家の名義とローンの名義が違う場合は問題になる?リスクやケース別の対処法、注意点を解説

家の名義と住宅ローンの名義が違っている場合、「このままで問題はないの?」「税金や控除で不利になるのでは?」と不安に感じる人もいるでしょう。
結論からいうと、家の名義とローンの名義が違う状態には、次のようなリスクがあります。
- ローンの契約違反で、金融機関から一括返済を求められる場合がある
- ローン名義人以外が返済すると、贈与とみなされる可能性がある
- ローン名義人が滞納すると、家を差し押さえられるおそれがある
- 名義の不一致により、売却や担保設定ができない
リスクを回避するためには、まず自分が「どのような状況なのか」を整理したうえで、適切な方法で名義を整えていくことが重要です。
具体的には、次のようなケースごとに対処法が異なります。
| ケース | 主な対処法 |
|---|---|
| 【離婚】家の名義は妻に変更したが、ローンは夫のまま住み続ける | ローンの借り換えを行い、名義を一致させる |
| 【相続】家の名義を親から子へと変更したが、親名義のローンが残っている | 相続登記と債務引受の手続きを行う |
| 【共有名義】夫のみのローンで、出資のない妻も家を共有名義にしている | 持分更正登記や持分移転で実態に合わせる |
| 【親子】親名義の家を、子がローンを組んでリフォーム・増改築した | リフォーム時は「持分取得」「親子間売買」で名義を調整する |
なお、名義変更やローンの整理を自分1人の判断で進めてしまうと、後からトラブルにつながることもあります。
そのため、ローンの変更や借り換えの可否については金融機関、名義変更など登記手続きについては司法書士、贈与税や控除の扱いについては税理士といったように、状況に応じて専門家へ相談しながら進めることをおすすめします。
本記事では、家の名義とローンの名義が違う場合に生じるリスクを整理したうえで、ケース別の対処法や、名義変更の際に税金や控除で損をしないための注意点について詳しく解説していきます。
目次
家の名義とローンの名義が違う場合は問題になる?

住宅ローンの返済中に「家の名義」と「住宅ローンの名義」が違う状態になることは、注意が必要なケースです。
なぜなら、多くの金融機関が、住宅ローンを契約する際に「所有者(家の名義人)=債務者(ローン契約者)」であることを前提としているためです。
住宅ローン契約は、金融機関が債務者の返済能力や信用力を審査したうえで締結されています。そのため、離婚などを理由に金融機関の承諾を得ないまま家の名義変更を行うと、住宅ローン契約に違反したと判断され、残っているローンの一括返済を求められるリスクがあります。
このような事態を避けるため、離婚などの事情で家の名義や住宅ローンの扱いを変更したいと考えた場合は、必ず事前に金融機関へ相談しましょう。
住宅ローンの「名義変更」は原則として認められていませんが、新たな名義人に十分な返済能力があり、金融機関の審査に通る場合には、借り換えという形でローンを組み直せる可能性があります。
なお、住宅ローンをすでに完済している場合については、家の名義を変更しても金融機関とのトラブルになることはありません。問題になるのは「住宅ローンの残債がある状態で、家の名義とローンの名義が一致していないケース」であるという点を押さえておきましょう。
家の名義とローンの名義が違う主なケース

家の名義と住宅ローンの名義が違う状態になるのは、主に以下のようなケースです。「自分の状況に近いものがないか」を確認しながら読み進めてみてください。
- 【離婚】家の名義は妻に変更したが、ローンは夫のまま住み続ける
- 【相続】家の名義を親から子へと変更したが、親名義のローンが残っている
- 【共有名義】夫のみのローンで、出資のない妻も家を共有名義にしている
- 【親子】親名義の家を、子がローンを組んでリフォーム・増改築した
【離婚】家の名義は妻に変更したが、ローンは夫のまま住み続ける

離婚時に、慰謝料や養育費の代わりとして「妻が家に住み続ける」ようなケースです。このとき、登記上の家の名義を妻に変更し、住宅ローンは夫名義のまま残す形が取られることがあります。
妻や子どもの生活を守るための選択ですが、金融機関に無断で名義変更を行うと、住宅ローン契約に違反するリスクがあります。
たとえ元夫が返済を続けていても、金融機関側からすれば「担保にしている家の持ち主が勝手に変わった」とみなされるためです。
離婚後に家に住み続ける人と、ローンを返済する人が異なる場合は、名義変更を急ぐのではなく、まず金融機関に相談し、借り換えや売却も含めた選択肢を検討することが重要です。
離婚時の財産分与で不動産を分ける方法については、次の記事でも紹介しています。
【相続】家の名義を親から子へと変更したが、親名義のローンが残っている

住宅ローン契約者である親が亡くなり、子がその家を相続するようなケースです。通常、多くの住宅ローンには「団体信用生命保険」が付帯しており、亡くなった時点でローンは完済されます。
しかし、「フラット35」など一部の住宅ローン商品では、団体信用生命保険への加入が任意となっており、加入していなかった場合には、親が亡くなった後も住宅ローンが残ることがあります。
このような場合、家の名義は相続によって子へ移る一方で、住宅ローンは亡くなった親名義のままとなり、「家の名義」と「ローンの名義」が一致しない状態になります。
特に注意したいのは、住宅ローンの返済が口座引き落としで続いている場合です。返済が滞っていなければ、金融機関からすぐに連絡が来ないこともあり、相続人が「ローンが残っていること」に気づかないまま時間が経ってしまうケースもあります。
相続が発生した場合は、まず住宅ローンに団体信用生命保険が付いているかどうかを確認することが大切です。ローンが残っている場合は、家の名義を変更する相続登記とあわせて、金融機関で債務引受などの手続きを行い、名義とローンの関係を早めに整理しておきましょう。
【共有名義】夫のみのローンで、出資のない妻も家を共有名義にしている

住宅ローンは夫のみの名義で組んでいるにもかかわらず、登記上の家の名義を「夫50%・妻50%(持分1/2ずつ)」といった共有名義にしているケースです。
「夫婦二人で住む家だから」という理由で安易に共有名義にしてしまいがちですが、税務上は「実際にお金を出した割合」と「登記上の持分割合」を一致させるのがルールです。
夫が住宅ローンを100%負担しているのに、頭金やローンの負担がない妻が50%の持分を持つと、夫から妻へ家の一部を贈与したとみなされる可能性があります。
贈与と判断されると、金額によっては贈与税がかかることもあり、後から税務署から指摘を受けるケースもあります。
共有名義にする場合は、出資額と持分割合を一致させることが原則です。すでにズレが生じている場合は、持分の見直しや登記の修正を検討する必要があります。
【親子】親名義の家を、子がローンを組んでリフォーム・増改築した

二世帯住宅へのリフォームや増改築を行う際に、親名義の家に対して子がローンを組んで資金を出すようなケースです。
この場合、子が支払ったリフォーム費用が、結果的に「親の家の価値を高める」ことになるため、税務上は子から親への贈与と判断されることがあります。特に高額なリフォームを行った場合、思わぬ贈与税が発生するリスクがあります。
こうしたリスクを避けるためには、リフォーム費用に応じて家の持分を子に移す、親子間で売買契約を結ぶなど、名義と実態を一致させる工夫が必要です。
家の名義とローンの名義が違う場合のリスク

家の名義と住宅ローンの名義が違う状態を放置していると、金融機関との契約や税金、将来の売却など、さまざまな場面で不利になるリスクがあります。
特に、離婚や相続といったライフイベントをきっかけに名義がズレた場合は、思わぬトラブルにつながりやすいため注意が必要です。
家の名義とローンの名義が違う場合の主なリスクは、次のとおりです。
- ローンの契約違反で、金融機関から一括返済を求められる場合がある
- ローン名義人以外が返済すると、贈与とみなされる可能性がある
- ローン名義人が滞納すると、家を差し押さえられるおそれがある
- 名義の不一致により、売却や担保設定ができない
ローンの契約違反で、金融機関から一括返済を求められる場合がある
住宅ローンは「所有者=債務者」であることを前提に契約されています。
そのため、金融機関に無断で家の名義を変更すると、住宅ローン契約に違反したと判断されるリスクがあります。最悪の場合、残っているローン全額を一度に返す「一括返済」を求められるおそれがあります。
特に、離婚をきっかけに家の名義とローンの名義が分かれてしまうケースでは、この問題が起こりやすくなります。
離婚後に妻や子どもが住み続けるため、家の名義だけを妻に変更し、ローンは夫名義のまま残すといった対応をしてしまうと、金融機関から見ると「担保にしている家の持ち主が勝手に変わった」状態になります。
契約違反のリスクを防ぐためにも、名義変更を検討する場合は、必ず事前に金融機関へ相談することが重要です。
ローン名義人以外が返済すると、贈与とみなされる可能性がある
住宅ローンの返済は、本来ローン名義人が行うものです。ローン名義人以外の人が返済を続けていると、その支払いが「お金をあげた」とみなされ、贈与として扱われるリスクがあります。
このリスクに注意したいのは、離婚や共有名義のケースです。
離婚の場合、夫名義の住宅ローンが残ったまま、家に住み続けている妻が返済を行うケースがあります。この場合、先述したローン契約違反の問題に加えて、税務上は「ローン名義人(夫)の返済を、妻が肩代わりしている」と判断され、妻から夫への贈与とみなされる可能性があります。
共有名義で夫のみのローンの場合も注意が必要です。夫のみのローンにもかかわらず、「共有名義だから」という理由で妻も返済を行っていると、返済した金額について、税務上は妻から夫への贈与と判断される可能性があります。
贈与と判断されると、年間110万円を超える部分について贈与税がかかるため、後から税務署から指摘を受けるケースもあります。とはいえ、すべてのケースが贈与になるわけではないため、判断が難しい場合は、税理士などの専門家に相談することも検討しましょう。
ローン名義人が滞納すると、家を差し押さえられるおそれがある
住宅ローンの返済が滞ると、金融機関は担保としている家を差し押さえ、競売などの手続きを進めることがあります。このとき、実際に家に住んでいる人や、家の名義人が誰であるかは関係ありません。
このリスクが特に問題になりやすいのは、離婚後に元配偶者が住宅ローンを返済しているケースです。たとえば、妻や子どもが家に住み続けていても、ローン名義人である元夫が返済できなくなれば、競売の手続きが進み、強制的に家を失う可能性があります。
これは、他人の返済能力に自分の住まいを委ねている状態ともいえます。「住んでいる人」と「ローンを返している人」が違う場合、住まいの安定性はローン名義人の状況に大きく左右されます。
こうしたリスクを避けるためには、離婚時の財産分与の段階で、家に住む人とローンを返済する人が分かれてしまわないよう整理しておくことが重要です。やむを得ず分かれる場合でも、借り換えや売却などを含めて、将来を見据えた現実的な対処を検討する必要があります。
名義の不一致により、売却や担保設定ができない
家を売却したり、その家を担保に新たなローンを組んだりするためには、家の名義・住宅ローンの名義・抵当権の状況が整理されていることが前提になります。
そもそも、ローンが残っている家には金融機関の「抵当権(家を担保にする権利)」がついており、売却時にはローンを完済して抵当権を抹消しなければなりません。この手続きには銀行の承諾が必要で、名義とローンの関係が整理されていないと、次のようなトラブルが起こります。
相続の場合、家の名義は子に移っていても、住宅ローンが亡くなった親名義のまま残っていると、相続人だけの判断で売却を行うことはできません。ローンの引き継ぎや完済の手続きが正式に整理されるまで、金融機関が抵当権の抹消に応じないためです。
離婚の場合、家の名義が妻、住宅ローンの名義が夫のままになっているケースがあります。
この状態では、妻が売却を希望しても、ローン名義人である元夫の協力がなければ金融機関が抵当権を外してくれず、売却手続きを進めることができません。
また、このような状態では、家を担保に新たなローンを組もうとしても、「所有者と債務者が一致していない」として審査が通らないことがあります。
名義とローンの関係を整理しないままにしておくと、「売りたいときに売れない」「借りたいときに借りられない」状態に陥りやすくなります。将来の選択肢を狭めないためにも、離婚や相続といったタイミングで、名義・ローン・抵当権の関係をセットで整理しておくことが重要です。
【ケース別】家の名義とローンの名義が違う場合の対処法
家の名義と住宅ローンの名義が違う場合、ローンの契約違反や贈与税などさまざまなリスクが生じます。そのため、状況に応じて、名義とローンの関係を整理するための手続きを取る必要があります。
ケース別の具体的な対処法は次のとおりです。
- 【離婚】ローンの借り換えを行い、名義を一致させる
- 【相続】相続登記と債務引受の手続きを行う
- 【共有名義】持分更正登記や持分移転で実態に合わせる
- 【親子】リフォーム時は「持分取得」「親子間売買」で名義を調整する
【離婚】ローンの借り換えを行い、名義を一致させる
離婚後にどちらか一方が家に住み続ける場合は、「家に住む人」と「住宅ローンの名義人」を一致させることが基本です。
すでに名義にズレがある場合は、住み続ける人が自分名義で住宅ローンを組み直す「借り換え」を行うことで、名義をそろえる必要があります。
たとえば、夫名義の住宅ローンが残っている家に妻が住み続ける場合、妻が新たに住宅ローンを組み、その資金で夫名義のローンを完済します。これにより、家の名義とローンの名義を同一人物にそろえられます。
この方法であれば、ローン契約違反や滞納リスク、売却できないといった問題をまとめて解消できます。ただし、借り換えには金融機関の審査があり、収入や信用状況によっては利用できないこともあります。
借り換えが難しい場合は、家を売却して財産分与を行うなど、別の選択肢も含めて検討する必要があります。
【相続】相続登記と債務引受の手続きを行う
親が亡くなり、住宅ローンが残っている家を相続した場合は、名義変更とローンの手続きをセットで進めることが重要です。
まず、家の名義を相続人に変更する相続登記を行います。そのうえで、住宅ローンが残っている場合は、金融機関で「債務引受」という手続きを行い、相続人が正式なローン返済者になる必要があります。
債務引受とは、亡くなった人に代わって住宅ローンの返済義務を引き継ぐ手続きです。金融機関による審査があり、相続人の収入や信用状況によっては、引き継ぎが認められない場合もあります。
もし債務引受ができない場合、相続人がそのままローンを引き継いで返済を続けることはできません。このような場合には、相続人名義で新たに住宅ローンを組み直し、その資金で既存のローンを完済する、いわゆる借り換えによって対応できることもあります。
また、家を売却してローンを完済する方法を選ぶケースもあります。借り換えが難しい場合や、売却してもローンを完済できない場合には、相続放棄の検討も選択肢に入るでしょう。
なお、相続登記だけを済ませてローンを放置してしまうと、売却や住み替えができず、後から手続きが複雑になることがあります。
相続が発生したら、まず住宅ローンが残っているかどうか、団体信用生命保険に加入しているかを確認し、金融機関と早めに相談することが大切です。
相続登記の手続きの流れや費用については、次の記事で詳しく解説しています。
【共有名義】持分更正登記や持分移転で実態に合わせる
共有名義の家で、購入時の出資額と登記上の持分割合が一致していない場合は、名義の見直しが必要です。
持分の見直しには、大きく分けて「持分更正登記」と「持分移転登記」があります。持分更正登記は、もともとの登記が誤っていた場合に、正しい持分に訂正する手続きです。一方、持分移転登記は、売買や贈与などによって持分を動かし、持分割合を変更する手続きです。
たとえば、夫が住宅ローンを100%負担し、妻は頭金も出資していないのに、登記上は「夫50%・妻50%(持分1/2ずつ)」になっているケースがあります。
このままだと、出資していない妻が持分を持っている状態となり、夫から妻への贈与とみなされるリスクがあります。そのため、当初から出資割合どおりに名義を付けるつもりだった場合には、持分更正登記によって正しい持分に登記し直すことを検討します。
一方で、「当時は夫婦で共有名義にする意図があり、そのとおりに登記した」「当時の出資を証明する書類が残っていない」といった理由で、更正登記が難しいケースもあります。
この場合、後から持分を夫にまとめるには、妻の持分を売買や贈与によって移す必要があります。贈与を選ぶ場合は、年間110万円の基礎控除の範囲内で、少しずつ持分を移転する方法もあります。
ただし、名義の見直し方法によっては、意図せず贈与と判断され、贈与税がかかるケースもあります。判断が難しい場合は、税理士などの専門家に相談し、税務上の扱いを確認したうえで進めることが安心です。
持分更正登記については、次の記事も参考にしてみてください。
【親子】リフォーム時は「持分取得」「親子間売買」で名義を調整する
親名義の家を、子がローンを組んでリフォームする場合は、子が支払った費用が親への贈与とみなされないよう注意が必要です。
対処法となるのが、子がリフォーム費用を負担する代わりに、その金額に相当する家の所有権を親から子へ移す「持分取得」です。リフォームによって価値が高まった分だけ、子が名義(持分)を持つことになり、親子での共有名義という形で実態と名義を一致させられます。
また、リフォームを機に、土地と建物のすべてを子が買い取る「親子間売買」という選択肢もあります。代金の支払いが必要になりますが、家の名義とローンの名義を完全に子ども1人に集約できるため、将来の相続トラブルを未然に防げる大きなメリットがあります。
ただし、親子間の取引は、売買価格が適正かどうかや、税務上の扱いについて厳しく見られる傾向があります。そのため、不動産会社に相談して適正な売買価格を確認したり、税理士に相談して贈与税や譲渡所得税の扱いを確認したうえで進めることが安心です。
どちらの方法が適しているかは、リフォームの規模や将来その家をどう管理していきたいかによって異なります。大きな金額が動くリフォームでは、着工する前に名義の分け方を家族で話し合っておくことが大切です。
親から子へと持分を移すことを検討している場合は、次の記事も参考にしてみてください。
家の名義変更の際に税金と控除で損をしないための注意点

家の名義と住宅ローンの名義のズレを直そうとして手続きを進めた結果、贈与税がかかったり、住宅ローン控除が使えなくなったりすることがあります。名義を動かす前に、税金と控除で損をしないためのポイントや注意点を押さえておきましょう。
- 「110万円の基礎控除」「おしどり贈与」で贈与税対策できる
- 住宅ローン控除は居住者と名義人が一致している必要がある
- 離婚時の名義変更は「離婚成立から2年以内」に行う
「110万円の基礎控除」「おしどり贈与」で贈与税対策できる
「出資していない妻に家の持分を持たせる」「親名義の家を子がリフォームする」といったケースでは、意図せず「贈与」とみなされ、課税額に応じて10~55%の贈与税が課せられる可能性があります。
贈与税対策として活用したいのが、「110万円の基礎控除」「おしどり贈与」です。
まず、贈与税には年間110万円の「基礎控除」があります。この範囲内で名義(持分)を移すことで、贈与税をかけずに名義を整えられる可能性があります。
また、婚姻期間が20年以上の夫婦であれば、居住用不動産の贈与について、最大2,000万円まで非課税となる「贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)」を利用できます。
基礎控除と合わせると、最大2,110万円まで税金がかからずに名義を移せるため、長年連れ添った夫婦の名義整理では有力な選択肢になります。
ただし、おしどり贈与は一生に一度しか使えず、実際に住んでいる家であることなどの要件もあります。名義を動かす前に、適用条件を確認したうえで進めることが大切です。
参考:国税庁|No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
住宅ローン控除は居住者と名義人が一致している必要がある
住宅ローン控除は、住宅ローンを利用してマイホームを購入・取得した人が、一定期間、所得税や住民税の負担を軽くできる制度です。控除を受けるためには、「住宅ローンを借りている本人が、その家を所有し、実際に住んでいること」が前提となります。
そのため、家とローンの名義、居住実態が一致していないと、控除が受けられなくなるリスクがあります。
たとえば、ローンは夫名義なのに、家の名義をすべて妻に変更してしまった場合、夫は「自分の持ち物ではない家のためにローンを払っている」状態になり、住宅ローン控除の対象外となります。
また、離婚でローン名義人の夫が家を出て、妻だけが住み続ける場合も、夫の居住実態がなくなるため、原則として住宅ローン控除は打ち切られます。
節税メリットを失わないためには、名義変更を行う前に「誰がローンを借りているのか」「誰が実際に住むのか」を整理し、家とローンの名義と居住実態が一致する形を保つことが重要です。
離婚時の名義変更は「離婚成立から2年以内」に行う
離婚に伴って家の名義を変更する場合、多くは「財産分与」として手続きを行います。この財産分与には、請求できる期限が定められており、原則として離婚成立から2年以内に行う必要があります。
この期限を過ぎてから名義変更を行うと、財産分与ではなく「贈与」とみなされ、贈与税が課されるリスクがあります。
なお、2024年の民法改正により、財産分与の請求期間は離婚後2年から5年に延長されます(施行:2026年4月1日)。
そのため、「2026年3月31日以前の離婚は2年以内」「2026年4月1日以降の離婚は5年以内」が期限となります。
離婚の時期によって適用されるルールが異なるため、名義変更を検討する際は、自分がどの期限に当てはまるのかを必ず確認したうえで、早めに手続きを進めましょう。
家の名義とローンの名義が違う場合に相談すべき専門家
家の名義とローンの名義がズレている状態は、金融機関との契約、登記の手続き、税金の判断が絡み合いやすく、自己判断で進めるとトラブルになりがちです。スムーズかつ安全に解決するためには、状況に合わせて専門家に相談しながら手続きを進めましょう。
- 【金融機関】ローンの変更や借り換えの可否を相談
- 【司法書士】不動産登記(名義変更)の正確な手続き
- 【税理士】贈与税回避のアドバイスと確定申告サポート
【金融機関】ローンの変更や借り換えの可否を相談
住宅ローンは金融機関との契約なので、名義を動かす可能性があるなら、最初に金融機関へ相談するのが基本です。
特に、離婚で家の名義を変えたい、相続でローンを引き継ぎたいといったケースでは、金融機関の承諾なしに進めると契約違反となり、一括返済を求められるリスクがあります。
金融機関には、次のような点を確認しましょう。
- 名義変更や債務引受がそもそも可能か
- 借り換えで対応できるか
- 売却する場合、完済や抵当権の抹消手続きはどう進めるか
- 必要書類や手続きの流れ、注意点
「名義はこうしたい」という希望があっても、ローン契約上できること・できないことがあるため、最初に金融機関の方針を押さえることが大切です。
【司法書士】不動産登記(名義変更)の正確な手続き
家の名義を変えるには、法務局での登記手続きが必要です。登記は書類や手順が多く、間違いがあると手続きが止まったり、後で名義の解釈をめぐってトラブルになったりすることがあります。
司法書士には、次のような場面で相談すると安心です。
- 離婚の財産分与で、家の名義を変更したいとき
- 相続で、家の名義を故人から相続人に変更するしたいとき
- 共有名義で、持分の更正・移転を行いたいとき
- 親名義の家で子がローンを組む際に、子に持分を持たせたいとき
- 住宅ローンを完済し、抵当権を外したいとき
司法書士に相談すれば、「どの登記が必要か」「どんな書類を用意すべきか」「どの順番で手続きを進めるべきか」を整理してもらえます。
特に、離婚・相続・共有名義が絡むなど名義関係が複雑なケースほど、早めに相談しておくと安心です。
【税理士】贈与税回避のアドバイスと申告サポート
名義とローンのズレを直す過程では、意図していなくても「贈与」とみなされることがあります。
たとえば、出資していない配偶者に家の持分を移す場合や、ローン名義人ではない人が返済を続けている場合、親名義の家を子が負担してリフォームし、家の価値を高めた場合などは、税務上の判断が難しくなりやすいケースです。
税理士に相談すると、次のような点を整理できます。
- 贈与税がかかる可能性があるか
- 年間110万円の基礎控除や配偶者控除など、使える制度があるか
- 住宅ローン控除が使えるか、名義変更で影響が出ないか
- 贈与税の申告が必要になった場合の手続きの方法
- 親子間売買の価格設定や税金面の注意点
税金は「後から指摘される」ことがある分野です。名義を動かしてから慌てるのではなく、事前に税理士へ相談しておくことで、余計な税負担やトラブルを防ぎやすくなります。
まとめ
家の名義と住宅ローンの名義が違う状態は、離婚や相続、共有名義、親子間のやり取りなど、誰にでも起こり得る問題です。しかし、そのまま放置してしまうと、ローン契約違反や贈与税の発生、住宅ローン控除が受けられなくなるなど、思わぬリスクにつながることがあります。
特に、ローン返済中の名義変更は金融機関の承諾が不可欠であり、税金や登記の扱いもケースごとに大きく異なります。自己判断で進めるのではなく、「誰が住むのか」「誰がローンを返すのか」「名義は誰になっているのか」を整理したうえで、適切な手続きを選ぶことが重要です。
状況によっては、借り換えや売却、持分調整など複数の選択肢があります。金融機関・司法書士・税理士といった専門家の力を借りながら、早めに対応することで、将来のトラブルや余計な税負担を防ぎやすくなります。
よくある質問
家のローンの名義を夫から妻へ変更できますか?
原則として、住宅ローンの名義だけを夫から妻へ変更することはできません。
金融機関の審査や条件によっては、例外的に名義変更が認められるケースもありますが、実務上はまれです。
名義を変えたい場合は、妻が新たに住宅ローンを組み直して借り換えるか、売却してローンを完済するなど、金融機関の承諾を得た方法で対応する必要があります。
家の名義変更の際に発生する費用は?
家の名義変更の際には、主に以下のような費用が発生します。
- 登録免許税:原因により税率が異なります(例:相続 0.4%/贈与・売買 2%。売買の土地は軽減措置がある場合があります)
- 不動産取得税:売買や贈与とみなされる場合に発生し、「固定資産税評価額 × 3%~4%」が目安
- 司法書士報酬:名義変更や関連手続きを依頼する場合発生し、5~15万円程度が目安
このほか、名義変更の内容によっては贈与税が発生するケースもあります。実際にかかる費用は状況によって大きく変わるため、事前に専門家へ確認しておくと安心です。

