共​有​名​義​不​動​産​の​売​却​で​3​0​0​0​万​円​特​別​控​除​は​使​え​る​?​適​用​要​件​や​計​算​例​、​注​意​点​を​解​説

共有名義不動産でも、一定の要件を満たせば「3,000万円特別控除」を利用できます。共有名義の場合は、各共有者の持分割合に応じて売却時の利益を計算し、それぞれについて特例を適用できるかを判断します。
要件を満たす共有者は、それぞれ最大3,000万円を譲渡所得から控除できます。そのため、資産価値が上がった不動産を売却する場合には、大きな節税効果が期待できます。

たとえば、夫婦2人で土地・建物を共有し、両者が要件を満たしている場合は、合計最大6,000万円まで控除できる可能性があります。売却によって利益が発生しても、控除によって課税対象となる譲渡所得が0円になるケースもあります。

ただし、3,000万円特別控除を利用するには一定の要件があります。主な要件は次のとおりです。

  • 自分が現在住んでいる不動産であること
  • 以前自分が住んでいた不動産の場合は「住まなくなった日から3年後の年の12月31日まで」に売却すること
  • 以前住んでいた家を解体した場合は「解体から1年以内」に売買契約を結んでいること
  • 売却相手が配偶者や親子などの特別な関係者でないこと
  • 売却した年の前年・前々年に3,000万円特別控除などを利用していないこと
  • 売却した年・前年・前々年に特定の居住用財産の買換え特例などを利用していないこと

この特例はマイホームを対象とした制度のため、投資目的で所有している不動産や別荘などには原則として適用されません。また、3,000万円特別控除を利用する共有者は、それぞれ売却した翌年に確定申告を行う必要があります。

なお、家屋を所有せず敷地のみを共有している場合は原則として対象外ですが、家屋所有者と同居・生計を一にしているなど、一定の要件を満たせば適用できる場合があります。
本記事では、共有名義不動産の売却における3,000万円特別控除の基本ルールや計算例、注意点をわかりやすく解説します。あわせて、利用できるその他の特例や、売却時に押さえておきたいポイント、発生する費用・税金についても紹介します。

共有名義不動産の売却で「3000万円特別控除」は利用できる?

共有名義の不動産であっても、一定の要件を満たせば、3,000万円特別控除を利用できます。

「3,000万円特別控除」とは、正式には「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を指します。マイホームの売却で発生した利益(譲渡所得)から最大3,000万円を控除できるため、譲渡所得税の負担を軽減できます。
たとえば、再開発や駅周辺の商業施設の整備などで資産価値が上がった不動産は、購入時よりも高値で売却でき、利益が生じることがあります。仮に、売却によって1,000万円の利益が発生した場合も、この特例を適用できれば全額控除できるため、譲渡所得税はかかりません。
共有名義の場合、売却時の利益は共有者の持分割合に応じて計算し、それぞれについて特例を適用できるかを判断します。特例が適用されれば、原則として共有者1人につき最大3,000万円まで控除を受けられます。

夫婦2人で自宅の土地・建物を共有している場合は、両者が要件を満たしていれば最大6,000万円まで控除できる可能性があります。

ただし、適用には「実際に住んでいた不動産」であることに加え、一定の要件が設けられています。具体的な要件については、次の章で詳しく解説します。

共有名義不動産の売却における「3000万円特別控除」の基本ルール

共有名義不動産の売却で3,000万円特別控除の利用を検討している場合は、適用要件や必要な手続きなどの基本ルールを押さえておくことが大切です。

特例を利用するには、居住状況や売却相手などに関する一定の要件を満たしたうえで、必要書類をそろえて確定申告を行う必要があります。

ここでは、共有名義不動産の売却で3,000万円特別控除を利用する際の主な適用要件、必要書類、確定申告の方法について解説します。

適用要件

3,000万円特別控除は、マイホームなどの「居住用財産」を売却した場合に利用できる特例です。家屋だけでなく、家と一緒に売却する土地(敷地や借地権)も控除の対象になります。
ただし、この特例を利用できるのは、原則として居住していた家屋の所有者です。敷地のみを共有している場合でも、一定の要件を満たせば適用できますが、控除の上限や適用方法が異なります。

ケース別の主な適用要件は次のとおりです。

ケース 適用条件
現在住んでいる不動産を売却する場合 ・自分が現在住んでいる不動産であること
・売却相手が配偶者や親子などの特別な関係者でないこと
・売却した年の前年・前々年に3,000万円特別控除などを利用していないこと
・売却した年・前年・前々年に特定の居住用財産の買換え特例などを利用していないこと
以前住んでいた不動産を売却する場合 ・以前自分が住んでいた不動産であること
・「住まなくなった日から3年後の年の12月31日まで」に売却すること
・売却相手が配偶者や親子などの特別な関係者でないこと
・売却した年の前年・前々年に3,000万円特別控除などを利用していないこと
・売却した年・前年・前々年に特定の居住用財産の買換え特例などを利用していないこと
以前住んでいた家を解体し、更地として売却する場合 ・自宅として使用していた建物を取り壊していること
・解体から1年以内に売買契約を結んでいること
・「住まなくなった日から3年後の年の12月31日まで」に売却すること
・解体してから売買契約を結ぶまで、土地を駐車場など別用途で利用していないこと
・売却相手が配偶者や親子などの特別な関係者でないこと
・売却した年の前年・前々年に3,000万円特別控除などを利用していないこと
・売却した年・前年・前々年に特定の居住用財産の買換え特例などを利用していないこと

参考:国税庁|No.3302 マイホームを売ったときの特例
適用期限や過去の特例利用については、具体的な日付で見るとわかりやすくなります。たとえば、2023年4月1日にマイホームに住まなくなった場合、3年を経過する日は2026年4月1日です。そのため、3,000万円特別控除を利用するには、2026年12月31日までに売却する必要があります。

また、2026年に売却する場合は、原則として2024年・2025年に3,000万円特別控除などを利用していないことが必要です。マイホームの買換え・交換の特例については、2024年・2025年に加えて、売却する2026年にも利用していないことが要件となります。

敷地のみを共有している場合の適用要件

家屋を所有せず敷地のみを共有している場合でも、通常の3,000万円特別控除の適用要件に加え、次の要件をすべて満たせば特例を利用できます。

  • 家屋とその敷地を一緒に売却すること
  • 家屋の所有者と敷地の所有者が親族関係にあり、生計を一にしていること
  • 敷地の所有者が家屋の所有者と一緒にその家屋に住んでいること

ただし、この場合は家屋の所有者と敷地の所有者がそれぞれ最大3,000万円の控除を受けられるわけではありません。家屋の所有者が控除した後の残額を敷地の所有者が利用する仕組みで、控除額は両者を合わせて最大3,000万円です。
具体的な計算例は、「夫が土地1/2・建物単独所有、妻が土地1/2の場合」で解説します。

参考:国税庁|No.3311 家屋と敷地の所有者が異なるとき

適用できないケース

次のようなケースでは、3,000万円特別控除を利用できない可能性があります。

  • 自分が居住するために使用していない投資用不動産や賃貸物件などを売却した場合
  • 別荘など、主に趣味や娯楽、保養のために所有している家屋を売却した場合
  • 特例の適用を目的として一時的に入居したと判断される場合
  • 新築や建替えの間の仮住まいとして使用していただけの家屋を売却した場合
  • 配偶者や親子、内縁関係にある人など、特別な関係にある人に売却した場合
  • 売却した年の前年・前々年に同じ特例を利用している場合
  • 売却した年・前年・前々年に特定の居住用財産の買換え特例などを利用している場合

簡単にいえば、実際に住んでいたマイホームではない場合や、特別な関係者への売却などは特例の対象外となります。
参考:国税庁|No.3308 共有のマイホームを売ったとき

必要書類

3,000万円特別控除を利用するためには、不動産を売却した翌年に確定申告を行い、必要な書類を添付・提出する必要があります。

確定申告で提出する主な書類と、譲渡所得の計算や所有関係の確認に備えて準備しておきたい書類は、次のとおりです。

書類 概要
確定申告書 譲渡所得や控除額を申告するための書類。
取得方法:税務署または国税庁サイト(e-Taxで作成)
譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】 不動産の売却価格・取得費・譲渡費用などを記載し、譲渡所得を計算するための書類。
取得方法:税務署または国税庁サイト(e-Taxで作成)
売買契約書の写し 売却価格や契約日などを確認し、譲渡所得を計算する際に使用する書類。
取得方法:売買契約時に受領した書類を使用
戸籍の附票の写しなど住所履歴が確認できる書類 売却した不動産に住んでいたことなどを確認するための書類。売却した不動産の住所と住民票の住所が異なる場合などに提出する。
取得方法:本籍地の市区町村役場で取得
費用:300〜400円程度
登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本) 売却した不動産の所在地や所有者、持分割合などを確認するための書類。
取得方法:法務局またはオンライン申請で取得
費用:480〜600円程度
仲介手数料などの領収書 不動産会社へ支払った仲介手数料など、譲渡費用として計上するための書類。
取得方法:不動産会社から受領

なお、会社員の場合でも給与所得の内容を申告書に記載する必要があるため、源泉徴収票の内容を確認しながら申告を進めます。

確定申告の方法

3,000万円特別控除を利用するためには、不動産を売却した翌年に確定申告を行う必要があります。たとえば、2026年に不動産を売却した場合は、2027年2月16日から3月15日までの確定申告期間に申告します。

確定申告では、売却価格や取得費、譲渡費用などをもとに譲渡所得を計算し、そのうえで3,000万円特別控除を適用します。

なお、3,000万円特別控除によって税額が0円になる場合でも、特例を利用するためには確定申告が必要です。また、会社員など給与所得者であっても、この特例を利用する場合は確定申告が必要になります。
共有名義不動産の場合は、3,000万円特別控除を利用する共有者がそれぞれ確定申告を行う必要があります。不動産が1つでも、特例の利用者の人数分だけ申告が必要になるため、忘れずに申告するよう注意しましょう。

確定申告は、次のいずれかの方法で行うことができます。

  • 税務署へ書類を持参して提出する
  • 税務署へ郵送して提出する
  • e-Tax(電子申告)でオンライン申告する

e-Taxを利用する場合は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で画面の案内に従って売却価格や取得費などを入力することで、譲渡所得の計算や申告書の作成ができます。マイナンバーカードがあれば、自宅から申告を完結することも可能です。

共有名義不動産の売却で「3000万円特別控除」を利用した際の計算例

共有名義不動産を売却した場合、売却によって生じた利益は、土地・建物それぞれの持分割合に応じて共有者ごとに計算します。
3,000万円特別控除が適用されれば、原則として共有者1人につき最大3,000万円まで控除を受けられます。ただし、土地と建物の所有関係によって控除の扱いが異なるケースもあります。

ここでは、次の2つのケースを例に3,000万円特別控除の計算方法を紹介します。

  • 夫が土地1/2・建物1/2、妻が土地1/2・建物1/2の場合
  • 夫が土地1/2・建物単独所有、妻が土地1/2の場合

※以下は計算方法をわかりやすくするための簡略例です。実際の譲渡所得は、売却価格から取得費や譲渡費用などを差し引いて計算します。

夫が土地1/2・建物1/2、妻が土地1/2・建物1/2の場合

次のようなケースを想定します。

・夫婦で土地と建物をそれぞれ1/2ずつ所有
・売却によって得た利益は3,500万円

このケースでは、夫婦が土地と建物をそれぞれ1/2ずつ所有しているため、売却によって生じた利益も2人で半分ずつに分けて計算します。

夫:3,500万円 × 1/2 = 1,750万円
妻:3,500万円 × 1/2 = 1,750万円

次に、3,000万円特別控除を適用すると、次のような計算になります。

夫:1,750万円 − 1,750万円 = 0円
妻:1,750万円 − 1,750万円 = 0円

このケースでは、夫婦それぞれが1,750万円の譲渡所得を全額控除できるため、課税対象となる譲渡所得は0円となり、譲渡所得税はかかりません。

夫が土地1/2・建物単独所有、妻が土地1/2の場合

次のようなケースを想定します。

・夫婦で土地をそれぞれ1/2ずつ所有
・建物は夫が単独所有
・夫婦はこの家に一緒に住み、生計を一にしている
・土地と建物を同時に売却する
・保有期間は10年
・売却によって得た利益は3,500万円(土地2,000万円、建物1,500万円)

このケースでは、土地と建物で利益の配分方法が異なります。土地は共有名義のため、持分割合に応じて夫婦に配分されます。一方、建物は夫が単独所有しているため、建物の利益は夫にのみ帰属します。

【土地の利益】
夫:2,000万円 × 1/2 = 1,000万円
妻:2,000万円 × 1/2 = 1,000万円

【建物の利益】
夫:1,500万円
妻:0円

【合計】
夫:2,500万円
妻:1,000万円

次に、3,000万円特別控除を適用して計算します。前述のとおり、このケースでは土地のみを所有する妻も例外的に適用を受けられますが、夫婦の控除額は合計で最大3,000万円となります。
まず、家屋を所有する夫の2,500万円の利益を全額控除します。

夫:2,500万円 − 2,500万円 = 0円
控除枠の残り:3,000万円 − 2,500万円 = 500万円

夫が利用した後の控除枠は500万円残っているため、妻はこの500万円を控除できます。

妻:1,000万円 − 500万円 = 500万円

夫の課税対象となる譲渡所得は0円ですが、妻には控除後も500万円の譲渡所得が残ります。今回のケースでは長期譲渡所得として税率20.315%が適用されるため、妻の税額は次のように計算します。

500万円 × 20.315% = 101万5,750円

つまり、妻は500万円分の3,000万円特別控除を利用できますが、控除後に残る500万円の譲渡所得に対して101万5,750円の税金が発生します。
このように、土地と建物で所有者が異なる場合は、誰がどの程度の控除を利用できるかが変わるため、売却前に所有関係や持分割合を確認しておくことが重要です。

共有名義不動産の売却で「3000万円特別控除」を利用する際の注意点

共有名義不動産の売却で3,000万円特別控除を利用する際は、共有者ごとの適用可否や、他の特例との関係、利用回数にも注意が必要です。

主な注意点は次のとおりです。

  • 共有者全員が3,000万円特別控除を利用できるとは限らない
  • 住宅ローン控除などは併用できない
  • 同じ特例は3年以内に繰り返し利用できない

共有者全員が3,000万円特別控除を利用できるとは限らない

共有名義不動産で3,000万円特別控除を利用する場合は、共有者ごとに適用要件を満たしているか確認する必要があります。同じ不動産を共有していても、共有者全員が必ず3,000万円特別控除を利用できるとは限りません。
たとえば、夫婦で土地と建物を共有していても、一方がその家に住んだことがない場合は、その共有者だけ特例を利用できないことがあります。
また、兄弟で不動産を共有している場合でも、一方が売却した年の前年・前々年に別のマイホームの売却で3,000万円特別控除を利用している場合は、その共有者だけ今回の売却で特例を利用できません。

そのため、共有名義不動産を売却する際は、各共有者の居住状況や過去の特例利用などを個別に確認しておくことが大切です。

住宅ローン控除などは併用できない

3,000万円特別控除は節税効果が大きい一方で、他の税制優遇との併用が制限されています。

次の特例とは原則として併用できません。

  • 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)
  • 特定の居住用財産の買換え特例
  • 譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例

それぞれの特例の詳細については「共有名義不動産の売却で利用できるその他の特例」で解説しますが、とくに注意したいのが住宅ローン控除との関係です。
住宅ローン控除は、住宅ローンを利用してマイホームを購入・新築した場合に、年末のローン残高に応じて所得税などが控除される制度です。3,000万円特別控除とは一定期間内に併用できないため注意が必要です。

たとえば、2026年に新居へ入居する場合、2024年・2025年・2026年に3,000万円特別控除を利用していると、住宅ローン控除を受けられません。

また、2026年から住宅ローン控除を受け始めた後でも、2027年・2028年・2029年に旧居の売却で3,000万円特別控除を利用すると、住宅ローン控除を継続できなくなり、過去に受けた控除について修正申告が必要になる場合があります。

そのため、住み替えを予定している場合は、売却と新居への入居時期を確認し、どちらの特例を利用するか検討しましょう。

一般的には、売却益が大きい場合は譲渡所得税の負担を直接軽減できる「3,000万円特別控除」、売却益が小さい場合は長期間にわたって控除を受けられる「住宅ローン控除」が有利になることがあります。
ただし、実際にどちらが有利になるかは、新居の住宅ローン残高や控除期間、所得税額などによっても異なるため、事前にシミュレーションして比較することが重要です。

同じ特例は3年以内に繰り返し利用できない

3,000万円特別控除には、利用回数や期間に制限があるため、短期間で複数の不動産を売却する場合には注意が必要です。

具体的には、売却した年の前年および前々年に、この特例や関連する特例を利用している場合は、今回の売却では適用できません。

たとえば、2026年に3,000万円特別控除を利用した場合、2027年・2028年の売却では再度利用できず、次に利用できるのは最短で2029年です。

そのため、3,000万円特別控除は実質的に3年に1回しか利用できない制度といえます。短期間に複数回マイホームを売却する可能性がある場合は、どの物件で特例を利用するかを事前に検討しておくことが重要です。

なお、共有名義不動産の場合は、共有者ごとに適用可否が判断されるため、それぞれ特例の利用状況も確認しておく必要があります。

共有名義不動産の売却で利用できるその他の特例

不動産売却では、3,000万円特別控除以外にも、一定の要件を満たすことで利用できる特例があります。状況によっては3,000万円特別控除よりも税負担を抑えられる場合や、3,000万円特別控除を利用できなくても別の特例を適用できるケースがあります。
共有名義不動産の場合は、共有者ごとに特例の適用可否が判断されるため、全員が同じ特例を利用する必要はありません。他の特例とも比較しながら、それぞれの状況に合った制度を検討することが重要です。

特例 特徴
10年超所有軽減税率の特例 3,000万円特別控除と併用でき、控除後に残った譲渡所得の税率を軽減できる
特定の居住用財産の買換え特例 3,000万円特別控除とは併用できず、売却益や住み替え後の資金計画などをもとに比較して利用する
譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例 マイホームの売却で損失が出た場合に利用できる。売却益がなく、通常の3,000万円特別控除を利用できない場合でも、税負担を抑えられる可能性がある
空き家特例(被相続人居住用財産の3,000万円特別控除) 通常の3,000万円特別控除を利用できない場合でも、相続した空き家なら利用できる可能性がある

10年超所有軽減税率の特例

10年超所有軽減税率の特例とは、譲渡所得税の税率が軽減される制度です。売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えているマイホームを売却した場合に利用できます。

譲渡所得税の税率は、通常は所有期間によって次のように区分されます。

  • 不動産の所有期間が5年以下:39.63%
  • 不動産の所有期間が5年超:20.315%

これに対し、10年超所有軽減税率の特例を適用した場合は、課税長期譲渡所得に対して次の軽減税率が適用されます。

  • 6,000万円以下の部分:14.21%
  • 6,000万円超の部分:20.315%

たとえば、各種控除を差し引いた後の課税譲渡所得が1,000万円の場合、税額は次のように変わります。

所有期間が5年以下:396.3万円
所有期間が5年超:203.15万円
不動産の所有期間が10年超:142.1万円

このように、同じ利益でも所有期間によって税額が大きく異なるため、売却時期の判断は重要です。あと1年で所有期間が10年を超えて適用要件を満たせるようなケースでは、売却時期を調整することで税負担を抑えられる可能性があります。

なお、この特例は3,000万円特別控除と併用できます。まず控除で利益を減らし、残った部分に軽減税率を適用することで、税負担をさらに抑えることが可能です。

参考:国税庁|No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例

株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

専門家のコメント

共有者ごとに所有期間が異なるケースもある

共有名義の場合、持分の取得経緯によっては、共有者ごとに所有期間が異なることがあります。たとえば、夫が購入したマイホームで、後から妻が夫の持分の一部を購入したケースなどです。
一方、相続によって取得した持分は、原則として被相続人の取得時期を引き継ぎます。相続してから数年しか経っていなくても、被相続人の取得時期までさかのぼると所有期間が10年を超え、10年超所有軽減税率の特例を利用できる場合があります。
共有名義の場合は、それぞれ持分をいつ取得した扱いになるのか確認しておきましょう。

特定の居住用財産の買換え特例

特定の居住用財産の買換え特例とは、マイホームを売却して新しい住宅に住み替える場合に、売却で出た利益にかかる譲渡所得税の支払いを先送りできる制度です。

この特例を利用すると、売却で生じた利益への課税を新しく購入した住宅の将来の売却時まで繰り延べることができます。ただし、新しい住宅の購入価格が売却価格より低い場合は、差額に応じて売却時にも課税されます。

また、この特例は3,000万円特別控除と併用できません。売却した年、その前年および前々年にこの特例を利用している場合も、3,000万円特別控除は適用できないため、どちらか一方を選ぶ必要があります。

選び方の目安は次のとおりです。

  • 売却益を3,000万円まで直接差し引きたい場合は「3,000万円特別控除」
  • 住み替えで当面の税負担を抑え、手元資金を残したい場合は「買換え特例」

また、共有名義のマイホームを売却して買換え特例を利用する場合は、買換え後の住宅の名義にも注意が必要です。たとえば、夫婦で共有していた旧居を売却し、新居を夫の単独名義で取得した場合は、妻が買換え特例を利用できない可能性があります。

なお、買換え特例は税金が免除される制度ではなく、あくまで支払いを先送りする制度です。将来の売却時に課税される点も踏まえて検討する必要があります。

参考:国税庁|No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例

譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例

譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例とは、マイホームを売却して損失が出た場合に、その損失を給与所得などと相殺したり、翌年以降に繰り越して控除したりできる制度です。

売却時に利益が出ず、3,000万円特別控除による節税効果を得られない場合でも、損失が出ていれば、譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例を利用できる可能性があります。以下のように整理するとわかりやすいでしょう。

  • 売却時に利益が出る場合は「3,000万円特別控除」
  • 売却時に損失が出る場合は「譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」

この特例には、マイホームを買い換える場合に利用できる「買換え時の譲渡損失の特例」と、住宅ローンが残るマイホームを売却して買い換えない場合に利用できる「特定のマイホームの譲渡損失の特例」があります。買換えの有無や住宅ローンの状況に応じて、利用できる特例を確認しましょう。

このうち、住宅ローンが残るマイホームを、ローン残高より低い価格で売却して損失が出た場合は、給与所得などと損益通算できるため、特例による節税効果が大きくなることがあります。
なお、共有名義の場合は、共有者ごとの住宅ローンの状況にも注意が必要です。たとえば、夫婦で共有しているマイホームでも住宅ローンを夫のみが組んでいる場合、妻は住宅ローン残高に関する要件を満たせず、特例を利用できないケースがあります。

参考:国税庁|No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき
参考:国税庁|No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき

空き家特例(被相続人居住用財産の3,000万円特別控除)

空き家特例は、相続した空き家を売却した際に発生した利益から、原則として最大3,000万円を控除できる制度です。

共有名義で相続した場合も利用できる可能性がありますが、対象となる家屋や敷地を相続した人が3人以上いる場合は、1人あたり最大2,000万円となります。
これまで解説してきた3,000万円特別控除との違いは、「自分が住んでいた家」ではなく「相続した空き家」が対象になる点です。
主な適用要件は以下のとおりです。

  • 昭和56年5月31日以前に建築された住宅であること
  • 相続開始直前に被相続人以外の居住者がいなかったこと
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 相続開始から3年後の年の12月31日までに売却すること
  • マンションなど、区分所有建物として登記されている建物ではないこと

共有名義の不動産でも、自分が住んだことがなければ、通常の3,000万円特別控除は原則として利用できません。一方、被相続人が住んでいた家を相続して共有名義となった場合は、自分が住んでいなくても空き家特例を利用できる可能性があります。相続した実家などを売却する場合は、空き家特例の適用可否も確認しておくとよいでしょう。

なお、現行制度では2027年12月31日までが適用期限となっています。今後の税制改正によって延長される可能性もあるため、売却を検討する際は最新の制度内容を確認しましょう。

参考:国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

共有名義不動産を売却する際に押さえておきたいポイント

共有名義不動産を売却する際は、税金の特例だけでなく、売却手続きや代金の分配などについても注意が必要です。

具体的には、次のようなポイントを押さえておきましょう。

  • 不動産全体の売却には「共有者全員の同意」が必要となる
  • 売却時に発生する費用・税金を事前に把握しておく
  • 売却代金の分配方法を事前に決めておく
  • 抵当権が設定されている場合は抵当権抹消が必要となる

共有名義不動産全体を売却するには、共有者全員の同意が必要です。1人でも反対する共有者がいると売却を進められないため、売却条件やスケジュールについて事前にすり合わせておきましょう。同意を得られない場合は、自分の共有持分のみを売却する方法もあります。

また、売却時に発生する費用・税金を把握し、各共有者の負担方法や売却代金の分配方法もあらかじめ決めておくことが重要です。費用の負担や代金の分配を曖昧にしたまま進めると、共有者間のトラブルにつながる可能性があります。

抵当権が設定されている不動産を売却する場合は、抵当権抹消登記も必要です。抵当権は住宅ローンを完済しても登記上は自動的に抹消されないため、金融機関から必要書類を受け取って手続きを行います。住宅ローンが残っており、売却価格がローン残債を下回る場合は、自己資金で不足分を補うほか、任意売却を検討するなどの対応が必要です。

共有名義不動産の売却方法や手続きの流れについては、次の記事も参考にしてみてください。

共有名義不動産の売却で発生する可能性のある費用・税金

共有名義不動産の売却では、税金だけでなく仲介手数料や登記費用なども発生します。どの費用が必要になるかはケースによって異なるため、手元に残る金額の見込みを把握するためにも、事前に確認しておきましょう。

主な費用・税金は次のとおりです。

費用・税金 目安・ポイント
印紙税 売買契約書に記載された契約金額に応じて課税されます。軽減措置が適用される令和9年3月31日までは、契約金額3,000万円の場合で1万円です。共有者の人数ではなく、作成する契約書ごとに課税されます。
登録免許税
(抵当権抹消登記)
1棟・1筆につき1,000円です。土地1筆と建物1棟の場合は合計2,000円となります。共有者の人数ではなく、登記の対象となる不動産の数に応じてかかります。
譲渡所得税 売却によって利益が出た場合にかかります。税率は所有期間5年以下で39.63%、5年超で20.315%です。一定の要件を満たす10年超所有のマイホームでは、6,000万円以下の部分に14.21%の軽減税率を適用できる場合があります。
固定資産税・都市計画税の清算 固定資産税は標準税率1.4%、都市計画税は上限0.3%です。実務では引渡日を基準に日割り計算し、買主と清算するのが一般的です。共有者間でも、それまでの負担状況に応じて立替分などを清算します。
仲介手数料 通常、売却価格が400万円を超える場合は「(売却価格×3%+6万円)+消費税」で上限を計算できます。たとえば2,000万円で売却した場合は72万6,000円が上限です。なお、800万円以下の低廉な空家等には特例があります。
司法書士報酬 抵当権抹消登記を依頼する場合は、2万〜4万円程度が目安です。住所・氏名変更登記などの追加手続きが必要な共有者がいる場合は、その分の費用が加算されることがあります。
解体・測量・清掃・リフォームなどの費用 解体費用は木造住宅で1坪あたり約4万〜7万円、確定測量は40万〜90万円、3LDKの清掃は5万〜10万円程度が目安です。リフォーム費用は工事内容によって数十万〜数百万円程度かかる場合があります。

共有名義不動産では、一部の共有者が費用を立て替える場合もあるため、誰がどの費用を負担するのかを事前に決め、売却代金の分配時に清算しておくとトラブルを防ぎやすくなります。

また、不動産会社の仲介ではなく、買取業者へ直接売却する場合は仲介手数料がかかりません。仲介手数料を含め、売却にかかる費用や手間を抑えたい場合は、買取も選択肢の一つです。

株式会社クランピーリアルエステート 大江 剛 代表取締役 宅地建物取引士

専門家のコメント

解体やリフォームの費用・手間を抑えたいなら買取業者も選択肢

買取業者は、建物を解体したりリフォームしたりせず、現況のまま不動産を買い取ります。建物が古い、修繕が必要といった物件でも、買取後に解体やリフォームを行うことを見込んで査定するため、売主側で手を加えずに売却できる可能性があります。
高値での売却を目指すなら仲介で買主を探す方法が向いていますが、売却までの手間や時間を抑えたいといった場合は、買取業者への売却を検討するのも一つです。


共有名義不動産の売却にかかる税金や計算方法について詳しく知りたい方は、次の記事も参考にしてみてください。

よくある質問

共有名義不動産の売却で贈与税がかかることはありますか?

共有名義不動産を通常どおり売却し、持分割合に応じて売却代金を分配する場合は、基本的に贈与税はかかりません。

ただし、次のようなケースでは、税務上「みなし贈与」と判断される可能性があります。

  • 共有者の持分割合を超える売却代金を受け取った場合
  • 親族間の不動産売買で、時価よりも著しく低い価格で売却した場合
  • 売買という形式でも、実質的に財産を移転していると判断される場合

このうち、親族間などで時価よりも著しく低い価格で売却した場合は、時価との差額が贈与とみなされ、その部分に贈与税が課税されることがあります。

贈与税は、贈与を受けた金額から基礎控除110万円を差し引いた金額に対して課税されます。税率は10%〜55%の累進課税です。

たとえば、時価3,000万円の不動産を1,000万円で売却した場合、差額の2,000万円が贈与とみなされる可能性があります。この場合、2,000万円から基礎控除110万円を差し引いた金額が贈与税の課税対象となります。

【親や祖父母から18歳以上の子・孫への特例贈与の場合】

課税額:2,000万円 - 110万円 = 1890万円
贈与税:1,890 万円 × 45% -265万円 = 585.5万円
⇒贈与税は585万5,000円

不動産の実務では、親族間売買では税務上のトラブルを避けるため、不動産会社の査定や不動産鑑定などを参考に、時価に近い価格で売却するケースが多いです。

共有名義不動産の売却を親族間で行う場合は、売買価格の設定に注意し、必要に応じて税理士などの専門家へ相談することも検討するとよいでしょう。

住んでいない家は「3,000万円特別控除」が使えませんか?

現在は住んでいない家であっても、一定の条件を満たせば「3,000万円特別控除」を利用できます。

具体的には、「住まなくなった日から3年後の年の12月31日まで」に売却した場合は、居住用財産として3,000万円特別控除の対象になる可能性があります。

たとえば、2024年6月に転居した場合は、2027年6月に3年を経過するため、2027年12月31日までに売却すれば、控除の適用を受けられる可能性があります。

建物を壊して土地のみの場合は「3,000万円特別控除」が使えませんか?

建物を解体して土地のみを売却する場合でも、一定の条件を満たせば3,000万円特別控除を利用できる可能性があります。

この特例は「居住用財産」を売却した場合に適用されるため、もともと自宅として利用していた土地であれば、建物を取り壊した後でも対象になることがあります。
一般的には、次のような条件を満たす必要があります。

  • 自宅として使用していた建物を取り壊している
  • 建物を取り壊した日から1年以内に土地の売買契約を結んでいる
  • 住まなくなった日から3年後の年の12月31日までに売却している
  • 建物を取り壊してから売買契約を結ぶまで、土地を駐車場など別の用途で利用していない

ただし、解体後の利用状況や売却時期によって適用可否が変わるため、売却前に税理士や不動産会社へ確認しておくと安心です。

まとめ

共有名義不動産の売却でも、要件を満たせば3,000万円特別控除は利用でき、譲渡所得税の負担を抑えられます。単独名義と異なるのは、共有者ごとに譲渡所得を計算し、3,000万円特別控除の適用可否もそれぞれ判断する点です。
ただし、適用要件が定められており、住宅ローン控除など他の特例との併用が制限される点には注意が必要です。

また、共有名義不動産の売却では、共有者全員の同意や売却代金の分配方法、各種費用の把握など、事前に整理しておくべきポイントが多くあります。これらを十分に検討せずに進めると売却の手続きが進まず、トラブルにつながる可能性もあります。

そのため、売却を検討する際は、特例の適用可否だけでなく、最終的に手元に残る金額や共有者間の合意状況まで含めて、全体を見据えて判断することが重要です。
共有者間での調整が難しい場合や、どの特例を選ぶべきか迷う場合は、早めに不動産会社や税理士などの専門家へ相談することで、スムーズな売却につながります。

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