共有物分割請求訴訟をわかりやすく解説!費用や手順についても説明

共有不動産を所有しているなかで、他の共有者と意見が合わないなどのトラブルを抱え、共有状態を解消したいと考える方もいるのではないでしょうか。
共有状態を解消する方法の1つとして、「共有物分割請求訴訟」があります。共有物分割請求訴訟とは、裁判所を通じて共有状態を解消するための訴訟です。
「共有者同士で話し合っても結論が出ない」「そもそも話し合いに応じてもらえない」といった場合でも、訴訟であれば、裁判所が不動産の性質や共有者の事情を踏まえたうえで法的に分割方法を判断してくれます。そのため、当事者間の話し合いだけでは解消できない共有状態についても、判決や和解によって整理できる可能性があります。
分割方法は、「現物分割」「換価分割(競売分割)」「価格賠償(代償分割)」の3種類です。個々の状況に応じて裁判所が適切と判断する方法が選ばれます。
| 分割方法 | 内容 |
|---|---|
| 現物分割 | 共有物を物理的に分割する |
| 換価分割(競売分割) | 共有物を売却し、売却代金を共有者で分ける |
| 価格賠償(代償分割) | 共有者の一部が共有物を取得し、他の共有者へ金銭を支払う |
ただし、分割方法によっては、不動産を手放すことになったり、他の共有者へ金銭を支払う必要が生じたりします。判決になれば裁判所の判断に従う必要があり、和解する場合も合意した内容に沿って解決を進めることになります。
判決や和解によって解決するまでには、おおよそ半年~1年以上かかるのが一般的です。争点が多い場合や控訴審にもつれ込んだ場合には、2年以上かかるケースも実務上珍しくありません。
また、弁護士費用などを含めて50万~150万円程度の費用がかかる可能性があるうえに、解消後も他の共有者との軋轢が残るリスクにも注意する必要があります。
共有物分割請求訴訟は、あくまで最終手段と認識しておくことが大切です。メリットとデメリットの両方を理解したうえで、訴訟を提起するかを慎重に判断しましょう。
納得のいく解決を目指すためにも、共有物分割請求訴訟の経験が豊富な弁護士に相談しながら、裁判を進めることをおすすめします。
この記事では、共有物分割請求訴訟が行われる事例や訴訟の流れ、費用などについて、共有名義関係の実務に長年携わってきた弊社が、実例を交えながら詳しく解説します。
目次
共有物分割請求訴訟は裁判所を通じて共有状態を解消するための訴訟
共有物分割請求訴訟は、共有者同士の協議で共有状態を解消できない場合に、裁判所に分割方法の判断を求める手続きです。
共有物分割請求訴訟は、民法第258条で定められています。
(裁判による共有物の分割)
第二百五十八条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
一 共有物の現物を分割する方法
二 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法
e-Gov法令検索 民法第258条
不動産が共有状態のままでは、管理や活用において意見の相違が起きやすく、弊社にも「共有者間でトラブルになって困っている」といった相談がよく寄せられます。
たとえば、固定資産税や修繕費などの費用負担をめぐって意見が食い違うケースや、一部の共有者が無断で不動産を占有してしまうケースがあります。また、大規模な改修や不動産全体の売却などは1人の判断で行うことが法律上認められておらず、共有者全員で話し合って同意を得なければなりません。
そのため、話し合いが進まない場合や、共有状態を維持することが困難な状況に陥った場合、共有物分割請求訴訟によって裁判所に解消を求めることになります。
なお、ここでいう話し合いや協議の前提になるのが、民法第256条における「共有物分割請求」です。民法第256条では、以下のように「共有者はいつでも共有物の分割を請求することができる」と定められています。
(共有物の分割請求)
第二百五十六条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
引用元: 民法 第二百五十六条(共有物の分割請求)|e-Gov
共有物分割請求は、共有者が他の共有者に対して共有物の分割を求める権利であり、この段階で裁判所が話し合いに入るわけではありません。ただし、共有物分割請求をした場合、他の共有者は「共有状態を解消したい」という請求そのものを、原則として拒否できません。
他の共有者がそれでも請求に応じない場合や、話し合いでも決着が付かない場合に、共有物分割請求訴訟へ移行できるという流れです。
<2023年施行の民法改正で裁判による共有物分割のルールが整理された>
2023年4月1日に施行された改正民法により、裁判による共有物分割のルールが整理されました。
改正後の民法第258条では、共有者間で協議がまとまらない場合に加えて、協議をすることができない場合にも、裁判所へ共有物の分割を請求できることが明文化されています。
また、分割方法についても、現物分割、価格賠償、競売による分割の位置づけが条文上整理されています。
共有物分割請求訴訟に発展しやすいケース
共有物分割訴訟は、基本的に利益を得るためというよりも、「共有者とのトラブルを解消すること」を目的に提起します。
共有状態にまつわるトラブルは、不動産に関する権利や親族との実務・感情の両面での対立などが絡んで複雑化するケースが珍しくありません。そのため、時間や費用をかけてでも共有状態を続けるデメリットから解放されるほうが、今後の生活や人間関係によい影響を与えるケースがあるのです。
共有物分割請求訴訟に発展しやすいケースとしては、具体的に下記の4つが挙げられます。

ここからは、上記のケースについてそれぞれ詳しく解説していきます。
共有物分割協議に他の共有者が応じてくれない
共有物の分割にあたっては、まず当事者同士の協議による解決が基本です。
しかし、他の共有者が話し合いに応じない、あるいは連絡が取れないという状況では、協議による共有状態の解消が困難になります。
そのため、共有物の分割に他の共有者が応じてくれない場合には、最終的に共有物分割請求訴訟に発展することがあります。
共有物分割請求訴訟では和解が成立した場合を除き、裁判所が共有物の分割方法を決めます。裁判所の判決には法的拘束力があるため、共有者の同意が得られていない場合でも、裁判所が決めた方法に従って共有状態を解消しなければなりません。
話し合いに応じてくれない共有者がいる場合でも、判決が確定すれば、その内容に沿って共有状態の解消を進めることになります。
共有物分割協議で意見がまとまらない
共有物の分割に関する協議では、各共有者の立場や考え方の違いから、意見がまとまらない場合も少なくありません。協議が平行線の状態が続くと、共有状態を少しでも早く解消するために共有物分割請求訴訟へと進むケースがあります。
共有物分割請求訴訟では最終的に裁判所が分割方法を決定するため、意見がまとまらない状態でも、判決が確定すれば、その内容に沿って共有状態の解消を進めることになります。
なお、訴訟の途中で共有者同士の話し合いによって和解が成立した場合には、その合意内容をもとに共有状態を整理することも可能です。
不動産を占拠する共有者を追い出したい
不動産が共有状態の場合、各共有者は、持分に応じて不動産全体を使用する権利を有しているため、原則として不動産を占拠している共有者を追い出せません。
共有者が不動産を明け渡すことを拒否している場合は、共有物分割請求訴訟に発展するケースがあります。共有物分割請求訴訟を起こせば、不動産を単独で所有することを主張できるためです。
なお、不動産の単独所有を求める主張が裁判所に認められた場合、占拠する共有者に対して明け渡し請求が可能です。その結果、不動産を占拠する共有者を追い出せるだけでなく、不動産を自身の判断で自由に活用できるようになります。
とはいえ、共有物分割請求訴訟は占有している共有者を直接退去させるための訴訟ではなく、共有状態の解消を求める手続きです。最初から必ず占有者を追い出せるわけではなく、あくまで判決や和解の内容次第であるという点には注意が必要です。
不動産を現金化したいが他の共有者から同意が得られない
共有不動産を売却して現金化したいと考えていても、他の共有者が同意しない場合は売却することができません。前述したとおり、共有不動産を売却するためには、共有者全員の同意が必要だからです。
「どうしても不動産を現金化したいが同意を得られない」という状況になった場合、共有物分割請求訴訟に発展することがあります。
判決により換価分割が認められた場合には、不動産全体が競売にかけられ、共有者全員の意思にかかわらず現金化ができるためです。不動産を売却して得られた現金は、各共有者の持分割合に応じて配分されます。
ただし、競売での落札相場は市場価格の5~7割程度なので、裁判の費用や手間がかかる割に手元に残るお金が多くはないというデメリットがあります。
自己持分のみなら他の共有者の同意を得なくても単独で売却できるため、現金化を目的としているのであれば、自己の共有持分を売却することも検討してみましょう。
共有物分割請求訴訟は「相続」と「離婚」が原因のトラブルから発展しやすい
共有物分割請求訴訟が行われるのは、主に「複数人で相続した不動産を分割するケース」と「夫婦で購入した不動産を離婚で分割するケース」の2つです。弊社の買取事例で紹介している案件でも、共有状態におけるトラブルの原因の多くが、相続や離婚であることがわかります。
| 共有物分割請求訴訟が行われる2つの例 | 概要 |
|---|---|
| 複数で相続し共有名義となっている不動産の分割 | 共有者の誰かが不動産に住み続ける場合の費用負担や、処分方法に関する意見対立が大きくこじれてしまうと、共有物分割請求訴訟に発展する場合がある |
| 夫婦で購入した不動産の離婚による分割 | 離婚した後のマイホームの処分をどのようにするか、共同ローンで購入した場合の名義や残債の対応についてどうするかなどについて、夫婦が共有物分割請求訴訟で争う場合がある |
ここからは弊社の買取事例などを参考に、共有物分割請求訴訟に発展しやすい具体的な例を見ていきましょう。
複数で相続し共有名義となっている不動産の分割
誰かが亡くなった後、遺産分割協議で不動産を誰が取得するか決めきれず、複数の相続人で共有名義にするケースは少なくありません。不動産は預貯金のように簡単に分けにくいため、いったん共有にしたものの、その後の利用や売却をめぐってトラブルになることがあります。とくに以下のようなケースでは、協議による解決が難しく、共有物分割請求訴訟に至ることがあります。
- 兄弟の1人が実家に住み続けて費用負担で揉めるケース
- 売却や建て替えを巡って話し合いが平行線となるケース
兄弟の1人が実家に住み続けて費用負担で揉めるケース

たとえば兄弟で実家を相続し、兄だけがそのまま実家に住み続け、持分割合に応じて固定資産税や修繕費などを兄弟で負担しているケースがあったとします。
この場合、弟からすると「不動産を使えないのに費用だけ負担している」と不公平感が募りやすくなり、兄弟間で争いに発展することがあります。
実際に当社にご相談いただいた事例では、兄弟2人で不動産を相続したものの、他の共有者が建物に居住しており、ご相談者様はまったく利用できない状態が続いていました。
固定資産税などの負担だけがかかり、売却の話も同意してもらえないとのことだったため、当社でご相談者様の共有持分を買い取ることで解決に至りました。
売却や建て替えを巡って話し合いが平行線となるケース

兄弟などと共有している実家を売却したり改築したりするためには、共有者全員の同意を得る必要があります。これは、民法251条で下記のように定められていることが理由になります。
民法第二百五十一条(共有物の変更)
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
引用:e-Gov法令検索|民法
そのため、共有者のうち1人でも反対する人がいれば、売却や建て替えを進めることはできません。
実際に当社でご相談いただいた事例では、兄弟2人で相続した不動産について、当初は売却する方向で話が進んでいたものの、契約直前に兄が反対したことで売却できませんでした。
ご相談者様からは「自分の持分だけでも手放したい」と当社にご相談いただき、買取に至った経緯があります。
このように、兄弟間で共有不動産の活用について意見がまとまらず、話し合いで解決できないような場合に共有物分割請求訴訟が行われることもあります。
夫婦で購入した不動産の離婚による分割
マイホームなどを購入する際、夫婦でお金を出し合って共有名義にしたものの、離婚に際して不動産をどうするかで揉めてしまうケースも少なくありません。
離婚後も共有不動産が残っていると、今後の活用方法を巡ってトラブルの種になってしまうことがあるため、夫婦どちらか一方の単独所有にするか、売却して現金を分け合うケースが多いものです。
基本的に夫婦で所有している不動産は財産分与によって分け合いますが、以下のような事例では共有物分割請求訴訟に発展することがあります。
- 離婚後にどちらかが住み続け不公平感が生じるケース
- 住宅ローンの負担を早期に解決したいケース
離婚後にどちらかが住み続け不公平感が生じるケース

夫婦で共有名義となっている不動産に、離婚後もどちらか一方が住み続けていると、物件を使っていない側に不公平感が生じやすくなります。
たとえば、固定資産税の負担が続いたり、売却に合意してもらえなかったりすると、金銭的なストレスや心理的なわだかまりが積み重なっていくでしょう。
実際に当社にご相談いただいた事例では、夫婦で共有しているマンションに離婚後も元夫が居住し続け、さらに売却についての話し合いが進まず、年月だけが経過していました。
ご相談者様は「共有状態を解消して元夫との関係を断ち切りたい」とのご希望だったため、当社が持分を買い取ることで解決に至りました。
このように、話し合いだけで共有状態を解消するのが難しい状況になった場合に、共有物分割請求訴訟が行われることもあります。
住宅ローンの負担を早期に解決したいケース

住宅ローンが残っている共有不動産については、売却の可否や名義変更などを巡って当事者間の話し合いが難航することがあります。
たとえば、「思い出のある家だから」のように片方が不動産の売却に難色を示している場合、協議が進まないままローンの返済が続く状況に陥ることになります。仮に別居して実際に不動産を使用していなくても、住宅ローンの名義人であれば支払い義務は継続します。
離婚の話し合いがまとまるまでに時間がかかりそうな場合、時間が経つにつれ住宅ローンの負担が大きくなり、精神的にも経済的にも厳しい状況に追い込まれかねません。
このように、できるだけ早く住宅ローンの負担から解放されたい場合に、共有物分割請求訴訟によって共有状態の解消を求めるという手段が取られることがあります。
共有物分割請求訴訟で共有物分割を行う3つの判決パターン
共有物分割請求訴訟で判決まで進んだ場合、主に以下の3つの分割方法が検討されます。

それぞれの詳しい内容と、具体的にどのようなケースが当てはまるかを解説します。
共有物そのものを分割する「現物分割」

現物分割は、土地を分筆するなどして共有物を物理的に分けられる場合に検討される方法です。改正民法上は、現物分割と価格賠償がまず検討され、これらの方法で分割できない場合などに競売による換価分割が検討される流れが一般的な見解となっています。
裁判所が現物分割の判決を下した場合、それぞれが土地を50㎡ずつ所有するように「分筆」で分けられます。分筆して単独所有になった土地は、各所有者が自由に活用できます。
裁判では現物分割が優先的に検討されるものの、実際には現物分割ができないケースも多くみられます。
とくに建物の場合は、構造上の理由から物理的に分けることができず、分割そのものが困難です。また、土地についても接道義務や面積、地下のインフラの配置など、法的・物理的な制約から分筆が困難なケースが少なくありません。
土地の分筆が可能だったとしても、現物分割によって面積が狭くなったり使いにくい形状になったりしてしまい、価値が著しく損なわれるケースもあります。
そのため、共有不動産の分割では、現物分割以外の方法が選択されることも多いと認識しておきましょう。
共有物の売却代金を共有者で分ける「換価分割」

換価分割とは、共有不動産を売却し、その売却代金を持分割合に応じて分ける方法です。共有物分割請求訴訟で判決により換価分割が命じられる場合は、通常、競売によって売却されます。
共有物の分割ではまず現物分割や価格賠償が検討されますが、土地や建物の構造上、物理的に分けるのが難しい場合には換価分割が検討されます。
裁判所が換価分割の判決を下した場合、不動産は競売にかけられ、売却代金が双方の持分割合に応じて分配されます。
換価分割は持分割合に応じて売却代金を分ける分割方法であるため、公平に分割請求を解決できます。
ただし、共有不動産を手放すことになったり、競売にかけられたりするため、一般的な評価額よりも低い金額で売られてしまうデメリットもあります。
分割の際の差額を金銭などで補償する「価格賠償」

共有物を分割する際、現物の分け方に不公平が生じた場合や、一方の共有者が不動産を単独で取得する場合には差額を金銭などで補う方法があり、これを「価格賠償」といいます。
価格賠償には、主に以下2つの方法があります。
- 1人が共有物を引き取る代わりに他共有者に金銭などを支払う「全面的価格賠償」
- 共有物を現物分割した際の差額を金銭などで支払う「一部価格賠償」
それぞれのケースについて、具体例を交えて解説します。
1人が共有物を引き取る代わりに他共有者に金銭などを支払う「全面的価格賠償」
共有物を分割するのではなく1人が他の共有者の持分をすべてもらい単独所有にしたうえで、その対価として持分相当の金銭などを他の共有者へ支払うのを全面的価格賠償といいます。
全面的価格賠償でAが不動産全体を引き取る場合、AはBに対して持分1/2にあたる500万円を支払うことになります。
全面的価格賠償は、不動産が他人の手に渡ることなく共有状態を解消するのに有効な手段です。
全面的価格賠償が採用されるかどうかはさまざまな事情を考慮して決められますが、裁判所が特に重視するのが支払い能力です。
不動産を取得する人物に、他の共有者へ対価を支払うだけの資力がなければ、全面的価格賠償は原則として認められにくいでしょう。
全面的価格賠償で不動産を取得したいと考えている場合には、それだけの支払い能力があると証明する必要があります。
たとえば、現預金の通帳や金融機関からの融資の可否、親族等からの援助など資金調達の見込みがあることを客観的に証明できれば、支払い能力があると認められる可能性があります。
共有物を現物分割した際の差額を金銭などで支払う「一部価格賠償」
一部価格賠償とは、現物分割によって物理的に不動産を分けた際、それぞれの取得部分に価値の差が生じた場合に、その差額を金銭などで補う方法です。
しかし、一方が南向きで日当たりがよく道路にも面している土地、もう一方が北向きで私道にしか接していない土地だったとすると、価値に差が生じます。
このような場合に、価値の高い土地を取得した共有者が、もう一方の共有者に対して差額分を金銭で補償するのが一部価格賠償です。
ただし、先述のとおり現物分割によって共有物の価値が著しく損なわれる場合には、一部価格賠償で差額を調整する以前に、現物分割そのものが認められにくくなります。
たとえば、分割によって建物の構造に支障が出る、土地が再建築不可になる、通路部分がなくなり他の共有者が敷地を使えなくなるなどのケースが該当します。このように共有物の価値が失われる恐れがある場合は、一部価格賠償が認められにくいため、注意が必要です。
共有物分割請求訴訟を行う3つのメリット
裁判所という強力かつ客観的な立場の第三者が介入してくれるからこそ、当事者同士の話し合いでは解決しづらい問題も決着を見込めるのが共有物分割請求訴訟のメリットです。時間や費用がかかる一方で、複雑な問題であっても一定の決着を付けることができます。
共有物分割請求訴訟を提起する具体的なメリットは、次の通りです。
- 裁判所に決定を委ねることができる
- 判決に強制力がある
- 客観的で公平な価格の提示を見込める
それぞれどういった点がメリットなのかを、詳しく解説します。
裁判所に決定を委ねられる
共有物分割請求訴訟では、当事者同士の協議で合意できない場合でも、裁判所が法律に基づいて分割方法を判断します。
共有者同士では、互いの感情や計算が邪魔をして話し合いが難航し、一向に共有状態が解消できない場合もあるでしょう。そこで裁判所に判断を委ねられれば、感情的な対立から離れて、不動産の性質や共有者の事情を踏まえた客観的な解決を目指せます。
判決が確定すれば、共有者全員がその内容に従う必要があり、結果として共有状態の解消につながります。
ただし、裁判所は中立の立場で分割方法を判断するため、必ずしも自分の希望どおりの結果になるとは限らないので注意しましょう。
判決に強制力がある
民法251条に定められている通り、共有者は原則として他の共有者の同意なしに共有物に変更を加えることはできません。
一方、共有物分割請求訴訟で判決が確定した場合、改めて共有者全員の同意を得る必要はありません。判決には法的な拘束力があるため、一部の共有者が内容に不満を抱いていたとしても、原則として判決の内容に従う必要があります。
たとえば、判決で不動産の競売が命じられた場合は、確定判決に基づいて形式的競売の手続きを申し立てることになります。また、金銭の支払いや登記義務の履行が命じられている場合には、判決内容に応じて強制執行などの手続きを検討できます。
そのため、話し合いがまとまらないものの、どうしても共有状態を解消したい場合は、共有物分割請求訴訟の提起を検討する余地があります。
客観的で公平な価格の提示を見込める
前述の通り、裁判所が決定する分割方法には「現物分割」と「換価分割」「価格賠償」の3種類があります。
たとえば、持分を取得する人が代償金を他の共有者に支払う「価格賠償」を行う場合、当事者同士で話し合って金額を決めることになります。しかし、当事者の1人が一方的に金額を決めた場合、その価格が適切でない可能性もあるでしょう。
共有物分割請求訴訟では、不動産鑑定士による鑑定評価書や当事者が提出する査定資料などを踏まえて、不動産の価格が検討されることがあります。そのため、当事者の一方が一方的に提示した金額だけで決まる場合に比べ、客観的な資料に基づいた判断を期待しやすいといえます。価格の根拠が客観的かつ明確であれば、当事者間で合意を目指しやすくなることも期待できるでしょう。
共有物分割請求訴訟を行う4つのデメリット
共有物分割請求訴訟にはメリットがある一方、最終的な解決方法について当事者ではコントロールできないというデメリットがあります。判決内容によっては、相手より自分が不利になったり、思ったよりも自分に利益がなかったりするケースも想定されます。
共有物分割請求訴訟を提起する具体的なデメリットは、以下の4つです。
- 自分の望む結果になるとは限らない
- 換価分割の場合は売却価格が低くなる可能性がある
- 解決するまでに時間と費用がかかる
- 共有者同士の関係が悪化する
自分の望む結果になるとは限らない
共有物分割請求訴訟では、裁判官が中立の立場から不動産の状況や各共有者の利害を総合的に判断し、分割方法を決定します。
そのため、自分が不動産を手放すことになったり、相手に対して金銭を支払う立場になったりと、希望していない形で不動産の共有状態を解消せざるを得ないケースも多いです。
また、建物が競売にかけられると、市場価格よりも安値で物件を売却しなければならないケースが多いです。都心にある物件であれば値下がりしづらいですが、地方にある物件の場合には安値になりやすく、市場価格の65%〜70%程度の安い価格で落札されることも珍しくありません。
どうしても不動産を手放したくない場合や安価での売却を避けたい場合、また金銭的損失を負いたくない場合は、持分を売却したり持分放棄を行ったり、他の解消方法も検討してみましょう。
換価分割の場合は売却価格が低くなる可能性がある
不動産を現物で分けるのが困難な場合や、価格賠償を希望しても代償金の支払いが難しい場合には、換価分割が検討されます。
現金で分け合うため公平性は高い方法ですが、判決で換価分割が命じられる場合、通常は競売によって売却されるため、市場価格よりも低い金額で落札されるケースが実務上一般的です。
結果として、共有者が受け取れる金額が想定より少なくなる可能性もあります。
解決するまでに時間と費用がかかる
共有物分割請求訴訟の判決が出て共有状態が解消されるまでは、半年から1年ほどかかるケースが大半を占めています。
争点が多い場合や、不動産評価・占有状況などの確認に時間がかかる場合、控訴審にもつれ込む場合には、1年〜2年以上に長期化することも少なくありません。
裁判が長引くとストレスが大きくなるだけでなく、期間の長期化に伴って弁護士費用もかさみます。弁護士費用をあまりかけたくない人や、なるべく早く共有状態を解消したい人には共有物分割請求訴訟は向いていないといえるでしょう。
共有者同士の関係が悪化する
話し合いで共有状態の解消を決める場合は、合意を目指して話し合います。しかし、裁判となるとお互いが対立して争うことになるため、共有者との関係が悪化するケースも多くみられます。
裁判には時間もお金もかかるため、時には修復不可能なほど関係性がこじれてしまう恐れもあります。
すでに関係が良くない場合は思い切って訴訟を起こすのも1つの方法ですが、まだ話し合いの余地が残っているのなら話し合いで解決するのが望ましいでしょう。
共有物分割請求訴訟の流れ
共有物分割請求訴訟を提起するには、共有者間で協議がまとまらなかったこと、または協議をすることができない事情があることが前提になります。そのため、まずは共有者同士で共有物分割協議を行い、話し合いの経緯を記録しておくことが大切です。

各段階でするべきことや注意する点は異なります。時間のかかる裁判ですが、なるべくスムーズに進められるよう流れを理解しておきましょう。
1.共有者全員で共有物分割協議を行う
まずは共有者全員で協議をし、合意に至らなかった事実を確認できるようにしておく必要があります。
共有物分割協議を行う場合には、対面や電話、メール、Web会議、郵便など協議の形は問いませんが、協議を行った事実やその内容を示すことも大切です。そのため、協議の様子を録音したり郵便の際は内容証明便で送るなど、内容や結論を証明できるように残しておきましょう。
また、協議の手段の1つとして「共有物分割調停」を利用する方法もあります。
共有物分割調停は、裁判所で調停委員を交えて行う共有者同士の話し合いです。管轄裁判所は事案によって異なりますが、民事調停として簡易裁判所などに申し立てるのが一般的です。
なお、事件の種類によっては訴訟前に調停を経る「調停前置主義」を遵守する必要がありますが、共有物分割請求訴訟では原則として調停を経ずに訴訟を提起できます。
2.弁護士に相談する
共有物分割協議で話し合いがまとまらない場合は、共有物分割請求の実績が豊富な弁護士に相談するのが得策です。
共有不動産の分割に関して当事者同士で話し合う場合、お互いに感情的になって話し合いが進まないことも多々あります。弁護士に間に入ってもらえば冷静な状態で話し合いがしやすいため、スムーズにトラブルを解決できる可能性が高まります。
それでも話し合いがまとまらず、共有物分割請求訴訟に進んだ場合も弁護士なら代理人になってもらえるため、複雑な法的手続きも弁護士に任せられます。
3.裁判所に対し共有物分割請求訴訟を申し立てる
協議を行っても意見がまとまらない場合は、裁判所に対して共有物分割請求訴訟を申し立てることになります。不動産の所在地または被告の住所地を管轄する地方裁判所へ訴状を提出します。
共有物分割請求訴訟を提起する際は、訴状のほか、対象不動産や共有関係を確認するための書類を準備します。一般的には、以下のような書類が必要です。
| 書類 | 目的 | 取得先など |
|---|---|---|
| 訴状 | 裁判所に請求内容や主張を伝える | 原告側で作成 |
| 訴状の副本 | 被告へ送達するために提出する | 原告側で作成 |
| 不動産の登記事項証明書(登記謄本) | 不動産の所在地・所有者・持分割合などを確認する | 法務局 |
| 固定資産評価証明書 | 訴額や不動産評価の参考にする | 市区町村役場・都税事務所など |
| 公図・地積測量図・建物図面 | 土地や建物の形状・位置関係を確認する | 法務局 |
| 共有者との協議経緯がわかる資料 | 協議がまとまらなかった事情を説明する | メール・LINE・内容証明郵便など |
| 本人確認書類・委任状 | 弁護士へ依頼する場合などに必要 | 本人・代理人が準備 |
訴状は弁護士が作成するケースが多く、被告となる共有者の人数分の副本を裁判所へ提出します。提出された副本は、裁判所から被告へ送達されます。
固定資産評価証明書は不動産所在地の役所で、登記事項証明書は法務局で取得します。
なお、実際に必要となる書類は、不動産の種類や共有者の人数、争点の内容、裁判所の運用によって変わることがあります。訴訟を提起する前に、弁護士や提出先の裁判所へ確認しておきましょう。
訴訟にかかる費用に関しては「共有物分割請求訴訟にかかる費用は50~150万円が相場」の項目で紹介しているので、あわせてチェックしてみてください。
4.被告に対して訴状や呼出状を送付する
訴訟を申し立てると、1か月ほどで裁判所から各共有者へ先述した訴状の副本の送達と呼出状の送付がおこなわれます。
呼出状とは、民事訴訟において原告及び被告に口頭弁論の期日を知らせ出頭を命じる書面です。他の共有者は呼出状が届いた時点ではじめて訴訟を起こされたと気づき、口頭弁論期日に備えて主張や立証の準備を進めます。
また、口頭弁論当日に出頭できない場合でも、呼出状などに記載された期限までに答弁書を提出すれば、自分の主張や認否を裁判所に伝えられます。答弁書の提出期限は、第1回口頭弁論期日の1週間前ごろに指定されるのが一般的です。
答弁書を提出せず、期日にも出頭しない場合は、自分の反論や希望する分割方法を十分に伝えられないまま手続きが進んでしまって原告の主張を前提とした判断がされる可能性があります。仮に自分が訴訟を提起された側になった場合は、答弁書の提出や出頭などの対応を無視しないようにしましょう。
5.裁判が開始される
第1回口頭弁論期日が開かれると共に、裁判が開始されます。裁判では原告が提出した訴状と被告の答弁書、口頭弁論などから各共有者の主張が審理されます。
なお、第1回口頭弁論期日で裁判が終わることはほぼありません。その後約1ヶ月おきに口頭弁論期日や弁論準備手続期日(弁論準備室で非公開の手続きとして行われる)を行い、十分に審理が尽くされたと裁判所が判断するまで原告と被告が主張・反論を繰り返します。
なお、裁判には必ずしも当事者が毎回出廷しなければならないわけではありません。弁護士に依頼している場合は、代理で出廷してもらうことも可能です。仕事や家庭の事情で毎回の出廷が難しい方でも、弁護士に任せることで裁判を円滑に進められるでしょう。
6.判決・和解または控訴
原告・被告双方の主張や立証を審理し、裁判所が判決を言い渡します。しかし、実際には判決が下される前に裁判所から和解勧告を受けることも少なくありません。
裁判所の和解勧告は、当事者同士の合意によって訴訟を早期に終結させるための提案です。お互いに納得できる条件であれば、和解を受け入れることで時間や費用の負担を抑えつつ、共有状態の問題を解決できます。
和解を受け入れない場合は、裁判所の判決を待つことになります。判決に対して不服がある場合は、判決書が届いてから2週間以内に控訴を申し立てましょう。期間内に控訴がなければ判決が確定し、その内容に沿って共有物の分割手続きが進められます。
共有物分割請求訴訟にかかる費用は50~150万円が相場
共有物分割請求訴訟にかかる費用には弁護士費用や裁判費用などさまざまなものがありますが、主に支払うことになる費用と相場は以下の通りです。
| 内容 | 費用相場 |
|---|---|
| 弁護士費用 | 40~60万円程度 |
| 不動産鑑定費用 | 20~30万円程度 |
| 裁判費用 | 4~6万円程度 裁判費用は訴額や被告の人数によって変わるため、あくまで一般的な目安 |
弁護士への報酬金や、不動産鑑定士への依頼の有無などによっても異なりますが、共有物分割請求訴訟を提起する場合にかかる費用は、50万~150万円程度が1つの目安です。
弁護士費用:40~60万円程度
共有物分割訴訟では、弁護士費用として合計40~60万円程度が費用相場となります。
弁護士費用は主に「着手金」と「報酬金」に分かれており、着手金は弁護士へ依頼した時点で支払うものです。報酬金は裁判が終わったあと、分割によって得た経済的利益の額に応じて支払います。
着手金と報酬金はいずれも20万〜30万円程度が1つの目安ですが、事案の難易度や経済的利益、弁護士事務所の料金体系によって変動します。
ただし、報酬金は弁護士事務所によって計算方法が異なるため、複数の事務所に見積もりを依頼し、比較検討するとよいでしょう。
不動産鑑定費用:20~30万円程度
共有物の価値を把握し、分割方法や代償金を判断するために、共有物分割請求訴訟では不動産鑑定が必要になるケースがあります。
その場合は不動産鑑定士に鑑定を依頼するのですが、鑑定料は「建物のみ」「土地のみ」「土地建物両方」のどれを鑑定するかによって異なります。
対象不動産の評価額によっても鑑定費用は変動しますが、一般的な住宅であれば鑑定費用は20~30万円程度になることが多いです。
不動産鑑定以外に、不動産業者の査定書を利用するケースもあります。査定書は無料で入手できることもありますが、査定額をめぐって共有者間で争いがある場合は、不動産鑑定士による鑑定が必要になることがあります。
裁判費用:4~6万円程度
裁判を申し立てる際には原告側が訴状に貼付する「印紙代」と裁判所が当事者に書面を送付する際の「切手代」を負担しなければなりません。
印紙代の基準となる訴額は、不動産の固定資産評価額などをもとに算定します。
- 土地の場合:固定資産評価額の1/6
- 建物の場合:固定資産評価額の1/3
上記を計算し、さらに持分割合を乗じます。こうして算出された金額によって裁判所の手数料(印紙代)が決まりますが、共有物分割請求訴訟の場合は3~5万円程度になるケースが多いです。
算出された金額に応じた手数料の目安は、次の通りです。
| 訴額 | 第一審訴え提起手数料の目安 |
|---|---|
| 100万円 | 1万円 |
| 500万円 | 3万円 |
| 1,000万円 | 5万円 |
| 3,000万円 | 11万円 |
| 5,000万円 | 17万円 |
参考:裁判所「手数料額早見表(単位:円)」
切手代は被告が1人の場合は6,000~8,000円程度で、被告が2人以上いる場合は、1人増えるごとに約2,000円ずつが加算されます。
訴額が1,000万円前後であれば、印紙代と郵便切手代を合わせた裁判費用は4万〜6万円程度に収まることもあります。ただし、訴額が高くなるほど印紙代も増えるため、正確な金額は手数料額早見表や裁判所で確認しましょう。
遺産分割前の相続財産は原則として共有物分割請求訴訟ではなく遺産分割で解決する
遺産分割前の相続財産について、相続人同士で共有状態を解消したい場合は、原則として共有物分割請求訴訟ではなく遺産分割手続きで解決します。遺産共有とは、遺産分割協議が成立しないまま複数の法定相続人が相続遺産を共有している状態をいいます。
この場合は共有物分割請求ではなく、遺産分割によって共有物を分割する必要があります。まずは遺産分割協議で遺産の分割方法について話し合い、法定相続人全員が合意すれば遺産共有状態を解消できます。
遺産分割協議が成立しない場合は、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てて、調停委員を交えて話し合いをします。調停も不成立であれば自動的に遺産分割審判に移行し、審判官が遺産の分割方法を決めることになります。
ただし、共同相続人の1人が遺産である特定不動産の共有持分を第三者へ譲渡した場合、その第三者が共有関係の解消を求める手続きは、遺産分割審判ではなく共有物分割訴訟になるとした最高裁判例があります(最高裁昭和50年11月7日判決)。
このように遺産共有状態であったとしても、共同相続人の持分が第三者へ譲渡された場合など一定のケースでは、共有物分割請求訴訟で処理されるケースがあります。
共有物分割請求以外で共有状態を解消する方法
共有物分割請求以外で共有状態を解消する方法としては、主に下記の4つが挙げられます。
| 方法名 | 概要 | メリット・デメリット |
|---|---|---|
| 共有持分を放棄する | 自分の共有持分を放棄し、他の共有者へ帰属させる方法 |
・単独の意思で放棄できる ・登記には他の共有者の協力が必要 ・売却益を得られないため、資産価値がある不動産では慎重な判断が必要 |
| 他の共有者に自己持分を売却する | 自分の共有持分を他の共有者に買い取ってもらう方法 |
・共有関係を解消しながら現金化できる ・相手に購入意思と資金力があれば有効 ・関係性が悪い場合や資金を用意できない場合は交渉が進みにくい |
| 他の共有者に自己持分を贈与する | 自分の共有持分を他の共有者へ無償で譲る方法 |
・売買よりも心理的に進めやすい場合がある ・受贈者の合意が必要 ・共有持分の評価額によっては贈与税が発生する |
| 買取業者に自己持分を売却する | 共有持分専門の買取業者に自分の持分だけを売却する方法 |
・他の共有者の同意なく売却できる ・協議や訴訟を避けて共有関係から離脱しやすい ・仲介より価格は下がりやすいが、早期現金化を目指しやすい |
ここからは、上記の方法についてそれぞれ詳しく解説していきます。
共有持分を放棄する

共有状態を解消する手段の一つとして、自分の共有持分を放棄する方法があります。持分放棄は他の共有者の同意を得ずに単独で行える点が特徴ですが、登記の際には他の共有者全員と共同で申請しなければなりません。
他の共有者が登記に応じない場合は、登記引取請求訴訟によって単独申請も可能ですが、訴訟には費用や時間がかかります。また、持分放棄では経済的な利益が一切得られないため、資産価値を持つ不動産であれば損失となる可能性もあります。
そのため、放棄を選ぶのは「共有者が登記に協力してくれる」「不動産の資産価値がほとんどない」など、限られたケースに留めたほうが良いでしょう。
共有状態の解消を望むときは、放棄よりも共有持分の売却や専門業者への相談を先に検討することをおすすめします。
他の共有者に自己持分を売却する

共有関係を解消しつつ、経済的利益も得られる方法として有効なのが、他の共有者への持分売却です。
買い手となる共有者にとっては、持分割合が増えて不動産の活用の幅が広がったり、持分割合が100%になれば不動産を単独所有できたりなどのメリットがあります。
ただし、売買成立には「買取の意思」と「資金力」の両方が相手に備わっていることが前提です。たとえ共有者に購入意欲があっても、まとまった資金が用意できなければ交渉は成立しません。また、関係性がこじれている場合は交渉自体が進まないことでしょう。
そのため、共有者への売却は「共有者との関係性が良好で、かつ経済的に余裕がある場合」に向いている選択肢といえるでしょう。条件が整わない場合は、第三者である買取業者に相談したほうがスムーズに共有状態を解消できます。
他の共有者に自己持分を贈与する

共有関係を解消する手段として、他の共有者に自己の持分を贈与する方法もあります。贈与は自分の意思で相手を選ぶことができ、他の共有者の同意も必要ありません。
ただし、贈与は贈与者と受贈者双方の合意がなければ成立しないため、贈与する共有者からは合意を得る必要があります。
また、共有持分の贈与も贈与税の課税対象となります。贈与した共有持分の評価額が基礎控除額の110万円を超える場合、贈与を受けた共有者は、原則として贈与を受けた翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告・納税を行わなければなりません。
共有持分の評価額は非課税枠を大幅に超えるケースが多く、想定以上の贈与税が課される可能性もあるため、事前に贈与する相手に説明しておきましょう。
贈与は無償であるため手軽に思えますが、共有者と交渉したり税負担について考える必要があり、円満に進めるためには慎重に対応しなければなりません。
「他の共有者が不動産を取得することを希望している」などの特別な事情がなければ、買取業者に持分を買い取ってもらったほうがスムーズに共有状態を解消できます。
買取業者に自己持分を売却する
共有物分割請求訴訟は、話し合いで解決できない共有状態を法的に整理する有効な手段ですが、費用や時間、精神的な負担が大きいのも事実です。
なるべく負担をかけずに共有状態を解消したい場合は、共有持分専門の買取業者への売却も検討してみましょう。自分の共有持分のみであれば、他の共有者の合意がなくても自由に売却できます。
また、共有持分は共有名義の不動産の所有権に過ぎず、不動産すべてを活用できる権利ではないことから、一般の人が買主になることはほぼありません。
そのため、仲介で共有持分のみを売却することは難しいですが、共有持分を専門とする買取業者であれば共有名義の不動産を活用するためのノウハウがあるため、仲介では売れないような共有持分であっても売却に期待できます。
さらに、共有持分専門の買取業者に依頼することには、下記のようなメリットもあります。
- 協議や訴訟をすることなく共有名義から抜け出せる
- 数日〜1週間程度で現金化できる
- 共有者間でトラブルが起きているような場合でも売却が可能
- 仲介のように広告を出さずに進められるため、売却活動を知られにくい
買取業者に共有持分を査定してもらい、提示された査定額に納得すれば売買が成立するので、スピーディーに現金化が可能です。また、専門業者であれば共有持分の買取実務に慣れており、必要に応じて弁護士などの専門家と連携しながら、訴訟以外の解決策を検討できます。
「もうこれ以上揉めたくない」「早く共有状態を解消したい」と感じている場合は、共有持分の専門業者に相談することも検討してみてください。
まとめ
共有者との協議が合意に至らない場合に、共有物分割請求訴訟は共有状態を解消するための有効な手段となります。
とはいえ、判決によっては必ずしも自分の思う通りの分割方法にならず、訴訟には費用や時間がかかるなどのデメリットもあります。
もし不動産を手放してでも共有状態を解消したい場合は、共有持分の売却も視野に入れると良いでしょう。
ただし、共有持分は一般的な不動産仲介では買主を見つけにくいケースが多いです。そのため、共有状態から抜け出したい場合には、専門の買取業者に共有持分を売却することも検討してみてください。
共有物分割請求訴訟に関するよくある質問
共有物分割請求訴訟を起こされたらどうすればよいですか?
裁判所から訴状や呼出状が届いた場合は、無視せず内容を確認しましょう。無視してしまうと、自分の反論や希望する分割方法を十分に伝えられないまま手続きが進み、結果的に不利な判断につながる恐れがあります。
原告の主張に納得できない場合や、不動産を残したいといった希望がある場合は、答弁書などで自分の考えを主張しましょう。ただし、最終的な分割方法は裁判所が判断するため、早めに弁護士へ相談し、対応方針を整理しておくことが大切です。
共有物分割請求訴訟を起こす条件はありますか?
共有物分割請求訴訟を起こすには、共有者間で協議がまとまらなかったこと、または協議をすることができない事情があることが前提になります。協議を行う際には、書面や録音、メール、内容証明郵便などで記録を残しておくとよいでしょう。
共有物分割請求訴訟をせずに共有状態を解消できないのでしょうか?
共有者全員での話し合いを行い、全員が合意すれば売却や分筆、持分買取による単独名義への変更などで共有状態を解消できます。また、自身が共有名義から抜け出したいのであれば、自己持分を売却・贈与・放棄することでも共有状態を解消できます。
持分割合が少なくても訴訟を起こせますか?
共有物分割請求訴訟は、持分割合がどれだけ少なくても提起することが可能です。民法第256条においても「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。」と定められており、持分割合に関する制限はありません。
訴訟を起こすと共有者との関係性が悪化してしまいますか?
訴訟は当事者同士が対立構造になるため、共有者との関係が悪化する可能性があります。そのため、話し合いの余地がありそうなら、協議や調停で解決することも検討してみましょう。冷静な話し合いが難しい場合、弁護士に代理で協議を進めてもらうのも一つの手段です。


