固定資産税を共有者が払わないときはどうする?リスクや立替分の請求方法を解説

共有名義不動産の固定資産税について、「ほかの共有者が負担分を払ってくれない」「なぜ自分だけが立て替えなければならないのか」と悩んでいる方もいるでしょう。自分はきちんと負担しているのに、払わない共有者の分まで納付することに納得できないと感じるのは無理もありません。
しかし、共有名義不動産の固定資産税には連帯納税義務があるため、共有者が払わない場合は、滞納を避けるためにほかの共有者が未納分をいったん納付する必要があります。
固定資産税を払わない共有者にも、当然ながら納税義務があります。ただし、共有者の一人が義務を果たしていないからといって、ほかの共有者が固定資産税を納めなくてもよい理由にはなりません。
共有者全員が税額全体について納税義務を負っているため、未納分があれば、自治体はほかの共有者にも納付を求めることができます。
つまり、払わない共有者の納税義務がほかの共有者へ移るわけではありません。払わない本人にも義務は残りますが、固定資産税が完納されるまでは、ほかの共有者も未納分を納付しなければならないというルールです。
もっとも、立て替えた金額まで最終的に負担しなければならないわけではありません。自分の負担分を超えて固定資産税を納付した場合は、払わなかった共有者に対して、その人が負担すべき金額を請求できます。
ただし、立替分を回収できても、共有状態が続く限り、翌年度以降も同じ問題が繰り返される可能性があります。固定資産税の未払いが続いている場合は、目の前の立替分を請求するだけでなく、持分の売買や不動産全体の売却によって、共有状態そのものを解消することも大切です。
弊社クランピーリアルエステートでは、固定資産税の負担を巡って共有者と対立している場合でも、共有持分のみの買取に対応しています。毎年の立替えや共有者への請求を続けることに負担を感じている場合は、査定のみでもお気軽にご相談ください。
本記事では、共有者が固定資産税を払わない場合の納税義務や放置するリスク、立替分を請求する手順を解説します。未払い問題を繰り返さないために、共有状態を根本的に解消する方法も紹介します。
目次
固定資産税を共有者が払わないと、他の共有者に納付が求められる

固定資産税を共有者が払わない場合、その不動産の固定資産税を完納するには、ほかの共有者が未納分をいったん納付する必要があります。
もちろん、固定資産税を払わない共有者にも納税義務があります。支払いを拒んだからといって、その人の納税義務がなくなったり、法的に支払わなくてよくなったりするわけではありません。
それでもほかの共有者に未納分の支払いが及ぶのは、共有名義不動産の固定資産税について、共有者全員が税額全体に対する「連帯納税義務」を負っているためです。
共有名義における連帯納税義務とは、各共有者が自分の持分割合に相当する金額だけでなく、自治体に対して固定資産税の全額を納付する義務を負う仕組みです。共有物に関する連帯納税義務については、地方税法第10条の2第1項で、次のように定められています。
共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。 引用元:e-Gov法令検索 地方税法第10条の2
「地方税法」という名称ではありますが、特定の都道府県や市区町村だけに適用される条例ではなく、国が定めた法律です。そのため、共有名義不動産の固定資産税について、共有者全員が連帯納税義務を負うという基本的なルールは日本全国で適用されます。
連帯納税義務がある場合、固定資産税は共有者ごとの持分割合に応じて分割して課税されるわけではありません。
仮に共有者間で「持分が2分の1だから、固定資産税も半分ずつ負担する」と決めていても、それは共有者同士の負担割合に関する取り決めです。自治体に対する納税義務が、持分割合に応じて分割されるわけではありません。
自治体は、共有名義不動産に課された固定資産税が全額納付されたかどうかで判断します。そのため、自分の持分割合に相当する金額を納付していても、残りの税額が納付されていなければ、固定資産税を完納したことにはなりません。
たとえば、兄弟2人が持分2分の1ずつで不動産を共有しており、年間の固定資産税が12万円だったとします。兄弟間では6万円ずつ負担することにしていましたが、兄が自分の負担分を払わず、弟だけが6万円を納付したとしましょう。
この場合、弟は自分の持分割合に相当する6万円を納付しています。しかし、自治体から見れば、年間12万円のうち6万円が未納になっている状態です。
兄にも未納分を納付する義務はありますが、自治体が兄だけに請求するわけではありません。弟も固定資産税の全額について連帯納税義務を負っているため、自治体は弟に対しても、残りの6万円の納付を求めることができます。
つまり、固定資産税を払わない共有者が法的な責任を免れるわけではないものの、その人が払わなければ、未納分の支払いのしわ寄せがほかの共有者に及ぶことになります。
ただし、ほかの共有者が立て替えた金額まで、最終的に負担しなければならないわけではありません。詳しくは「固定資産税を払わない共有者には求償権の行使で負担分を請求できる」で解説しますが、自分の負担分を超えて固定資産税を納付した場合は、払わなかった共有者に対して、その人が負担すべき金額を請求できます。
納税通知書が届く代表者だけに納税義務があるわけではない
共有名義不動産では、共有者全員が固定資産税の納税義務者になりますが、納税通知書が一人ひとりに送られるわけではありません。共有者のうち一人が代表者として選ばれ、その代表者宛てに一通の納税通知書が送付されるのが基本です。
「納税通知書を受け取った代表者が固定資産税を払うもの」と考えるかもしれませんが、代表者は主に納税通知書の送付先や納付手続の窓口となる人であり、代表者だけが固定資産税の納税義務を負うわけではありません。
そのため、「代表者が払わない」「代表者以外が払わない」という場合には、未納額について他の共有者に納付が求められてしまいます。
たとえば、代表者が固定資産税を全額納付し、他の共有者が自分の負担分を支払わない場合、代表者がその分を立て替えている状態になります。この場合、代表者は、払わなかった共有者に対して持分割合に応じた負担分を請求できます。
一方、固定資産税を払わない共有者が代表者である場合も、その人だけの問題として放置することはできません。代表者にも納税義務はありますが、自治体が代表者の支払いだけを待つわけではなく、連帯納税義務を負う他の共有者に未納分の納付を求めることがあります。
つまり、代表者は納税通知書を受け取る窓口ではあるものの、固定資産税を一人で負担する人ではありません。
代表者の決め方は自治体によって異なりますが、持分割合や居住地、登記簿への記載順などをもとに選ばれるのが一般的です。また、届出によって代表者を変更できる自治体もあります。
固定資産税を払わない共有者が代表者となっており、納税通知書の内容や納付状況を確認できない場合は、不動産所在地の自治体に確認方法や代表者変更の可否を相談しましょう。
固定資産税を共有者が払わないことのリスク
固定資産税を払わない共有者がいる場合、納税義務を果たしていないのはその共有者です。しかし、未払いによるリスクが、払わない共有者だけでなく、他の共有者に生じることもあります。
「払わない共有者が悪いのだから、自分には関係がない」と考えて未納を放置すると、自分にも金銭的・法的な不利益が及びかねません。固定資産税を払わない共有者がいる場合に起こり得る主なリスクは、次のとおりです。
- 代表者や他の共有者が立て替え続けることになる
- 自分の負担分を払っていても延滞金や督促の対象になり得る
- 共有名義不動産を差し押さえられる可能性がある
- 共有者間の関係が悪化して売却や管理がしにくくなる
代表者や他の共有者が立て替え続けることになる
固定資産税を払わない共有者がいると、滞納を避けるために、代表者や他の共有者がその人の負担分を立て替えるケースもあります。
固定資産税は一度だけではなく、不動産を所有している限り原則として毎年課されます。そのため、共有者が負担分を払わない状態を放置すると、翌年度以降も同じ立替えが繰り返されてしまうことも実務上は珍しくありません。
たとえば、ある共有者の負担分が年間3万円であれば、1年だけなら大きな金額ではないと感じるかもしれません。しかし、5年間続けば立替額は合計15万円、10年間なら30万円になります。修繕費や管理費なども一人で負担している場合には、さらに負担が重くなるでしょう。
実際、弊社にも次のような相談が寄せられています。
共有名義の実家について、相談者様が毎年数万円の固定資産税を立て替えていました。
当初は「この程度なら自分が払っておけばよい」と考えていましたが、他の共有者から負担分が支払われない状態が5年以上続き、立替額が積み上がっていました。
毎年請求しなければならないことにも負担を感じるようになり、この先も固定資産税を負担し続けることへの不安から、自分の共有持分を売却できないか弊社へ相談されました。
固定資産税を共有者が払わない問題は、一度立て替えれば解決するとは限りません。共有状態が続く限り、翌年度以降も同じ負担が発生する可能性があります。
立替額が少ないうちから負担額と納付記録を整理し、払わない共有者に請求することが大切です。
自分の負担分を払っていても延滞金や督促の対象になり得る
共有者間で決めた自分の負担分を支払っていても、自治体に固定資産税が全額納付されていなければ、滞納による影響を受けるケースがあります。
たとえば、自分の負担分を代表者に渡していたとしても、代表者がそのお金を自治体への納付に充てていなければ、固定資産税を納めたことにはなりません。また、自分の持分割合に相当する金額だけを自治体へ納付しても、残額があれば共有名義不動産の固定資産税は完納されていない状態です。
固定資産税が納期限までに完納されなければ、未納額には納期限の翌日から延滞金が加算されます。また、自治体から督促状や催告書が送られることがあります。
自治体によって通知の方法は異なりますが、代表者だけでなく、他の共有者にも督促状を送付している自治体もあります。「自分の負担分はすでに払った」「代表者にお金を渡した」という事情だけで、自治体に対する責任を免れるとは限りません。
弊社には、代表者へ負担分を渡していたにもかかわらず、固定資産税が納付されていなかった相談も寄せられています。
共有名義不動産の代表者である兄が、他の共有者から固定資産税の負担分を集めていました。
兄は「固定資産税はすでに払っている」と説明していましたが、実際には自治体へ納付されておらず、督促状が届いたことで未納が発覚しました。
相談者様はすでに自分の負担分を渡していたものの、まずは滞納の拡大を防ぐために未納分を納付しました。しかし、今後も兄に固定資産税の管理を任せることに不安を感じ、同じトラブルを繰り返したくないとの理由から、自分の共有持分を売却できないか弊社へ相談されました。
共有者間でお金を精算したことと、自治体に固定資産税を納付したことは別の問題です。代表者に負担分を渡した場合も、領収書や納税証明書などで、実際に納付されているかを確認しておくのが大切です。
共有名義不動産を差し押さえられる可能性がある
固定資産税の滞納を放置すると、最終的には財産の差し押えに進む可能性があります。
固定資産税に係る滞納処分は地方税法373条に定められており、督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しない場合は、財産の差し押さえに進むことが可能となります。
差し押えの対象になるのは、共有名義不動産そのものだけではありません。実際には、次のような財産が対象となります。
- 共有名義不動産自体を含む不動産
- 銀行口座の預貯金
- 給与債権
- 自動車、貴金属、骨董品、現金などの動産
- 保険金の解約返戻金
共有名義不動産の固定資産税は、共有者全員が連帯して納付する義務を負います。そのため、各自の持分に関係なく、共有者全員に差し押さえのリスクが及ぶ可能性があります。
差し押えに進む前に、早めに納付や立て替えの対応を行い、あわせて支払わない共有者への請求や、共有状態そのものの見直しを検討することが大切です。
共有者間の関係が悪化して売却や管理がしにくくなる
固定資産税の支払いをめぐるトラブルは、単なる金銭の問題では終わりません。立て替えによる不公平感が、将来的な売却や管理を妨げる障害になることがあります。
弊社に寄せられる買取相談でも、「代表者1人が固定資産税をすべて負担している」というケースは、体感として半数近くにのぼります。最初は善意で立て替えていても、数年経てば「なぜ自分だけが」という憤りに変わるものです。
一方、払わない側には「誰かが払うのが当たり前」という甘えが生じ、この認識のズレが、いざ売却や活用を検討する際の深刻な対立へと発展するケースを、私たちは数多く見てきました。
実務上、共有不動産の売却には全員の同意が必要ですが、感情がもつれると話し合いすら成立しません。修繕などの管理に関しても話し合いにならなかったり、費用負担で揉めたりすることがあります。
結果として、「売りたくても売れない」「老朽化しても修繕できない」といった状況になり、資産としての活用自体が難しくなってしまいます。
実務上も、共有者間の対立が深くなってからでは、解決の選択肢が著しく狭まってしまいます。立て替え分の請求は早めに行い、もし話し合いが難しいようであれば、共有関係そのものの解消まで視野に入れて対応することが重要です。
固定資産税を払わない共有者には求償権の行使で負担分を請求できる
他の共有者が払わなかった固定資産税を立て替えた場合は、その共有者に対して、本来負担すべきだった金額を請求できます。このように、自分が代わりに支払った金額の返還を求める権利を「求償権」といいます。
民法では、各共有者が持分割合に応じて共有物に関する費用を負担すると定められています。また、連帯して債務を負う人の一人が支払った場合には、他の人の負担部分について求償できることも定められています。
ただし、固定資産税を立て替えれば、自動的に相手からお金が返ってくるわけではありません。
立て替えた側から、相手に金額や支払期限を伝えて請求する必要があります。相手が請求に応じなければ、内容証明郵便や裁判所の手続きを利用して回収を進めます。
求償できる金額は、原則として、固定資産税の納付額に相手の持分割合を掛けて計算します。
| 年間の固定資産税 | 自分の持分 | 相手の持分 | 相手に請求できる金額 |
|---|---|---|---|
| 12万円 | 2分の1 | 2分の1 | 6万円 |
たとえば、兄弟が持分2分の1ずつで不動産を共有しており、弟が年間12万円の固定資産税を全額納付した場合、兄に対して原則6万円を請求できます。
共有者間で「実際に住んでいる人が多く負担する」など、持分割合とは異なる負担方法を合意している場合は、その合意内容に従って請求額を検討します。合意の有無や内容を巡って争いになりそうな場合は、持分割合だけで判断せず、過去のメールや書面、支払状況なども確認しましょう。
また、求償権には消滅時効があります。現在の民法では、債権は原則として、権利を行使できることを知った時から5年間、または権利を行使できる時から10年間行使しないと、時効によって消滅します。固定資産税を立て替えた人は通常、納付した時点で請求できることを把握しているため、実務上は、それぞれの納付日から5年以内を目安に請求することが重要です。
固定資産税を複数年にわたって立て替えている場合は、すべてをまとめて一つの時効が進むのではなく、原則として年度や納付ごとに時効を確認する必要があります。古い立替分から順に時効を迎える可能性があるため、早めに請求を始めましょう。
【固定資産税の立替分は5年以内を目安に請求する】
固定資産税の立替分を請求できる権利には、消滅時効があります。原則として、次のいずれか早い時点で時効が成立します。
- 権利を行使できることを知った時から5年
- 権利を行使できる時から10年
固定資産税を立て替えた場合は、通常、納付した時点から請求できると考えられるため、それぞれの納付日から5年以内を目安に請求しましょう。
複数年分を立て替えている場合は、古い納付分から順に時効を迎える可能性があります。なお、2020年4月1日より前の立替分には改正前の民法が適用される場合があるため、長期間の立替えがある場合は弁護士へ相談すると安心です。
固定資産税を払わない共有者へ請求権を行使する流れ
固定資産税の立替分を請求する場合、最初から裁判を起こす必要はありません。
まずは納付額と相手の負担額を整理し、書面で支払いを求めます。それでも相手が応じなければ、内容証明郵便、支払督促、訴訟の順に対応を強めていくのが一般的です。
1. 納付額と相手の負担額を確認する
最初に、実際に納付した固定資産税の金額と、相手に請求する金額を確認します。
請求の根拠を示せるよう、次の資料をそろえておきましょう。
- 固定資産税の納税通知書や課税明細書
- 領収書や口座振替の履歴など、実際に納付したことが分かる資料
- 不動産の登記事項証明書など、持分割合が分かる資料
- 共有者間で負担割合を決めた書面やメール
- 過去に相手へ請求したメールやLINEなどの記録
相手に請求する金額は、基本的に相手への請求額=自分が納付した固定資産税額×相手の負担割合で計算します。たとえば、固定資産税12万円を一人で納付し、相手の持分が2分の1であれば、原則として6万円を請求します。
複数年分を立て替えている場合は、年度ごとに「納付日・納付額・相手の負担割合・請求額」を一覧にすると、相手にも請求内容が伝わりやすくなります。
| 年度 | 納付日 | 納付額 | 相手の負担割合 | 請求額 |
|---|---|---|---|---|
| 2024年度 | 2024年5月31日 | 12万円 | 2分の1 | 6万円 |
| 2025年度 | 2025年6月2日 | 12万円 | 2分の1 | 6万円 |
| 2026年度 | 2026年6月1日 | 12万円 | 2分の1 | 6万円 |
この例では、相手に請求する合計額は18万円です。
2. 支払期限を定めて書面で請求する
請求額を確認したら、相手に支払いを求めます。
最初はメールや手紙などでも構いませんが、口頭だけで請求すると、後から「請求されていない」「金額を聞いていない」と争われる可能性があります。請求した日時や内容が分かる方法を選びましょう。
請求書には、少なくとも次の内容を記載します。
- 対象となる不動産
- 固定資産税を納付した年度と日付
- 自分が納付した金額
- 相手の持分割合または合意した負担割合
- 相手に請求する金額
- 支払期限
- 振込先
請求内容は、感情的な不満を長く書くよりも、「いつの固定資産税を、いくら立て替え、いくら払ってほしいのか」を簡潔に伝える方が効果的です。
たとえば、次のように伝えます。
あなたの持分は2分の1であるため、負担分は6万円です。
20〇〇年⚪︎月〇日までに、下記口座へお振り込みください。
相手に一括で支払う意思はあるものの、資金的な事情ですぐに払えない場合は、分割払いを検討してもよいでしょう。その場合も、毎月の支払額、支払日、支払いが遅れた場合の扱いを書面やメールで残しておくことが重要です。
3. 支払いに応じない場合は内容証明郵便で請求する
通常の手紙やメールで請求しても支払いに応じない場合は、内容証明郵便を利用します。
内容証明郵便とは、いつ、どのような内容の文書を、誰から誰に送ったのかを日本郵便が証明する制度です。相手が受け取ったことも記録したい場合は、配達証明も付けます。
内容証明郵便には、次の内容を記載します。
- 固定資産税を立て替えた事実
- 対象年度と納付額
- 相手の負担割合と請求額
- 支払期限
- 期限までに支払われない場合は法的手続を検討すること
内容証明郵便を送っただけで、相手に支払いを強制できるわけではありません。また、日本郵便が請求内容の正しさまで証明してくれるわけでもありません。
それでも、請求した事実と内容を証拠として残せるため、相手に支払いを促したり、その後の支払督促や訴訟で請求経緯を示したりするのに役立ちます。
なお、請求による催告をすると、時効の完成は原則として6か月間猶予されますが、時効期間が最初からやり直しになるわけではありません。6か月以内に支払督促や訴訟などの手続を取らなければ、時効が完成する可能性があります。
時効が迫っている場合は、内容証明郵便を送るだけで安心せず、早めに弁護士へ相談しましょう。
4. 支払督促や訴訟を検討する
内容証明郵便を送っても相手が支払わない場合は、裁判所を利用した回収を検討します。
比較的利用しやすい方法が「支払督促」です。支払督促は、金銭の支払いを求める場合に、相手の住所地を管轄する簡易裁判所へ申し立てる手続きです。
原則として書類審査で進むため、通常の訴訟のように、最初から裁判所へ出向いて審理を受ける必要はありません。相手が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議を申し立てなければ、仮執行宣言を経て、強制執行を申し立てられるようになります。
一方、相手が異議を申し立てた場合は、請求額に応じて通常の民事訴訟へ移行します。
請求額が60万円以下で、争点が複雑でない場合は、原則として1回の審理で解決を目指す少額訴訟を利用する方法もあります。
| 手続 | 向いているケース | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 支払督促 | 請求額や立替えの事実が明確で、相手が強く争わないと考えられる場合 | 原則として書類審査で進む。相手が異議を申し立てると訴訟へ移行する |
| 少額訴訟 | 請求額が60万円以下で、証拠や争点が比較的シンプルな場合 | 原則として1回の審理で解決を目指す |
| 通常訴訟 | 請求額が大きい場合や、負担割合・合意内容などに争いがある場合 | 証拠をもとに双方の主張を審理し、判決による解決を目指す |
裁判所で支払いを命じる判断が確定しても、相手が任意に支払わない場合は、預貯金や給与などに対する強制執行を検討します。
固定資産税を払わない共有者との問題を根本的に解決する方法
固定資産税の立替分を請求して回収できても、共有名義のままであれば、翌年度以降に同じ未払いが繰り返される可能性があります。
固定資産税の負担を巡る問題を根本的に解決するには、持分の売買や不動産全体の売却によって、共有状態そのものを解消することが有効です。
どの方法が適しているかは、今後もその不動産を所有したいか、自分だけ共有関係から抜けたいかによって異なります。
| 解決方法 | 適している人 |
|---|---|
| 払わない共有者の持分を買い取る | 今後も不動産を所有・利用したい人 |
| 自分の共有持分を売却する | 他の共有者と関わらず、自分だけ共有関係から抜けたい人 |
| 共有名義不動産全体を売却する | 共有者全員が不動産を手放してもよいと考えている場合 |
固定資産税を払わない共有者の持分を買い取る
今後もその不動産を所有したい場合は、固定資産税を払わない共有者の持分を買い取る方法があります。
持分を買い取れば、その人は共有者ではなくなるため、以後はその人に固定資産税の負担を求める必要がなくなります。共有者が2人だけであれば、持分の買取によって自分の単独名義となり、不動産の管理や売却も自分だけで判断できるようにもなります。
これまで立て替えた固定資産税がある場合は、双方で合意したうえで、立替分を持分の売買代金から差し引いて精算することも可能です。
ただし、相手に持分を売る意思がなければ、通常の売買は成立しません。また、他にも共有者がいる場合は、持分を買い取った後も共有状態は続く点に注意しましょう。
自分の共有持分を売却する
不動産を手放してもよく、固定資産税を払わない共有者との関係から抜けたい場合は、自分の共有持分を売却する方法があります。
自分の共有持分だけであれば、原則として他の共有者の同意を得ずに売却できます。持分を売却して共有者でなくなれば、その後は固定資産税を立て替えたり、他の共有者へ負担分を請求したりする必要がありません。
ただし、共有持分は一般の個人には売却しにくく、不動産全体を売る場合よりも価格が低くなりやすい傾向があります。そのため、共有持分の取扱実績がある不動産会社への売却が現実的です。
なお、持分を売却しても、売却前に発生した固定資産税の立替分が自動的に精算されるわけではありません。過去の立替分については、持分売却とは別に、払わなかった共有者へ請求する必要があります。
共有名義不動産全体を売却する
共有者全員で合意し、不動産全体を売却したうえで、売却代金を持分割合に応じて分ける方法です。
不動産全体を売却する場合は、共有持分だけを売る場合に比べて買主が見つかりやすく、相場に近い価格で売却できる可能性があります。また、固定資産税の問題だけでなく、今後の管理や修繕、相続時の権利関係の複雑化といった問題もまとめて整理できます。
買取の現場でも「本当は不動産全体で売れれば一番よかった」というケースは多いです。とくに、相続したものの使っていない実家など、利用予定がないまま税金や管理負担だけが発生している場合は、不動産全体を売却して現金化する方が合理的といえます。
もっとも、不動産全体の売却には共有者全員の合意が必要です。実務上は、価格の希望が合わない、思い入れの差が大きい、1人だけ居住を続けたいといった理由で、話がまとまらないことも珍しくありません。
そのため、まずは査定を取り、市場価格の目線をそろえたうえで話し合うことが重要です。売却条件を先に可視化してから協議した方が、感情論だけで話が止まるのを防ぎやすくなります。
固定資産税を共有者が払わないケースに関するよくある質問
固定資産税を共有者ごとの持分割合に分けて納付できますか?
原則として、自治体に対する固定資産税の納税義務を、共有者ごとの持分割合に分けることはできません。自分の持分が2分の1だからといって、税額の2分の1だけを納めても、残額が未納であれば完納したことにはなりません。
一方、共有者同士の負担については、原則として持分割合に応じて分けられます。たとえば、固定資産税が年間12万円で、2人の持分が2分の1ずつなら、共有者間では6万円ずつ負担するのが基本です。
共有者が行方不明・音信不通で固定資産税が払えない時はどうすればいいですか?
共有者が行方不明・音信不通であっても、固定資産税の納税義務がなくなるわけではありません。他の共有者にも連帯納税義務があるため、まずは自治体に未納額や納付状況を確認し、滞納を避けるために他の共有者がいったん納付することを検討します。
他の共有者が立て替えた金額は、行方不明の共有者の負担分として後から請求できる可能性があります。納税通知書や領収書、口座の履歴など、立替えを証明できる資料は保管しておきましょう。
今後、不動産の管理や売却まで進める必要がある場合は、まず所在の調査を行います。それでも居場所が分からず、本人の財産を管理する人もいない場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があります。不在者財産管理人は行方不明者の財産を管理し、家庭裁判所の許可を得て不動産の売却などを行える場合があります。
また、所在等不明共有者がいる不動産については、裁判所の手続を利用して共有物の管理や持分の取得・譲渡を進められる制度もあります。どの制度が適しているかは状況によって異なるため、所在調査をしても連絡が取れない場合は、弁護士などへ相談しましょう。
共有者が認知症で固定資産税を払えない時はどうすればいいですか?
共有者が認知症になっても、共有者としての固定資産税の納税義務がなくなるわけではありません。固定資産税が未納になれば他の共有者にも納付が求められるため、まずは納付状況を確認し、必要に応じて他の共有者がいったん立て替えます。
認知症であっても、本人に支払いの内容を理解して判断できる能力が残っている場合は、本人と相談して納付や精算を進められます。一方、判断能力が十分でない場合、家族だからという理由だけで、本人の預貯金を管理したり、本人に代わって契約したりできるわけではありません。
すでに成年後見人等が選任されている場合は、その人に固定資産税の支払いについて相談します。まだ選任されていない場合は、家庭裁判所へ成年後見制度の利用を申し立て、選任された成年後見人等に本人の財産管理や必要な支払いを行ってもらう方法があります。
認知症の共有者がいると、固定資産税の精算だけでなく、持分の売買や不動産全体の売却についても話し合いが進まないことがあります。固定資産税の負担が続いている場合は、成年後見制度の利用とあわせて、共有状態を今後どう整理するかも検討しましょう。
不動産に住んでいない共有者も固定資産税を負担する必要がありますか?
不動産に住んでいない共有者にも、固定資産税を負担する義務があります。
固定資産税は、実際にその不動産を使用している人ではなく、原則として毎年1月1日時点の所有者に課される税金です。そのため、「自分は住んでいない」「不動産を利用していない」という理由だけで、納税義務を免れることはできません。
共有者間では、原則として持分割合に応じて固定資産税などの負担を分けます。たとえば、持分が2分の1ずつなら、実際に住んでいるかどうかにかかわらず、固定資産税も2分の1ずつ負担するのが基本です。
ただし、共有者全員が合意すれば、「住んでいる共有者が固定資産税を多く負担する」など、持分割合とは異なる負担方法を決めることもできます。もっとも、これは共有者同士の取り決めにすぎず、自治体に対して共有者全員が負う連帯納税義務は変わりません。
まとめ
共有名義不動産の固定資産税については、共有者全員が税額全体に対する連帯納税義務を負っています。そのため、共有者が固定資産税を払わない場合でも、他の共有者に未納分の納付が求められます。
「払っていない共有者が悪いのだから、自分には関係がない」と放置することはできません。固定資産税の未納が続けば、他の共有者が立て替え続けることになるほか、延滞金や督促が発生するなどのリスクもあります。
他の共有者の負担分まで固定資産税を納付した場合は、求償権を行使して、その人が本来負担すべき金額を請求できます。まずは納税通知書や領収書、持分割合が分かる資料をそろえ、支払期限を定めて書面で請求しましょう。
固定資産税の未払いは、税金だけでなく、共有者間の関係や将来の売却にも影響する問題です。立替額が大きくなる前に支払いを求めるとともに、今後も共有状態を続けるべきかを早めに検討しましょう。
弊社クランピーリアルエステートでは、固定資産税の負担を巡って共有者との関係が悪化している場合や、不動産全体の売却について同意を得られない場合でも、共有持分のみの買取に対応しています。
他の共有者とこれ以上話し合うことが難しい場合や、毎年の固定資産税の負担から抜けたい場合は、まずは共有持分の査定をご相談ください。


