共有物分割請求訴訟とは?流れ・期間・弁護士費用・訴訟以外の解決策まで解説

共有物分割請求訴訟とは、共有者同士の協議では共有状態を解消できない場合や、そもそも協議ができない場合に、裁判所へ共有物の分割を求める手続きです。
「共有名義の実家を売りたいのに、住んでいる兄弟が反対している」「自分はもう使っていないのに、何年話し合っても共有状態を解消できない」といった状況でも、共有物分割請求訴訟によって解決を目指すことができます。
判決まで進むと、裁判所は主に次の3つの方法から共有状態の解消を図ります。
共有物分割請求訴訟の大きな特徴は、共有者同士の意見がまとまらなくても、裁判所の判断によって共有状態の解消を目指せることです。
ただし、「訴訟を起こせば自分の希望どおりに解決できる」という手続きではありません。共有名義不動産をどのように分割するかは、審理したうえで裁判所が判断するためです。
例えば、自分は不動産全体を売却して現金化したくても、価格賠償によって他の共有者が不動産を取得する場合があります。反対に「今の家に住み続けたい」と希望していても、条件によっては競売が命じられる可能性があります。
このほか、次のような注意点もあります。
- 比較的シンプルな事案でも半年〜1年程度が一つの目安となり、争いが大きい場合は1年以上かかることがある
- 弁護士費用や裁判所へ納める費用、不動産鑑定費用などがかかる場合がある
- 競売を命じる判決が出た場合は、判決確定後に形式的競売の申立てや費用が別途必要になる
- 訴訟をきっかけに、親族や元配偶者など他の共有者との関係がさらに悪化する可能性がある
すぐに訴訟を検討するのではなく、「全体売却や持分売却など、訴訟以外の方法で目的を達成できないか」「自分だけ共有関係から抜けたいのか、不動産全体の共有状態を解消したいのか」などを整理し、「最終的に何を実現したいのか」まで考えて判断することが大切です。
この記事では、共有物分割請求訴訟に発展する可能性があるケースや訴訟を起こせる条件、判決による分割方法、訴訟を選ぶ判断基準、手続きの流れ、期間・費用などを、共有名義不動産の実務に携わってきたクランピーリアルエステートが実例も交えながら詳しく解説します。
共有物分割請求訴訟とは「協議で解決できない共有状態を裁判で解消する手続き」

共有物分割請求訴訟は、「共有者同士の協議だけでは共有状態を解消できない」、または「そもそも協議自体ができない」といった場合に、裁判所へ共有物の分割を求める手続きです。民法第258条に基づく手続きで、被告(訴訟を起こされた側)の住所地や不動産の所在地を管轄する裁判所に訴えを提起します。
(裁判による共有物の分割)
第二百五十八条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
一 共有物の現物を分割する方法
二 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法
e-Gov法令検索 民法第258条
訴訟と聞くと「どちらが正しいか決めるために行う」と捉えられがちですが、原告(訴訟を起こした側)・被告について、勝った・負けたを決める裁判ではありません。
あくまで客観的事実や原告・被告双方の主張などを基に、「どうしたら共有状態を公平に解消できるのか」を、裁判官が法的に判断するのが、共有物分割請求訴訟です。
途中で和解が成立せず、裁判による分割が認められる場合、裁判所は「土地を物理的に分ける」「一部の共有者が他の共有者の持分を取得し、その対価としてお金を支払う」といった判決を下します。
分割方法については、本記事の「共有物分割請求訴訟の判決は「現物分割・価格賠償・競売」の3パターン」の章で詳しく解説します。
裁判外の対応も含む「共有物分割請求」との違い

共有物分割請求訴訟は裁判所に提起する法的手続きである一方、他の共有者に共有状態の解消を直接求めるのが「共有物分割請求」です。
民法第256条にて、特約がある場合を除いて、各共有者はいつでも共有物の分割を請求できるとして共有物分割請求権が定められています。
(共有物の分割請求)
第二百五十六条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
e-Gov法令検索 民法第256条
名称に訴訟が付いていないことからわかるように、共有物分割請求は裁判外での請求も含んだ広い概念です。
民法に基づく請求なので、相手は原則として「共有状態を解消したくない」といった理由だけで分割を拒み続けることはできません。言葉だと難しく聞こえますが、要するに「共有状態を解消したいので、分割について全員で話し合いたい」と他の共有者に呼びかけるということです。
一方で、裁判のように誰かが判決を下すわけではないため、話し合いがまとまらず破談になるケースもあります。
例えば、兄弟で共有している実家を例にすると、弟が兄に「共有状態を解消したいので、分け方について話し合いたい」と求めることが共有物分割請求です。その協議がまとまらず、弟が裁判所に訴えを起こした場合が共有物分割請求訴訟にあたります。
■共有物分割調停について
共有物の分割については、離婚調停のように、裁判所の調停委員などを交えて話し合う「共有物分割調停」を利用することもできます。当事者だけでは協議が進まない場合に、調停委員などの第三者の仲介によって合意を目指す手続きで、成立すれば判決や裁判上の和解と同じ効力を持つ「調停調書」が作成されます。
しかし、実務では、共有物分割の調停が利用されることは少ないとされています。理由は次の通りです。
- 離婚などの一部家事事件のような「調停前置主義」ではないため、調停を挟まなくても訴訟を起こせる
- 調停も原則は話し合いがベースであるため、意見の対立が強い場合は解決に至らず、別途訴訟が必要になる可能性がある
そのため、まず共有者間で分割について協議し、解決が見込めない場合に共有物分割請求訴訟を検討するという流れが一般的です。
共有物分割請求訴訟でできること・できないこと
共有物分割請求訴訟で判断されるのは、主に「共有名義不動産を誰が取得し、どのように分けるか」という点です。分割方法だけでなく、それに伴う代償金の支払いや不動産の引渡し、登記手続きなども判決で命じることができます。
一方、共有状態の解消を求めずに、「特定の共有者を退去させたい」「過去に立て替えた費用を返してほしい」といった要求だけを扱う手続きではないので注意しましょう。
共有物分割請求訴訟で判断できることと、その手続きだけでは対応できないことを、以下にまとめました。
なお、過去の使用料や立替費用なども、法的な根拠があれば別の請求として併せて争ったり、和解の中でまとめて精算したりできる場合があります。
共有物分割を請求すれば、共有者間のお金の問題まですべて自動的に解決されるわけではない点を押さえておきましょう。
共有物分割請求訴訟の判決は「現物分割・価格賠償・競売」の3パターン
共有物分割請求訴訟で判決まで進んだ場合、裁判所は主に「現物分割」「価格賠償」「競売」の方法で共有状態の解消を図ります。
民法第258条では、まず現物分割と価格賠償が分割方法として規定されています。現物分割・価格賠償のいずれもできない場合、または現物分割によって共有物の価格が著しく減少するおそれがあり、価格賠償による分割もできない場合には、競売を命じることができるとされています。
◻︎自分が希望した分割方法になるとは限らないのは本当?
共有物分割請求訴訟では、「自分が不動産を取得したい」「競売して現金化したい」と主張しても、その方法が必ず採用されるわけではないので注意しましょう。
一方で、「共有状態を解消することや大まかな分割方法については共有者同士で意見が一致しているものの、具体的な条件で折り合いがつかない」といった場合でも、共有物分割請求訴訟を利用できます。この場合は原告・被告で分割の方向性が一致しているため、裁判所も基本的にはその分割方法を前提に審理を進めてくれると思われます。
とはいえ、判決では裁判所が不動産の性質や利用状況、価格、各共有者の希望や事情などを踏まえて分割方法を判断されます。共有者同士が希望していたとしても、その方法が必ず採用されるとは限りません。
訴訟を起こす前に「希望する方法以外の判決が出た場合に受け入れられるか」まで考えておくことが大切です。
現物分割|土地などを物理的に分ける

現物分割は、土地を分筆するなどして共有物を物理的に分ける方法です。
例えば、兄弟2人で100㎡の土地を1/2ずつ共有しており、一方は売却したい、もう一方は土地を使いたいと考えているとします。現物分割が可能であれば、土地を50㎡ずつに分筆し、それぞれが単独所有することで共有状態を解消できます。
ただし、すべての不動産を物理的に分けられるわけではありません。建物は構造上の理由から分割が難しいケースが多く、土地でも分筆後に接道義務を満たさなくなる、面積が狭くなり利用しにくくなる、インフラの配置上分割が難しいといった問題が生じることがあります。
また、物理的には分筆できても、分割によって土地の価値が著しく下がる場合には、現物分割が適さないと判断されることがあります。
価格賠償|1人が不動産を取得し、他の共有者へ代償金を払う

価格賠償とは、一部の共有者が不動産や他の共有者の持分を取得する代わりに、他の共有者へ金銭を支払う方法です。
代表的なのが「全面的価格賠償」です。例えば、1,000万円の価値がある不動産をAとBが1/2ずつ共有しており、Aが不動産全体を取得する場合、AがBへ持分1/2相当の500万円を支払うという考え方です。
全面的価格賠償が認められるかは、支払能力だけで決まるわけではありません。最高裁平成8年10月31日判決では、共有物の性質・形状、共有者の人数や持分割合、利用状況、共有者の希望などを総合的に考慮し、取得させることが相当であることに加え、適正な価格評価や支払能力など、共有者間の実質的な公平が害されないことが求められると示されています。
不動産を取得したい場合は、希望を伝えるだけでなく、他の共有者へ支払う代償金を準備できるか、不動産価格をどのように評価するかまで検討しておく必要があります。
また、現物分割をしたものの、それぞれが取得する部分の価値に差が生じる場合には、その差額を金銭で補う「一部価格賠償」が用いられることもあります。
競売|不動産を売却して代金を分ける

現物分割・価格賠償のいずれもできない場合、または現物分割によって共有物の価格が著しく下がるおそれがあり、価格賠償による分割もできない場合、裁判所は競売を命じることができます。
競売による分割では、不動産を売却し、売却代金を各共有者の持分などに応じて分けます。
ここで注意したいのは、競売を命じる判決が確定しただけで不動産が自動的に売却されるわけではないことです。判決などで競売を命じられた場合は、その確定判決等をもとに、原則として不動産所在地を管轄する地方裁判所へ「形式的競売」を申し立てます。
裁判所の案内では、形式的競売の申立てには手数料、民事執行予納金、登録免許税などが必要とされています。
なお、裁判中に共有者同士が和解し、不動産全体を任意売却(共有者全員の合意により、通常の不動産市場で買主を探して売却する方法)することで合意することも可能です。「競売による換価」と「全共有者の合意による任意売却」は別の方法として考えましょう。
共有物分割請求訴訟に発展する可能性があるケース
共有物分割請求訴訟を検討することになるのは、共有名義不動産の売却・取得・利用・分割方法について共有者同士で合意できず、協議でも解決できない場合や、協議そのものができない場合です。
その背景には、「使っていない財産を現金化したい」「不公平な負担を終わらせたい」など、それぞれの事情があります。
以下では、クランピーリアルエステートの過去の相談事例などを元に、共有物分割請求訴訟に発展する可能性があるケースを解説します。
- 不動産を誰が取得するか、利用を続けるかで意見が対立している
- 一部の共有者だけが住み続け他の共有者が希望する方法で不動産を現金化できない
- 持分を買い取る方向では合意しているが金額が折り合わない
- 売却には前向きでも相互不信から具体的な条件を決められない
- 離婚後も共有名義やローン負担が残り元配偶者との関係を整理できない
不動産を誰が取得するか、利用を続けるかで意見が対立している

共有者間で、共有名義不動産について居住、売却、代償金、建て替えなどのどれを行うか意見がまとまらず、対立してしまうケースはよくあるトラブルの1つです。売却や建て替えには共有者全員の同意が必要になるほか、「ここに住み続けたい」「思い出のある不動産を取り壊したくない」といった感情面での対立も存在するからです。
弊社の相談事例には、相続によって区分マンションの持分を取得したものの、現地に住んでいる共有者が売却に同意せず、双方が弁護士を立てても協議が平行線となったケース」があります。この事例では相談者様が「自分の持分だけでも整理したい」と希望したため、弊社が持分を買い取ることで解決しましたが、共有物分割請求訴訟も一度検討したとのことです。
「誰が不動産を取得するのか」「取得する共有者が他の共有者へいくら支払うのか」「取得による解決が難しければどのように分割するのか」などを踏まえ、共有状態の解消方法について、裁判所に判断を仰ぐことがあります。
一部の共有者だけが住み続け他の共有者が希望する方法で不動産を現金化できない

1人が建物に住み続けたいと考える一方で、別の共有者が売却によって現金化したいといった場合、共有状態を続けるかどうかで意見が対立する可能性があります。例えば、相続した実家に一方だけが住み続け、もう一方は一切使っていない場合などです。
住んでいる側には今の生活を維持したい事情があるため、現状維持を希望することがあります。
この場合、利用していない側には「自分も所有者なのに、不動産を使うことも、その価値を生活に役立てることもできない」という不満が生じることがあります。
しかし、共有名義不動産全体を第三者へ売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。また、居住している共有者に持分の買取を提案しても、資金を用意できなければ話が進みません。
買取業者などへ、自分の持分だけを売却する方法もあります。この方法なら自分は共有関係から離れられますが、共有状態そのものがなくなるわけではなく、今度は建物に住み続ける共有者と持分を取得した第三者との共有になるという問題が発生します。
そのため、「自分だけ共有関係から離れればよい」のではなく、現在の共有状態そのものに決着をつけたい場合には、共有物分割請求訴訟を検討することがあります。裁判を通じて、居住している共有者による取得や競売による換価などを含め、共有関係を最終的にどのように解消するか判断してもらうためです。
持分を買い取る方向では合意しているが金額が折り合わない

誰が持分を買い取るかについて合意できていても、買取価格の折り合いがつかず、訴訟に進むケースがあります。
例えば、不動産を利用している共有者が、利用していない共有者の持分を買い取る場合です。相手から提示された金額と、不動産会社の査定額などに大きな開きがあれば、売る側はその条件で手放してよいのか判断できません。
利用していない不動産の固定資産税や維持管理費を負担している場合は、早く共有関係から離れたいと考えます。その一方で、安い金額で手放すことにも納得できないと、話し合いが行き詰まることがあります。
不動産会社の査定結果などの資料を示しても合意できなければ、不動産の評価や代償金について裁判所の判断を求めることが選択肢になります。
売却には前向きでも、相互不信から具体的な条件を決められない

共有者全員が不動産の売却自体には前向きでも、売却価格や進め方などの条件で意見がまとまらず、共有状態を解消できないことがあります。
共有名義不動産を売却するには、売出価格や値下げの判断、不動産会社の選定、売却にかかる費用の負担など、共有者同士で決めることが少なくありません。
しかし、すでに共有者同士の関係が悪化している場合、「相手の提案した条件では自分が不利になるのではないか」「相手に任せて進めて大丈夫なのか」といった不信感から、売却そのものには賛成していても具体的な条件で合意できないことがあります。話し合いのたびに意見が対立すれば、いつまでも売却を完了できません。
こうした状況で当事者同士の協議による解決が難しく、共有関係をこれ以上続けたくない場合には、共有物分割請求訴訟によって共有状態そのものの解消を求めることが選択肢になります。
なお、上記のようなケースでは、裁判上の和解によって業者の選定、最低売却価格、各種費用の負担割合などを細かく決めるケースもあります。和解では柔軟に条件を決められるため、和解によって共有物分割請求訴訟が終結することも珍しくありません。
離婚後も共有名義やローン負担が残り、元配偶者との関係を整理できない

離婚後もマイホームの共有名義が残り、家を出た側が住宅ローンを負担し続けるなど、居住状況と経済的な負担の不均衡が問題になるケースがあります。
家を出た経緯などから話し合いを切り出せないまま返済を続けていると、自分の住居費や今後の生活にも影響します。元配偶者だけが住む家への支払いが続くことに、不公平さを感じる場合もあるでしょう。
実際に、離婚後に家を出た人が長期間ローンを支払い続け、共有関係の整理を求めた事例があります。この事例では、訴訟ではなく交渉によって不動産全体の売却に合意し、売却代金でローンを返済して解決しました。
一方、売却や持分の買取について協議しても合意できなければ、財産分与との関係を整理したうえで、共有物分割請求訴訟による共有解消を検討することになります。
ただし、共有物分割請求訴訟で不動産の共有名義を解消しても、住宅ローンの返済自体が終わるわけではありません。そのため、離婚後の共有名義不動産では、不動産の名義だけでなく、「誰が住宅ローンを返済することになっているのか」「ローンがいくら残っているのか」も確認し、共有名義と住宅ローンをそれぞれ整理する必要があります。
共有物分割請求訴訟を起こせる条件
共有者であれば、持分割合の大小にかかわらず共有物の分割を請求できるのが原則です。
ただし、裁判による分割を求めるには「協議が調わない」または「協議をすることができない」ことが前提となり、分割禁止の合意や遺産共有などの例外にも注意が必要です。
ここからは、共有物分割請求訴訟を起こせる以下の条件について解説します。
- 「協議がまとまらないこと」または「協議できないこと」が前提
- 共有者全員を訴訟の当事者にする
- 5年を超えない期間の分割禁止特が定められていない
- 遺産分割前の相続不動産ではない
「協議がまとまらないこと」または「協議できないこと」が前提
民法第258条では、共有者間で分割の協議がまとまらないとき、または協議をすることができないときに、裁判所へ共有物の分割を請求できると定めています。
そのため、「他の共有者が売却や分割に反対している」「希望する分割方法が対立している」「連絡をしても返答がない」といった事情がある場合に、訴訟の提起が認められる可能性があります。
訴訟の条件を満たすかどうかは、最終的には当事者双方の主張や証拠を踏まえて裁判所が判断します。共有物分割請求訴訟を提起する際には、以下のような裏付け資料を揃えておきましょう。
共有者全員を訴訟の当事者にする
共有物分割請求訴訟では、原則として共有者全員を当事者にして手続きを進める必要があります。
例えば、共有者の1人が訴訟を起こす場合は、基本的に自分以外の共有者全員を被告にします。
そのため、自分以外の共有者が複数いる場合には、当事者の確定や訴状の送達だけでも手続きが複雑になりやすくなります。
とくに注意したいのが、登記簿に記載されている名義人と、現在の共有者が必ずしも一致しているとは限らない点です。登記名義人がすでに亡くなっている場合には、戸籍などから相続人を確認しなければならないことがあります。
相続登記が終わっていない、共有者が亡くなっている、所在が分からない共有者がいるといった場合には、訴訟に入る前の権利関係の確認に時間がかかることもあります。
5年を超えない期間の分割禁止特が定められていない
民法第256条では、共有者は原則としていつでも共有物の分割を請求できる一方、「5年を超えない期間内は分割をしない」という「共有物分割禁止特約(不分割特約)」を結ぶことも認めています。この特約は、訴訟の提起においても有効です。
つまり、共有物分割禁止特約が有効に存在する場合は、原則として期間が満了しない限り、共有物分割請求および共有物分割請求訴訟ができなくなります。
分割禁止の契約は更新することもできますが、更新後の期間も更新時から5年を超えることはできません。
ただし、特約の締結や更新には共有者全員の同意が必要になるため、他の共有者が勝手に更新したせいで訴訟が起こせないという事態にはならないので安心してください。
遺産分割前の相続不動産ではない
遺産分割前の相続財産について、共同相続人の間で共有状態を解消したい場合は、原則として共有物分割請求訴訟ではなく遺産分割手続きで解決します。
まず遺産分割協議を行い、合意できなければ家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てます。調停が不成立になった場合は、遺産分割審判へ移行し、裁判所が分割方法を判断します。
ただし、遺産共有と通常共有が併存している場合については、民法第258条の2に特則があります。相続開始から10年を経過したときは、相続財産に属する共有持分について、一定の条件のもとで共有物分割を利用できる場合があります。
もっとも、当該共有物の持分について遺産分割の請求があり、相続人が裁判所から共有物分割請求があった旨の通知を受けた日から2か月以内に異議を申し出た場合には、この特則を利用できません。
そのため、「相続開始から10年が経過すれば必ず共有物分割請求訴訟を利用できる」と考えるのは適切ではありません。
相続不動産では、相続開始からの経過年数だけでなく、現在どのような共有関係になっているのかを確認したうえで、遺産分割と共有物分割のどちらで解決すべきかを判断する必要があります。
共有物分割請求訴訟のメリット・デメリット
共有物分割請求訴訟のメリットは、共有者同士で合意できなくても裁判所の判断によって共有状態の解消を図れることです。一方で、時間・費用がかかり、希望した分割方法になるとは限りません。
メリット|相手が合意しなくても最終的な解決を図れる
話し合いや交渉では解決できない場合でも、共有物分割請求訴訟なら裁判所の判断によって共有状態の解消を目指せます。
例えば、一方が売却を希望しているのに他の共有者が話し合いに応じない場合や、誰が不動産を取得するかで意見が対立している場合でも、訴訟で分割方法を判断してもらえます。
そのため、「他の共有者の同意が得られなくても、不動産全体の共有状態を最終的に解消したい」という人にとっては大きなメリットがあります。
また、民法第258条4項にある通り、分割に伴って必要となる代償金の支払いや不動産の引渡し、登記手続きについても判決で命じてもらえるため、共有状態を解消するために必要な処理をまとめて進められる場合があります。
デメリット|時間・費用がかかるうえに希望通りの結果になるとは限らない
共有物分割請求訴訟では、自分が希望する分割方法がそのまま認められるとは限りません。
「不動産を売却して現金化したい」と考えていても価格賠償になる場合があり、不動産を残したいと考えていても競売が命じられる可能性があります。また、弁護士費用や裁判所へ納める費用がかかり、不動産鑑定・控訴・形式的競売などが必要になれば負担はさらに増えます。
そのため、不動産全体の共有状態を解消することが最優先ではなく、「自分だけ早く共有から抜けたい」という目的なら、訴訟以外の方法も比較した方がよいでしょう。
また、判決が出れば必ずそこで手続きが終了するわけではありません。例えば、競売による分割が命じられた場合には、判決確定後に形式的競売を申し立てるなど追加の手続きが必要になることがあります。
さらに注意したいのは、他の共有者との関係性です。
実務上、訴訟以外での解決が難しいという状態になっていると、共有者間の関係性が悪化していることも珍しくありません。
そのため、共有物分割請求訴訟が判決まで進むことで、他の共有者との関係がさらに悪化する可能性があります。すべてのケースでそうなるとは限りませんが、可能であれば、訴訟になる前の話し合いの段階で解決できないかを模索することを推奨します。
共有物分割請求訴訟をするべきかの判断基準
共有物分割請求訴訟をするべきかは、「共有状態を解消したい」という理由だけでは判断できません。最終的に不動産全体を売りたいのか、自分が取得したいのか、自分だけ共有関係から抜けたいのかで、適した方法は変わります。
弊社に寄せられる相談では、同じ「共有状態を解消したい」という希望でも、相談者が実現したいことや他の共有者との関係によって検討すべき選択肢は異なります。
以下では、共有名義不動産の実務に携わってきた弊社が、共有物分割請求訴訟をするか否かの判断材料として、さまざまな判断基準や選択肢を解説します。
- 不動産全体を売却したい|まず全体売却の合意、難しければ訴訟を検討
- 自分が不動産を取得したい|価格賠償を見据えて資金と評価額を確認
- 自分だけ共有関係から抜けたい|持分売却なら訴訟せず離脱できる
- 訴訟・弁護士交渉・全体売却・持分売却を比較する
- クランピーリアルエステートの相談事例から見る「訴訟以外を選ぶケース」
- 持分放棄・共有者への売却・贈与も選択肢になる
弊社としては、共有物分割請求訴訟は「話し合いがまとまらない場合の最終手段」であると位置づけています。話し合いや他の方法で解決を見込めるなら、まずは訴訟よりもそちらを優先するのがよいと思います。
訴訟と他の解決方法を比べる前に、次の6点を整理しておくと判断しやすくなります。
- 不動産全体を売却したいのか、自分が取得したいのか、自分だけ共有から抜けたいのか
- 他の共有者に売却や持分買取の意思があるか
- 他の共有者に持分を買い取る資金力があるか
- 現在誰が不動産を使用しているか
- 固定資産税・修繕費などを誰が負担しているか
- 解決までにかけられる時間・費用と、共有者との関係を早く終わらせたい事情があるか
不動産全体を売却したい|まず全体売却の合意、難しければ訴訟を検討
共有名義不動産全体を売却したい場合、共有者全員が合意できるなら、まず全体売却を検討するのが基本です。
全体売却なら競売での売却と異なり、売却時期や売出価格、買主との条件などを共有者間で調整できます。一方、他の共有者が売却に反対し、今後も合意できる見込みが低い場合には、共有物分割請求訴訟によって共有状態そのものを解消することが選択肢になります。
ただし、訴訟を起こしても「不動産を全体売却するよう命じてもらえる」わけではありません。判決では現物分割・価格賠償・競売のいずれかになるため、「売却したい=訴訟をすれば希望通り売れる」と考えないことが重要です。
自分が不動産を取得したい|価格賠償を見据えて資金と評価額を確認
自分が不動産を取得して単独所有したい場合は、価格賠償を見据えて「不動産全体の価格」と「他の共有者へ支払う資金」を先に確認します。
例えば、持分1/2ずつの不動産を自分が取得する場合、適正な不動産価格を前提に他の共有者の持分相当額を支払えるかが重要になります。相手方と不動産価格の認識が大きく異なれば、査定や鑑定が争点になることもあります。
訴訟を始めてから資金を検討するのではなく、事前に不動産全体の査定を取り、資金計画まで確認しておくと、「価格賠償を現実的に目指せるか」を判断しやすくなります。
自分だけ共有関係から抜けたい|持分売却なら訴訟せず離脱できる
自分の目的が「共有名義不動産全体をどうするか」ではなく、「自分だけ共有関係から抜けたい」ということであれば、自己持分の売却も選択肢です。
自分の共有持分だけであれば、原則として他の共有者の同意を得ずに第三者へ売却できます。
ただし、共有持分は不動産全体を単独で使用・処分できる権利ではないため、通常の不動産全体を売却する場合より買い手が限られます。そのため、「不動産全体の価格×持分割合」と同額で売れるとは限りません。
共有物分割請求訴訟を経て価格賠償などで解決できれば、持分だけを売却する場合より多くの金銭を得られる可能性は確かにあります。
一方、希望する分割方法になるとは限らず、解決までの時間や訴訟費用、弁護士へ依頼する場合の費用も考慮する必要があるでしょう。
訴訟・弁護士交渉・全体売却・持分売却を比較する
どの方法が有利かは、価格だけでは決まりません。他の共有者の同意、解決までの時間、費用、最終的に得たい結果をセットで比較します。
クランピーリアルエステートの相談事例から見る「訴訟以外を選ぶケース」
持分売却が適しているかは、「訴訟ができるか」ではなく、相談者が何を実現したいかで判断する必要があります。以下では、クランピーリアルエステートの事例を基に、訴訟するか否かの判断の流れの例を紹介します。
兄弟2人で相続した不動産について、当初は全体を売却する方向で進んでいたものの、契約直前に兄が反対し、売却できなくなった事例です。ご相談者様の希望は「何としても不動産全体を売却すること」ではなく、「自分の持分だけでも手放して共有関係から抜けること」でした。そのため、共有物分割請求訴訟で全体の分割を求めるのではなく、当社がご相談者様の持分を買い取ることで共有関係から離脱しています。
このように、他の共有者が売却に反対していても、目的が「自分だけ共有から抜けること」であれば、訴訟以外で目的を達成できる場合があります。
離婚後も元夫が共有マンションに居住し続け、全体売却の話し合いが進まない状態が続いていた事例です。ご相談者様は「共有状態を解消して元夫との関係を断ち切りたい」と希望していたため、当社がご相談者様の持分を買い取ることで解決に至りました。
この事例でも、判断の中心は「共有名義不動産全体をどう処分するか」より、「自分が共有関係から離脱すること」でした。
持分放棄・共有者への売却・贈与も選択肢になる
訴訟以外には、自分の共有持分を他の共有者へ売却する、贈与する、持分を放棄するといった方法もあります。
他の共有者へ持分を売却する方法は、相手に購入意思と資金力があれば、共有関係を解消しながら現金化できます。一方、関係性が悪い場合や相手が資金を用意できない場合は交渉が進みません。
持分の贈与は無償で譲る方法ですが、受贈者の合意が必要で、贈与税が発生する可能性があります。
一方で、持分放棄自体は他の共有者の同意がなくても可能です。しかし、持分を放棄した後の持分移転登記については他の共有者と共同申請になるため、登記手続き時に結局は他の共有者と協力しなければならないので注意しましょう。
また、持分放棄によって持分を取得した他の共有者には、贈与税が発生する場合があります。
■訴訟前に「不動産全体の査定額」と「自己持分の売却額」を両方確認すると判断しやすい
訴訟と持分売却で迷う場合は、「不動産全体を売却・取得する場合の価値」と「今、自分の持分だけを売却した場合の査定額」を分けて確認してください。
不動産全体の価格が高く、全体売却や価格賠償で大きな手取りが見込めるのであれば、時間と費用をかけて交渉・訴訟を進める経済的な意味がある場合があります。
一方、共有者との関係を早く終わらせたい、訴訟費用や長期化を避けたいという事情が強い場合は、持分だけを売却した方が目的に近いこともあります。
クランピーリアルエステートでは共有持分のみの査定にも対応しています。査定額は訴訟の結果や価格賠償額を保証するものではありませんが、訴訟に進むか、持分を売却して共有から抜けるかを比較するための材料として利用できます。
共有物分割請求訴訟の流れ|協議から判決後の共有解消まで
共有物分割請求訴訟を起こしたからといって、すぐに裁判所が分割方法を決めるわけではありません。双方の主張や不動産の状況・価格などを確認しながら審理が進み、途中で和解する場合もあれば、判決によって分割方法が決まる場合もあります。
また、和解や判決で解決方法が決まった後も、内容に応じて登記や代償金の支払い、形式的競売などの手続きが必要です。
そのため、共有物分割請求訴訟は「判決を得るまで」ではなく、実際に共有状態が解消されるまでの流れを把握しておきましょう。
- 共有者同士で共有物の分割を協議する
- 訴訟で何を実現したいか、希望する分割方法を整理する
- 必要書類をそろえて管轄裁判所へ提訴する
- 他の共有者へ訴状が送達され、被告が答弁する
- 分割方法・不動産価格などを審理する
- 和解または判決で解決内容が決まり、判決に不服があれば控訴する
- 和解成立後または判決確定後に、登記・代償金支払・形式的競売などを行う
1.共有者同士で共有物の分割を協議する
まず、話し合いができる状況であれば、共有者間で共有状態をどのように解消するか協議します。
協議は必ずしも対面で行う必要はなく、電話、メール、Web会議、郵便などで行えます。話し合いの経緯を後から確認できるよう、メールやLINE、内容証明郵便など記録が残る方法を利用しておくとよいでしょう。
なお、他の共有者が協議を拒否している、所在が分からないなど協議ができない事情がある場合は、前述の通り共有物分割請求訴訟を起こすことができます。
2.訴訟で何を実現したいか、希望する分割方法を整理する
訴訟を検討する段階では、「不動産全体を売却したい」「自分が不動産を取得したい」「自分の持分だけ手放して共有関係から抜けたい」など、最終目的を整理します。
例えば、自分が不動産を取得したいなら価格賠償を見据えて資金を準備する必要があります。一方、自分だけ共有から抜けたいのであれば、訴訟より自分の持分を売却するほうが目的に直接つながるケースもあります。
弁護士へ依頼する場合は、この段階で希望や不動産の状況を伝え、訴訟だけでなく交渉・調停・和解の可能性も含めて方針を整理するとよいでしょう。
3.必要書類をそろえて管轄裁判所へ提訴する
方針が決まったら、訴状や対象不動産に関する資料などを準備して、管轄裁判所へ訴えを提起します。
共有物分割請求訴訟で準備する主な書類は、以下のとおりです。
ただし、すべてのケースで上記の書類を一律に提出するわけではありません。
例えば、土地を分ける現物分割を希望する場合には公図や地積測量図が重要になりますが、1人が不動産を取得する価格賠償では、不動産価格を確認するための資料が重要になります。
実際に必要となる書類は、不動産の種類、共有者の人数、希望する分割方法、争点などによって異なるため、提出前に弁護士や管轄裁判所へ確認してください。
また、「共有物分割請求訴訟は必ず地方裁判所へ出す」とは限りません。原則として訴額が140万円以下なら簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所が管轄します。
共有物分割訴訟は不動産に関する訴訟にあたるため、訴額が140万円以下でも地方裁判所へ提起できます。被告の住所地や不動産の所在地なども含め、どの裁判所へ提訴するのか確認しましょう。
なお、2026年5月21日から、弁護士に依頼せず本人が訴訟を行う場合も、裁判所のシステムを利用してオンラインで訴えを提起できるようになりました。
オンラインで手続きする場合と書面で提出する場合では、書類の提出方法や利用できる手続きが異なるため、利用する方法に応じて確認してください。
4.他の共有者へ訴状が送達され、被告が答弁する
裁判所で訴状が受理されると、被告となる他の共有者へ訴状などが送達され、期日が指定されます。
被告は、原告の主張に対する認否や自分が希望する分割方法などを答弁書等で示します。
裁判所から書類が届いたにもかかわらず何も対応しないと、自分の反論や希望を十分に伝えられないまま手続きが進むおそれがあります。
仮に自分が被告になった場合は、訴状の内容と提出期限・期日を確認し、放置しないことが重要です。
5.分割方法・不動産価格などを審理する
訴訟では、双方が希望する分割方法やその理由、不動産の利用状況、価格などについて主張・立証します。
価格賠償が争点になる場合などには、不動産業者の査定資料や不動産鑑定士の鑑定評価が検討されることがあります。
また、訴訟を提起したからといって必ず判決まで争う必要はありません。裁判の途中で共有者同士が合意できれば、裁判上の和解によって解決できます。
6.和解または判決で解決内容が決まる
当事者同士で合意できれば和解によって解決し、和解が成立しなければ裁判所が判決で分割方法を判断します。
裁判上の和解では、合意した内容が和解調書に記載されます。和解調書には確定判決と同じ効力があるため、判決と同じく成立した内容に沿ってその後の手続きを進めることが可能です。
判決に不服がある場合は、判決の送達を受けた日から2週間以内に、第一審の判決をした裁判所へ控訴状を提出します。控訴後は、上級裁判所で審理されます。
7.和解成立後または判決確定後に登記・代償金支払・形式的競売などを行う
和解が成立したり判決が確定したりしても、登記や代償金の支払い、競売まで自動的にすべて完了するわけではありません。解決内容に応じて、その後の手続きが必要です。
現物分割なら必要に応じて分筆や所有権登記、価格賠償なら代償金の支払いや登記を進めます。競売を命じる判決が確定した場合は、その確定判決等をもとに形式的競売を申し立てます。
共有物分割請求訴訟の「流れ」を考えるときは、判決までではなく、実際に共有状態の解消が完了するところまでを見ておきましょう。
共有物分割請求訴訟にかかる期間の目安
共有物分割請求訴訟は、比較的シンプルな事案であれば半年〜1年程度が一つの実務上の目安です。ただし、不動産価格や分割方法で争いが大きい場合、鑑定や控訴が必要な場合は1年以上かかり、2年以上に及ぶケースもあります。
この期間は裁判所が公表している「共有物分割請求訴訟の平均期間」ではありません。共有物分割を扱う複数の法律事務所が公開している実務上の目安を整理したものです。
※上記は実務上の目安であり、個別の訴訟期間を保証するものではありません。
判決・和解までの期間は争点によって変わる
共有物分割請求訴訟では、「どの方法で分けるか」「不動産をいくらと評価するか」といった点が、審理期間を左右する主な争点になります。
例えば、共有者全員が共有解消自体には異論がなく、価格や分割方法についても早い段階で折り合えれば、裁判上の和解によって判決を待たずに解決できる可能性があります。
一方、「自分が取得したい」「相手には取得させたくない」と分割方法が強く対立している場合や、不動産価格について双方の主張に大きな差がある場合は、審理が長くなりやすいです。
判決後に共有状態が解消するまで時間がかかる場合もある
期間を考えるときは、「判決が出るまで」と「代償金の受領や登記、競売などの手続きが完了するまで」を分けて考える必要があります。
価格賠償なら代償金の支払いや所有権移転登記などが必要です。競売を命じる判決の場合は、判決確定後に形式的競売を申し立て、不動産の売却・代金の配当まで進めます。
そのため、「判決が出た=その日に支払いや登記などもすべて完了する」というわけではありません。
長期化しやすいケース
次のような事情があると、訴訟から共有解消までの期間が長くなりやすくなります。
- 共有者が多く、当事者の確定や主張の整理に時間がかかる
- 不動産価格について争いがある
- 不動産鑑定が必要になる
- 誰が不動産を取得するかなど、希望する分割方法が大きく対立している
- 相続登記未了、共有者の死亡など権利関係が複雑
- 第一審判決に不服があり控訴する
訴訟を選ぶか迷っている場合は、期間だけを見るのではなく、長期化しても不動産全体の共有状態を解消したいのか、それとも自分だけ早く共有から離脱したいのかまで整理しておくと判断しやすくなります。
共有物分割請求訴訟にかかる弁護士費用・訴訟費用・鑑定費用
共有物分割請求訴訟にかかる費用は、「弁護士費用」「裁判所へ納める費用」「必要に応じた不動産鑑定費用」「判決後の手続き費用」に分けて考えると分かりやすいです。
なお、かかる費用は訴訟内容などによって変わります。とくに、弁護士費用は一律ではなく、法律事務所や解決方法によって大きく異なります。
そのため、「共有物分割請求訴訟の弁護士費用は40〜60万円程度」など、1つの金額だけで費用総額の相場を判断するのは適切ではありません。基本的には、依頼予定の弁護士事務所に直接見積もりしてもらうことを推奨します。
■弁護士への依頼の判断について
共有物分割請求訴訟は、弁護士へ依頼しなければ提起できない手続きではありません。
ただし、共有者が多い、相続関係が複雑、価格賠償を希望している、不動産価格が大きな争点になっている、訴えられた側でどのように主張すべきか分からない、といった場合は自分だけで進める負担が大きくなります。
弁護士へ相談する際は、不動産の評価額・持分割合・希望する分割方法・他の共有者との対立点を伝えたうえで、訴訟中だけでなく、鑑定や控訴、判決後の手続きまで含めてどのような費用が発生する可能性があるか確認しましょう。
弁護士費用|相談料・着手金・成功報酬・日当・実費
弁護士費用を確認するときは、着手金だけでなく、解決時の成功報酬や期日日当まで含めて比較してください。
共有物分割請求では、成功報酬を「経済的利益」の何%と定める法律事務所もあります。しかし、何を経済的利益として計算するかは料金体系によって異なるため、パーセンテージだけを比較しても総額は判断できません。
複数の法律事務所へ相談する場合は、「着手時にいくら必要か」「成功報酬は何を基準に計算するか」「期日日当・控訴・追加請求がある場合はいくらか」まで確認すると比較しやすくなります。
裁判所へ納める費用|訴額に応じて訴え提起手数料が決まる
訴訟を提起するときは、弁護士費用とは別に、訴訟の目的の価額(訴額)に応じた申立手数料を裁判所へ納めます。
共有物分割請求訴訟では、実務上、分割前の不動産について原告が持つ共有持分の価額の3分の1を基礎に訴額を算定します。土地については、固定資産評価額に2分の1を乗じた額を基準とする取扱いがあります。
例えば、固定資産評価額3,000万円の土地をA・Bが1/2ずつ共有しており、Aが原告として共有物分割請求訴訟を提起する場合、訴額は次のように計算します。
① 土地の評価額を算定する
3,000万円 × 1/2 = 1,500万円② 原告Aの共有持分に相当する価額を算定する
1,500万円 × 1/2 = 750万円
③ 共有物分割請求訴訟の訴額を算定する
750万円 × 1/3 = 250万円
訴額:250万円
土地の場合は、次の計算式でも求められます。
2026年5月21日以降に提起する新法適用の民事訴訟で、訴額が250万円、被告が1人の場合、裁判所の手数料早見表では「260万円まで」の欄を使用します。
参考:裁判所「手数料額早見表」
2026年5月21日以降に提起する新法適用事件では、従来の訴え提起手数料に加えて、一定額の郵便費用相当額を納付します。
郵便費用相当額は、被告1人の場合、書面申立てでは2,500円、電子申立てでは1,400円で、被告が1人増えるごとに2,000円が加算されます。
上記は計算方法を理解するための一例です。土地・建物の構成、原告の人数、持分割合などによって訴額は変わるため、実際に提訴するときは管轄裁判所や弁護士へ確認してください。
不動産鑑定費用|価格が争点になる場合に発生することがある
共有物分割請求訴訟では、必ずしも不動産鑑定士による鑑定が必要になるわけではありません。
不動産価格について当事者間で大きな争いがなく、不動産業者の査定資料などを基に協議・和解できる場合もあります。一方、価格賠償を希望する共有者と他の共有者で不動産価格の認識が大きく異なる場合などは、鑑定が必要になることがあります。
鑑定費用は不動産の種類・規模・評価の難易度などによって変わるため、「20〜30万円」などと固定的に見込むのではなく、実際に鑑定が必要になった段階で確認しましょう。
競売になった場合は形式的競売の費用も別途かかる
競売を命じる判決が確定した場合は、訴訟とは別に形式的競売を申し立てるための費用が必要です。
裁判所の案内では、形式的競売の申立てには申立手数料4,000円のほか、民事執行予納金、差押登記のための登録免許税などが必要とされています。とくに予納金は裁判所や物件によって異なります。
共有物分割請求訴訟の費用を考えるときは、「判決を得るまでの費用」だけでなく、「判決内容を実行して共有状態を解消するまでの費用」も確認する必要があります。
共有物分割請求訴訟を起こされたら無視せず、希望する分割方法を主張する
裁判所から自分を被告とした共有物分割請求訴訟の訴状が届いた場合は、放置せず内容を確認してください。
何も対応しないと、自分の反論や希望する分割方法を十分に伝えられないまま手続きが進むおそれがあります。
まず訴状・証拠・期日を確認する
訴状が届いたら、まず次の点を確認します。
- 原告が何を求めているか
- 原告が希望している分割方法
- 不動産の評価額についてどのような主張をしているか
- 答弁書等の提出期限
- 指定された期日
- 原告が提出した登記事項証明書や査定書などの証拠の内容
原告の主張に納得できない点があれば、答弁書等で自分の考えを示します。
不動産を残したいなら価格賠償を含め具体的な解決案を検討する
「今後もこの家に住みたい」「不動産を手放したくない」と考えている場合は、その希望を伝えるだけでなく、価格賠償によって他の共有者の持分を取得できるか検討します。
そのためには、不動産の適正な価格を把握し、他の共有者へ支払う代償金を準備できるか確認する必要があります。
相手方と不動産価格について意見が大きく異なる場合は、不動産査定や鑑定が必要になるかも検討しましょう。
原告側の希望に納得できない場合も代替案を示す
共有物分割請求訴訟では、原告が希望する分割方法がそのまま認められるわけではありません。
例えば、原告が競売を希望していても、自分が価格賠償による取得を希望するのであれば、その理由や資金を準備できることなどを具体的に主張することが考えられます。
また、裁判の途中でも和解は可能です。全共有者が合意できれば、競売ではなく任意売却する、一方が他方の持分を買い取るなど、判決より柔軟な方法で解決できる余地があります。
共有物分割請求そのものを拒否し続ければ共有状態を維持できるとは限らない
共有者には原則として共有物の分割を請求する権利があります。そのため、他の共有者から分割を求められたときに、単に「共有を続けたい」と拒否し続けるだけで共有状態を維持できるとは限りません。
不動産を残したいのであれば、価格賠償によって自分が取得するなど、共有状態を解消しながら希望を実現できる方法を具体的に考える必要があります。
ただし、分割禁止特約や遺産共有など、例外的な事情がある場合は別途確認してください。
共有物分割請求訴訟に関するよくある質問
持分割合が1%でも共有物分割請求訴訟を起こせますか?
持分割合が1%でも、共有者であれば共有物分割請求訴訟を起こせるのが原則です。民法第256条は、分割を請求できる持分割合の下限を定めていません。
ただし、協議がまとまらない、または協議できないといった訴訟の条件を満たす必要があります。また、持分割合にかかわらず請求できることと、希望する分割方法が認められることは別です。裁判所は、不動産の性質や持分割合、利用状況などを踏まえて分割方法を判断します。
共有物分割請求訴訟に時効はありますか?
共有物分割請求権は、共有関係が続く限り、長期間行使しなかったことだけで消滅時効にかかるものではありません。共有者であれば、民法第256条に基づき、原則としていつでも分割を請求できます。
ただし、時効とは別に、有効な分割禁止特約がある場合や、遺産分割手続きで解決すべき場合などは、共有物分割請求訴訟による解決が制限されることがあります。
共有者が行方不明でも共有状態を解消できますか?
共有者が行方不明でも、必要な所在調査や裁判所の手続きを経て、共有状態を解消できる可能性があります。
共有物分割請求訴訟のほか、一定の条件を満たせば、裁判所の手続きを利用して所在等不明共有者の持分を取得する制度や、他の共有者全員が同じ第三者へそれぞれの持分全部を譲渡することを前提に、所在等不明共有者の持分も譲渡する権限を得る制度を利用できる場合があります。
ただし、単に連絡に返事がないだけでは、所在不明とは限りません。所在調査の結果や遺産分割の状況、他の共有者の意向などによって利用できる制度が異なるため、弁護士へ事情を伝えて確認してください。
なお、所在等不明共有者の持分が遺産分割前の相続財産に属する場合は、原則として相続開始から10年を経過するまでは、これらの制度を利用できません。
共有物分割請求訴訟の途中でも自分の持分を売却できますか?
訴訟中でも、自分の共有持分は原則として他の共有者の同意なく売却できます。共有物分割請求訴訟が始まったことだけで、持分の売却が禁止されるわけではありません。
ただし、持分を売却しただけで、自動的に訴訟の当事者から外れるわけではない点に注意が必要です。買主への訴訟の引継ぎや、売主が訴訟から脱退するための手続きは、別途確認する必要があります。
売却を検討する際は、買主に訴訟中であることを伝え、弁護士にも相談したうえで、売却後の訴訟対応まで整理しておきましょう。
まとめ
共有物分割請求訴訟は、共有者間の協議で解決できない、または協議ができない共有状態を、裁判所の判断によって解消するための手段です。
判決では、現物分割・価格賠償・競売の方法が検討されますが、自分が希望する分割方法が必ず採用されるわけではありません。また、弁護士費用や裁判所へ納める費用などがかかり、鑑定や控訴、判決後の形式的競売まで必要になれば、時間と費用の負担はさらに大きくなります。
そのため、訴訟を起こす前に「共有名義不動産全体を売却したいのか」「自分が取得したいのか」「自分だけ共有関係から抜けたいのか」を明確化してください。
不動産全体を売却・取得したいのであれば、共有者間の協議や弁護士を介した交渉、共有物分割請求訴訟を検討することになります。一方、自分だけ共有関係から離脱したいのであれば、他の共有者の同意を得ずに自己持分を売却する方法もあります。
クランピーリアルエステートでは、相続や離婚などをきっかけに共有状態となり、「他の共有者が売却に同意してくれない」「話し合いを続けたくない」といった共有持分の相談・買取に対応しています。
訴訟と持分売却のどちらを選ぶか迷う場合は、まず不動産全体の価値と、自分の持分だけを売却した場合の査定額を確認し、時間・費用・手取り・共有者との関係性を含めて比較してみてください。
