることがある ・差し押さえが迫る前に早めの買取が好ましい |
| 差し押さえ前に共有者の負債を支払う | 所有したい | ・債務を肩代わりして差し押さえを回避する方法 ・肩代わりした債務は後から返還請求できる ・資金力がある場合におすすめの手段 |
| 差し押さえ後に競売で落札する | 所有したい | ・債務者の持分を落札して自分のものにする方法 ・第三者との共有状態を回避できる ・落札価格の予測が難しい |
| 差し押さえ前に共有者全員で協力して不動産を売却する | 手放したい | ・通常の市場価格で売却できる ・ローンが残っている場合は「任意売却」が利用できる ・差し押さえ直前は「詐害行為取消」の対象となる可能性がある |
| 差し押さえ前でも後でも自分の持分を売却する | 手放したい | ・他の共有者の同意なしに売却できる ・落札者との共有関係を解消できる ・売却後に発生する他共有者との話し合いや手続きを買取業者に任せられる |
弊社に相談いただいた方のなかには、他の共有者ではなく「自分の共有持分が差し押さえられそう」と悩まれているケースもありました。
自分の共有持分が差し押さえられそうな場合は、「他の共有者に相談し、買取や弁済などができないかを模索する」「任意売却で競売よりも高値で売り、返済原資にする」といった方法で対応できる可能性があります。
とはいえ、差し押さえの根本の原因は住宅ローンや借金、税金などの返済が滞っていることです。「そもそも債務をどうしたらよいかわからない」という方は、まずは債務整理に強い弁護士や司法書士に相談し、返済計画の見直しや債務整理の検討などを行うことを推奨します。
本記事では、共有名義の不動産の差し押さえとは何かをふまえ、他の共有者への影響や対処法について解説します。共有名義の不動産が差し押さえの対象となった場合、たとえ他の共有者に直接的な影響がなくとも、今回ご紹介する対処法を検討することがおすすめです。
目次
共有名義不動産が差し押さえられると債務者の共有持分のみが競売にかけられる
ある不動産の共有者の一人が債務を滞納した場合、差し押さえの対象となるのは不動産全体ではなく滞納している債務者の持分のみです。
そのため、滞納者以外の持分が一緒に差し押さえられて売られる心配は原則としてありません。
差し押さえられた持分は、裁判所を通じて競売にかけられ、現金化された全額が債務返済に充てられるのが一般的です。
しかし実務上、共有持分は通常の不動産と比べると、基本的に低価格での落札になります。
共有名義不動産は、持分を所有していても利活用するにあたって他の共有者の同意が必要となるため、一般の人にとって使い勝手が良くありません。そのため共有持分のみの買取価格は「不動産全体の市場価格×共有持分の割合×1/2〜1/3」程度まで安くなるうえに、落札者は一般の人ではなく専門業者になるのが通例です。
また、競売という性質上、強制的に早期売却を目指すため、十分に高値を引き出す余裕がありません。市場での価格調整ができないため、結果的に市場価格よりも安く売却されることが多いです。
とはいえ、共有者の共有持分が安価で売られようと、他の共有者に直接的な影響はありません。ただし、「自分に影響がないならよかった」と安心するのは早計です。
なぜなら、実務上、差し押さえを受けた人以外の共有者にも、何かしらの間接的な影響が出てしまうケースがほとんどだからです。
共有名義における「共有」とは、不動産を物理的に区分して所有することではありません。持分に応じて、共有者全員が不動産全体を利用する権利を持つことです。持分が落札されると「顔も知らない第三者」にその分の所有権が移るため、その落札者の行動によっては争いに発展するリスクも存在します。
過去には弊社にも、「競売で知らない人が落札したせいで、その落札者とトラブルになっている」と相談いただくことが何度かありました。
この点については、別章「他の共有者の共有持分が差し押さえになったらどうなる?」で詳しく解説しています。
共有名義不動産の差し押さえは住宅ローンや税金などの債務を滞納すると実行される
共有名義不動産における共有者の持分が差し押さえになるケースは、主に以下2つです。
- 住宅ローンや借金などを滞納した場合
- 税金や社会保険料などを滞納した場合
どちらのケースも同じ差し押さえですが、実行する主体が異なります。
債務が原因なら金融機関や民間企業が、裁判所を通じた強制執行を行います。一方で、税金や社会保険料の徴収主体は国や自治体であるため、裁判所を介さなくても直接差し押さえが可能です。
差し押さえまでのプロセスで両者に違いがあるものの、最終的に「差し押さえた共有持分を売却して返済原資にする」という点は変わりません。
住宅ローンや借金などを滞納した場合
住宅ローンや借金、未払金といった一般的な債務を滞納した場合、裁判所を通じた強制執行によって債務者の共有持分が差し押さえられます。
たとえば住宅ローンを組んでいる場合、共有持分に抵当権を設定していると、滞納時に差し押さえられて競売に出される可能性があります。自分の持分だけであれば他の共有者の同意が不要なため、周囲に内緒で担保に入れているケースもゼロではありません。
もちろん、抵当権をもたない一般の債権者でも、債務の返済が滞った場合は債務者の財産の差し押さえが可能です。抵当権をもたない債権者が差し押さえを行うためには、以下の債務名義の取得が必要です。
| 確定判決 | 訴訟により、債権の存在が認められる判決が確定すること。 |
|---|---|
| 仮執行宣言付判決 | 訴訟の最終判決が確定する前に、執行が認められる判決が得られること。 |
| 和解調書 | 訴訟中に和解が成立した場合に作成され、内容に従った弁済が行われない場合に執行できるもの。 |
| 調停調書 | 裁判所での調停で作成され、内容に沿った弁済が行われない場合に執行できるもの。 |
| 執行認諾文言付公正証書 | 当事者の合意に基づき、公証役場で作成された公正証書により、裁判を経ずに債権の執行が可能なもの。 |
| 仮執行宣言付支払督促 | 裁判所からの支払督促に対し、相手方から異議が出されなかった場合に、執行力が認められるもの。 |
弊社のこれまで扱ってきた事例のなかから、実際に共有持分差し押さえの原因となった債務をいくつか紹介します。
- 夫名義でクレジットカードを使った結果滞納し、共有持分の50%が債権回収会社に差し押さえられた
- 共有者の長男が株式投資の損失の補填として消費者金融のカードローンを利用していたが、返済ができなくなって実家の共有持分25%を差し押さえられた
- 交通事故の民事訴訟で損害賠償500万円の支払いが命じられていたが、債務者が支払いに応じなかったため、債務者の共有持分30%が差し押さえられた
- 共有者が自己破産し、当該共有者が持つ共有持分50%が財産の清算の対象となった
税金や社会保険料などを滞納した場合
以下のような税金や社会保険料などを滞納した場合も、共有持分を始めとする財産の差し押さえ対象になります。
- 所得税、相続税、固定資産税などの国税・地方税
- 国民年金保険料、国民健康保険料などの社会保険料の支払い
これらの公的な支払いを滞納した場合、徴収を行うのは国や地方自治体です。国や地方自治体は、債務名義や裁判所での手続きがなくても、滞納処分ができると法律で定められています。
2 国税の納期限後前項第一号に規定する十日を経過した日までに、督促を受けた滞納者につき国税通則法第三十八条第一項各号(繰上請求)の一に該当する事実が生じたときは、徴収職員は、直ちにその財産を差し押えることができる。
e-Gov法令検索 国税徴収法
(市町村民税に係る滞納処分)
第三百三十一条 市町村民税に係る滞納者が次の各号の一に該当するときは、市町村の徴税吏員は、当該市町村民税に係る地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押えなければならない。
e-Gov法令検索 地方税法第331条
直接差し押さえができるとはいえ、法律通り「期限から10日経ったから問答無用で差し押さえするぞ!」という事態に陥ったケースは、実務上聞いた記憶がありません。
基本的に、役所などが何度か督促状か催促状を送った後、それでも支払いがなかった場合に差し押さえされます。もちろん、いきなり差し押さえが実施される可能性もゼロではありません。
なお、国や地方自治体によって財産を差し押さえられた場合は、競売ではなく公売で売却されます。裁判所の有無や根拠となる法律などに違いがあるものの、第三者に売却して現金化するという流れは同じです。
他の共有者の共有持分が差し押さえになったらどうなる?
差し押さえられた共有持分が落札されると、落札者となる第三者が共有名義に加わり、落札者との間に共有関係が生じます。共有持分の落札者となるのは、原則として不動産業者です。
第三者が共有名義に加わることで、不動産の管理や処分に関してデメリットが発生する可能性があります。なぜなら、共有名義の不動産は、共有持分の持分割合によって、できることとできないことがあり、管理や変更など、内容に応じて必要な共有持分の持分割合の同意が必要になるからです。
| 行為 | 内容 | 同意の有無 |
|---|---|---|
| 保存行為 | 建物の破損部分の応急処置など、不動産の現状を維持する行為 | 他の共有者の同意は不要 |
| 管理行為 | 建物の貸し出しなど、不動産を利用する行為 | 共有者の持分の過半数の同意が必要 |
| 大規模な変更行為 | 売却や増改築など大規模な変更を伴う行為 | 共有者全員の同意が必要 |
たとえば、新たな共有者である落札者との間に意見の相違が生じると、共有不動産の処分や解体、大規模な修繕などの重要な決定が困難になる恐れがあるでしょう。
そのほか、下記のような影響が生じるケースもあります。
- 賃料を請求される
- 差し押さえ対象以外の持分を安価で買い取ろうとする
- 知らない人が敷地に入ってくる
- 共有物分割請求訴訟を起こされる
共有している不動産に共有者の一人のみが居住している場合、新たな共有者から賃料を請求される可能性があります。なぜなら、一部の共有者が独占して不動産を利用している場合、他の共有者は占有者に対して「持分に応じた賃料相当額」を請求できるからです。
また、新たな共有者である業者が不動産全体を売却したいなどの目的で、持分を安値で買い取ろうとしてくる可能性も考えられるでしょう。さらに、持分の売却や買取に応じない場合、新たな共有者が「共有物分割請求訴訟」を起こし、単独で不動産全体を所有しようとする可能性もあるかもしれません。
「共有物分割請求」とは、強制的に共有名義を解消する裁判のことです。共有名義の不動産に対して、各共有者に訴訟を起こす権利があります。
あくまで、差し押さえや競売(公売)の対象となるのは、差し押さえられた持分のみです。そのため、他の共有者の持分や不動産全体が差し押さえられたり、落札によって明け渡しを求められたりすることはありません。
他の共有者の滞納が原因で自分の持分まで差し押さえられるケース
他の共有者の滞納が原因で、自分の持分まで差し押さえられるケースは実はゼロではありません。これには、地方税法における「連帯納税義務」が大きくかかわっています。
(連帯納税義務)
第十条 地方団体の徴収金を連帯して納付し、又は納入する義務については、民法第四百三十六条、第四百三十七条及び第四百四十一条から第四百四十五条までの規定を準用する。第十条の二 共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。
2 共有物、共同使用物、共同事業又は共同行為に係る地方団体の徴収金は、特別徴収義務者である共有者、共同使用者、共同事業者又は共同行為者が連帯して納入する義務を負う。
e-Gov法令検索 地方税法第10条
連帯納税義務とは、要するに「共有者の誰かが対象の徴収金の支払いをしないなら、他の共有者全員で協力して払ってください」という法律上の決まりです。
共有名義不動産においてこの連帯納税義務がかかわる代表例が、固定資産税(都市計画税含む)の支払いです。
共有名義不動産を所有する方の多くは、代表者が固定資産税の納付分を他の共有者から集めて、まとめて納付しているケースが多いでしょう。
仮に、代表者が集めたお金を着服するなどして納付しない場合、または一部しか納付しない場合は、地方税の納付額が足りていない状態になります。この未納分は、連帯納税義務によって共有者全員に支払い義務が生じてしまいます。
代表者がそれでも未納状態を続けると、差し押さえ対象になるのは、連帯納税義務に基づき共有者全員の共有持分です。「代表者が悪いのに巻き添えだ」と思われるかもしれませんが、自治体から見れば未納状態には変わりないため、やむを得ません。
なお、共有名義不動産の納税通知書は原則として代表者のみに送られますが、督促状や催促状については共有者全員に送付されます。そのため、実際には差し押さえに至る前の段階で、代表者の滞納に気づけるはずです。
自分は払ったつもりなのに役所から督促状が届いたら、「手違いだろう」と放置してはいけません。すぐに代表者に状況を確認してください。
地方税法以外に連帯納税義務が定められている法律として、相続税法第34条が挙げられます。たとえば、不動産を共有名義で相続した際に、その不動産に課せられる相続税を支払わない相続人がいた場合、他の相続人が肩代わりしなければなりません。
誰も肩代わりしない場合は、固定資産税と同じく共有者全員の共有持分が差し押さえ対象になります。
他共有者の持分が差し押さえられる場合の5つの対処法
他共有者の持分が差し押さえられる場合、「所有を続けるか」「手放すか」によって対処法が異なります。そのため、まずは共有名義の不動産を所有し続けるのか手放すかを決めましょう。
| 対処法 | 所有したい or 手放したい | 概要 |
|---|---|---|
| 差し押さえ前に債務者の持分を購入する | 所有したい | ・債務者から直接買い取れる ・差し押さえ直前の買取は「詐害行為取消」の対象となることがある ・差し押さえが迫る前に早めの買取が好ましい |
| 差し押さえ前に共有者の負債を支払う | 所有したい | ・債務を肩代わりして差し押さえを回避する方法 ・肩代わりした債務は後から返還請求できる ・資金力がある場合におすすめの手段 |
| 差し押さえ後に競売で落札する | 所有したい | ・債務者の持分を落札して自分のものにする方法 ・第三者との共有状態を回避できる ・落札価格の予測が難しい |
| 差し押さえ前に共有者全員で協力して不動産を売却する | 手放したい | ・通常の市場価格で売却できる ・ローンが残っている場合は「任意売却」が利用できる ・差し押さえ直前は「詐害行為取消」の対象となる可能性がある |
| 差し押さえ前でも後でも自分の持分を売却する | 手放したい | ・他の共有者の同意なしに売却できる ・落札者との共有関係を解消できる ・売却後に発生する他共有者との話し合いや手続きを買取業者に任せられる |
【所有を続けたい場合】差し押さえ前に債務者の持分を購入する
共有名義の不動産が自宅となる場合、共有持分の差し押さえにより不便が生じる可能性があるでしょう。そうした場合の対処法として、共有者の持分が差し押さえられる前に買い取る方法があります。
差し押さえ前であれば不動産の売買は問題なく、債務者の持分の直接買取が可能です。ただし、差し押さえが迫った状態での買い取りは「詐害行為取消」の対象となることがあり、買取行為が取り消される可能性があります。
詐害行為取消とは、債権者が債務などを回収する権利を守るため、債務者が回収対象となり得る財産を減らそうとする行為を無効にできる制度です。
そのため、共有者間で持分の売買を行う場合、差し押さえの可能性も考慮して滞納がわかった段階で早めに実行することが重要です。
【所有を続けたい場合】差し押さえ前に共有者の負債を支払う
債務者の債務を肩代わりし、完済することで差し押さえを回避できます。肩代わりした負債は、後に返還請求することが可能です。つまり、差し押さえを回避することを第一の目的に、一旦負債を肩代わりする方法といえます。ただし、この方法は資金力がある場合に有効です。
【所有を続けたい場合】差し押さえ後に競売で落札する
差し押さえが実行されてしまったが、所有を続けたい場合は、差し押さえ後に債務者の持分を落札することで不動産を単独名義にできます。落札すれば、第三者と共有状態になることもありません。
競売に参加するのは主に不動産業者であり、業者はできるだけ安く落札しようとします。そのため、不動産業者よりも高値を提示すれば、業者を相手にしても競り落とせる可能性があります。
ただし、必ずしも落札できるとは限らず、入札価格の予測も難しいです。市場価格よりも安くなるとはいえ、十分な資金が必要となります。
【手放す場合】差し押さえ前に共有者全員で協力して不動産を売却する
差し押さえ前であれば、共有者同士で協力して不動産全体を売却する手もあります。不動産全体として売り出せれば、通常の市場価格で売却される可能性が高いでしょう。
この場合、仲介業者で売却することも可能です。基本的には買取業者に売却するよりも高く売れますが、買い手を見つけるまでに時間がかかってしまいます。そのため、差し押さえ前に早く売却したい場合には、専門の買取業者に依頼するのが得策です。
不動産に抵当権がついている場合は「任意売却」も手段の一つです。
任意売却とは、売却代金で諸費用を除いた金額を返済に充てても負債が残ってしまう場合に、金融機関などの債権者の許可を得て不動産を売却する方法です。任意売却では、債権者の許可のもと抵当権が抹消されるため、住宅ローンが残っている状態でも売却が可能となります。
ただし、差し押さえ直前での任意売却は詐害行為と判断されてしまう場合もあるため、専門家に相談しながら慎重な判断が必要です。
【手放す場合】差し押さえ前でも後でも自分の持分を売却する
差し押さえ前、あるいは後でも、自分の持分は共有者の同意なしに売却可能です。そのため、すでに共有者の持分が差し押さえられ、その上で対象の不動産を所有し続ける意思がない場合は、自分の持分を専門の買取業者に売却する方法もあります。売却すれば不動産を所有する権利もなくなるため、落札者との共有関係を解消できます。
また、売却後は他共有者との話し合いを買取業者に任せられるため、手続きが発生した場合も対応不要です。
自己持分が差し押さえられる場合の3つの対処法
過去に弊社がお受けしたご相談のなかには、他の共有者ではなく「自分が持つ共有持分が将来差し押さえになるかもしれない」とお悩みの方もおられました。
自己持分が差し押さえられそうな場合、まずは「他の共有者に早めに相談すること」が大切です。早めに相談することで、差し押さえ前の対策に協力してくれる可能性があります。
もし共有持分を売却するあてがあるなら、いっそのこと売却して返済原資に充ててしまうのも手です。金融機関との話し合いや詐害行為のリスクなどがあるものの、競売に出されるよりも多くのお金を用意しやすくなります。
「そもそも借金や未納分がどうにもならない」とお悩みなら、共有者や不動産会社ではなく、弁護士などの専門家に相談して債務をうまく整理できないかを検討しましょう。
他の共有者に早めに相談する
「借金があるなんて言えない」 という気持ちは分かるものの、差し押さえ直前の段階であれば、まずは他の共有者に早めに相談することが大切です。
他の共有者に相談すれば、以下の協力を得られる可能性があります。
- 他の共有者が共有持分の買取を提案してくれる
- 一時的に借金の肩代わりして、滞納状態を一時的に解消してくれる
- 他の共有者全員と協力して不動産全体を売却し、売却益を返済に充てる
弊社のこれまでの経験上、他の共有者も「知らない第三者と共有状態になるのは避けたい」と考えることがほとんどです。そもそも共有者が親族の場合、早めに相談しておかないとプライベートでも人間関係の悪化などの悪影響が懸念されます。
相談できそうな関係性なら、関係修復が不可能な状態になる前に勇気を出して相談しましょう。
他の共有者や買取業者に売却して返済原資を作る
競売で強制的に売られるくらいなら、他の共有者や買取業者に任意売却して返済原資を作るのも1つの手です。
原則として、競売よりも任意売却のほうが売却価格が高くなる傾向があります。その理由は次の通りです。
- 他の共有者であれば、売却相場が「不動産全体の市場価格×共有持分の割合」と高値になりやすいから
- 共有持分専門の買取業者なら、競売よりも共有持分を評価してくれる可能性が高く、最短数日で現金化ができる
もし、住宅ローンの滞納で自己持分に抵当権が設定されている場合、任意売却するには金融機関に抵当権抹消の許可を得る必要があります。とはいえ、金融機関も回収額が増えるため、交渉に応じてもらえる可能性が高いと考えられます。
任意売却の相手が「親族の共有者」の場合は要注意です。
たとえば、差し押さえ直前で親族の共有者に無償に近い形で売却した場合、共有持分は親族のものになるため差し押さえの対象になりません。親族としても落札者が共有者になることをタダ同然で防げるので、実質的に差し押さえを回避できます。
このような取引は、債権者に損害を与える「詐害行為」に見なされやすく、詐害行為取消請求で無効になるリスクがあります。
他の共有者に売る場合は詐害行為にならないよう、「タダ同然で他の共有者に売る」「共有持分以外の財産も一緒に処分する(他の財産を隠すなど)」などをしないように注意しましょう。
一方で、完全な第三者への適正な任意売却なら詐害行為にならない可能性が高いです。なぜなら、債権者からすれば代わりに共有持分の売却益を差し押さえれば問題ないからです。
債務整理について弁護士などの専門家に相談する
「売却しても借金が完済できない」「そもそも売るあてがない」など、共有持分の差し押さえ対策以前に債務の返済自体が難しい場合は、不動産会社ではなく債務整理に強い弁護士や司法書士に相談しましょう。
債務整理に強い専門家であれば、専門知識と実務経験に基づいた「適切な法制度や自治体の支援策の紹介」「返済計画の見直し」などを提案してくれます。
自力で債務を返済するのが難しい場合なら、「任意整理」「個人再生」「自己破産」といった、債務整理による生活立て直しについてもサポートしてくれます。
とはいえ、債務整理を行うと信用情報機関に異動情報が登録されます。いわゆる「ブラックリストに載る」という状態です。5~7年以上賃貸契約やクレジットカード発行などに支障をきたすリスクがあるので、慎重な判断が必要です。
共有名義の不動産の差し押さえの流れ
共有名義の不動産が差し押さえの対象となってしまった場合、差し押さえは以下の流れで実行されます。
- 督促通知が封書や電話などで届く
- 債務の一括返済請求が封書などで届く
- 法的措置または差し押さえの予告通知が届く
- 裁判所から支払い督促が届く
- 差し押さえが行われる
督促通知が封書や電話などで届く
滞納が続くと、一般的には電話や封書、圧着はがきなどで数回の予告が行われます。最初のうちは電話での連絡となり、繋がらない場合に封書で督促通知が届きます。督促通知の時点で支払い予定を伝え、予定通りに返済すれば差し押さえになることはありません。
債務の一括返済請求が封書などで届く
督促通知を無視し、2〜3ヶ月ほど滞納が続くと、債務の一括返済請求が封書などで届きます。一定期間滞納し続けると「期限の利益」が喪失し、借り入れ額を一括返済しなければなりません。「期限の利益」とは、期限になるまで債務者は返済しなくても良い権利のことです。
たとえば、住宅ローンの場合、基本的には貸付に際して保証会社が立てられています。債務者が一括返済請求にも応じない場合、一旦は保証会社が代位弁済します。代位弁済とは第三者が代わりに返済することですが、これにより今までの債権は「保証委託契約による求償債権」という新しい債権になります。
保証委託契約による求償債権は、一括返済が必要です。つまり、代位弁済によってこれまで督促されていた返済は完了したものの、代わりに返済した保証会社に対して一括返済の義務が発生します。
なお、住宅ローン以外の貸付でも、期限の利益が喪失すれば一括返済しなければなりません。
法的措置または差し押さえの予告通知が届く
一括返済ができずに放置すると、次に「法的措置(訴訟や支払督促)の予告」や「差し押さえ予告」の通知が届きます。
一般の債権者は差し押さえにあたり、まずは訴訟や支払督促を通じて債務名義を取得する必要があります。そのため、いきなり差し押さえではなく、まずは法的措置の予告を行います。
住宅ローンの場合は抵当権が設定されているため、債務名義の取得が不要です。すぐに差し押さえに移行できるため、法的措置の予告なく、いきなり差し押さえの予告が届きます。同じく、税金を滞納した場合もいきなり差し押さえの予告となります。
裁判所から支払督促が届く
抵当権のない一般の債権者は、債権名義取得のために訴訟や支払督促の手続きを行います。債権者が申し立てを行うと、裁判所から債務者宛に封書が届きます。債務者は支払督促を受けた日から2週間以内に返済、または異議の申立てを行わなければなりません。
しかし、債務者が通知を無視したり、応訴に敗訴したりすると債権者の主張が認められます。その後、裁判所から「債務名義」と呼ばれる判決書が発行されます。
差し押さえが行われる
裁判所からの支払督促によって返済に応じたり、異議申し立てを行わないと「仮執行宣言付支払督促」が届きます。さらに、これに対しても異議を申し立てない場合、抵当権者や自治体、債務名義を取得した債権者によって強制執行が開始されます。
強制執行でまず差し押さえられるのは、不動産です。不動産の差し押さえにあたって、債権者は不動産の所在地の管轄裁判所に予納金を納めて申立てを行います。この申立てにより、裁判所は法務局に嘱託を行い、法務局が不動産の差し押さえ登記を実行します。
差し押さえ後、弁済や債務整理、任意売却などにより解決方法が見つかる場合は、差し押さえが取り下げられることもあります。しかし、そのまま放置すると競売が進行し、最終的には第三者に不動産が買い受けられてしまいます。
まとめ
共有名義の不動産が差し押さえの対象となっても、差し押さえられるのは債務者の持分のみです。基本的に他の共有者に影響は生じないものの、差し押さえによって競売にかけられた持分が落札されると、落札者と他の共有者は共有関係になります。そうなると、第三者にも不動産の権利が一部行き渡ってしまうため、不動産の管理や処分に不自由が生じる恐れがあります。
そうした状況を回避するには、共有名義の不動産を手放すことが一つの対処法です。しかし、その不動産に住んでいるなどして所有を続けたい場合には、「債務者の持分を購入する」「差し押さえ前に負債を支払う」「競売で落札する」3つの対処法があります。
共有名義の不動産が差し押さえられることによるデメリットやトラブルを回避するためにも、今回ご紹介した対処法を検討してみてください。
共有名義の差し押さえについてよくある質問
共有不動産が競売にかけられにくいと聞いたのですが本当でしょうか?
共有名義不動産だろうと、何も対処しなければ、普通の不動産と同じく差し押さえられて競売に出されます。
インターネット上で見られる「共有名義不動産は競売にかけられにくい」は、正確に言えば「差し押さえられる前に対処しやすいため、競売にあまり出回らない」が正解です。
たとえば、住宅ローンを滞納した場合、差し押さえになる前に金融機関が任意売却を勧めるケースがあります。また、第三者との共有状態を避けるために、他の共有者が共有持分について何らかの方法で対処するケースが比較的多いです。
共有名義不動産全体が差し押さえられるケースはありますか?
ペアローンで不動産を購入したなどで、共有名義不動産全体に抵当権が設定されている場合、一部の滞納でも不動産全体が差し押さえられる可能性があります。


