不動産売却の名義変更はどうすればいい?名義変更の費用や流れを徹底解説

不動産を売却するにあたって「名義変更はいつ行うのか」「どのような手続きが必要なのか」と疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。
結論から述べると、不動産売却における名義変更は自動で行われるものではなく、法務局で「所有権移転登記」という手続きを行うことで初めて買主へ名義が移転します。所有権移転登記は、売買代金の決済や物件の引き渡しと同日に行われ、基本的には司法書士に依頼して手続きを進めます。
共有持分買取を専門とする弊社の実務経験上、所有権移転登記は以下の流れで進むのが基本となります。
| 流れ | 概要 |
|---|---|
| 不動産売買の契約が締結 | 買主と売主の間で売買条件を取り決めて売買契約書を取り交わす |
| 決済前の事前準備 | 必要書類の準備や司法書士との打ち合わせを済ませる |
| 決済・引き渡し | 決済と同時に不動産の引き渡しを行う |
| 法務局へ所有権移転登記申請 | 法務局で不動産の名義変更手続きを行う |
| 名義変更が完了 | 申請してから1週間程度で名義変更が完了する |
不動産売却に伴う名義変更では、登録免許税や司法書士報酬などの費用が発生するほか、売主と買主それぞれが所定の書類を用意する必要があります。不動産会社などに仲介を依頼する場合は、基本的には案内に従って書類や費用を用意すれば問題ありません。
なお、相続した不動産の名義が故人のままになっている場合には、売却前に相続登記を済ませておく必要があるなど、状況によって手続きの流れが変わる点には注意が必要です。
本記事では、不動産売却における名義変更の基本的な仕組みや手続きの流れ、必要書類、費用の目安について専門家の目線で詳しく解説します。不動産売却を検討している方や、名義変更の手続きについて知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
不動産売却の名義変更には所有権移転登記が必要になる
不動産を売却する際、名義を買主へ変更するためには「所有権移転登記」という手続きを行う必要があります。
不動産の売買契約が成立しただけでは、登記簿上の名義は自動的に変更されません。民法第177条では、不動産の権利関係を第三者に対して主張するためには、登記が必要とされているためです。
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
引用元:
そのため、売却によって所有者が変わった場合、所有権移転登記を行わなければ、買主が法的に所有者であることを公的に証明できません。
実務において、所有権移転登記は売買代金の決済と物件の引き渡しを行うタイミングで申請する流れが基本となります。決済日に売主・買主・不動産会社・司法書士が立ち会い、必要書類の確認や残代金の支払いを行ったうえで、司法書士が法務局へ登記申請を行います。
このように、不動産売却における名義変更は単なる手続きではなく、取引を法的に成立させるために欠かせないものとなっています。
不動産売却時の名義変更の流れ
弊社の実務経験上、不動産売却をする際の名義変更の流れは以下が基本となります。
- 不動産売買の契約が締結する
- 決済前の事前準備をしておく
- 決済・引き渡しを行う
- 法務局へ所有権移転登記申請をする
- 名義変更が完了する
1. 不動産売買の契約が締結する
不動産売却における最初のステップは、売主と買主との間で売買契約を締結することです。
まず不動産会社に査定を依頼し、提示された査定価格や販売方針に納得できれば媒介契約を結びます。その後、不動産会社が広告掲載や購入希望者への案内などの販売活動を行い、買主を探していきます。
購入希望者が現れた場合には、売却価格や引き渡し時期などの条件について調整を行い、双方の合意が得られれば売買契約を締結します。契約時には売買契約書に署名・押印し、買主から手付金を受け取ります。
契約時には、後の手続きを円滑に進めるためにいくつかの重要事項を確認しておく必要があります。具体的には、住宅ローンが残っている場合の抵当権抹消の方法、所有権移転登記を実行する条件、そして登記に必要な書類の準備期限などです。
また、共有名義の不動産を売却する場合には、全共有者の署名・押印が必要になるため、事前に共有者全員の意思を確認しておくことも大切です。
なお、実務では、売買契約書の作成や契約手続きの進行は、仲介を担当する不動産会社が行うのが基本となります。
2. 決済前の事前準備をしておく
不動産売買契約を締結した後は、決済日までに売却手続きに必要な書類や各種準備を進めていきます。決済当日は売買代金の支払いと同時に名義変更の手続きが行われるため、必要書類を確実に手元にそろえることが重要です。
まず売主側では、登記識別情報の有無を確認し、印鑑証明書(3か月以内に発行されたもの)を取得します。また、固定資産税の清算金をいくらにするのかを確認します。
住宅ローンが残っている場合には、残債額の確定や一括返済日を金融機関と調整する必要があります。あわせて、抵当権抹消に必要な書類をいつ受け取れるのかも確認しておくことが大切です。
次に、登記手続きを担当する司法書士と事前に打ち合わせを行います。ここでは、登記原因(売買)の確認や、登録免許税の算出、本人確認書類、登記申請に必要な書類の最終チェックなどが行われます。
なお、実務の現場では決済前の事前準備で手間取ってしまい、必要書類の準備が間に合わないといったケースも見受けられます。万が一、当日までに書類を用意できず決済が延期されると契約違反につながるおそれもあるため、必要書類の準備は余裕をもって進めておくことが大切です。
もしも権利証を紛失しているなど、書類をすぐに用意できない事情がある場合には、早めに不動産会社や司法書士へ相談しておきましょう。
3. 決済・引き渡しを行う
事前準備が整ったら、売買契約で定めた日時に決済と物件の引き渡しを行います。決済は売主・買主・不動産会社の担当者・司法書士が同席し、銀行などの金融機関で行われるのが基本となります。
決済当日は、まず司法書士が登記に必要な書類がそろっているかを最終確認します。書類の確認が完了すると、買主から売主へ残代金が支払われます。売主が入金を確認した時点で売買が成立し、不動産の引き渡しが行われます。
なお、売却する不動産に住宅ローンが残っている場合には、決済のタイミングで抵当権抹消の手続きも同時に進めることになります。
4. 法務局へ所有権移転登記申請をする
決済と物件の引き渡しが完了すると、司法書士が法務局へ所有権移転登記の申請を行います。実際の不動産売買においては、決済当日に売主と買主から預かった必要書類を司法書士が確認し、そのまま法務局へ登記申請を行う流れになります。
なお、所有権移転登記申請は司法書士に依頼せず、自分で進めることも可能です。しかし、登記申請書の作成や必要書類の確認には専門的な知識が求められるため、実務では司法書士に依頼するケースが大半を占めています。
もしも提出した書類に誤りがあると、補正などで余計な手間と時間がかかってしまうため、基本的には司法書士に依頼することを推奨します。
5. 名義変更が完了する
所有権移転登記の申請が受理されると、通常は1週間〜2週間程度で登記手続きが完了します。法務局での審査が終わると登記簿の内容が更新され、不動産の名義が正式に買主へ変更されます。
名義変更が完了したかどうかは、登記事項証明書を取得することで確認できます。登記簿上の所有者欄に買主の名前が記載されていれば、所有権移転登記が完了したことになります。
また、登記完了後には買主に対して「登記識別情報通知」が発行されます。これは従来の登記済証に代わるもので、将来的に不動産を売却したり、担保に入れたりする際に必要となる書類です。
この段階で、登記簿上の所有者も買主へ変更されるため、法的にも不動産の名義変更が正式に完了したことになります。
不動産売却時の名義変更で必要な書類
不動産売却に伴う名義変更を進めるためには、売主と買主それぞれが準備する必要書類があります。ここでは、不動産売却時の名義変更で必要となる書類について、売主と買主それぞれの立場に分けて解説します。
| 売主が名義変更で用意する書類 | 買主が名義変更で用意する書類 |
|---|---|
| ・印鑑証明書・実印 ・登記識別情報(登記済権利証) ・固定資産税納税通知書 ・本人確認書類 |
・実印 ・住民票 ・本人確認書類 ・住宅ローン関連の書類 |
不動産の売主が名義変更で用意する書類
不動産売却において、売主側が名義変更で用意する書類は以下のとおりです。
- 印鑑証明書・実印
- 登記識別情報(登記済権利証)
- 固定資産税納税通知書
- 本人確認書類
印鑑証明書・実印
不動産売却に伴う名義変更では、売主本人の意思による手続きであることを証明するために、印鑑証明書と実印が必要になります。売主は売買契約書や登記に関する委任状などに実印を押印し、その印鑑が本人のものであることを印鑑証明書によって証明します。
印鑑証明書は市区町村役場やコンビニで取得できますが、あらかじめ実印として印鑑登録をしておく必要があります。また、不動産登記で使用する印鑑証明書は「発行から3ヶ月以内」のものが求められるため、注意しておきましょう。
登記識別情報(登記済権利証)
登記識別情報は、不動産の所有者であることを証明するための書類です。従来の「登記済権利証」に代わるもので、不動産の登記が完了した際に発行される12桁の英数字の情報が記載されています。
名義変更を行う際には、現在の所有者である売主が登記識別情報(または登記済権利証)を提出し、登記名義人本人であることを証明します。
なお、登記識別情報や登記済権利証は再発行することができません。そのため、紛失してしまった場合には、法務局から通知を行う「事前通知制度」や、司法書士が本人確認を行ったうえで提出する「本人確認情報の提供」といった手続きによって対応することになります。
固定資産税納税通知書
固定資産税納税通知書は、不動産の固定資産税額や評価額を確認するために使用する書類です。名義変更の実務においては、登記の際に納める登録免許税を算出するための参考資料として確認されます。
固定資産税納税通知書は、毎年4月〜5月頃に不動産所在地の市区町村から名義人宛に送付されます。もしも納税通知書を紛失してしまった場合には、市区町村の役所で「固定資産評価証明書」を取得することで代用できます。
本人確認書類
不動産の名義変更手続きでは、売主本人であることを証明するために本人確認書類の提出が必要になります。原則として、運転免許証やマイナンバーカード、パスポート、在留カードなどの顔写真付きの公的な身分証明書が求められます。
不動産の買主が名義変更で用意する書類
不動産売却において、買主側が名義変更で用意する書類は以下のとおりです。
- 実印
- 住民票
- 本人確認書類
- 住宅ローン関連の書類
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買主側も、名義変更の手続きにおいて、印鑑証明書と実印を求められることがあります。売主と同様に、登記申請書や司法書士への委任状などに実印を押印し、その印鑑が本人のものであることを印鑑証明書によって証明します。
住民票
住民票は登記申請書に記載する住所を証明するための書類であり、名義変更の際に法務局へ提出します。市区町村役場の窓口のほか、コンビニ交付サービスでも取得できます。
なお、不動産登記の際には「個人番号の記載がない住民票の写し」が必要となります。個人番号の記載があるものは利用できないため、注意しておきましょう。
本人確認書類
買主も登記手続きの際には、本人確認書類を提出する必要があります。売主側と同様、運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなどの顔写真付きの公的な身分証明書が求められます。
住宅ローン関連の書類
買主が住宅ローンを利用して不動産を購入する場合には、金融機関から発行される住宅ローン関連の書類も必要になります。具体的には、抵当権設定契約書、住宅ローンの事前審査書類、融資承認通知書などが該当します。
これらの書類は、買主が金融機関の審査を通過し、融資を受けられる状態であることを確認するためのものです。実務では、決済日に金融機関の担当者が同席するのが基本であり、融資の実行と同時に売買代金の支払いが行われます。
不動産売却の名義変更の費用・税金の一覧
不動産売却に伴う名義変更(所有権移転登記)では、以下のような費用や税金が発生します。
| 費用・税金 | 概要 | 負担する人 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | ・法務局での名義変更手続きの際に納める税金 ・「固定資産税評価額×2%」で計算 ※住宅用不動産など一定の条件を満たす場合には軽減税率が適用されることもあります |
買主 |
| 名義変更で必要な書類の取得費用 | 印鑑証明書、住民票、固定資産税評価証明書など | 売主・買主 |
| 司法書士への報酬 | 3万円~10万円程度 | 売主・買主 |
登録免許税
登録免許税とは、法務局で不動産の登記手続きを行う際に国へ納める税金のことです。不動産売却では、買主へ名義を変更する所有権移転登記を申請する際に発生します。
売買による所有権移転登記の場合、登録免許税は「固定資産税評価額×2%」で計算されます。たとえば、固定資産税評価額が2,000万円の不動産であれば、登録免許税は「2,000万円×2%=40万円」となります。
法律上は売主と買主のどちらが負担しても問題ありませんが、実務では不動産を取得する側である買主が負担するケースが多いです。
なお、不動産に住宅ローンが残っている場合、一括返済したうえで「抵当権抹消登記」を行う必要があります。費用は不動産1個につき1,000円で、こちらは売主側が負担します。
登録免許税は金融機関などで納付し、その領収書を登記申請書に添付して提出します。なお、司法書士に依頼している場合は、実費として登録免許税を預け、代行で納付してもらう流れとなります。
名義変更で必要な書類の取得費用
不動産の名義変更では、登記申請に必要な各種証明書を取得するための費用も発生します。具体的には、住民票や印鑑証明書、固定資産税評価証明書などです。
これらの書類は市区町村役場で取得でき、自治体にもよりますが1通あたり200円〜500円程度の費用がかかります。共有名義不動産であれば共有者全員分の書類が必要となりますが、合計数千円程度に収まるケースがほとんどです。
なお、必要な書類の種類や枚数は取引内容によって変わることもあるため、事前に司法書士や不動産会社に確認を取りましょう。
司法書士への報酬
司法書士への報酬は、所有権移転登記や抵当権抹消登記などの登記手続きを依頼した際に発生する費用です。
弊社の実務経験においては、所有権移転登記が3万円~10万円程度、住宅ローンの完済に伴う抵当権抹消登記が1万円~5万円程度が費用感の目安となります。ただし、取引内容や不動産の状況によって報酬は変動します。
費用負担については、所有権移転登記は不動産を取得する側である買主が負担し、抵当権抹消登記については売主の負担となるのが基本です。
なお、実務では売主と買主がそれぞれ司法書士を個別に手配するケースはまれで、仲介の不動産会社が提携している司法書士に依頼することが多いです。決済当日の手続きや書類確認を一括して進められるため、取引がスムーズになります。
不動産売却後も名義変更をしないリスク
不動産を売却した後、名義変更を行わなければ登記簿上の名義は売主のままになります。名義変更を行わない状態が続くと、売主・買主の双方に以下のようなトラブルが生じるリスクがあります。
- 固定資産税の納税義務が残る
- 買主が所有権を第三者に主張できない
- 買主の住宅ローンが実行されず、契約違反になる可能性がある
- 売買後の事故やクレームで責任を問われる可能性がある
なお、ここで紹介するのは、名義変更を行わなかった場合に起こり得る代表的なリスクの一例です。実際の不動産取引では、上記の他にもさまざまな問題が発生する可能性があるため、売買成立後は速やかに名義変更を進めましょう。
固定資産税の納税義務が残る
不動産売却後に名義変更を行わなければ、登記簿上の所有者は売主のままとなります。そのため、固定資産税の納税義務が売主側に残ってしまう可能性があります。
固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課税されます。つまり、実際には不動産を売却していても、登記簿の名義が変更されていなければ、税金の納付書は売主のもとに届きます。
たとえば、不動産を売却した後に名義変更をしないまま年をまたいでしまうと、翌年度の固定資産税の納付書が売主に送付されてしまいます。このような場合、買主との間で税金の負担をめぐるトラブルが生じるおそれもあるため、売却後は速やかに所有権移転登記を行うことが大切です。
買主が所有権を第三者に主張できない
不動産売却をしても、所有権移転登記を行っていなければ、買主はその不動産の所有権を第三者に対して主張することができません。前述したとおり、民法第177条では以下のように「不動産の対抗要件」が定められているためです。
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
引用元:
対抗要件を理解するうえで代表的な事例が「二重譲渡」です。一例として、弊社の実務経験では以下のようなケースがありました。
買主Aは先に売買契約を結び、代金も支払っていましたが、まだ所有権移転登記をしていない状態でした。その後、ほぼ同時期に買主Bが同じ不動産を購入し、先に登記を申請した場合、登記を完了させたBが所有者であると主張できてしまうのです。
つまり、不動産取引では「誰が先に契約したか」よりも、「誰が先に登記をしたか」が重要になります。このような仕組みから、名義変更の手続きにおいては「早く登記を完了させたほうが権利を主張しやすい」と言われることがあります。
そのため、不動産売却では決済と同時に所有権移転登記を行い、速やかに登記簿上の名義を変更することが大切です。
買主の住宅ローンが実行されず、契約違反になる可能性がある
不動産売買では、買主が住宅ローンを利用して購入するケースが多いものです。住宅ローンは、所有権移転登記と抵当権設定登記を同時に申請することを前提として融資が実行されます。
もしも名義変更の手続きを進めず、所有権移転登記が行われない状態になると、金融機関が融資を実行できない可能性があります。住宅ローンが実行されなければ買主は売買代金を支払うことができず、結果として売買契約で定めた決済が完了しない事態に発展します。
場合によっては契約違反とみなされ、違約金の支払いや契約解除につながるおそれがあります。融資を適切に受けるためにも、売買と同時に買主の名義へ変更することが大切です。
売買後の事故やクレームで責任を問われる可能性がある
不動産を売却したにもかかわらず、名義変更を行わないままにしておくと、登記簿上の所有者は売主のままになります。そのため、売却後に不動産に関するトラブルが発生した場合、名義人である売主に責任が及ぶ可能性があります。
たとえば、売却後に建物の老朽化によって外壁や屋根の一部が崩落し、通行人にけがをさせてしまった場合などです。このような事故が発生すると、登記簿上の所有者として売主に対して責任を問われるおそれがあります。
不要なトラブルや責任追及を避けるためにも、不動産売却後は速やかに所有権移転登記を行い、登記簿上の名義を正しく変更しておきましょう。
不動産売却の名義変更で起こりやすいミス
不動産売却に伴う名義変更の手続きは、思わぬミスや準備不足によって手続きが滞ってしまうケースも少なくありません。弊社の実務経験上、不動産売却の名義変更でとくに起こりやすいミスは以下のとおりです。
- 登記名義を確認せずに売却活動を始めてしまう
- 住宅ローン残債を把握せずに売却を進めてしまう
- 書類不備や登記原因の記載ミスがある
登記名義を確認せずに売却活動を始めてしまう
不動産売却を進める際には、まず登記簿を確認し、現在の登記名義人や権利関係を把握しておかなければなりません。売却活動を始める前に登記簿の内容を確認しておかないと、後になって手続きが進められなくなる可能性があるためです。
不動産実務において、登記名義を確認せずに売却活動を始めてしまったことで起こり得るトラブルの事例は以下のとおりです。
- 相続登記が完了しておらず、名義が被相続人のままになっているケース
- 結婚などで姓が変わっているのに、旧姓のまま登記されているケース
- 複数人の共有名義になっており、権利関係が複雑化しているケース
このような場合、売却活動を始める前に、名義変更や共有者の同意などの手続きが必要になります。もしも売買契約の直前になって上記のような問題が発覚すると、必要な手続きが間に合わず決済スケジュールが変更となり、相手方に迷惑をかけてしまうおそれがあります。
専門家の立場から申し上げますと、登記名義の確認を後回しにしてしまうのは、不動産売却で比較的よく見られる初歩的なミスのひとつです。不動産査定を依頼する前に、まずは法務局で登記簿謄本を取り寄せ、名義を確認しておきましょう。
住宅ローン残債を把握せずに売却を進めてしまう
不動産を売却する際に住宅ローンが残っている場合は、決済日にローンを完済し、同時に抵当権抹消登記を行う必要があります。そのため、決済日までに「いくら返済すればローンを完済できるのか」という残債額を把握しておかなければなりません。
しかし、住宅ローンの残債額を確認しないまま売却を進めてしまうと、決済日に必要な返済金額が確定できず、抵当権抹消の手続きが進められない可能性があります。抵当権が残ったままでは所有権移転登記を完了できないため、不動産取引そのものに影響が出てしまうのです。
具体的には、金融機関との日程調整が間に合わない、抵当権抹消に必要な書類が決済日までに届かないといった問題が発生し、最悪の場合は決済の延期につながることもあります。
実際、弊社で取り扱っていた案件でも、住宅ローン残債の完済ができず、不動産売却の手続きが滞ってしまうという事例がありました。
トラブルを防ぐためにも、不動産売却を検討した段階で金融機関に連絡し、住宅ローンの残債額や一括返済の手続きについて早めに確認しておくことが大切です。
書類不備や登記原因の記載ミスがある
所有権移転登記の申請では、登記申請書や添付書類に不備があると法務局で受理されず、手続きが進まなくなる可能性があります。
また、登記申請では「登記原因」と呼ばれる権利変動の理由を正確に記載する必要があります。不動産売却の場合は登記原因が「売買」となりますが、契約内容と登記申請書の記載が一致していない場合などは、手続きが止まってしまうことがあります。
なお、実務では司法書士が書類の作成や確認を行うため、大きな問題になることは多くありません。ただし、自分で名義変更を進める場合などは、書類や登記原因に不備が出ないよう注意しておきましょう。
不動産売却の名義変更は専門家に相談しながら進めるのが得策
不動産売却に伴う名義変更は、登記手続きや必要書類の準備など専門的な知識が求められる場面も多いため、専門家に相談しながら進めるのが得策です。
具体的には、司法書士や不動産の買取業者などに相談すると、手続きをスムーズに進められます。ここでは、名義変更の手続きで主に相談先となる専門家について解説します。
司法書士
司法書士は、不動産登記(名義変更)を専門に扱う法律の専門家です。所有権移転登記や抵当権抹消登記など、不動産の権利関係に関する登記手続きをサポートしてもらえます。
具体的には、登記申請書の作成や必要書類の確認、法務局への登記申請の代理などを依頼することができます。
書類の不備や記載ミスを防ぐためにも、不動産売却では司法書士に登記手続きを任せるのが実務上の基本です。決済当日に司法書士が必要書類を確認し、そのまま所有権移転登記の申請を行うことで、取引をスムーズに進められます。
なお、前述したとおり、名義変更に伴う所有権移転登記は3万円〜10万円程度、住宅ローンの完済に伴う抵当権抹消登記は1万円〜5万円程度の司法書士報酬が発生します。一定の費用はかかってしまいますが、不動産の専門家としては取引を滞りなく終えるためにも、司法書士への依頼を推奨しております。
不動産の買取業者
不動産の買取業者に売却する場合は、業者が提携している司法書士を紹介してもらったうえで、名義変更の手続きを進めることができます。
買取業者は不動産取引の実務に慣れているため、売却から登記までの流れをまとめてサポートしてもらうことができ、手続きをスムーズに進めやすいのが特徴です。
とくに「できるだけ早く不動産を売却して現金化したい」「一般の買主を探す時間がない」といった場合には、買取業者への相談が選択肢のひとつになります。仲介による売却と比べて、スピーディーに現金化できる点がメリットです。
ただし、不動産買取は業者が直接買い取る仕組みであるため、一般の買主に売却する仲介取引と比べて売却価格が下がるのが基本となります。売却スピードと価格のバランスを考えながら、仲介と買取のどちらが適しているかを検討しましょう。
まとめ
不動産売却の名義変更には、法務局での「所有権移転登記」が必要になります。売買契約を締結して代金の支払いが完了しても、自動的に名義が変更されるわけではなく、登記手続きを行うことで登記簿上の名義が買主へ移転します。
実際の不動産売却においては、不動産会社や司法書士の指示に従いながら必要書類を準備し、決済と同時に登記申請を行う流れとなります。
もしも不動産売却が完了した後も名義変更をしないままにしていると、固定資産税の負担や権利関係などのトラブルが発生するおそれがあります。そのため、不動産売却が完了すると同時に速やかに名義変更を進めることが大切です。
名義変更には専門的な知識が必要となるため、司法書士や不動産の買取業者などの専門家に相談することを検討してみてください。
よくある質問
不動産売却の名義変更は自分でもできますか?
不動産売却に伴う名義変更(所有権移転登記)は、自分で申請することも可能です。登記申請書を作成し、必要書類をそろえて法務局へ提出すれば、個人でも手続きを行えます。
ただし、登記申請書の作成や必要書類の確認には専門的な知識が必要になるため、自分で進めると時間と手間がかかってしまいます。そのため、不動産売却の実務では司法書士に登記手続きを依頼するのが基本です。
相続した不動産を売却する場合、名義変更はどうすればいいですか?
相続した不動産を売却する場合は、まず相続登記を行い、登記名義を被相続人から相続人へ変更する必要があります。名義が故人のままでは、相続人が売主として不動産を売却することができません。
そのため、相続した不動産を売却する際には、先に遺産分割協議などを行い、相続人の名義に変更する相続登記を完了させます。そのうえで、不動産会社と媒介契約を結び、通常の不動産売却の手続きを進めていく流れになります。

