共有持分売却の完全ガイド!売却方法から起こり得るトラブルまで徹底解説
不動産を共有している場合、「自身の共有持分を売却できないか」「売却するならどんな方法がいいのか」のように考える人もいることでしょう。
結論、共有持分であれば自由に単独で売却できます。
前提として、共有している不動産全体を売却するには、原則共有者全員からの同意が必要です。そのため、誰か1人でも反対している人がいれば、共有している不動産全体を売却することはできません。
しかし、共有持分は自分にだけ所有権があるものです。自身の所有物であれば自由に使用・処分が可能なため、ほかの共有者から同意がなくても共有持分を売却できます。
共有持分を売却する方法には、「仲介で一般の人に売却する」「ほかの共有者に買い取ってもらう」という方法もありますが、基本的には専門の買取業者に依頼するのが得策です。
専門の買取業者であれば権利関係が複雑な共有持分であっても売却に期待できます。また、「ほかの共有者との話し合いが難航している」「相続などでトラブルが起きている」といった場合でも売却できるのが一般的であるため、共有持分の売却を検討している場合はまず専門業者に相談してみるのがよいでしょう。
当記事では、共有持分売却の完全ガイドをテーマに、共有持分の売却方法や買取相場などを解説していきます。
なお、対策を講じずに共有持分を売却すると、ほかの共有者や売却先とのトラブルが起きる可能性があるため注意が必要です。起こり得るトラブルを把握しておくことで回避できるケースもあるため、共有持分を売却する場合、事前にトラブル例を確認しておくとよいでしょう。
目次
共有持分は自由に単独で売却できると民法で認められている
そもそも共有持分とは、複数人で所有している不動産において、各共有者が持つ所有権の割合のことです。たとえば、不動産を3人で均等に共有している場合、各共有者の共有持分は1/3となります。
共有持分は自分のみに所有権があるものです。そのため、たとえ不動産を共有している状態であっても、共有持分は自分自身のものといえます。
そして、民法の第206条では、自身の所有物であれば自由に使用や処分ができる権利があると定められています。
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
引用元 e-Gov「民法(第206条)」
売却も処分に該当する行為であることから、共有持分であれば自由に単独で売却することが可能です。
なお、民法で認められている以上、他の共有者から売却に反対されている状況でも、共有持分は売却できます。また、単独で売却できるため、ほかの共有者と会ったり、連絡を取ったりすることなく共有持分を売却することも可能です。
「共有者から売却を反対されていても売却したい」「ほかの共有者に連絡がとれない」といった場合には、共有持分の売却を検討してみてもよいでしょう。
共有状態の不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必要
共有状態の不動産は、複数人で共有している状態の土地や建物を指します。共有持分のように所有権が自分だけにあるのではなく、共有者全員に所有権があるため、共有状態の不動産を単独で売却することはできません。
民法第251条で定められているように、共有状態の不動産全体を売却するには、共有者全員からの同意が必要です。
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
引用元 e-Gov「民法(第251条)」
民法で定められている「変更」には、共有状態の不動産全体の売却が該当します。ほかには、「大幅なリフォーム・増築・改築をする」「建物の建築」なども変更行為となります。
誰か1人でも売却に反対する共有者がいれば、共有状態の不動産全体を売却することは法律上認められません。共有持分だけでなく不動産全体の売却を検討している場合、まずは共有者全員から同意を得ることを検討してみてください。
不動産全体の売却以外でも共有者から同意が必要なケースもある
共有状態の不動産全体の売却以外でも、共有者から同意が必要な場合があるため注意が必要です。簡単にいえば、売却などの「変更」には共有者全員、「管理」には共有不動産における持分の過半数を超える同意が必要です。
変更については前述したように民法第251条が関わっていますが、管理については民法252条が関わります。
共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
引用元 e-Gov「民法(第252条)」
なお、共有状態の不動産においては、「変更」や「管理」以外にも「保存」という行為もあります。保存であれば単独で行えるため、ほかの共有者からの同意は不要です。
「変更」「管理」「保存」について、具体例と共有者からの同意の必要性をまとめましたので、参考にしてみてください。
具体例 | 共有者からの同意 | |
---|---|---|
変更 | ・共有不動産全体の売却 ・大幅なリフォーム・増築・改築 ・共有状態の土地で建物の建設 |
共有者全員から同意が必要 |
管理 | ・賃貸借契約の締結や解除 ・賃料の変更 ・建物の外壁塗装 |
持分の過半数を超える同意が必要 |
保存 | ・壁紙交換のような物件を現状維持するための修繕 ・共有不動産の登記 |
不要 |
たとえば、共有している不動産を賃貸に出す場合は「管理」に該当するため、持分の過半数を超える同意が必要です。具体的には、不動産を3人で共有しており、それぞれの持分割合が1/3ずつであれば、少なくとも2人の共有者から同意を得る必要があります。
共有持分の売却なら買取業者への依頼を検討してみる
共有持分の売却方法にはさまざまな方法があります。たとえば、仲介による一般の人への売却や、ほかの共有者への売却などの方法が挙げられます。
しかし、共有持分を売却するのであれば、基本的に専門の買取業者に依頼することをまずは考えてみるとよいでしょう。
前提として、共有持分のみの売却は通常物件よりも難しいのが一般的です。共有状態によって権利関係が複雑であるうえに、売却するのが不動産全体ではなく一部であるためです。
そのため、主に一般の人を対象にした仲介では共有持分を売却するのは基本的に難しいといえます。
また、共有持分をほかの共有者に売却する方法では、買い手に相応の支払能力が必要となります。共有者に支払能力があるのであれば検討してもよい方法ですが、そうでなければ共有者に持分を買い取ってもらうことは難しいです。
一方、専門の買取業者であれば、共有持分のみの買取にも対応しています。仲介などの方法よりも売却できる可能性が高いため、「確実に買い取ってもらいたい」という場合には共有持分専門の買取業者に依頼するのもおすすめです。
なお、当社株式会社クランピーエステートは、共有名義不動産の問題解決を目指しています。年間の相談件数は3,000件以上あり、共有持分の買取にも対応しています。
ここからは、実際に当社に寄せられた相談事例を紹介しつつ、専門の買取業者に共有持分を売却するメリットを解説していきます。
共有者不明または共有者との関係がよくない
当社に寄せられた相談事例には、「共有者とトラブルになってしまい関係を絶ちたい」「共有者が行方不明でコンタクトのとりようがない」といった状況で共有名義状態の不動産の売却を検討している方からの相談もありました。
この相談に対する回答を結論からいえば、共有している不動産全体の売却は難しいです。
前述したように、共有している不動産全体を売却するには、共有者全員からの同意が必要です。「関係がよくない」「誰が共有者なのかがわからない」という場合、同意を得るための話し合いをするのが難しいと予測されます。
とはいえ、共有持分のみであれば、共有者からの同意がなくても売却することが可能です。このような状況であっても共有持分だけであれば売却が可能なうえ、実際に売却をすることで共有状態から抜け出せます。
専門の買取業者であれば、共有者間でトラブルが起きている共有持分も買取対象にしています。「共有者との関係があまりよくない」「誰が共有者なのかがわからない」といった状況で売却を検討している場合、共有持分を専門とする買取業者に相談することを視野に入れてみてください。
相続など共有状態によるトラブルから抜け出したい
当社に寄せられた相談事例には、「相続時に共有不動産を残したい人と売却したい人で意見が割れている」のように、相続時に共有者間でトラブルが起きている人からの相談もありました。
共有状態によるトラブルから抜け出したい場合、自身の共有持分を売却することを検討してみてください。
すでにトラブルが起きているのであれば、共有者間の話し合いでトラブルを解決するのは困難と予測されます。このような状況でも共有持分は自分の意思だけで売却可能で、売却後は共有状態から抜け出せます。
なお、買取業者のなかには、弁護士や司法書士といった士業と連携して買取を行う業者もあります。このような業者であれば、相続によるトラブルが起きている不動産であっても買取対象としているうえ、相続手続きをすべて任せられるのが一般的です。
「相続によってトラブルが起きている状態から抜け出したい」という場合、士業と連携している買取業者に依頼することも検討してみてください。
共有者が占有しておりトラブルから抜け出したい
当社に寄せられた相談事例には、「共有者の1人が不動産を占有している」という場合で共有トラブルから抜け出したいと考えている人からの相談もありました。特に、「共有者が占有をしており、話し合いにも応じてもらえない」のような状態の相談も多数寄せられています。
このような場合に共有状態のトラブルから抜け出す方法にも、共有持分の売却が挙げられます。共有者が占有している状態であっても、共有持分であれば単独で売却が可能です。
なお、当社株式会社クランピーリアルエステートは、占有状態の共有持分の買取実績もあります。占有している共有者の方にもさまざまなご提案をさせて頂き、依頼者と双方が納得のいく結果を目指しますので、占有状態でトラブルがある場合には買取業者への依頼を検討してみてください。
意見がまとまらず共有状態を解消できない
当社に寄せられた相談事例には、「共有者同士の意見がまとまらず不動産の処分ができない」という相談もありました。
共有持分のみであれば共有者からの同意不要で売却できるため、自身の持分を売却することはこの場合の対策になります。
また、弁護士や司法書士と連携している買取業者であれば、共有者間のトラブルを解決できるノウハウがあるのが一般的です。共有持分の売却だけでなく、ほかの共有者とのトラブル解消にも期待できるため、話し合いでの解決が難しい場合には買取業者への依頼を検討してみてください。
離婚することになり、自分の共有持分をパートナーに知られず売却したい
当社に寄せられた相談事例には、「離婚することになり、自分の共有持分をパートナーに知られず売却したい」という相談もありました。
前提として、共有持分の売却は単独で行えるため、パートナーなどの共有者に内緒で売却することは可能です。そのうえで、「売却によるトラブルを避けたい」のように考えている場合には、共有持分を専門とする買取業者への依頼も視野に入れてみてください。
共有持分を専門とする買取業者であれば、「共有持分を内緒で売りたい」という事情を考慮したうえで買取対応をしてもらえるのが一般的です。
スピーディーな買取に期待できるうえに、トラブル防止のためにほかの共有者と交渉も行ってもらえるため、内緒で売却したい事情がある場合には、共有持分を専門とする買取業者に相談することを検討してみてください。
買取業者の売却以外で共有状態を解消して売却する方法
買取業者の売却以外にも、不動産の共有状態を解消して売却する方法はあります。その例には、下記が挙げられます。
- 他の共有者に持分を買い取ってもらう
- 土地を分筆して単独名義にしたうえで売却する
- 共有持分割請求で不動産を単独所有にしたうえで売却する
ここからは、買取業者の売却以外で共有状態を解消して売却する方法について、それぞれ詳しく解説していきます。
他の共有者に持分を買い取ってもらう
買取業者に依頼する以外の方法には、他の共有者に持分を買い取ってもらうことが挙げられます。
共有者のなかには、共有持分の買取を希望する人がいる可能性もあります。共有持分の買取によって持分割合が増えれば、共有名義の不動産を管理するための権限を得られるケースがあるためです。
前述したように、民法第252条では、共有物を管理する場合、持分の過半数を超える同意が必要です。持分の過半数を保有していれば、共有状態の不動産を管理行為を自由に行えます。
つまり、共有持分を買い取ることで持分の過半数を得られる共有者であれば、共有持分を売却できる可能性があるといえます。
ただし、共有持分を買い取ってもらうには、当然ですがその共有者と交渉したうえで同意を得る必要があります。また、相応の資金が必要になるため、支払能力がない共有者に共有持分を買い取ってもらうのは難しいです。
土地を分筆して単独名義にする
共有している不動産が土地であれば、その土地を分筆することも1つの手です。
分筆とは、1つの土地を複数の土地に分けて登記をすることです。分筆によって土地を切り分ければ、各共有者が自分の持分に応じて土地を単独所有できるため、共有状態を解消できます。
たとえば、300m2の土地を3人で共有しており、各共有者がそれぞれ1/3ずつ所有している場合を想定します。この条件で土地を分筆すると1つの土地が3つに分けられ、それぞれの共有者は100m2の土地を単独所有にすることが可能です。
民法第206条で定められているように、自身の所有物であれば自由に活用する権利があります。
そのため、分筆によって単独所有となった土地であれば自由に売却が可能で、その際には他の共有者であった人から合意を得る必要もありません。
共有物分割請求訴訟をして単独名義にする
共有状態を解消する方法として、共有物分割請求訴訟をすることも挙げられます。
共有物分割請求訴訟とは、共有名義不動産の共有状態を解消するために裁判所へ申し立てる訴訟のことです。共有物分割請求訴訟をすれば、主に3つの方法で共有名義不動産が分割されます。
分割方法 | 概要 |
---|---|
現物分割 | 共有している不動産を物理的に分割する方法 |
代償分割(価格分割) | 分割の際の差額を金銭などで補償する方法 |
換価分割 | 不動産を売却して持分割合に応じて現金を分割する方法 |
裁判所が不動産の分割方法を決定するため、共有状態を強制的に解消できます。「現物分割によって不動産の一部を単独所有になった」「代償分割によって自分が不動産を単独所有することになった」というケースであれば、単独かつ自由に不動産を売却できます。
また、換価分割は不動産を競売にかけ、その売却代金を持分割合に応じて分配する方法です。そのため、換価分割がとられれば、共有名義を解消したうえで持分割合に応じた現金が得られます。
ただし、共有物分割請求訴訟をした場合、不動産の分割方法を裁判所が決定するため、必ずしも自分の望む結果になるとはいえません。「不動産を残したかったが競売にかける結果になった」というケースもあるため、あくまで共有物分割請求訴訟は最終手段として考えておくのがよいでしょう。
共有持分の売却相場は「市場価格よりも安め」が基本
共有持分の売却を検討している場合、「売却相場は不動産の市場価格を持分割合で割った金額になるのか」のように考えるかもしれません。しかし、共有持分の売却相場は市場価格よりも安めになるのが基本であるため、持分割合で割った金額よりも安くなることも考えられます。
前提として、不動産の売却価格は、その物件に対する需要の高さによっても変動します。共有持分の場合、「不動産の一部のみの所有権」「通常物件よりも権利関係が複雑」といった理由から、需要は低くなるのが一般的です。
市場価格は通常物件を想定した金額になるのが基本です。共有状態による需要の低下を加味していないため、市場価格を単純に持分割合で割ったとしても共有持分の売却相場には基本的にならないといえます。
あくまで目安にすぎませんが、共有持分の売却相場は市場価格の3割〜5割ほど値下がりするといわれています。これを踏まえてシミュレーションをすると、「3,000万円の共有不動産を所有しており、持分割合が1/3」という場合、共有持分の売却相場は300万円〜500万円程度となります。
立地などの不動産の条件にもよりますが、共有持分を売却する場合には、基本的に市場価格よりも安価になると考えておくとよいでしょう。
実際に共有持分を買い取った事例
ここからは、当社株式会社クランピーエステートが実際に共有持分を買い取った事例を紹介していきます。
買取事例は、自身の共有持分を買取業者に依頼する場合の売却金額の目安をつかむための材料にもなるため、売却を検討している場合には参考にしてみてください。
共有持分を470万円で買取した事例
不動産がある地域 | 東京都 |
---|---|
共有者の人数 | 4人(親族) |
物件の種別 | 一戸建て |
買い取った持分割合 | 戸建ての土地と建物の1/4 |
買取金額 | 470万円 |
東京都にある戸建ての土地と建物の共有持分を買い取った事例です。持分割合は1/4、470万円で買い取らせていただきました。
売主様は相続によって共有持分を取得し、共有不動産に居住している人や他の共有者とはまったく交流がなく、手紙も無視されている状態だったようです。
このように、「ほかの共有者と交流がない」「共有不動産についての話し合いができていない」という場合であっても、買取業者に依頼すれば共有持分を売却できる可能性があるといえます。
ローン残債がある共有不動産の共有持分を1,500万円で買取した事例
不動産がある地域 | 神奈川県 |
---|---|
共有者の人数 | 2人(夫婦) |
物件の種別 | マンション |
買い取った持分割合 | マンションの1/2 |
買取金額 | 1,500万円 |
神奈川県にあるマンションの共有持分を買い取った事例です。
売主様の場合、共有持分を売却した後も元夫である共有者がマンションに居住をしており、ローンの残債もありました。持分割合は1/2で、好立地のエリアだったこともあり1,500万円で買い取らせていただきました。
このように、「ローン残債がある」「共有者が不動産に住んでいる」といった場合であっても、買取業者に依頼すれば共有持分を売却できる可能性があるといえます。
駐車場として利用している土地の共有持分を1億円で買取した事例
不動産がある地域 | 大阪府 |
---|---|
共有者の人数 | 4人(親族) |
物件の種別 | 土地(駐車場) |
買い取った持分割合 | 駐車場の1/4 |
買取金額 | 1億円 |
大阪府にある駐車場の共有持分を買い取った事例です。持分割合は1/4、1億円で買い取らせていただきました。
売主様は急いで現金化をする事情があったため、スピーディーに対応させていただきました。このように、「土地のみの共有持分を売却したい」「急いで現金化したい」という場合であっても、買取業者に依頼すれば共有持分を売却できる可能性があります。
共有持分をなるべく高値で売却するなら複数の業者に査定をしてもらう
共有持分の売却を検討している場合、「なるべく高値で売却したい」のように考えることもあるでしょう。共有持分を高値で売却したい場合は、複数の業者に査定を依頼しておくのが得策です。
不動産における査定とは、土地や建物がどの程度の金額で売却できるのかを調査してもらうことです。
査定の方法や基準については業者によって異なると考えられます。そのため、複数の業者に共有持分の査定を依頼すると、査定結果に違いが出ると予測されます。
その結果、最も査定額が高い業者を見つけることができ、その業者に買取を依頼することで共有持分を高値で売却できると推測できるのです。
なお、不動産の買取業者は無料査定に対応しているのが一般的です。手間はかかりますが、共有持分を売却する際には、複数の業者に査定を依頼したうえで売却先を決めるのもよいでしょう。
共有持分を売却するまでの流れ
共有持分を売却する際の流れは、大まかに以下となります。売却方法によっては他の手続きも必要になりますので、目安として参考にしてみてください。
- ほかの共有者に売却することを通知しておく
- 買取業者に査定をしてもらう
- 売却先と売買契約を締結する
- 決済を済ませて所有権移転登記を行う
- 確定申告のために譲渡所得税を算出しておく
ここからは、共有持分を売却する流れを解説していきます。共有持分の売却を検討している場合には参考にしてみてください。
ほかの共有者に売却することを通知しておく
共有持分を売却する場合、可能であれば事前にほかの共有者へ通知をしておくのが大切です。「共有者と関わりたくない」のような事情があるかもしれませんが、通知をすることなく共有持分を売却すると、それが原因でトラブルが起きる可能性があります。
たとえば、共有持分を売却すると、その買い手が新たな共有者となります。ほかの共有者からすれば、見ず知らずの第三者が突然共有者になるため、「なぜ相談もせずに売却したのか」と非難されてしまう場合も考えられるのです。
また、前述したように、共有者によっては共有持分の購入を希望している可能性もあります。「事前に相談をしてくれればもっと高い価格で買い取ったのに」というケースも考えられます。
単独かつ自由に売却できるといえども、共有持分を売却する際には、ほかの共有者に通知程度はしておくのが無難といえるのです。
買取業者に査定をしてもらう
共有持分を売却する場合、どの程度の金額で売却できるのかを事前に把握しておくことも大切です。買取業者は共有持分の売却だけでなく、査定のみにも対応しているため、売却の際には査定依頼をしておくとよいでしょう。
査定にかかる期間は業者によって異なりますが、当日〜数日程度で完了する買取業者もあります。基本的に買取業者の公式サイトには査定にかかる期間が掲載されているため、査定を依頼する業者が決まった際には、査定にかかる期間も調べておくとよいでしょう。
売却先と売買契約を締結する
売却先を決めた後には、その業者と売買契約を結ぶ必要があります。
不動産の売買を行う際には、宅地建物取引業法によって「不動産売買契約書」の作成が義務付けられています。売買契約書には買取価格や引き渡し時期などの合意内容が記載されており、共有持分の売却時にも作成が必須です。
のちのトラブルを防止するためにも、共有持分を売却する際には、契約内容を十分に把握したうえで売買契約を成立させましょう。
なお、共有持分の売買契約の際には、さまざまな必要書類を用意する必要があります。状況によっては追加書類の提出が求められますが、下記のような書類が必要になるのが一般的です。
必要書類 | 概要 |
---|---|
登記済権利書 | 法務局から所有者に登記名義人に交付される書類。再発行できないため、紛失した場合には法務局に相談をする |
固定資産税納付通知書 | 固定資産税などが記載された書類。税務署から毎年4月上旬ごろに送付される。 |
境界確認書 | 隣地との土地の境界を証明できる書類。測量士に依頼をして作成してもらえる |
印鑑証明書 | 原則3か月以内に発行したものに限られる |
本人確認書類 | 運転免許証やマイナンバーカードといった身分を証明できる書類 |
住民票 | 役所で取得できる書類 |
共有持分の売却先を決めた際には、その業者にどのような書類が必要になるかを尋ねておくとよいでしょう。
決済を済ませて所有権移転登記を行う
共有持分の売買契約が成立した後は、契約内容に従って決済が行われます。売却先からの入金を確認でき次第、共有持分の所有権移転登記を行う必要があります。
所有権移転登記とは、共有持分の所有権を売主から買主に移すための手続きのことです。
共有持分を買取業者に売却する場合、その業者が主体となって所有権移転登記を行ってもらえるのが一般的です。しかし、ほかの共有者などに売却する場合には、基本的には共有持分の売り手が所有権移転登記を行わなければなりません。
所有権移転登記をするには専門的な知識も必要になるため、司法書士に相談しながら行うのがよいでしょう。
確定申告のために譲渡所得税を算出しておく
共有持分を売却する場合、譲渡所得税が発生する場合があります。譲渡所得税が発生した場合、原則的には売却の翌年2月16日〜3月15日までに確定申告をしなければなりません。
譲渡所得税の計算は個人でも行えますが、簡単に算出できるわけではなく、手順を踏んで算出していく必要があります。
譲渡所得税を算出する場合、まずは共有持分の売却によって得られた利益である「譲渡所得」の計算が必要です。譲渡所得の計算方法は以下のとおりです。
たとえば、「取得費1,500万円」「譲渡費用100万円」「売却金額2,000万円」の場合を想定すれば、「2,000万円ー(1,500万円+100万円)=400万円」と計算できます。なお、譲渡所得税は譲渡所得によって発生するため、売却によって利益が出なければ譲渡所得税はかかりません。
次に、譲渡所得に一定の税率をかけて、譲渡所得税を算出します。一定の税率は、不動産の所有期間によって下記のように変わります。
所有期間 | 所得税率 |
---|---|
5年超 | 15% |
5年以下 | 30% |
先ほどの条件の「譲渡所得400万円」であれば、所有期間が5年以下の場合は「400万円×30%=120万円」、所有期間が5年を超えていれば「400万円×15%=60万円」と算出します。
なお、不動産会社や買取業者に依頼をした場合、共有持分の売却によって必要な譲渡所得税や確定申告に関する手続きを相談できるケースもあります。共有持分の売却を業者に依頼する場合、譲渡所得税や確定申告についても相談してみるとよいでしょう。
共有持分を売却した場合に起こり得るトラブル
共有持分を売却する場合、下記のようなトラブルが起きる可能性があります。
- 相談せずに売却すると他の共有者との関係性が悪化する可能性がある
- 新たに共有者となった第三者から他の共有者が賃料を請求されるリスクがある
- 夫婦間で売却金額の分配によるトラブルが起きる可能性がある
トラブルを未然に防ぐためにも、共有持分を売却する場合には事前に起こり得るトラブルを把握したうえで対策を講じておくことが大切です。
ここからは、共有持分を売却した場合に起こり得るトラブルについて、それぞれ解説していきます。
相談せずに売却すると他の共有者との関係性が悪化する可能性がある
共有持分であれば単独で売却できるため、「他の共有者に知らせずに売却しよう」のように考えている人もいるかもしれません。しかし、関係性が悪化するリスクがあるため、共有持分を売却する際には、ほかの共有者に相談しておくことが大切です。
前述したように共有持分を売却すると、ほかの共有者は見ず知らずの人と不動産を共有することになります。相談せずに共有持分を売却してしまうと、共有者からすれば「知らない人が共有状態の不動産に出入りしている」と考えてトラブルが起きる可能性があるのです。
共有持分を売却する場合、可能であれば事前に共有者へ通知を出しておくようにしましょう。
新たに共有者となった第三者から他の共有者が賃料を請求されるリスクがある
共有者が共有名義の不動産を独占している場合、物件を使用していない共有者にはその人に対して賃料を請求する権利が認められます。
これは共有持分の買取先も同様であるため、不動産を独占している共有者からすれば「突然知らない人に賃料を請求された」という事態になる可能性もあるのです。
共有持分の買い手からすれば当然の権利であるため、話し合いで解決できない場合には裁判に発展してしまうケースも考えられます。
–>
夫婦間で売却金額の分配によるトラブルが起きる可能性がある
共有持分の売却を検討している人のなかには、「離婚の際に共有持分を売却しよう」のように考えている人もいるかもしれません。しかし、離婚の際に共有持分を売却すると、夫婦間で売却金額の分配によるトラブルが起きる可能性があるため注意してください。
離婚をする場合、基本的には不動産を含めた共有財産を夫婦で分配します。これを「財産分与」といい、原則的には夫婦で1/2ずつとなるように共有財産が分配されます。
たとえば、夫と妻で不動産を共有しており、それぞれの持分割合が「夫60%」「妻40%」というケースを想定します。「財産は1:1となるように分配する」という考えで基本的には財産が分配されるため、この場合であっても夫が差分の10%を妻に渡すのが一般的です。
しかし、「持分割合は自分のほうが多いから差分は払いたくない」のように、持分割合を多く持っている方が支払いを拒否する場合も考えられます。その際にはトラブルが起きてしまい、話し合いでは解決が難しく、裁判に発展してしまう可能性もあるのです。
まとめ
不動産全体の売却には共有者全員からの同意が必要ですが、共有持分であれば単独で自由に売却できます。とはいえ、これはあくまで民法で認められた権利の話であり、権利関係などが原因で共有持分を一般の人に売却するのは難しいのが実状です。
仲介で売却するのは困難と予測されるため、共有持分を売却する場合、基本的には専門の買取業者に依頼するのが得策です。専門の買取業者であれば、権利関係が複雑な共有持分であっても売却に期待できます。
また、専門の買取業者であればトラブルが起きている物件の買取に対するノウハウがあるのが一般的であるため、「共有者との関係性がよくない」「相続などでトラブルになっている」といった事情がある場合であれば専門業者に相談をしてみるのがよいでしょう。
なお、共有持分を売却する場合、ほかの共有者や買い手とトラブルが起きる可能性があります。「事前に共有者へ相談しておく」「信頼できる業者に売却する」など、トラブルを回避するための対策を講じたうえで共有持分を売却するようにしてみてください。
よくある質問
共有持分を売却すると共有不動産に住んでいる共有者は退去しなければならないのでしょうか?
共有持分を売却したからといって、現在その不動産に住んでいる人が退去することにはなりません。ただし、売却後に新たな共有者を含めて、共有不動産の活用方法について協議をして、その結果によっては退去が必要になるケースもあります。
売却以外に不動産の共有状態を解消する方法はありますか?
「他の共有者に共有持分を譲渡する」「共有持分を放棄する」という方法もあります。譲渡であれば誰に持分を渡すかを選べますが、放棄の場合には譲渡先を選べません。
共有持分の売却によってほかの共有者と関係が悪化するのが怖いです。このトラブルは避けられませんか?
一般的に、専門の買取業者であれば、共有持分の買取で依頼主が不利益になる事態を避けられるように対応してもらえます。また、基本的には、ほかの共有者と依頼主の双方が納得できるように交渉をしてもらえるため、買取業者に相談することを検討してみてください。
共有持分の売却には税金がかかるのでしょうか?
共有持分の売却によって利益が出る場合、その利益に対して譲渡所得税がかかります。なお、譲渡所得税が発生した場合は確定申告が必要になるため、共有持分を売却する際には買取業者などに譲渡所得税についても相談をしておくとよいでしょう。
トラブルを回避できるような買取業者に共有持分を売却したいです。どのような業者を選べばよいでしょうか?
業者のなかには悪質な業者も潜んでいる可能性があるため、信頼できる買取業者を選ぶのが得策です。「自身の状況を踏まえた対策を提案してくれる」「相談件数が多い」「士業と連携している」などを基準として買取業者を探してみるとよいでしょう。